長距離ポテンシャルと長距離相関について 特に (△ − κ2) 型と (△ + a2) 型の違い 羽鳥尹承(文科省核融合科学研究所 名誉教授) 長距離ポテンシャルを持つ多体系、イ)中性プラズマ、ロ)stellar system 、 ハ)負温度渦点系、ニ)正温度2次元非中性電子プラズマ、をとりあげる。いず れも、運動を記述する方程式とそれに随伴する Poisson 方程式から構成される点 で類似している。一方で、長距離の相関関数に関しては、△ − κ2 型と △ + a2 型 とに分かれることを指摘する。後者では、一様平衡状態の仮定(Jeans swindle) のもとでの線形応答理論では不安定モードの出現があり困難が生ずる。これを解 決する方式を提案したい。 以下の目次は、 (1)裸の長距離ポテンシャル(平衡状態) (2)Poisson equation (3)Screened potential (4)プラズマの線形応答 (5)Stellar system の線形応答 (6)負温度渦点系の線形応答 (7)非一様系の長距離相関関数 (1) 裸の長距離ポテンシャル イ)電子のクーロンポテンシャル −e δ(⃗r) ε0 −e ϕ = 4πε0 r − △3 ϕ = (1) (2) ロ)万有引力ポテンシャル − △3 Φ = −4πGmδ(⃗r) −Gm Φ = r (3) − △2 ψ = Ωδ(⃗r) −Ω ψ = ln r 2π (5) (4) ハ)渦点の流れ関数 (6) 短距離力の中性分子の流体系が何故に長距離ポテンシャルを持つのか? ニ)電子ロッドのポテンシャル q δ(⃗r) ε0 −q ϕ = ln r 2π − △2 ϕ = (7) (8) (2)Poisson equation(平衡状態) イ)中性電子プラズマ(電子+ion background) − △3 ϕ = −en0 βeϕ (e − 1). ε0 (9) ロ)Stellar system − △3 Φ = −4πGρ0 e−βmΦ (10) − △2 ψ = ω0 e−βΩψ (11) ハ)負温度渦点系 ニ)正温度2次元非中性電子プラズマ(軸対称) −en0 βeϕ′ (e − b), ε0 en0 2 ϕ′ = ϕ − b r , 4ε0 ωr ωc − ωr2 b = > 1. ωp2 /2 − △2 ϕ ′ = (12) (13) (14) (3)Screened potential イ)デバイシールド 一様平衡解 ϕeq = 0 は自明である。外部から1電子を位置 r⃗0 に導入し、その線形 応答を δϕ とすると、 en0 βeϕeq − △3 ϕeq = − (e − 1), (15) ε0 −eρex = −eδ(⃗r − r⃗0 ), ϕ = ϕeq + δϕ, ϕeq = 0, e 2 −(△3 − kD )δϕ = − δ(⃗r − r⃗0 ), ε0 −e −kD r e 2 n0 β 2 δϕ = e , kD = 4πϵ0 r ϵ0 (16) (17) ロ)万有引力 平衡状態 Φeq (r) に対して、外部から1天体を位置 r⃗0 に導入し、その線形応答を δΦ とすると、 − △3 Φeq = −4πGρ0 e−βmΦeq , −(△3 + kJ2 (r))δΦ = −4πGmδ(⃗r − r⃗0 ), (18) (19) kJ2 (r) = kJ2 e−βmΦeq (r) , (20) kJ2 = 4πβGρ0 , (21) もし一様性 kJ (r) = kJ を仮定すれば、 δΦ = − Gm cos kJ r, r (22) ハ)負温度渦点系 平衡状態 ψeq に対して、外部から1渦点を位置 r⃗0 に導入し、その線形応答を δψ とすると、 − △2 ψeq = ω0 e−βΩψeq , −(△2 + a (r))δψ = Ωδ(⃗r − r⃗0 ), 2 a2 (r) = a2 e−βΩψeq (r) , a2 = −βΩω0 (23) (24) (25) もし一様性 a(r) = a を仮定すれば、 −Ω −Ω δψ = N0 (ar) ∼ 4 4 √ 2 π cos(ar − ) πar 4 (26) ニ)正温度 2 次元非中性電子プラズマ(軸対称) 平衡状態 ϕ′eq に対して、外部から1電子を位置 r⃗0 に導入し、その線形応答を δϕ′ とすると、 −en0 βeϕ′eq (e − b), ε0 −e 2 −(△2 − kD (r))δϕ′ = δ(⃗r − r⃗0 ), ε0 e 2 n0 β 2 2 βeϕ′eq (r) 2 kD (r) = kD e , kD = , ε0 − △2 ϕ′eq = (27) (28) (29) もし一様性 kJ (r) = kJ を仮定すれば、 q q δϕ = K0 (kD r) ∼ 2π 2π ′ √ π −kD r e 2kD r (30) (4)プラズマの線形応答 • プラズマの線形応答 外的な電子数密度の導入 ρex (⃗r, t)、 そのフーリエ成分 ρex (⃗k, ω) プラズマに誘導される電子数密度 ρ(⃗r, t)、 そのフーリエ成分 ρ(⃗k, ω) 1 − 1)ρex (⃗k, ω)、ここに ε(⃗k, ω) はよく知られた誘電 線形応答 ρ(⃗k, ω) = ( ε(⃗k,ω) 応答関数。 特に static な場合、ρex (⃗r) = δ(⃗r) すなわち ρex (⃗k) = 1 1 − 1) ε(⃗k, 0) 1 = ( − 1) k2 1 + kD2 2 −kD = 2 , 2 k + kD 2 −kD ρ(⃗r) = e−kD r 4πr ρ(⃗k, 0) = ( ρ(⃗r) = ε0 2 k δϕ e D に注意すれば前の結果と一致することが分かる。 (31) (32) • 電子数密度 n(⃗r, t) の相関関数 時空相関 C(⃗r, t) = n1 ⟨δn(⃗r + r⃗′ , t + t′ )δn(r⃗′ , t′ )⟩ と、 そのフーリエ成分 S(⃗k, ω) 空間相関 C(⃗r) = n1 ⟨δn(⃗r + r⃗′ , t)δn(r⃗′ , t)⟩、 とそのフーリエ成分 S(⃗k) 空間相関から自己相関 δ(⃗r) を差し引いたものを相関関数 h(⃗r) と呼ぶ。 したがって S(⃗k) = n1 ⟨|n(⃗k, t)|2 ⟩ = h(⃗k, t) + 1 ≥ 0 特に平衡では、 −n k 2 1 S(⃗k, ω) = ℑ , 2 πω kD ε(⃗k, ω) ∫ 1 ⃗ S(k) = dωS(⃗k, ω) n k2 1 k2 )= 2 = 2 (1 − ℜ 2 kD k + kD ε(⃗k, 0) (33) (34) (35) なお、上の計算で Kramers-Kronig の関係を使った。以上線形応答 ρ(⃗k) と 相関関数 h(⃗k) は同じことが分かる。従って、 h(⃗r) = ρ(⃗r) = ε0 2 k δϕ, e D (36) より、Poisson 方程式の線形応答 δϕ が分かれば相関関数 h が求まる。 (5)Stellar system の線形応答 • 流体方程式に基ずく計算(Weinberg の教科書)。 Vlasov 方程式に基ずく計算 (J. Binney and S. Tremaine の教科書) プラズマとパラレルに計算できる。無摂動状態が空間一様と仮定すると、 k2 ε(⃗k, 0) = 1 − J2 , k 2 k , S(⃗k) = 2 k − kJ2 k2 h(⃗k) = 2 J 2 k − kJ (37) (38) (39) h(⃗k) の表式からフーリエ逆変換で ρ(⃗r) に比例した表式(17)が得られる。 • ”Jeans swindle” 無摂動状態として空間一様な状態を考えたいが現実にはない。すなわち密 度一様 ρ0 = const.、無重力 ∇Φ0 = 0 を仮定すると Poisson eq. を満たさなく なる。しかし強引に一様の仮定で固有モードの計算をすると、音波が不安定 になる。すなわち、ω 2 = (k 2 − kJ2 )vs2 これはプラズマ振動 ω 2 = (kvs )2 + ωp2 の対応物である。したがって、k < kJ では音波が不安定になる。 (6)負温度渦点系の線形応答 Fokker-Planck 方程式に基ずいて計算 (P.H. Chavanis (2008)Physica A 8917)、 ∂ ω + ∇(⃗uω) = −∇ · ⃗Γ, ∂t ⃗u = −ˆ z × ∇ψ, ⃗Γ = −D · ∇ω + V⃗ ω (40) (41) (42) • 準平衡の仮定。すなわち ω = f (ψ),したがって ∇(⃗uω) = 0 • ⃗Γ の線形化。すなわち、⃗Γ = −Deq ∇ω + V⃗eq ω ここに V⃗eq = −βΩDeq ∇ψeq (Einstein の関係) • ”swindle” 一様性、Deq = const., ωeq = const. と ⃗ueq = 0 を仮定。しかし両立はしない(Jeans swindle に対応している)。 • 外的な摂動の導入 ωex = Ωδ(⃗r). 誘導された応答 ω = ωeq + δω 、線形応答 の方程式は、 ∂ δω − Deq (△ + a2 )δω = Deq a2 ωex , ∂t ∂ δn(⃗k, t) + Deq (k 2 − a2 )δn(⃗k, t) = Deq a2 ∂t ここに渦点の数密度の応答 δn = δω Ω (43) (44) を定義した。この解は簡単に求まり、 2 2 δn(⃗k, t) = h(⃗k, t) = δneq (1 − e−Deq (k −a )t ), (45) a2 δneq = 2 (46) k − a2 √ Jeans 不安定性とよく似た長波長の不安定性条件 k < a = −βΩωeq が得ら れた。 (7)非一様系の相関関数 ロ)、ハ)、ニ)については平衡状態が空間的に非一様であり中性プラズマのよう に一様系の線形応答理論を適用して相関関数を求めることができない。Jeans swindle のように無理に Poisson 方程式を満たさない一様解を仮定すると長波長領 域で不安定なモードが出現する。 ロ)、ハ)、ニ)の平衡状態の相関関数 h(⃗r, r⃗0 ) を求めるには(3)節で導入した 線形化 Poisson 方程式を直接解く必要がある。。すなわち、 ロ)Stellar system −(△3 + kJ2 (r))δΦ = −4πGmδ(⃗r − r⃗0 ), k 2 (r) h(⃗r, r⃗0 ) = − J δΦ(⃗r, r⃗0 ). 4πGm (47) −(△2 + a2 (r))δψ = Ωδ(⃗r − r⃗0 ), a2 (r) h(⃗r, r⃗0 ) = δψ(⃗r, r⃗0 ). Ω (49) (48) ハ)負温度渦点系 (50) ニ)正温度非中性電子プラズマ e δ(⃗r − r⃗0 ), ε0 2 ε 0 kD (r) ′ h(⃗r, r⃗0 ) = δϕ (⃗r, r⃗0 ). e 2 −(△2 − kD (r))δϕ′ = − (51) (52)
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