(木) 第2回県立広島大学運営協議会(59KB)(PDF文書) - 広島県

第2回県立広島大学運営協議会議事録
1 日 時 平成 18 年 11 月 2 日(木)午前 10:00∼11:20
2 場 所 広島市中区基町 10 番 52 号
広島県庁北館 2 階 第 2 会議室
3 出 席 委 員 高橋委員,松坂委員,古賀委員,松井委員,谷委員
4 議 題 (1) 県立広島大学の平成 17 年度業務実績の評価について
(2) その他
5 担 当 部 署 広島県県民生活部総務管理局大学企画管理室法人化担当
TEL(082)228−2111(内線 2753)
6 会議の内容
事務局 皆様,おはようございます。開会に先立ちまして,山本県民生活部長がごあいさつを申し
上げます。
山本県民生活部長 おはようございます。県民生活部長の山本でございます。開会にあたり,一言
ごあいさつを申し上げます。皆様には大変お忙しい中,ご出席をいただき,誠にありがとうご
ざいます。本日の県立広島大学運営協議会では,昨年度,県立広島大学の業務実績の評価につ
いてご審議をいただくこととしております。昨年の4月に,旧3大学を再編・統合いたしまし
て,県立広島大学を開設し,1年7か月が経過しております。「地域へ根ざした県民から信頼
される大学」の実現を目指して,赤岡学長のリーダーシップの下で,様々な改革に取り組んで
いるところでございます。本日は,その内容について,後ほどご説明をさせていただきます。
また,来年の4月には,公立大学法人への移行を予定しております。法人化のメリットを最大
限に活かしながら,時代や地域社会のニーズに的確に対応できる大学を目指して,さらなる改
革に取組んでまいりたいと考えております。委員の皆様には,本学の取組みや今後に期待する
ことなどについて,どうか忌憚のないご意見・ご評価をいただきたいと考えております。引き
続き,県立広島大学の改革や法人化にご支援いただくことをお願い申し上げまして,私のあい
さつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
事務局 本日は,今年度初めての会議でございます。事務局の者も昨年度と換わっておりますので,
委員名簿に沿って皆様のご紹介をさせていただきたいと思います。アカデミーヒルズ理事長の
高橋潤二郎様でございます。社団法人中国地域ニュービジネス協議会会長の松坂敬太郎様でご
ざいます。広島大学大学院教育学研究科教授の古賀一博様でございます。生涯学習NPOラー
ニングネットひろしま共同代表の松井純子様でございます。公認会計士の谷宏子様でございま
す。続きまして,出席者を紹介させていただきます。県立広島大学,赤岡学長でございます。
県立広島大学,宮本事務局長でございます。山本県民生活部長でございます。県民生活部,郷
力総務管理局長でございます。それでは,ただ今から,第2回県立広島大学運営協議会を開催
いたします。これからは,高橋会長に司会進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いい
たします。
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会長 本日は,平成 17 年度の業務実績の評価をするわけでございますが,円滑な議事進行にご協
力をお願いしたいと思います。同時に,真摯な形で評価をお願いしたいと考えております。そ
れでは,議事に入りたいと思います。まず,議題の「(1)県立広島大学の平成 17 年度業務実
績の評価について」でございますが,この平成 17 年度の業務実績について,大学から点検・ 評
価の結果が提出をされております。ここで赤岡学長が出席でございますので,大学の運営状況
について,学長からお話をいただきたいと思います。
学長 どうも,赤岡でございます。「地域に根ざした県民に信頼される大学」ということでやらせ
ていただいているわけでありますが,第1番目に,運営の透明性,開かれた大学の運営という
点で,評議会に企業の会長と国立大学の教授の方にご参加いただきまして,月に1回,評議会
を開催させていただきまして,適宜ご意見を伺いまして,経営をやらせていただいております。
2番目に,キャンパスが庄原,三原,広島の宇品ということで遠く離れているものですから,
遠隔講義システムを大いに活用させていただきまして,教授会,運営会議等もそういう遠隔講
義システムで行わせていただくときもございますし,講義も遠隔講義システムを活用するのが
たくさんございますけれども,だいぶ使い方もうまくなってきたと思っております。ただ,ち
ょっと画面が1画面であることと,容量の関係なんですが,解像度と明るさに,やや難があり
まして,余裕が出てくれば,そこのところを改善できれば,もっといい授業ができると思って
います。3番目には,教育面でありますけれども,教員の教育力を高めるためのファカルティ・
デベロップメント,教員のFD研修会を開催しておりまして,内容は相当良くなってきている
のですが,回を追うごとに,出席状況が,やや下がり気味でありますので,これは改善をしな
ければと思っております。しかし,学生による授業評価も実施しておりまして,その結果を先
生方にお返しし,それとFD研修会が相まって,学生の満足度は 80 パーセントぐらいと,か
なり良くなってきたというふうに思います。4番目ですけれども,文部科学省が,全国の国公
立・私立大学が実施する優れた教育というのを選定する,現代的教育ニーズ取組み支援プログ
ラム,現代GPと省略しておりますけれども,それに今年,本学が2件採択されまして,国立
大学では広島大学さんを含めて5大学,公立が私ども1つ,私立が4つというわけで,この点
ではよい成果が出てきたと思っています。これが出てきましたのは,先生方が,去年は申請書
を書き直したり,ヒアリング前に予行演習というのが元々ございましたが,今年は申請書を何
回も書き直してくださったことと,予行演習を私たちや副学長や事務局長の前で予行演習をし
て,そういうことができるようになったことが非常にうれしいと思っております。研究面では,
文部科学省の科学研究費補助金というものへの採択というのが,これが大学の研究の質を一番
表しやすいと思いますけれども,採択件数自体は,まだ 48 件とそれほど多くはないのですけ
れども,申請率は 85 パーセントになりました。48 件というのは 73 公立大学がございますが,
その 14 番目ですので,いいほうであるとは思いますが,しかし,さらに採択率を上げたいと
思っておりまして,今年は,その採択率を上げるために教員の意見交換会をやらせていただい
ております。6番目に,地域貢献は連携協定を2つの自治体と3つの金融機関,1つの商工団
体と締結させていただきまして,実際に公開講座とかシーズ・ニーズのマッチングだとか,そ
ういったことを実際にやっておりますので,これはありがたいと思っています。ユニークなの
は,金融機関である広島銀行さんが美術館をお持ちなものですから,提携を結ぶときに,美術
館ともいっしょにやりたいんですが,と申し上げたものですから,美術館で,こちらの教員と
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美術館の学芸員の方がペアを組んで講義をやりまして,これは非常に申し込みが多くて,抽選
でお断りした方がかなりございました。今度は,お子様連れで,特に,乳幼児も抱いて講義を
していただこうと,お母様方が来やすくしたいということで,絵本の世界というのを,これは
大学のほうでやりましたら,お母様方が赤ちゃんを抱いて参加できるのは非常に安心だそうで,
これもうまくいったと思います。地域貢献活動がそういう状況でございます。7番目ですが,
今,法人化に向かって動いているのですが,教員との意思疎通の会を何度か持っておりまして,
おおむね順調に進んでいると思います。
会長 どうもありがとうございます。それでは,大学の自己点検と評価の報告,それに対する事務
局の評価試案について,事務局からご説明をいただきたいと思います。
事務局 評価試案について説明させていただきます。資料1は,「平成 17 年度業務実績に係る点
検・評価」でございますが,一番左に「評価・点検項目」,その隣に「認可事項」と書いてお
ります。これは,平成 15 年9月に策定しました「新県立大学基本構想」に掲げた目標でござ
います。その中で文部科学省に設置認可申請したものを掲げております。この認可事項の達成
状況について評価していこうということでございます。真ん中に書いております「県立広島大
学による自己点検・評価」,これが大学の自己点検評価でございます。これをベースに,一番
右が本運営協議会で行う点検・評価ということで事務局試案を書かせていただいております。
この中で,大学による自己点検評価の中で成果と今後の方策を整理しております。「運営協議
会の試案」として,成果と今後の課題を整理しております。
まず,全体評価という部分でございますが,これは最後に説明させていただくとして,項目
別評価から説明させていただきたいと思います。まず,「(1)新県立大学が目指す教育」でご
ざいますが,認可事項の中では,教養教育について,「全学共通科目」を設定し,専門教育と
のバランスのとれた教育内容を提供していくという目標を掲げているわけですけれども。これ
に対する大学の評価としましては,総合教育センターを設置し,体系的な教育システムの確立
が可能な体制を敷いたということが,まず1つ。2つ目は,全学共通教育を開設した。3つ目,
外国語教育につきましては,CALL教室,これはコンピュータを使った語学学習のシステム
でございますけれども,これを整備しました。と同時にTOEICのテストを単位認定に導入
しました。4つ目,これは情報基礎教育でございますが,これは1年生を対象に「情報処理入
門」あるいは「情報科学入門」という授業を設定しております。次に,新入生に対して導入教
育ということで,フレッシュマンセミナーを必修として展開しております。課題としましては,
まず,外国語教育については,学生の様々なレベルがありますので,それに対応した選択科目
の選択や e ラーニングの活用について検討する必要があること。課題の2つ目,情報基礎教育
ですけれども,これは学生のスキル以前に,教員のスキル向上といったものが必要である。そ
れと各種認定試験,たとえば,初級シスアドの資格,そういった試験対策の支援が必要である。
課題の3つ目は,大学で学んだものが将来の進路につながっていくようなキャリア教育を充実
していく必要があるというふうに評価されています。これに対して,事務局の試案としては,
まず,成果として,大学の基本的な目的である「主体的に考え,行動し,地域社会で活躍でき
る実践力ある人材」を育成するため,「全学共通科目」及び「専門科目」を設定し,特に,
「全
学共通科目」では,大学生としての学習方法等を修得させるため,初年時に,「フレッシュマ
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ンセミナー」を必修とするなど,積極的に導入教育に取り組んでいく,としております。一方,
課題としては,教育の成果が進路につながるよう,「フレッシュマンセミナー」等を活用して,
早期からのキャリア教育に取り組む必要があるとしております。
2ページの「①遠隔講義システム」,ここからは教育に関する個別の内容ですが,遠隔講義
システムについて,大学の評価は,先ほど学長から説明がありましたが,遠隔講義システムを
導入し,多様な授業を提供しております。ただ,課題としましては,教員のプレゼンテーショ
ンの方法,これはもっと改善する余地がある。これに対する事務局の試案としては,キャン パ
ス分散型大学の不利を克服するために導入した遠隔講義システムは,18 科目で2千人を超え
る受講者が利用しており,各キャンパスの特徴を活かした多様な科目を提供している。課題と
しては,先ほど学長が言われましたように,遠隔講義システムの解像度の問題とか老朽化の問
題がございます。
続いて,「②授業方法」でございます。ここでは,シラバスの充実であるとか教育活動の評
価,授業内容・方法の改善といったことを認可事項として掲げておりますが,まず,「ア シ
ラバスの充実」に関する大学の評価としては,コースカタログを作成し,シラバスについては,
各教員全員に作成を課し,その公開に努めております。課題としては,こういったコースカタ
ログ,シラバスの作成・公開をさらに徹底する必要がある。シラバスの公開については,昨年
後期では 100 パーセントではありませんでしたので,公開をさらに徹底する必要があるという
ことでございます。さらに,学内LANを活用した補助教材,e ラーニングや休講・補講等の
情報提供システムを整備する必要があるということを掲げておられます。これに対する事務局
の試案としては,授業方法の改善では,シラバスの作成・公開,学生による授業評価及びファ
カルティ・デベロップメントについて積極的に取り組んでいます。課題としては,シラバスの
内容を全教員がより細かく,わかりやすく記述することが必要であるとしております。
「イ 教育活動の評価」というところでは,学生による授業評価を実施しております。これ
は,昨年,後期のすべての授業でやりました。その結果,総合的満足度は,8割以上の学生が
肯定的な意見でございました。ただ,課題としては,そういった授業評価の評価基準や尺度の
妥当性,評価結果の活用法について,さらに改善していく必要がある。もう1つは,こういっ
た授業評価が形骸化することなく,授業改善のための授業評価に発展していくことが必要であ
るということを掲げております。
「ウ 授業内容・方法の改善」のファカルティ・デベロップメントというのは,教員による
授業改善の取組でございますが,ファカルティ・デベロップメント研修会を昨年度は2回実施
しております。2つ目は,学習者自らが英語学習に取り組むためのCALL教室を設置したこ
と。これに対する課題としては,学長からも先ほどございましたように,まず,このFD活動
というのが,まだ授業改善の必要性が認識された段階にとどまっているので,教員の意識改革
と組織的な教育向上のための循環システムを構築する必要があるとされております。これに対
する事務局試案としましては,ファカルティ・デベロップメントは,教育効果の向上を図るた
めに最も重要な取組であるが,その研修会への教員の出席率は高いとはいえない。今後さらな
る教員の意識改革と研修会の内容充実により,組織的な授業改善サイクルを構築する必要があ
る。としております。さらに,教育効果の向上に資するため,教員業績評価制度を導入すると
ともに,そのための教育研究等大学情報システムを構築する必要があるとしております。
「③教育指導」では,「ア 厳正な成績評価」あるいは「イ 学生に対する教育指導」とい
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ったことを掲げておりますが,大学の評価としては,まず,成績評価という部分では,全教員
に対してシラバスの作成と公開を義務づけた。今後の課題としては,GPA,成績評価の段階
で,平均加重で付けるという方法を全学的に導入して,客観的な評価システムの構築を検討す
るということでございます。
「イ 学生に対する教育指導」では,大学の評価として,コースカタログの中にオフィスア
ワーの時間帯を記載した。オフィスアワーというのは,教員の研究室を訪ねて,教員にいろい
ろな相談をするというような時間帯でございますが,そういった時間帯をコースカタログの中
に入れて,学生に示しました。キャリア教育という部分では,学生に明確な目標を持てるよう
に「自己発見レポート」というのを1年次に実施しております。課題としては,チューター制
度をもっと充実させて学生とのコミュニケーションを密にしていくということ。2つ目は,学
生生活全般にわたるアンケート調査をやって,学生が何を望んでいるか,要望を的確に把握す
る必要があると。3つは,キャリア教育,インターンシップ,資格取得支援,積極的な企業開
拓,全国区の就職活動支援など,きめ細かな就職支援を展開する。そのためにキャリアセンタ
ーの設置を検討する必要があること。4つ目は,同窓会との連携で,卒業者とのネットワーク
を構築して,彼らからいろいろな就職情報,企業情報を提供していただくというようないろい
ろなネットワークの構築,これらを課題に挙げております。これに対する事務局の試案として
は,教育指導の観点からは,オフィスアワーやチューター制度の充実,学生生活アンケート調
査により,学生の要望把握,相談対応に努める必要がある。特に,就職支援について,早期か
らのキャリア教育ときめ細かな就職支援プログラムにより,就職率の向上を目指すため,キャ
リアセンターの機能など総合教育センターの充実が必要であるとしております。
「④入学者選抜」では,アドミッションポリシーにふさわしい学生を受け入れる。そのため
の入試を行うということが認可事項に掲げられているわけでございますが,大学の点検・評価
については,まず,大学をよく知ってもらうということでオープンキャンパスをやりました。
8月にやりましたが,3キャンパスで 2,500 人を超える方に来ていただいております。2つ目
は,通常の大学パンフレットとは別に,学部・学科ごとの教育理念であるとか,取得可能な免
許・資格,進路,就職状況,卒業者のメッセージというものを散りばめた「学部・学科案内」
というものを作成して,配布しております。3つ目,入試形態として,特別選抜として推薦,
社会人,帰国生徒,外国人留学生の各コースを設けています。4つ目については,18 年度入
試,これは新大学になって2回目の入試でございますけれども,前年度を大きく上回る志願者
数がございました。ただ,課題としては,まず,アドミッションポリシー,これをより明確に
する必要がある。2つ目は,選抜方法を検証し,改善していく必要がある。特に,庄原キャン
パスについては,地理的なハンディというのもございます。希望した大学に入れなかったから
選んだという理由の学生が4割いるという状況もございます。庄原キャンパスの入試について
は,抜本的な対策が必要であると3つ目に書いております。4つ目は,引き続き大学のPR,
高校訪問等をやって知名度を高めていくということを書いております。それに対する事務局の
試案としましては,入学者選抜については,オープンキャンパスの実施や「学部・学科案内」
の作成・高校生の模擬講義や高校への出前講義,教員による高校訪問などにより,大学のPR
に尽力している。一方で,消極的な理由による入学者が少なくない学部もあり,今後,意欲あ
る学生の入学を促進するため,アドミッションポリシーのより一層の明確化とともに,入学者
選抜方法の検証と改善が必要であると掲げております。
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「⑤その他」は,平成 15 年9月の新県立大学基本構想には書いていたんですが,認可申請
には掲げていないものをここに掲げております。その中でインターンシップについては,新大
学は昨年度はまだ1年生しかいなかったんですが,カリキュラムとしましては,2年次と3年
次にインターンシップを組んでいます。これを単位認定するということにしております。2つ
目は,広島市の教育委員会と協定を締結して,市の関係の学校へのインターンシップといった
ものも単位認定することとしております。3つ目は,これは人間文化学部でございますけれど
も,海外研修,これも2単位,単位認定を可能としております。課題としては,インターンシ
ップへの学生の積極的な参加を促すといったことと,受入れ先の開拓でございます。もう1つ,
ボランティア活動,介護体験等,インターンシップ以外のそういった実践的な活動についても
単位認定するような方向で拡大を検討するべきであるとしております。
「イ 進路選択幅の拡大」という部分では,転学部・転学科の制度といったものを制度とし
てつくっております。まだ実際の実績はございません。課題としては,社会人というのは時間
的制約が多うございますので,そういった教育ニーズに応えるため,長期履修学生制度といっ
たものも導入を検討する必要があるとしております。これに対する事務局試案は,インターン
シップや海外研修の単位認定など,学習選択幅の拡大に努めるとともに,大学院においては,
昼夜開講制度や公立大学で全国初の1年制課程の導入により,社会人の学習ニーズに積極的に
応えていく。また,遠隔講義やサテライト教室により,社会人が学びやすい環境づくりにも努
めていくとしております。
「ウ 大学院の履修システム」では,大学の評価として,まず,昼夜開講制度を導入した。
2つ目は,社会人向けの1年制課程,これは経営情報学専攻でございますが,全国の公立大学
で初めての1年制を設置しました。入学者が9名のうち7名が修了されておられます。その中
には 69 歳の男性もいらっしゃいました。3つ目は,保健福祉学専攻でございますけれども,
これは三原キャンパスとは別に広島キャンパスでも遠隔講義,サテライト教室を展開しており
ます。これに対する事務局試案の評価としては,社会人のニーズに対応したコース設定や街中
のサテライトキャンパスの設置など,学習しやすい環境づくりを充実させていく必要があると
しております。
以上が,教育でございまして,次が,
「(2)新県立大学が目指す研究」でございます。ここ
では,研究のレベルアップ,あるいは時代の要請,地域の要請に応えた研究を行い,その成果
を地域に還元するといったことを目標に掲げております。
「①外部資金の導入」の大学の評価として,科学研究費補助金,いわゆる科研費の申請を促
進するために,その科研費を申請したかどうかによって次の年の研究費配分を決めるというよ
うな制度を導入しております。その結果,申請率が大幅に向上した。前年度が 66 パーセント
であったものが,これを導入して 84.6 パーセントにまで向上したという実績がございます。
2つ目に書いているのは,科研費の採択件数,金額も大幅に前年度を上回っています。ただ,
今後の課題としては,引き続き,過去の採択率等の説明会を開催して,その申請率を上げてい
くといったことを書いております。これに対する事務局試案としましては,科研費の申請及び
金額は,近年,増加傾向にあり,研究水準の維持・向上が期待される。また,採択件数は公立
大学の中では比較的良く,今後も伸びることが期待できる。ここで「公立大学の中では比較的
良く」というのがありますが,これは,全国 73 の公立大学の中で,採択件数が 47 件の本学は,
全国の公立大学の 14 位というポジションでございました。
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「②受託研究・共同研究の推進」。これも前年度を上回っています。ただ,課題としまして,
本学の研究シーズをホームページで公開する等により,研究の情報をよりアピールし,それが
また新たな外部資金の獲得につながる,ということを書いております。事務局試案としては,
受託研究,共同研究等,外部資金の件数及び金額は前年度を上回り,企業等が求める研究活動
の推進が見られる。課題としては,受託研究,共同研究等,増加する企業等との研究について,
迅速かつ的確な対応ができる体制の整備が必要であると書いております。
「③研究環境の充実」では,大学の評価として,国内,海外の研修活動を行っているという
こと。課題としては,地域連携センターにおいて,TLOやJST等と連携していく必要があ
ること,知的財産の創出・保護・活用の推進体制を整備する必要があるといったことがござい
ます。
「④研究業績の評価」,これは基本研究費の配分に際して,大学への貢献度,これを勘案し
て,研究費の配分というのを,傾斜配分を行っております。これはかなり画期的な取組みだと
思います。また,重点研究につきましては,オープンな発表会を2日間開催しました。課題に
ついては,そういった研究成果をもっと公開するとともに,研究業績の客観的な評価システム
を構築する必要があります。事務局試案としては,基本研究費の配分について,大学への貢献
度に応じた傾斜配分制度を導入したことは,大学のパフォーマンス向上と教員の意識改革を促
進する意味から画期的であると評価しております。
「⑤研究費の重点配分」というところでは,基本研究費とは別に重点研究といったものを実
施しておりまして,これは,教育推進,行政施策推進,産学連携,先端的学術及び地域課題解
決研究の5つの分野で重点研究を実施しております。特に2つ目ですけれども,地域課題解決
研究,これは広く地域から公募して,地域の課題を解決するという研究でございますけれども,
78 件の応募をいただいて,23 件を採択させていただいています。課題としては,重点研究費
については,引き続き,地域のニーズに応じるものをやっていくということを書いております。
事務局試案としては,まず,行政施策推進等の5分野を重点研究費として定め,資源の集中と
選択を行うとともに,新たに導入した地域課題解決研究は研究課題を広く地域から公募するな
ど,地域社会の課題解決に積極的に貢献している点を評価しております。課題としては,今後
は,研究水準のさらなる向上のため,教員の国内外留学制度を充実させるとともに,研究内容
を適正に判断するため,教員業績の客観的な評価システムの構築が必要である。あわせて,研
究シーズを積極的にホームページ等でPRし,新たな外部研究資金の獲得と研究のレベルアッ
プにつなげていく工夫が必要である。そのために,教育研究等大学情報システムの構築が必要
であると指摘しております。
次に,「(3)新県立大学が目指す地域貢献等」でございます。まず,「①地域のシンクタン
ク機能」の部分ですが,先ほど申し上げました地域課題解決研究に取り組んだといったことと,
学長からもありましたが,広銀や庄原市と協定を締結しております。また,教員も市町の審議
会の委員等に延べ 140 名が参加しております。県の審議機関等にも参加しています。課題とし
ては,引き続き,県内の市町と連携し,地域が抱える課題について積極的な提言を行うこと。
引き続き,金融機関,経済団体等と協定を締結し,双方の資源の有効な利活用を推進するとし
ております。事務局試案としましては,地域課題解決研究を通じて,政策提言を行うとともに,
地元金融機関と地域の活性化について包括協定を締結するなど,大学の知的資源の提供に意欲
的である,と評価させていただいております。
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「②産学官連携」でございますが,大学の評価としましては,学部資金を受け入れるために
規程を整備したこと,共同研究や受託研究の受け入れるための規程を整備する一方,今後,利
益相反ポリシーの整備が課題である。この利益相反ポリシーというのは,大学の公共性と教員,
個人の金銭的な利益が競合するような場面におけるルールをつくっていくということでござ
いますが,そういったポリシーを,特に来年は法人化しますので,きちっと整備するという趣
旨でございます。それから,地域連携センターを設置しました。ここに特許関係のコーディネ
ータを配置しまして,企業との連携窓口を強化しております。また,経済産業省の地域コンソ
ーシアムの研究開発事業,これは外部資金でございますけれども,大きな補助金を得て研究ラ
ボといったものもつくって取り組んでおります。課題としては,地域連携センターを核にして,
引き続き,企業との共同研究を実施し,知財の創出・保護・活用を推進していくとしています。
事務局の試案としては,地域連携センターを設置し,企業等との連携窓口を強化するとともに,
国の地域コンソーシアム研究開発事業を受託するなど,産学官連携による大型研究プロジェク
トにも着手している。課題としては,今後,広島TLOや研究成果活用プラザ広島と緊密に連
携しながら,知的財産の創出・保護・活用を推進する体制を整備する必要がある。また,利益
相反ポリシーの整備や研究活動の公正性を徹底した上で,技術移転を推進する必要がある。こ
うしたことへの対応のために地域連携センターの充実が必要であるとしております。
「③大学資源の提供」では,大学の評価では,公開講座,それから,先ほど出てきました1
年制課程の導入,大学院の昼夜開講制度,聴講生制度,サテライトキャンパスといったものを
設置しました。課題としては,もっと短期間に集中して学ぶことができるような社会人向けの
システムの導入といったものを課題にしております。事務局試案としては,まず,公開講座は
4千人を超える受講生を集めております。課題としては,有料講座の開設など,生涯学習支援
の充実が必要であるということと,大学院について,昼夜開講制度あるいは全国初の1年制課
程を導入し,社会人の学習ニーズに積極的に応えているということ等を書いております。
「イ 高大連携」についても,平成 17 年度は7回,公開講座を開講し,277 人が受講した
という実績が出ております。
「④施設・設備の開放」については,図書館について,合計 20 万人が利用しております。
そのうち貸出冊数という部分では,学外の方が9千冊でした。これは,全体の 16.3 パーセン
トです。課題は,こういった資源を活用して魅力ある図書館を目指していくことです。事務局
試案としては,図書館の館外貸出冊数が9千冊を超え,16 パーセントを占めていること。ま
た,保健福祉学部,これは診療センターですが,この患者が7千人を超えており,地域に開か
れた大学として,大学の資源を積極的に提供しているということを書いております。
「⑤国際交流」につきましては,海外の7つの大学と協定を結んでおりますが,課題として
は,そういった協定を活かして,交流の中身をもっと充実していくことと,留学を希望する学
生に対する支援体制の充実を書いております。事務局試案としましては,海外の締結大学との
留学生・教員の相互交流の実績を上げていくとともに,留学生に対する支援策を充実させる必
要があるということを書かせていただいております。
最後は大学運営・管理運営といった部分でございます。
「①透明性の確保」という部分では,評議会をつくっておりまして,その中で,学外の方か
ら2名参画をいただいております。
「ウ 自己点検・評価」の部分では,自己点検・評価に取り組むため,大学のいろいろなデ
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ータの収集といったものに着手しました。課題としては,自己点検・評価の体制整備の必要が
ございます。事務局試案に掲げておりますのは,そういった体制整備の中で,特に,データベ
ースの構築といったものを挙げております。
「②学長のリーダーシップ」という部分では,学長を補佐するために副学長を2名配置した
こと。事務局に企画担当を設置したということを書いております。課題としては,評議会と教
授会の権限と責任の線引きが不明確であるといった部分がございます。また,全学的視野を有
する教員を配置し,特命事項を担当させるということで,これは今年度に入ってからですけれ
ども,学長補佐3名を配置しております。
「③総合的な運営体制」という部分では,3キャンパスが離れているという部分もあり,テ
レビ会議システムを積極的に活用しております。事務局試案としましては,今申し上げたよう
な課題・評価といったものを書かせていただいております。
以上のような項目別評価を踏まえて,「全体評価」でございますけれども,ここに書いてい
るのは,「地域に根ざした県民から信頼される大学」を実現するため,「実践力のある人材の育
成」「地域に根ざした高度な研究」「大学資源の地域への提供」を基本理念に掲げて開学した県
立広島大学は,開学後1年余を経過し,学年進行とともに,学内機能の充実に取り組んでいる
ところであり,いくつかの分野において新たな取組に着手している。すなわち,総合教育セン
ターの設置運営,全学共通科目の設定と実施,導入教育の実施,ファカルティ・デベロップメ
ント活動,1年制課程,地域課題解決研究の実施,大学への貢献度に応じた基本研究費の傾斜
配分制度の導入,地域連携センターの設置,評議会への学外有識者の登用など,時間的,体制
的な制約の中での個々の取組は高く評価できるものが多い。したがって,「新県立大学基本構
想」に掲げる「新県立大学が目指す教育」
「新県立大学が目指す研究」
「新県立大学が目指す地
域貢献等」及び「新県立大学にふさわしい管理運営」という4つの柱における目標へ着実に実
施していると認められる。しかしながら,今後の課題としては,来年度の公立大学法人への移
行に際しては,法人化のメリットを最大限に活かしながら,学長のリーダーシップの下,自律
的,効率的で透明性の高い,機動的な大学運営を目指し,限られた資源を有効に活用して,学
生,企業,地域等の満足度を高める努力が必要である。特に,来年度は,新大学の3年次学生
の就職活動が始まることから,しっかりしたキャリア教育ときめ細かな就職支援を行い,実践
力を身につけた学生を地域に輩出し,「県民から信頼される大学」として,地域社会から高い
評価を得ることにより,入学者の底上げにつながっていく好循環を生み出していくことが望ま
れる。そのため,教育面では,特に,ファカルティ・デベロップメント活動において,教員の
意識改革も含めて真摯に取り組むとともに,研究面では,研究水準の維持・向上に努め,その
研究シーズを積極的に学外にPRすることが必要である。また,開かれた大学として,地域貢
献活動に取り組み,特に,社会人の学習ニーズに応えることは重要な役割であることから,引
き続き,社会人が学習しやすい環境づくりを充実していくことが求められるとさしていただい
ております。 以上です。
会長 どうもありがとうございました。今,ご説明もありましたように,資料1の右側に書いてあ
るのは,あくまでも事務局がつくった試案でございます。これをベースにこちらで議論をいた
しまして,その結果,最終案をつくりますので,いろいろな観点からご議論をいただきたいと
思います。よろしくお願いします。最初に私から質問しますが,一番最初の全体評価のところ
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なんですが,3番目のパラグラフのところで,「したがって」というところなんですが,
何か主語がはっきりしない。着実に何を実施しているかと書かないとよくわからないですね。
ですから,おそらくこの文章は,4つの目標を目指し,着実に実現化がなされているというよ
うな文章になるんじゃないでしょうか。それから,「しっかりした」というところも,「明確な
意図と方策を持つキャリア教育」とか,「入学者の底上げ」ということばも若干特別なジャン
ルのような感じがしますので,「水準の向上」というようなことばを使うとベターかもしれま
せんね。
A委員 地域にこれから学生を輩出されるんですが,その中に「実践力」ということばを使ってい
るのですが,「実践力」という言葉は,わかったようでわからないんですね。何を実践するの
か書いてないので,できれば,私は,「創造力のある」とか,新しい時代に,自分で何かを創
造できるというような実践力を企業は求めている。実践力というのは,言われたことをやれば
いいというものでもないので,実践力でそれが表現できていればいいんですが,表現が少し具
体的なほうがいいと思います。今,人間教育の面が少ないように感じております。評価という
基準が,どうしても具体的に数字に出るとか,結果が出るものに集中するのはやむをえないと
思いますが,できれば,創造的とか感性ということばをどこかにお使いいただければありがた
いなと思います。
もう1点,「県民,地域に信頼される」ということになると,卒業生が地域に入っていない,
要するに,この地域で就職されればいいんですが,全国的に就職活動をされる。県立なので,
我々としては,地域との連携を深めて,地域にとどまってほしいということを希望しておりま
して,できれば,「県民から信頼される大学」ということで,やっぱり,地域と社会がどう結
びつくのかというところが,見えてくると特色になるんじゃないかと,それが県立大学の1つ
の個性として表に出るんじゃないかと思います。最後のほうの地域貢献,社会人の学習ニーズ
等いろいろ書いてあるんですが,ちょっとそのへんが一般的で,地域貢献というのが,できれ
ば公立的なものはないのかというのが気になっております。
会長 はい,ありがとうございました。その点で,ちょっと資料のほうに,大学の学生はどこから
来て,どこへ行くと…。何ページでしたかね。
事務局 資料2の 16 ページの表の 29 です。この表は,県内出身者,県外出身者が県内へ就職した
か,県外へ就職したかといったものを学部・学科別に示しておりますけれども,一番下の「三
大学合計」のところで,県内出身者が県内へ就職したものが 38.4 パーセント,県外出身が県
内へ就職したものが 8.6 パーセント,逆に,県内から県外へ就職したもの,出たものが 9.8 パ
ーセント,県外出身者が,また県外へ就職したというものが 43.2 パーセントということで,
BとCの列を比較すると 8.6 と 9.8 ということで,出て行くほうが多いというような結果にな
っております。県外から県内に定着するものよりも,県内から県外へ就職していくもののほう
が1パーセント強多いというような状況になっております。まさにA委員の言われたような状
況になっております。
会長 案外,よそから来ているのが多いですね。これはレベルが高いということが,ある意味では
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あるわけですから,当然いいことですが,できれば,県外からきた人が県内の中に就職し
てくれると,何かエゴイスティックですけれども,県の立場からいうと非常に好ましいという
ことがいえますね。
B委員 私は,今の意見に対しては半分賛成,半分反対です。それはなぜかというと,非常にアン
ビバレントですけれども,お金が出ている場所ということを考えると非常によくわかります。
ご指摘のとおりで理屈は合っています。しかしながら,考えてみたら,たとえば,外部要因と
して,じゃあ,広島県内にどれぐらいの企業があって,どれぐらいの人をキャパとして取れる
のかという問題を分析しておられません。したがって,これは軽々に言えません。もう1点は,
公立大学,確かに公費を使って,県民のお金を使っていますけれども,それは広島県だけのた
めで果たしていいのかという問題,もう少し,やっぱり,狭視眼的な,あるいは公共性の観点
からすると,お越しいただいて,お出になるということも含めて広島県が,たとえば,今後,
道州制等の問題等が出てくれば,ますますこういう視点というのは重要になってくると思うん
ですよ。したがって,大学の学生のレベルを上げるという,入学偏差値だけじゃありませんけ
れども,正しい意味で学生の質を深めるということからすると,あまり狭視眼的にそのことば
かりをお使いいただくことは,私は得策ではないと思うんです。私の個人的意見です。
会長 このへんのところは,議論のあるところだと思いますね。
B委員 例えば,これは1つの例ですけれども,入学者の入学金,授業料を変えるというようなこ
とも,過去,県立医科大ではやっていましたね。これも1つのやり方として理解できますけれ
ども,あまりごり押しという形まではしていなかったと思うんですよね。つまり,県内の無医
村地区を解消したいという気持ちはわかるんで,しかも,県内の子どもたちを残留させたいと
いうこともあるので,少しそのあたり若干色をつけて,安価なお金で入学させるという,そう
いう方策を取ったということも私は理解をしていますけれども,じゃあ,そういうことをやっ
ていくのかということも議論しなくちゃいけなくなってくるわけで,あまりどうなんでしょう
かね。
会長 例えば,医療の問題に関して市町村別に格差が広がっていると。その問題については国に任
せることもできますが,同時に県としても独自にやらなければならないということになります
と,やっぱり,先生おっしゃるように,両方の視点が必要で,そのバランスがどの程度まで整
っていくかを考えるということになるわけですね。
B委員 そうです。だから,申し上げたかったのは,そのバランスの問題が重要になってくるので
はないかと思います。
A委員 バランスはもちろん理解できるんだけれども,大学が今後,少子化の中で,大学の施設が
充実してくることは,間違いないと思うんですね。競争も激しくなってくるし,いろいろな特
色を出した大学もたくさん出てくる,皆さん,がんばられると思うんですよ。今後は,個性が
それぞれ重要視されてくるだろうと思うんですよ。じゃあ,広大と県立大学が同じことをすれ
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ばいいのかと。みんなレベルを上げることはいいんだけれども,今後の少子化の中で,同じ
レベルの生徒が広島大学と県立大学のどっちに行くかと決めるときに,私は県立大学で,地元
でやりたいんだという人がいてもいいじゃないかというのが私の考えです。「俺,もっと海外
で」という人は,そういう大学を選べばいい。だから,人にとってそういうチャンスがあるな
らば個性を分けたほうがいい。ということで,少し役割を分けたほうがいいんじゃないかとい
うのが私の提案です。
D委員 私もA委員の意見に賛成ですね。やはり,県立大学という明確な特色を出すために,同じ
広島大学という名前が付いていますけれども,県立だということで,そのへん,明確に分ける
必要があるんじゃないかと。B委員の考え方をずっと突き詰めていくと,本当にみんな同じレ
ベルの争いになってきて,やっぱり,地元でいて,地元で密着していきたいという学生さんた
ちにサービスを提供していくというのは大変重要なことじゃないかと思いますけれども。
C委員 私は,基本的にはそう思うんですけれども,県外学生が4年間の間,あるいはもっと長く
いらっしゃる方もおられると思うんですけれども,地域をどれだけ自分のコミュニティとして
地域を認識してきたかどうかというところが,反対にいえば,そういう機会を提供できるかど
うかで,ずいぶん県内に残る率というのは変わってくるんじゃないかと思います。だいたい,
入学して,学んで,ちょっとしたアルバイトをして,そして,地元に帰るという指向が強いと
思うんですよね。特に,中国地区から来られた方,あるいは九州とか,ある程度地元に仕事が
あるところでしたら,地元に帰したいという思いが強い親御さんも多いと思いますので。そう
いうことからすると,どこの大学でもそうですけど,まだまだ学生が地域に溶け込んでいない
というのはあると思うので,県立大学は,特に,県全圏域をキャンパスにしているわけですか
ら,いろいろな形で,もっと地域と付き合えるような経験・体験があれば変わってくる可能性
があるんじゃないかと思います。
B委員 言葉足らずで恐縮でした。大学の,いわゆる個性化という言葉を私は使いませんが,大学
の特色化という言葉しか私は使わないんですけれども,大学に個性があるとは思いませんから
特色なんですけれども。いずれにせよ,それぞれの大学が特色化すること自体,大いに結構で
すし,趣旨として,県立大学が広島大学と違う特色化を示していく,これも当然のことで,ま
ったく私は異論がございません。ただ,問題があるのは,先ほどもご指摘のように,県外の学
生さんを受け入れる側,県立大学のスタッフの一人とすれば,より優秀な学生の受け入れをし
て,いい大学生として,より県下に示したいという気持ちはあるんですよ。だけども,それを
あまり,たとえば,先ほどのお話のように,県立医科大の話をしましたよね。県下の学生が安
く入れるみたいな話になってくると,外からの学生が来ないということで,結局,5年なり,
6年なり育てて,県下にそれをお返しするときの学生の水準が高くないじゃないかと。とする
ならば,あまり入口を狭めないで,どうぞおいでなさいよと。問題は,いかにここに定着させ
るかというふうな経営努力をしたほうが,筋としては正しいのじゃないかという,そういう趣
旨のことをお話したかったんです。つまり,内向きの話になってくることが非常にこわかった。
会長 実際には中四国というような広域のこともありますから,また,日本全国を考えてみても,
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そういうこともあるだろうということなんですね。ただ,D委員がおっしゃった中で,非常に
重要だなと思うのは,学生からいうと,大学は多様にあるわけで,その多様なメニューのうち
自分の意図に従って選択できるというところに特性がみられるんであって,その中に県立大学
の特性が出てきてもいいんじゃないかというご指摘だと思います。
B委員 おっしゃるとおりです,全然異論はございません。
A委員 B委員がおっしゃっているように,受け入れる側の問題というのは非常に大きな問題でし
て,我々,ほとんど 22,23 歳で受け入れて,それから 30 年,40 年という長い間,社会が受
け入れなければならない。その中で,成長させ,豊かにしなければならないという責任が経済
界,社会にあるので,そういう受け入れ側の責任というのは重大な問題がある。B委員がおっ
しゃったように,例えば,まちづくりとか,人づくりとか,全部同じレベルで肩を並べて歩い
ていないと,この議論がうまくいかないなと思います。B委員のご指摘になった問題は,経済
界も最近は大変関心があるんだけれども,私は,企業に合った教育ではなくて,人を育てる企
業になりうるのかという視点をちゃんと持つことが必要だという提案を最近しまして,安く働
いてくれればいいよ,がんばって働いてくれればいいよというのではなく,企業というのは,
その人が人間的に成長できるかどうかという場が社会にあり,会社や経済界にあるという位置
づけで見ると,B委員のご意見は私たちの課題だと思うわけで,それは広島県として,県民と
して,今後とも考えていって,単なるキャリア教育の問題ではなくて,我々経営者として経済
界を引っ張っている人たちが,大学とちゃんと話し合って,そういう認識をお互いに持った上
で話をしないと,たぶん,これはうまくいかないだろうと思います。
会長 どうもありがとうございました。それでは,他に何かございますか。
C委員 先ほどの実践力とか,知的な技法とかっていう,いくつか具体性の見えない言葉があって,
キャリア教育もそうなんですけれども,同じ言葉で,同じようにみんなが受け取っているかど
うかというと,すごく怖いところがあるような気がするんですね。そういう言葉をもう少し何
か明確に見えるような,具体的なものとして入れることができるのならば入れていただきたい
なというふうに思います。私が感じたのは,フレッシュマンセミナーのところで,今の県立大
学がどういうものを知的技法として考えているのかということですね。それから,キャリア教
育,そのあたりを今,チェックしております。それと,知らせるという広報の部分が評価され
ていないんですけれども,いくらいい活動をしていても,やっぱり,伝えるということをして
いかないと,それが大切なことなんだということを,これはどこで言ったらいいのかわからな
いのですが,大切じゃないかなと思います。
会長 今のご質問についてのお答えはありますか。
事務局 実践力につきましては,先ほどA委員からもご指摘がありましたけれども,私どもが考え
ている実践力というのは,例えば,職業観がしっかりしているとか,コミュニケーション能力
だとか等々あるんですけれども,そのへんは確かにご指摘のとおり,ちょっと漠然として
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いるので,そのへんの表現は,具体的な書き方に改めたいと思っています。
会長 評価というものについては,いろいろな評価の方法があります。理念がどれだけ実現された
かということに関する評価という立場が1つありますね。今度は,理念そのものについて,設
立のときはふさわしかったけれども,現在は,理念について,もう少し付け加えたほうがいい
んじゃないかとか,これは終わっているから次の段階に進めるという二通りのものがあると思
います。そのへんを踏まえながら,ご議論いただければありがたいと思います。そろそろ3年
目に入ってきますので,たぶん,A委員の言われる「実践力」についても,もう少し具体的な
意味で考え直さなくちゃいけない。そのときに創造力というようなこと,あるいはイマジネー
ションだとか感性ということを含めて議論してはどうかと思います。
会長 フレッシュマンセミナーっていうのは,どんなことをやるんですか。
事務局 導入教育ということでございますので,新入生を対象に,知的学習の入り口という意味で,
例えば,本を読ませるとか,映画を観賞するとか,そういう知的好奇心を持たせるような仕掛
けといったものを昨年はやっております。
会長 そういう意味からいうと,これは,ファカルティ・デベロップメントの1つでもあるんです
ね。3年生,4年生だけを扱っている先生は,18 歳の高校を出たばかりの人と付き合ったこ
とがないんですね。そうしますと,お年を召した方で,18 歳の人がこんなことを考えるのか
とか,自分は当たり前だと思っていた専門教育の専門家は,最初の一般教育のところで,学生
というのはこんなに未完成だったのかということに気づいていただくと。そこから教育の仕方
を考えると,そういう意味では,先生方の教育というのも中にはあるような気がしますね。
A委員 県立大学に対して我々が持っているイメージで,私がいろいろな大学へ行かせていただい
ている中では,間違いなく女性のレベルが高いんですよ。たぶん,それは歴史的な何かがあっ
て,そういうイメージが定着していて,地元の子女で地元におりたいという人たちは県立大学
を目指している人たちがたくさんいるんだと思うんですね。これは今まで培ってきた,良いと
ころのような気がするんです。実は,私たちの社会は,この女性に期待をしております。女性
のいいところって何なんだという話をしていると,女性の場合は,他人とのかかわり合いが非
常に上手なんですね。男性は一人でロマンチックに考えて,勝手にやっているんですけれども,
女性は,非常にかかわり合いが上手で,何かを創造するときにリーダーに置くと,みんなをま
とめるのが非常にうまいんです。男性は,勝手に自分の考えで言い出しますから,ばらばらに
なるんですけれども,県立広島女子大学では,たぶん,女性として社会進出をする教育がちゃ
んとされていると思うんですね。その辺は,一般的になりすぎて,少し特色がなくなっちゃっ
たような文章なんですよ。これ,どこにも書いてあるような気がしてなりません。今は男女共
学だから,そんなことを書いちゃいけないんでしょうが,何かいい表現がないでしょうか。
B委員 共学になったんですよね。参画社会を目指しているんですよね。表面的には,逆行するよ
うな指摘なので。いや,理解できるんです。よくわかるんです。校風でしょ,伝統でしょ。そ
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れをいいように何か変容できないかということでしょ。
学長 申し上げてよろしいでしょうか。この間,同窓会,これ,女性の年配の方でありますけれど
も,その方々とご一緒の機会があったんですが,良妻賢母型でスタートをし,ずっときていた
わけですね。しかし,その中で,A委員からお話がありましたように,非常におもしろいのは,
「父と暮せば」という映画がありますけれども,女専で学んだ人が,「私たち昔話研究会は,
前の人が伝えた物語をきちっとそのまま変えずに,まず伝えるのだ。」ということを言うんで
すが,この胸張っていうところは男女共同参画社会においても,そこは伝えていきたいと。そ
のいい伝統があの映画には出ていますので,そういうように取れるところをおっしゃっていた
だいて誠にありがたいんですが,そういうすばらしいところは伝えていきたいと思います。そ
れから,フレッシュマンセミナーは,先生方によって,まだ,それぞれの試みをなさっておら
れると思いますが,専門の先生方の中には,書物を与えまして,まとめ方とか,読み方とか,
考え方とかをやっておられる方もありますし,フィールドへ出て行かれて,実際の体験をしな
がら,一次体験を二次的なものにまとめ上げる努力ですね,そういうようなところをフィール
ドワークでなさっている方もありますし,まだばらばらで,これから徐々に集約されていくと
思います。
会長 そのフレッシュマンとか,チューター制度とか新しい試みが様々になされているんですが,
初めからこういうもんだというふうに断定せずに,いろいろな方が,いろいろな形で現場で工
夫されるほうが,自然にお互いのコミュニケーションが通じて,県立大学らしい1つの共通性
を持っているというのは若干時間がかかるような気がしますね。その時間のかかったものが,
実は伝統になってまいりますので,今ご指摘の点は,もし入れるとすれば,この全体評価の一
番最後のところでしょう。今まで,我々は,3つの大学の統合・融合ということを重要視して
まいりましたが,他方,それぞれの地域社会のあり方とか,立地とか,伝統とか,そういうも
のを活かしながら,今後,理念その他も考えていくと,あるいはもう少し内容を考えていくと
いうように,この中へ付け加えてもよいと考えますが。
学長 先ほどA委員,その他いろいろおっしゃっていただいてありがたいんですが。県外から来た
人が広島県のよさがわかり,広島県におりたいと思う人が増えるような努力というのは,実は
地域を理解するというオムニバスの講義をやっておりますことと,個別講義という形で,地域
で非常にすばらしい企業経営だとか地域活動をなさっている方々に来てもらって,それで講義
をしていただきながら,なんとか県内・県外の就職率を逆転させたいと思っています。
B委員 瑣末な質問と意見ですが,教えていただければと思います。ここでお示しになっておられ
る情報システムというのは,具体にどういうようなものを示すのか教えてください。6ページ
の学外研修を 103 名の方が受けておりますが,この 103 名の学外研修の中身を少しお示しい
ただけませんでしょうか。これも評価をする上で内容がわからなければ評価の仕様がないので
これを伺いたいと思います。
事務局 大学情報システムというのは,大学の教育・研究など諸々の活動のデータベースというこ
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とでございますけれども,活用用途として3つ考えておりまして,1つは,教員の諸々の活動の
データベース,これは教員の業績評価に使うということ。もう1つは,研究成果のデータベース。
これを積極的にPRしていくということ。もう1つは,それらも含めた諸々の大学の活動,こ
れは自己点検評価あるいは認証評価に向けてのデータ収集・分析に活用することを考えており
ます。
B委員 学外研修は,いわゆる通常の研修ですか。まあ,通常といっても大学の中の研修でしょう
が。いわゆる研究上の研修でしょうか。私がイメージしたのは,FDの一環の研修等も含めて
これをお示しになっておられるのか,あくまでも研究環境の一環ですから,通常の研究研修と
いうふうに理解してよろしいでしょうか。
事務局 これは,かなり広義に捉えておりまして,中身的には資料2の 21 ページ,表の 40 でござ
いますけれども,資質向上に資するものと思われるものを拾っております。
B委員 だいたい了解しました。あと,科研費のところなんですが,採択率が上がったということ
は十分理解してますし,その申請に基づいて研究費の配分,これもよくあることなんで理解で
きるんですが,通常,全体的に平均すると,科研費の申請と採択率は平均で 20 数パーセント
ぐらいです。県立大学も,ほぼだいたいそのあたりで落ちているんですよね。ただ1つだけ,
一定の学科が0パーセントなんです。この理由をちょっとお示しいただけませんでしょうか。
申請は8件あるんですが,なぜ0パーセントなのか,ちょっと奇異なんですね。通常,国のレ
ベルの様々な採択率と分析すると,なんでここだけが0なんだろうと思いまして,ちょっと気
になりましたので。
学長 申請数8件は,必ずしも多くないという気もいたします。中身的にも,書き方も,あまりう
まく書けてなくて,業績を書き,そして,実際に貢献ができるのだという説得の仕方が非常に
具合が悪いなと率直に思っております。全体としても採択率はちょっと悪すぎる。それから,
もう1点問題があるのは,ABCのランキングのCランクがございまして,そのために金額も
非常に低くなってございます。これも改善したいと思います。
会長 これを大学以外の方にちょっとご説明いたしますと,科研費というのは,国立大学の先生方
は本当によくご存じで,助手のころからトレーニングされているんですね。私学とか,あるい
は公立の場合,先生方がどんどんアプライをしてこなかったということで,応募の書き方から
何もわからないということがありまして,このへんのところからやらなければいけない。
学長 自然科学の方は,比較的,公立大学の場合でも慣れておられまして,文系の方も割合慣れて
おられるんですね。しかし公立大学は,国立大学と比較するとお話にならないんですね。広島
大学は採択そのものが1千件近いですね。そういうことで,私のところと同じような山口県立
大学さんも今年から申請率を上げようとされています。
D委員 今回のこの報告を見て,あまり私の出る幕がないなと思ってしまったんですけれども,前
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の協議会の会合のときから申し上げていた,データを早く集めてくださいねと,大学に関するあ
らゆるデータが取れるように,もちろん,私の言うデータというのは,先ほどの研究の例のこと
だとか,そういうことも含めてですけれども,財務データのほうですね。このデータがないと
コストの管理とか,まったくできない。ある程度,年数のデータを積み上げてこないと見えて
きませんので,かつ,よその大学と比べてみるということが大変大事だと思いますので,その
へんに関しては,認可事項のところに出ていないから,こっちにも出ていないという意味なの
か,それとも,どこかにデータはこういう具合に集めて,徐々に蓄積するという記載もできる
ような状態なのかどうなのか,そのへんがお聞きしたいんですけれども。
事務局 財務関係につきましては,法人化以後,重点的に評価していきたいと思います。今は,県
が経営しているということで,なかなか分析も難しいということもございますので,法人化後
は,そういった財務というのが非常に重要になってきますので,そこはやっていきたいと思っ
ています。
会長 私もこの運営協議会が,収支と財務の問題を扱わないというのは,ずいぶんおかしいなと感
じておってですね,特に,独立行政法人化後を前提としてそこを押さえておかないといけない
んじゃないかというような気もしておりますけれども,そのへんのところは,もう少しご検討
いただければありがたいというふうに思いますね。
会長 皆さん方のご意見を頂戴いたしました。なお,このことを踏まえて,事務局のほうで,もう
一度原案を修正いたします。そのときに,運営協議会が評価を決定する前に大学が意見を申し
出る機会を設けるということにしておりまして,また改めて別途文書で行いたいというふうに
思っております。大学からの意見が非常に軽いものである場合の修正というのは,もしできま
すれば,私に一任していただければありがたいというふうに思います。予定をしておりました
議題については以上でございますが,何かご意見・ご提案などございましたら承りたいと思い
ます。特にございませんようでしたら,このあと,またございますので,事務局で進行をお願
いいたしたいと思います。本日は,円滑な議事にご協力いただきまして,ありがとうございま
した。
事務局 熱心なご議論をいただきまして,ありがとうございました。これをもちまして,第2回の
県立広島大学運営協議会を終わらせていただきます。
7 会議の資料名一覧
資料 11 …… 県立広島大学の平成17年度業務実績に係る点検・評価
資料 12 …… 平成17年度県立広島大学業務実績の状況(データ編)
参考資料 1…… 県立広島大学業務実績評価実施要領
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