15 0 研究論文 Research Paper 要 約 目 次 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 研究論文 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦 略に関する研究 ―リアル上とサイバー上のシームレスなコミュニケーションの活用― 高橋 朋幸 原野 敏幸 崎 恵典 IT(主にインターネット)がもたらしたコミュニケーションの多層化が、新た なビジネスチャンスを生み出しており、リアルな生活空間とサイバー空間が連結し た「ハイブリッド・コミュニケーション」は、顧客とのリレーションシップ戦略に おける新たな方法論を生みつつある。 本論文では、 「1.ハイブリッド・コミュニケーション考」において、ハイブリッド・ コミュニケーションの定義、類型、考察をモバイルツールの普及と関連付けて行う。 また、「2.ハイブリッド・コミュニケーションから生じるビジネス革命」で、ハイ ブリッド・コミュニケーションがビジネスに与えるインパクトとこれを利用したビ ジネス戦略について分析する。さらに、「3.ハイブリッド・コミュニケーションと 顧客リレーションシップ戦略」において、今後の中心的になる顧客オリエンテッド なビジネス戦略における、ハイブリッド・コミュニケーションの展開について考察 する。 1. ハイブリッド・コミュニケーション考 1.1 ハイブリッド・コミュニケーションとは 1.2 モバイルの特性とハイブリッド・コミュニケーション 2. ハイブリッド・コミュニケーションから生じるビジネス革命 2.1 生活者個人のライフサイクルを基調にしたビジネス創造 2.2 既存のビジネスサイクルを基調にしたビジネス革新 3. ハイブリッド・コミュニケーションと顧客リレーションシップ戦略 3.1 顧客マネジメントレベルと顧客リレーションシップ戦略 3.2 物販でのハイブリッド・コミュニケーションによるコマース事例の考察 3.3 顧客リレーションシップ戦略としてのハイブリッド・コミュニケーション 4. 今後の展開 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Summary ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Contents ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Research Paper Hybrid Communication and Business Strategies Utilizing the Seamless Communication between the Cyber and Real Worlds Tomoyuki Takahashi, Toshiyuki Harano, Yoshinori Saki Information technologies, especially those related to the Internet have brought various forms of communication into our lives. One of these new forms, so called “Hybrid Communication”is expected to become a key to business chances. Employing its feature, connecting the real daily lives to the cyber world, new methodologies have been introduced into customers' relationship strategies. First in Chapter 1, authors define“Hybrid Communication”and classify it into some groups considering the growing use of mobile tools. Chapter 2 is entitled “Business Revolution Arose by‘Hybrid Communication’.” The impacts of “Hybrid Communication”on business are analyzed. In chapter 3, the future of “Hybrid Communication”is focused, especially in the field of customer-oriented business strategies. 1. What Is“Hybrid Communication”? 1.1 Definition of“Hybrid Communication” 1.2 Mobile Tools and“Hybrid Communication” 2. Business Revolution Arose by“Hybrid Communication” 2.1 Creating Customer-Oriented Business 2.2 Renovating Existing Business Cycles 3. “Hybrid Communication”at Customers' Relationship Strategies 3.1 Customer-Management Level and Customers' Relationship Strategies 3.2 Case Study:“Hybrid Communication”at Retail Business 3.3 Case Study:“Hybrid Communication”at Customers' Relationship Strategies 151 15 2 研究論文 Research Paper はじめに IT(主にインターネット)がもたらした、サイバー上でのコミュ ニケーションの広がりは、リアルな生活空間と連結して、新しいコ ミュニケーションの形態を創出している。そのようなリアルな生活 空間とサイバー空間が連結した「ハイブリッド・コミュニケーショ ン」は、新たなビジネスチャンスを生み出しており、特に、顧客と のリレーションシップ戦略における新たな方法論を生みつつある。 ハイブリッド・コミュニケーションとは、広義には、 「複合化・多 層化されたコミュニケーションの形態」を意味する。本稿では、さ らに具体的に「生活者個人(あるいはコミュニティで営まれる)の 暮らしをリアルな生活空間とサイバー空間を連結させることにより、 生活者個人の活動空間の広がりをもたらし、コミュニケーションの 多層化が図られるようなコミュニケーションの形態」としている。 このような、ハイブリッド・コミュニケーションの手段としては、 インターネット接続対応のブラウザフォンを中心としたモバイル ツールが適しており、その「操作性」 、 「携帯性」がもたらすコミュ ニケーションの特性により、生活者個人とビジネスとの間のコミュ ニケーションをより深めている。 モバイルによるコミュニケーションの特性は、 「その時性(リアル タイム性)」 、 「その場性」であり、これを「シームレス」につなげる ことも可能である。さらに、その「匿名性」が、コミュニケーショ ンの対象を広げることになり、このことがハイブリッド・コミュニケー ションにより、生活者個人の暮らし、ライフスタイルを多様化させる。 一方、ハイブリッド・コミュニケーションは、ビジネスに与える インパクトとこれを利用したビジネス戦略へとつなげることができ る。特に、ビジネスシーンでは、ハイブリッド・コミュニケーショ ンを実現するモバイルツールに関して、情報提供型サービス面等で の他社との差別化のための『競争』ツールから、顧客とのコミュニ ケーションや、ビジネス主体間のコミュニケーションを通じた『共 創』ツールとしての活用へと、より高度に志向することができ、こ のことが、結果的に各ビジネス主体のコアコンピタンスを強化し、 競争力の向上へとつながる可能性をより広げていくと考えられる。 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 1. ハイブリッド・コミュニケーション考 1.1 ハイブリッド・コミュニケーションとは (1)ハイブリッド・コミュニケーション ハイブリッド・コミュニケーションとは、広義には、 「複合化・多層化されたコミュ ニケーションの形態」を意味する。本稿では、さらに具体的に「生活者個人(ある いはコミュニティで営まれる)の暮らしをリアルな生活空間とサイバー空間を連結 させることにより、生活者個人の活動空間の広がりをもたらし、コミュニケーショ ンの多層化が図られるようなコミュニケーションの形態」としている。また、この ようなコミュニケーションの手段のひとつとして、ブラウザフォンを中心としたモ バイルツールが適している。 暮らしの領域(たとえば教育・文化)には、様々な価値観による利用シーン(た とえば文化体験)が存在するが、これらがハイブリッド・コミュニケーションによっ て、リアルな生活空間とサイバー空間と生活シームレスに展開され、新たな付加価 値をもたらすことが期待される(図1参照)。 サイバー 商店会 情 報 教育 情報 環境 情報 健康なくらし 商店会 情 報 商店会 情 報 商店会 情 報 スポーツ イベント ゴミ問題 教育・文化 文化体験 暮らしの領域 家族との 触れ合い 遊び・憩い 食材への 関心 衣・食 健康 情報 新しいもの 安いもの 一家で外食 就業 リアルな 生活空間 朝食 学校に行く ゴミ出し 買い物 憩い 運動 夕食 ●たとえば、教育・文化では、リアルな文化体験とサイバー上の情報コンテンツを通じての体験が連結し、付加価値をもたらす。 図1 リアルな生活空間とサイバー空間の連結イメージ 153 15 4 研究論文 Research Paper 情報の方向とアクションの関係 コミュニケーションの種類 個人ベース コミュニティ 介在 サイバーからの情報 とリアルアクション リアルな要求からサイ バーへアクション サイバーから創造され るコミュニケーション サイバー活用から創造 されるコミュニケーシ ョン ネットコミュニティか らの情報により、暮ら しに付加価値をもたら すコミュニケーション リアルなコミュニティ がサイバーにより、付 加価値をもたらすコミ ュニケーション 図2 ハイブリッド・コミュニケーションの4形態 このようなハイブリッド・コミュニケーションを、コミュニケーションの種類(生 活者個人ベース、コミュニティ介在)と、情報の方向とアクションの関係(サイバー から、リアルから)の二つの軸で分類すると、図2に示す四つの形態にまとめるこ とができる。 (2)生活者個人ベースのハイブリッド・コミュニケーション このうち、生活者個人ベースのハイブリッド・コミュニケーションでは、サイバー での情報のやりとりによって、リアルな生活者個人の暮らしの領域が、ハイブリッ ド化され、生活者個人の暮らしに、新たな付加価値をもたらす。 サイバー空間から、生活者個人のリアルな生活空間に送られる情報に対するリア ルなアクションである『サイバーから創造されるコミュニケーション』 (図3参照)は、 具体的には、サイバーから入手した情報(たとえば「お買い得情報」)をもとに、リ アルな場でのアクション(たとえば買い物)を行う形態である。 一方、生活者個人の暮らしにおける、リアルな生活空間の情報にもとづき、モバ イルツールを使って、サイバー空間にアプローチするアクションである『サイバー 活用から創造されるコミュニケーション』 (図4参照)は、ライフスタイルから発生 する生活者個人のニーズ(たとえば買いたいニーズ)を充足させる手段として、サ ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 お買得情報 ニュース速報 交通渋滞情報 イベント開始 情報 タイムリーに 情報ゲットし てアクション 図3 サイバーから創造されるコミュニケーション 通販 銀行振込み タウン情報 自販機で購入 欲しい時にい つでもオーダ アクション 図4 サイバー活用から創造されるコミュニケーション イバー上のコミュニケーションを利用する(たとえばネット通販)形態である。 (3)コミュニティが介在したハイブリッド・コミュニケーション 一般にパソコンを介して接続するサイバー空間では、ポータル、ショッピング、 オークション、ネットワーク接続といった分野でのネットコミュニティの形成を通 じた囲い込み戦略がとられている。しかしながら、ハイブリッド・コミュニケー ションにおいては、このようなコミュニティの形成だけでなく、地域あるいは生活 での利用シーン(あるいは価値観にもとづく活動)と連動し、またリアルとサイバー 155 15 6 研究論文 Research Paper の両面をもったコミュニティが形成され、より強固で代替の難しいコミュニケー ション基盤が構築される(図5、図6参照)。 コミュニティが介在したハイブリッド・コミュニケーションとしては、生活者個 人の暮らしにおけるリアルな行動(たとえば商店街での買い物客の集団)とサイバー な情報(たとえば商店街の買い物客の口コミ情報)とのハイブリッドなつながり、 『ネットコミュニティからの情報により、暮らしに付加価値をもたらすコミュニ ケーション』がある。 また、生活者個人の暮らしの中で、所属するリアルなコミュニティ(たとえば文 化サークル)とサイバーでのコミュニティ(たとえば文化仲間のポータルサイト) とのハイブリッド化、 『リアルなコミュニティがサイバーにより、付加価値をもたら すコミュニケーション』がある。いずれにおいても、その源流には、地域のくらし とその価値観に依拠するコミュニティが介在することにより、密度の高いコミュニ ケーションが発生するという共通点がある。 商店会 情 報 健康なくらし Aさんの価値観 (所属コミュニティ) Bさんの価値観 (所属コミュニティ) 教育・文化 価 値 観 遊び・憩い 衣・食 新しいもの安いもの 就業 買い物 ●たとえば、商店街への買い物仲間と商店街の買い物客が集まるネットコミュニティ上においても、 お買い得情報をコミュニケーションすることにより、買い物活動に付加価値をもたらす。 図5 価値観で形成されたコミュニティ上でのハイブリッド・コミュニケーションのイメージ ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 地域の暮らし 健康に 暮らす 働く 学ぶ 個人の価値観 食べる ・買う 遊ぶ 個人の価値観をベースに、地域の暮らしの様々なテーマにおいて、様々なコミュニティが形成される。 図6 個人の価値観とコミュニティのつながり 1.2 モバイルの特性とハイブリッド・コミュニケーション ハイブリッド・コミュニケーションの促進をもたらしたのは、インターネット接 続対応型のブラウザフォンの登場といえる。1999年2月のiモード登場以来、その 普及は速く、現在契約されている携帯電話の大半がインターネット接続対応型に なっており、モバイルツールとしての可能性を大きく広げた(表1参照)。このよう なモバイルツールの登場は、その「操作性」、 「携帯性」がもたらすコミュニケーショ ンの特性により、生活者個人とビジネスとの間のコミュニケーションをより深めて いくことになった。 モバイルによるコミュニケーションの特性は、図7及び図8で示すように、 「その 時性(リアルタイム性)」、 「その場性」であり、これを「シームレス」につなげるこ とも可能である。さらに、その「匿名性」により、コミュニケーションの対象を広 げることになり、このことがハイブリッド・コミュニケーションにより、自己の暮 らし、ライフスタイルを多様化させることになる。 157 15 8 研究論文 Research Paper 表1 ブラウザフォンの普及状況 2 00 2年5月現在 主なキャリア会社 契約数(単位;千契約:千以下四捨五入) NTTドコモ 携帯電話契約数 4 11 , 95 (iモード契約数 3 29 ,8 8) J- フォン 携帯電話契約数 1 25 , 46 (Jskyサービス契約数 1 04 ,7 6) KDDI(au) 携帯電話契約数 1 25 , 61 (EZwebサービス契約数 1 02 ,5 1) 資料:各社発表資料等より作成 モバイルの特特性 コミュニケーションの広がり 1.その時性 時の空間に広がりをもたらす 2.その場性 場の空間に広がりをもたらす 3.シームレス性 生活サイクルに広がりをもたらす 4.匿名性 自己の演出空間に広がりをもたらす 図7 モバイルの特性とハイブリッド・コミュニケーション ブラウザフォン 固定型端末 場所に依存 (固定型) 場所 人に付随 (ポータブル型) 決まった時間 (定時性) 時間 すきま時間 (シームレス性) 詳しい情報 (ディテール) 内容 即時的情報 (限定情報) 固定型端末に比べ、ブラザフォンは、場所、時間等の面でハイブリッド性が高い。 図8 ブラウザフォンのハイブリッド度 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 2. ハイブリッド・コミュニケーションから生じる ビジネス革命 インターネットを中心としたITは、ビジネスを変革するためのツールにすぎな い。そのツールを活用し、ビジネス主体によっては、自己のコアコンピタンスをい かに固めていくかが重要なのである。また、ビジネスシーンでのIT活用にあたっ ては、他社との差別化のための『競争』ツールとしてよりも、顧客とのコミュニケー ションや、ビジネス主体間のコミュニケーションを通じた『共創』ツールとしての 活用を志向することが、結果的に各ビジネス主体のコアコンピタンスを強化し、競 争力の向上へとつながる可能性をより広げていくと考えられる。 ハイブリッド・コミュニケーションは、コミュニケーションを多層化させるもの であり、そのような多層化される過程を通じて、ビジネス上の付加価値が『共創』 される場において、幅広いナレッジの創造が期待できる。 また、ハイブリッド・コミュニケーションは、ビジネス顧客である生活者個人の コミュニケーションレベルを無意識に多層化させることになり、この生活者個人の コミュニケーションレベルの多層化を、効果的にビジネススタイル(リアルとサイ バーの管理、シームレスなリレーションシップ等)として取り込むことができるビ ジネス主体が新しいビジネスモデルを構築できる。 たとえば、図9で示すように、サイバー上の機能充実により、リアルな顧客変化 購買層拡大 マーケティング セールス/サービス 例) ・コミュニティサービス ・情報提供サービス ・クーポンサービス ・モニタリング etc... 例) ・販売サービス ・決済サービス ・電子財布 ・アフターサービス etc... 購買履歴 サイバー上での機能充実は、リアルな顧客変化をタイムリーにとらえることになり、情報をマーケティング (顧客創造)、セールス/サービス(顧客獲得/維持)といった業務プロセスへとフィードバッグする仕 掛けを効率化する。 図9 マーケティング・セールス/サービスプロセスの展開 159 16 0 研究論文 Research Paper をタイムリーにとらえ、マーケティング(顧客創造)、セールス/サービス(顧客獲 得/維持)といった業務プロセスにフィードバックし、ビジネスの対象、ビジネス モデルを機動的に修正することを支援することになる。 ビジネスの変革には、多様な側面があるが、新しいビジネスとしての可能性の形 態の一つとして、図10で示すように、 「マーケティング」、 「セールス/サービス」の 業務プロセスの軸と、 「需要者としての生活者個人」の創造サイクルと「供給者とし てのビジネス主体」におけるビジネスの革新サイクルというマトリクスで整理でき る。 以下、このマトリクスで、そのハイブリッド・コミュニケーションからみたビジ ネス変革の方向の特徴を考察した。 需要者と供給者の創造・革新サイクル 業務プロセス 生活者のライフサイクルを 基調にしたビジネス創造 既存のビジネスサイクルを 基調にしたビジネス革新 セールス/ サービス 生活者の利用シーンに 付加価値を与えるビジ ネス コミュニケーションツー ルを活用した顧客向け サービスの付加価値化 マーケティング コミュニティのナレッ ジを活用したビジネス ビジネスの利用シーン に付加価値を与えるビ ジネス革新 図1 0 ビジネスとしての可能性の四形態 2.1 生活者個人のライフサイクルを基調にしたビジネス創造 (1)生活者個人の利用シーンに付加価値を与えるビジネス 生活者個人の関心は、モノからサービス、さらにコミュニケーションへの比重が 高まっている。しかしながら、このようなコミュニケーション消費が、リアルなビ ジネスへと訴求するところに、新しいビジネスの広がりをもたらす。なかでも、モ バイルツールは、常時、人に付随し、図11で示すように、その人の生活シーンに依 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 拠した利用によって、コミュニケーションが展開されるため、そこにビジネスチャ ンスが生まれる。また、インターネットへのアクセスのしやすさといった使いやす さや、メール、Web、通話という機能面の多様さがハイブリッド・コミュニケー ションを誘発する。 ビジネスの広がりとしては、たとえば、商店街での買い物をテーマにしたサイ バー上のサイト(あるいはメール)サービスをリアルな商店街が運営し、生活者個 人との間で、買い物に役立つコミュニケーションを通じての付加価値を提供し、リ アルな集客及び販売増につなげるサービス等があげられる。また、各携帯電話の キャリアの公式サイトは、ハイブリッド・コミュニケーションの場としての性格は 弱いが、たとえば、 「ショッピング」、 「グルメ」、 「旅行」、 「エンターテインメント」等 の形で、利用シーンをポータル上でメニュー化することにより、 「生活者個人の利用 シーンに付加価値を与えるビジネス」として展開している。 1日の行動種類別平均行動時間 食事(1時間39分) 家事(1時間26分) 介護・育児(14分) 買物(2分) TV・新聞(2時間33分) 学習・研究(12分) 趣味・娯楽(36分) つきあい・社会活動(31分) 受診(7分) *睡眠、身の回りの用事、ビジネス、学業、休養、移動に 関する時間以外を対象。 時間は、総務省「平成8年社会生活基本調査」の全国平均 生活時間からみても、利用シーンは、多様である。 図1 1 地域コミュニケーションの可能性 161 16 2 研究論文 Research Paper (2)コミュニティのナレッジを活用したビジネス モバイルツールの爆発的な普及は、企業主導から生活者個人主導へと情報の流れ の変化を加速させた。この個人主導の情報の流れをビジネスに活用するには、生活 者個人の発想、叡智を吸収し、再び多様な生活者個人へフィードバック(分散)す るメカニズムが必要となってくる。 コミュニティを活用したビジネス創造としては、たとえば、生活者個人の有志集 団が、テーマに応じてナレッジを提供し合い、ある商品、サービスの開発をコラボ レートしていくビジネスや、同じ価値観を持った会員向けに、お店等のお得情報等 をタイムリーに提供し、その情報に関し即座に評価し合うコミュニティサービス、 あるいは、特定のビジネス関係者をコミュニティ化し、利用シーン、ビジネス課題 に対応したナレッジを有償で提供し合うマーケットプレース型のサービス等があげ られる。 このようなコミュニティのナレッジを活用したビジネスを展開する上では、共通 の価値観や利用シーンによって形成された生活者個人の集団であるコミュニティに おいて、創造的で活発なコミュニケーションが展開されることが必要である。 ナレッジが生まれ、蓄積されるコミュニティの成り立ちとしては、 「ネット上のコ ミュニケーションからのアプローチによる形成」と、 「リアルなコミュニケーション からのアプローチによる形成」が行われるパターンがある。このうち、サイバーの コミュニケーションから形成されるコミュニティを特徴付けるコミュニケーション の形態として、表2に示すように、「サイバーでの間接的なコミュニケーション」、 「サイバーでの直接的なコミュニケーション」、「オフラインでの直接的なコミュニ ケーション」が考えられる。我々がこれまで行ってきたコミュニティサービスの実 証からも、このようなコミュニティのナレッジを活用した『共創』戦略によるビジ ネススタイルが、より効果的と考えられる。 2.2 既存のビジネスサイクルを基調にしたビジネス革新 (1)コミュニケーションツールを活用した顧客向けサービスの高付 加価値化 様々なビジネスプロセスレベルでの利用シーン、ビジネス上の価値の共有におい て、コミュニケーションツールの活用がはじまっている。従来、企業が経験的に蓄 積してきたナレッジとITが融合することにより、ビジネスとしての新たな付加価値 が生まれる。この形態でのハイブリッド・コミュニケーションは、企業が、顧客か ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 表2 コミュニティの種類とコミュニケーションの形態との関係 コミュニティの種類 コミュニケーションの形態 緩やかなネットワークコ ミュニティ ∼サイバーでの間接的な コミュニケーション∼ ネット上での間接的なコミュニケーションによって特徴づけられる コミュニティ。 このコミュニティでは、一部のコミュニティメンバーが不特定多数 のメンバーへ情報や、意見を発信し、他の大多数のメンバーがそれら を閲覧するという形態でコミュニケーションがとられている。 強固なネットワークコ ミュニティ ∼サイバーでの直接的な コミュニケーション」∼ ネット上での直接的なコミュニケーションによって特徴付けられる コミュニティ。 このコミュニティは先の「緩やかなネットワークコミュニティ」の 中に形成された。コミュニティの核となるメンバーを中心に、メール を用いたより個別的なコミュニケーションや、特定サイトの継続的な 閲覧といった形態でのコミュニケーションがとられる。 ハイブリッドコミュニ ティ ∼、オフラインでの直接 的なコミュニケーション ∼ ネット上のコミュニケーションに加えて、オフラインでのコミュニ ケーション、つまり実際に対面してのコミュニケーションによって特 徴付けられるコミュニティ。 このコミュニティは、主にネットワークコミュニティの核となるメ ンバーがオフラインでコミュニケーションを行っていくことで形成さ れる。オフラインでの出会いを通して、ネットワーク上のコミュニ ケーションが活発化、数人で新しい情報発信のアイデアを持ち寄る等 の活動等が行われる。 らのニーズやスピーディな反応の把握等のナレッジを双方向で蓄積し、顧客に付加 価値サービスを提供する形で、『共創』を行うことで展開される。 たとえば、顧客営業、商談、決済といったプロセスについての活用事例としては、 証券会社の例がある。ブラウザフォンを活用した「バーチャル営業員」等により、 ハイブリッドかつシームレスなコミュニケーションを顧客サービスで実現している。 また、小売業界の例としては、コンビニ各社では、リアル店舗とサイバー上での サービスの連携による、ハイブリッド性に着目して、クリック&モルタルが実践さ れ、店頭集客率アップにつなげている(表3参照)。 表3 ハイブリッド・コミュニケーションによるビジネス戦略事例(その1) 戦略の軸 事例 リアルなサービスプロセスとの 金融業界 ハイブリッド化 例)大和證券 事例の概要 リアルタイム株価チャートの更新、 チャート分析等のサービス提供、 株式等の売買注文、取引 リアルなサービスシーン提供と 小売業界 店頭商品・サービスの購買を連動 のハイブリッド化 例)ローソン、 させてキャンペーン展開等による ファミリーマート、セブン 店頭集客力アップ −イレブン 163 16 4 研究論文 Research Paper (2)ビジネスの利用シーンに付加価値を与えるビジネス革新 あるビジネスを構成するスタッフが持つナレッジをリアルタイムかつシームレス で、ハイブリッド・コミュニケーションすることにより、ビジネスを構成する企業 間、企業内での『共創』型のビジネス展開を行うことが可能になる。 たとえば、指揮部門と地理的に離れた製造現場、流通現場、販売現場とのコミュ ニケーションによるビジネス利用シーンでの「その時(リアルタイム)性」、「その 場性」の向上が図られている(表4、図12参照)。今後は、様々な企業間、企業内で の内在化していたナレッジの表出や、コラボレーションを契機にした新たなビジネ スプロセスの革新等が創出されてくると考えられる。 表4 ハイブリッド・コミュニケーションによるビジネス戦略事例(その2) 戦略の軸 事例 現場間でのハイブリッドな情報 流通管理 共有化による管理 例)大阪屋 運行管理 例)佐川急便 事例の概要 書籍注文サービス「もばいる倉庫 番」 リアルタイムな配達完了情報を提 供 荷物の配送情報を発信 例)北港運輸 顧客対応業務 現場即時対応 ・顧客向けの飲食店、スポーツセンターの混雑状況のビジュ アルサービス ・病院の混雑状況のビジュアルサービス ・「入場制限」がある集客施設の入場カウンターにリアルタ イムで連動するサービス ・コールセンター対応として、動画(TV電話)を使った自 動応対システム ・集客施設、自然名所等の天気状況、開花状況のリアル画像 サービス ・野球場(サッカー場)での決定的シーンのスロービデオ再 生サービス ・救急の患者さんの状態を音声だけでなく画像も一緒に送付 (救急車から病院へ運ぶ途中、端末で状況送信) ・機械の修理など、現場で作業中の作業員が修理方法に困っ たときに、本社から画像つきで修理方法を支援するシステム ・110番画像配信連動システム ・PCサポートセンター映像連動システム ・生産現場での仕上げ検査確認 営業活動・業務活動支援 即時情報サービス ・学校行事に参加している子供の画像提供(子を持つ親向け) インターフォン画像転送サービス ・自宅の防犯カメラの映像をいつでも閲覧できるサービス ・教育機関向け教室映像配信サービス ・対人業務では店頭調査や街頭アンケートサービス ・ルートセールスマンが、営業担当に在庫情報、陳列情報を 通知する仕掛け ・商品情報や価格情報など、膨大な量の情報を扱う場合の支 援ツール ・見積計算や保険計算など情報に計算がからんでくるときの 支援ツール ・飲食チェーンにおける本部への今日の店舗状況報告サービス ・インターフォン画像転送サービス 図1 2 モバイルツールを使ったビジネス利用 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 3. ハイブリッド・コミュニケーションと顧客リレー ションシップ戦略 前章では、ハイブリッド・コミュニケーションから生じるビジネス革命の四つの 類型について触れたが、これらの類型を包含する概念として、我々がこれまでの研 究等を通じて、特に着目した今後の顧客リレーションシップ戦略を整理したい。こ のアプローチについては、既にCRM(Customer Relationship Management)を はじめとして多くの事例がはじまっており、全てのサービスは顧客オリエンテッド なマーケットに変貌する中、今後の中心的なアプローチとなっていくと考えられる。 このようなアプローチの普及は、モバイルツールが持つ以下の特性により、加速 していくと考えられる。 1)「その時」性(リアルタイム性) ITは、顧客を理解するための手段が充実し、また蓄積されたデータを高速で検索 し取り出すことを容易にし、 「リアルタイム」に、顧客にとって、有効な情報(たと えば購買支援情報)を発信できるようになった。 2)「その場」性、シームレス性 顧客に接する場としての手段が多様化され、サイバー上のWeb、メールは、顧客 とビジネス主体との情報接点の場として、付加価値をもたらすとともに、 『共創』の 場となっており、顧客は、 「どこでも」、また「シームレス」に企業とのコミュニケー ション機会を持つことが可能になった。 このような特性を活かして、ビジネス主体は、進化する顧客の情報を「リアルタ イム」に、リアルとサイバーを組み合わせた多様なチャネルで、顧客とのリレーショ ンを構築することができる。モバイルツールは、リアルな生活空間とサイバー空間 をつなげるメディアとして、顧客データの活用により、顧客志向のマーケティング を可能にする。 3.1 顧客マネジメントレベルと顧客リレーションシップ戦略 これからの顧客戦略においては、新規顧客の獲得に加え、顧客との密接な関係が 成功の鍵を握るともに、さらに、より顧客オリエンテッドの視点でのサービス提供、 顧客との『共創』が必要であり、そのために、マーケティングの見直し、顧客の理 解にもとづくコミュニケーション、顧客とのチャネルを整備していく必要があると 考えられる。このような顧客とのリレーションシップ度(密着度)を高めていく戦 165 16 6 研究論文 Research Paper 大方針 顧客戦略 特徴的な経営方法論 業務プロセス レベル4: 顧客との共創 レベル3: 顧客関係性重視 (CRM) 顧客基盤の高度な活用 顧客基盤の維持と活用 確固とした顧客基盤の確立 顧客基盤の拡大 顧客基盤の維持と活用 確固とした顧客基盤の確立 顧客基盤の拡大 レベル2: 顧客満足重視 (CS) 確固とした顧客基盤の確立 顧客基盤の拡大 バランス・スコア カード ■顧客へのアプローチ 高収益をあげる優良顧客への 施策を差別化する コアコンピタンス への集中投資 ■顧客の認識 個々に満足/ニーズを持った 個人として認識する ■顧客へのアプローチ 満足/ニーズに対し、個人的 な対応の施策を展開する ■顧客の認識 個々に満足/ニーズを持った 個人として認識する ■顧客へのアプローチ セグメントごとの施策を展開 する ■顧客の認識 属性ごとのセグメントとして 認識する レベル1: 顧客獲得 ■顧客の認識 個々に収益性の異なる顧客と して認識する 顧客基盤の拡大 ■顧客へのアプローチ セグメントごとの施策を展開 する 顧客チャンネルの統合 情報システム 大規模データベース マーケティングシステム データウェアハウス/ データマイニングツール 各種データの共有化 基幹系/情報系統合 システム ナレッジマネジメント Webマーケティング システム 顧客満足度調査 CTI/顧客対応支援 顧客のニーズ起点の 業務改善プロセス 顧客コンタクト管理 システム 営業業務支援システム 営業マニュアル/ トレーニング エリアマーケティング システム 図1 3 顧客マネジメントレベル 略としては、図1 3で示すように、従来のCS推進活動にとどまらず、CRMも視野に入 れた、より広い意味での顧客戦略を段階的に志向していく必要がある。 3.2 ハイブリッド・コミュニケーションによるコマース事例の 考察 最終消費者としての生活者個人を対象としたビジネス主体である小売分野は、リ アル店舗を活かした、いわゆるクリック&モルタル(モバイル&モルタル)が代表 的である(表5参照)。1台1台がIDを持つモバイルツールを媒介として、個別ニー ズを把握するマーケティングを行い、ハイブリッドなコマースへと展開している (図14参照)。 これら小売業では、メールマガジンの発信とWebへのアクセスを組み合わせて実 施している。このようなメールマガジンの発信目的としては、①商品・サービスの 情報提供、②イベント、キャンペーンの企画告知、③クーポン等の提供、④限定商 品・サービスの紹介があげられる。 これらのサービスによる、消費者の利便性向上を通じて、店舗の来店客数、売上 高アップに向けて店舗誘導を図っており、1)新規顧客開拓、2)リピータの拡大 による顧客リレーションシップ戦略を強化している。 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 表5 ハイブリッド・コミュニケーションによるコマース事例 分類 チェーン・FC店 商店街・モール サービス名 (主な提供地域) ハイブリッド・コミュニケーションが 意識されているサービス内容例 iLAWSON (全国) ・iモードで商品の予約・注文を受付、リアルな 店舗で代金決済、商品受け渡しサービス ・店頭で発売する新商品・サービス、キャンペー ン等の情報提供 スーパーニッショー (大阪、京都等) ・最寄の支店の「現在(いま) 」の商品案内: 「メー ルチラシ(毎日) 」の発信 ・生活に役立つ小ネタ: 「主婦の味方NEWS」の 発信 ツタヤオンライン (全国) ・リアルな店の在庫検索 ・リアルな店の検索 ・発売前の新作予約 竪町商店街(金沢市) ・商店街のイベント情報 ・リアルな店のクーポン情報 ・リアルな店との掲示板: 「タテマチコミュニケー ション」 ・リアルな店の検索 shouten-i.com (関西) ・リアルな店の紹介 ・商店会、商店からのメール配信 ・情報交換掲示板: 「コミュニティ広場」 ・リアルな店との通販サービス: 「ご用聞きキャン ペーン」 商店、商店街訪問 人流でのハイブリッド いつでも、どこにいても商店情報 お店で五感で感じる情報 商店 いつでも、どこからでも商店 とのやりとり 持ち帰り、宅配、直配 物流でのハイブリッド いつでも、どこへでも商品購買・ 予約 現金、カード、電子財布で決済 経済流でのハイブリッド いつでも、どこでも決済 図1 4 商店と利用者のハイブリッド・コミュニケーション 生活者 情報流でのハイブリッド 167 16 8 研究論文 Research Paper 3.3 顧客リレーションシップ戦略としてのハイブリッド・コミュニ ケーション これまでに触れたように、現在、モバイルツールを活用して、様々なビジネスア プローチが進められており、そのほとんどがハイブリッド・コミュニケーションの 形態により展開されている。 ハイブリッド・コミュニケーションによるビジネススタイルの創造、革新は、リ アル、サイバーそれぞれのコミュニケーションをハイブリッドに活用して、相乗効 果を得ることを可能にする。 たとえば、リアルの面からみた場合、リアルビジネスで構築されてきた顧客基盤 をもとに、ITを活用しパーソナライズ化された情報を提供することによって、顧 客ロイヤルティの向上が見込める。サイバーで蓄積された顧客データをリアルビジ ネスへと展開することにより、様々な創造と革新をもたらすことになる。 また、サイバーの面からみた場合、リアルビジネスで培われた専門性の高い組織 能力がITを有効に活用することになる。リアルな場では、形式知化しにくい顧客 とのコミュニケーションを通じた経験、ナレッジをインターネットの活用により、 ビジネスが現場に即した形で調整され、具体的な結果をもたらすことになる。 今日、多くの小売業では、店舗ビジネス、オンラインビジネスの両チャネルを もっているが、プライバシーに配慮しながら、両者間の顧客データ間を統合するこ とにより、消費者に役立つきめ細かなサービスを提供することが可能になる。また、 リアルビジネスにおける供給力や集客力は、サイバーでも、競争力の源泉となる等、 ハイブリッド・コミュニケーションは、顧客リレーションシップ戦略においても、 効果をあげることになる。 4. 今後の展開 コミュニケーションツールとしてのモバイルツールにおいては、今後は、ブロー ドバンド時代に対応した次世代携帯電話等が、ビジネスの多層化を加速していくと 予想される。 ハードの機能面では、ブラウザフォンを中心としたモバイルツールは、今後、コ ミュニケーションツールから、様々なコミュニケーション表現を可能にするコミュ ニケーションデバイスとして進化していく。特に、 「ハイブリッド性」に「映像」表 現技術が進化して加わることによるコミュニケーション力の増大は、ビジネスに大 きなインパクトを与えると予測される。 また、ソフトの機能面では、本格的に顧客志向のマーケティングツールとして進 ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 化し、その普及により『共創』ツールとして発展していくと予想される。このよう な機能の進化は、商品・サービスのライフタイムバリュー及び顧客ロイヤルティを 最大化する顧客リレーションシップ戦略を実現するための重要なツールとなってい き、ハイブリッド・コミュニケーションも大きく広がると考えられる。 169 17 0 筆者紹介 筆者紹介 地域金融機関の経営戦略とIT活用 伊藤 彰一 1 9 6 5年生まれ.1 98 8年早稲田大学商学部卒業.1 9 90年同大学院商学研究科修了. Shoichi Ito 同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューション事業本部 金融・ サービス事業部 経営コンサルティンググループ、主任研究員.専門は経営戦略 論、事業戦略、組織人事戦略. 信用リスクに関する研究 西岡 公一 1 9 5 8年生まれ. 19 80年東北大学工学部通信工学科卒業. 1 98 5年同大学院情報工 Koichi Nishioka 学研究科修了. 同年(株)三菱総合研究所入社. 現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 金融・サービス事業部 CRMコンサルティンググループ グループ リーダー、主席研究員. 専門は金融分野のリスク計量化、データマイニング. 工学博士. 木村 公昭 1 9 6 0年生まれ.1 98 2年慶應義塾大学経済学部卒業.同年(株)三菱総合研究所入 Kimiaki Kimura 社.1 9 9 2年ロンドン大学大学院経営学研究科修了.現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 金融・サービス事業部 経営コンサルティンググループ プロジェ クトマネージャー、主席研究員.専門は金融機関マネジメント. 圷 雅博 1 9 6 2年生まれ.1 98 5年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業.1 9 87年同大学院理 Masahiro Akutsu 工学研究科修了.本田技研工業(株)を経て1 99 0年(株)三菱総合研究所入社. 現在、ビジネスソリューション事業本部 金融・サービス事業部 CRMコンサル ティンググループ プロジェクトマネージャー、主任研究員.専門は数理統計学、 信用リスク分析. 山藤 昌志 1 9 7 1年生まれ.1 99 4年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業.同年(株)三菱総 Masashi Santo 合研究所入社.現在、ビジネスソリューション事業本部 金融・サービス事業部 CRMコンサルティンググループ、研究員.専門は信用リスク管理、国際金融、国 際経済. 藤原 佳代 1 9 7 4年生まれ.1 99 7年東京大学理学部地球惑星物理学科卒業.1 9 99年同大学院理 Kayo Fujiwara 学系研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 金融・サービス事業部 CRMコンサルティンググループ、研究員. 専門は信用リスク、海洋物理. 河内 善弘 1 9 7 4年生まれ.1 9 9 7年京都大学経済学部卒業.国内金融機関支店勤務、消費材 Yoshihiro Kawachi メーカーマーケティング部署を経て2 0 01年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビ ジネスソリューション事業本部 金融・サービス事業部 CRMコンサルティング グループ、研究員.専門はCRM. 筆者紹介 藤田 健太 1 9 7 6年生まれ.1 9 98年慶應義塾大学総合政策学部卒業.2 000年同大学院政策メ Kenta Fujita ディア研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 金融・サービス事業部 CRMコンサルティンググループ、研究員. 専門は経営戦略論、組織論. SCMの取り組み課題と適用条件に関する考察 小林 修 1 9 6 7年生まれ.1 9 90年筑波大学第三学群社会工学類卒業.1 9 92年同大学院経営・ Osamu Kobayashi 政策科学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリュー ション事業本部 製造・流通事業部 経営戦略グループ、主任研究員.専門はサ プライチェーンマネジメント、市場分析. 下村 雅彦 1 9 7 1年生まれ.1 9 95年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業.1 997年同大学院理 Masahiko Shimomura 工学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 製造・流通事業部 経営戦略グループ、研究員.専門は業務分析、 システム分析、オペレーションズ・リサーチ、ソフトウェア工学. 郡司 倫久 1 9 7 4年生まれ.1 9 97年立教大学経済学部経営学科卒業.1 99 9年東京大学大学院経 Michihisa Gunji 済学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 製造・流通事業部 経営戦略グループ、研究員.専門は製品開発、 ブランドマーケティング、組織論. 病院におけるトータル・ソリューション 今西 陽一郎 1 9 5 6年生まれ.1 9 81年東京大学医学部保健学科卒業.富士通(株)医療システム Yoichiro Imanishi 事業部を経て1 9 8 8年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューション 事業本部 医療・公共事業部 ヘルスケアソリューショングループ グループ リーダー、主席研究員.専門は大学病院・自治体病院などのリエンジニアリング 計画、トータル・ソリューション、医療関連事業のプロモーション、医療関連コ ンサルティング. 梁瀬 鐵太郎 1 9 6 0年生まれ.1 9 82年新潟大学工学部情報工学学科卒業.富士通 (株) を経て199 0 Tetsutaro Yanase 年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューション事業本部 医療・ 公共事業部 ヘルスケアソリューショングループ プロジェクトマネージャー、 主任研究員.専門は病院ITソリューション. 171 17 2 筆者紹介 北野 拓哉 1 9 7 0年生まれ.1 99 3年中央大学理工学部管理工学科卒業.1 9 9 5年名古屋大学大学 Takuya Kitano 院工学研究科修了.日本電気(株)を経て2 0 0 1年(株)三菱総合研究所入社.現 在、ビジネスソリューション事業本部 医療・公共事業部 ヘルスケアソリュー ショングループ、研究員.専門はオブジェクト指向データベースに関する研究開 発、及び電子カルテに関する応用ソフトウェア開発の経験を経て、病院情報シス テム及び医療ASPサービスに関するコンサルティング業務. 佐瀬 典子 1 9 7 2年生まれ.1 99 5年北海道大学法学部卒業.1 9 98年同大学院法学研究科修了. Noriko Sase 同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューション事業本部 医療・ 公共事業部 ヘルスケアソリューショングループ、研究員.専門は医療・健康関 連事業計画、医療施設整備計画、医事法制. 井出 博生 1 9 7 2年生まれ.1 99 6年慶應義塾大学環境情報学部卒業.1 998年同大学院政策・メ Hiroo Ide ディア研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 医療・公共事業部 ヘルスケアソリューショングループ、研究員. 専門は医療施設整備計画、病院経営、医療経済. 陳 莉玲 1 9 7 2年生まれ.1 99 7年明治薬科大学薬学部製薬学科卒業.1 9 9 9年慶應義塾大学大 Rirei Chin 学院医学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリュー ション事業本部 医療・公共事業部 ヘルスケアソリューショングループ、研究 員.専門は医療施設整備計画、病院経営、臨床薬学.薬剤師. 中西 修 1 9 7 3年生まれ.1 99 8年筑波大学第三群基礎工学類構造工学主専攻卒業.2 00 0年同 Osamu Nakanishi 大学院理工学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソ リューション事業本部 医療・公共事業部 ヘルスケアソリューショングループ、 研究員.専門は病院経営、医療工学. 岩下 将務 1 9 7 4年生まれ.1 99 8年名古屋大学工学部建築学科卒業.2 000年同大学院工学研究 Masamu Iwashita 科建築学専攻修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューショ ン事業本部 医療・公共事業部 ヘルスケアソリューショングループ、研究員. 専門は施設計画、環境デザイン、医療経営. 退職給付制度と人件費の統合マネジメント 武藤 泰明 1 9 5 5年生まれ.1 97 8年東京大学教育学部卒業.1 9 80年同大学院教育学研究科修了. Yasuaki Muto 同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューション事業本部 金融・ サービス事業部長、主席研究員.専門は経営環境分析、戦略・計画策定. 筆者紹介 石塚 真理 1 9 6 3年生まれ.1 9 86年日本女子大学文学部英文学科卒業.同年(株)三菱総合研 Mari Ishizuka 究所入社.1 9 9 2年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了.現在、ビジネスソ リューション事業本部 金融・サービス事業部 経営コンサルティンググループ、 主任研究員.専門は経営戦略、人事政策、退職給付、福利厚生. 技術だけでは守れない情報セキュリティ 松尾 正浩 1 9 6 0年生まれ.1 9 84年成蹊大学工学部電気工学科卒業.1 98 6年同大学院工学研究 Masahiro Matsuo 科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、ビジネスソリューション事業本 部 ITソリューション事業部 情報セキュリティグループグループリーダー、主 任研究員.専門は情報セキュリティ、ネットワークセキュリティ. ハイブリッド・コミュニケーションとビジネス戦略に関する研究 高橋 朋幸 1 9 6 5年生まれ.1 9 87年同志社大学経済学部卒業.中央信託銀行(株)を経て1 99 1 Tomoyuki Takahashi 年(株)三菱総合研究所入社.現在、関西研究センタープロジェクトマネージャー、 主任研究員.専門は事業化コンサルティング、マーケティング. 原野 敏幸 1 9 7 0年生まれ.1 9 93年京都大学理学部物理学科卒業.1 9 98年同大学院理学研究科 Toshiyuki Harano 修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、関西研究センター、研究員.専門 はシステムデザイン、事業計画.理学博士. 崎 恵典 1 9 7 2年生まれ.1 9 96年関西学院大学理学部卒業.1 9 9 8年九州大学大学院総合理工 Yoshinori Saki 学研究科修了.同年(株)三菱総合研究所入社.現在、関西研究センター、研究 員.専門はシステムデザイン、コミュニティ運営. 173 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 三菱総合研究所 所報4 0号 特集号「経営とIT」 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 発 行 日:2002年7月25日 発 行:株式会社三菱総合研究所 〒1 00−8141 東京都千代田区大手町二丁目3番6号 電話(03)3270−9211〔代表〕 http://www.mri.co.jp/ 発行・編集:中村喜起 印 刷:エム・アール・アイ ビジネス株式会社 弊社への書面による許諾なしに転載・複写することを一切禁じます。 Printed in Japan, Mitsubishi Research Institute, Inc. 2002 3-6, Otemachi 2- chome, Chiyoda-ku, Tokyo 100-8141, Japan Tel.(03)3270-9211 http://www.mri.co.jp/ ――――――――――――――――――――――――――――――――― *この印刷物は上質再生紙を使用しています。
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