Virtex-IIによる4Gワイヤレス・システム - Xilinx

Perspective - Wireless Application
Virtex-IIによる4Gワイヤレス・システム
James A. Watson / Manager, Applications Engineering, Xilinx Inc. [email protected]
4Gワイヤレス・システム・インフラストラクチャの設計者は、無線インターフェイス、暗号化プロトコル、衛星間
相互運用性などの基本システム・アーキテクチャの基準が明確になっていないことを含め、製品開発上難しい問題に
直面しています。このように未解決の問題がいくつかあることから、リスク管理には充分な配慮が必要です。
そうすれば、デザインを規格の変化に対応して進展させることができます。
Virtex®-II FPGAは、はっきりと形態が定まっていない発展途上
動作原理
の規格に基づいてデザインする場合に理想的なプラットフォーム
OFDMは他の変調方式と基本的に異なります。実際のところ、
を提供します。Virtex-IIデバイスが本来持つ柔軟性、再プログラム
AM、FM、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振
可能性、高性能(約0.6テラMAC)といった特長によって、種々
幅変調)
、その他の方法で送信することができるので、OFDMを変
の無線インターフェイス方式やその派生方式をイン・システムで
調方式とは考えない方が良いかもしれません。OFDMは、無線周
容易にテストすることが可能となり、さらにシステム性能を迅速
波を生成、復調するための洗練された数学的手法として定義され
に評価することが可能です。また、Virtex-II FPGAを使用するこ
たものです。その起源は第二次世界大戦まで遡りますが、無線通
とにより、マルチキャリアCDMAやQAM変調OFDMなどのハイ
信への応用は最近のことです。
ブリッド・システムの開発も容易に可能となります。
OFDMにおける副搬送波のパルス波形は矩形です。パルスの形
成と変調は簡単な逆離散フーリエ変換(IDFT)によって行われま
直交周波数多重分割方式(OFDM: Orthogonal
Frequency Division Multiplexing)
現在注目を集めている主要な4G開発技術に、CDMAとOFDM
すが、Virtex-II FPGA内ではこれを逆高速フーリエ変換(IFFT)
として極めて効率的に行うことができます。送信を復号するため
にレシーバが必要とするのは、FFTだけです。
があります。コード分割多重方式(CDMA: Code Division
図1を見て分かるように、副搬送波の周波数域は部分的に重なっ
Multiple Access)はよく知られた規格であり、数年前から採用
ています。IFFTを使用することにより副搬送波の間隔は変化し、
されています。しかし、OFDMは比較的新しいもので、技術的に
受信信号のターゲット周波数(矢印で表わされた位置)では他の
変更を加えた多くの変更版があり、Nokia、Cisco、Lucent、
信号はゼロになります。これは「周波数直交」と呼ばれます。こ
Philips Semiconductor各社が支持しています。このOFDMは周
れに対して、ダイレクト・シーケンスCDMAではWalshコードを
波数ホッピングCDMAやダイレクト・シーケンスCDMAに代わる
使用してコードの直交性を実現しています。
規格として注目され、次世代ワイヤレスLANや大都市ネットワー
ク向きの優れた技術として位置付けられています。OFDMでは、
図1
複数のローカル・オシレータを使用することなく周波数利用効率
振幅
の 良 い 方 法 で マ ル チ パ ス 歪 み を 除 去 で き る こ と か ら、 I E E E
802.11aおよび802.16ワーキング・グループの支持を得てきま
OFDMにより高い周波数利用効率が可能
割り当て帯域幅
ユーザ
した。しかし、多くの主要企業が採用しているにもかかわらず、
OFDMはワイヤレス・システムの主流をなすには至っていません。
1
最近、Adaptive Broadband社のマーケティング担当副社長
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3
4
5
6
Todd Carothers氏が次のように述べています。
「当社は、あるア
プリケーション向けに商用OFDMシステムを開発しました。移動
体通信において真に有利なのはOFDMだというのが我々の考えで
周波数
すが、固定局については必ずしもそうではありません。一個の固
定局と複数の固定局の間の通信には、依然としてアダプティブ
TDMA(Time Division Multiple Access)が最良の技術である
と考えています。この技術による我々のシステムは最速であり、
最も広く使われています。
」
WiLAN社のPhilip Gee氏は次のように述べています。
「OFDM
とCDMAが、現在いくつかの同じワイヤレス市場で争っている最
OFDMとVirtex-IIアーキテクチャ
Virtex-II FPGAにはアーキテクチャ上の利点がいくつかあり、
これによって非常に効率的なOFDMシステムを実装することがで
きます。
中であることは事実です。しかし我々としては、OFDMがいくつ
かの点で非常に優位に立っていると考えています。
」
マルチプライヤ
Virtex-II FPGAは、2の補数を使用する18×18符号付マルチプ
ライヤをいくつも備えており、ブロックSelectRAMTMメモリと組
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み合わされています。この組み合わせによって複素数の被乗数係
とができるのは、Virtex-II FPGAだけです。これに代る、より良
数への高速アクセスが可能になるため、極めて高性能な算術計算
いプラットフォームはありません。
を行うことができます。マルチプライヤが重要となる理由は、
本来の規格に、新たな内容のOFDMが加えられた場合を考えて
FFTアルゴリズム自体の性質を考えれば解ります。すなわち、そ
みます。これは充分に考えられることです。従来のASICでは、こ
れは一連の乗算・累積演算に分解されるからです。
のパスのアップグレードに非常な困難が伴います。設備業者は電
柱に登ったりビルの屋上に上がったりして、基地局の基板を手作
デジタル・クロック・マネージメント
業で交換しなければなりません。これら基地局の多くは、世界中
OFDMをうまく実装するには、レシーバとトランスミッタを完
至るところに、通常は非常に高い位置に設置されています。基地
全に同期させる必要があります。トランスミッタのデータ・クロ
局に従来のASICを使用した場合は、このようにコストと危険が伴
ックとの同期は必ず取らなければなりませんが、搬送波のリカバ
うパスのアップグレードも維持コストに加わってきます。
リが必要なのはコヒーレント検波レシーバの場合だけです。この
ここで、Virtex-II Platform FPGAを使用した基地局を考えてみ
レシーバでは、送信されたデータ・シンボルを適切なタイミング
ましょう。セルラー基地局のコンフィギュレーション変更は、中
でサンプリングできる様にデータ・クロックをリカバリします。
央のオフィスから新しいVirtex-IIコンフィギュレーション・ファイ
Virtex-IIデバイスでは、times-two、early-late、あるいはzero-
ルを送信するだけで済みます。この方法はネットワークのどの部
crossingクロック・リカバリなどのアルゴリズム手法を実装する
分にでも利用できるので、ハードウェアを交換することなくネッ
ことができます。これらの処理は、すべてデジタル・ドメインで
トワーク全体のコンフィギュレーションを自動的に設定し直すこ
行われます。Virtex-IIのデジタル・クロック・マネージャ(DCM)
とができます。このような機能によって、より迅速に市場に製品
を使用すれば、これらのアルゴリズム手法も問題なく実装するこ
を送り出し、基地局の旧式化を防ぐことができます。
とができます。たとえば、Virtex-IIデバイスのDCMは、DDS
Virtex-IIを使用したOFDM基地局は、使用するシリコンのエリ
(Direct Digital Synthesis:ダイレクト・デジタル合成)コアと
アと性能のトレード・オフが可能であるという、もう1 つの柔軟
共に、受信データを復調するために必要となる複素数の正弦曲線
性を備えています。上記に述べたビジネス上の成功要因を考えて
を作成することができます。これら複素数の正弦曲線のタイミン
みましょう。フィールドでのトライアルと顧客テストによって、
グや位相は、データ・リカバリ・クロックによって管理され、
平均的な顧客はそれほど大きな帯域幅を必要としないことが明ら
DCMのタイミング制御によって簡単に調整することができます。
かになった場合は、OFDMアルゴリズムのターゲットを設定し直
DCMはこの他にも、クロックのスキュー除去や周波数合成を含め、
して、より汎用的なロジックを使うように変更することができま
トランスミッタとレシーバの同期にとって極めて重要な処理を行
す。この変更をうまく行えば、同じデバイスでより多くのチャンネ
います。
ルを使うことが可能になります。基本的にVirtex-II Platform FPGA
DCMは、デジタル遅延を追加することにより、受信器のローカ
ル周波数を基準にして受信信号のスキュー除去を行うこともでき
は、シリコンのエリアと性能のトレード・オフを動的に行うこと
が可能です。
ます。これによって、レシーバのローカル周波数に対し、遅延は
伴いますが位相が完全にアラインメントされた信号が得られます。
結 論
Virtex-II DCMは、グローバルなクロック・リソース、汎用ロ
Virtex-IIファミリは、次世代ワイヤレス・ブロードバンド・サー
ジックの相互接続、I/Oパッドを同時にドライブ可能で、ロジック
ビスに必要とされる厳しいデジタル信号処理要求を満たす唯一の
の配置において最大限の柔軟性を得ることができます。
製品です。高速マルチプライヤやDCMなど、専用高性能ロジック
による、一連の強力な機能は、極めて柔軟な高性能汎用ロジック
高性能
先進的ワイヤレス・システム実装にあたってのVirtex-IIファミリ
と相まって、ワイヤレス・デザイン用の最適ソリューションを提
供します。
の最も優れた特長は、処理能力が極めて高いことです。これによ
って、ASICなど他の実装では望むことのできない非常に自由度の
高いデザインが可能になります。この利点をよく理解するために、
次の例を考えてみます。
OFDMのフィールド展開の例
この例では、無線サービスのプロバイダによってOFDMシステ
ムが実験ベースで展開されているものとします。
システムは都市部に展開されていますが、この事業を成功させ
るためには、以下に挙げるように解決しなければならないビジネ
ス上の要因が多数あります。
●
現在、新たに出現しているブロードバンド・ワイヤレス・サー
ビスのうち、どのサービスの需要が高まるのか。
●加入者ごとのバンド幅のピークはどのくらいか。
●サービス別の加入者ごとの平均バンド幅はどのくらいか。
●新しいサービスの差別化に利用できるのは、どのサービス品質
(QOS)要因か。
フィールドでのトライアルにおいてこれらの問題に対応するこ
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