原 健 の版画展 - 福岡市美術館

福岡市美術館
小作品室 常設展示No.287
FUKUOKA ART MUSEUM
は ら たけし
原健の版画展
Print Works by HARA Takeshi
2013年4月9日
(火)
~5月12日(日)
STROKES 79-16 1979年 リトグラフ・紙
版による多様な表現
ローラーボカシの発見
原 健
出品リスト
※記載は、題名(和英)
、制作年、
技法(和英)
、寸法、当館分類番
号の順である。
リトグラフによるグラデーション
ローラーボカシによる方法ですが、かって、タブロー制作では、スプレーガンを使用し、リト
グラフでは、金網とブラシによる飛沫で、苦労をしてボカシを描出していました。現在となって
は信じられないかもしれませんが、当時は、ローラーボカシによる技術は知らず、そのような方
法による作品も見られず、接する機会もありませんでした。ただ木版による片ボカシや、染色で
のボカシ法には、少なからず関心をよせていたようです。
ある日、どのような触発をうけたのか、刷りを終え、インクなどを洗浄する段になって、調色
のために出しておいた二色のインクとローラーを、いたずらしながら回転しているときに、気づ
いたようです。これは使えるのではないかと試みたのがはじまりで、まったく稚拙な技術でした
し、長いローラーもなく、ほんの短いグラデーションでした。
刻印したり描画して得るのではなく、刷りの段階で得られるグラデーションに唖然としたり狂
喜したのを憶えています。
版画で制作していますと、このような技術的発見や、不可能と思われた解決を体験することが
少なからずあるようです。
なにはともあれ、私にとり一つの技法の発見であり、そのボカシは、まったく相異なる色相の
相互浸透であり、漸次的移行としての、グラデーションそのものの提示といった表現でのコンセ
プトを、明確にして来たようです。
この二つの顔料自体の浸透はスプレーガンによる表現や、印刷での網分解によるグラデーショ
ンとも異なり、孔版でのスキージボカシ、伝統木版に見られるボカシ法と同質のものと思われま
すが、なかなか魅力ある表現提示ですし、孔版で制作したり、ローラーでインクを盛れる所から、
メタルプリント(金属凸版)で制作もしましたが、ローラーによる幾度もの版上での回転と、プ
レス圧によるインクの浸透性や、重ねによる透過性の点から、微妙なグラデーションが得られる
リトグラフでの制作が多いようです。
昨年、鋼粉にてインクをつくり、グラデーションを試みましたが、粒子が荒いため、平版では
転写できず、孔版で制作してかなりの効果が得られ、それぞれの特性と、孔版でのインクの開発
や技術の急速な進歩には再認識させられております。
しかし、このようなグラデーションは、版形式を経なければ無理でしょうし、まったくの機械
印刷では不可能と思われ、私の版画制作の支えの一つともなっている次第です。
『美術手帖』1979年11月増刊号より一部抜粋
①NO TITLE-B
No Title-B
⑥GRADUATION 72-3
Graduation 72-3
1968
1972
シルクスクリーン・紙 silkscreen on paper
リトグラフ・紙 lithograph on paper
76.5×56.3 2-E-631
76.5×56.5 2-E-638
②NO FOCUS R-6
No Focus R-6
⑦GRADUATION 72-6
Graduation 72-6
1971
1972
シルクスクリーン・紙 silkscreen on paper
リトグラフ・紙 lithograph on paper
75.6×56.3 2-E-632
76.4×56.8 2-E-639
③RELATIVITY 1-A
Relativity 1-A
⑧STROKES 74-18-2
Strokes 74-18-2
1971
1974
リトグラフ・紙 lithograph on paper
リトグラフ・紙 lithograph on paper
75.2×55.7 2-E-633
57.2×76.4 2-E-640
④NO FOCUS 71-18
No Focus 71-18
⑨STROKES 74-19-4
Strokes 74-19-4
1971
1974
リトグラフ、コラージュ・紙
lithograph and collage on paper
リトグラフ・紙 lithograph on paper
56.7×76.3 2-E-641
70.5×103.0 2-E-635
⑤WORK 72-3
⑩STROKES 79-15
Strokes 79-15
Work 72-3
1979
1972
リトグラフ・紙 lithograph on paper
リトグラフ・紙 lithograph on paper
90.5×63.1 2-E-644
66.8×97.0 2-E-637
原 健
年 譜
※ 本 年 譜 は、『STROKES- 飛
華・ASUKA 原健の作品1965-
2008』
(2008年発行 カタログ制
作事務局:原健先生退任記念の
会)掲載の年譜から抜粋して作成
した。
⑪STROKES 79-16
Strokes 79-16
1979
リトグラフ・紙 lithograph on paper
86.8×63.1 2-E-645
⑮STROKES 81-34
Strokes 81-34
1981
リトグラフ・紙 lithograph on paper
71.5×91.3 2-E-652
⑫STROKES 79-20
Strokes 79-20
1979
リトグラフ・紙 lithograph on paper
103.1×69.2 2-E-646
⑯STROKES 84-1
Strokes 84-1
1984
リトグラフ・紙 lithograph on paper
70.3×103.2 2-E-653
⑬STROKES 79-21
Strokes 79-21
1979
リトグラフ・紙 lithograph on paper
101.3×68.6 2-E-647
⑰STROKES 86-1
Strokes 86-1
1986
リトグラフ・紙 lithograph on paper
102.8×69.0 2-E-656
⑭STROKES 81-28
Strokes 81-28
1981
リトグラフ・紙 lithograph on paper
71.0×91.8 2-E-651
⑱STROKES 86-2
Strokes 86-2
1986
リトグラフ・紙 lithograph on paper
102.8×69.2 2-E-657
■略歴
1942年 名古屋市に生まれる
1967年 東京芸術大学絵画科油画専攻卒業
1969年 東京芸術大学大学院美術研究科絵画科油画専攻修了
1969年 同大学油画専攻版画研究室助手(73年まで)
1973年 東京造形大学絵画専攻専任講師
1975年 文化庁芸術家在外研修員(英国・米国、76年まで)
1987年 東京造形大学絵画専攻教授(2008年まで)
2008年 東京造形大学名誉教授
■主な個展
1967年 椿近代画廊(東京)
1968年 ウォーカー画廊(コンクール賞による/東京)
1970年 美術出版社ロビー(東京)
1972年 芸術生活画廊(芸術生活誌コンクールによる/東京)
1973年 養清堂画廊(東京)
1974年 シロタ画廊(東京、92年までほぼ毎年)
1977年 インプレッションギャラリー(メルボルン)
1978年 ソーカーカスマンギャラリー(サンフランシスコ)
1980年 番画廊(大阪)
1981年 ギャラリータピエス(神戸、以後91,94,97,2000,03年開催)
1984年 美術館松欅堂(愛知県豊田市、以後87,90,96,2000,03,06年開催)
1986年 ジャパンギャラリー(ストックホルム)
1989年 福岡市美術館[小作品室]
1993年 ギャラリー APA(名古屋、以後96,99,2002,2006年開催)
1997年 ギャラリー山口(東京、2001年も開催)
2000年 ギャラリー URANO(東京)
■主なグループ・展覧会
1960年 第23回新制作協会展(東京都美術館、京都市美術館)
1964年 第1回YAG美術展(第3回まで/愛知県立美術館)
1966年 第7回毎日現代日本美術展(東京都美術館、京都市美術館)
1968年 9ビジュアルポインツ展(村松画廊/東京)
1969年 第5回国際青年美術家展(西武ホール/東京)
第13回シェル美術賞展(東京霞ヶ関、京都市美術館)
第9回現代日本美術展(東京都美術館、京都市美術館)
アトリエC-126展(みゆき画廊、74年まで)
1970年 現代美術の動向展(京都国立近代美術館)
第7回東京国際版画ビエンナーレ(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館)
1971年 第10回毎日現代日本美術展(東京都美術館、京都市美術館)
大橋賞記念展(梅田画廊/大阪)
第7回パリ・ビエンナーレ展(フランス)
1972年 ジャパンアートフェスティバル(東京、メキシコ巡回)
第8回東京国際版画ビエンナーレ展(東京、京都国立近代美術館)京都国立近代美術館
賞受賞
1973年 第8回ジャパンアートフェスティバル(セントラル美術館/東京、ドイツ巡回)
壁面制作(東京相互銀行仙川支店/東京)
1975年 第11回現代日本美術展・招待部門(東京都美術館、京都市美術館)
日本の版画展(栃木県立美術館)
1976年 第5回イギリス国際版画ビエンナーレ(ブラッドフォード)
第12回フィレンツェ国際版画ビエンナーレ(イタリア)
駒井哲郎に捧ぐ展 アトリエC-126展(みゆき画廊/東京)
1979年 シルクスクリーン・シンポジュウム(美学校/東京)
第6回イギリス国際版画ビエンナーレ(ブラッドフォード)
1980年 日本の版画’
80展(栃木県立美術館)
原健・高山登2人展(ギャラリーすまい/福島県いわき市)
現代版画の一断面展(東京都美術館)
開廊記念〔榎倉康二・眞板雅文・原健〕展(ギャラリー山口/東京)
1981年 第1回バングラデシュ・ビエンナーレ(バングラデシュ)
世界の現代版画25年展(東京都美術館他)
タピストリー制作(京王プラザホテルホール/東京)
日本現代美術展〔70年代目本美術の動向〕
(韓国・ソウル)
1982年 第1回西武美術館版画大賞展(西武美術館/東京)
1983年 束京セントラル美術館版画大賞展・招待部門(東京)
第4回ソウル国際版画ビエンナーレ(韓国・ソウル)
画廊オープン記念・島州一・原健展(ルートギャラリー/東京)
アトリエC-126展(みゆき画廊他/ 86年まで)
1986年 近代日本の版画展(大分県立芸術会館)
1987年 今日の版画展1970年代以降(静岡県立美術館)
第2回和歌山国際版画ビエンナーレ(和歌山県立美術館)
20周年記念アトリエC-126展(みゆき画廊/東京)
1988年 第12回クラコウ国際版画ビエンナーレ展(ポーランド)
日本のグラフィックイメージ(ホワイトパイン画廊/シカゴ)
アートカイト-空舞う絵画展(日本、欧米巡回)
1989年 現代美術の展開展(東京都美術館)
第3回中国西湖国際版画ビエンナーレ(中国・杭州)
ニュージーランド国際版画展(オークランド美術館、ウェリントン国立博物館)
1990年 壁面レリーフ制作(ホテルサンライン/福岡)
1992年 現代日本の版画と写真の展開展(ルーマニア、ブカレスト)
1994年 トールマンコレクション20周年記念展(和光ホール/東京)
果実の受胎-駒井哲郎と現代版画家群像展(埼玉県立近代美術館)
クラコウ国際版画トリエンナーレ94(ポーランド)
1995年 現代版画の展望展(新潟市美術館)
日本の現代版画(ルフトハンザシティセンター/フランクフルト)
1996年 日本現代版画展(ジャパンセンター/ブエノスアイレス)
1999年 台湾・日本現代版画交流展(目黒区美術館、須坂版画美術館/長野県)
第6回アルゼンチン国際版画展(エドワルドシボリ・アートミュージアム/ブエノスア
イレス)
HANABI-未来へ輝く閃光(草月会館ギャラリー/東京)
2000年 日本美術の20世紀展〔美術が語るこの20年〕
(東京都現代美術館)
2001年 第1回現代美術絵馬展(真清田神社/愛知・一ノ宮)
アートカイトミュージアムオープニング展(ドイツ・デトモント)
2002年 文化庁芸術家在外研修35周年記念「DOMANl・明日展」展2002(安田火災東郷青児美
術館/東京)
2003年 版画・表現と技法-版画・半画・反画-展(練馬区立美術館)
2004年 「デッサンの位置」展(ギャラリー山口/東京)
版表現-創造的スパイラル(東京造形大学・横山記念マンズー美術館)
2005年 「人形」展(ギャラリー山口/東京)
現代版画の潮流展(町田国際版画美術館、松本市美術館)
壁画「ASUKA2005」設置(順天堂病院エントラスホール/東京)
2007年 On the Cutting Egde; Japanese Contemporary Prints(米国議会図書館/アメリカ・ワ
シントン)
2008年 文化庁芸術家在外研修40周年記念
「旅-異文化との出会い、
そして対話」
(国立新美術館)
小 作 品 室
2013(平成25)年度
展 示 予 定
2013年
〈物〉と〈絵画〉の相克-菊畑茂久馬《ルーレット》とその時代
5月14日~ 6月30日
施設点検・修理のため臨時休館
7月1日~ 9月30日
ヴォルス展
10月1日~ 11月24日
藤森静雄展
11月26日~ 2014年1月26日
2014年
デュビュッフェの版画-『物質と記憶』より 1月27日~ 3月30日
福岡市美術館
FUKUOKA ART MUSEUM
810-0051 福岡市中央区大濠公園1-6
1-6 OHORI PARK, CHUO-KU
FUKUOKA CITY, JAPAN
ZIP CODE:810-0051
PHONE:(092)714-6051
http://www.fukuoka-art-museum.jp