リンゴ樹体内の水移動に及ぼす気根束及び接ぎ目こぶの影響

東北農業研究
(Tohoku Agric Res)42, 229-230(1989)
リンゴ樹体内の水移動 に及 ぼす気根東及 び接ぎ目こぶの影響
*
鎌 倉 二 郎 。西 村 達 弘・ 清 藤 盛 正
(青 森県 りん ご試験場・
*青
森県畑作園芸試験場 )
Effect of BurrknOt and S、 velling Union On ヽ
Vater Conductivity in Apple Tree
Jirδ
KAMAKURA,Tatuhiro NIsHIMURA and Morimasa SEITOネ
(Aomori Apple Experilnent Station・
:
は
じ め
*Aomori Field Crops and Horticultural Expcrimont Station)
(2)接 ぎ目こぶについて
に
わ い性台木 の M26に は気根束が発生 し,ま た特定 の台
木 と穂品種 との接 ぎ目に接 ぎ目こぶが生ず る。 このよ うな
接 ぎ目に典型的な こぶの見 られた10年 生 `ジ ョナ ゴール
ド '/M27及 び接 ぎ目が多少肥大 して い る ものの滑 らか
な10年 生 `ふ じ '/M27各 4樹 を供試 した。
気根東や接 ぎ目こぶ は水 の移動を阻害するといわれてい る
が報告例 は少 ない。
昭和61年 12月 に図 2に 示す ように接 ぎ目部分 を中心 に20
mに 切断 した試料 (以 後 ,接 ぎ目部 という)及 び接 ぎ日上
そこで本試験では ,気 根東 についてはヒー トパ ルス法 に
よ り,接 ぎ月こぶについてはchangl)の 行 った方法 によ り
水 の移動 に及 ぼす影響を検討 した。
方 の幹 を20mに 切断 した試料 (以 後 ,幹 部 とい う)を
Changの 行 った方法 により試料 の上端を減圧 (水 銀柱で15,
30,60mの 3段 階)と し,下 端を水 に浸 し,こ れ ら試料 の
,
2実
験
方
,
中 を通過す る水量を測定 した。
法
(1)気 根束 について
昭和61年 8月 17日 には 8年 生 の ,同 年 8月 26日 には10年
生 の `ふ じ '/M26を 供試 した。気根束上方 は幹 の肥大
が抑制 されて くばんでお り,こ の くばんで いる部分 (以 後
凹部 とい う)の 水 の移動速度を ,そ の近 くで下方 に気根束
のない部分 (以 後凸部 という)と 比較 した。
水 の移動速度 の測定 は , ヒー トパ ルス法 によ り行 い , 8
月17日 には気根束 か ら15m, 8月 26日 には15ca t方 のlUl
部 と、その近 くの凸部 に錐で深 さ0 7ε π∼ lmの 穴をあけ
セ ンサーを挿 し込 んだ (図 1)。 測定 は午 前 6時 か ら午後
,
5時 ∼ 6時 まで 1時 間 お きに行 った。
図 2 水通過量測定試料
なお ,こ の測定 に先立 って ,試 料 を一晩水中で減圧状態
に置 き,試 料中 の空気を取 り除 いた。 また ,試 料 ほ太 さを
,
試料中央部 の断面積 で表 わ した。
3
結果及 び考察
(1)気 根束 について
気根束 が水移動 に及 ぼす影響 を図 3に 示 した。水 の移動
速度 は ,測 定部位下方 の気根束 の有無 によって大 きな違 い
がみ られ ,下 方 に気根束 のある凹部 の水移動速度 は下方に
気根束 のない凸部 の約 1/2で あ つたo
気根束上方 で水 の移動速度 の遅 いことは ,気 根束 が水 の
図1
3)は
気根東 が物質 の転
流 を妨げる可能性があると指摘 しており,本 試験 の結果 は
移動を阻害 していると考 える。吉田
,
水移動速度測定部位
(8月 26日
)
それを裏付 けた ことになる。
-229-
東 北 農 業 研 究
第
42
8
10
12
時 刻
図 3 水移動速度に及ぼす気根束の影響
(ヒ ー トパ ル ス 法
実線 .
)
17日
ム晶
(1989)
m m 仙 枷
通過水 量 ^
″/崎︶ 通 過水 量 ^
″/峻 ︶
水 移 動速度 ︵m/ 時 間︶
6
号
a接 目部
¨ ジ,ナ ゴールi/ヽ 27
‐‐ ふL/M27
ル
ご
―
― ジョナゴ ル ド
‐ 0お 、じ
簿曇り
点線
図 5通
i ][[i:i顆
試料の断面積(凛 〉
面積 と30m Hgに おける
話某笙
以上 の試験か ら,気 根東や接 ぎ目 こぶは水 の移動を阻害
12)接 ぎ目こぶについて
す るとい う結果が得 られた。気 根束 が多数発生 している樹
試料上端の減圧程度 と試料を通過 した水量 との関係を図
4に ,試 料 の太 さと試料 を通過 した水量 との関係を図 5に
示 した。 これによると,試 料 を通過 した水量 は減圧程度が
高まるはど
や ,接 ぎ目 こぶが著 しく月
巴大 して い る樹 で ,樹 勢 の弱 い も
のが多 いが ,こ の樹勢低下 の原因 の一つ として ,気 根東や
接 ぎ目 こぶによ る水移動 の阻害が考 え られる。
また試料が太い はど多か った。
接 ぎ目部を通過 した水量 は幹 部 に比 べ少 な く,接 ぎ目部
が水 の移動 の際 に抵抗 の大 きい部位であると思われる。 こ
の接 ぎ目部 を通 過 した水量 を `ジ ョナ ゴール ド '/M27
と `ふ じ '/M27に つ いて比 較す ると ,い ずれ の減圧状
態において も `ジ ョナ ゴール ド 'の 接 ぎ目部 は `ふ じ 'の
接 ぎ目部 の約 1/3と 少 なか った。
Warne Raby2)は M9台 を使 った試験 で ,接 ぎ目の
も、くらんでいる接 ぎ目部 で水 の通過量が少 ないと報告 し
本試験 の結果 と一致 した。 したが って ,接 ぎ目 こぶのみ ら
,
れる接 ぎ目部 は ,接 ぎ目こぶのない もの よ り水 の移動の際
に抵抗 が大 きい と考える。
4摘
要
わ い性台 リンゴ樹 の台木 に発生する気根束 ,ま た ,著 し
く肥大 した接 ぎ目こぶが水 の移動に影響す るかを検討 した。
(D 気根束 の影響 ……M26台 `ふ じ 'の 気根東上方 の
(ヒ ー トパ ルス法 によ り測定)を 気根束 のない
と比
部位
較 した結果 ,気 根束上方 の水移動速度 は下方 に気
水移動速度
根束 のない部位 の約 1/2で あ つたo
12)接 ぎ目こぶの影響……接 ぎ目こぶの著 しく肥大 して
い る `ジ ョナ ゴール ド '/M27と ,接 ぎ目部分 の肥大 の
小 さヽヽ`お 、じ '/M27を 供試 した。接 ぎ目を中心 に20m
に切断 して接 ぎ目部と し,そ の下部 を水 に浸 し,上 部を減
通 過 水 量 ^彰 / の ︶
m m
圧 して水を通過 させた。 その結果 ,`ジ ョナ ゴール ド '/
M27の 接 ぎ 目部 を通過 した水 量 は ,`ふ じ・ /M27の
約 %で あった。
引
用
文
献
1) Chang, ヽ
Ven― Tsai 1988 Studies in incOmpa―
、
vith special
tibility between stock and scion,
reference to certain deciduous rl uit trees
」
Pomol HOrtic Sci 15:267-325
2)Warne,I′ G G ;Raby,
」
1939 The water
conductivity of the graft union in apple trees,
with special reference to
No Ⅸ
減 [程 度
(aH′
0
)
図 4 試料上端の減庄程度 と
通過水量
吉 田義雄
及園
-230-
」 POrnol
1989
Malling
Rootstock
Hortic Sci.16:389-399
リ ンゴ育 種 をめ ぐる諸 問題
61:1233-1238
(10〕
農