固液分散液塗布膜の機能性向上・構造制御 - 神戸大学連携創造本部

固液分散液塗布膜の
機能性向上・構造制御
氏名 菰田 悦之
所属 工学研究科
1.研究の概要とキーワード
微粒子を溶媒中に分散し,塗布・乾燥を経て様々な機能性薄膜が作製されている.この
ような固液分散液中において,しばしば微粒子が凝集構造を形成し,機能性の発現を
阻害する.そこで,レオロジーを指標として微粒子の分散・凝集特性を理解し,調液・塗
布・乾燥一連の工程最適化により薄膜の機能性向上・制御を目指す.
2.他の研究との相違点・新規な点
対象物質について:
• 固液分散系であれば対象とする物質は問わない.また,分散液の調製から塗布・乾
燥まで全ての工程を対象として凝集・分散を考察する.
観察法について:
• 分散性評価は,粘弾性特性や光学特性(流動複屈折など)などのレオロジー的評価
を重点的に実施する.
• 独自の装置により任意のせん断を印加し,塗布やせん断流動に伴う凝集状態の変
化を直接観察する.せん断速度だけでなくせん断ひずみも重要な因子と考える.
• 独自の膜厚・温度同時測定により,乾燥過程の解析を行う.また,各種顕微鏡を利
用して乾燥中の膜内部の直接観察も可能である.
3.内容
• せん断流動場での凝集分散評価:
3
図1の透明回転平行円板を用いて行う.
2
4
下部円板の回転により,任意のせん断
1
速度・せん断歪みを印加し,光学顕微
鏡により凝集体の破壊過程を直接観察
する.濃厚系を直接観察することは困
1.平行回転円板,2.デジタルビデオカメラ
難であるため,希薄モデル系を選定し,
3.ステッピングモーター, 4.パソコン
実施する必要がある.
図1:せん断印加観察装置
• 乾燥過程解析:
膜厚・表面温度の同時測定により解析を行う.これは
濃厚系・非透明系にも適応可能であり,特に粒子充填
層形成や塗膜表面状態の経時変化と乾燥速度の関
係を知ることができる.塗布時のせん断速度・せん断
歪みも制御可能で,塗布時の凝集体破壊がその後の
乾燥挙動に及ぼす影響の理解を目指す.
4.研究の適用分野
• 固液分散液を対象として,薄膜化や粒子凝集構造
図2:膜厚・温度同時測定装置
制御を目的としていれば,いかなる研究分野におい
ても適用可能であると考える.粒子は,シリカ,酸化チタン,カーボンなどの無機物か
ら樹脂系粒子まで,粒子径はサブミクロンから10ミクロン以上までを対象とした研究
実施実績がある.粒子濃度はこれまで50%程度が上限であるが,さらに濃厚な系へ
の展開にも非常に興味を持っている.
• 溶媒は水・有機溶媒に加えて,高分子溶液,界面活性剤水溶液,溶融高分子などを
対象とし,それらの粘度は1から1,000,000cPまで非常に広範囲の流体取扱い実績
がある.
• 塗布は主にドクターブレードを使用しており,10~100ミクロン程度のwet膜厚を対象
として乾燥過程の解析を行っている.装置の改良によってさらなる厚膜化および薄膜
化へも対応可能である.
氏名 菰田 悦之
所属 工学研究科 応用化学専攻
◇研究歴
• スラリー塗工プロセスによる各種電池電極の構造制御
• エマルション塗料の塗膜形成過程
• 化粧品の塗布・乾燥プロセス
• 非定常せん断流動場での微粒子凝集・破壊挙動解析
• 様々な媒体中における微粒子分散手法
• セラミックススラリーの凝集状態解明
◇専門分野
化学工学 レオロジー 紛体工学 プロセス工学
◇代表的な研究論文
• Y. Komoda, R. Kimura, K. Niga and H. Suzuki, “Formation of Particle Layer
Within Coated Slurry Characterized by Thickness Variation,” Drying Technol., 29,
1037-1045 (2011)
• Y. Komoda, R. Takeuchi, N. Nishimura, M. Hiromitsu, T. Oboshi, and H. Usui,
“Structural Control of the Coated Slurry by Pressure Controlled Drying,” J.
Chem. Eng. Japan, 43(10), 892-900 (2010)
• Y. Komoda, K. Okabayashi, H. Nishimura, M. Hiromitsu, T. Oboshi and H. Usui,
"Dependence of PEFC performance on preparation conditions of slurry for
catalyst layers", J. Power Sources, 193(2), 488-494 (2009)
• Y. Komoda, K. Kameyama, E. Hasegawa, H. Suzuki and H. Usui, "Behavior of
Fine Particle Agglomerates in Newtonian Molten Polymer under a Shear
Flow", Advanced Powder Technology, 19(6), 507-521, (2008)
• Y. Komoda. Y. Ikeda, H. Suzuki, H. Usui, T. Ioroi and T. Kobayashi, "Effect of
the Composition and Coating Condition on the Structure and Performance of
Catalytic Layer of PEFC", J. Chem. Eng. Japan, 40(10), 808-816 (2007)
◇発明名称と特許出願番号
• 触媒層形成装置(特許公開2009-238445)
• 粒子の分散方法(特許公開2009-178688)
• 燃料電池用触媒層の製造方法,触媒層転写シート及び触媒層-電解質膜積層体(特
許公開2008-262904)
• 基材上の塗布層の乾燥速度推定方法、及び、基材上の塗布層の乾燥速度分布を得
る方法(特許公開2008-203045)
◇興味のある共同研究分野
• 二次電池,燃料電池やキャパシターなどの電極膜製造
• 導電性材料の塗布乾燥による導電性薄膜製造
• 化粧品や医薬品などの塗布・乾燥に伴う効用発現機構
連絡先:神戸大学 連携創造本部 TEL:078-803-5945 FAX:078-803-5947
E-mail:[email protected] URL:http://www.innov.kobe-u.ac.jp/