No. 59 - 情報規格調査会 - 情報処理学会

No. 59
2003 年 9 月
目
次
標準活動トピックス:
規格調査会長に就任して ..................................................................... 2
情報規格調査会 規格調査会長 石崎 俊(慶應義塾大学)
学会標準化活動との 20 年 .................................................................... 3
情報規格調査会 顧問 棟上 昭男(東京工科大学)
新時代における規格・認証制度のあり方と情報分野における標準化活動の施策 ...................... 5
勝亦 眞人(経済産業省)
最近の国際会議から:
SC 7(Software Engineering)総会報告 ...................................................... 12
山本 喜一(慶應義塾大学)
SC 22/Linux Study Group 会議報告 .......................................................... 13
黒川 利明((株)CSK)
SC 24(Computer Graphics and Image Processing)総会報告.................................... 14
藤村 是明(独立行政法人 産業技術総合研究所)
SC 27(Security techniques)総会報告................................................................ 15
竜田 敏男(日本アイ・ビー・エム(株))
SC 31(Automatic Identification and Data Capture Techniques)総会報告 ...................... 16
柴田 彰((株)デンソーウェーブ)
SC 34(Document Description and Processing Languages)総会報告 ............................. 17
小町 祐史(パナソニック コミュニケーションズ(株))
解説:規格文書の XML 化............................................................... 20
小町 祐史(パナソニック コミュニケーションズ(株))
声のページ:
標準化雑感 ................................................................................ 22
近藤 昭弘(元(株)日立製作所)
規格活動電子化への里程 .................................................................... 22
東田 正信(NTT アドバンステクノロジ(株))
2003 年度 情報規格調査会の表彰 ................................................................ 23
2003 年 9 月以降 国際会議開催スケジュール ...................................................... 25
情報処理学会試行標準のページ:
WG 1:情報技術用語データベース ............................................................. 26
大野 義夫(慶應義塾大学)
編集後記 ..................................................................................... 26
<標準活動トピックス>
規格調査会長に就任して
情報規格調査会
規格調査会長 石崎 俊(慶應義塾大学)
本年7月の規格総会で情報規格調査会規格調査会
長に選任されました.同時に副会長として新しく
産総研の大蒔和仁氏を迎え,新しい体制で今後の
情報技術の国際標準化活動に努力していきたいと
思います.
私は前会長の棟上先生のもとで1995年度から副会
長として規格役員会に加わり,技術委員会およびJTC
1総会へ参加してきました.私が副会長を務めていた
間にも国際標準をめぐる環境や国内標準の動向はか
なり変化してきています.それらに触れながら今後
の国際標準化活動で重要なテーマや課題を取り上げ
て,今後の皆様のご協力を具体的にお願いしたいと
思います.
重要なテーマとしては,まず何よりも,日本発の
標準開発の促進,国際標準における日本の貢献の活
発化があります.我が国の情報技術で世界をリード
しているものは多くはありません.その意味で我が
国から情報技術の標準を発信するのは容易ではあり
ませんが,将来性のある潜在的な技術力は十分にあ
ると思いますので,それらを活かした標準化を目指
したいと思います.
そのための1つの新しい手段として情報処理学会試
行標準制度があります.これは国際標準化のために
試行段階の標準を作りやすく支援するもので,棟上
先生のご発案で米国のIEEEの制度を参考にして2001
年秋からスタートしています.テーマごとにWGを組
織して現在は6つのWGがあります.情報処理用語のほ
かに,文字コード関係が2つ,音声情報処理が1つ,
日本語電子化辞書が1つあり,最近では6つ目のWGと
して実時間処理用通信規格としてレスポンシブリン
クが活動しています.WG 5の符号化文字基本集合
(BUCS)はSC 2/WG 2に提案されてすでに国際標準を
作る段階に進んでいます.WG 2の文字図形識別情報
は経済産業省の文字情報システム構築のためのプロ
グラムの基盤となった試行標準で,漢字検索でも大
きな特徴を持っています.今後はこの試行標準制度
の活動範囲を広げて,いろいろな分野の国際標準の
作成に貢献できればと思います.
一方,W3CやIETFなどのデファクト標準を作成して
いる国際団体があります.情報技術について多くの
デファクト標準を作成していますが,近年は組織も
大きくなって標準化の効率が悪くなっている面があ
るようです.また,WTO(世界貿易機関)では,国際
貿易の障害の除去と貿易の促進を図るため,ISOなど
の公的な国際標準を重視する方向にあります.従来
の公的な標準機関では標準化に要する時間がかかる
ことが問題になっていましたが,ISOでは短期化の努
力結果,その平均期間が1998年の5.4年から2002年に
は3.5年に減少しています.そのような意味から,今
後は公的な標準化の必要性がますます高まると考え
られます.
情報処理学会は5月から新会長が就任し,新たな活
動方針のもとで出発しています.そのひとつに,産
業技術者が関心を持つ学会を目指すことを挙げてい
ます.ここでは企業からの学会員の減少が大きな課
題になっていて,企業会員にとって魅力ある学会作
りが重要です.その意味では企業から見た科学技術
研究の重要性とともに,情報技術にとって今や不可
欠になった国際標準の視野のもとに研究活動をする
必要性が高くなっています.ISOの総会でも研究開発
レベルから標準化を意識する必要性が指摘されてい
ます.標準化が深く関係するのは基礎研究というよ
りも応用研究に近いかも知れませんが,学会の場で
そのような議論が出来て研究が進み,国際の場で通
用する標準化につながることを期待したいと思いま
す.情報規格調査会における標準化活動がそのよう
な企業活動と情報処理学会との架け橋になれば幸い
と思います.
また,企業の経営者の集まりである経団連でも標
準の重要性が認識され,産業技術委員会国際標準化
戦略部会という委員会が組織されているそうです.
企業のトップが標準を正面からとらえて企業戦略の1
つとして標準を考えることは望ましいことであると
同時に,企業で標準に関わる方たちの位置づけや立
場の強化に好影響があると期待されます.
情報規格調査会の財政状況については,長期的に
見ると厳しい環境にあるといわざるをえません.7月
にあった規格総会の2003年度予算では順調に推移し
ているように見えるかも知れません.しかし,これ
は2002年度から精力的に実施している経費の削減と
予算均衡化の努力,また経済産業省からの委託事業
などによって財政内容が改善されていることに起因
しています.ところが今後はさらに賛助会費などの
減少が見込まれるため,さらなる経費の削減が必要
と考えられています.従来の標準化活動の質や活力
を減ずることなく,どのようにして経費の削減を行
うかは難しい課題です.特に,大学などからボラン
ティアで来ていただいている中立委員は,SCの専門
委員長,国際の議長を初め様々な役割を担っている
方が多いと思いますが,それらの方々の活動や貢献
を減ずることのないような方策を確保する必要もあ
ります.また,事務局が提供しているSCの国際セク
レタリ機能や国内委員会の事務処理は,責任を持っ
て継続していく必要があります.
2
具体的な今後の方針については規格役員会を中心
に検討していますが,多くの方々のお知恵を拝借し
てこれからの難局を乗り越えていきたいと思ってい
ます.そのような意味で,賛助会員の企業の皆さん
には,厳しい経済状況の中で今後とも情報規格調査
会の国際標準化活動へのご支援をいただくようにお
願いしたいと思います.
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学会標準化活動との20年
情報規格調査会
顧問 棟上 昭男(東京工科大学)
筆者が情報処理学会の標準化活動と正式に関り
合いを持つようになったのは,手許の記録による
と1982年9月のことで,現在のSC 25の前身である
SC 13の委員長を,それまでの石田晴久さん(当時
東大/現多摩美術大学教授)から引継いだ時に始
まる.当時筆者は電子技術総合研究所(現在の産
業技術総合研究所の一部)に所属しており,その
ため周囲には西村恕彦さん(東京農工大名誉教
授,1999年度標準化功績賞)とか,川合英俊さん
(現いわき明星大学教授)などがおられて,その
先輩方の学会を通しての国際標準化活動における
活躍を横目で垣間見る機会はあったものの,当時
は自分自身が標準化に関り合いを持つことになろ
うとは露ほども思ってみたことはなかった.
現在もまだ技術委員会に籍を置く身であり,学会
の標準化活動と縁が無くなったわけではないのだ
が,少なくとも結果的には本会の会長を辞した本年
7月の時点までに合わせて20年以上,1988年2月以降
の副会長および1994年7月以降の会長の期間だけで
も15年以上の間,学会の標準化活動とお付き合いし
たことになる.この間筆者の所属も電子技術総合研
究所から情報処理振興事業協会(IPA),そして東
京工科大へと2度変わった.どのような経緯で筆者
のところにSC 13委員長の話が持ちこまれることに
なってしまったのか詳細は知らないのであるが,こ
れまでの20年間というものを振返ると,たまたまの
縁というのも本当に軽んずることはできないものだ
という感じを強くする.
さすがに20年間ともなると,標準化の分野に限っ
てもさまざまな出来事に遭遇することになる.筆者
にとっての最初の大事件は,学会の規格委員会が情
報規格調査会に改組拡充されたこと,そしてISO/TC
97がIEC/TC 83とIEC/TC 47/SC 47Bを事実上吸収合併
して,ISO/IEC JTC 1が設立されたことである.筆者
が標準化に関りを持つようなって数年後に動きの始
まったこの2つの事件は一応独立事象ではあるが,情
報規格調査会の設置を加速した最大の原因の1つは,
実はJTC 1の設立が現実のものとなったことにあった
のであり,また実際には筆者にとってというより
も,情報技術の国際標準化活動全体にとっても歴史
に残る事件であったということができるだろう1).
一方でJTC 1設立の当初から,JTC 1に関わる案件
の審議は,全体の戦略とマネージメントのレベルか
ら,個々の技術領域におけるプロジェクトの承認や
統廃合のレベルに至るまで,情報規格調査会が,技
術委員会における議論を踏まえて,全体的な視点に
立って最善の結論を導くことができるように努力を
してきた.このような経緯は日本からのアウトプッ
トの国際的な信頼性を高めることに大きく寄与して
きているのであるが,他方このような体制に対して
は,JTC 1および情報規格調査会の設立当初には,工
業技術院等の役所や,工業会の側にはかなりの抵抗
感もあって少なからぬやり取りもあった2).
今でも新しいSCの設置時などには,この種の議論
が鎌首をもたげそうになることもあるのだが,欧米
先進国の例などを持ち出すまでもなく,本来産業分
野の標準化活動は,官の影響が直接及ばない形で進
められるべきものであって,その意味でも情報処理
学会が情報技術の国際標準化に関して,学界と産業
界の連携の要として,一貫性のある審議体制を維持
してきたことには大きな意味がある.今後もこの点
には十分に留意して活動を進めてゆく必要があるだ
ろう.
さてJTC 1の設置の動きとほぼ併行して始められた
国際標準化の大プロジェクトにOSIの標準化があっ
た.これはネットワークと分散処理に関する国際的
に統一された標準基盤を確立しようという壮大なプ
ロジェクトで,日本も含め各国とも官民を挙げて推
進するところとなり,また関連するコンソーシアム
などもいくつか設立されたりした.しかしプロジェ
クト自体は壮大になり過ぎ,開発される規格自身が
必要以上に過剰仕様になったり,そのため開発に時
間がかかり過ぎ,また折しもこれと並行して開発の
進められた草の根的なインターネットと競合すると
いう不運も重なって,技術的には見るべき成果もか
なりあったにもかかわらず,それらが世の中に十分
活かされること無く終結せざるを得ないという結果
に終わってしまった.
3
一時は国際的にも,OSIにあらずんば標準化にあら
ずといった雰囲気もあって,ほとんど一種の技術バ
ブルの様相を呈し始め,対応するJTC 1/SC 21の国際
会議なども,費用の面でも運営の面でも,十分に有
効な討議を行うことが困難な状況にさえなり始めて
いた.日本はこのような状況を憂慮して,SC 21から
ODPとデータベース関連のWGを切り離して3分割する
案や,SC 21の作業項目の洗出しを含めたJTC 1全体
の作業割付けの見直しなど,かなり過激な提案をい
くつか行ったのであるが,当時は各国の受入れると
ころとはならなかった.
結局このツケは,その後1990年代半ばにかけて行
われることになったJTC 1リエンジニアリングによる
大粛正にまで持ち越されることになる.リエンジニ
アリングの結果,ODPは他のSCに移され,またデータ
ベース関連の作業も新しいSCに割当てられることに
なり,本体のSC 21も結局のところ廃止ということに
なって,先の日本提案よりも過激な結末を迎えるこ
とになるのだが,どのようなバブルでもそうであっ
たように,バブルの絶頂期というものは,結局行き
着くところまで行かないと治まることはないという
ことなのであろうか.
最近はJTC 1関係でも,規格文書のウェブ上でのフ
リーアクセスという話が少しずつではあるが進みは
じめている.この点に関してはジュネーブを頂点と
する現体制は,どうしても後ろ向きの態度になりが
ちであるが,紙ベースの売上げに頼る旧来のビジネ
スモデルに拘泥する限り,公的な国際標準化活動が
紙の呪縛から脱することは相当に困難であろう.OSI
の件ではもちろんそうであったのだが,インターネ
ット関連の標準にも見られるように,紙ベースの規
格を買ってもらって収益をあげようとする前に,何
らかの方法で標準情報を広め,技術自体を世の中に
認知させ定着させることの方が重要なのである.最
近は情報技術の基盤的な領域では,インターネット
関係以外でもLinuxを初めとして,フリーソフトやオ
ープンソースに属するソフトが大きな影響力を持ち
始めており,これに関連して最近はFree Standards
Group(FSG)と称するNPOも活動を始めている.OSI
についても早い段階から,より徹底した形で電子的
な形の標準情報のフリーアクセス化に踏み出してい
れば,その後の状況も少しは変わることもあったの
ではないかと思うのであるが残念なことである3).
筆者がJTC 1関連の活動で体験したもう1つの大き
なプロジェクトにはSSIがあった.SSIは Systems
Software Interface の 頭 文 字 で , 今 で は MS 社
PassportのSingle Sign-inサービスや,HTML文書の
Server Side Includeの方が有名になってしまった
が,OSを中心とするプラットフォームが提供するシ
ステム機能のインタフェース(API)を標準化して,
すべてのアプリケーションの移植性を確保できるよ
うにしようという,これまた相当に意欲的な構想で
あった.今ではかろうじてSC 22のタイトルの中に
だけ,その名を留めることになってしまったこのプ
ロジェクトは,JTC 1の設立に先立つ数年前に日本
が提起したものであるが,問題が問題だけに,当時
のTC 97内でも多くの議論を呼び,単純な結論には
なかなか到達できなかった.
結局日本がSSIに関する新規作業項目と,そのため
の新SC設置の提案を正式に行なったのは,TC 97最後
の年となった1986年末のことになるのであるが,米
国はこれに合わせて,ほとんど同じタイミングで,
IEEEで作業の進められていたPOSIXを新規作業として
提案してきた.投票の結果POSIXには十分な賛成が得
られたが,SSIには多くのコメントが寄せられ成立は
困難な状況であった.しかしこの問題は新SC設置問
題とも絡んだ新しい領域の問題ということで,JTC 1
はSSI関連事項の調査を目的として直属の特別作業グ
ループ(SWG)を設置し,さらにその議論をベースに
新 し く 時 限 の 技 術 調 査 の た め の 組 織 Technical
Study Group を 設 け る こ と と し た . JTC 1/TSG-1
(Interfaces for Application Portability)がそ
の組織で,調査目的はSSIに限らずユーザインタフェ
ースも含めた移植性の問題全般とし,調査期間は2年
間,コンビーナは筆者が務めることになった4).
この活動の顛末は省くが,もともと米国がこの問
題に関しては後ろ向きであった上に,日本が検討の
素材の1つにしていたCTRONの影も含めてさまざまな
思惑も絡み,結局具体的なNP提案に結びつけること
のできるような結果には到達することはできず,言
ってみれば調査研究らしい結末で決着せざるを得な
いという結果に終わった.文献1)でも触れたことで
あるが,OSIの場合もそうであったように,この世界
では机上設計のみから出発して影響力の大きい標準
を確立することは非常に難しい.インターネット関
連標準のように,何らかの参照インプリメンテーシ
ョンや,de facto的な実装とか製品の存在すること
を必須の前提条件と考え,戦術的には「小さく産ん
で大きく育てる」ことを旨とすべきなのだというの
が得られた教訓の1つである.情報規格調査会で最近
始められた情報処理学会試行標準制度は,どちらか
というとまだ産業技術としては未熟な先行領域も含
めて,技術仕様の公開とde facto化,およびそれら
を活用しての特に境界領域での研究開発の促進を狙
ったものであるが,このような種の中からも,少し
でも将来の日本発の国際標準が育って欲しいものだ
と願っている.
いずれにしても標準化活動の様相も,もう旧聞に
属するダウンサイジングを初めとする技術の急展開
もあって,ここ4∼5年で随分変わってきた.情報分
野の国際標準化活動ではIBM社と共に永い間メジャー
プレイヤの1つであったDEC社が消えて,代りにより
小さな企業が重要な役割を果たすようになってきた
ことなども象徴的な出来事の1つであろう.
先にも触れたように,情報分野の公的な国際標準
化のもっとも大きな課題の1つは,技術の急速な展開
と競合の中にあって,標準化の速度を技術自身の進
展速度とマッチングの取れる状況にもってゆくとと
もに,そのためにも作業の早い段階から関連技術情
報を世の中に開示し,試用や評価を可能にすること
4
であり,また適切なフィードバックのもとに技術仕
様自体をスパイラルに改良してゆくことを可能にす
ることである.旧来の紙ベースのビジネスモデル
が,このような要求と整合性の良くないことは明ら
かであり,何らかの新しいビジネスモデルの導入に
よって紙の呪縛から脱することを試みることこそ
が,これからのJTC 1,あるいはその上層のISOやIEC
の探るべき道ではないかと考えられる.
標準化の作業自体は国際的にもペーパーレス化
が進み,また我々の技術委員会の審議も,事務局
の努力もあって本年からは基本的に完全な紙無し
となった.この次はある意味では標準規格自身の
ペーパーレス化であると言うこともできるかも知
れない.学会の中で標準化活動を進めることは,
アカデミアと産業界の連携という観点からも非常
に意味のあることであるが,今後の情報分野の標
準化についても是非この利点を活かし,新しい体
制の下でさまざまな課題に挑戦していってもらい
たいものだと考えている.
参考文献
1) 棟上昭男:情報処理学会における情報技術標準化
活動の足跡と展開,情報処理,Vol.44,No.7,
pp.766-771 (July 2003)
2) 棟上昭男:真のIT国家に向けて − 新生JEITAへ
の期待,ITインダストリーレポート,2001年3
月,pp.16-20 (March 2001)
3) Malamud, Carl(高橋徹訳):インターネット見
てある記(4);またジュネーブのITUで − OSI
編 , b i t , Vol.25 , No.7 , pp.44-50 ( July
1993,7回にわたる連載の第4部)
4) Takahashi, S., Tojo, A.:The SSI story: What
it is and how it was stalled and eliminated
in the International Standardization arena,
Computer Standards & Interfaces, Vol.15,
No.6, pp.523-538 (1993)
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新時代における規格・認証制度のあり方と
情報分野における標準化活動の施策
勝亦 眞人(経済産業省)
1. はじめに
去る6月17日,第5回日本工業標準調査会総会が開
催され,「新時代における規格・認証制度のあり方
検討特別委員会報告書」を審議し,これを承認しま
した.この承認事項の内容は次回通常国会で「日本
工業標準化法」の改正という形で具体化されます.
総会に先立ち,6月5日には第14回日本工業標準調査
会標準部会が開催され,いくつかの施策のうち,特
に国際標準化を重視した組織の編成替えと,各専門
委員会における審議内容の在り方(案)等が紹介さ
れました.これは8月27日の標準部会で審議され,各
専門委員会に対する要請として決議されました.
一方,情報技術専門委員会は,平成14年度の専門
委員会の中で,TR及びJIS案件の高価値化,高品質化
に向けた施策を検討してきましたが,その結果,12
月20日開催した第10回情報技術専門委員会で,TR及
びJIS案件に対する事前スクリーニング機能を強化す
ることにより案件を厳選し,節約できたリソース
を,社会や市場のニーズに裏打ちされた形の案件,
政策の具体的な項目と直結した案件の切出し,情報
技術分野での標準化活動の方向付けの議論に振向け
ることを決議し,既に15年度の審議計画策定に当た
ってこのような方針の実践に入っています.今回は
このような一連の検討の経緯をご紹介し,現在情報
技術標準化活動がどのような方向に向かっているの
かをご紹介します.
2. 日本工業標準調査会総会の承認内容
2.1 「21 世紀に向けた標準化課題の検討」から「新
時代における規格・認証制度のあり方の検討」までの
経緯
日本工業標準調査会(以下JISCという)は,平成
12年5月に公表された「21世紀に向けた標準化課題
検討特別委員会」の報告を受けて,平成13年1月の
省庁再編と同時に改組され,現在の2部会,2特別委
員会の体制となった.同年8月には標準部会として
「標準化戦略」を発表し,これからの規格作成につ
いての考え方を示した.「標準化戦略」では,「市
場適合性・新しいニーズへの対応」,「国際標準化
の推進」,「研究開発との一体的推進」を提言して
いる.
JISCが改組されて2年を経た現在,規格に求められ
る産業政策としてのニーズは多様化し,その重要度
も増してきている.たとえば,「標準化戦略」にお
ける国際標準化の推進の説明では,「欧州は自前の
技術を,国際標準化することで世界に浸透させつつ
ある」と記述してある米国標準化協会(ANSI)の戦
略を引用して,欧米先進国が国際規格を戦略的に活
用している現実を紹介した.その傾向はますます強
力なものとなり,競争相手を国際市場から追い出す
ための手段にもなってきている.
このようなことから,JISCは「新時代における規
格・認証制度のあり方検討特別委員会」を立ち上
5
げ,このような論点の整理と方向付けを行った.同
特別委員会は,平成14年8月8日から活動を開始し,
平成15年3月25日に報告書をまとめた.以下はその骨
子である.
1. 国際標準化を進め,産業への良好な影響を実現
する
(1) 競争力強化に資する標準化を推進する
(2) 社会ニーズに対応する市場を創生する
(3) 強制法規への引用を促進する
(4) 標準化と知的財産権とを巡る課題について
の認識を深める
2. JISC体制の改善と制度の見直しを行う
(1) 国際規格化のための対応体制を整備する
(2) 規格作成の迅速化・効率化を進める
(3) 強制法規への引用促進に向けた改善を行う
3. 今後の課題を今後とも継続検討する(新時代の
標準化政策に向けて)
(1) フォーラム規格との連携を進める
(2) 標準技術に含まれる知的財産を安定させる
(参考) http://www.jisc.go.jp/report/pdf/
sokai/sokai5.pdf
2.2 「新時代における規格・認証制度のあり方特別
委員会」の報告内容
2.2.1 国際標準化を進め,産業への良好な影響を実
現する
(1) 競争力強化に資する標準化を推進する
WTO(世界貿易機関)/TBT(貿易の技術的障壁)
協定に基づき国際規格との整合化が要求される現状
において,国際規格が存在する場合には,JISは国
際規格に準拠した規格とすることが求められ,日本
の各産業はその規格に基づいた製品を供給しない限
り北米だけでなくアジアにおいても市場を獲得する
ことが難しくなってきている.このような環境で,
日本の産業が高い競争力を維持していくためには,
日本の優れた技術力を国際規格化して行くことが必
須の要件となる.このためには,これまでの全会一
致方式のコンセンサスによる規格作成作業ではな
く,トップ企業の技術力をもとにした規格制定及び
国際提案が不可避である.さらに国際規格として提
案するためには,国内における規格審議の迅速化
と,規格を巡る世界情勢の分析が必要であり,現在
のJISCにおける審議方法の見直しが喫緊の課題とな
っている.
具体的には,「トップレベル技術の規格を作成する
こと」「迅速な国家規格を作成すること」「国際規格
への迅速な提案方策を講じること」が必要である.
「トップレベル技術の規格を作成すること」につ
いては,「技術的先頭集団の主導による規格作り」
と,「研究開発成果の標準化」に注力する.
従来,JISの策定に際しては,生産者,需要者,中
立者の利害関係者によるコンセンサス形成が要求さ
れてきた.一般に原案作成の場は,工業会等の委員
会で作られることが多い.このような委員会では,
多くの場合,多数決ではなく,全会一致方式のコン
センサスによって決められており,規格の技術レベ
ルはほとんどの企業において対応が可能な水準に規
定されている.ところが実際の市場では,このよう
な規格を大幅に上回る品質レベルでの製品等が流通
している.欧米では,ICカード,自動車用燃料電池
などの先端的な技術分野において,当該技術を国際
市場に普及させ,シェア獲得を図る目的で,自国の
トップレベルの技術を国際規格にする戦略的な活動
を進めている.先端技術分野での規格作成は,有力
企業がコアとなって「フォーラム」を形成し,「フ
ォーラム規格」としてトップレベルの標準作りが行
われているケースが多い.今後は国際規格化の観点
から,このように「フォーラム」から提出される規
格原案についてもJISの対象とする.またコンセンサ
スレベルが成熟していない場合でも,JISに準じた位
置付けで公表し,市場での利用度合いによってJISに
できる新しい標準を活用する制度を構築する.
また,先端技術分野においては,自国の技術を国
際規格にして世界市場に浸透させる戦略的活動とし
て,研究開発と標準化が同時並行的に進む状況が生
じている.従来,このような傾向は,情報通信の分
野において見られることが多かったが,今後は,バ
イオテクノロジー,ナノテクノロジー等,あらゆる
先端技術分野に波及していくことが予想される.既
に欧米諸国では,「標準化を目指した研究開発」に
対する財政支援等の政策を積極的に展開している.
我が国では平成14年12月に「経済財政運営と構造改
革に関する基本方針2002」に基づき,関係府省等が
「産業発掘戦略(技術革新が開く21世紀の新たな需
要)」として,4分野(環境・エネルギー,情報家
電・ブロードバンド・IT,健康・バイオテクノロジ
ー,ナノテクノロジー・材料)の技術開発,知的財
産・標準化,市場化等を内容とする戦略を策定し
た.企業サイドの標準化活動への取組みも革新が必
要であり,従来の標準化活動は工場の一部門に位置
付けられていることが多いのが現状であるが,今後
はマーケティング部門や研究開発部門との連携が必
要である.
「迅速な国家規格を作成すること」については,
現状では12条申し出が規格全体の8割を占めるなど,
産業界が中心となって作成されている.迅速化のた
めには,「国が主体的に取り組む規格」と「産業界
が中心となって作成される規格」に対する取組みを
分けて考え,特に後者についてはJISC内で行ってい
る検討のうちで産業界の検討と重複している部分を
省略することが有効である.JISは主務大臣が制定し
ていることから,従来は規格の技術内容についても
国が説明責任を持たなければならないとの理解の下
に,JISC内での技術内容,規格の体裁等についても
審議を行ってきた.しかし,技術の多様化が進む中
ですべての規格について国が内容まで含めて理解す
ることは現実にはきわめて難しい.従って,産業界
が作る規格について,国と原案作成団体とで説明責
任を分担し,JISCでは規格作成過程での公平性,客
観性,透明性が確保されているかを中心に審議を行
うことを明確化する必要がある.
6
「国際規格への迅速な提案方策を講じること」に
ついては,JISCを使った迅速化法による国際規格へ
の提案を積極的に考える.JISCから国際提案への提
案は,ISO/IEC専門業務用指針によればJISCの規格で
あれば,迅速法によって直ちにDIS投票に持ち込むこ
とが可能である.しかしながら,これまでの迅速法
利用の例では,電気情報通信分野において,国内企
業を中核メンバとする「フォーラム」が,ISO/IECと
リエゾン関係にある欧州の標準化団体ECMAを使って
行うか,又はJISCとECMAの両者から並行して実施し
た実績はあるが,JISC単独で実施した実績はほとん
どない.その理由としては,ECMAを使った方が,あ
らかじめ国際的な合意が得られやすいのでDIS投票に
際に有利であるといったISO/IECの投票制度に起因す
るものがある.また,国内の審議団体との調整が必
要なこと,JISCのパテントポリシーの運用が欧州の
産業団体に比べて厳格であり,「フォーラム」では
対応できない事情がある.今後,国際標準化を政策
的に進めていく観点から,「フォーラム」などが国
内審議団体とは無関係にJISCに規格提案し,それを
JISCの判断で国際提案できる仕組みが必要であり,
JISCにおいて国際提案,国際投票の審議を行うこと
ができるように体制を整備する.
(2) 社会ニーズに対応する市場を創生する
消費者の志向が,これまでの品質・性能から「地
球環境の保護」,「健康・安全」,「使い易さ重
視」,「リサイクル品の優先使用」など価値観が多
様化する中で,広範な標準化分野の中から,消費者
に関連が深く,かつ関心が高い分野を製品分野横断
的な観点から明確化することが重要となっている.
具体的には,高齢者・障害者の自立した生活及び社
会的活動を促進するため,製品,サービス,生活環
境へのアクセシビリティ(受け入れられ易さ,利用
のし易さ)に配慮した標準化の推進や,消費者保護
の観点から,電子商取引に係る規範,消費者の苦情
対応等の新たな社会ニーズ,シックハウス症候群等
の化学物質が健康に及ぼす被害を減少させるなど健
康・安全の確保等に必要な標準化のニーズが増加し
ている.また,環境配慮に対するニーズは社会の大
きな流れとなっている.とりわけ,循環型社会形成
に資する3R(リデュース,リユース及びリサイク
ル)配慮のための規格の重要性が高まっている.さ
らに,地球温暖化問題への対応として重要な省エネ
ルギー・新エネルギー・新エネルギー技術に係る標
準化も重要性が増大している.
このような社会ニーズに対応した技術・新製品を
市場に送り出し,さらには,これまで市場が形成さ
れていない,又は極めて小さな市場に限定されてい
た分野に,新たに大きな市場を作り出すことも可能
である.このように標準化政策は,需要サイドへの
産業振興策としても有効に活用することができると
考えられている.例えば,我が国は2015年には人口
の1/4が65歳を越える世界一の高齢化先進国に突入す
ることが予想されている.しかしファッションや家
電製品などに代表される市場はいまだに若者を対象
とした商品を優先し,高齢者・障害者にとっても使
いやすい商品の開発は十分には行われていない.こ
れを改善するためにISO/IECでは,我が国のリーダシ
ップの下に2002年,高齢者・障害者に配慮した規格
を作成するためのISO/IECガイド71を制定した.我が
国でも平成15年6月これに対応するJIS Z 8071を制定
する予定である.情報分野でも「高齢者・障害者向
け配慮設計−情報通信機器・サービス−」として,
「共通指針」「情報通信機器」「ウェブアクセシビ
リティ」の国際提案を目指して標準化活動を推進し
ている.今後,製品・サービスに係るすべてのJISの
制定,改正にISO/IECガイド71を当てはめていくこと
で,我が国は世界でもっとも早く新しい市場を立ち
上げることが可能となる.
(3) 強制法規への引用を促進する
強制法規における任意規格の活用に関しては,欧
州ではニューアプローチ指令に基づき強制法規の技
術基準は必須要求事項のみに限定し,その要求事項
の技術的な指針としてEN規格を活用する制度が運用
されており,又米国では国家技術移転促進法
(NTTAA)に基づき連邦機関に対して任意規格を活用
することが指示されている.このことは強制法規当
局の観点からすれば,利害関係者のコンセンサスの
もとで作成された任意規格を活用することによっ
て,高いレベルの社会的信頼性を得ることができる
というメリットが存在すると考えられる.
我が国においても平成14年3月に閣議決定された
「規制改革推進3カ年計画(改定)」は,強制法規の
技術基準の性能規定化と仕様例としてのJISの活用,
技術基準等とJISの整合化,強制法規当局と任意分野
における適合性評価機関との間のネットワークの構
築などを進めていくことを示している.
現在,JISは建築基準法,労働安全衛生法,高圧ガ
ス保安法,電気事業法等の強制法規において,延べ
約5,000規格が技術基準又は性能規定化された技術基
準に適合する仕様例等(以下技術基準等という)と
して引用されているが,これらの要請に対応するた
めには,従来にも増して強制法規当局との連携を図
り,技術基準等に活用されるJISを整備していくこと
が重要である.
(4) 標準化と知的財産権とを巡る課題
情報社会の進展によるネットワーク化の進展は標
準作成の姿をも変革し,多くの場合,有力企業が中
核となって「フォーラム」を結成し,一つの規格を
作り上げ,世界市場を席巻する原動力となってい
る.ここで作られた規格は,まだ製品の姿が見えな
い段階で最先端の技術をもとに作成される.従来の
規格は,市場が成熟期を迎えてから作られる「事後
標準」がほとんどであったが,このような最先端技
術を使った製品の場合には,市場が創出される前に
標準が作られる「事前標準」が中心となる.
このような規格は,一般には複雑に絡み合った技
術によって構成されるので,複数の権利者による知
的財産権を含んでいる.従って,この規格を使って
製品を作ろうとすると,規格に含まれているすべて
7
の知的財産権の実施許諾を受けなくてはならなくな
る.しかし,被許諾者が規格に含まれる知的財産権
を探し出して実施許諾を受けるというのは現実的で
はないので,「パテントプール方式」がとられるこ
とがある.また,それぞれの標準化団体は,規格に
含まれる知的財産権に対して「合理的かつ非差別的
な条件に基づき実施許諾する」旨の声明書を出させ
る等を決めた「パテントポリシー」を持っている.い
わゆるRAND(Reasonable And Non-Discriminatory)
条件と言われている.
しかし,このような標準と知的財産権を巡る仕組
みは歴史も浅く,いまだ多くの課題がある.「フォ
ーラムの設立及び標準化活動と独占禁止法との関
係」については,平成13年7月に公正取引委員会が
「技術標準と競争政策に関する研究会報告書」を発
表して,技術標準の形成過程における問題,技術標
準確立後における問題をまとめている.ただし,
DELL社事件などみても,参加した者が自社の保有す
る知的財産権についてどこまで責任を持てばよいの
かといった点は課題として残っている.パテントプ
ール方式については,米国の場合管理会社が反トラ
スト法に違反しないことを確認するために米国司法
省に確認を求め,司法省は「ビジネス・レビュー・
レター」を企業に送付している.我が国では,平成
11年7月公正取引委員会事務局から,「特許・ノウハ
ウライセンス契約に関する独占禁止法上のガイドラ
イン」が公表されている.標準化団体が決めている
パテントポリシーについては,運用の仕方が標準化
団体によって相当異なっていることも大きな課題で
ある.基準を作成するフォーラムと特許を管理する
パテントプールとが別組織になっている場合,
「RAND条件を受け入れるという声明書は誰が提出す
るのか」「その有効性はどの程度あるのか」「適正
な対価とはどの程度を指すのか」等について明らか
にする必要がある.また近いところでは,JPEG事件
のように既に多くの製品が使っている国際規格につ
いて特許の権利主張があった時に,権利の制限を特
許法,または独占禁止法等で制約できるのかという
点についても検討が必要である.特許の実施許諾時
のロイヤリティについては,W3Cが決定した「ロイヤ
リティ・フリー」条件での規格作成が大きな話題と
なっており,今後Linux等で行われている「オープ
ン・ソース活動」が次第に力を強めつつある.この
ような状況の中で,JISCとしてどのように考えるか
を検討する必要がある.
2.2.2 JISC 体制の改善と制度の見直しを行う
(1) 国際規格化のための対応体制を整備する
具体的には,「国際提案の迅速化に向けたJISC体
制の整備」「フォーラム規格を活用した国際規格提
案」「国際提案のための国内外における活動の強
化」などを整備する.
「国際提案の迅速化に向けたJISC体制の整備」に
ついては,手続きとしては,国際標準化における国
内意見の提出は,国内全体の合意形成を経て行うべ
きこととなっている.現在は国内審議団体依存型の
提案の仕組みとなっているが,効率的な合意形成を
図るために,国際標準化を政策的に進めていく必要
がある場合など,案件によっては関係するJISC技術
専門委員会等において,国際「標準化戦略」につい
ての基本方針,具体的提案方法等を検討することと
し,ISO/IECへの我が国からの新規提案,提案後の投
票対応等についても決定できるよう現行制度の改善
を図る.また,国際提案を実施する際,迅速法の適
用に当たっては,これまでの国内審議団体による既
存規格提案だけでなく,以下のツールを有効に活用
する.
a) 関 係 TC の カ テ ゴ リ A リ エ ゾ ン 団 体 ( 例 え ば
ECMA)が既存の規格を提案する
b) ISO又はIECの理事会が認めた国際標準化団体が
作成した規格を提案する
c) ISO/IECとの間で正式な専門業務協定を結んだ
機関(CEN,CENELEC)が当該TC又はSCと合意の
上,同機関が作成した規格案を提案する
d) 既 存 有 力 SDO ( ASTM : American Society for
Test and Materials,ASME:American Society
of Mechanical Engineers等)の規格を迅速か
つ修正なしでISO/IECとダブルロゴで国際規格
化する
「フォーラム規格を活用した国際規格提案」につ
いては,フォーラム結成時に透明性が確保されてお
り,フォーラム外への合理的かつ非差別的な条件で
の実施権付与を約束した規格であって,国際規格と
することが適当と認められた場合は,フォーラム規
格制定に至るまでの経過を確認した上で,簡素化し
た手続きでJISにすると共に,関係TC/SC国内審議団
体によらずJISC技術専門委員会等によって具体的な
提案方法を決定し,提案後のISO/IECからのDIS投
票,FDIS投票に対する回答案の審議も行うよう体制
を整備する.
「国際提案のための国内外における活動の強化」
では,JISC事務局と国内審議団体が当該分野におけ
る国内/国際動向等を把握し情報を共有化するなど
連携を強化し,国際規格提案に対する中長期的な方
針,実施計画等を策定するなどの体制強化を図って
行く.我が国主導で国際審議を進めるための方策と
して,新TC/SCを提案するか,既存TC/SCを活用する
か等を幹事国業務の引受けと合わせて検討すること
も重要である.さらに国際的規模での賛同者確保,
仲間作りを展開することが不可欠であり,そのため
に国際標準化事業,国際的フレームワーク,関係諸
機関の有機的な活用を図る.
(2) 規格作成の迅速化・効率化を進める
JIS作成に当たっては,国が原案作成段階から主導
的に取り組むケース(工業標準化法第11条に基づく
ものなので,このような案件を「11条案件」と呼
ぶ)と市場ニーズによって業界団体等関係者が原案
作成を行い主務大臣に申し出るケース(このような
案件を同法12条に基づくものなので「12条案件」と
呼ぶ)がある.また,技術革新の著しい分野等にお
いて,JISに至る前段階で技術標準等を積極的に公表
8
することによって,JIS制定のためのコンセンサス形
成を促進することを狙ったTRがある.今後は,新た
な標準化政策を推進するために,これまで取り組ん
できた規格作成プロセスの電子化等に加え,「TS
(標準仕様書)制度の導入」「CSB(特定標準化機
関)登録制度の導入」「TS制度及びCSB登録制度を活
用した規格化のための新たな体制整備」を進める.
「TS(標準仕様書)制度の導入」として,現在の
TRタイプⅠ,ⅡをTS(Technical Specification)と
して公表・発行する.運用については後述するが,
この制度の導入によってTSは「暫定JIS」としての権
威付けがされ,早期に普及拡大が図られると共に,
JIS制定に至るコンセンサス形成の更なる迅速化が期
待できる.
「CSB(特定標準化団体)登録制度の導入」は,一
定 要 件 を 備 え て い る 業 界 団 体 等 に 関 し て は , CSB
( Competent Standardization Body ) と し て 登 録
し,その機能を最大限に活用することによって,JIS
制定等の迅速化・効率化が図られる制度を導入す
る.JIS原案の作成は,現在約550の業界団体等につ
いて進められているが,「専門家に加え他の利害関
係者の意見を十分に反映する機能を有している」
「WTO/TBT協定のCGP(Code of Good Practice)の受
入れを表明している」等,公平性,客観性,透明性
の確保等において国又はJISCと同等な機能を持って
標準化活動を行っている団体も存在している.具体
的な要件は以下のような観点から決めていく.
a) 技術的及び形式的に適正な規格案を作成する能
力を有する
b) 利害関係者の意見等を十分に反映できる機能
(異議申し立てに対する適切な処理を含む)
c) 透明性確保のための機能を有する
d) 規格の維持管理機能を有する(5年以内の確実
な見直しを含む)
e) 国際規格開発活動への積極的な参加を行う
f) 十分な実績を有すること
g) JISCによる監査等に対応可能であること
「TS制度及びCSB登録制度を活用した規格化のた
めの新たな体制整備」については,今後は国が原案
作成段階から主導的に取り組むべき分野を限定し,
それ以外の分野については,規格化の必要性等の判
断を国から市場適合性に委ねるとの考え方を基本ス
タンスとする.また,作成されたJISについて,規
定内容に対する不備が指摘された場合にあっては,
国及びJISCでは実質的な技術的内容,体制等の審
査・審議がなされないこともあり,従来にもまして
国と原案作成団体とが連携強化を図って対応するこ
とが必要になる.新たな体制の概要は以下のように
なろう.
a) 国が原案作成段階から主導的に取組み,JISを
制定する分野を限定する
・ 分野横断的な要素技術に係る規格
・ 社会インフラ整備に係る規格
・ 強制法規技術基準等に引用される規格
・ 政策目的遂行に資する規格(消費者保護,環
境保護,高齢者・障害者対応等)
b) a)の限定分野であっても,CSBから法12条によ
り申し出された原案については,JISC審議は必
要最小限の内容にとどめる
c) a)以外の分野については,JIS制定の必要性判
断は,市場適合性に委ねることとし,申し出時
点において市場適合性の確認ができない原案
は,速やかにTSとして公表し,3年以内の期間
において市場適合性があると判断された場合に
は速やかにJISとして制定する
d) c)によってJISとして制定されたものについて
は,5年以内に改正・確認の申し出がされなか
った場合は廃止する
(3) 強制法規への引用促進に向けた改善を行う
主たる施策は,「強制法規当局と標準化機関との
連携強化」「技術基準等に引用されやすい規格体系
の整備」「引用JISの原案作成を行う業界団体等に対
する支援」「規格の『側面』,等級・グレード付き
JISマークの活用」等である.
「技術基準等に引用されやすい規格体系の整備」
としては,対応国際規格が容易に確認できる規格番
号体系を採用する.また,強制法規に引用されやす
いように従来の製品規格のうち,例えば安全性に係
る要求事項と,それ以外の品質性能に係る要求事項
を別規格として制定し,強制法規及び国際規格への
対応において,より効果的な体系整備を図る.
「規格の『側面』,等級・グレード付きJISマーク
の活用」については,地球環境保全や安全志向,使
いやすさ重視,リサイクル品の優先使用,高齢者・
障害者対応などから,特定の「側面」,等級・グレ
ード付きJISマークによって,適合性を認証された製
品であることや,使用・消費者への情報提供と普及
拡大が図られるとともに,強制法規におけるJISマー
ク制度の活用促進にも資することが期待される.
2.2.3 今後の課題−新時代の標準化政策に向けて−
(1) フォーラム規格との連携を進める
従来から,デジュール標準に対して,それ以外の
ものとしてデファクト標準と呼ぶことが多かった
が,デファクト標準の中にも市場競争の結果によっ
て標準となるものと,企業間協力により製品の市場
投入前に規格が作成されるものの2通りが存在する.
後者を「フォーラム規格」と呼ぶと,フォーラムの
中には開放性・透明性を高めるとともに,パテント
ポリシーを設けて知的財産の効率的な活用を図るも
のもある.このような規格を迅速に国際標準に繋げ
ることができれば,新製品・新技術の創出に大きく
寄与する.従って,国としても「フォーラム」が内
包する法的リスクを可能な限り軽減するように,
「フォーラム」の開放性・透明性を高めるための仕
組み作り等について,どのような支援が可能かを検
討することは有意義である.
(2) 標準技術に含まれる知的財産を安定させる
この件については,先に状況を述べたとおりで,
いろいろな側面からの検討がなされている.JISCの
9
パテントポリシーについては,先般「フォーラム」
及びパテントプールの改善・多様性に十分対応でき
ないという問題が顕在化したが,具体的な事例に即
して,どのように運営すべきなのかを検討する必要
がある.
3. 日本工業標準調査会標準部会での決議事項
3.1 日本工業標準調査会総会議決項目の展開
第14回日本工業標準調査会標準部会では,JISCに
おける議論をうけて,以下のような審議あるいは報
告を行った.
・ CSB制度及びTS/TR制度の概要,運営方針等につ
いて
・ 国際専門委員会(仮称)の設置について
・ 標準化と研究開発・知的財産を巡る課題
・ 国際標準化活動基盤強化のためのアクションプラ
ン策定について
・ 専門委員会における審議内容(国際標準化関係)
の在り方について
・ 研究開発政策と標準化政策の連携のための方策に
ついて
このうち,既に2.で紹介した項目と大筋一致するも
のは除外して,内容を記す.なお,これらについて
は,7月9日に開催した第12回情報技術専門委員会で,
報告・審議し,積極的に取り組むことが決まった.
(参考) http://www.jisc.go.jp/report/pdf/
hyoujyun/jiscsc14.pdf
3.2 国際専門委員会(仮称)の設置について
従来,標準部会の下に「ISO専門委員会」「IEC専
門委員会」を設置して,ISO及びIECの総会,ISO理事
会,TMB,IEC評議会,SMB等の上層委員会の対処方
針,国際標準化戦略等の審議を実施してきた.
一方,「新時代における規格・認証制度のあり方
検討特別委員会報告」にあるように,基準認証を巡
る課題に対して戦略的に国際的活動を行う必要か
ら,これまでのISO専門委員会及びIEC専門委員会を
発展的解消する形で,標準部会及び適合性評価部会
の下に「国際専門委員会(仮称)」を設置し,以下
の事項について取組むこととなった.
a) ISO及びIECの運営に係る基本的対応方針の審議
b) 国際標準化戦略に係る分野横断的事項の調査・
審議
c) 途上国協力に係る基本的考え方の審議
d) WTO,APEC等の国際的な基準認証の枠組みの活
用に係る意見交換
e) ISO・IECの上層委員会の動向把握
f) WTO/TBT委員会,APEC/SCSC,ASEM/SCA,PASC等
の動向把握
g) その他
また,従来両専門委員会で審議していたISO・IEC
の上層委員会での個別議題への対処方針について
は,(財)日本規格協会に検討を委任する.
3.3 国際標準化活動基盤強化のためのアクションプ
ラン策定について
各専門委員会は平成16年度から3年程度の期間で活
動する,国際標準化基盤強化のアクションプランを
検討・策定することが要請される(8月27日に開催さ
れた第15回標準部会で正式決定).アクションプラ
ンには,以下の事項が含まれなければならない.
a) 国内審議団体の活動評価
b) 重点TC/SCの抽出と我が国としての活動目標
c) 国際標準提案テーマ(選定の判断基準の考え方
等も含む)
d) 提案テーマに関する国際市場(我が国の技術的
優位性も含む)の分析
e) 具体的な提案方法
f) 国際議長,国際幹事及びコンビーナの取組み
方策
g) 国際標準策定プロセスにおける具体的な対応方
策また,アクションプランは,知的財産戦略本
部及び総合科学技術会議知的財産戦略専門委員
会における標準化と知的財産との関係に関する
検討を踏まえたものとする.
各専門委員会は,このようなアクションプランを
平成16年2月末までに標準部会に報告する.
3.4 専門委員会における審議内容(国際標準化関
係)の在り方について
各専門委員会における,今後の国際標準化関係の審
議内容について下記の通りとする旨,承認された.
a) ISO及びIECへの新業務項目提案の在り方について
(提案の政策的側面,提案の手法等)審議する
b) 国際標準獲得に必要な研究開発及び調査研究等
のテーマ選定について審議する
c) CD,DIS(FCD)及びFDISの回答結果については,
事務局から定期的に各専門委員会に報告する
d) 国内審議団体の活動実績及び活動計画について
は,必要に応じて,事務局から定期的に各専門
委員会に報告する
e) 関連するISO/IECの動向については,事務局か
ら定期的に各専門委員会に報告する
4. 情報技術専門委員会の対応
4.1 案件の高価値化,高品質化と標準化活動の社会
要請,政策との緊密化に向けて
情報技術専門委員会は,平成14年度の委員会の場
で,TR及びJIS案件の高価値化,高品質化に向けた
施策を検討してきた.その結果,12月20日開催した
第10回情報技術専門委員会で,TR及びJIS案件に対
する事前スクリーニング機能を強化することにより
案件を厳選することを決議した.具体的には「海外
有力コンソーシアム規格をベースにしたTRの作成」
と「要約JIS」の取扱いについて方針を検討したも
のである.またこの方針は既に,15年度の審議計画
策定に当たって実践している.節約できたリソース
は,社会や市場のニーズに裏打ちされた形の案件,
政策の具体的な項目と直結された案件の切出し,情
報技術分野での標準化活動の方向付けの議論に振向
ける.
10
4.2 海外有力コンソーシアム規格をベースにした TR
の作成に係る対処方針
原則として,TRを作成しないことを決めた.ただ
し,その必要性が情報技術専門委員会で認められた
ものは作成する.また,海外有力コンソーシアム規
格をベースにしないTRは従来と同様,作成する.こ
のようなスクリーニングを作成着手前に行うため,
翌年度の審議計画を作成する時点でアドバイザリ・
グループ(以下AGと呼ぶ)が検討し,検討結果を情
報技術専門委員会に報告し,スクリーニングを行う
ことにした.
検討の出発点は,当該TRは業界規格でよいのでは
ないかと思えるものがあること,時期尚早のものも
ありTRとすることに抵抗があるとの意見であった.
これに対しては,必ずしもすべての条件が整わない
ものでも公表することに意味があるのがTRであると
の意見もあった.検討の過程で,当該規格を和訳し
て出版することについて,利用者にとってかつて程
言語のバリアは高くなく,容易にかつ無料で入手で
きる環境にあるとの意見が大勢を占めた.また,TR
はほとんどINSTACから提案されており,販売量も調
査しその状況を参考に,上のように決議した.
4.3 既に出版されている国際規格の要約 JIS 化に係
る対処方針
原則として,要約JISを作成しないことを決めた.
かつては国際規格を我が国が国家規格として受け
入れる証としての位置付けはあったが,WTO/TBT協定
でも条件は緩和されている(国家規格が存在しない
場合,国際規格を準用する).情報の場合は,強制
法規として引用される場合も少ない(強制法規とし
て引用される場合には,我が国の規格となっている
ことが必要)こと,利用者の言語環境も改善されつ
つあることから上のような結論に達した.海外有力
コンソーシアム規格のTRを原則作成しないのと同じ
様に運用する.この案件に対しても,翌年度の審議
計画を作成する時点でAGが検討し,検討結果を情報
技術専門委員会に報告し,スクリーニングを行うこ
とにした.
5. 終わりに
昭和24年7月1日に日本工業標準化法が施行されて
から53年経過し,その間社会環境,国際環境の変化に
ともない標準に対する考え方が徐々に進化してきま
した.今回の一連の変革は,これまで以上に大きなも
のであり,特に時代の先端を走る情報技術分野にあ
っては影響は少なからぬものと思います.ただし,4.
の経過などを考えますと,情報技術専門委員会で自己
変革を遂げようと手探りで指向していたものは,日本
工業標準調査会総会あるいは,日本工業調査会標準部
会での結論,方向と一致したものであることが分かり
ます.時代の社会的要請と市場性に裏打ちされ,政策
と緊密に関係付けられた標準と,標準の高価値化,高
品質化,迅速化という皆様の働き掛けとが融合した姿
を目指して,今後とも皆様のご活躍とご協力をお願い
いたします.ご意見ご要望がありましたら,お寄せ下
さい.
11
< 最 近 の 国 際 会 議 か ら >
■ SC 7(Software Engineering/ソフトウェア技術)
総会報告
SC 7 専門委員会
委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)
1. 開催場所:モントリオール(加)
2. 開催期間:2003-05-12,16
3. 参加国数/出席者数:17 カ国/109 名
オーストラリア(8),ベルギー(1),ブラジル(2),
加(20),デンマーク(1),フィンランド(1),仏(3),
独(3),アイルランド(1),日本(11:篠木 裕二[日立],
東 基衞[早大],込山 俊博[NEC],小川 清[名古屋市
工業研究所],西山 茂[NTT アドバンステクノロジ],
松尾谷 徹[東京理科大],加藤 重信[品質経営研究所],
山本 喜一),韓国(6),南アフリカ(2),スペイン(3),
スウェーデン(3),英(14),米(19),ロシア(2)
4. 特記事項
4.1 Advisory Group 会合
11 日(日)全日と 15 日(木)夕方に開催され,日
本からは山本(慶大),西山(NTT-AT)が出席し,WG
6 コンビーナとして東(早大),WG 18 Acting Convener
として加藤が出席した.会合は,大きな意見の相違点
もなく円滑に進められた.特筆すべき話題は,ITU-T
の代表が関係強化のため,ITU-T の活動内容などのプ
レゼンを実施したことである.
4.2 総会
12 日(月)午前,及び 16 日(金)の午後に開催さ
れた.例年通り事前の AG において議案審議が尽くされ
ていたため,総会自体は円滑に推移し,54 件の議決案
をほぼ全会一致で決議した.作業進行中のプロジェク
トを次の段階に進めるための決議は省略し,SC7 の組
織及び日本からの参加に関わる決議だけを述べる.
な お , レ ゾ リ ュ ー シ ョ ン を ま と め る Drafting
Committee のメンバに小川(名古屋市工研)が参加し,
日本意見の反映の正確性を期した.
1) WG 17(Open Distributed processing - Enterprise
Language)及び WG 18(Quality Management)を
廃止する.
2) WG 9 の名称を System Integrity から System and
Software Integrity に変更する.
3) ISO/IEC 12182, Categorization of software の
維持を WG 9(System and Software Integrity)
から WG 6(Evaluation and Metrics)に移す.
4) Requirement Engineering Tool Requirements の
報告を承認し,準備が出来次第 NP の提案を行う.
承認されれば,WG 4 が担当する.
5) Systems Quality Management の Study Group を立
ち上げる.日本からは,加藤が参加する.結果は,
2004 年 2 月 15 日までに報告される.
6) WG 2(System Software Documentation)の将来
計画と IEEE-CS の適切な関連を検討する Study
Group を立ち上げる.日本からは山本が参加する.
結果は,次回の総会(ブリスベン,オーストラリ
ア)で報告される.
7) 改 定 期 を 迎 え る 14143-1:1998, Software
Measurement -- Functional size measurement -Definition of Concepts の改定方法を検討する
Study Group を立ち上げる.日本からは,西山,
高橋が参加する.結果は,2004 年 2 月 29 日まで
に報告される.検討結果により,2004 年 3 月 15
日までにブリスベンでの議論のため,NP を提案
する.
8) ITU-T Rec. X.901-4│ISO/IEC 10746, Reference
Model of Open Distributed Processing の改定の
ための要求条件を明確化するための Study Group
を立ち上げる.メンバ追加は,2003 年 9 月 15 日
まで可能.次回ブリスベン会議で中間報告を行う.
9) System Life Cycle Process Assessment Model
の Study Group を立ち上げる.日本からは小川が
参加する.結果は,2004 年 2 月 15 日までに報告
される.
10) The content of system and software life cycle
process information products (documentation)
に関する Study Group を立ち上げる.日本からは
山本が参加する.結果は,2004 年 2 月 15 日まで
に報告される.
11) Business Planning Group(BPG,SWG 1)の維持
の再確認.日本からは山本が参加する.
12) SC 7 の構造に関する SWG(SWG 5)の維持の再確
認.日本からは加藤が参加する.
13) 次の規則に従って規格の命名を行うこと.
・ Software Engineering:ソフトウェア技術に
関連する全規格
・ Systems Engineering:システム技術に関連す
る全規格
・ Information Technology:企業構造に関する
全規格.これに限らない.
・ Systems and Software Engineering:ソフト
ウェア技術,システム技術に関連する全規格
12
5. 今後の開催予定
2004-05-09,14
ブリスベン(オーストラリア)
6. その他
会議前に,ITTF から専門家を招いて,Editors’
Training が行われた.参加者は 30 名程度あり,効率
的な規格開発に熱心であることをうかがわせた.
SARS やテロの影響で参加国,参加人数は近年にな
く低調であったが,参加者は問題に熱心に取り組み,
例年以上の成果をあげることができた.
WG 12(Functional Size Measurements)に関し米
国(特に C リエゾンの IFPUG)から,ディスバンドや
コンビーナの交代などを言い出し,混乱含みであった.
本件は日本の仲裁で納まったが,今後とも WG 12 の案
件に関わらず,米国の動静には注意する必要があると
感じている.
■ SC 22/Linux Study Group (リナックス検討グル
ープ)会議報告
SC 22 専門委員会
委員 黒川 利明((株)CSK)
1. 開催場所:ロンドン(英)
2. 開催期間:2003-05-28/30
3. 参加国数/出席者数: 9 カ国 4 団体/24 名
議長(John Hill,米)
米(6),英(4),デンマーク(1),加(2),独(1),ス
イス(1),ノルウェー(1),オランダ(1),日(3: 黒川
利明[CSK],田代 秀一[経済産業省],木戸 彰夫[日本
IBM]),ECMA(1),The Free Standard Group(1),The Open
Group(1),USENIX Association(1),JTC 1 議長
4. 特記事項
4.1 経緯
この会議の背景は,2002 年の JTC 1 総会において,
SC 22 に対して次のような要請がなされたことにあ
る.
a) Linux 検討会議を開く.
b) 各国,各 SC,リエゾン組織,及び PAS 資格組織
から参加者を募る.
c) SC 22 の現在の活動が LINUX オペレーティングシ
ステムの市場とどのように関わっているかを評
価する.
d) The Free Standard Group やその他のグループの
活動が SC 22 にとってどのように関わるかを評価
する.
e) 必要だと判断したならば,JTC 1 指令に基づいて
LINUX 市場への貢献を増やすための活動を開始
する.
f) 2003 年シンガポールで開かれる JTC 1 総会で本
件について報告する.
The Free Standard Group にも参加している木戸
委員には別途案内があったらしいのだが,実をいえ
ば,我々日本の SC 22 メンバには,この件は寝耳に
水の話であった.当初 4 月 17 日の打ち合わせでは,
経済産業省も「何か情報があったら教えてくださ
い」という程度の反応であった.それが,5 月 16 日
には,戦略的な観点から,積極的に Linux に関する
国際標準化を推進しようということになり,次回の
会合を日本で開催するよう提案すること,国際規格
化したい Linux の領域(印刷機能,組込み環境など)
を提案することといった方向を決めた.さらに,ぎ
りぎりになって経済産業省から田代氏が参加できる
こととなり,会議の前に,Hill 議長との打ち合わせ
や,会議中に ECMA 事務総長の van den Beld 氏など
との非公式の会合をセットすることができた.
4.2 会議の結果
正式な報告は,7 月初めに,SC 22 N 3588(JTC 1
N 7142)という報告が JTC 1 に向けて Hill 議長から
発行されている.英国の提案は遅着だったが,カナ
ダ,日本,The Free Standard Group および The Open
Group から,この会議への寄書ならびに提案があっ
た.議長報告にもあるように,全参加者が 2 日間と
も参加していたことからも,この会議に寄せる期待
の大きさが伺える.
結論の一部を次に紹介する.
SG-01 Linux に関して,LSB ABI 層,LSB,配布 Linux
の 3 つを定義.
SG-02 Free Standard Group の PAS 資格による LSB
の PAS 提案を期待.
SG-03 Free Standard Group を SC 22 のカテゴリ A
リエゾンに要請.
SG-04 LSB バージョン 1.9 のレビューへの参加.
SG-05 UK による POSIX と LSB の食い違いの洗い出
し.
SG-06 日本からの次回の Linux 関係会議の招待.
SG-08 カナダによる文書のとりまとめ.
SG-09 9 月にノルウェーのオスロで開かれる SC 22
総会へは 8 月 1 日までに文書を送付.
5. 今後の開催予定
未定(この種の Linux の標準化に関する会議は開
か れ る 可 能 性 が あ る が , こ の ISO/IEC JTC 1/SC
22/Linux Study Group Meeting そのものの続きが開
かれることはあり得ない,というのが会議出席者の
共通認識である.)ただし,SG-09 に述べられてい
るように,9 月の SC 22 総会で議論される時に,今
後の予定が決められるはずである.
13
6. その他
SC 22 N 3588 にも述べられているが,参加者が国
と組織の両方を兼ねているために,従来の SC 22 の
会議とは異なった面倒さがあった.しかし,将来は,
こういう場面がむしろ増えると思われるので,日本
でもそれなりの決まりを作っていく必要がある.
国内では,6 月 11 日に,本件に関する拡大 SC 22
委員会が開かれ,この Linux に関するメーリングリ
ストが立ち上げられている.
以下は個人的な感想だが,C#など他の委員会でも
同じことを感じるのだが,技術的な面で日本からの
貢献がないと,こういう戦略的な話題について,具
体的な貢献及び主導権が取れない.積極的な技術面
の参加を望みたい.
■ SC 24(Computer Graphics and Image Processing
/コンピュータグラフィクスおよびイメージ処理)総
会報告
SC 24 専門委員会
委員長 藤村 是明(独立行政法人 産業技術総合研究所)
1. 開催場所:済州島(韓国)
2. 開催期間:2003-06-19/27
3. 参加国数/出席者数: 5 カ国/34 名
議長(Laura Moore,米)
セクレタリ(Jose Alcorta, 英)
米(12),英(3),韓国(16),日(1:藤村 是明),仏
(英に委任)
4. 特記事項
4.1 WG 6 ( Multimedia Presentation and
Interchange)関係
WEB3D Consortium との協同開発プロジェクトであ
り,仮想現実モデリング言語 VRML97 の後継規格であ
る eXtensible 3D(X3D)については,根幹部分を FDIS
に進めることが決定された.
WEB3D Consortium との協同開発プロジェクトであ
る 人 体 運 動 記 述 を 核 と し た Humanoid Animation
(H-Anim)については,近々FCD 投票が開始される.
4.2 WG 7 ( Image Processing and Interchange,
Registration)関係
WG 7 は,この 2 年間,米国出身のコンビーナが会
合の召集などの義務を果たさず,他のメンバが SC 24
総会のときだけ思い出したように,次の活動について
相談するといった状態だったので,日本は,SC 24 の
ために最低限必要なグラフィック項目の登録のプロ
ジェクト(Registration)を他の WG に移すことを提案
し,この WG の自然消滅を図ったが,米国からコンビ
ー ナ の 交 替 と BIIF ( Basic Image Interchange
Facility)の普及に必要な,CGM profile と JPEG 2000
profile の Registration 作業の開始とが提案された
ので,提案を撤回した.
4.3 WG 8(Environmental Representation)関係
地理情報利用シミュレーションのためのデータ項
目 の コ ー ド 化 を 行 う EDCS ( Environmental Data
Coding Spec.)の FCD は,1169 件のコメント(ほと
んどが definition の文言に関するもの)の処理を終
え,唯一の反対投票をしていた日本が,反対の条件が
すべて適切に解消されたとして賛成に転じたため,
FDIS へ進めることが決定した.この EDCS の C 言語結
合も FDIS に進められる.
地理情報利用シミュレーションのための(構造的)
データ表現を規定する SEDRIS Part 1 の CD について,
日本からは,80 件の技術コメントを提出し,技術的
な根幹の記述の明確化や規定内容の変更を求め,その
ほとんどが受け入れられた.しかし技術的成熟度に問
題があるとして,FCD へ進めることに 1 カ国だけ反対
を続けた.この結果,再度 CD 投票を行うことになっ
た.
4.4 SC 24 全体
米国が新規作業項目として提案し,日本が内容の明
確化を強く要求して,Study Group としての検討をす
るはずであった Metafile for Encapsulating Various
Data Formats については,結局,米国からの追加説
明がなされないまま,廃止になった.
英国から,SC 24 の Title と Scope が古くなってき
たとして,見直し作業を行うよう提案があり,メール
上で検討を続けることになった.
前回と今回の出席国数が少なかったため,来年はヨ
ーロッパの大学教授が代表として参加しやすい 7 月
に総会を開催することになった.
5. 今後の開催予定
2004-07
米国
2005
ヨーロッパ
2006
日本
6. その他
韓国での SC 24 総会の開催は 4 年前のソウルに続き
2 回目であるが,今回も済州島ロッテホテルという高
級リゾートホテルでの開催で,会議設備及び社交サー
ビスはすばらしかった.ただ,周囲にあまり安い飲食
店がないところなので,全部で 10 泊の日程の食事の
ほとんどをホテル内の店でとることとなり,個人的に
は負担となった.
14
■ SC 27(Security techniques/セキュリティ技術)
総会報告
SC 27 専門委員会
幹事 竜田 敏男(日本アイ・ビー・エム(株))
1. 開催場所:ケベック(加)
2. 開催期間:2003-05-05/06
3. 参加国数/出席者数: 15 カ国 1 団体/30 名
議長(Walter Fumy,独)
セクレタリ(Krystyna Passia,独)
オーストラリア(1),ベルギー(2),加(6),仏(3),
独(3),日本(1: 竜田 敏男),マレーシア(2),ノルウ
ェー(1),ポーランド(1),シンガポール(1),南ア(1),
スペイン(1),スウェーデン(1),英(2),米(1),SC
37(1),韓国は名簿にあったが欠席.
4. 特記事項
4.1 ISO/IEC 17799 Code of Practice for Information
Security Management の改訂
ISO/IEC 17799 は 5 年見直しを待たずに改訂作業が
開始されているが,毎 WG 会合毎に約 700 件の賛否両
コメントが寄せられていて,審議が追いつかない状況
だった.そこで今回は WG 会合(4 月 28 日∼5 月 2 日)
の直前に Ad Hoc 会合
(4 月 24 日∼26 日)
を開催した.
その結果,積み残されていた膨大なコメントは,今回
の Ad Hoc 会合と WG 1 会合ですっかりかたづいてしま
った.今回のコメント修正案を取り込んだ原案は
Working Draft(WD)から Committee Draft(CD)に進
むことになった.
4.2 TR 13335 GMITS(Guidelines for the Management
of IT Security)
TR 13335 GMITS も上記の 17799 と並行して WG 1
で改訂の作業をしている.現行の Part 1 と Part 2
を合わせて新 Part 1 に,現行の Part 3 は新 Part 3
として改訂中であった.しかし,前回のワルシャワ
での WG 1 会合で,改訂中の Part 1 と新 Part 3 を
TR か ら IS に 変 更 し , 標 題 も Management of
Information and Communications Technology
Security(MICTS)とすることを NP 提案することに
なり,NP 投票の結果は賛成多数で承認された.その
結果,新 TR Part 1 は新 IS Part 1となり,新 TR Part
3 は新 IS Part 2 とすることになった.さらに,現
TR Part 4 を新 IS Part 2 の Annex に取り込むこと
になった.また,標準番号は TR の 13335 から新しい
番号に変わるものと思われていたが,WG 1 Convener
は 13335 という番号が既に浸透しているので,番号
を変えずにそのまま使用したいと言っている.とこ
ろで,総会で決議文書を作成している際に 13335 と
書かれている個所が,現状の TR を指しているのか,
新 IS を指しているのかで混乱した.(筆者は個人的
に,13335 の代案として 23335 の番号を仮予約して
おき,発行直前にどちらの番号を使うかを決める方
法もある,と提案した.)
4.3 暗号アルゴリズム 18033
WG 2 で作業中の暗号アルゴリズム標準 18033 は,
Part 1 が総論,Part 2 が公開鍵暗号,Part 3 がブ
ロック暗号,Part 4 がストリーム暗号となっている.
前回の WG 2 会合で CRYPTREC と NESSIE(日本と欧州
での暗号評価プロジェクト)の検討状況を考慮しな
がら新提案暗号を追加して CD 投票に進んだが,今回
の WG 2 会合では逆に暗号アルゴリズムの数が多すぎ
ると英国からコメントがあった.議論の結果,日本
と英国が各暗号アルゴリズムの長所・短所を記載し
た寄書をそれぞれ提出し,それと標準原案を一緒に
して配布し,どの暗号アルゴリズムを落とすべきか
を投票することになった.なお,Part 4 はもともと
暗号アルゴリズムの数が少な過ぎるとコメントされ
ていたので,上記の絞り込み作業は適用されない.
4.4 暗号モジュールの評価 19790
前回のワルシャワ会合の時に,米国とカナダから
「暗号モジュールの評価方法」を標準化したいとす
る提案があり,その NP 投票があった.投票結果は賛
成多数で承認された.NP 提案の時の内容は,米国の
連邦規格である FIPS140-2 を修正して IS にするとい
うものであったが,ケベック会合では標準化を 2 段
階 に分 ける提 案に 変わっ てき た.第 1 段 階は,
FIPS140-2 をそのまま原案に近い形で標準化し,そ
の 後 で 第 2 段 階 と し て ISO/IEC 15408 ( Common
Criteria)の評価作法に合致するように修正して標
準化するとしている.この路線変更で要注意な点は,
1) FIPS 140-2 をそのまま採用すると,評価対象が
米国政府採用の暗号製品だけになるのか,2) 第 1
段階の標準は ISO/IEC 15408 を考慮せずに作成され
るが,第 2 段階の標準を作成する時に論理矛盾は生
じないのか,3) 第 1 段階の標準で評価された製品は,
第 2 段階の標準ができた時に評価をやり直すことに
ならないか,等が考えられる.
4.5 システムのセキュリティ評価 19791
日本の SC 27/WG 3 主査の田渕治樹氏が担当した
「システムのセキュリティ評価」の Study Period
が 完 了 し た の を 受 け て , Security Assessment of
Operational Systems の NP 提案があり,投票が行わ
れた.投票結果は賛成多数で承認された.この結果,
新たな Technical Report (Type 2) 19791 の WD 作成
作業が開始された.エディタは同じく田渕治樹氏で
ある.
4.6 バイオメトリクスに関する新提案 19792
前回の総会でドイツから提案のあった A
Framework for Security Evaluation and testing of
Biometrics technologies は WG 3 が担当することを
前提に,NP 投票にかけられた.投票結果は賛成多数
で承認された.日本は内容があいまいで範囲が広す
ぎるので,SC 17,SC 27,SC 37 の委員長会議で調
整すべきとコメントしたが,そのような会議は開催
されなかったと一蹴された.ちなみに米国はすべて
15
の欄に NO を記入して大反対の投票をしたが,会議の
場ではすんなり賛成に回った.今回の会合では,ド
イツから NP 提案に肉付けするような寄書(SC 27 N
3536)が提出された.しかし,カナダからはドイツ
寄書とはまったく趣を異にする寄書(SC 27 N 3522)
が 提 出 さ れ た . こ の カ ナ ダ 寄 書 は , Biometrics
Evaluation Methodology(BEM)という表題で,複数
国のバイオメトリクスの専門家とセキュリティの専
門家が結集して作成した中身の非常に濃いものであ
る.しかし Biometrics に関する議論の中で,カナダ
はこの BEM の寄書が,NP 提案の内容とは合わないと
悟ったようだ.カナダは次回会合までに BEM の寄書
の扱い方(引っ込めるのか,別の NP を提案するのか,
など)を検討してくるものと推察される.
4.7 楕円曲線暗号を用いるディジタル署名の標準化
15946-4
日本の SC 27/WG 2 委員の宮地充子氏がエディタを
担当している「楕円曲線暗号−メッセージ復元型デ
ィ ジ タ ル 署 名 15946-4 」 の FDIS ( Final Draft
International Standard)投票があった.投票結果
は賛成多数であったが,米国から ASN.1 の記述が無
い,英国からはエディトリアルコメント多数,ドイ
ツからは特許情報の記載がない,などの理由で反対
投票があり,修正することになった.しかしエディ
タ欠席のため,修正案の議論は次回会合に持ち越さ
れた.
5. 今後の開催予定
2004-04-26/27
シンガポール
6. その他
6.1 イラク戦争と SARS の影響
イラク戦争と SARS の影響と思われるが,今回の会
合では欠席者が多数あった.エディタが欠席のため
審議が進まないプロジェクトも多数あった.このた
めエディタが欠席する場合は,会議開始の 2 週間前
までに事務局に欠席通知を出し,エディタ引受け国
は代理を立てるように要請する,という決議が採択
された.
6.2 次回会合の日程
今回の WG 会合は 2003 年 4 月 28 日∼5 月 2 日で,
総会は 2003 年 5 月 5 日∼6 日となっていたため,日
本のゴールデンウイークにピッタリと重なってしま
った.そこで日本から次回からはゴールデンウイー
クを避けるようにとコメントを送った。それを受け
て SC 27 事務局は,年初に各国のカレンダーを集め
て日程の事前調査を実施した.さらに総会の場で次
回の日程を各国代表に示して調整することにした.
その結果次回総会はシンガポールで,ゴールデンウ
イークの直前で終わるように調整された.
■ SC 31 ( Automatic Identification and Data
Capture Techniques / 自 動 認 識 及 び デ ー タ 取 得 技
術)総会報告
SC 31 専門委員会
委員長 柴田 彰((株)デンソーウェーブ)
1. 開催場所:パリ(仏)
2. 開催期間:2003-05-14/15
3. 参加国数/出席者数: 14 カ国 4 団体/47 名
議長(Alan Haberman,米)
セクレタリ(Frank Sharkey,米)
米(12),豪(1),ベルギー(1),デンマーク(1),仏
(4),独(2),蘭(2),韓(4),露(1),スウェーデン(1),
英(4),オーストリア(1),カナダ(1),日(7:,渡辺 淳
[デンソーウェーブ],辻本 有伺[デンソーウェーブ],
寺前 浩二[デンソーウェーブ],村上 敬亮[経済省],
飯田 圭哉[経済省],細川 照彦[JEITA],柴田 彰)
リ エ ゾ ン : CEN/TC 225(1) , AIM Inc.(1) , EAN
International (1),Universal Postal Union(1)
4. 特記事項
4.1 WG 1(データキャリア)報告
WG 1 はすでに 9 規格を成立させているが,現在新
しい 2 次元シンボル,マイクロ PDF417 を NP 提案して
いる.WG 3(コンフォーマンス)担当の 2 次元シンボ
ル印刷品質(15415)との関連で,3 つの 2 次元シン
ボル,PDF417(15438),Data Matrix(16022),QR
コード(18004)の改訂を行なう.
4.2 WG 2(データストラクチャー)報告
WG 2 はすでに 4 規格を成立(1999 年)させている
が,WG 4(RFID)との整合性をとる必要から,これら
の規格の改訂を行なう.
4.3 WG 3(コンフォーマンス)報告
WG 3 はすでにバーコードリーダ(15423-1),プリ
ンタ(15419),および検証器(15426-1)の性能評価
規格,バーコードの印刷品質規格(15416)およびバ
ーコード生成規格(15421)の 5 規格を成立させてい
るが,2 次元シンボル関係の 3 規格(15415,15423,
15426-2)が FCD の段階まで来た.WG 4 とのジョイン
トの 2 規格(18046,18047)は PDTR の段階まで来た.
新しい作業項目(NP 19782)として「半透明基材に印
刷されたバーコードシンボルの検証及び読み取りの
ガイドライン」が追加された.
4.4 WG 4(RFID)報告
WG 4 は WG 3 とのジョイントの 2 テーマを含めて 14
の規格開発を進めている.1 件(15960)は WD 段階,
及び 1 件
(18000-5)
は CD 投票で規格開発を中止した.
エアインタフェース 18000-5(5.8GHz)はもともと世
16
界的に ITS に割り振られた周波数であることと,提案
のエアインタフェースが ITS と相容れない方式であ
るため,各国の反対により中止となった.残る 12 規
格は,アプリケーション要件(18000)が DTR 段階,4
つのエアインタフェース関連規格が FDIS 段階,
(18000-1:総括パラメータ,18000-2:135kHz 以下,
18000-3:13.56MHz,18000-4:2.45GHz),2 つのエ
アインタフェース関連規格(18000-6:860-930MHz,
18000-7:433MHz)およびタグの固有 ID(15963)が
FCD 段階,タグの機能コマンド(15961),およびデ
ータシンタックス(15962)が CD 段階,リーダ/ライ
タのパフォーマンス(18046),コンフォーマンス
(18047)が PDTR 段階となっている.
4.5 ラポーター報告
用語(19762-1,2,3,4)は FCD 投票を通過し
たが,露からのコメントが大量にあり,処理中
である.
UWB(Ultra Wide Band)については,Ad hoc 会
議を 2002 年 9 月にシカゴで開催し,調査継続中
である.ITU-R でも検討を開始した段階であり,
まだ NP の段階にはほど遠い.
レ ギ ュ ラ ト リ ( 電 波 法 関 連 ) で は , ETSI が
13.56MHz の送信レベルを 42 から 60dBµA/m へ上
げることに関して SE24 委員会で検討し,人体へ
の影響を含め,問題のないことが確認できれば,
次回 SE24 委員会で承認される予定.また,SE24
委員会では,加盟国から提案された出力 2 ワッ
トの RFID 用 UHF 帯(865∼868MHz)を審議中で
あり,2003 年 9 月の ETSI 委員会に提案予定.
4.6 NB からの提案
日本から 4 項目を提案した.商品トレーサビリ
ティ用として,商品の個体識別を可能にするコ
ード体系(発番機関コード+企業コード+品番
+シリアル No.)を 15459-3 として提案,QR コ
ード(18004)の小物マーク用として開発された
マイクロ QR コード,2 次元シンボルをレーザ,
インクジェット,ドットインパクトなどの方式
によりマークするダイレクトマーキング,及び
リライト機能付き RF タグである.この内,商品
トレーサビリティ用コード体系及びマイクロ QR
コードについては詳細なプレゼンテーションを
行なった.日本提案に対する各国の反応は極め
て好意的であった.
米国から RTLS(Real Time Location System)の
プレゼンテーションがあった.具体的な用途と
しては,コンテナ埠頭におけるコンテナのロケ
ーション管理が考えられている.この案件で,
米国は新しい WG を設立したい意向である.
5. 今後の開催予定
2004-05-02/03
オーランド(米国)
■ SC 34 ( Document Description and Processing
Languages/文書の記述と処理の言語)総会報告
SC 34 専門委員会
委員長 小町 祐史(パナソニックコミュニケーションズ(株))
1. 開催場所:ロンドン(英)
2. 開催期間:2003-05-03/07(各WGの会議も同時に開催)
3. 参加国数/出席者数: 8 カ国/24 名
議長 (Jim Mason, 米)
セクレタリ(Sara Desautels, 米)
米(8),日本(4:村田 真[国際大学],西川 マリ[シ
ュルンベルジュ],野口 高成[ネクストソリューショ
ン],小町 祐史),英(4),ノルウェー(2),仏(1),加
(1),韓国(1),独(1)
4. 特記事項
4.1 SC 34 セクレタリアト
これまで SC 34 のセクレタリアトを引き受けていた
ANSI がその業務の継続が困難になったことを表明し,
以前から SC 34 に対して会議室提供などの活動支援を
行ってきた US の IDEAliance もセクレタリアト支援の
困難を明らかにした.他の参加国による積極提案も出
ていないため,会期中にカナダの Ken Holman が対応
を調整することになった.(その後,カナダ(CSS)
がセクレタリアトを引き受けることを明らかにした
ため,JTC 1 の参加国の反対がなければカナダの提案
を受理することにした.議長についての変更はない.)
4.2 ISO/ITSIG/XML-Project からのリエゾン
2003 年 4 月に ISO 中央事務局で開催された ISO
ITSIG/XML Project Ad hoc: XML Processing for ISO
Documents の概要が報告された.
中央事務局は,規格文書を扱うために既存のフォー
マット(SGML, Word, PDF, HTML)に加えて XML フォ
ーマットを用意する必要に迫られている.そこで,
2002 年末に DTR 投票で承認された ISO/IEC TR 9573-11
第 2 版が規定する DTD およびスタイル指定記述を,中
央事務局でどのように扱えるかを検討するため,この
Ad hoc が開催され,TR 9573-11 第 2 版のエディタ,
処理系の開発者および中央事務局メンバが参加した.
中央事務局は,この DTD を規格文書のための標準
DTD とすることを確認し,TR 9573-11 第 2 版が提供
するスタイル指定が,ISO/IEC Directives に適合し
たスタイル指定であって,そのスタイル指定を用いれ
ば,フリー又は市販の処理系が,この DTD で書かれた
規格文書を容易にレンダリングし,印刷できることを
確認した.
4.3 数学用及び科学用の公開実体集合(ISO/IEC TR
9573-13)の改訂
17
ISO/IEC TR 9573-13 の実体集合を改訂して,実体参
照の構文解析結果を,16 進数の文字参照で表現する
ISO/IEC 10646 UCS 文字への対応表にすることを,W3C
の MathML グループが提案している.そこで,Martin
Bryan が Opening Plenary でこのトピックを示して WG 1
と WG 2 のメンバによる議論が行われ,この提案を受け
て TR 9573-13 を改訂することを勧告した.
その改訂に際しては,これまでの TR 9573-13 が規
定してきた文字集合をさらに拡張することが望まれ
ている.UK は,この作業を引き受けるエディタを探
すことになった.
4.4 文書スキーマ定義言語(DSDL, ISO/IEC 19757)
(1) パート番号の変更
ISO のパート番号付け規則に従って,これまでのパ
ート 0 をパート 1 に再番号付けし,以前にパート 1:
相互運用性の枠組み(Interoperability framework)
で あ っ た も の を パ ー ト 10: 妥 当 性 検 証 管 理
(Validation Management)に変更した.以降の記述
では,変更後のパート番号を用いる.
(2) パート 1,概要(Overview)
CD 投票対象の SC 34 N 390 に対する日本コメント
などに基づき,小さな変更を示した対処文書 SC 34 N
414 を作成した.エディタはこれに基づいて CD 改訂
版を作成する.
(3) パート 2,正規文法に基づく妥当性検証−RELAX
NG(Regular-grammar-based validadtion - RELAX NG)
前回の SC 34 総会で FDIS 投票の手続きに入ること
が指示されていたが,提出された XML ファイルを ISO
で処理できず,手続きが遅れていた.そこで,この
XML ファイルから作成した PDF ファイル改訂版を ISO
に提供することにした.
(4) パート 3,規則に基づく妥当性検証−Schematron
(Rule-based validation - Schematron)
エディタの Rick Jelliffe が欠席したため,このパ
ートについてはあまり進展がなかった.
(5) パート 4,妥当性検証候補の選択(Selection of
validation candidates)
CD 投票対象の SC 34 N 389 に対する日本および UK
のコメントに基づき,対処文書 SC 34 N 415 を作成し
た.これらのコメント対処を含み,James Clark の
Multiple Namespaces, Rick Jelliffe の Namespace
Switchboard などを参照して,FCD テキストを作成し
提出することがエディタに対して指示された.
(6) パート 5,データ型(Datatypes)
UK は拡張可能なデータ型ライブラリを新たに設計
することを提案し,日本は W3C の XML Schema のサブ
セットを作ることを提案した.
W3C の XForms グループが近日中に W3C XML Schema
のサブセットを作ることが予想されるため,UK から
提出される案と W3C の審議状況とを考慮して,半年後
に再検討する.
(7) パート 6,パスに基づく一貫性制約(Path-based
integrity constraints)
エディタが James Clark であることを確認した.
(8) パート 7,文字レパートリに関する妥当性検証
(Character repertoire validadtion)
Eric van der Vlist が簡単な CD を作成することに
なった.
(9) パ ー ト 8 , 宣 言 的 な 文 書 体 系 ( Declarative
document architecture)
表 題 を , 以 前 の Declarative document
manipulation
か ら
Declarative
document
architecture に変更した.
(10) パート 9,データ型及び名前空間を扱える DTD
(Datatype- and namespace-aware DTDs)
このパートについては実質的な議論がなく,あまり
進展がなかった.
(11) パ ー ト 10 , 妥 当 性 検 証 管 理 ( Validation
Management)
Eric van der Vlist の案をもとに CD を作成するこ
とになった.
4.5 文 書 スタ イ ル 意味指 定 言 語( DSSSL, ISO/IEC
10179)の Amd.2
DSSSL の実装を行っている国内ベンダおよび DSSSL
処理系利用者から,流し込みオブジェクトクラスの追
加要求が提出されている.それらをまとめた Amd.2
の要求(SC 34 N 418)が WG 2 から提出され,DSSSL
プロジェクトの細分割によるプロジェクトが承認さ
れた.エディタには,野口高成が指名された.
4.6 DSSSL ライブラリ(ISO/IEC TR 19758)のアメン
ドメント
ISO/IEC TR 19758 の DTR 投票コメントとして機能
追加の要求があり,今後のアメンドメントによって対
処することになっていた.ISO/IEC TR 19758 の利用
者からも,機能追加の要求があることをエディタは確
認している.主要な要求課題は,表組み,多言語混植,
数式,化学式であり,それらをまとめたアメンドメン
トの要求(SC 34 N 419)が WG 2 から提出され,DSSSL
ライブラリプロジェクトの細分割によるプロジェク
トが承認された.エディタには,小町祐史と長村玄と
が指名された.
4.7 ITU-T SG 17 へのリエゾン
ASN.1 の最新版では,ISO の登録機関に関する記法
が削除された.この削除が不適切であると ITU-T SG
17 は判断して,その記法の利用者に対して現状報告
を求めている.SC 34 関連の登録においては,ISO/IEC
10036(フォント関連識別子の登録手続き)が ISO/IEC
9070(SGML 公開テキスト所有者識別子)に基づいてそ
の記法を使用しているため,ISO/IEC 10036 のエディ
タが非公式リエゾンとして既に 2003 年 1 月にその旨
18
の回答を ITU-T SG 17 に送付した.
4.8 トピックマップ(TM,ISO/IEC 13250)関連
多 パ ー ト 構 成 を と る ト ピ ッ ク マ ッ プ ( ISO/IEC
13250)の新版注の NP 投票が 2003 年 3 月を期限とし
て行われ,承認された.今回はその直後の会議であっ
たため,この新版および関連規定についての作業手続
きの確認とエディタの指名とが主な議題であった.プ
ロジェクトエディタの役割の詳細については,
Montréal での WG 3 会議でさらに議論することにした.
注: ISO/IEC 13250 については,2000 年に第 1 版が発行さ
れ,その後 Cor.1 が承認され,その内容を盛り込んだ
第 2 版が 2003 年 5 月に発行された.2003 年 3 月の NP
は,Cor.1 の後の議論の反映である.国内では,第 1
版に一致する JIS X 4157 が既に発行されている.第
2 版については,Cor.1 を翻訳した JIS X 4157 追補 1
が発行される.
(1) パート 1,概要および基本概念(Overview and
Basic Concepts)
Steve Pepper および内藤求をパート 1 のエディタ
として指名し,Montréal 会議での検討のために,最
初の WD を用意することを彼らに要求した.
(2) パート 2,データモデル(Data Model)
会期中に配布された SC 34 N 396 をパート 2 の最初
の WD として受理し,Lars Marius Garshol および
Graham Moore をエディタとして指名した.エディタ
に対して,SC 34 N 396 への参加国のコメントに回答
すること,今回の議論を反映した新版を用意すること,
および CD 投票のためにそれをなるべく早くセクレタ
リアトに提出することが指示された.
(3) パート 3,XML 構文(XML Syntax)
会期中に配布された SC 34 N 398 をパート 3 の最初
の WD として受理し,Lars Marius Garshol および
Graham Moore をエディタとして指名した.エディタ
に対しては,パート 2 と同様の作業が要求された.
(4) HyTime 構文(HyTime Syntax)
会期中に配布された SC 34 N 391 を HyTime 構文
(HyTM)の最初の WD として受理した.参加国とリエ
ゾン組織に対して,ISO/IEC 13250:2000 に定義され
る HyTime 構文に関する利用者コミュニティがあるか
どうかのフィードバックを求めることにした.そのよ
うなコミュニティが存在しなければ,SC 34 は,HyTM
のメンテナンスを正当化するための利用者コミュニ
ティがないという根拠の下に,トピックマップの新版
から HyTM を削除する予定である.
(5) 正準 XML 構文(Canonical XML Syntax)
事前に配布された SC 34 N 395 を正準 XML 構文の最
初の WD として受理し,Kal Ahmed をエディタとして
指名した.エディタに対して,今回の議論を反映した
新版を用意することが指示された.
(6) 参照モデル(Reference Model)
事前に配布された SC 34 N 393(Topic Maps Model)
を 参 照 モ デ ル の 最 初 の WD と し て 受 理 し , Steve
Newcomb および Patrick Durusau をエディタとして指
名 し た . SC 34 N 393 は, 表 題 を "Topic Maps -Reference Model"に修正して,SC 34 N 393rev とし
て再発行される.エディタに対しては,SC 34 N 393
への参加国のコメントに回答することが指示され,
Montréal 会議での検討のために,利用者要求文書を
用意することが指示された.
利用者要求は,参照モデルの目的を示すためにその
最初の部分に示されることが望ましく,トピックマッ
プ以外の知識表現への関係を定義するのに利用でき
る.
(7) TM 問合せ言語(TMQL,ISO/IEC 18048)
Lars Marius Garshol と共同で編集作業を行うコエ
ディタとして,Robert Barta を指名した.エディタ
に対しては,Montréal 会議での検討のために,利用
者要求文書の改訂版を用意することが指示された.エ
ディタと西川マリは,Use Cases 文書を用意して,既
存の問合せ言語を調査し報告することになった.
(8) TM 制約言語(TMCL,ISO/IEC 19756)
西川マリが事前に用意した SC 34 N 405 を TMCL に
関する新しい利用者要求として受理した.TMCL のエ
ディタであった Steve Pepper の辞任を受理し,新エ
ディタに Graham Moore および Hans Holger Rath を指
名した.エディタと西川マリは,利用者要求の改訂版
と Use Cases 文書を用意して,既存の制約言語を調査
し報告することになった.
4.9 音 楽 記 述 言 語 : Standard Music Description
Language(SMDL)
以前の音楽記述言語(SMDL, ISO/IEC 10743)は DIS
投票で承認されたが,その後最終テキストが作られず,
プロジェクトが取り消された.しかし新しい SMDL の
NP を出す用意があることが,Opening Plenary で WG 3
コンビーナから報告された.Opening Plenary には,
新 SMDL のエキスパート候補が参加していた.
5. 今後の開催予定
2003-12-06,11
フィラデルフィア(米国)
19
<解説:規格文書のXML化>
SC 34専門委員会
委員長 小町 祐史(パナソニック コミュニケーションズ(株))
1. はじめに
ISO中央事務局(ISO/CS)に対して,規格原案の
XML(Extensible Markup Language:拡張可能なマー
ク付け言語)での提出の要望がエディタから出さ
れ,既に何件かのXMLで記述された原案が提出されて
いる.その原案記述に使われたDTD(文書型定義)
は,その原案に固有であり,しかも規格文書として
必ずしも適切な構造記述がなされていない.しかも
スタイル指定が添付されていないため,ISO/CSでは
レンダリング注を行うことができない.今後さらにこ
のような要望が強まると思われ,エディタに対する
XML導入の指針が望まれている.
注: 論理構造化文書の要素を,与えられたスタイル指定に
従って, 表示メディア上にマッピングすること.
2003年の始めにISO/CSの上層部からスタッフに対
して,規格原案の開発期間等の短縮化に対する検討
要求が出され,その回答には,規格および原案のXML
化が盛り込まれている.このISO/CSの判断の背景に
は, XML導入による次の効果への期待がある.
1) 既に導入済みのSGMLに比べて, XMLについては,
処理系の価格が著しく低いため, 関連処理を規
格の開発者から利用者にまで拡大できる.
2) これまでMS-Wordテンプレートでエディタに課し
ていた, 規格文書スタイルのDirectivesへの整
合への要求をなくすことができる.
3) それらの結果, 規格文書のライフサイクルの短
縮が図れ, 技術革新のスピードに対応できる標
準化が可能になる.
XML導入に関するこれらのISO/CSの一部からの要求
に 先 ん じ て , 規 格 文 書 の XML 化 の 検 討 は ISO/ITSIG
(Information Technology Strategies Implementation
Group)で行われており,その成果としての規格文書
のためのXML DTDおよびISO/IEC Directivesに整合し
たレンダリング結果を生成するためのスタイル指定
言語記述が,JTC 1のDTR投票で承認されている.
ISO/ITSIGはXMLの普及の速さに着目し,規格文書
の記述にそれが広く利用されることを見越して,XML
プロジェクトを立ち上げ,このSGML DTDに基づいた
XML DTDの開発をXMLプロジェクトに指示した.実際
の開発作業は,日本規格協会のINSTACに設けられた
関連委員会の委員が担当することになった.
2.2 XML DTD
SGML DTDのXML化に際しては,まず次の変更が行わ
れた.
1) 宣言中のコメントを分離する.
2) 要素型名,属性名を小文字で表記する.
3) タグを省略なしに記述する.
4) 各要素を分離して定義する.
5) すべての属性値は引用符付きとする.
6) NAME,NUMBERおよびNUTOKENをNMTOKENに変更
する.
stdex.dtd [DTD Driver]
+--- stdex-model.mod [Model Module]
+--- stdex-ent.mod [Entity Module]
+--- stdex-profile.mod [Profile Module]
│
+--- isonet10.dtd [Isonet Module]
│
│
+--- se9573.dtd [Entity]
│
+--- stdex-docprof.mod [Document oriented
Profile Module]
+--- stdex-base.mod [Base Element Module]
│
+--- stdex-notation.mod [Notation]
│
+--- stdex-tpage.mod [Title Page]
│
+--- stdex-lpage.mod [Last Cover Page]
│
+--- stdex-toc.mod [Table of Contents]
│
+--- stdex-index.mod [Index]
│
+--- stdex-foreword.mod [Foreword]
│
+--- stdex-intro.mod [Introduction]
│
+--- stdex-body.mod [Body]
│
+--- stdex-annex.mod [Annex]
│
+--- stdex-nest.mod [Nested Subdivisions]
│
+--- stdex-disp.mod [Displayed Components]
│
+--- stdex-tl.mod [Terminology List]
│
+--- stdex-inline.mod [Inline Components]
│
│
+--- stdex-artwork.mod [Artwork]
│
+--- stdex-ref.mod [Referential Components]
│
+--- stdex-float.mod [Float Components]
│
│
+--- stdex-figure.dtd [Figure]
│
│
+--- stdex-table.dtd [Table]
│
│
+--- calstab.dtd [Cals Table]
│
+--- stdex-specific.mod [Very Specific
Components]
│
│
+--- stdex-math.mod [Math]
│
│
+--- stdex-math-extension.mod
[Math Extension Module]
│
│
+--- stdex-tol.mod [Tolerance]
│
│
+--- stdex-chem.mod [Chemistry]
│
+--- se9573.dtd [Entity]
+--- stdex-listing.mod [Listing Module]
2. ITSIGのXMLプロジェクト
2.1 プロジェクト
規 格 文 書 を SGML ( Standard Generalized Markup
Language:標準一般化マーク付け言語)で記述する
ためのDTDは,当時のISO/CSのスタッフによって開発
され,ISO/IEC TR 9573-11 第1版として1992年9月に
発行された.その内容は,ISO/ITSIGのSGMLグループ
によってISO/CSでの作業環境に合わせて修正され,
"ITSIG exchange DTD"として多くの規格の記述に使
われてきた.
図1
XML DTDを構成するモジュールファイルの参照関係
20
7) #PCDATAの位置を変更.
8) &で結合された部分をすべての組合せに展開
する.
9) SDATAで定義される内容をsimple stringsに変
更する.
10) 要素宣言からexceptionを排除する.
11) public identifierをURI(ファイル名)で指定
する.
さらにSGML DTDの構造に基づいて,XML DTDのモジ
ュール化を施し,図1に示す参照関係のモジュールを
構成した.これらの詳細は,ITSIGに対するレポート
1),2),3)
を参照されたい.
3. ISO/IEC TR 9573-11 第2版
3.1 構成
このDTDをITSIGの内部文書にとどめず,公開資料
とするため,JTC 1/SC 34はそれをISO/IEC TR 957311 第2版に含める作業を開始した.エディタには,
ISO/CSのスタッフを含む2名が指名された.
ISO/IEC TR 9573-11 第2版 は ,SGML DTD( ITSIG
exchange DTD )とXMLプロ ジェ クトが 開発 した XML
DTDとの両方を規定している.それぞれのDTDが,書
誌情報をISONETから採るdatabase-oriented profile
と文書中から採るdocument-oriented profileとに対
応している.
3.2 スタイル指定
ISO/IEC TR 9573-11の第1版の時代には,ISO/CSで
は専用のSGML処理系によってレンダリングを行い,
印刷に対応していた.広く普及したXMLによって広範
囲に及ぶ規格文書の交換を行う環境では,レンダリ
ングに必要なスタイル指定情報も標準化してどこで
も利用可能であることが望まれる.
そこで,ISO/IEC TR 9573-11 第2版では,標準的
なスタイル指定言語を用いた次のスタイル指定記述
を附属書として添付し,本体で規定するDTDに基づい
て書かれた文書データをISO/IEC Directivesに従っ
た文書スタイルでレンダリングできるように配慮さ
れている.
- DSSSL指定記述(ISO/IEC 10179による記述)
- XSL 指 定 記 述 ( W3C Extensible Stylesheet
Languageによる記述)
さらに,XMLで記述された規格文書をウェブブラウ
ザで簡便にレビューできるように,XSLT(W3C XSL
Transformations)によるHTMLへの変換指定記述も,
附属書として添付されている.
3.3 投票コメント対処
ISO/IEC TR 9573-11 第2版は,2002年11月を期限
とするDTR投票で承認され,コメント対処を含めた最
終テキスト4)が2003年3月にISOに送られている.この
DTR投票では,次の課題が要求された.
多言語を含む規格のためのDTD
- 用語規格のDTD
これらの要求については,ISO/CSの準備がまだ不
十分であるため,第2版には含めずに今後のアメンド
メントで対応することになっている5).
4. ISO中央事務局への説明
ISO/IEC TR 9573-11 第2版の内容を説明し,さら
にXML,DSSSLおよびXSLの処理系が既に利用可能であ
ることを明らかにするため,2003年4月にISO/CSにお
いてITSIG/XML Project Ad hoc会議が開催され,第2
版のエディタと処理系の開発者とが講演を行った.
その結果,このDTDが国際的に承認されたDTDであ
り,幾つもの処理系が既に利用可能であることの理
解が深まった.そこでの議論は,文献6)にまとめら
れている.
5. 国内への影響
現在JISの原案作成に際しては,MS-Wordのテンプ
レートを利用することが強く求められている.これ
に関して,情報技術専門家から疑問が提示されてい
るだけでなく,ここに示したような国際的なXML化へ
の動向がある.近い将来,JISおよび関連の規定の原
案作成および出版においても,XMLの利用は必須とな
るであろう.その場合にも,このTRの参照は有効で
ある.
参考文献
1) Activity Report 3 (Detailed Version) and
Plan of XML Project (2000-10-10)
http://www.y-adagio.com/public/confs/itsig/
rep_itsgxml3/actrep3dr.htm
2) Activity Report 5, XML Project (2001-10-01)
http://www.yadagio.com/public/confs/itsig/rep_itsgxml5/
actrep5.htm
3) Activity Report 6, XML Project (2002-11-16)
http://www.y-adagio.com/public/confs/itsig/
rep_itsgxml6/actrep6.htm
4) ISO/IEC TR 9573-11:2003 2nd edition,
Information technology -- Document
Description and Processing Languages -Structure Descriptions and Style
Specifications for Standards Document
Interchange
5) ISO/IEC JTC 1/SC 34 N 426, Disposition of
Comments on JTC 1 N 6818 (SC 34 N
0305rev): ISO/IEC TR 9573-11 2nd edition
(2002-12-09)
6) ISO/IEC JTC 1/SC 34 N 426, Liaison from
ISO/ITSIG/XML-Project, Minutes of
ISO/ITSIG/XML-Project Ad hoc: XML
Processing for ISO Documents (2003-05-03)
21
<声 の ペ ー ジ>
標 準 化 雑 感
近藤 昭弘(元(株)日立製作所)
標準化の業務から離れて,早くも 1 年が経ちました.
社内の情報技術標準化活動を取り纏めながら,情報規
格調査会の活動に 12 年間携わることになりました.
その間,行政機関,教育・研究機関,企業,そして海
外の多くの方々と知り合う機会を持つことができま
した.もし,他の事業業務を担当していたならば,こ
のように多くの社外の人々と知り合う機会はなかっ
たと思います.これは私の財産であり,今後も大切に
していきたいと望んでいます.
いま,標準化活動の中で得られた,情報技術の知識
を生かしながら,社会福祉分野での障害者地域作業所
の運営に携わっています.最近,この新しい事業活動
で標準の重要性を改めて実感しました.運営当初の作
業所は,交通の便を考えて,駅前のマンションの 2
階に設けました.しかし,エレベータの設置形態から
2 階までは,徒歩でしか上がれません.車椅子や重度
肢体不自由の人たちが作業所を利用する配慮に欠け
ていたのです.結果,新しい作業所の設置場所を探さ
ざるを得なくなりました.幸いなことに近くのビルの
2 階が賃貸に出ていました.問題は間口が 70 センチ
の小さなエレベータです.車椅子が利用できるのか.
そして JIS 規格で車椅子の幅が 70 センチ以下に規定
されていることを知り,作業所運営委員会の賃借承
認を得ることができました.今では車椅子や重度の
肢体不自由の人たちにも作業所を利用してもらって
います.
また,聴覚障害のある人たちにパソコンの利用を教
えています.残念なことに彼らは英語を習う機会がな
く,そのため英語を反映した情報技術用語の概念を理
解できません.例えば,パソコンのキーボードのキー
名称には多く英語の Enter,Shift,Delete,Insert
などが使われています.幸か不幸か日本は固有の日本
語を使用しています.これらのキー名称を日本語にし
たら,国際標準に反するのだろうか.
高齢化,病気,事故などで誰でもが障害者となりう
る現在,世界保健機関(WHO)の国際障害分類(ICF)
改定版の障害を生活機能というプラス面からみる視
点に転換が図られています.情報技術標準化の活動経
験を活かし,ICF や情報技術のアクセシビリティの新
たな勉強を進めて行きたいと思っています.
規 格 活 動 電 子 化 へ の 里 程
東田 正信
(NTT アドバンステクノロジ(株))
私は,1996 年 7 月から今年の 7 月までの 7 年間調
査会の理事を務めさせていただいた.この間,さまざ
まな活動に参加させていただいたが,最も心に残る事
は,IT 技術導入による文書の電子化と規格化プロセ
ス・業務の効率化に貢献できたことである.
規格文書の電子化の動きは 1995 年ごろからあった
ようだが,インターネットの急速な普及を受けて
1996 年位から急に加速された.96 年の JTC 1 パリ総
会に始めて出席したときは,まだ,紙主体の審議状態
で,各委員は大量の審議文書をファイルにして持参,
当日配布される資料は椅子の上に置かれていて,それ
を拾っていくような状況であった.議事録も印刷され
た文案を最終日の朝にもらって代表団で朝食をとり
ながら読み合わせたものである.
役員会の IT 担当ということもあって,私は 97 年 2
月以降 3 回の JTC 1 の IT 化の委員会に参加,98 年 2
月に電子化スケジュール,文書形式,許容バージョン
などを決めたが,これ以降 JTC 1 及び,各 SC において
も文書配布などの電子化が急速に進められた.99 年か
らは,審議案件に対する電子投票なども導入され,標
準化プロセスの大幅な効率化が進んだと思う.この間,
99 年リオデジャネイロでの総会あたりから,各国代表
団のほとんどのメンバが紙ファイルに代わってノート
パソコンを持ち込んで参加するようになり,パリ総会
を知る者にはまさに隔世の感がしたものである.
一方,国内での電子化も,これと平行して進めてき
た.最初は回線料金が高かったり,国内委員会のホー
ムページ開設,文書保持のハードディスクなどの容量
不足などが心配されたりして,IT 化のためにかなりの
投資額を割いたこともあって,電子化が進む一方で効
率化が進んでいないのではないかなどと辛口のコメン
トをいただいたりしたこともある.しかし,事務局の
たゆまぬご努力のお陰で昨今はかなり落ち着いたシス
テムになってきた.昨年度あたりから,調査会の技術
委員会でもそれまでは縮小,表裏印刷しても 1 センチ
くらいの厚さがあった審議文書が姿を消し,パソコン
持参の委員とプロジェクタによる審議形態に変わった
ことを見ても,電子化と効率化は着実に進展してきて
いる.
このように規格化活動においてのハード面での支
援環境は概ね整備されたと思う.今後は規格化プロセ
スにおける意見照会・集約プロセス,各国見解の調停
プロセスなど,規格化のソフト部分の効率化が進んで,
ひいては規格策定の効率化が更に進んで行くことを
期待したい.
22
< 2003 年 度 情報規格調査会の表彰>
本学会情報規格調査会では,1995 年度より標準化功績賞と標準化貢献賞の 2 つの表彰制度を設けています.
標準化功績賞は,長年にわたり情報規格調査会委員および所属委員会委員として,多大な功績があった方々の
中から選ばれます.また,標準化貢献賞は,最近の数年間において,所属委員会委員として,顕著な貢献のあ
った方々の中から選ばれます.
なお,本学会情報規格調査会規程により,2003 年度は 2003 年 7 月 18 日に開催された第 18 回規格総会で,受
賞者に表彰状および副賞として賞牌または賞金が授与されました.
標準化功績賞
近藤 昭弘氏(株式会社 日立製作所)
近藤昭弘氏は,1990 年から
2002 年までの 12 年間の長きに
わたり社団法人情報処理学会
情報規格調査会の規格調査理
事として当調査会の運営に参
加されるとともに技術委員会
委員として活躍され当調査会
の発展ならびに標準化の推進
に大きな功績がありました.
また広報委員会委員長として当調査会の広報活動に
尽力されました.
齋藤 輝氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)
齋藤輝氏は 1993 年から現在に至
る 10 年間の長きにわたり社団法人
情報処理学会 情報規格調査会 技術
写真
委員会委員として活躍されるととも
に 2001 年までは規格調査理事とし
て当調査会の運営にも参加され当調
査会の発展ならびに標準化の推進に
大きな功績がありました.この間
JTC 1 ならびに傘下の国際会議に多
数参加し JTC 1 改革や将来の方向付けに参加するなど
国際の場でも大きな功績がありました.
標準化貢献賞
櫻井 幸一氏(九州大学)
櫻井幸一氏は 1990 年から 1994 年までと 1999 年か
ら現在に至る 8 年間の長きにわたり SC 27 専門委員会
委員ならびに SC 27/WG 2 小委員会主査として情報セ
キュリティ技術,特に暗号アルゴリズムの標準化活動
に貢献されてきました.また ISO/IEC 18033-4:スト
リーム暗号のプロジェクトエディタとして国際の場
でも大いに活躍されました.
菅谷 寿鴻氏(株式会社 東芝デジタルメディアネット
ワーク社)
菅谷寿鴻氏は 1994 年から現在に至る 9 年間の長き
にわたり SC 23 専門委員会委員,SC 23/WG 6 小委員
会委員ならびに SC 23/WG 6/SG 3 主査として光ディス
クの標準化活動に貢献されてきました.特に ECMA と
SC 23 とのリエゾンとして活躍するとともに DVD の日
本提案の国際規格化に大いに貢献されました.
23
宮地 充子氏(北陸先端科学技術大学院大学)
宮地充子氏は 2000 年から現在に至る 3 年間にわたり
SC 27 専門委員会委員ならびに SC 27/WG 2 小委員会委
員として情報セキュリティ技術の標準化活動に活躍さ
れてきました.特に ISO/IEC 15946-4:楕円曲線を利
用した復元型ディジタル署名の提案者及びプロジェク
トエディタとして IT 社会に必要な最先端の技術分野
において国内で開発した技術を短時間で国際規格化す
るなど大きな貢献をされてきました.
助田 裕史氏(株式会社 日立製作所)
助田裕史氏は 1996 年から現在に至る 7 年間の長きに
わたり SC 23 専門委員会幹事ならびに SC 23/WG 2 小委
員会幹事として光ディスクの標準化活動に貢献されて
きました.特に 130mm MO 光ディスクおよび DVD 光ディ
スクの国際規格作成に多大な貢献をされました.
谷津 行穂氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)
谷津行穂氏は 1994 年から現在に至る 9 年間の長きに
わたり SC 7 専門委員会委員ならびに SC 7/WG 6 小委員
会委員としてソフトウェア技術に関する ISO/IEC 9126
および 14598 シリーズに関する日本提案の取りまとめ
に尽力をされてきました.また ISO/IEC 9126-3 のドキ
ュメントエディタとして国際規格制定に多大な貢献を
されてきました.
中尾 好秀氏(シャープ株式会社)
中尾好秀氏は 1997 年から現在に至る 6 年間の長きに
わたり SC 18/WG 9 小委員会幹事,SC 18/WG 9/PEN SG
主査,SC 35 専門委員会委員ならびに SC 35/WG 4 小委
員会主査等ユーザインタフェース分野の多数の委員会
に参加され指導的役割を果たされてきました.また SC
35/WG 4 コンビーナならびに ISO/IEC 14754 および
18021 のプロジェクトエディタとして国際規格制定に
多大な貢献をされてきました.
青野 雅樹氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)
青野雅樹氏は 1996 年から現在に至る 7 年間の長きに
わたり SC 24 専門委員会委員および SC 24/WG 6 小委員
会主査としてコンピュータググラフィクス及び画像情
報処理分野の標準化活動に貢献されてきました.特に
VRML PNG X3D(Extensible3D)の標準化において企業
現場の要請に基づいた実用性の高い国際規格制定に貢
献されました.
小林 龍生氏(株式会社ジャストシステム)
小林龍生氏は 1996 年から現在に至る 7 年間の長きに
わたり SC 2 専門委員会委員,SC 2/漢字 WG 主査ならび
に学会試行標準/WG 2 小委員会委員として国際符号化
文字集合(UCS)の標準化活動に貢献されてきました.
また多くの国際会議に参加し海外からの信頼も厚く特
に IRG ではリーダー的な役割を果たされてきました.
杉山 秀紀氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)
杉山秀紀氏は 1988 年から現在に至る 15 年間の長き
にわたり SC 6 専門委員会委員 SC 6/WG 1 小委員会委員
SC 6/WG 3 小委員会委員ならびに JIS X 5252 改正原案
作成委員会幹事等として通信とシステム間の情報交換
の分野の標準化に貢献されてきました.1991 年からは
ISO/IEC 13642 のプロジェクトエディタとして国際会
議にも数多く出席し国際規格制定に多大な貢献をされ
てきました.また 1995 年と 2001 年に日本で開催され
た JTC 1/SC 6 国際会議の準備委員として尽力をされま
した.
鈴木 健司氏(東京国際大学)
鈴木健司氏は 1984 年データベース規格開発開始以
来現在に至る 19 年間の長きにわたりデータベースの
専門家として標準化活動に参加され NDL,RDA,IRDS,
SQL/MM など多くの国際規格作成に貢献されてきました.
また専門委員会関係では SC 21 専門委員会設立当初よ
り SC 21/WG 3 小委員会幹事として参加したのを最初と
して以来 SC 32 専門委員会委員 SC 32/WG 4 小委員会主
査ならびに SC 32/WG 5 小委員会主査等多数の委員会に
参加し指導的役割を果たされてきました.
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西村 和夫氏(駒澤大学)
西村和夫氏は 1984 年から現在に至る 19 年間の長き
にわたり SC 22/Fortran WG 小委員会委員,Fortran JIS
原案作成委員会委員ならびに C++ JIS 原案作成委員会
委員として標準化活動に貢献されてきました.特に
1991 年の Fortran JIS 原案作成に際しては La TeX を
中心として原案作成の初期段階から版下作成まで一貫
して管理できる工程の提案と環境を整備されました.
このノウハウは SC 22 関係の他の JIS 原案作成の際に
も参照されるなど多大な貢献をされてきました.
室中 健司氏(富士通株式会社)
室中健司氏は 1992 年から現在に至る 11 年間の長き
にわたり SC 7/WG 7 小委員会委員として ISO/IEC 12207
改定および ISO/IEC 15288 制定のための原案審議の中
心となり日本提案を取りまとめ国際規格への反映に貢
献されてきました.また 2001 年 5 月の JTC 1/SC 7 名
古屋会議開催に際しては日本代表だけでなく運営メン
バとして尽力されました.
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< 2003 年 9 月 以 降
国際会議開催スケジュール>
JTC 1
2003-11-17/21
Singapore, Singapore
SC 27
2004-04-26/27
Singapore, Singapore
SC 2
2004-06-TBD
TBD, Europe
SC 28
2003-10-21/24
Jeju Island, Korea
SC 6
2003-11-28
Jeju Island, Korea
SC 29
2004-07-26/27
Redmond, US
SC 7
2004-05-09,14
Brisbane, Australia
SC 31
2004-05-02/03
Orland, US
SC 11
2004-05-12/14
Lugano, Switzerland
SC 32
2004-05-17,28
Xian, China
SC 17
2003-10-08/10
Singapore, Singapore
SC 34
2003-12-06,11
Philadelphia, US
SC 22
2003-09-16/19
Oslo, Norway
SC 35
2003-12-01/06
Paris or Berlin
SC 23
2004-TBD
TBD
SC 36
2003-09-22,27
Beijing, China
SC 24
2004-07
TBD, USA
SC 37
2003-09-11/12
Rome, Italy
SC 25
2003-09-19
Zurich, Switzerland
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< 情 報 処 理 学 会 試 行 標 準 の ペ ー ジ >
WG 1:情報技術用語データベース
学会試行標準/WG 1 小委員会
主査 大野 義夫(慶應義塾大学)
このデータベースをご利用いただくことにより,規
WG 1 小委員会の活動目的は,学会試行標準専門委
格の中で使用しようとする用語についてのコメント
員会の中でも,少々変わっています.つまり,特定の
を収集することも可能です.
標準を提案しようというのではなく,標準化活動を用
まずは下記の URL で,実際にデータベースをご覧に
語の面からサポートする枠組みを作る,ということを
なってください.
目的としています.
新たな規格を作ろうというとき,内容もさることな
http://www.itscj.ipsj.or.jp/ipsj-ts/02-01/
がら,適切な用語の選択に悩むことが多いと思います. it-term/index.cgi
こうしたときのために WG 1 では,JIS の規格票で定
現在は試験公開の段階ですので,ユーザ名:it-term,
義されている用語,あるいはそれ以前の段階の規格案
パスワード:it-term を入力していただく必要があり
で使おうと考えている用語,規格とは別に,ある分野
ます.
で使われているものをまとめた用語集,などを登録・
また,新たに用語を登録したい場合には,次の形式
検索できるようなデータベースを作ってきました.こ
のデータを大野([email protected])にお送りく
のデータベースでは,用語とその定義,対応英語を,
ださい.用語登録の仕組みは今後改善してまいります.
文書番号,用語の読み,対応英語のいずれからでも検
番号<tab>用語<tab>用語の読み<tab>定義<tab>対
索できます.
応英語<crlf>
データベースの内容はまだまだ網羅的なものとは
用語,用語の読み,対応英語はいずれも,●で区切
なっておりません.現状では,旧 SC 1 関連の用語規
って複数個を指定することが可能です.また,文書名
格を中心に,登録・公開を承認いただいた 200 余りの
なども決めていただく必要がありますので,詳細は大
情報技術関連 JIS の定義用語を登録してあるにすぎ
野まで電子メールでお問い合わせください.
ません.それでもかなりの数にのぼります.
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<編 集 後 記 >
日本は 10 年ぶりの冷夏となった.ヨーロッパでは猛
暑が続きアルプスの氷河が溶け出したり,フランスで
は熱波のため高齢者が何千人も亡くなったとの報道が
あった.まだ決定したわけではないが,阪神タイガー
スが優勝する年は政変があったり異変が多いらしい.
米国にある発電所の一部のトラブルが連鎖的に拡大
し,米北東部に大停電の事態を引き起こした.原因は
送電線の老巧化とか言われているが真の原因は不明の
ようだ.ホテルのトイレが使用できなくなり宿泊者全
員が放り出されたとか,交通機関がマヒ状態とか,ラ
イフライン停止の報道がなされた.停電によるコンピ
ュータダウンによる社会への影響の記事は証券取引所
の話し位しか報道されなかった.
日本でも電力不足の心配がされたが,冷夏のおかげで
無事に済みそうだ.日本は世界の中でもめずらしい 50Hz
と 60Hz の 2 種類の電力系統を持つ国であるが,周波数が
異なると電力の相互の供給が難しいらしい.新聞には仮
に統一するとなると一方の周波数の発電所全体を作りか
える程度の莫大な費用がかかると報じていた.分野は違
うがここにも標準化の重要性が垣間見える.
[YM 記]
♪ 国際規格開発状況検索:
http://lucia.itscj.ipsj.or.jp/standard/
servlets/DocumentSearch?ID=102
発
行
人
社団法人 情 報 処 理 学 会
情報規格調査会
広報委員会
〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8
機械振興会館 308-3
Tel: 03-3431-2808 Fax: 03-3431-6493
[email protected]
http://www.itscj.ipsj.or.jp/
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