1 ディスコ 正社員向け・その他で2種類の調査票を使用。 分析結果から課題を抽出,次年度以降の施策に反映 会社概要 1937年, 広島県呉市で創業。 砥石 (といし) メー カーから出発し, 「Kiru」 「Kezuru」 「Migaku」 の三つの専門技術を活かして業容を拡大。 半導体 や電子部品などの精密加工に使われる切断・研削 (けんさく)・研磨装置, 精密ダイヤモンド工具等 に関連する事業をグローバルに展開。 半導体向け 切断装置, 研削装置で世界首位を誇る。 URL=http://www.disco.co.jp/ 本 社 資本金 従業員数 平均年齢 平均年収 東京都大田区大森北2−13−11 143億9282万9420円 1259人 (単体) 37.3歳 714万円 <2006年3月現在> ※第3582号 (03. 4.18) では, 「採用連動型インターンシップ」 と題して, 同社の取り組み事例を紹 介しています。 ポ イ ン ト ●調査の名称:ディスコ従業員満足度調査 ●導入時期:2003年度 ●内容:①対象者:パート社員等を含む全従業員 (約1900人) ②調査の概要:年 1 回, 2 月中∼下旬に実施。 ①企業理念の浸透状況, ②職場環 境, ③仕事や職場に関する満足度, ④仕事に対する取り組み意識 を把握 ③調査票の内容:外部業者提供の質問項目をベースとし, 独自にアレンジ。 主に 正社員向けのAパターン (15分野・137問) と準社員・臨時社員向けのBパター ン (11分野・67問) の 2 本立てで, 回答は無記名で実施 ④制度運用・結果分析の特徴:フィードバックを重視・徹底するほか, 分析結果 から課題を抽出し, 優先順位を踏まえて, 次年度以降の取り組み施策に反映 1 ている[図表1]。 これは, いわば 「なぜディ 制度の枠組み 2003年度以降実施し,会社と従業員の価値 交換性を高めるための課題や問題点を抽出 [1]実施のねらい スコは存在するのか」 といった根本的な問 いに対する答えを示し, 同社の価値観を体系 的に網羅したものである。 併せて設定した Management Model”では, 将来へ向け企 業活動を行う際の最も基本的な考え方につい 同社では, 1997年以降, 経営の核となり, て表明している。 ここでは, 同社の 「企業と あらゆる活動のよりどころとなる企業理念 しての成長」 を, 「売上高が大きくなる」 「事 の体系として“DISCO VALUES”を策定し 業所や従業員の数が増える」 といった単なる 60 労政時報 第3690号/06.11.24 従業員満足度調査の活用事例/ディスコ 定量的な規模の拡大ではなく, ①ディスコのミッションの実現性向上 (ミッ [2]運営部署・運営体制(外部機関の利用) ション=「高度な Kiru・Kezuru・Migaku 従業員満足度調査の実施に当たって, 経営 技術で, 遠い科学を身近な快適につなぐ」。 直属の機関 「ESコミッティ」 (経営会議メ DISCO VALUES" に規定) ②ステークホルダー=社内・社外のすべての 利害関係者との 「価値交換性」 の向上 により達成される, と定義した。 特に, ②については, 「企業は, 関係する ンバーで構成) を組織。 その分科会として 「ESワーキンググループ」 [図表2]を置き, 同グループが事務局として, 調査にかかわる 業務全般を担当している。 なお, 質問票については, 03年度の導入当 との間で価値の交換を行う社会 初から, JMAR (㈱日本能率協会総合研究 的な装置である」 との認識に基づき, こうし 所。 以下, 「外部委託業者」) が提供する社員 たパートナーとよりよい価値交換が行われる 意識調査 (http://www.jmar im.com/sect04a. ことを通じて, 企業価値の向上が図られ, 成 html) をベースにしている。 集計・分析も同 長につながる, と考えている。 社に委託した。 専門の外部機関を利用したの 様々な 人 そこで, こうした会社と従業員の価値交換 は, 性を高め, さらなる企業成長を期すべく, 課 ①匿名性を考慮し, 回答は無記名としている 題や問題点を抽出・把握するため, 2003年度 が, パソコン上で回答する場合, その集約 に 「ディスコ従業員満足度調査」 を導入した 等を社内で管理すると, 「個人が特定される [図表1]。 のではないか」 との危 惧を抱かせるケース き 具体的な把握項目は, 次のとおりである。 ① DISCO VALUES”の浸透状況 ②職場環境 ③仕事や職場に関する満足度 ④仕事に対する取り組み意識 ぐ も考えられるため, 第三者である専門業者 に外注し, 回答への安心感に配慮したこと ②同サービスを利用している他社の集計結果 をベンチマークに活用できること ③調査の実施に掛かる労力を削減できること 等による。 「会社と従業員の自律した関係なくして, ただし, 質問項目については, 03年度以降, 価値交換性の向上はあり得ません。 その価値 ほぼ全般にわたって独自のアレンジを重ねて 交換の場としての当社を, 両者にとっていか きており, 現在では, 自前の内容に近くなっ に魅力的で合理的なものにしていくか。 その ているという。 そのため, ②のような社外的 ためにこれまで,“DISCO VALUES”を核と な比較分析は難しい状況にあるが, 「まずは した諸施策を展開してきたわけですが, その 自社の実情を把握することが第一。 現時点で 成果を踏まえて, 現状を検証する材料を得た は, 質問票を固定化し, 他社との傾向比較に い。 また, こうした価値交換を向上させるに こだわることのメリットが, 質問項目のブラッ は何をすべきか, それを探る指標が欲しい。 シュアップに優先することはない」 (渡辺氏) こうした思いが本調査実施のきっかけであり, としており, やむを得ないと考えている。 目的でもあります」 (サポート本部 人財部 人事・給与チームリーダー 兼 ESワーキン はや と ググループリーダー 渡辺肇人氏) [3]調査対象,実施日程および実施方法 調査対象は, パート社員等を含む全従業員 (理事および同待遇職は除く)。 初回の03年度 労政時報 第3690号/06.11.24 61 は, 全員共通の調査票により実施したが, 04 同市内に3カ所の生産拠点を持つ) 年度以降は, 雇用形態により, 調査票を次の ● 04年度からは, 基本的に03年度の調査票を ように2区分している。 Aパターン…下記の約1300人 ● 臨時社員 (パート社員, 期間社員) 「Aパターン」 とし, 新たに加えた準社員・ 同社に在籍する正社員 (国内・海外の出向 臨時社員用のBパターンでは, Aパターンの 者・駐在員を含む) 質問項目を絞り込み, 簡略化する形で作成。 ● 嘱託社員, 特別職, グローバル社員 雇用形態により, 尋ねる項目に軽重を付け, ● 本社の準社員 調査の合理化・効率化を図った。 Bパターン (簡易版)…下記の約600人 ● 調査は年1回実施し, そのおおまかな流れ 広島準社員 (※同社は広島県呉市の創業で, は, DISCO VALUES"と同社の目指す「成長」,従業員満足度調査実施の目的 図表1 DISCO VALUES" の体系 優先度 理 念 定 義 す る 容 最上位 価値観の立脚点 社会における企業の位置付け/自社の社会における存在意義/同 社で働くことの意義 上 企業としての目指すべき 方向性 自社の社会的なミッション/目標とする企業像/自社らしい企業 活動の在り方・企業文化の特徴 経営の基本的な在り方 経営における基本原則/大切にすべき基本方針 位 中 位 経営実務における在り方・ 考え方 「経営全般」 「人的資源」 「売る」 「造る」 等, 自社の価値観を11分 類・203項目に整理・明示したガイドライン 下 位 同社の構成員の行動指針 各構成員が常に心掛けるべき行動の在り方 自社製品の在り方 同社製品の最も基本的なコンセプト 同社の目指す 「成長」 (企業価値向上) <ミッションの実現性向上> 従業員満足度調査の実施 <価値交換性の向上> 実施の契機・目的 ● 顧客, 株主 ●同社のミッション● 高度な KKM" (Kiru・Kezuru・Migaku) 技術で, 遠い科学を 身近な快適につなぐ 高度な KKM" 技術を 提供することで, 同社の 社会的使命を果たしていく 62 内 労政時報 第3690号/06.11.24 ● 同社 従業員, 取引先 地域社 会ほか 全ステークホルダーとの 価値交換のパイプを 太くしていく DISCO VALUES" の成果 を踏まえて, 現状を認識・検 証する材料を得る 会社と従業員の価値交換性を さらに高め, 一層の企業成長 を期すべく, 課題や問題点を 抽出・把握する 従業員満足度調査の活用事例/ディスコ 施については, 03, 04年度は, 原則ロータス ①質問票確定:2月中旬 ノーツ (パソコン上で使用するグループウェ ②調査実施:2月中∼下旬 (10日∼2週間 ア) による回答とした。 パソコン非保持者に 程度) とう かん は, 郵送もしくは所定の提出箱に投函しても ③データ分析, 経営報告:3月末まで らっている。 ④各部門へのフィードバック:4月下旬 一方, 05年度は, 先述した 「個人端末からで ※初回の03年度のみ, 調査実施は11月25 は, 回答者が特定されるかもしれない」 との懸 日∼12月2日。 念に対応するため, 紙ベースで実施。 所定の提 となっている[図表3]。 上記タイミング 出場所に持参もしくは郵送する形を基本とし, で実施したのは, 年度明け以降, 各職場にお 希望者や海外赴任者については, 回答データを いてES活動を開始しており, これへの反映・ Eメールにより直接, 集計・分析を依頼してい 活用も意識したためである。 る外部委託業者へ送信してもらった。 回答は任意であり, 強制はしていない。 実 図表2 ES活動の推進組識 経 営 各職場 各職場 ESコミッティ 経営会議メンバー (監査役除く) で構成 ESワーキンググループ 従業員満足度調査を実施 各職場 図表3 実施スケジュール(05年度調査時の実績) 日 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 ESグループ方針確認 05年12 06年1 2 3 4 5 [注] 役員による 質問項目の確認 質問項目設定 経営会議での結果報告 調査実施 JMARによる集計・分析 部長フィード バック 1次報告資料作成 2次報告資料作成 06年度ES活動案策定 結果報告誌 ES presso ! 3月中旬∼5月初旬にかけて, 調査結果の報告誌 ESコミッティによる ES活動案の確認・調整 発刊 (調査結果の全社フィードバック) ES presso! の編集作業に当たる。 労政時報 第3690号/06.11.24 63 [4]実施に際しての社内アナウンス 情報の守秘性に対する懸念の払拭 に取り扱い, 個人を特定することは一切ない」 旨を強調。 さらに, その翌日には, 上記案内 に対する照会が事務局に多数寄せられたこと 初回となる03年度には, 調査の趣旨・目的 を受けて, 補足説明を行うとともに, 調査期 や実施要領, 質問の概容等について案内した 間中には, 各人にFAQ集[図表4]を通知し, 文書を, 実施の数日前に対象者にEメールで 重ねて趣旨の理解, 本音での回答を呼び掛け 配信し, 回答への積極的な協力を促した。 た。 04年度以降についても, ほぼ同様の案内 ふっしょく 特に, 多くの懸念が予想される情報の守秘 性については1項設け, 「回答結果は統計的 を行い, 不安の払 拭, 回答率の向上に努めて いる。 図表4 従業員満足度調査FAQ(03年度実施時のもの。一部抜粋・編集) Q1) 調査の目的は何ですか? 現在のような厳しく, 変化の激しい経済・社会環境の中で, ディスコが成長していくためには, 様々な目標 や課題にチャレンジしていく必要があります。 それを実現するためには, 従業員の皆さんが, 持っている自分の能力をいかんなく発揮し, 成長し, ディス コで働くことの意義を高めることが, 必須条件です。 それが, ディスコと従業員の価値交換性を向上させるこ とであり, そのための課題や問題点を明らかにすること, これが今回の調査目的です。 Q2) ES(Employee Satisfaction)とは何ですか? (編注:略) Q3) 属性(勤続年数,部署等)は,なぜ聞くのですか? ディスコと従業員の価値交換性を向上させるための課題や問題点を明らかにするには, 皆さんのアンケート 結果を分析しなければなりません。 その際, ディスコ全体の傾向をつかむだけでは, 課題や問題点を解決する 具体的な方策を打てません。 職群間, 勤続年数, 部門間におけるギャップや特性を可視化すること (明らかに すること) が必要です。 そのためにお聞きしているのであり, 個人を特定したり, それにより個人を評価した りするためではありません。 Q4) Notes で調査している以上,属性を聞くまでもなく個人を特定できるのではないですか? 技術的に個人を特定することは可能です。 しかし, 個々人のデータを個別にみることは絶対にしません。 属 性を皆さんからお聞きしないと, 結果に対する分析ができないことから (例えば, 勤続年数が長い方と短い方 の仕事に対する満足度のギャップをみる), 属性を記入いただいています。 また, 個人の匿名性を担保するためにも, データの集計・分析は外部の㈱日本能率協会総合研究所に委託し ました。 Q5) 属性で部まで聞かれると,人数が少ないところは結果として,個人の特定につながりませんか? たしかに, 人数の少ない部署では, 母数が少ないので, その部署の平均といっても一人ひとりの回答結果の 影響度合いが大きいという問題はあります。 回答する皆さんの気持ちを考えると, 人数の少ない部署の方々が本音で回答していただけないのではないか と悩んだところです。 しかし, それを聞かなければ, その部門の実態が把握できません。 いくら本音で回答し ていただいても, それが結果として反映されないのではまったく意味がないことから, お聞きするほうが得策 と判断しました。 もとより属性は, 組織をよくするために確認することが目的でお聞きしています。 それを異なる目的に利用 されることがないように, 外部専門機関である㈱日本能率協会総合研究所に集計や分析, またはフィードバッ ク等を委託しています。 この調査を意味のあるものにするために, 細心の注意を払って, 集計・分析を行って いきますので, 安心してください。 Q6) 結果はどのように知らされるのですか? (編注:略 ⇒03年実施当初には活用方法等を含めて未定だったため, その旨を記載している) 以上 64 労政時報 第3690号/06.11.24 従業員満足度調査の活用事例/ディスコ 2 ている 調査票の内容 姿勢を示せば, 調査に対する回答者 の信頼感も高まると考えています」 (渡辺氏) 雇用区分別に2種類の調査票を使用。無記名 で実施するなど,個人データの守秘性に配慮 [2]質問項目 [1]氏名・属性等の記入 05年度に使用した調査票の構成 (分野) を 上述のとおり, 社員の本音を引き出すため, 調査は無記名で実施。 紙ベースであれ, パソ [図表5]に示した。 質問票は, A4サイズで 10ページ前後となる。 コン上であれ, 事務局は回答には一切ノータッ 主に正社員向けのAパターンは15分野・137 チであり, すべて送付を受けた外部委託業者 問, 準社員・臨時社員向けのBパターンは11 が管理することとした。 「安心して回答して 分野・67問 (どちらも自由回答欄を含んだ合 もらうよう, 個人データの守秘性に配慮する 計。 以下同じ)。 所要時間は, どちらも20∼ ことが不可欠」 (渡辺氏) と考えている。 30分程度である。 分析のために使用する属性は, Aパターン・ 両者の違いは, 分野区分・設問数の分量に Bパターンとも, 次の項目について尋ねてい あり, 簡易版のBパターンのほうが少ない。 る。 Bパターンでは, 仕事や自部署, 上司など, 所属 各組織の大きさを考慮のうえ, グルー 専ら職場環境に関する分野に特化し, Aパター プ・チーム・課単位で, 全65区分から選択 ンには盛り込んでいる“DISCO VALUES” 事業所 拠点のある7都市+「その他」 の8 区分から選択 など, 設問数も簡略化した。 雇用区分 ● ● や評価・処遇, 顧客志向, 行動志向等を省く ちなみに, Aパターンは, 大きく次の三つ Aパターン:「正社員 (資格別5区分)」 に分けることができる (*< >内の数字は, 「特別職等」 「嘱託」 の7区分から選択 [図表5]の各分野に対応)。 Bパターン:「準社員」 「パート (2区分)」 ① DISCO VALUES”関連<8>…継続的に 「期間社員」 の4区分から選択 年齢 観察していくべき必須項目 「19歳未満」∼「60歳以上」 まで, 10歳 刻みで6区分から選択 性別 ②職場環境・処遇関連<2, 3, 5ほか>… 会社, 職場, 上司, あるいは評価・処遇な Bパターンのみ記入。 分析上の必要 性を吟味し, Aパターンでは05年度より削 ど, 個人の目線から判断するもの ③組織風土関連<6, 9, 10, 13ほか>…会 除したが, Bパターンの対象者には, 女性 社全体にかかわる項目 が相当数に上るパート社員も含まれるため, [図表6]は, Aパターンの質問項目の一部。 引き続き把握することにした 分野全体とともに毎年見直しを重ねており, 上記のほか, 03, 04年度には, 入社年月日 今日的な課題を反映させつつ, 前年度に試み や新卒者・中途採用者の別も尋ねていたが, た施策が有効に機能したかどうか検証する。 集計上あまり有意なデータが得られなかったこ 質問項目の加除だけでなく, 質問文の表現や とから, 05年度よりなくした。 「回答者として 尋ね方についても, 随時改善しているという。 は, 聞かれているすべての属性が本当に 集 ちなみに, 03年度調査は9分野・100問でス 必要なデータなのか, 気になるところで タートし, 04年度調査 (Aパターン) では11 す。 設定している属性を柔軟に見直すことで, 分野・129問となるなど, 質問の分野・項目 計上 本当に必要な属性情報かどうか, 常に吟味し 数だけでも年々充実していることが分かる。 労政時報 第3690号/06.11.24 65 3 [3]回答方式 回答は, A・Bの両パターンとも, [図表 分析結果から課題を抽出,優先順位を 踏まえて,次年度以降の取り組み施策に反映 6]の六つの選択肢の中から一つを選択する 方式 (設問により, 一部異なる場合あり)。 外部委託業者 (JMAR) の標準的な回答方 制度の運用 [1]回答率とその評価 事務局の継続的な働き掛けにより, 調査に 式と同じ形である。 併せて, 各分野の最後に自由回答欄を設け, そのように回答した理由や補足説明, この満 対する全社的な理解が進んだこともあり, 回 答率は下記のとおり年々上昇している。 足度調査自体に対する意見のほか, 「活き活 きと働ける会社・職場づくりのために期待す 区 分 全 体 Aパターン る事項」 等についても記入してもらうように 87.1% 88.2 93.8 03年度 04 05 した。 − 86.1% 92.9 図表5 05年度調査票の構成 Aパターン 分 質 問 項目数 分 野 質 問 項目数 1 仕事 18 1 仕事 2 自部署 11 2 自部署 9 3 上司 14 3 PIM活動[注1] 7 4 能力開発 8 4 上司 6 5 評価・処遇 6 5 能力向上 6 お客様志向 6 6 倫理[注1] 11 7 PIM活動[注1] 7 7 会社[注1] 12 8 DISCO VALUES 9 8 ES調査 4 9 倫理[注1] 11 9 自社で働くうえで大事に 1 10 会社の姿勢・風土 13 11 全体 12 部下マネジメント[注1] 14 13 行動・思考[注1] 10 14 ES調査 4 15 自由記述 1 [注] 66 野 Bパターン 労政時報 1. 5 10 5 していること[注2] 10 自社で働くうえで改善し 1 てほしい・改善したいこ と[注2] 11 自由記述 1 下線は, 05年度調査で新規追加した分野。 なお, Aパターンの9 (倫理) は, 04年度の 「会社の姿勢・風土」 から独立, Bパターンの6 (倫理) および7 (会 社) は, 04年度の 「会社の姿勢・風土・全体」 を改編, 独立させたもの。 なお, Aパターンの7およびBパターンの3 (PIM活動) は, 全社的に業務の改善・ 効率化を促進するための活動 (Performance Innovative Management) のこと。 2. Bパターンの9・10は, 「職場における良好な人間関係」 「上司との信頼関係」 等の7項目から上位三つを選択・順位付けさせるもの。 3. 質問項目数は, 自由回答欄を含んだ合計。 第3690号/06.11.24 Bパターン − 93.1% 95.9 従業員満足度調査の活用事例/ディスコ 初回でも9割近くあったが, 05年度には全 体で93.8パーセントと, 9割を大きく上回っ た。 ただ, 特にAパターンなどでは, まだま には, 次の方法による。 ①速報 簡易集計をイントラネット上で公開。 だ改善の余地があるとの認識であり, 「趣旨 ②所属長(部長層)へのフィードバック (04年 説明等をさらに徹底して, 回答率100パーセ 度以降) ントを目指し, 引き続き協力をお願いしてい く」 (渡辺氏) としている。 全質問に関する部門別の回答結果等を各所 属長へフィードバックし, 今後の職場・部下 育成のマネジメントに活用。 各職場へは, 所 属長を経由しての報告となる。 この際, 渡さ [2]フィードバックの重視 れた結果をそのまま通知するのではなく, 所 回答への協力に対する最低限のリターンで 属長としてこれをどう認識し, 活かしていく あり, また, 会社は調査結果をどのように受 のか 「自分の言葉で」 まとめさせ, 報告書を け止め, どう対応しようとしているのか, 積 提出させるとともに, これを基に職場内でも 極的にアナウンスしていく必要がある 議論を深めてもらう。 と の観点から, 集計結果とその分析内容, およ びそれを受けた会社の方向性について, 全社 的なフィードバックを徹底している。 具体的 ③全社へのフィードバック 調査結果の報告誌 ES−presso! を全 員に配布 (写真参照)。 質問別の単純集計 ■調査結果の報告誌 ES−presso ! と05年度調査票 結果報告誌の呼称は, 「ES」 (従業員満足) と 「PRESS」 (出版部・印刷物) を掛け合わせ, espresso coffee" をもじって命名した。 A4判・フルカラーで, 20ページ前後 (創刊号の03年度版は, A4判2枚)。 集計結果のほか, これを踏まえた経営層・事務局間の対談も収録 (写真左)。 右側の調査票は, 手前がAパターン (正社員等用。 水色), 後方がBパターン (準社員・パート社員等用。 クリーム色)。 労政時報 第3690号/06.11.24 67 図表6 従業員満足度調査票(Aパターン:主に正社員向けのもの,一部抜粋) 目 ま っ た く そ の 通 り ど ち ら か とそ いの え通 ばり ど ち ら と もい え な い ど ち ら か と い え違 ばう ま っ た く 違 う あ て は回 ま答 らで なき いな ・い 自分は, 日頃からコストを意識して仕事をしている 5 4 3 2 1 ? 自分の仕事は, 部門目標・部門課題と関連づけられている 5 4 3 2 1 ? 自分自身の意思や希望が反映された個人目標・個人課題が設定されている 5 4 3 2 1 ? 自分の仕事を, 計画通りに確実に実行している 5 4 3 2 1 ? 経営方針に基づき自部署の目標や課題が示されている 5 4 3 2 1 ? 自部署では良い仕事をした人を讃え合う風土がある 5 4 3 2 1 ? 自部署は, 自分の意見が言いやすい環境である 5 4 3 2 1 ? 自部署メンバーは多様な考えでも互いに理解しようとしている 5 4 3 2 1 ? 上司は自部署の課題・目標を明確に示している 5 4 3 2 1 ? 上司は仕事に必要な情報をタイミングよく知らせてくれる 5 4 3 2 1 ? 上司は自部署の目標・課題達成に率先して取り組んでいる 5 4 3 2 1 ? 上司は的確な判断や意思決定をタイミング良く下している 5 4 3 2 1 ? 自分は, 自分自身の能力開発に関する課題や目標を明確にしている 5 4 3 2 1 ? 自分は主体的に専門的な (習熟した) 知識や技能の修得に努めている 5 4 3 2 1 ? 自分にとって必要な専門性を高めるための教育・研修の機会が与えられている 5 4 3 2 1 ? 当社では, CS向上に必要な教育・研修が実施されている 5 4 3 2 1 ? 自分は当社の評価基準や評価のプロセス・手順を理解している 5 4 3 2 1 ? 自分の評価には仕事の実績や能力がきちんと反映されている 5 4 3 2 1 ? 項 1 あなたの 「仕事」 についてお聞きします。 2 あなたの 「自部署」 についてお聞きします。 3 あなたの 「上司」 についてお聞きします。 4 「能力開発」 についてお聞きします。 5 「評価・処遇」 についてお聞きします。 当社は, 新しいことへのチャレンジを評価してくれる 5 4 3 2 1 ? 当社では優秀な人材がきちんと活用されている 5 4 3 2 1 ? 自分の評価には納得している 5 4 3 2 1 ? 何をすればCSにつながるかイメージできる 5 4 3 2 1 ? CS向上活動において, 部門間連携には皆が協力的である 5 4 3 2 1 ? 自部署には, CS向上活動を妨げようとする人はいない 5 4 3 2 1 ? 6 「お客様志向」 についてお聞きします。 自分のやった仕事は, お客様のCS向上に貢献していることを実感できる 5 4 3 2 1 ? 自分のCS向上につながる行動がきちんと評価されている 5 4 3 2 1 ? (編注: 7 「PIM活動」, 8 「DISCO VALUES」 は省略した) 9 「倫理」 についてお聞きします。 68 自分は, ディスコのあるべき倫理観を意識して行動している 5 4 3 2 1 ? 自分は 「非倫理的」 あるいは 「倫理規程に反する」 言動があった場合, それを 見過ごさずに報告・告発する (するつもりである) 5 4 3 2 1 ? 自分は, 性・年齢・国籍・人種・宗教等での差別を受けていない 5 4 3 2 1 ? 自部署は, ディスコのあるべき倫理観が浸透している 5 4 3 2 1 ? 労政時報 第3690号/06.11.24 従業員満足度調査の活用事例/ディスコ ま っ た く そ の 通 り ど ち ら か とそ いの え通 ばり ど ち ら と もい え な い ど ち ら か と い え違 ばう ま っ た く 違 う あ て は回 ま答 らで なき いな ・い 当社は環境変化に迅速に対応している 5 4 3 2 1 ? 当社は社員の提案・意見に積極的に耳を傾けてくれる 5 4 3 2 1 ? 当社には, 失敗を恐れず, チャレンジする雰囲気がある 5 4 3 2 1 ? 経営陣の考えていることがきちんと自分に伝わってくる 5 4 3 2 1 ? 項 目 10 「会社の姿勢・風土」 についてお聞きします。 11 「全体」 についてお聞きします。 ディスコがつくっている (創っている・造っている) 製品に愛着を感じる 5 4 3 2 1 ? 将来, 当社は発展していると期待できる 5 4 3 2 1 ? 当社への愛着がある 5 4 3 2 1 ? 当社で働いていることに満足している 5 4 3 2 1 ? ? 12 部下をお持ちの方のみにお聞きします。 部下をお持ちでない方は, 次の質問 13 へお進みください。 自分は職場の課題を明確に示している 5 4 3 2 1 自分は部下に対し, 仕事に必要な情報をタイミングよく知らせている 5 4 3 2 1 ? 自分は職場の目標・課題達成に率先して取り組んでいる 5 4 3 2 1 ? 自分は的確な判断や意思決定をタイミング良く下している 5 4 3 2 1 ? 13 自分自身のありたい姿 (行動・思考) は, A・Bのどちらに近いと思いますか。 また, 現在のあなたはどちらの行動や思 考タイプに近いと思いますか。 「ありたい姿」 と 「現在」 の両方について, それぞれ5つの選択肢からお選びください。 2.どちらかといえば Aに近い 1.Aに近い 3.どちらともいえない A 4.どちらかといえば Bに近い B 5.Bに近い ありたい姿 現在 1 限られた時間内で効率的に仕事を完了する 時間や苦労を惜しまず, 積極的に仕事を追 求する 2 ミスのない確実な業務遂行を心がけている 仕事の目的に立ち返り, 自分が何をすべき か考えるようにしている 3 達成困難な目標でも, 果敢にチャレンジし 確実な業務遂行を心がけ, 着実に業務を遂 ている 行している 4 データや事実を積み上げながら, 着実に業 多少の遊び心を持ちながら, 前例にとらわ 務を遂行している れない創意工夫をしている 項 目 ま っ た く そ の 通 り ど ち ら か とそ いの え通 ばり ど ち ら と もい え な い ど ち ら か と い え違 ばう ま っ た く 違 う あ て は回 ま答 らで なき いな ・い 5 4 3 2 1 ? 14 「ES調査」 についてお聞きします。 この調査は, 当社にとって重要な仕組みであると思う この調査は, ES向上の観点から, 自分が聞いて欲しい質問が設定されている 5 4 3 2 1 ? 昨年度の調査結果は, 自部署の職場運営に活用されていると思う 5 4 3 2 1 ? 15 自由回答:この調査についてのご意見や, 自分が活き活きと働ける会社や職場づくりのために会社に期待することがあれ ば, 具体的にお書きください。 [注] 13 を除く各分野には, 自由記入欄がある。 労政時報 第3690号/06.11.24 69 (各選択肢の比率)・対前年度比較, これを踏 施策」 に分類し, 取り組みまたは具体化へ向 まえた分野別の特徴に関するサマリー, およ けた議論に着手する。 これまでに実現した主 び属性別にみた 「同社で働くことに対する な施策は, 次のとおり。 総合満足度"」 といった集計・分析結果のほ ● クの制度化, 自己評価の実施など か, これを踏まえた社長を含む経営トップ・ 事務局担当者等のコメント・座談会録, 次年 度の取り組みテーマを掲載。 評価に対する納得性の向上策:フィードバッ ● キャリア開発支援:個々人のキャリアチャ レンジを促進するため, 社内公募制, FA 制を実施 [3]分析・課題抽出 属性別・質問項目別の集計・傾向分析等は, 外部委託業者に任せているが, 詳細な分析・ 課題の抽出等については, あくまで自社で行 うことにしている。 分析結果は, ESコミッティで議論・検討 のうえ, 次のような視点に基づき, 優先課題 (テーマ) を絞り込む。 ① 同社で働くことの満足度 (総合満足度) に対する影響度が高いもの ② ①のうち, 現在の満足度の平均点が低い 4 現行制度に対する評価と 今後 回答率100パーセントとなる土壌が, 従業員満足度向上の絶対条件 [1]現状の認識,社内評価 今年2月に実施した05年度調査で3回目を 迎えており, ①回答率が年々上向いているこ とや, ②結果を踏まえてのES活動も, 全社 ないし職場レベルで着実に進んでいること, ③課題から抽出した新施策も幾つか実現して もの ③ 会社の施策として重要と思われるもの 例えば, 04年度調査では, 上記を踏まえた 05年度の重点テーマとして, いること などから, 事務局としては, 運 用上, ほぼ定着したと認識している。 また, 社長自らが ES−presso! 誌上 コンプライアンス・倫理 で, 満足度調査に対する思いや集計結果を受 潤沢なコミュニケーション けての感想, これを通じて会社をどう改善し 能力開発 ようとしているのか 各職場におけるES向上活動 おり, こうした経営トップの熱意も, 実施へ を設定した。 の理解と定着に大きく寄与しているといえる そのほか, 各部門・職場レベルでは, 所属 などを率直に語って だろう。 長からのフィードバックを踏まえ, リーダーク 他方, 同社では, 従業員満足度を高めるに ラス以上を除く末端の社員だけで参集して, 自 は, 一方的な 「会社→従業員」 のような従業 部署内で満足度の低い項目を洗い出し, 改善 員受け身の図式ではうまくいかず, 個々人が 策を議論, 実現可能性のある施策へと具体化 「どうすれば活き活きと働くことができるか」 するなど, 小集団活動の材料として活用する。 を常に考え, 能動的に実践する 「満足行動」 へとつなげていく必要があると考えており, [4]施策への反映例 [3]に基づき, 絞り込んだ課題を 「すぐに 実施する策」 と 「次年度から検討を開始する 70 労政時報 第3690号/06.11.24 そのためにもまず, 回答率が100パーセント となるよう, 引き続き回答しやすい環境や方 法を工夫していく方針である。 従業員満足度調査の活用事例/ディスコ [2]他社へのアドバイス 渡辺氏は次のように語る。 まずは継続して実施することに意義があると サポート本部 人財部 人事・給与チームリーダー 兼ESワーキンググループ リーダー 思います。 何度か回を重ねれば, 実施する側 渡辺肇人氏 「調査の実効性を上げることも重要ですが, も回答する側も, 活用方向 調査の在り方 と その の両面で, 目指すべき運用像が少 しずつ見えてくるのではないでしょうか」 最後に, 同氏より, 調査実施に関するアド ③集計結果や実施の成果は,長期的な視点で 評価・判断する 1回や2回の実施では, 際立った変化や特 バイスをいただいた (以下, 同氏談)。 徴は把握できないかもしれません。 ②の視点 ①「何を知りたいのか,どうしたいのか」を事 とも重なりますが, 単年度の結果に一喜一憂 前にはっきりさせておく することなく, 数年のスパンで経年的に比較 調査を実施したからといって, すぐに 「従 した傾向を理解すべきでしょう。 当社では目 業員の満足・不満状況が分かる」 というわけ 下, 2010年に向けた経営ビジョンに取り組み ではありません。 「とにかく何かが分かるだ 中ですが, その基礎資料として, 調査結果全 こ づち ろう」 といった“打ち出の小槌”的には使え 般を中長期的に分析し, 当社の現状に関する ないうえ, やみくもに実施したのでは, かえっ 経営側の認識と従業員の認識のギャップを把 て何をしていいのか分からなくなります。 握できればと考えています。 「実施前の問題意識の整理が必須」 といえる ④他社との比較を重視しすぎず,あくまで「あ でしょう。 るべき自社の姿」を基準に考えるべき ②継続して実施することが重要 他社間での相対的な比較ももちろん有意で とはいえ, 最初からベストな質問票や実施 すが, この視点に偏りすぎると, 「自社でど 方法を確立することは難しい。 むしろ, 運用 うあるべきか」 の軸がぐらついてしまい, 現 を重ねる過程で, その都度内容をブラッシュ 状の問題点を見過ごし, あるいは, よい面さ アップしていけばよいのです。 え損なうことにもなりかねません。 例えば, 当社も, 初年度はそれなりの準備をして臨 質問項目 (あるいは分野) によっては他社よ んだのですが, 結局, その年だけでは期待し り低い満足度であったとしても, 自社からみ ていたほどの収穫は得られませんでした。 前 れば, それはただ 「その会社が従業員に対し 回の反省点や課題等を踏まえて, 「今回は何 て甘いだけ」 という見方もできます。 この場 が見たいのか」 をはっきりさせておかないと, 合, 単にその項目にこだわって満足度を高め, ぐ ちょく 分析や課題抽出にも厚みが出ません。 愚直に その会社を上回ったところで意味はないので 継続していくことで, 回答実績やノウハウが す。 「自社にとってどんな状況が望ましいの 蓄積され, 集計データのとらえ方や活用方法, か」 (=どの項目が何パーセントならよしと 打ち手の質・量も, より実態を反映したもの するのか) のイメージがなければ, 客観的な になると思います。 比較は難しいと思います。 労政時報 第3690号/06.11.24 71
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