第5小委員会(設計・施工) 小項目テーマ:土構造物/土留め構造物

第5小委員会(設計・施工)
小項目テーマ:土構造物/土留め構造物
平川大貴(防衛大学校)
石垣 勉(NIPPO)
小島謙一(鉄道総合技術研究所)
杉本隆男(日建設計シビル)
鍋島康之(明石高専)
安全率・仕様規定
設計法の整備
性能設計
概念の導入
アセットマネジメント
システム
設計基準の
階層化
リスクベース
設計法
選択的高規格化
の基準化
維持管理
マニュアルの整備
耐震基準類
の高度化
RI法による品
質管理規定
BCP/BCMの導入
土構造物/土留め構造物
BIM,CIM技術
市街地講習災害
防止対策要綱
環境基本法
個別要素法
有限要素法 信頼性解析
施工機械の大
型化・自動化・
多様化
削孔機械
連続地中壁技術
GPS活用
施工管理
自動施工管理技術
情報化施工技術
地盤補強技術
(土構造物の高
グランドアンカー工法の普及
安定化)
大空間掘削技術
大規模埋立技術
大型社会基盤
プロジェクト
年代
近接施工技術
1970
東海道・
山陽新幹線
1980
1990
東北・北陸・
東京湾
中国・九州
横断道
自動車道
上越・東北
新幹線
社会基盤関連
法規・観測網
科学一般の
技術革新
コンピュータ
スペック
大規模地震
対策特別
措置法
青函
トンネル
地震活動等
総合監視
システム
地域気象観測
システム
衛星測位
システム
気象衛星
ひまわり
人類が
月面へ
リニアモータ-カー
光ファイバー
PCの
普及
公共事業支援
統合情報システム
2010
スペースシャトル
フラクタル
5MHz
128kB
超伝導
ニュートリノ
フラーレン
カーボンナノ
チューブ
16MHz
8MB
本州四国
連絡橋
2040
東京
五輪
東京国際
空港拡張
首都圏
三環状
中央新幹線
(東京-名古屋)
北陸
新幹線
中央新幹線
(東京-大阪)
北海道
新幹線
気候変動
に関する
政府間パネル
建設履歴・劣化
情報の統一DB
クラウド
コンピューティング
3GHz
2GB
気・水・地圏高精度
観測システム
再生率90%以上の ナノスケール
ライフサイクル技術 製造技術
メソスケール(10km
メッシュ)降雨予測
インターネット
2050
社会基盤管理の省力化・
自動化を目指す時代
第二東名
自動車道
K-NET 大深度法
連続・時間雨量法
600MHz
64MB
2030
東日本大震災
地震防災
対策特別
措置法
クローン技術
プルーム
テクトニクス
2020
社会基盤の長寿命化・
高度運用を目指す時代
阪神淡路大震災
環境
基本法
基本となる施
工技術
インフラのモジュール
化による部分更新
総合土工
運用システム
ダウンサイジング技術
2000
関西
国際空港
健全性
診断システム
精度保証付き
地盤挙動予測技術
社会基盤の高度耐災性・
低環境負荷を達成した時代
普賢岳大噴火
市街地公衆
災害防止
対策要綱
地盤解析の高
度化・高速化
社会基盤総合
データベース
ICTを活用した
管理システム
地盤改良工法の普及
量的に不足した社会
基盤を整備した時代
東名・中央
高速道
地盤調査技術と
解析技術の融合
三次元解析
動的解析
逆解析
応答解析
機械化施工
環境修復技術
大深度法
建設材料のリサイクル
設計・施工基
準類の整備,
関係法令
M6以上の
地震予測技術
アカデミックロードマップ(説明文)
土構造物の安定性は調査や試験の結果に基づいて評価されているが,その信頼性の度合いは土の不均一性や環境条件の経年変化等のため
に相対的に低いという特徴がある.土構造物を安定的に構築するために,盛土や切土の勾配の標準化といった経験的知見に基づく対応が取られ
てきた.我が国の法面勾配の標準化規定は古くは1908年の鉄道基準で確認でき,下記に示す構築技術の進展の過程でも経験的知見に基づく対
応策は受け継がれてきた.
路盤・路床や擁壁等の盛土構造物に要求される条件には,材料として適したものであるかの判定,施工中における施工機械のトラフィカビリ
ティーの確保,構造物自重による圧縮の抑制,必要な安定性(せん断強度,支持力)の確保,等がある.土構造物自重による圧縮性やせん断強
度・支持力はその土の密度状態にも強く関係するため,使用する土の選定と密度化は盛土構造物の安定性保持に重要となる.建設材料としての
土の工学的分類への試みは米国の道路分野から始まり,表層土の道路用材としての適否を粒度試験によって判定したStrahan(1906) ,米国道路
局PR分類法,Casagrande (1948)のAC分類法,一般土工を対象とした統一土質分類法(1969,ASTM: D2487‐69)へと至る.統一土質分類法はイギリ
ス,ドイツ,フランス,日本(1973)といった各国の土質分類法に大きな影響を与えた.土質分類の確立は現在の土質区分に応じて強度パラメータを
定める設計法につながる.一方,土構造物に要求される力学的安定性の確保において重要となる土の密度状態とその評価は,Proctor (1933)によ
る土の締固め原理の発見によるところが大きい.この締固め原理によって締固めエネルギー規定とともに,乾燥密度と含水比が施工管理値として
採用されることとなった.盛土構造物では乾燥密度による施工管理が一般的であるが,地盤の支持力が供用性に強く影響する舗装構造物はさら
にCBR値(Porter, 1928)によってその性能評価を行っている.
山止め掘削技術の進展は鋼矢板の国内生産の実現,薬液注入工法や深層混合処理工法などの補助工法技術の確立,グランドアンカー工法の
導入と信頼度の向上による大空間地下掘削の実現,計測技術の進歩等の材料や施工技術の革新に加えて,掘削工事による地盤沈下や地下水
汚染,流動阻害等の環境問題への対応,建設発生土の産廃処理や有効利用への社会的要求,都市部での地下空間の減少に伴う大深度化,地
表部の減少による近接施工技術の必要性,といった社会環境の変化による要因も大きい.
土構造物と土留め構造物の基本的な安定計算に関しては,抗土圧構造物ではCoulombやRankineの土圧式,Terzaghiの土圧算定図(1934)等が
継続的に用いられてきた.これらの安定計算手法に対して,地震と降雨に対する安定性の評価には改善の余地がある.盛土の耐震性は検討され
ない場合も多く,盛土の耐震性を検討する場合でも円弧すべり法と震度法との組合せを用いる方法が長年にわたり採用されてきた.震度法の適
用は擁壁や土留め構造物でも同様である.兵庫県南部地震等の近年の巨大地震から,動的問題と静的問題に置き換える震度法の限界が指摘さ
れるようになってきている.また,耐降雨に対しては排水溝や盛土内の排水層といった様々な排水施設に加えて法面保護工が施すのが長年にわ
なって用いられてきた.排水施設の適切な維持管理方法に加えて,気候変動という環境変化への評価や対応方法には更なる検討が望まれる.舗
装ではBoussinesq(1885)やBurmister (1943)の理論解析を踏まえ,多くの荷重と層の舗装構造も解析できるShell設計法(1934)の発表は以降の安定
計算法の進展に大きな影響を与えた.舗装においては,他の土構造物以上に,耐久性の向上や維持管理費の抑制の技術革新が求められる.