ITUの学術団体メンバーとは - ITU-AJ

ITUホットライン
ITUの学術団体メンバーとは
お び
事務総局長アカデミア特別代表(早稲田大学教授)
とし お
小尾 敏夫
「アカデミア」会員数で日本がトップに
現在国際電気通信連合(ITU)が創設したアカデミア会
員には世界で66大学が加盟している注1。2011年1月の創設当
第4に、参加における加盟費は先進国の大学・研究所がセ
クターメンバーの16分の1、途上国の参加大学などの場合、
同32分の1の額とする。
初は早稲田大学や中国の清華大学など12大学だったから順
第5に、大学・研究所などの申請には加盟国政府の推薦
調に参加大学は増えている。2013年12月10日現在の国別参
が必要とされる。また、既存セクターメンバーがこの特典を
加大学数を調べたら、日本が5大学加盟と世界のトップであ
代用することはできない。
った。2位がインドと中国の4大学ずつである。3大学加盟国
さらに、理事会への要請として、
としては米国などが続く。66大学の国別加盟状況は下記ア
1. この手続の追加情報の作成を行える。
ドレスで参照できる。
2. 次の2014年全権委員会議に3局の諮問委員会による評
価レポート作成に基づき、決定を行う。
http://www.itu.int/online/mm/scripts/mm.list?_
search=UNIV
3. セクターメンバー(通信事業者、ICT企業など民間会
員)と同様に、学術団体メンバーは国際電気通信連合
(ITU)の行事に全て参加できるが、決議事項などへの
具体的に、日本の5大学とは、早稲田大学(窓口は松本
政策決定の権利は持っていない。
研究室)、東京大学(中尾研究室)、京都大学(梅野研究
4. 大学・研究所も新会員加盟の決定プロセスはアソシエ
室)
、東海大学(中島研究室)
、北陸先端科学技術大学院大
イトメンバーと同じ、さらに、加盟費の算出や加盟許可
学(丹研究室)である。国際電気通信連合(ITU)は3局に
条件の変更については、2014年の全権委員会議に報告
事業部門が3区分されているので、加盟大学は早稲田大学、
する。
東京大学、北陸先端科学技術大学院大学が標準化局、京
5. 世界無線通信会議、世界電気通信標準化会議、世界
都大学が無線局、東海大学が通信開発局の加盟となってい
電気通信開発会議にて諮問委員会は追加情報が必要か
る。
を討議し、必要ならば、担当の3局長から理事会に報告
してもらう。
6. 最後に、事務総局長及び3局長はこの決議承認に基づ
国際電気通信連合(ITU)に新学術団体会員制度の創設
2010年10月、メキシコで全権委員会議が開催され、大
学・研究所・アカデミア、いわゆる学術団体に関する新メン
き必要な行動を執ることとする。
このように、前回の2010年メキシコ全権委員会議では学
術団体向けの新会員制度のルールを決定したわけである。
バーシップの決議がなされた。その決議169号の承認項目の
骨子は下記のとおりである。
第1に、大学及び研究所の研究開発、技術進歩が国際電
気通信連合(ITU)活動に貢献する点を鑑みて、この新会
員制度の創設に踏み切った。
参加大学へのアンケート結果
現在の学術団体、大学会員リストは表にまとめてある。国
際電気通信連合(ITU)の加盟状況は、政府加盟国数が
第2に、大学、研究所などの学術団体の科学技術面の貢
193、民間団体・企業のセクター・メンバーが448、そして今
献は、財政支援面の協力以上に、高い評価ができる実績内
回の新学術団体[アカデミア]メンバーが66(複数局に参加で
容を有している。
きるので、ITU-Dが16、ITU-Rが15、ITU-Tが46)である。
第3に、この資格による参加は、国際電気通信連合(ITU)
アカデミア会員制度が新設された2011年の秋にジュネーブ
憲章の修正なしに、2014年秋に開催の次期全権委員会議
で「ITUテレコム」が開催された。この機会を利用して、ア
(ソウルで開催される)までの試行期間とする。
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ITUジャーナル Vol. 44 No. 2(2014, 2)
カデミア会員制度説明会を会場で実施した。ザオ事務総局
次長と私が順次説明を行い、テレコム参加の大学代表やス
ピーカーの大学教授たち15名が集まり、彼らに加入を呼びか
けた。
2012年には南アフリカで年1回持ち回りのKaleidoscope
(カレイドスコープ)セミナーが開催されたので、ワン・セッ
ションをアカデミア会員説明会に充ててもらった。2014年は
6月にロシアのサンクトペトルブルグ市で開催される。
さらに、ハマドン・トーレ事務総局長やマルコム・ジョン
ソン標準化局長をはじめ幹部が世界各地のイベントに参加す
る際に各国で大学関係者と会い、アカデミア会員への参加を
呼びかけてきた。
ITU事務総局長アカデミア特別代表の就任式
2013年に入って、私は実際の加盟大学のニーズを理解す
るため、53会員大学にアンケートを送付して、6項目の質問
た。参加大学数は29大学、参加者は約70名に上った。参加
に回答してもらった。締切りの夏に23大学が回答してくれた。
大学は自校の活動紹介を中心にプレゼンを行い、参加者間
その内容を要約すると下記のようになる。質問は「会員にな
のネットワーキング構築の時間もたっぷり取った。昼食会は
るきっかけは」
「現在までの参加活動の紹介」
「アカデミア会
トヨタ、夕食会はNTTがスポンサーになってくれた。日本か
員中心の機関紙は必要か」
「アカデミア向けフォーラムやワ
らは東海大学の中島功教授が研究活動発表、早稲田大学か
ークショップの開催は有益か」
「活動で提案したいこと」で
らは松本光司教授が出席できなかったので岩崎尚子准教授
ある。
「会員になった便益は何か」との問には、
「国際電気通
がプレゼンをした。タイはタマサート大学副学長、中国は北
信連合(ITU)が発表する資料などが一般への公表前に入手
京大学の楊学部長、シンガポール国立大学はスー・ウェイー
できる」
「いろいろなイベントに無料で参加できる」
「各局が
所長、米国のジョージメイスン大学のJ. オーフレット学部長、
運営している分科会、タスクフォースなどに積極的に出席し、
フィンランドのトルク大学スオミ教授、インドネシアのバン
貢献できる」
「3局がそれぞれ主催するカレイドスコープなど
ドン工科大学スホノ所長をはじめ多彩な顔ぶれであった。
独自の国際ワークショップで発表できる」
「企業や政府との
交流に役立つ」などの意見が寄せられた。逆に課題としては、
また、このアカデミア会員制度の周知徹底を図るために、
ITU事務局が毎月発行する「ITUニュース」の特集号を2013
「ジュネーブなどでの国際イベントに参加旅費が欲しい」
「遠
年12月号として発刊してもらった。パトリシア編集長と本部
隔地区とのテレビ会議などICTをフルに活用して低コストの
で2回会合し、内容を確認して、アカデミア会員大学に研究
運営を試みて欲しい」
「アカデミア対象のホームページを作成
論文投稿の募集をかけたら12大学が応募してきた。日本、
し、交流を深めたい」などのコメントをいただいた。
チェコ、タンザニア、ブラジル、コロンビア、デンマークなど
からの投稿であった。私を委員長に12名から構成された編集
顧問委員会を組織し、清華大学、デンマークのアーボルグ大
第1回アカデミア会員交流会議のバンコク開催
そして、2013年11月19-22日にバンコクで「ITUテレコム」
学などから委員を出してもらった。この編集顧問委員会が内
容に関してチェックしてから編集に入ったが、第1号が予定
が香港開催に次ぎアジアで2回目として開催された。それに
どおり12月に電子版で発行できたのは喜ばしい限りである。
合わせて国際電気通信連合(ITU)事務総局長特別代表で
次回は2014年6月をめどに発刊予定である。
ある私の要請でタイ政府(情報通信省)
、タマサート大学が
最後に、国際電気通信連合(ITU)が唯一学術団体をメ
中心になって20-21日の2日間アカデミア・ワークショップを
ンバーにする国連機関であり、この分野の産官学連携の重要
開催してくれた。
な舞台の主役として登場しただけにその成果を期待したい。
開会式にはトーレ事務総局長、アンディヌス・タイ情報通
信大臣のスピーチがあり、全体会議では私とスラチャイ・タ
イ情報通信省事務次官、国際電気通信連合(ITU)アジア
(注1)数字はいずれも執筆時(2013年末)のデータに基づい
ている。
太平洋地域事務長のユージン・キム女史の基調講演があっ
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