景気循環論 vol.3 ドッジプラン 小巻泰之 1.インフレの再燃 生産水準の回復←傾斜生産制(石炭・鉄鋼の生産を相互循環的に上昇させ、 拡大再生産へ) 財政支出(復金融資,価格差補給金) インフレの再燃 ←金融緊急措置令は一時的な効果に留まる 生産の回復(1943-1951年) (前年比) 100.0% 80.0% 60.0% 40.0% 20.0% 0.0% 鉱工業 ▲20.0% 石油・石炭製品工業 鉄鋼業 ▲40.0% ▲60.0% ▲80.0% 1943 1944 1945 1946 1947 1948 1949 1950 1951 (年) 2.貿易赤字の累積 国内需要の拡大⇒国内物資の不足⇒輸入の増加 財貨の純輸出(名目GDP比) 4.0% 3.0% 2.0% 1.0% 0.0% ▲1.0% ▲2.0% ▲3.0% ▲4.0% ▲5.0% ▲6.0% ▲7.0% 1938 1941 1944 1947 1950 1953 1956 1959 1962 (年) 3.ドッジ・ライン GHQ経済顧問として来日: デトロイト銀行頭取ジョゼ フ・ドッジ (目的)竹馬経済の是非(日本 経済の自立と安定) 竹馬経済 「日本の経済は両足を地につけてい ず,竹馬にのっているようなものだ. 竹馬の片足は米国の援助,他方は 国内的な補助金の機構である.竹 馬の足をあまり高くしすぎると転んで 首を折る危険がある」 3.ドッジ・ライン (施策)インフレ・国内消費抑制と輸出振興 ⇒GHQ経済安定9原則(1948年12月)の実施策 GHQ経済安定9原則 (1)経費節減による予算の均衡 (2)徴税システムの改善 (3)融資の限定 (4)賃金安定化 (5)物価統制の強化 (6)外国貿易事務の改善・強化 (7)資材割当配給制度の効果的施行 (8)重要国産原料・工業製品の生産増大 (9)食糧集荷計画のいっそう効果的な執行 3.ドッジ・ラインの推進 1. 2. 3. 4. 緊縮的財政 総予算の均衡化(特別会計も含む) 補助金・補給金の削減 信用面の活動抑制:復興金融公庫の復興債、新規貸出を全 て停止 金融の逼迫 ⇒ 企業倒産・失業急増 ⇒ 景気悪化 物価は鎮静化(安定恐慌) 3.ドッジ・ラインの推進 戦後インフレ・ドッジデフレ (前年同月比) 250.0% 1947年11月 200.0%193.2% 150.0% 100.0% 50.0% 0.0% 1950年4月 ▲11.8% ▲50.0% 4708 4712 4804 4808 4812 4904 4908 4912 5004 5008 5012 5104 5108 5112 5204 5208 5212 5304 5308 5312 (参考)フィリップスカーブの意味 = 景気悪化⇒物価下落 フィリップス・カーブ<CPIと失業率>1983年~2006年(全国) 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 -0.5 -1.0 -1.5 0 1 2 3 4 5 6 3.ドッジ・ラインの推進 5. 固定為替相場の導入:360円の単一レート (当時としては円 安水準) 長所:輸出の促進 短所:金融政策の独自性の放棄 戦前:1ドル=4円26銭 戦後:敗戦とインフレで円の価値は急落. 当時は輸出と輸入で,まちまちの価格設定 次回の講義予定 次回は, vol.4 高度成長(1)国際収支の天井 を検討します.
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