(参 考) 鉱 工 業 指 数 の 解 説 (参 考 ) 鉱 工 業 指 数 の 解 説 1 鉱工業指数の概要 一 般的 に鉱 工 業 指 数 作 成 の 3 要 素 とし て 、採 用 品 目 、ウェイト、基 準時 (算 式 ・季 節 調 整 法 含 む)が上げ ら れ る 。 作成 の 流 れ は 次 の と お りで あ る 。 指数採用品目選定 採用品目時系列整備 └ 全品目一覧表・指数など ウェイトの算定 ├ウェイト基準額の算定 ├業種別ウェイト算定 └財別ウェイト算定 品目別ウェイト算定 ┌季節調整済指数 ├季節指数 ├原指数 指 数 計 算 ま た、 平 成 21 年 の 鉱 工 業 指数 の 構 成 は 、 次 の と おり で あ る 。 ・対 象 : 製 造 業 ( 参 考と し て 電 力 ・ ガ ス 事 業を 含 む ) ・ 基 準 時:平 成 17 年( 2005 年 の 工業 統 計 調 査 等 を 加工 し た も の )の 平 均 を 100 ・ 計算 方 法 : 基 準 時 固 定 加重 平 均 法 ( ラ ス パ イ レス 算 式 ) ・ 採用 品 目 : 各 品 目 別 数 量が 個 別 指 数 ( 生 産 、 出荷 、 在 庫 ) ・ ウ ェ イト : 基 準 時 の 各 種 金 額構 成 比 ( 付 加 価 値 額 、出 荷 額 、 在 庫 額 ) ・分 類 : 業 種 分 類 ( 日 本 標準 産 業 中 分 類 準 拠)、 特 殊 分 類( 財 用 途 分 類 ) ・ 計算 者 別 : 経 済 産 業 省 (全 国 )、経 済 産 業 局 ( ブロ ッ ク )、 都 府 県 2 採用品目 (1)採 用 品 目 ( ど の 品目 に す る の か ) の 概 要 多数の鉱工業製品の全数調査は不可能なため、少ない品目で鉱工業・業種全体 の動きを表せられれば、調査効率がよい。この特定の採用品目で全体の動きを代 表 さ せる こ と を代 表 性 と い う。 こ の よ う に 採 用 品 目 は全 体 の動 向 を代 表 できるものを 選 ぶ 必 要 が あ り 、 各 業 種 、 財ごとに代表性を考慮し、質的変化や新製品の出荷などによる実態変化を踏まえ て、代表性を検討している。例えば、基準時で付加価値額が低い品目であっても きょうりょう 今 後 急成 長 が 見 込 ま れ る 品 目が あ れ ば 、採用 品 目 とす る こ と が あ る 。また 、 橋 梁 な ど長 期 生 産 物 ( 製 造 期 間 が 数 か 月 以 上 に わ た る も の ) は 、 そ の ま ま 採 用 す る と 擾乱要因(特定月に多大な数値を計上)となるため、工事に着手してから完成ま しんちょく で の 作業 の 進 捗 率 を 生 産 系 列 と して い る 。な お 、用 途 が 2 つ 以 上 の 財 に ま た がる ものは、基準時の用途別構成でウェイトを分割して複数系列としているため、業 種 分 類と 特 殊 分 類 で は 採 用 品目 数 が 一 致 し な い 。 在 庫 指 数 の採 用 品 目 は 、 受 注 製 品 等 で 在 庫 を 把 握 す る 必 要 が な い も の や 、 在 庫 の 把 握 が 極 め て 困 難 で 数 値 が 得 ら れ な い 品 目 が あ る た め 、 生 産 指 数 より少 なくなっ - 101 - て い る。 採用品目は、全国ではウェイトが低いが本県では高いものや、全国では生産さ れているが本県では生産されていないものなど、全国と富山県とは産業構造に差 異 が ある こ と か ら 、本 県 に 関係 す る国 採 用 品 目 に県 単 独 調 査 品 目を付 加 し てい る 。 また、月別データは、経済産業省所管品目は生動調査から、所管外品目は他省・ 業 界 団 体 の も の を 経 済 産 業 省 (局)経 由 に て 、 ま た 県 単 独 調 査 と し て 事 業 所 ・ 関 係 課 (団 体)か ら 得 て い る 。 こ れ ら の こ と か ら 、 国 の 鉱 工 業 指 数 作 成 作 業 を 踏 ま え 、 本 県 の指 数 作 成 基 準 ( 採 用 品目 等 ) を 改 定 し て い る。 なお 、 平 成 17 年 基 準 採 用品 目 数 は 次 の と お り 。 生産計 製 造 工業 鉱業 電 力・ガ ス 事 業 ≪ 参 考系 列 ≫ 在庫計 製 造 工業 鉱業 電 力・ガ ス 事 業 ≪ 参 考系 列 ≫ 全 国 496 492 4 富 山 県 ( カ ッ コ 内 は 12 年 基 準 ) 1 9 6 (207) 1 9 6 (205) ― (1) 2 358 355 3 ― 2 (2) 1 3 2 (146) 1 3 2 (146) ― 1 (1) (2)採 用 品 目 選 定 の 方法 全 品 目一 覧 表 を 作 成 し 、次 に全 品 目 指 数 を 作 成 し 、代 表 率 ( 「(4)全 品 目 指 数 の 作 成 」 P23 を 参 照 。) を 踏 ま えて 採 用 品目 を 検 討 し 、 採 用 品 目の 時 系 列 整 備 を 行 っ てい る 。 ①全品目一覧表 全品目一覧表(品目名称、調査単位、基準年における生産数量、生産金額、生 産単位など記載)を作成し、統合しても全体に影響がない同じ性質の品目につい て は 、集 計 を 簡 便 化 す る た め、品 目 の統 合 を 行 っ てい る 。 単価は、生産に関しては生産単価を、在庫に関しては販売単価を優先して基礎 デ ー タと し て い る が 、 調 査 項目 に 販 売 単 価 が 無 い 品目 は 単 価 推 計 を 行 っ てい る 。 採用単位は、単位当たりのバラツキがない単位で、実態が反映できるものを選 ぶ こ と と し 、 ① 製 品 数 量 単 位 ( 製 品 の 性 質 が 均 一 、 技 術 進 歩 が 急 速 で な い も の )、 ② 製 品 固 有 単 位 ( 能 力 に よ り 経 済 的 効 用 等 が 大 き く 異 な る も の )、 ③ 金 額 単位 ( 品 質 、 価 値 等 が 異 な る 品 目 を 統 合 し た も の ) を 採 用 し て い る。 ②全品目指数の作成 品 目ご と に 当 該 基 準 年を 100 と し た 指 数 を 作 成 し、 ど の 程 度 ま で の 品 目を 採 用 す れ ば全 品 目 を 採 用 し た 場 合と 同 じ よ う な 動 き と なる か 検 討 す る た め、ランク別 指 - 102 - 数を作成している。これは、鉱工業全体、業種別に、当該品目を生産金額の大き い 順 に並 べ 、生 産 額 上 位 か ら 95% 、90% … と 5% 刻 み で 60% ま での 総 合 指数 を 作 成 し 、 全 品 目 指 数 (100% 指 数 ) と 比 較 し て 、 ど の ラ ン ク で 全 体 を 代 表 で き る か、 検 討 する も の で あ る 。 こ の代 表 率 ( カ バ レ ッ ジ : 鉱 工 業 生 産 活 動 に よ っ て 算 出 さ れ る 全 品 目 に 対 す る 採用品目の比率)によって採用品目数に差異が生じる。代表率は、付加価値額が 特 定 品目 に 偏 っ て い る (弓 形 の ふ く ら み が 大 き い ) と 比 較 的少 な い 品 目 で 高 く な り 、少 な い品目で全体の動きを表わす(代表させる)ことができる。他方、付加価値額が 平 準 化し て い る (弓 形 の ふ く ら み が 小 さ い ) も の は 、代 表 率 を高 め る に 多 数 の 品 目 が必 要 となる。これは業種ごとに異なり、事業所からのデータ入手度合のバラツキによ り、業種ごとに代表率に差異が生じている。また、代表率をどこに設定するかに よ っ ても 、 品 目 数 に 差 異 が 生じ る 。 (弓形のふくらみ大きい) (弓形のふくらみ小さい) 100 累 積 構 成 比 50 50 ( ( 累 積 構 成 比 100 ) ) % % 0 0 0 50 100 150 品目数 0 100 200 300 品目数 ③採用品目時系列整備(系列の維持管理) このようにして採用した品目は、既存採用品目で過去データがある場合はそれ に基づき時系列数値を整備できるが、新規品目で過去データがない場合は推計で 時 系 列数 値 を 整 備 す る 必 要 が生 じ る 。例 え ば 、新 製 品登 場 に よ る 新 規 品 目 の場 合 、 新規品目を類似品目と統合(用途、単価の類似が前提)したり、調査開始による 新規品目(市場にはあったが未調査だったために、実績データがない)の場合、 業 界 ・調 査 対 象 事 業 所 か ら のデ ー タ 入 手 等 に よ る 推計 を し て い る 。 3 ウェイト (1)ウ ェ イ ト の 概 要 基準年の産業構造に対応したウェイト(万分比)としている。製造工業は、主 すうせい に 基 準 年 の 「 工 業 統 計 調 査 」 か ら 求 め て お り 、 他 に も「本 邦 鉱 業 の 趨勢 」、 「貿 易 統 計」な ど を 基礎 資 料 と し て いる 。た だ し 、工 業 統 計調 査 ( 1 事 業 所 は 最 も 多 い 業 種 で 区 分 ) と 鉱 工業 指 数 ( 1 事 業 所 は 複 数 の 業 種 で 区 分 ) と は 差 異が あ る た め 、 工業 統 計 表 の 組 み 替 え作 業 に よ る品 目 単 位 での調 整(業 種 間 調整 ・兼 業 分 調 整 )を行っ て い る 。これ - 103 - を使って、業種別ウェイトを採用品目の金額(付加価値額等)で比例配分し、採 用 品 目 毎 の ウ ェ イ ト を 算 出 し て い る 。 採 用 し な い 業 種 ・ 品 目 の ウェイトのふくらまし ( 調 整) も し て い る 。 ※付加価値額= 生産額 ―(原材料使用額等+内国消費税+減価償却費) 生産額=製造品出荷額等+製造品年末在庫額増減+半製品・仕掛品額増減 =製造品出荷額等+(製造品年末在庫額―製造品年初在庫額) +(半製品・仕掛品年末額―半製品・仕掛品年初額) 鉱 工 業 指 数 を 上 記 の よ う に 加 重 指 数 (ウェイトを付 ける指 数 )と し て い る の は 、 鉱 工 業 製 品 に は 多 様 な も の が あ る た め で あ る 。 例 え ば 、 付 加 価 値 額 が 100 円 (伸 び 10 倍)、1,000 円(伸 び 5 倍 )、10,000 円(伸 び 2 倍 )の 3 種 類 の製 品 が あ る 場合 、 ウ ェ イト 付 け が な い ( 全 て 同等 と 算 定 す る ) 単 純 指数 で は 、10、5、 2 の 平 均 5.7 と な るが 、 こ れ で は 付 加 価 値額 の 変 化 (1,000 円 、5,000 円 、20,000 円 ) を示 し ていなく、経済実態とそぐわない。このため、製品間で何らかのウェイト(重要 度)をつける必要がある。このウェイトは、相対的構成比が有意なためウェイト 合 計 を1 (万 分 比 、 千 分 比 等 は 指 数 に よ り 異 な る ) に す る よ う定 め る こ と が 多 く、ま た 、指 数の目的に応じて様々なものが選ばれるが、鉱工業指数では付加価値額構成比等 を 用 いて い る 。 (2)ウ ェ イ ト 算 定 方 法 基 礎 資 料 と し て 、 業 種 別 ウ ェ イ ト で は 「工 業 統 計 表 」( 産 業 編 、 品 目 編 )、「本 邦 鉱 業 の趨 勢 」、生 産 動 態 統 計 調査 ( 以 下 、 「生 動 調 査 」と い う 。) を 、品 目 別 ウ ェ イ ト で は 生 動 調査 を 用 い て い る 。 工業統計調査は事業所単位で集計しているため、事業所が複数産業にまたがっ て多種類の品目を生産している場合、最も出荷額の占める割合が高い品目が属す る産業に全実績が計上される。しかし、鉱工業指数(生動調査)は、生産活動の 内容に着目した品目単位の調査であり、品目毎にその実績を計上するため、工業 統 計 表 の 品 目 編 を 用 い た 品 目 単 位 での調 整 (業 種 間 調 整 ・兼 業 分 調 整 )が 必 要 と な る。 すべての鉱工業業種・製品を生動調査のデータで得られるとは限らず、また、 景 気 動向 を あ ま り 反 映 し な い業 種 も あ る こ と か ら、生 動 調 査の非 採 用 業 種 ・品 目 に つ い て 、同 一 業 種 (業 種 分 類 )、同 一 財 (財 用途別 )でウェイトのふくらましを 行 って い る 。 このふくらましとは、生動調査で捉えられない分のウェイト基準額(B)を指数 採用分(A)に比率を加えてその動きを全体で代表させることであり、ふくらま し 率( ふく ら ま し の 際 に 用 いる 調 整 用 の 比 率 )= 全 体( a )÷採用 対 象 全体( A ) で 表 現で き る 。 - 104 - │← ― ― A ( 採 用業 種 ・ 品 目 ) ― A1 A2 A3 a1 ― ※ ― → │ B (非 採 用) │ A4 a2 │← ― B a3 a ( ふ くら ま し 後 ) a4 ― ― →│ ふくらまし後は、Aの大きさがaの大きさとなり、その分、正比例してふくらんでいる。 こ の ふ く ら ま し に は 、 ① 業 種 のふくらまし( 非 採 用 業 種 分 を 採 用 業 種 に 加 算 し ウ ェ イ ト を 膨 ら ま す ) と 、 ② 個 別 品 目 のふくらまし( 非 採 用 品 目 の 動 き を 似 通 っ た 採 用品目の動きで代表させるため、非採用分の付加価値額を似通った採用品目に加 算しウェイトを膨らます)とがある。業種のふくらましで業種ごとのウェイト枠 が固まった後、各業種内での採用・非採用品目に応じて個別品目のふくらましを 行 っ てい る 。 以 上の 過 程 を 経 て 推 計 さ れた 製 造 業 の 付 加 価 値 額に 、 鉱 業 の 付 加 価 値 額推 計 を 追 加 し、 ウ ェ イ ト 基 準 額 ・ ウェ イ ト ( 1 万 分 の 構 成比 ) を 計 算 し て い る 。付 加 価 値 額 ウェ イ ト の ほ か 、 生 産 額ウ ェ イ ト 、 出 荷 額 ウ ェイ ト 、 在 庫 額 ウ ェ イ ト、 個 別 ウ ェ イト ( 指 数 採 用 品 目 が 確定 後 、 採 用 品 目 毎 に 各種 ウ ェ イ ト 基 準 額 を 算出 ) な ど が ある 。 こ の様 に 作 成 さ れ た ウ ェ イト は 、 地 域 の 産 業 構 造を 反 映 し て い る 。 (3)ウ ェ イ ト が あ る 指数 の 計 算 例 ( 算 式 は ラス パ イ レ ス 式 ) I t = ΣP io Q it ΣP io Q io It P io Q io Q it W io =Σ P io Q io ΣP io Q io × Q it Q io =Σ W io × ΣW io Q it Q io : t時点の総合指数 : 品 目 別 平 成 17 年 平 均 単 価 ( 生 産 指 数 は 品 目 別 平 成 17 年 平 均 付 加 価 値 単 価 ) : 品 目 別 平 成 17 年 1 か 月 平 均 数 量 ( 基 準 数 量 ) :品目別比較時数量 : 品 目 別 平 成 17 年 ウ ェ イ ト こ の 様 に ラ ス パ イ レ ス 算 式 は 、 基 準 時 点(o)に 比 較 時 点(t)を 合 せ る も の で 、 分 子 は 比較 時 点 (t)、分 母 は 基 準時 点 (o)と な る 。ま た 、総合 指 数( 個 別 指 数 の統 合 ) は 、①総 和 法( デ ー タ を 集 計し 算 出 )、②加 重 平 均 法( 個別 指 数 を ウ ェ イ トに よ り 総 合 し算 出 ) の い ず れ か で 算出 で き る が 、 加 重 平 均法 が 簡 便 で あ る 。 数 量指 数 ( 数 量 で 比 較 ) の総 和 法 、 加 重 平 均 法 の算 式 は 次 の と お り 。 ① 総 和 法 ⇒ I t = Σ PoQ t /Σ P oQo = 基 準時 価 格×比 較 時 数 量 の計 ÷基 準 時 額 (価 格 ×数 量 ) の計 ② 加重 平 均 法 ⇒ I t = Σ(Qt/Qo)W o/ Σ Wo = ( 比較 時 数 量 変 化×そ の ウェ イ ト ) の 計÷ウ ェ イト の 計 Po:基 準 時 価 格 、 Qo:基準 時 数 量 、 Wo:基 準 時ウ ェ イ ト 、 Qt:比 較 時数 量 ( P t:比 較 時 価 格 、 Wt:比 較 時 ウ ェ イ ト が なく て も 算 出 で き る ) こ の具 体 例 と し て 、 ウ ェ イト が ア ル ミ 0.25、 医 薬品 0.75 の 時 の 個 別 指数 、 総 合 指 数の 計 算 は 次 の と お り とな る 。 ・ 個 別指 数 ( 比 較 時 数 量 ÷基 準 時 数 量 ×100) - 105 - アル ミ = 676 (比 較 時 数 量 ) ÷650 (基 準 時 数 量 ) ×100= 104.0 医薬 品 = 203 (比 較 時 数 量 ) ÷175 (基 準 時 数 量 ) ×100= 116.0 ・ 総合 指 数 ( 総 和 法 も 加 重 平 均 法 も 結 果 は 同 じ ) 総 和 法 = {676 (ア ル ミ 比 較 時 数 量 ) ×72 (ア ル ミ 基 準 時 価 格 ) + 203 (医 薬 品 比 較 時 数 量 ) ×800 (医 薬 品 基 準 時 価 格 ) }÷186,800 (ア ル ミ・医 薬 品 の 基 準 時 額 計 ) =113.0 加重 平 均 法 =104.0 (ア ル ミ 個 別 指 数 ) ×0.25 (ア ル ミ ウ ェ イ ト ) +116.0 (医 薬 品 個 別 指 数 ) ×0.75 (医 薬 品 ウ ェ イ ト ) = 113.0 4 基 準 時 ( 算 式 ・ 季節 調 整 法 ) 等 (1)算 式 ( い つ と 比 較す る の か ) こ の鉱 工 業 指 数 の 計 算 方 法で あ る 基 準 時 固 定 加 重平 均 法(ラスパイレス算 式 )は、 基 準 時 価 格 、基 準 時 数量 、比 較 時 数 量 で計 算 可 能 で、比 較 時 数 量 の調 査 のみでで き る こ とか ら 、迅 速 性 、経 済 性 に優れている。他方、パーシェ算 式では比較 時 数 量 に加 え比 較 時 価 格 も必 要 で あ り 、 多 数 の 鉱 工 業 製 品 の 比 較 時 価 格 を 短 期 間 に 調 査 す る こ と は困 難 な こ と か ら 用 い られ て い な い ( 比 較 時 価 格 を 得 る た め に 調 査 期 間 を 数 か 月 以 上 と す れ ば 鉱 工 業 指 数 の 速 報 性 が 失 わ れ る )。 しかし、ラスパイレス算式は、品質向上から比較時実質額が増えても比較時数 量が同じであれば指数には反映されないという面がある(変化が小さい期間・比 較 的 短 期 間 に お い て 有 効 )。 ま た 、 現 実 の 業 種 ウ ェ イ ト や 代 表 的 な 品 目 が 変 化 し、 基準年時から離れるほど現実の産業構造と乖離していくことから、西暦年末尾が 0 又 は 5 の年の実 績 数値 に基 づき基 準 改 定を行っている。 (2)季 節 調 整 法 経 済事 象 は 、1 年 に満 たない時 間 単 位 での 時 系 列に お い て周 期 的 な変 動 形 態 を繰 り返 すこ と ( 季 節 変 動 ) が 多 い た め 、 季 節 調 整 ( 季 節 変 動 を 取 り 除 く こ と ) を 行 っ て 経 済 動 向 を判 断 する 必 要 が あ る 。 特 に 鉱 工 業 指 数 で は 季 節 要 素 の変 動 が 大 き い た め 、前 月( 前 期 )と 比 較 し動 態 を 把 握 す る に は 、季節 調 整 が 不 可 欠 と 言え る 。 季 節 調整 の 方 法 と し て 、月 別 平 均 法 、12 か 月 移 動 平均 法 、連 環 比 率 法 が ある 。ま た、この季節変動の要因は、自然的要因(天候、気温等)と社会的要因(曜日、 決 算 期 、ボ ー ナ ス 月 、年 末 年 始 、季 節 要 因 に 基 づ く 生産 )と の 2 つ に 大 別 でき る 。 こ の 季節 調 整 済 指 数 の 算 式 は、 次 の と お り で あ る 。 季 節 調 整 済 指 数 = 原 指 数÷季 節指 数 ( 曜 日 ・ 祝 祭 日 指 数 を 含 む こ と も あ る ) ・ 季 節調 整 済 指 数 ( 季 節 変 動調 整 後 の 指 数 ) ・ 原 指数 ( 調 整 前 の 指 数 ) ・ 季 節指 数 ( 年 間 の 季 節 パ ター ン を 表 現 す る 指 数 ) 時系列データは、季節変動要素も含めて次の4つの要素を持ち、これらの組み 合 わ せが 原 系 列 の 変 動 を 決 める 。 4 変 動 要 素 の 乗 法モ デ ル ⇒O (原 系列 )= T ×C×S×I - 106 - ※ 季節 調 整 方 法 は 、 原 系 列を 季 節 指 数 で 除 す ( 割り 算 ) ・ 傾 向 変動 要 素 ( 長 期 に わ た る 上 昇 又 は 低 下 を 続 け る 趨 勢 的 な 変 動 ): T (Trend element) ・ 循 環 変動 要 素 ( 数 十 年 や 、 数 年 の 周 期 に よ る 波 の よ う な 変 動 ): C (Cyclic element) ・ 季 節 変 動 要 素 ( 1 年 を 周 期 と す る 定 期 的 な 変 動 ): S ( Seasonal element) ・ 不 規 則変 動 要 素( 突 発 的 、擾 乱 要 因 な ど に よ る 規 則 的 で な い 変 動 ) :I( Irregular element) こ のモ デ ル で 「12 か 月 移 動平 均 」 に よ る 季 節 調 整は 次 の と お り と な る 。 O(原 系 列)= T×C ×S×I < 12 か 月 移 動 平 均 > O÷( T×C ) < 季 節 ・ 不 規 則 要 素 の 抽 出 > ⇒ ⇒ T×C( 傾向・循 環 要素 ) S ×I ( 季 節 ・ 不 規 則 要 素) S×I <月別に移動平均> ⇒ S(季節要素) O÷S <季節調整済系列> ⇒ T×C×I ( 季節 調 整 済 系 列 ) (3)米 国 セ ン サ ス 局 法( X -12-ARIMA 等 ) 経 済産 業 省 で は 、1995 年を 基 準 と す る 鉱工 業 指 数か ら セ ン サ ス 局 法 を 用い て い る が、こ れ は 最 初 1954 年 に 開発 さ れ た も の で 、1961 年に X -10、1965 年 に X-11、 1996 年 に X-12-ARIMA、1998 年 に X-12-ARIMA(最 終 版)と 、X 文 字(experimental) と 一 連 の 追 番 号 を 付 け た 改 良 版 が 発 表 さ れ て い る 。 A R I M A と は 、 Auto Regressive Integrated Moving Average( 自 己 回 帰 和分 移 動 平 均)の こ と であ り 、 安 定 的に 季 節 変 動 要 素 を 抽 出す る こ と が で き る 。 現 在 、 経 済 産 業 省 鉱 工 業 指 数 は 、 X -12-ARIMA を 用 い 、 生 産 ・ 出 荷 指 数 に は 季 節要素に加え、曜日・祝祭日・うるう年の調整を行い、在庫・在庫率指数には季 節 要 素の み 調 整 を 行 っ て い る。 本 県も 経 済 産 業 省 と 同 様 の季 節 調 整 法 を 用 い て いる 。 (4)年 間 補 正 ・ 接 続 指数 月次分指数計算後に事業所から修正データが寄せられることがあり、これによ り時系列データに断層(誤と正)が生じることから、この時系列の歪みをなくす た め に リンク係 数 ( 断 層 の大 きさを示 す係 数 ≒ 誤 っ た デ ー タ に 対 す る 正 し い デ ー タ の 割 合 ) を 乗 じ て個別原指数の断層をなくすことができる。これにより数量水準はリンク係数を 乗 じ た 分 歪 ん で し ま う が 、 指 数 の 前 月 比 で は 整 合 性 が と れ る (動 態 調 査 と し て 前 月 比 を 重 視 す る た め の 措 置 )。 このようなことがあることから、翌年に、前年の数値について月別・品目別の 実 績 値を 確 認 し 、 修 正 が あ れば 1 月 まで 遡 及 し て デー タ 修 正 す る こ と が ある 。 こ の修正後の実績値を基に年次を通して、原指数、季節指数及び季節調整済指数を 再計算している(この一連作業が年間補正であり、補正前後で原指数、季節指数、季節調整済指数 が変わる。このことから「年間補正済」と表示し、この表示がある「富山県鉱工業生産の動き」の指数 値は前月公表分と差異が生じるが、年を通しての遡及計算をしており、1 年次の動態をより正確に把握 し て い る と 言 え る )。こ の 年 間 補正 に よ り、当 年 次 の 1 月 か ら 12 月 ま で が 正 しい デ ー タとなり、リンク係数が外れる(年途中の断層無し)こととなる。ただし、当年 - 107 - 1 月と 前 年 12 月 に 断 層 が あ れば 、リ ン ク 係 数 は 外 れな い 。ま た 、季 節 調 整法 で 用 い て いる 季 節 指 数 は 、 年 1 回 、 1 年 分の 数 値 が 確 定し た 時 点 で 更 新 す る シス テ ム となっており、翌年分の季節指数は、この更新された前年の季節指数を暫定季節 指数として用いるシステムとなっている(年間の季節変動パターンはその年間ごとに様々な パターンを示し、前年と同じ変動、つまり同じ季節指数となることはまれで、直近数値に基づいた季節 指数による季節調整が望ましいと考えられることから、季節指数を更新するために実績値の修正がなく て も 年 間 補 正 を 行 っ て い る )。 なお、リンク係数(断層の大きさを示す係数≒新基準と旧基準の差異)は、接続指数を算 出 す る際 に 用 い る こ と も あ る 。指 数 基 準 を 変 更 (こ れ に よ り 連 続 性 が 断 絶 ) し た とき に 指 数の系列の連続性を保つため、過去の旧基準指数にリンク係数を乗じて、現在の 新基準指数に相当する接続指数を作成して新旧指数を接続している(新基準接続 指 数 =旧 基 準 指 数×リ ン ク 係数 )。この リ ン ク 係 数 は、あ る 期 間 の 価 格 構 成や 品 目 構成、産業構造等が、比較時(旧基準)と新基準時とが同じと仮定した上で算出 している。5 年毎に基準を見直していることから、接続指数作成のためその都度 リ ン ク係 数 を 作 成 し て い る 。 5 鉱工業指数の見方 - 108 - (1)主 な 見 方 ①業種・財・指数別 電力・ガス事業は季節変動の波が大きく、鉱工業総合が民間の経済活動をよく 反 映 して い る た め 、鉱 工 業 総 合 生 産 指 数( = 産 業 総合 生 産 指 数 ― 電 力・ガ ス 事業 ) を よ く用 い る ( 地 域 の 景 気 動 向 判 断 に 資 す る こ と を 目 的 と す る 調 査 の た め )。 財 用途 別 動 向 で 、 生 産 活 動の 需 要 要 因 を 見 る こ とが で き る 。 また、生産指数(付加価値ウェイト)は主に景気分析に、生産指数(生産額ウ ェ イ ト) は 主 に 産 業 連 関 分 析に 、 出 荷 指 数 は 主 に 需要 動 向 の 観 測 に 用 い られ る 。 ② 前 年 同 月 ( 同 期 ) 比 ( 前 年に 対 す る 当 年 の 変 動 幅の 比 率 ) 季節的に同条件のため季節変動が除去されているとみなして景気動向をみるも ので、簡易な方法である。ただし、当年の伸びが一定であっても、前年の変動に よ っ て前 月 同 月 比 の 推 移 が 異な る こ と が あ る こ と に注 意 が 必 要 で あ る 。 例 え ば、前 年 4 月 100、10 月 100 で、今 年 4 月 110、10 月 130 だと 、10% 、30% と な るが 、前 年 4 月 80、10 月 100 で 、今 年 4 月 110、10 月 130 だと 、37.5%、30% に な る。 ③寄与度と寄与率 寄与度は、総合指数の増減分に対して、内訳の増減分がどの程度あるかを表示 するものであり、総合指数の伸び率の符号を意識せずに上昇に貢献したか、低下 に 貢 献し た か を 判 断 で き る のが 特 徴 で あ る 。 ま た 、寄 与 率 は 増 減 分 を 100 と して 、 内 訳 が ど の 程度 影 響 を 与 え た か 構 成比 で 表示するものであり、時系列比較が出来るのが特徴である。従って、分析の際に は 両 者を 使 い 分 け る 必 要 が ある 。 (2)見 方 の 注 意 点 ①生産・出荷指数 基準時の価格を基礎にするため、比較時に価格低下が進み、基準時の価格が高 く な って い る 品 目 ほ ど 、 指 数が 高 め に な る ( ラ ス パ イ レ ス ・ バ イ ア ス )。 出荷は、同一企業内の本社・支社間取引をも含んでいるため、出荷は販売と同 じとは限らない。これは、出荷は品目の場所的移動を表しており、代金の受け払 いで限定されていないためである(工業統計調査と同じで、出荷額の増減は、販 売 額 の増 減 を 意 味 し な い)。 ②在庫指数 在庫は、在庫残高(ストック概念)で、この増減は生産を必ずしも同じ方向に 変動させなく、在庫指数は、この在庫残高の増減を表している。在庫投資は、在 庫の増減(フロー概念)で、需要要因で生産を直接増減させるものである。この こ と から 、 在 庫 の 増 減 と 在 庫投 資 の 増 減 は 、 必 ず しも 一 致 し な い 。 - 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