第 11 章 ポール・スラローム・ロボットの 製作を通して理解する 光センサ・インターフェ−スと PWM 制御を使ったモータ駆動の テクニック ◆開発環境 C コンパイラ(AKI − H8/3664 マイコン・ボード付属品,入手先:秋月電子通商) 山名 宏治 Koji Yamana 本章では,並べられたポールの間を縫って走行する ポール・スラローム・ロボットを製作します. 近いほど大きくなり,対象物を限定すれば距離も測定 できます.ただし,数ミリという近距離では,LED 写真 1 ( カラー写真は,p.108 参照)は,動作中の連 とフォト・トランジスタの中心点がずれていることに 続写真から作成した合成画像で,右下から左上の方向 に移動しているところです.足回りのメカ部分は,タ よって戻り光は減少します. スラローム走行のアルゴリズム カラのデジ Q(写真 2)を使いました. ポールを検出する方法 ● ポールを検出したら旋回方向を切り替える 基本的なアルゴリズムは,左右のセンサでポールを ポールを検出するセンサには,赤外線を使うほうが 検出するたびに旋回方向を切り替えるという単純なも 外光の影響を抑えることができます.見た目の楽しさ や動作のわかりやすさを優先するために,オレンジ色 のです.ここでは,写真 1 を使って説明します. 手前から①番目と②番目は左回りの旋回で,旋回の の可視光を使いました.ここでは,超高輝度 LED TLOH180P とフォト・トランジスタ TPS601A を対に 外側,つまり進行方向右側の LED が点灯しています (以後“左”“右”は同様の意味で使う) . 点灯しているセンサがアクティブな状態であり,② して使用します. ポールの有無は,LED の光をポールに当て,乱反 射して戻ってくる光の量をフォト・トランジスタで検 番目でポールに光が当たりここで旋回方向を切り替え ます.③番目は右回りの旋回で,左側の LED が点灯 出します.使用した LED の指向角の半値角は 8 °とか なり狭いので,フォト・トランジスタも指向性の強い しています. 次にポールに光が当たる場面はコマ落ちしています ものにしました. が,④番目は右側のセンサが点灯して左回りに切り替 LED は点灯と消灯を高速で繰り返し,点灯時と消 灯時の光の量の差分が,ポールに当たって戻ってくる わっています.⑤番目は 1 番目に近い状態に戻った形 であり,この繰り返しでポールを縫って走行します. 光の量としました.この差分は,ポールまでの距離が ● デフォルトは終端ポールで停止 ⑤ 終端ポールに達したとき,次のポールを検出するま 光の反射を検出 ④ 距離測定用LEDが 距離測定用LED 距離測定用 LEDが 点灯している ③ ② ① 右回りの旋回 左回りの旋回 写真 1 連続写真から作成した合成画像 1 コマの時間間隔は 0.4 秒 180 写真 2 デジ Q 2004 年 5 月号 特集*保存版 ★ H8マイコン応用回路集 で旋回を継続すると,次のポールが一つ前のポールに なり,図 1 のように折り返してくることになります. きず,調整作業が煩雑になるので,検出した距離を近 距離,標準距離,遠距離の三つに分類して,それぞれ もっとも,図 1 のようにきれいな旋回には条件があり, 現実のロボットではなかなかそうはいきません. の旋回半径を設定することにしました. ハードウェアの設計 デジ Q のメカは,ギア比が低いうえに重量もある ので,確実性の高い低速走行というわけにはいきませ んし,折り返し動作の完成度を上げるとなると難問に ポール・スラローム・ロボットの回路図を図 3 に示 なりそうです. 今回は,終端ポールを検出したところで停止するこ します. とにして,スタート操作のオプションとして 1 往復や ● センサ回路 エンドレス動作も選べるようにしました. D1 と D2 がセンサ用 LED,Tr1 と Tr2 が受光用フォ ト・トランジスタです.受光量は A − D 変換します. ● ポールとの距離に応じて旋回半径を変える 前述したアルゴリズムを利用し,一定の旋回半径で フォト・トランジスタは,感度にばらつきが見られる ので,余分に購入してテストすることを推奨します. 動作させるだけでもポールを縫って走行することはで H8/3694F の A − D コンバータで測定精度を得るた きます.しかし,ポール間の中央近辺に移動する作用 はほとんどないため,ずれると修正が効きにくく,ポ めには,接続回路,ここではセンサの出力インピーダ ンスが 5 kΩ以下という制約があります.そこで,Tr3 ール間隔はほぼ一定に制限されます. 図2 (a)は標準的な旋回,(b)は小さい旋回,(c)は 大きい旋回で,このようにロボットの旋回スタート時 の位置に応じて旋回半径が変われば,次のポールとの 間の中央のあたりにロボットを到達させることができ ます. すなわち,旋回切り替え時に検出するポール(図の 中央のポール)との距離に応じて旋回半径を変えれば 良いことになります. ここでは,あまり複雑な制御を行うと状態が把握で 付録マイコン基板 MB-H8 B R5 VR 1 100k Tr1 2SC 10k Tr4 1815 P85 (東芝) VR 2 Tr3 2SC 100k 1815 Tr2 R1 4.7k TPS 601A E C D2 TLOH180P×2 右用 R 11 150Ω VCC SW4 SLR-342VC (ローム) CN4 充電器 接続用 D3 PB1/AN1 PB0/AN0 PB4/AN4 PB5/AN5 A VR 4 VR 5 5k 5k 5k スピード用 C1 1k 右用 左用 赤 PB6/AN6 黒 C3 スタート・ ボタン C4 0.01μ Tr5 2SK2782 (東芝) C SW2 P14/IRQ0 P15 D C2 470μ 0.1μ 単4ニッケル水素電池×2 デジQの電池 デジQ部分 右旋回用 (c)大きい 旋回 R 10 P81 4.7k TPS 601A (東芝) D1 150Ω R2 VR 3 左旋回用 P80 (b)小さい 旋回 図 2 三つの旋回半径 左用 右用 左用 (a)標準的 な旋回 図 1 終端ポー ルでの折り返し 黒 R6 R7 10k 100k 0.01μ 赤 R8 10k R9 100k Tr6 2SK2782 (東芝) GDS P16 図 3 ポール・スラローム・ロボットの回路図 2004 年 5 月号 181
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