CONTENTS - けんこうリンク 公益財団法人 茨城県総合健診協会

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CONTENTS
2012.WINTER
新年のごあいさつ
茨城県総合健診協会 会長 山口 巖
特 集
・ 眼底検査のススメ
∼眼底検査を受けて動脈硬化を見つけましょう∼
監修/茨城県立健康プラザ 研究員 西連地 利己
協会創立30周年記念特集
・ そうけん30年の軌跡∼県民の皆様とともに∼
最終回「円熟期∼創立20年から現在∼」
TOPICS
・ 相馬検査部次長が厚生労働大臣表彰を受賞しました
・ 健康まつりinうしくに参加しました
・ レディスピア県西主催フォーラム「がん体験者は語る」を開催しました
INFORMATION
・ 皆様の健康のために
―当協会における精度管理事業の紹介―
茨城県総合健診協会
会 長
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2012年1月10日 Vo l.55
අ ਬ 眼底検査のススメ
∼眼底検査を受けて動脈硬化を見つけましょう∼
「人は血管とともに老いる」と言われています。血管,特に動脈が硬くなると,様々な病気を引き起こし,死に
至る危険が高まるからです。動脈も筋肉でできており,通常は弾力に富んでいます。その動脈が何らかの原因で硬
くなることを「動脈硬化」といいます。硬くなった動脈は破れやすくなったり,詰まりやすくなったりします。脳
の血管が破れたり詰まったりするのが脳卒中で,心臓を取り巻く冠動脈という血管が詰まると心筋梗塞になりま
す。血管の弾力を維持することは,健康な生活を営むために大変重要なのです。
血管を硬くする主な原因の一つは高血圧です。動脈の内側にかかっている圧力のことを血圧といいます。高い血
圧が長く続くと,動脈の筋肉が傷んで繊維状のものに変わり,硬くなってしまうのです。そうなると,前述のよう
に,脳卒中や心筋梗塞になりやすくなってしまいます。高血圧自体は自覚症状のない場合がほとんどなので,健診
などで血圧を測定しないと,気づくのが遅れて動脈がどんどん硬くなっていってしまいます。
動脈硬化の程度を測定する方法がいくつか開発されています。例えば,首の動脈を超音波で観察する「頸動脈エ
コー」,手首や足首に器具を付けて脈がどのくらいの速さで血管を伝わっていくかを測る「脈派伝搬速度」,網膜の
血管を観察する「眼底検査」などです。これらの中で,血管を直接観察できる唯一の検査が眼底検査で,目の病気
を診断する外に,高血圧や糖尿病の患者の病態を把握するなどのために古くからおこなわれています。
健康診断などで行われる眼底検査では,眼底カメラという機器
を使って,瞳の奥にある網膜を撮影します(図1)。瞳孔を開かせ
るために頭を暗がりの中に入れてのフラッシュ撮影なので,撮影
直後は目がくらんだ状態になります。撮影には画質の良い(その
代りに多くの光を必要とする)スライド用のフィルムが使われる
ため,多くの光を出すフラッシュが必要なのです。しかし,最近
ではデジタル化されてきていますし,フラッシュの眩しさも少し
軽減されてきています。
撮影された写真を見ると,視神経乳頭という部分から,放射状
に血管が伸びているのがわかります(図2)。視神経乳頭は神経や
血管が目の中に入ってくる部分で,この部分では目の外から入っ
てくる映像を読み取ることができません。いわゆる「盲点」とい
図1 眼底検査の様子
われている部分です。動脈硬化になってくると,血管の一部が狭
くなっていたり,出血していたり,白斑と呼ばれる白い点々があったりといった所見が
認められるようになります。それでも,よほどのことで無い限り,視力低下などの症状
はありません。
眼底所見は大まかに分類する方法がいくつかあります。健康診断などで多く使われて
いるのは,高血圧による変化に着目したキースワーグナー分類というものです。Keith,
Wagener,Barkerという3人が考案したものを慶応大学が日本人向けに修正したもので
す。この分類では眼底の異常所見をKW−Ⅰ,KW−Ⅱa,KW−Ⅱb,KW−Ⅲ,KW−Ⅳに分
類します。KW−Ⅰが最も軽度な異常,KW−Ⅳが最も重篤な異常になります。正常をKW−0
図2 眼底写真
と表現することもよくあります。
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අਬ
循環器疾患死亡の相対危険度
ヨーロッパ高血圧学会とヨーロッパ循環器学会のガイドライン(ESH−ESC 2007)では,高血圧患者において
KW−ⅢとKW−Ⅳであると心臓病や脳卒中が発生しやすくなるとしています。また,WHOと国際高血圧学会のガイ
ドライン(WHO−ISH 2003 statement),英国高血圧学会のガイドライン(BHS IV)および高血圧の予防,発見,診
断および治療に関する米国合同委員会第7次報告(JNC−7)でも,高血圧患者での眼底の動脈硬化所見が様々な臓
器のダメージと関連しているとしています。日本における研究でも,高血圧患者では,眼底の動脈硬化の程度が重
篤であるほど,死亡率が高いことが分かっています。眼底の血管の状態は,特に脳の細い動脈の状態を反映してい
ると言われており,脳卒中の発症との関連も明らかにされています。そのようなことから,わが国における健康診
断でも,高血圧の人などに眼底検査が実施されることになっています。
一方,高血圧でない人は眼底検査を受けなくてもいいので
2.5
高血圧者
しょうか。茨城県と茨城県総合健診協会(茨城県立健康プラ
非高血圧者
2.0
ザ)は,平成5年度に健康診断を受診した方々のその後の死
亡状況を調査する研究を行っています。その中で,眼底所見
1.5
と循環器疾患(脳卒中・心臓病など)による死亡との関連を
高血圧の有無別に調べた結果が図3です。縦軸には,死亡の
1.0
危険度をKW−0を基準とした倍率で表しています。なお,
KW−ⅢやKW−Ⅳは調査対象者数が少なかったために割愛し
0.5
ています。このグラフから,男女とも,高血圧の有無にかか
わらず眼底の異常が死亡率を高めていることがわかります。
0.0
高血圧が無くても,KW−Ⅱのグループでは,KW−0のグルー
KW-0
KW-Ⅰ
KW-Ⅱ
KW-0
KW-Ⅰ
KW-Ⅱ
男性
女性
プに比べて男性2.
30倍,女性1.
68倍の死亡率があるのです。
この研究から,高血圧の方々だけでなく,正常血圧の方々に
図3 高血圧の有無別に見た眼底所見異常の程度
も眼底検査を受けていただく意義があるということが明らか
(キースワーグナー分類)別循環器疾患(脳
になったわけです。
卒中・心臓病など)死亡の相対危険度
(Circulationオンライン版 2011年11月7日号より作図)
どのような理由で,高血圧が無いにもかかわらず動脈硬化
(眼底の異常)が起こり,循環器疾患の死亡率を高めるのか,詳しくわかっているわけではありません。理由の一
つに,仮面高血圧があるのではないかといわれています。普段の生活をしているときには血圧が高いのに,いざ検
査となった時には正常血圧になってしまうことを仮面高血圧といいます。このような場合は,健康診断で高血圧を
見つけることが困難です。一方,正常血圧の方でも,眼底の異常があると高血圧になりやすいこともいわれていま
す。血圧と眼底の異常との関連は少し複雑なようです。
動脈硬化の程度を見る手段という観点から,眼底検査のことを述べてきました。血圧が正常でも眼底検査で動脈
硬化があると脳卒中や心臓病といった循環器疾患になりやすいことが最近明らかになりました。ですから,血圧が
正常の方々にも是非とも眼底検査を受けていただきたいと思います。もし,眼底検査で動脈硬化が見つかったら,
医師や保健師等に相談しましょう。
また,動脈硬化の予防のためにも,保健師や管理栄養士等に相談することをお勧めします。塩分を取りすぎると
高血圧になりやすくなります。血管もたんぱく質でできていますので,たんぱく質が不足すると血管がもろくなり
ます。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ,健康診断と専門家のアドバイスを上手に活用しながら,皆で健
康な生活を作りましょう。
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協会創立
30周年
記念特集
そうけん30年の軌跡∼県民の皆様とともに∼
最終回「円熟期∼創立20年から現在∼」
茨城県総合健診協会は,おかげさまで今年度をもちまして創立30周年となりました。このコーナーでは,
「そうけ
ん30年の軌跡∼県民の皆様とともに∼」と題し,30年間県民の皆様の健康づくりのパートナーとして歩んできた当
協会の歴史を全4回に分けてお送りしています。
最終回である今回は「円熟期∼創立20年から現在∼」をお送りします。
平成13年に県西・県南・鹿行の3つの地区事務所を県南センター・県
西センターへと改編し,本部を中心とする県内における健診ネットワー
クが構築されました。また,指定管理者として茨城県立健康プラザの管
理運営を行い,健診・検査からそれらのデータを基にした疾病予防に関
する調査研究にいたるまで総合的な健康づくりのパートナーとしての茨
城県総合健診協会が確立されました。
13 県南及び鹿行地区事務所を統合し,県
南センターを土浦市にオープン
県西地区事務所を県西センターと改称
乳房超音波検診の開始
16 胸部らせん(ヘリカル)
検診の開始
による肺がん
17 県西センターを八千代町から筑西市
に移転
茨城県健康科学センターが茨城県立
健康プラザに改称
,プライバシーマーク取得
18 胃がん検診等のデジタル撮影装置の
順次導入が開始
19 三代目会長に筑波大学理事兼附属病
院長の山口巖氏が就任(現会長)
▲完成した県南センター
(平成1
3年) ▲県西センター新事務所開所式(平成18年)
20 医療制度改革に伴い特定健康診査・
特定保健指導が開始される
21 茨城よろこびの会が創立2
5周年を迎
える
23 創立30周年を迎える
21世紀に入り,医療技術の劇的な進歩はもちろんではありますが,医
療制度改革に伴う特定健康診査・特定保健指導の開始など,健康診断を
取り巻く状況も大きく変化しました。
そのような目まぐるしい変化のなか,当協会は平成18年度の胃がん検
診を皮切りとしたデジタル化検診への移行,ペプシノゲン検査や胸部
検査などといった新しい検査の導入,バリアフリーへの対応などに
加え,平成17年には国際品質保証規格「
9001」や県内の他の保健医
療分野に先駆けて「プライバシーマーク」を取得するなど,安心で安全
な総合健診機関としての体制整備を推進してまいりました。
▲胃がんのデジタル
画 像。病 変 部 の 拡
大・縮 小 が 容 易 と
な り,検 診 の 精 度
が向上しました。
▲ISO・プ ライバシー
マークを取得し,皆様
に安心して受けてい
ただける健診体制を
整備しております。
創立から30年たった現在,組織も事業も当時と比べると大きく様変わりしましたが,県民の皆様の健康づくりを
サポートしたいという思いは創立以来常にゆるぎないものとしてあります。
現代の医療は,これまでの中心であった「治療」する医療から「予防」する医療へと変わりつつあり,われわれ
のような「早く見つけて,早く治す」健診事業の重要性は非常に高いものとなっておりますが,常に誠実に県民の
皆様とともに歩んできたこれまでの道のりを忘れず,これから先10年,20年といままで以上に皆様に愛され必要と
される健診機関としてこれからも日々努力してまいります。(終)
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opics
当協会の相馬検査部次長が厚生労働大臣表彰を受賞
し,その授与式が11月11日
(金)
に品川プリンスホテル
(東
京都)
で行われた「社団法人日本臨床衛生検査技師会創立
60周年・法人化50周年記念式典」において行われました。
この表彰は永年にわたり検査技術の普及発展や,国民
の保健衛生の向上に大きく貢献した功労者に対して贈ら
れるものであり,相馬氏は茨城県臨床検査技師会の役員
を10年間つとめ,茨城県民の健康増進に貢献してきたこ
とが評価されました。
10月16日(日)に牛久市保健センターで「第
6回 健康まつり うしく」が開催され,当
協会も身体計測とがん細胞を観察できるブー
スを出展し,来場された方々へ日頃からの健
康管理の大切さをともに訴えました。
身体計測コーナーでは,日頃の健康管理に
欠かせない身長・体重や
を簡単に測定で
きるとあって,たくさんの方にご来場いただ
きました。また,がん細胞観察コーナーでは
実際に顕微鏡から覗くがん細胞に皆様驚かれ
ておりました。
▲結果をもとに当協会スタッフが
皆様にアドバイスいたしました
▲当日は複十字シールキャラク
ターでおなじみのシールぼうや
も駆けつけてくれました
茨城よろこびの会支部であるレディスピアが主催するフォーラム「がん体
験者は語る」を11月12日(土)に筑西市のしもだて地域交流センター・アルテ
リオにて開催いたしました。
第一部では,会員自らのがん体験談ととも
に元田中医院院長である田中忍氏による特別
講演を行いました。また,引き続き行われた
第二部ではソプラノ歌手の伊藤和子氏による
ソプラノ独唱や有志によるコーラスを楽しんでいただきました。
当日は1
00名を超える一般の方々にご来場いただき,無事盛会裏にフォーラムを
終了することができました。
▲「アヴェマリア」
・
「アメイジン
グ グ レ イ ス」な ど 全 4 曲 を なお,フォーラム開催にあたり会場提供や広報等ご協力いただいた筑西市様に
唄っていただきました。
は,この場をお借りして心よりお礼申し上げます。
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Information
当協会では様々な第三者機関による評価を受け,常に信頼性の高い健診の提供に努めております。
外部による評価事業(精度管理事業)に毎年参加し,常に優秀な評価をいただいております。
この精度管理事業は,いかに一定の水準で健診や検査が行われているかを基準に評価が行われ,評価が高いほ
ど正確で高品質な健診・検査が行われていることを示しています。
【胸部X線フィルムの評価基準】
画像の濃さ,白い部分と黒
い部分の濃度差,細部の写り
具合,ノイズやざらつきの有
無などいかに読影しやすい
フィルムかどうかで判定され
ます。
問診票や検査結果など,皆様からお預かりした大切な個人情報が外部
に漏れることないよう,個人情報保護の規格である「プライバシーマー
ク」認証を取得し,個人情報の適正かつ安全な取扱いに努めております。
健診機関の設備・機器,人的体制,健診技術,データ管理,健診後の
フォローアップの状況や規程などの整備等の健診機能を総合的に評価
し,優良な施設を認定する「労働衛生サービス機能評価認定施設」を取
得しております。
安心・安全な健診を提供するため,当協会内部においても以下のような取り組みを
行っております。
それぞれの検診分野ごとに専門医による研究委員会を設置するとともに,定期的
に委員会を開催し,委員である医師と当協会技師を交え,判定基準の見直しや実際
の症例をもとにした症例検討会を行い,検査・読影技術の向上に努めております。
▲専門医師による研究委員会
認定胃がん検診専門技師をはじめとする資格取得や各種学会・研究会への参加のほかに,
9001(品質マネ
ジメント規格)に基づく教育訓練体制の強化を図り,職員の意識改革など顧客満足度向上を目的としたスタッフ
一人一人の育成にも努めております。
また,血液自動分析装置や撮影機器等は,いつ誰が検査を行っても同じ検査結果が得られるよう常日頃管理さ
れております。
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ベゴニア
水戸市植物公園(水戸市)
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新年,明けましておめでとうございます。本年も「ヘルスサポートそうけん」をよろしくお
願いいたします。
さて,昨年は3月に大震災を経験し,何気ない日々の生活の大切さを痛感した年となりまし
た。普段,スーパーやコンビニで買っている食品や飲物も,それらを作る人,運ぶ人がいなけ
れば手に入れることはできません。私たちの生活は,さまざまな人の関わり合いの中で成り
立っているのでしょう。そう考えますと,たとえ小さなことでも,そこにはさまざまな人の関わり合いがあ
ると思えてなりません。今年はそんな人との関わり合いを感じ,感謝の気持ちを大切にする一年にしたいもの
です。
( ・ )
個人情報保護に関するお知らせ
当協会では,機関紙
「
そうけん」
の発行に関わるみなさまの個人情報を,
同紙の送付以外には使用いたしません。
次回以降,送付をご希望されない場合は,経営企画室までご連絡くださいますよう,
お願いいたします。
財団法人
茨 城 県 総 合 健 診 協 会
〒310−8501 水 戸 市 笠 原 町489−5
TEL 029−241−0011
(代)
○全国組織
結核予防会茨城県支部
FAX 029−2
41−0332
URL :
.
○施設認定
・労働衛生サービス機能評価機構認定施設
・国際品質保証規格
日本対がん協会茨城県支部
.
認証取得
・プライバシーマーク取得
予防医学事業中央会茨城県支部
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印刷で使用するアルミ板をリユースして
CO2 排出量を 14.85kg 削減しました。
樹齢 50 年の杉の木約 1.06 本分が 1 年間に吸収する CO2 量に相当