北朝鮮難民救援基金 NEWS Nov 2012 № 079 延辺朝鮮族自治州で北朝鮮の今を見る大宅京平尖閣諸島領有権をめぐって日中関係が緊張していますが、今回の訪中においてその影響は殆ど見られませんでした。旅行中に｢釣魚島中国領｣と書いた車は 2 台しか見ませんでした。日本人はノービザですが、ホテルで会った韓国人は、今回の中国ビザ取得に際し、今までになく厳しく、家族関係まで総て申告させられたと話していました。これは中国の国境地帯における外国人三非問題（不法入国、不法滞在、不法就労）の影響と見られます。延辺地域では脱北者と韓国宗教人が特に注視されているようです。っとも、北朝鮮に対する中国の投資が拡大し、国境都市が重要視されていることも開発の原因でしょう。特に北朝鮮羅先市の経済特区への中国側投資が大きく作用していると見られます。以前は国境地域で北朝鮮のトラックが走っているのを見られましたが、今は全くみられません。総て中国のトラックです。北朝鮮の経済難で車両も燃料も不足しているためと見られます。琿春市には北朝鮮の羅先経済特区に電力を供給するための発電所が稼働しています。中国の援助で羅先経済特区までの北朝鮮内高速道路建設も始まったそうです。活況を呈する延辺朝鮮族自治州延辺朝鮮族自治州は今年成立 60 周年を迎え、中心都市である延吉市の表通りはすっかり綺麗に変わっていました。古い建物は取り壊され新しい建物に代わったり化粧直しされたりしていました。延吉空港の近くにも真新しい高層アパートが立ち並び大変身中です。新築された延吉駅の南側には大規模な「中国朝鮮族民族園」という民族村が建設中でした。羅先経済特区に電力を供給する発電所また、郊外には北朝鮮の外貨稼ぎ労働者派遣工場もありました。派遣人員は 400 人程度との事で、自由時間も無く隔離された環境で搾取労働させられているとの事でした。中国朝鮮族民族園中朝国境都市の図們市、琿春市でも都市開発が進み、中断していた新幹線の工事も再開され、中国の経済発展の波は吉林省の端まで及びつつある事を実感しました。も老朽化が著しい中朝国境をつなぐ橋 4 北朝鮮難民救援基金 NEWS Nov 2012 № 079 警備が厳しい中朝国境、携帯用電波監視塔図們江（豆満江）の中国側には、新たな鉄条網が設けられていました。そして辺防隊の車両が行来し、北朝鮮側の写真は路上から自由に撮れない状況でした。現地の方の説明によれば、鉄条網は脱北者の中国密入国よりも、問題を起こす外国人の北朝鮮への密入国を防止するためだといいます。脱北者を見張る哨所かと思いましたが、携帯電話の電波監視塔だという説明でした。現在、北朝鮮では中国の携帯電話を使い、内部情報を外部に流す事件が多発しているため、それを取り締る為だそうです。北朝鮮歌劇団の公演に思わず拍手今回は偶然に延吉市で歓楽宮という最新の劇場で金正日が作った北朝鮮ピパダ（血の海）歌劇団の｢天池の歌｣公演を観る事ができました。外貨稼ぎと朝鮮族自治州創立 60 周年記念公演ということで、抗日運動や革命を扱ったものでなく、中朝友好のものでした。内容は朝鮮舞踊と楽器演奏が主でとても素晴らしいものでした。白頭山の溶岩の流れから始まり、アリランやオンヘヤ、トラジなどのメロディーをバックに仙女が朝鮮民族舞踊を舞います。ピリ（朝鮮横笛）やコムンゴ（低音の朝鮮琴）の音色、サモノリ（帽子に長い帯を付けて回す）にタルチュム（仮面劇）など、さすがにピパダ歌劇団の公演でした。図們江沿岸の中国側に設置された鉄条網図們江最下流の北朝鮮側税関北朝鮮ピパダ（血の海）歌劇団公演最後には思わず立ちあがって拍手をしてしまいました。北朝鮮が一日も早く飢餓と人権弾圧から解放され、世界各地でこのような素晴らしい公演ができる事を願わずにはいられません。気がかりな事は、朝鮮語を話す若者が減っていることです。朝鮮族自治州 60 周年を迎えながら、朝鮮族の働き盛りの人々は韓国に出稼ぎに行き、朝鮮語を話す人は年配の方か韓国出稼ぎから帰って来た方で、漢族がどんどん増えている事です。国境沿いの北朝鮮の家屋北朝鮮側の山の頂には高さ 30～40ｍ位の鉄塔が新たに建っているのが目撃されました。 5