新技術説明会 3 2012年6月8日 地下圏微生物を利用した 新エネルギー生産システム 研究者:静岡大学 理学部 地球科学科 講師 木村 浩之 説明者:木村 浩之 南西日本に分布する付加帯 南西日本の付加帯 日本列島 陸上プレート 付加帯 太平洋 海底堆積物 付加帯の特徴 その1 • 南西日本の太平洋側に広く分布する。 • 厚い堆積層(約10 km)からなる。 • 堆積層は海底堆積物に由来する。 • 太古の有機物を高濃度に含んでいる。 • 深部に豊富な地下水が存在する。 付加帯の特徴 その2 • 地下水に高濃度のメタンが溶存している。 • 地上部にてメタンが激しく気化する。 • 地下水に多様な微生物が含まれている。 • 水素を生成する発酵細菌が含まれる。 • 水素資化性メタン生成菌が含まれる。 地下水から気化するガス ガス成分 水素ガス(H2) <0.01 vol % 二酸化炭素(CO2) 0.42 vol % メタン(CH4) 97.8 vol % エタン(C2H6) 1.76 vol % プロパン(C3H8) 0.001 vol % ブタン(C4H10) <0.01 vol % ほぼ、都市ガスと同じ組成 静岡県中西部のメタン温泉の分布 (2012年5月現在) 静岡県中西部の掘削温泉 地下800m以上掘削された温泉の場合、ほぼ 全ての温泉水にメタンが検出されている。 静岡県内60カ所以上の天然・掘削温泉にて メタンが検出されている。 ○ ○ ○ ○ ○ 静岡市 浜松市 藤枝市 島田市 掛川市 24ヵ所 15ヵ所 4ヵ所 4ヵ所 7ヵ所など 静岡県中西部のメタン温泉の湧出量 (2012年5月現在) メタンが検出される温泉施設(60ヵ所以上) 総揚湯量 ・・・ 8,113 L/min → 11,683 m3/day 温泉水 : ガス = 1 : 1(東海ガス@焼津市のデータ) 一般家庭1万8千世帯分の都市ガス使用量に相当する。 ガス料金に換算すると、8億5千万円/年に相当する。 ガスエンジンで発電すると・・・ 25kWの発電機61台を24時間フル作動できる。 1,332万 kWh/年 一般家庭3,700世帯分の電力に相当(+α 85℃温水)。 研究サイト - 掘削温泉 川根温泉 静岡大学 静岡キャンパス 田代の郷温泉 焼津黒潮温泉 黒潮温泉(焼津市) 鉱山 地下1,502 mの掘削井 メタン分離タンク 看板 地下172 mの掘削井 ガスメーター 田代の郷温泉(島田市) 大深度掘削井戸とタンク 地下水から気化している メタン 地下1,500mの掘削井戸 地下水のサンプリングの様子 地下水から気化している メタン 温泉施設 川根温泉(島田市) 地下1,148 mの掘削自噴温泉 川根温泉(島田市) 揚湯量(864 L/min → 1,244 m3/day) 温泉水 : ガス = 1 : 1とすると、 一般家庭1,200世帯分の都市ガス使用量 に相当する。 ガスエンジンで発電すると・・・・ 1,244 m3/day → 25kWのガスエンジンを 6台の24時間運転が可能である。 131万 kWh/年の発電ができる。 一般家庭360世帯分の電気使用量に相当。 プラスα85ºCの温水の利用もできる。 メタンガス・マイクロ ジェネレーション ヤンマー製天然ガス用エンジン-発電機 2 x 2 x 0.8 m 発電出力:25 kW メタン消費量:8 m3/h 総排気量:3,318 cc 85℃の温水:111 L/min ガス濃度:75-95%のメタン 30台まで複数台運転可能 黒潮温泉(高草1号井) 温泉揚湯量(247 L/min→ 356 m3/day) ガス採取量 (257 L/min → 369 m3/day) 一般家庭370世帯分の都市ガス使用量 に相当する。 ガスエンジンで発電すると・・・・ 369 m3/day → 25kWのガスエンジンを 2台の24時間運転が可能である。 44万 kWh/年の発電ができる。 一般家庭120世帯分の電気使用量に相当。 プラスα85ºCの温水の利用もできる。 田代の郷温泉(島田市) 揚湯量(106 L/min → 153 m3/day) 温泉水 : ガス=1 : 1とすると、 一般家庭153世帯分の都市ガスの 使用量に相当する。 ガスエンジンで発電すると・・・・ 153 m3/day → 1日20時間運転可能 18万 kWh/年の発電量 一般家庭50世帯分の電気使用量に相当 プラスα85ºCの温水の利用もできる。 メタンの起源は何か? ● 地熱作用による有機物分解起源 ● メタン生成菌による微生物起源 ・ 4H2 + CO2 → CH4 + 2H2O ・ 4HCOO- + 4H+ → CH4 + 3CO2 + 2H2O ・ 4CH3OH → 3CH4 + CO2 + 2H2O ・ CH3COO- + H2O → CH4 + HCO3その他:Methylamine, Dimethylamine, Trimethylamine, Dimethylsulfide メタン生成菌の培養 40 ml H2+CO2 30 ml 1.5気圧 N2+CO2 1.5気圧 地下水 地下水 H2 / CO2 Acetate (20 mM) N2+CO2 1.5気圧 N2+CO2 1.5気圧 地下水 地下水 Methanol (20 mM) Formate (20 mM) メタン生成菌の培養 Acetate (20 mM) 水素資化性メタン生成菌 CH4 (mM) CH4 (mM) H2 + CO2 55ºC 55ºC Day Day Formate (20 mM) CH4 (mM) CH4 (mM) Methanol (20 mM) 55ºC Day 55ºC Day 55ºC CH4 (mM) 地下水 CH4 (mM) CH4 (mM) 45ºC(陸上での泉温) H2+CO2 CH4 (mM) CH4 (mM) 35ºC CH4 (mM) 水素資化性メタン生成菌の培養 Day 65ºC 75ºC 85ºC Day 水素資化性メタン生成菌 H2 + CO2 メタン生成菌 CH4 H2はどこからくるのか? (1)マグマ由来の無機ガス(C-H-O-S)の反応 (2)600℃以上でのCH4の分解 (3)100℃前後でのCO2、H2O、CH4の反応 (4)ウランなどの放射線による水の分解 (5)H2O存在下での珪酸塩の触媒反応 (6)苦鉄質岩の加水分解 (7)発酵細菌による水素発生型有機物分解 発酵細菌を培養する 混合有機基質 + Bromoethanesulfonate (酵母エキス + ペプトン + グルコース) Br - CH2 - CH2 - SO3H (Inhibitor of Methanogenesis) Y+P+G BES(メタン生成菌に特異的な阻害剤) N2 1.5気圧 地下水 バイアル瓶 70 ml (地下水 30 ml) H2 (mM) 45ºC 55ºC N2 H2 (mM) H2 (mM) YPG-BES H2 (mM) H2 (mM) 35ºC H2 (mM) 発酵細菌の培養(温度別) Day 65ºC 75ºC 85ºC Day 発酵細菌とメタン生成菌の 共生システム 発酵細菌 有機物 H2 + CO2 CH4 ? 付加帯堆積物中の有機物 表層圏の微生物にとって 超分解性有機物か? メタン生成菌 発酵細菌とメタン生成菌の 共培養 H2, CO2, CH4 (mM) 55℃ N2 YPG BESを添加しない ← 一時的なH2の検出 Day 中型嫌気培養槽 容量12 L(液相, 5L; 気相, 7L) ブチルゴム栓 中型嫌気培養槽でのメタン生成 H2, CH4, CO2 (mol/m3) 16 14 N2ガス置換&混合有機基質(酵母エキス+ペプトン+グルコース)の添加 ↓ ↓ ↓ 12 10 CH4 H2 CO2 8 6 4 2 0 0 7 14 21 28 day 4.5 mol CH4/m3 地下水/day = 100 リットル CH4/m3 地下水/day 35 電力供給 特願2011-220274 電力供給 ガス エンジン 燃料電池 冷水 入口 ガス供給 ラ ジ エ タ 温水 出口 水 素 タ ン ク 水槽保温用温水 P 発電機 ラ ジ エ タ ガス供給 メ タ ン タ ン ク 有機物 + メタン生成菌 阻害剤 ↓ P メ タ ン タ ン ク 有機物 ↓ ファン P 地下水 水素ガス 生成槽 ガス 微生物群集 電気 窒素またはアルゴン 水 中 ポ ン プ 微生物群集 エンジン/燃料電池冷却水 Ar 付加帯の掘削井 排水 メタン 分離槽 メタン 生成槽 電力供給 電力供給 ガス エンジン 燃料電池 ガス供給 冷水 入口 発電機 ラ ジ エ タ ガス供給 ラ ジ エ タ 温水 出口 水 素 タ ン ク メ タ ン タ ン ク 有機物 + メタン生成菌 阻害剤 P P 水槽保温用温水 ↓ メ タ ン タ ン ク 有機物 ↓ ファン P 地下水 水素ガス 生成槽 微生物群集 ガス 電気 窒素またはアルゴン 微生物群集 エンジン/燃料電池冷却水 50 mole CH4/m3 地下水/day = 1,100 リットル CH4/m3 地下水/day Ar 水 中 ポ ン プ 付加帯の掘削井 排水 メタン 分離槽 メタン 生成槽 南西日本に分布する付加帯 エネルギーの地産地消を実現する!! 市街地、工業地帯、高速道路、新幹線、リニアへの電力供給 発電 有機物 (古米・輸入米) 発電 + H2 メタン生成菌に 特異的な阻害剤 CH4 微生物群集 メタン 生成槽 水素ガス 生成槽 水素発生型発酵細菌 + 水素資化性メタン生成菌 発電 有機物 (古米・輸入米) 水素発生型発酵細菌 + 水素資化性メタン生成菌 微生物群集 CH4 嫌気的な 地下水の ポンプアップ メタン 分離槽 南西日本の付加帯 の大深度掘削井 ( 500m〜1,500 m) 海外への技術移転も可能である 米国、メキシコ、ペルー、チリ、欧州、トルコ、インドネシア、NZ 付加帯発電システムの特徴 ・ 日本有数の工業地帯と分布が重なり、電力需要がある。 ・ エネルギーの地産地消により、送電ロスを解消できる。 ・ 地下水の季節変動がない。昼夜発電が可能である。 ・ 山間部における新事業創出につながる。 ・ 地下水の塩分は低く、配管やリアクターの腐食が少ない。 ・ 硫化水素の含有量は少なく、ガスエンジンへの負担が少ない。 ・ リアクターを屋外に設置すれば比較的に安全に利用できる。 ・ 事故が起こったとしても、放射能汚染の心配はない。 ・ リアクター内の残物処理の負担が少ない。 付加帯発電システムの特徴 ・ 地下水に大量のメタンが溶存している。 ・ 地下水からのメタンの分離は非常に簡単である。 ・ 地下水は嫌気的であるため、直ぐにメタン生成が始まる。 ・ 発酵細菌のみを活性化することで、水素ガスも生成できる。 ・ 地下水に多様な嫌気性微生物が含まれる。 ・ 様々な有機物を利用できる(古米、サツマイモ、農作物非食部) ・「水・ガス・電気」を自家的に供給できる。 ・ 災害時に避難所、医療拠点、自衛隊の人命救助基地などで 緊急ステーションとして有効利用できる。 本技術に関する知的財産権 ・発明の名称 :バイオリアクター、それを用いたメタン生成方法及び水素 生成方法、並びに水/ガス/電気の自家的供給システム (未公開) ・出願番号:特願2011-220274 ・発明者 :木村 浩之、増田 俊明 ・出願人 :国立大学法人 静岡大学 ◎共同研究および関連する特許については、静岡大学イノベーション 社会連携推進機構にお問い合わせください。 コーディネータ :橋詰 俊彦 TEL :053-478-1414 E-mail :[email protected]
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