企業向けソフトウェアパッケージに対する 品質活動 - Fujitsu

企業向けソフトウェアパッケージに対する
品質活動
Quality Assurance Activities for Enterprise Application Software
Packages
あらまし
富士通は,GLOVIA製品系列として法人業務向けパッケージ製品を開発している。製品
系列として,会計・生産管理などの基幹業務系,フロント業務系,モバイル業務連携などの
パッケージ製品を有し,製品ごとに業務領域対応の機能を具備し,体系的な事業展開を行っ
ている。この製品に対する品質活動としては,製品・関係・サポート・アフター・費用対効
果の五つの品質領域を総合して「サービス品質」と位置付け,追求することを最重要ポリ
シーとし,このうち,製品品質については品質保証・改善活動で一般的な品質の確保に加え,
それぞれの業務領域で特に重要な機能や留意事項への重点的対応を展開している。具体的に
は,2006年4月のCMMIレベル3の達成など開発プロセス改善活動に加え,社内適用による
運用品質の早期向上や,顧客業務遂行上必要な高い信頼性・可用性・堅ろう性の担保,根幹
的機能要件の重点的検証の実施を行っている。
本稿では,会計系業務パッケージ(GLOVIA/SUMMIT・GLOVIA-C),およびフロント
系パッケージ(BC ContactPlus)の製品品質活動,さらに今後の改善方向について述べる。
Abstract
Fujitsu provides a wide range of business software packages for various enterprise service
fields.
In this business, we pursue the concept of service quality and make product quality,
customer relationship, in-contract support, post-contract support, and cost-performance the
most important aspects of this concept. When developing a product, we ensure it will
provide the high availability, reliability, and performance required of any business software
product and also meet the special quality requirements of the customer. Moreover, to
continuously improve our development practices, we achieve CMMI level 3, using CMMI as
a reference. In this paper, we introduce our quality assurance activities for product
development, focusing on two representative products as examples. We also introduce the
future direction of our quality assurance activities for these products.
種池一雅
(たねいけ かずまさ)
次期GLOVIA開発部
所属
現在,次期GLOVIA製品
の開発に従事。
294
岡田秀明
(おかだ ひであき)
GLOVIA 基 盤 技 術 セ ン
ター 所属
現在,SOAに対応する
サービス開発向けのフ
レームワーク確立に
従事。
向山英伸
(むかいやま ひでのぶ)
石上 浩
(いしがみ ひろし)
GLOVIA 基 盤 技 術 セ ン
ター 所属
現在,共通技術開発推進
に従事。
GLOVIA 基 盤 技 術 セ ン
ター 所属
現在,GLOVIA製品の品
質活動推進に従事。
FUJITSU.58, 4, p.294-299 (07,2007)
企業向けソフトウェアパッケージに対する品質活動
ま え が き
共有とプロセス改善の迅速化や製品品質底上げを図
るべく活動を行っている。
法人業務向けパッケージ製品市場における競合ベ
これらの活動を通して得た成果である開発プロセ
ンダのフロント/バックオフィスの統合化を進める
ス規定などを,国際的なデファクト標準と比較し欠
動 き に 対 抗 す る た め , 富 士 通 は 2003 年 4 月 に
陥や欠点を補い,さらなる向上を目指すため,
GLOVIA製品系列として基幹業務系とフロント業
CMMI(注 1 )をものさしとして利用し,より標準性を
務系製品事業を集結させた。さらに同年12月には
高めることを行った。また,当製品系列は法人業務
他社差別化を図るために,フロント業務系の一環と
パッケージであり,それぞれの業務特性に応じた品
して展開してきたモバイル系製品事業を同製品系列
質要件を有し,品質活動においては,一般的・共通
の中で独立させた。
的な品質要件に加え,製品の適用業務領域に応じた
当製品系列事業においては品質方針として,パッ
品質活動を必要とする。
ケージビジネス全般を視野に収め「サービス品質の
以降,製品系列を代表してGLOVIA/SUMMIT・
向上」を掲げている。このサービス品質には,以下
GLOVIA-C製品,およびBC製品の品質活動につい
に示す五つの品質領域を包含している。
て紹介する。
・製品品質:信頼性の高い製品,満足できる機能・
性能
・関係品質:有益な情報の提供・提言,あるべき姿
の積極提案
製品事例:GLOVIA/SUMMIT・GLOVIA-Cの取組み
現在のGLOVIA/SUMMIT・GLOVIA-C製品開発
における品質活動への本格的取組みは,2002年6月
・サポート品質:対応の迅速さ,回答の分かりや
すさ
にリリースしたGLOVIA-C V10の品質問題により,
根本対処を施す必要が生じたことに起因し,2003
・アフター品質:旧バージョン保守の継承,将来性
年1月よりスタートした。
開発作業を一時中断し,品質改善プロジェクトと
の保証
・費用対効果品質:システム価格,導入・運用コ
して取り組み,約3箇月で一定レベルまでの安定化
スト
に成功したが,その際に実施した取組みを標準化し
富士通は,これら品質領域全般に対してバランス
たものが現在のGLOVIA開発プロセスの基となっ
の取れた品質向上に組織的に取り組んでいる。
本稿では,上記5項目の内,製品品質向上につい
ての取組みを中心に紹介する。
品質保証活動概観
GLOVIA製品系列の主な開発製品には,
(1) 会計・人事・給与管理のGLOVIA/SUMMIT・
GLOVIA-C,
(2) 生産管理のglovia.com,
(3) コンタクトセンター業務系のBC ContactPlus
(以下,BC)
,
(4) モバイルソリューションのUSX(ユビキタス
サービスエクスチェンジ)
(1)
などがある。
各製品においては,基幹・フロント製品事業集結
て お り , 現 在 ま で , CGP ( Change GLOVIA
Plan)1,CGP2,CGP3の3期にわたって活動を続
けている。また,出荷後のフィールド品質を基本尺
度として品質改善尺度を設定し,お客様における運
用品質向上を第一義として取り組んでいる。
以下で,それぞれの期における主な品質活動への
取組みを紹介する。
● CGP1での取組み
れいめい
CGP1期は,活動の黎明期と位置付けられ,以下
の2点を特徴とする。
(1) 品質保証プロセス規定書の規定・厳守
1点目は,開発プロセスを見直し,標準化・再規
定を行ったことが挙げられる。
開発工程ごとに実施するべきこと,考え方,アウ
トプットなどを明文化し,「GLOVIA品質保証プロ
以前より製品それぞれの品質改善活動を実施してき
た。集結後は,個々の活動に加え,製品系列として
横通しの活動を展開し,製品間での品質ノウハウの
FUJITSU.58, 4, (07,2007)
(注1) 米 カ ー ネ ギ ー メ ロ ン 大 学 ソ フ ト ウ ェ ア 工 学 研 究 所
(SEI)が開発したソフトウェアプロセスを改善・評価す
るための指針。
295
企業向けソフトウェアパッケージに対する品質活動
セス規定書」としてまとめ,厳守することを開発に
準に,現状のプロセスを分析し,標準的な観点で今
関連する全人員に義務付けた。とくに,要件定義・
までのプロセス上の弱点を洗い出し,改善を行うこ
外部仕様設計工程での外部有識者との合意形成やプ
とを意図して取り組んだ。
ログラミング工程での対面ソースレビューなどの義
中でも,組織プロセスやリスク管理では,CMMI
務付けなど,開発プロセスとして必要な作業と生産
を参考にすることでプロセス定義が曖昧 であった
物を明記した。
ことに気づきを得,プロセスの修正を行い実地に適
これにより,開発における担当者間,会社間での
あいまい
用した。加えて要件定義や基本設計工程においては,
作業品質のばらつきを軽減した。
フィールド適用経験豊富な,顧客要求を深く把握し
(2) 定量的品質把握・評価の実施
たSEや営業担当者とのレビュー実施を更に深化さ
2点目は,定量的な品質状況の計測・評価を取り
入れたことが挙げられる。
定量的に品質状況を評価する母数確定のため,
ソースレベル・定義情報レベルに至るまで,製品・
バージョンレベル・作成者などの情報を管理するこ
ととした。さらに,GLOVIAはC言語・Java・VB
せ,後続の工程での振返りの実施など,フィールド
要件の確実な作り込みを実現した。この結果,
CMMIレベル3を達成することができた。
● CGP3での取組み(現在の取組み)
CGP3期は,成長・発展期と位置付けられ,生産
性向上の追求を同時に目標とした。
など多様な開発言語や,ListCreatorなどのミドル
CGP2までは,不足するプロセスを「付け足す」
ウェア,ツール類を多種利用しているが,すべてに
ことで高い品質確保を実現してきた。その結果とし
標準的開発ステップ数への換算法を定義し,ソース
て,品質活動の定着と自立的改善の継続がある程度
モジュール単位での障害発生率の把握を可能とした。
実践できるようになり,新たなステージとして「生
一方,品質の計測については,「開発中の品質状
産性を向上させることで更に高い品質を確保する」
況」に「製品出荷後の品質状況」の評価・分析を加
ことにチャレンジしている。具体的活動として,社
え,顧客運用時の品質について厳重な注意を払うこ
内・開発協力会社を含め,開発に携わる者全員へ作
ととした。開発中の品質状況として,単体試験工程
業月報作成を義務付け,生産活動を見える化し,大
でのソースレビューの実施時間や指摘件数,結合試
枠での現場活動の状態を分析可能とした。
験・システム試験工程でのテスト件数や障害発生件
一方,日々の作業に対して,「ソフトウェアかん
数などの計測を実施し,開発工程の進捗に従い障害
ばん方式」を使った作業の見える化を実践している
の摘出状況や残存障害状況を判断して最終品質状況
(図-1)。すべてのタスクを2時間以下の作業に区切
を推し量ることを可能とした。
り,シングルタスクにし,毎日のスクラムミーティ
出荷後の品質状況としては,製品・バージョンレ
ングによって作業者ごとの必要作業を明確にし,
ベル・作成者ごとの障害発生件数の計測,障害発生
チームで作業を把握して問題調整を行っている。生
率の高い部位の特定によって,品質的に問題がある
産性把握をリアルタイム化して問題対処が迅速に行
と判断された部位への迅速かつ適切な対策実施を可
われるようにすることで,生産性向上と品質向上の
能とした。
同時実現を目指している。また,問題解決に当たっ
● CGP2での取組み
ては,KPT法(注 2 )を採用し,グループで解決が図れ
CGP2期は,確立・自立期と位置付けられ,品質
るように「ふりかえり」を実践している。これらは
活動の定着と自立的に改善活動が継続して行われる
取り組み始めて日も浅いが,早い段階から効果も出
組織となることを目標とした。
てきており,GLOVIA製品系列のほかの製品事業
「定義する」ことよりも「継続する」ことの難し
さに意識を払い,愚直に「GLOVIA品質保証プロ
セス」を遵守することに取り組んだ。さらに自立的
な改善活動への具体的な取組みとして,CMMIレ
にも展開する計画となっている。
製品事例:BCの取組み
BCは,コンタクトセンターの構築支援パッケー
ベル3達成を目標として活動した。これは,CMMI
が示すプロセス領域ごとに定義されたプロセスを基
296
(注2) Keep,Problem,Tryの三つの視点で見る継続的改善技
法の一つ。
FUJITSU.58, 4, (07,2007)
企業向けソフトウェアパッケージに対する品質活動
ソフトウェアかんばんに
カードを貼って作業状況を表す
作業カードに2時間単位で作業を書く
担当 佐藤
作業予定(全体)
作業見積
実施時間
納期
実施日
内容
佐藤
担当 丸山
作業見積
納期
丸山
担当 山本香
実施日
内容
作業見積
実施時間
納期
山本
実施時間
実施日
担当 松浦
内容
松浦
作業見積
納期
実施時間
実施日
内容
作業予定(本日分)
作業中
佐藤
作業カード枚数の日々の推移で生産性を見る
丸山
作業カードの枚数推移(生産性をはかる)
作業カードの枚数推移(生産性をはかる)
山本
60
松浦
20
18
佐藤
丸山
山本
松浦
出欠
作
業
カ
|
ド
出欠
出欠
出欠
残
業
時
間
16
14
40
12
30
10
8
20
作業者数
(人)(人)
作業者数
作業カード枚数 (枚)
作業実績 3月20日(火)
作業カード枚数 (枚)
50
6
4
10
2
0
1 11 1 1 11 1 1 11 1 11 1 1 11 1 1 11 1 11 1 1 11 1 1 11 1 11 1 1 11 1 1 12 2 22 2 2 22 2 22 2 2 22 2 2 22 2 33 3 3 33 3 3 33 3 33 3 3 33 3 3 33 3 44 44 44 4 4 44
2 22 2 2 22 2 2 22 2 22 2 2 22 2 2 // / // / / // / / // / // / / // / / // / // / / // / // / / // / / // / // / / // / / // / // / / // / / // / // // // / / //
/ // / / // / / // / // / / // / / 12 3 45 8 9 11 1 1 11 1 12 2 2 22 2 3 31 2 56 7 8 91 1 11 1 1 22 2 2 22 2 12 5 6 78 9 1 11 1 11 2 2 22 2 2 22 3 23 45 69 1 1 11
0
予定(枚) 0 0 0 0 152020182020202020182020202010 0 0 0 0 2020 0 202018152015202015242424241824212424182424242421242424242424242424242424242424242424242424242424242424242424242424242424242424242424242424
実績(枚) 0 0 0 0 21282012212123231716384 5 1219
2118 21131616251521171423 6 6 201217191318142322131523
人数(人) 0 0 0 0 3 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 2 0 0 0 0 4 4 0 4 4 4 3 4 3 4 4 3 4 4 4 4 3 4 4 4 4 3 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4
月日
図-1 KAIZEN活動例(ソフトウェアかんばん方式)
Fig.1-Example of KAIZEN’s acting (software just-in-time system).
ジである。
証する客観的な立場の人や,業務,デザイン,セ
主な特長は,コンタクトセンターで利用度の高い
キュリティなどに専門的な知識を有する人にも利害
業務機能(お客様相談室,ヘルプデスク,キャン
関係者として関与してもらい,トータル品質を高め
ペーン)を実装するとともに,適用業種に固有の業
ることを企図している。具体的には,お客様にモデ
務機能(例:テレフォンバンキング,受注)と柔軟
ルユーザになっていただき新機能を開発したり,富
につながる仕組みを具備していることである。これ
士通の専門部署にデザイン,高速検索の設計,セ
により現在,銀行,保険,401k,通信,消費財
キュリティ/マニュアル検証などの専門作業を委託
メーカ,薬品メーカなど,広く様々な業種業態のお
したりするなど,富士通のカスタマベースや高いノ
客様にご利用いただいている。直近では,某大手地
ウハウ保有者が関与するなど,富士通の総合力を生
銀様の大規模コンタクトセンターのリプレースをお
かすことでパッケージに要求される多様な側面にお
手伝いさせていただき,「短期構築と信頼性向上に
ける品質を追求している。
大きく貢献した」と高い評価を受けている。
以下に,著者らがBCの開発を通じ実施している
主な品質活動を紹介する。
(1) CMMI活用(多様な利害関係者の関与を得た
活動実践)
(2) 接続性と操作性の向上
コンタクトセンターは,企業にとって「お客様か
ら見える顔・接点」である。このためコンタクトセ
ンターシステムに求められる品質のうち,「接続性
(お客様の電話に確実につながる)
」と「操作性(お
著者らは,CMMIをベースにパッケージ固有の
客様との応対を迅速に行う)」は特に重要な要素を
ニーズを加味した指針を策定し品質活動を実施して
占める。著者らはこの二つを実現するために様々な
いる。
工夫を凝らした。代表的な例は,電話基盤と画面ア
とくに重視しているのがCMMIのプラクティス
の一つである「直接の利害関係者を特定し関与させ
る」ということで,開発に際し品質やプロセスを検
FUJITSU.58, 4, (07,2007)
プリケーションとの業務的な融合とシステム的な分
離の両立である。
これにより,通常運用時にはオペレータの電話操
297
企業向けソフトウェアパッケージに対する品質活動
プロモーションチーム
開発チームの顔
Mr.BCサポート
お客様・SE
メール
受付・回答
対応案件管理
導入サポートチーム
サービス
検討
インシデント
BC開発チーム
[プログラム品質改善]
品質・進捗管理
インシデント低減チーム
[ドキュメント品質改善]
BC画面
インシデント管理グラフ
図-2 BCを使って実現しているBCサポート業務
Fig.2-BC support business has been achieved by using BC.
作を画面アプリケーションと連動させ操作性を向上
使用性の改善点への早期の気づきを当事者意識とと
させる一方,サーバダウンなどの異常発生時には,
もに実現し,改善スピードの向上を企図している。
画面は使えなくてもお客様との通話だけは継続させ
これらの取組みを通じ,実運用の視点でBCの品質
ることを可能にすることで,高い接続性を実現した。
を強化してきただけでなく,机上やヒアリングだけ
このように,開発・検証作業においては業務特性の
では気づかなかったニーズを発掘し,強いパッケー
保証に留意し,品質確保に努めている。
ジ作りにつなげている(図-3)。さらに,これらの
(3) 社内実践
現在,製品・サービスの総合お問合せセンター
(富士通コンタクトライン,お客様総合センター)
や,営業支援を目的としたお客様へのアウトバウン
ド業務などでBCを利活用してもらっており,富士
通のVOC活動(注 3 )や新規商談開拓に寄与するととも
業務をソリューションとして語れるノウハウ,資産,
人材を確立できていることは,お客様に対し,新た
な価値を提供できる礎となっている。
全般状況と今後の活動
本章では,品質改善活動の全般状況と今後の活動
に,これらのセンターからの要望を定常的に吸い上
について述べる。
げ,BCの機能強化を行っている。また,BCを購入
● 組織的品質改善活動の全般状況
されたお客様や担当SEから開発元宛に,問合せや
GLOVIA製品系列における品質改善活動の取組
要望をいただく受付・対応業務に,著者ら自身で
みとして,GLOVIA/SUMMIT・GLOVIA-C,BC
BCを実践活用している。具体的には,問合せや要
ContactPlusを中心に紹介した。これら2製品群に
望に対する対応状況管理,エスカレーション管理,
ついては,CMMIレベル3達成過程において得た開
インシデント一覧の帳票出力,傾向分析などをBC
発プロセスを定着させ,さらなる改善に向けた新規
。
の機能により実現している(図-2)
活動の取組みを開始した。一方,glovia.com製品に
このように,提供元自らが製品を利用することで,
ついては,富士通100%子会社である米国GII社に
対し,日本で培った品質活動の成果を海外における
(注3) Voice Of Customer(お客様の声)活動のこと。
298
開発にも生かすべく,日本からの技術者派遣を含め
FUJITSU.58, 4, (07,2007)
企業向けソフトウェアパッケージに対する品質活動
サポート業務の型決めソリューションとして,お客様へ提案
DO
PLAN プロセス
運用
定義
ポリシー
策定
体制
組成
運営
実施
キック
オフ
業務内容
KPI ★
周知
(教育)
プロセスRAM表
業務フロー
CHECK
ACTION
分析
改善
指導
受付
製品品質
製品品質
一次切分け
サポート品質
サポート品質
生産性
障害
対応
問合せ
対応
メンバ割当て
進捗
回答
PDCAサイクルによる継続的な改善
★:重要業績評価指標
図-3 BCサポートの業務サイクル
Fig.3-Business cycle of BC support.
た展開を実施している。
きた。
そのほかの製品群についても,それぞれの製品に
2007年度以降は,これら二つの活動を統合し連
適合した形で,独自の品質活動を展開してきたもの
動性を高めることで,機能要件・非機能要件に合わ
の,共通品質活動とのリソース共用やプロセス共有
せた総合的な品質の向上を実現する方向で,具体的
による手番の効率化などの面で,改善の余地が残さ
活動内容を検討している。
れている。
● 方向付け
2007年度以降は,以下の二つの活動を開始する
予定である。
例えば,ソフトウェア開発の途中段階で,サポー
ト部門による運用性確認試験の実施や,サポート部
門による顧客運用形態・条件の資料化とそれに基づ
いた開発部門によるサンプル試験の実施などである。
(1) 新規品質活動への取組み
む
昨今の,
「短納期開発への要求の高まり」
,
「Web2.0
す
び
やSOAに代表される機能提供・機能組込みなどの
以上述べたように,GLOVIA製品系列における
新パラダイムへの対応」,「Agile型に代表される新
品質活動は「提供ソフトウェアパッケージのサービ
ソフトウェア開発・マネジメント手法の隆盛と浸透
ス品質の向上をお客様の立場で徹底的に追求する」
などに,より適合性の高い品質管理・改善手法の取
という品質方針のもとで着実に活動を継続展開して
組みの適用」
,
「ソフトウェアかんばん方式」などの
きた。今後も,当方針に加え,社会有用性や創造性
一部の製品群で実施している管理手法の当製品系列
に磨きをかけ,より良いサービスをお客様に提供で
内水平展開を意図している。
きるよう更なる活動の活性化を図っていく所存で
(2) サポート品質向上活動の協調実施
ある。
当製品系列における品質改善活動は,ソフトウェ
ア品質向上を中心に据えて実施してきた。一方,サ
参 考 文 献
ポート業務についても,コンタクトセンター業務に
(1) GLOVIAホームページ.
おける,レスポンス時間短縮などを目標に実施して
http://glovia.fujitsu.com/
FUJITSU.58, 4, (07,2007)
299