土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅰ-177 Effective Notch Stress 法を用いた疲労き裂進展方向評価 芝浦工業大学 学生会員 芝浦工業大学 正会員 ○志田 悠歩 穴見 健吾 芝浦工業大学 ㈱TTES 正会員 金井 雅樹 菅沼 久忠 θ1 を求めるモデル 近年,局部応力を用いた疲労強度評価法である Effective Notch Stress (ENS)法に関する研究が多く行われている.そこで,本研究では ENS 法で用いる仮想円孔上での ENS 発生位置に着目して,その位置 と破壊力学的アプローチより求めた亀裂進展方向との比較を行い, ENS 発生位置を把握することにより,どの程度疲労き裂進展方向を 予測するための目安にできるかについて検討を行った.なお,本報告 においては全て円孔半径が 1mm の場合について報告している. ENS発生方向θ1 (°) 1.目的 40 V P 20 θ 2 はき裂なしの モデルより求めた 0 2.ENS 法によるき裂進展方向評価の可能性 0 (1)主応力方向との比較 20 40 最大主応力に直角方向θ2 (°) 横軸 θ 2 一般的に,疲労き裂はマクロ的に見ると,作用主応力に直角方向に 縦軸 θ 1 θ1 θ2 進展すると言われている.そこで,図-1 に示すようなモデルに対して き裂 外力の組合せ(V/P)を変化させることで作用主応力の角度を変化さ せ,ENS 発生点の変化を調べた.本研究では ENS を仮想円孔周上の 最大の最大主応力と定義している.ENS の発生方向 θ 1 は良い一致を ENS 発生点 最大主応力方向 仮想円孔(1mm) 図-1 作用主応力方向と ENS 発生点の比較 CL 示していることが分かる.最大主応力に直角方向の角度 θ 2 が大きく なると, θ 1 < θ 2 の関係が顕著に見られるが,実際のき裂の進展挙動 を考えると妥当な解析結果と言える. 100 ノッチ (2)最大周応力説より求めたき裂進展方向との比較 500 ENS 法により疲労亀裂の進展方向を評価できるかをより詳細に検 討することを目的として図-2 に示すような梁モデルに対して,亀裂進 100 ENS 発生点 梁下縁からの距離 (mm) 展をシミュレーションした.ここでは,同図に示すように ENS 発生 方向に亀裂を 5mm 進展させ,要素を再分割して ENS 発生方向を求め る作業を繰り返してき裂の進展をシミュレートした.比較対象として, 5mm ルに対して亀裂進展解析を行った.結果を図-2 にあわせて示す.ENS 発生方向にき裂を進展させた場合,最大周応力説で求めたき裂進展方 同様に,図-3 は,荷重伝達十字継手の溶接ルート部から発生・進展 する疲労き裂に対して,面内引張応力面外曲げ応力 ENS を用いた き裂の進め方 最大周応力説 0 –50 0 ノッチからの距離 (mm) 図-2 最大周応力説との比較 引張のみ を同時に作用させた場合の Frank2D(最大周応力説 ENS 50 進展解析ソフト Frank2D を用い,最大周応力説を適用して同一のモデ 向と良く一致していることが分かる. 面外曲げのみ を適用)で求めたき裂進展方向と不溶着部先端での ENS 発生方向を比較したものである.図中曲げ混入 率とは,面内応力に対する主板表面での面外曲げ応 力の割合を示している.引張のみを作用させた場合 には ENS 発生点は円孔頂部より主板側に若干ずれた 位置にあるのに対して,面外曲げを作用させた場合 主板厚 T =33mm 溶接脚長 13mm キーワード:き裂進展方向・ENS・疲労 不溶着部長さ= 0.6T 連絡先:芝浦工業大学 穴見健吾 曲げの混入率 200% 曲げの混入率 0% 東京都江東区豊洲 3-7-5 [email protected]) 図-3 荷重伝達型十字溶接継手を用いた検討 -353- [mm] 50 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅰ-177 には中板側に若干ずれた位置に発生している.き裂進展解析結果でも面外曲げの混入率が大きい場合にはき裂が中 板側に一旦進入していることが分かる.以上より,ENS の発生位置を用いて,き裂の進展方向を概ね評価できる可 能性があることが分かった.今後はよりき裂進展方向が変化するモデルについて検討を行っていく必要がある. 3.鋼床版デッキプレート-トラフリブ間の疲労き裂への適用 鋼床版のデッキプレートとトラフリブの溶接部に発生するき裂(溶接ビード貫通型)は,図-4 に示すようにある 程度進展した後トラフリブ方向に進展するケースがあること が報告されている.そこで,本研究では ENS 法を用いて,そ の理由を検討する.図-5 には解析モデルおよび荷重ケースを 示す.要素にはシェル要素を用いた.き裂長さは横リブとの 溶接位置を中心として 100, 200,800mm として,疲労き裂をデ ッキプレート・トラフリブ接合部から 2mm 離れた位置に設定 した.ここでは,図中のシングルイン・シングルアウトのケ 図-4 鋼床版の対象亀裂 ースについてモデル上を移動載荷させて,ENS 及び ENS の発 生位置の影響線を求めることにより検討を行った. 縦リブ 2 スパン分 要素数約 40000 図-6 に解析例としてトラフリブ外面に着目し,き裂長さ 200, 仮想円周辺要素分割 円周を 64 等分 デッキプレート 800mm のときの,仮想円孔周上の最大の最大主応力および最 小の最小主応力の大きさの影響線及び,図中(き裂長さ 800mm 中央横リブ の場合)の点 A での最小主応力の最小値の発生位置を最小主 応力分布中に示している.対象としたき裂の進展方向には, デッキプレートを 透視して拡大 最小の最小主応力が発生しており,その応力値はき裂の進展 中央縦リブ に伴い大きくなっていることが分かる.従って,対象とする き裂の進展方向が変化する挙動には,溶接部の残留応力など 中央縦リブ も大きく影響しているものと考えられる.一方,き裂長さが 仮想円(r=1mm) き裂 き裂 200mm と 800mm の場合の最小の最小主応力の発生位置 θ 1(図 -1 参照)は,若干の差異は見られるもののその差異はそれほ 中央横リブ ど大きくない. 中央縦リブ 対象とするき裂のように進展方向を変化させるかどうかは, 本解析で考慮している挙動と,溶接ルート部に残る不溶着部 に沿った亀裂の進展挙動との競争であり,その不溶着部の影 響についても同時に検討する必要がある.そのため,現在,3 次元要素を用い,不溶着部を考慮した解析的な検討を行って いる. シングルイン シングルアウト 図-5 鋼床版の解析モデル 本研究は科学研究費補助金(S: 研究代表者:東京工業大学 三木 最大の最大主応力と最小の最小主応力 千寿教授)の研究の一環として行われたことをここに付記する. (MPa) Out・Max 1000 リブ外面 リブ外面 Out・Max 図中 A 点での 最小主応力分布 In・Max In・Max 0 Deck In・Min In・Min Out・Min –1000 き裂長さ 200mm –2000 き裂長さ 800mm 注目するき裂先端 A き裂(200mm) –1000 Out・Min き裂 注目するき裂先端 き裂(800mm) 0 0 1000 –1000 載荷中心の横リブからの距離 (mm) 載荷中心の横リブからの距離 (mm) 1000 図-6 トラフリブ外面の最大及び最小主応力の影響線(実線:シングルイン,破線:シングルアウト) -354-
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