日本語Pdfファイル - 石油エネルギー技術センター

00 調査 4-3
高品質(
高品質 ( 低硫黄)
低硫黄 ) ディーゼル燃料製造技術及び生産方法に関する調査
(財)石油産業活性化センター 技術企画部 水谷 喜弘
(株)ジャパンエナジー・リサーチ・センター 久光 俊昭
1.調査の背景と目的
大気環境保全・環境規制対応の観点から、欧米をはじめわが国でも、軽油等自動車燃料
の品質規制が強化されてきている。
欧州で は 1994 年か ら軽油中 の硫 黄分を欧州統一軽油規格として 0.2wt%以下、 さら に
1996 年から 0.05wt%以下に低減している。また、2000 年から硫黄分を 350wtppm 以下、2005
年から 50wtppm の厳しい規制値が導入される予定である。硫黄分以外でも多環芳香族、セ
タン価、蒸留性状等の品質規制が行なわれる方向にある。
米国では 1993 年から硫黄分 500wtppm、セタン指数 40 以上もしくは芳香族分 35vol%以下
に規制 され てい る。 また 、大 気汚 染問 題が 深刻な カ リ フ ォ ル ニ ア で は 、 軽 油 中の 硫黄 分
500wtppm、芳香族分 10vol%以下が義務付けられている。さらに 2000 年 5 月には、EPA が軽
油中の硫黄分 15ppm の案を提示して、議論の対象になっている。
日本でも 1997 年から軽油の硫黄分 500ppm 規制が行なわれている。さらに 2004 年中に
JIS が改定され、2005 年 1 月から硫黄分 50ppm に品質規制が強化される予定である。
今後、自動車の排気ガス等による大気環境汚染対策として、ディーゼル燃料について、
さらに低硫黄化や低芳香族化による高品質化が求められると考えられる。将来的には、硫
黄分規制が 50ppm を大幅に下回ることも想定しておく必要がある。
そこで、国内外の深度脱硫技術の現状及び高品質軽油の製造技術等の現状を調査し、高
品質ディーゼル燃料製造技術の将来像と製造技術開発の課題を提案する。
2.調査の内容・結果
2.調査の内容 ・結果
2.1 ディーゼル燃料の硫黄分規制動向
日米欧のディーゼル燃料の硫黄分についての規制は次のとおりで、これらの次期規制値
のうち、欧州は 1998 年に決定しているが、日米は 2000 年に政府案が提案されたところで
ある。
日本(政府案)
米国(政府案)
欧州
現行
500ppm
500ppm
350ppm
次期
50ppm
15ppm
50ppm
発効
2005 年
2006 年
2005 年
2.2 国内の深度脱硫技術の現状と超深度脱硫
国内の軽油の深度脱硫プロセスは、一段式の固定床反応塔で、水素化脱硫反応を行わせ
る一段式が一般的であるが、一段目の反応塔において高温で深度脱硫工程を行なわせ、続
いて二段目の反応塔で、低温で製品軽油の色相を改善する、二段式深度脱硫法も採用され
ている。
原料油としては、中東系原油の直留軽油が多く、接触分解軽油(LCO)も 20%程度まで混合
使用されている。原料油の硫黄分は 1.0∼1.5wt%程度で、蒸留性状の T90(90%留出温度)
は 350∼360℃程度である。各種軽油原料油の性状を表 2.2.1 に示す。
表 2.2.1 各種軽油原料油の性状
試料油
硫黄分 (wt%)
窒素分 (wtppm)
芳香族分 (vol%)
90%留出点 (℃)
セタン指数
ASTM 色
直留軽油
1.22
130
36
348.5
58.0
L0.5
RFCC 軽油
0.09
290
55
328.0
37.0
L1.5
熱分解軽油
1.38
310
44
365.5
53.0
L5.5
原油種の違いや原料基油のカット温度によって、脱硫反応性等に影響がでてくる。日本
の軽油の原料油は、主に中東系の直留軽油及び中東系の直留軽油と LCO の混合油であり、
欧米の原料油に比べて、90%留出温度が高く、硫黄濃度が高い傾向にある。北海原油等から
の低硫黄原料に比べ、中東系の高硫黄原料では、同じ蒸留温度範囲の留分でも、硫黄分、
全芳香族量や多環芳香族量に差がある。中東系の原料油は難処理性であり、北海原油系原
料油処理に比べ、反応器容量を 2 倍以上にする必要がある。(表 2.2.2)
表 2.2.2 原油種の違いと反応器容量
原油種
硫黄分 (wt%)
相対反応器容量
水素分圧:30kg/cm 2
製品硫黄
製品硫黄
50ppm
30ppm
北海直留軽油
0.2
1.0
1.25
製品硫黄
30ppm
中東直留軽油/20%LCO
1.5
3.4
原料油の留出温度(T90)の違いにより、反応性が大きく異なってくる。図 2.2.1 は原料
油として、SR-LGO(T90:359℃、硫黄分:1.17wt%)、335℃カット留分(T90:316℃、硫黄
分:1.01wt%)及び 305 カット留分(T90:287℃、硫黄分:0.81wt%)を処理した場合の比
較例である。SR-LGO の硫黄分が 350 程度に低減できる条件(LHSV:2、水素分圧:5MPa)で、
335℃カット留分では硫黄分を 100ppm 以下まで低減できる。
図 2.2.1 原料油カット温度と脱硫反応性
また、冬場に処理される軽質直留軽油及び、夏場に処理される重質直留軽油の処理を比
較すると、硫黄分を 50ppm まで低減するためには、反応器の相対容量は、深度脱硫におけ
る反応器容量基準で、軽質直留軽油の場合 1.3 倍、重質直留軽油の場合 2.9 倍になると試
算されている。(表 2.2.3)
表 2.2.3 原料油の T95 と反応器容量の関係
原料油
95%留出点 ℃
硫黄分 wt%
脱硫ケース
相対反応器容量
水素分圧:50kg/cm 2
重質直留軽油
軽質直留軽油
360
340
1.5
1.0
深脱
超深度脱硫(S:50ppm)
1.0
2.9
1.3
2.3 超 ・超深度脱硫への技術的対応
日本における硫黄分 50ppm 以下までの軽油の超深度脱硫は、今後の脱硫触媒の性能向上
を前提として、現状の水素化脱硫技術の延長線上で対応可能と見込まれている。1997 年以
降の硫黄分 500ppm 規制に対して、既存設備の改造で対応した製油所は、反応塔などの増設
を計画している。深度脱硫装置を新設した製油所では、大きな改造はせず、触媒の開発等
ですむ場合もあると見られる。
今後の超・超深度脱硫への技術的対応として、①反応条件の過酷化、②反応流体均一分
散、③触媒性能改良、④新規プロセス開発があげられる。
2.3.1 反応条件の過酷化
反応条件の過酷化による対応では、①原料油/触媒比の低減(処理量減、触媒充填量増、
反応塔増設)、②水素分圧の増加(反応圧力増、水素/油比増、水素純度増、気液向流接触)、
③反応温度の上昇(二段反応)等がある。
(1)油/触媒比の低減
反応塔の増設について、硫黄分 1.5wt%の中東原油の直留軽油と LCO 混合油を処理して、
硫黄分 50ppm、30ppm 及び 10ppm の軽油を製造する場合、反応塔の相対容量は、硫黄分 500ppm
の製品を得る場合の反応塔容量基準で、それぞれ 1.9 倍、2.3 倍、3.4 倍になると試算され
ている。(表 2.3.1)
表 2.3.1 製品硫黄分と相対反応器容量
製品硫黄分 (ppm)
触 媒
相対反応器容量
500
50
1.0
1.9
30
10
2.3
3.4
Co-Mo
原料油:原料油硫黄分:1.5wt%、反応圧力:32kg/cm 2
(2)水素分圧の上昇
米国の NPC は、現状の硫黄分 500ppm 製造の脱硫設備を改造し、硫黄分 30ppm 及び 10ppm
のディーゼル燃料を製造する場合の改造項目、運転条件の変更について、UOP、IFP、Akzo、
Criterion 及び Topsoe の 5 社からの回答を公開している。
原料油は硫黄分 0.9wt%、比重 0.861、T90 が 321℃で、日本の原料油の硫黄分に比べて
低く、蒸留性状(T90)も低いケースでの見積である。
硫黄分 30ppm の製造については、アミンスクラバーの設置、水素純度及び循環水素比を
高めることなどにより、反応器容量を 1.5 倍程度の増大で対応できる。硫黄分 10ppm の製
造については、IFP 社は、現状の装置の圧力では 10ppm 達成不可能であり、新たに設備を
建設する必要があるとし、また、Criterion 社は、難しいと考えられ新しい設備を推奨し
ている。(表 2.3.2、表 2.3.3)
表 2.3.2 各社の超深度脱硫対応(製品硫黄 500ppm→30ppm)
LHSV
アミンスクラバーの設置
循環水素の純度(mol%)
循環水素比(scf/bbl)
触媒充填法
水素分圧:46kg/cm 2
現状
2
×
75
1,000
Sock
UOP
1.5
○
90
1,900
Dense
IFP
1.45
○
91.3
3,649
Sock
Akzo
1.08
○
75
1,000
Sock
Criterion
0.5
○
75
1,600
Sock
Topsoe
1
○
75
1,160
Sock
表 2.3.3 各社の超深度脱硫対応(製品硫黄 30ppm→10ppm)
LHSV
循環水素比
水素分圧(kg/cm 2 )
UOP
1.5
↓
0.9
1,900
↓
2,000
46
IFP
1.45
↓
1
3,694
↓
?
58
Akzo
1.08
↓
0.45
1,000
46
Criterion
0.5
↓
0.4
1,600
↓
1,850
46
Topsoe
1
↓
0.7
1,160
46
2.3.2 反応流体均一分散
反応塔内に充填した触媒全体を効率良く働かせるためには、反応流体である原料油と水
素を触媒層全体にまんべんなく均等に分散させなければならない。触媒層内において反応
流体の偏流が一旦発生すると、正常な状態に復帰させることは困難であり、触媒性能を十
分に発揮させられないのみでなく、反応温度分布の不均一による異常な高温部分(ホット
スポット)の発生や差圧の上昇等により、操業の停止につながることもある。このような
偏流を避けるため、反応塔インターナルや触媒充填方法について改良がなされている。
(1)ディストリビューショントレイ
高性能のリキッドディストリビューショントレイを設計する上で、考慮すべき要素とし
て、以下の要求項目が挙げられている。
・ディストリビューターノズル間隔が狭い
・圧力損失が小さい
・トレイの傾きによる偏流が起きにくい
・液流量の高いターンダウン比で運転可能
・広範囲なガス/液流量比で運転可能
・ガス-液の混合性能が良い
・スケールなどによる詰まりが起きにくい
トプソー社は、均一分散のためのトレイとして、デンスパターンフレキシブルを開発し
ている。トプソー社の TK 554 触媒を用いた例では、装置の見かけの相対脱硫活性が、シン
プルチムニーと比較して 2.5 倍に向上し、平均反応温度が 25℃低下する結果が得られてい
る。(表 2.3.4)
表 2.3.4 ディストリビューショントレイの効果
平均反応温度(℃)
原料油硫黄分 (wt%)
製品硫黄分
(wt%)
相対脱硫活性
シンプルチムニー
346
0.7
0.05
1.0
デンスパターンフレキシブル
321
0.9
0.035
2.5
(2)触媒充填システム
触媒充填の際に、充填面に傾斜があると、触媒粒子がその傾斜方向に沿って傾いたまま
の状態で充填される。そのような状態で充填した部分が触媒層内に存在すると、後で上部の
充填面のみ水平に均しても、その部分において充填面の傾斜方向へ油の偏流が発生しやす
いことが知られている。
従来は、このような充填面の傾斜の発生を避けるために、充填途中で充填を中断して充
填面の水平度を測定し、必要に応じて充填面の均し作業を行なっていたが、充填面を常に平
坦に保つとの観点からは限界があった上、頻繁な中断は充填作業の効率化の妨げともなっ
ていた。このような問題を解決する目的で、充填中の触媒面の平坦度をリアルタイムで測
定するためのモニターと、充填面の傾きを常時制御しながら充填することが可能な触媒充
填装置が最近開発された。
2.3.3 触媒性能改良
(1)卑金属触媒の性能改良
モリブデン系触媒においては、脱硫性能の向上は当然のことながら、硫黄分以外で製品
軽油に要求される種々の性状の改善や収率向上を意図して、脱窒素、芳香族水素化、分解、
異性化等の性能間のバランスを考慮しながら、担体の細孔構造や酸性度、および、助触媒
も含めた金属の担持量や担持方法等が検討されている。
(2)貴金属触媒の性能改良
白金および白金−パラジウム系を中心とする貴金属触媒は、硫黄や窒素の少ない後段で
使用されるが、単環芳香族炭化水素の水素化性能に優れており、今後ますます重要になる
と考えられる。改良の中心は、水素化活性と硫黄・窒素への耐被毒度性の間の調整をとり
ながら両性能の向上をはかった上で、さらに、使用目的に応じた適切な分解活性を付与す
ことにあり、無定形のアルミナやシリカ・アルミナから結晶性のシリカ・アルミナ等を主
とする無機(複合)酸化物担体、および、貴金属の担持量や高分散担持方法等について工
夫がなされている。
(3)深度脱硫・脱芳香族触媒の開発状況
触媒メーカーでは、表 2.3.5 に示されるように、深度脱硫・脱芳香族用の Co-Mo 系、Ni-Mo
系、貴金属系触媒の開発・改良が進んでいる。深度脱硫設備が稼動した当時と比較して、
現在の開発・改良触媒の性能は、1.5 倍程度以上に向上していて、触媒のみの対応で硫黄
分 50ppm 以下の軽油の生産が、可能な製油所もあると見られる。
表 2.3.5 超深度脱硫・脱芳香族触媒開発状況
会社名
Akzo
Criterion
Co-Mo 系
KF-757
DC-160、DC-185、
DC-2000
Topsoe
TK-574
UOP
N-40、N-108、N-200
IFP
CCIC
OCC
HR-416
CDS-LX6
HOP-467
KF-848
Ni-Mo 系
貴金属系
KF-200
DN-200
TK-573、
TK-525、TK-555
HC-H, HC-K,
HC-P, HC-R, HC-T
HR-448
Hop-414
TK-907、
TK-908
AS-250
Pt 系
2.3.4 新規プロセス開発
水素化脱硫以外の新規プロセス開発として、酸化脱硫、バイオ脱硫、吸着分離等があげ
られる。
(1)酸化脱硫
酸化脱硫法は、米国 DOE の超クリーン燃料開発プロジェクトの一つとして、Petro Star
Inc.の CED(Coversion/Extraction Desulfurization)プロセスが選出されている。この方
法は軽油中の硫黄化合物を選択的に酸化した後、硫黄化合物を溶剤で抽出除去して脱硫軽
油を得る方法である。
水素化脱硫において反応性の低い難脱硫性硫黄化合物は、酸化脱硫においては反応性が
高く除去されやすい。酸化脱硫法では、硫黄分の高い原料油を処理すると、大量の硫黄化
合物が副生するため、その処理や利用が問題になるが、水素化脱硫と組み合わせて 2 段処
理すること等により、水素消費量と硫黄化合物排出量を抑えた超・超深度脱硫プロセスの
可能性が考えられる。
(2)バイオ脱硫
Enchira Biotechnology 社(旧 Energy Bio System 社)は、軽油のバイオ脱硫技術を Petro
Star 社の Valdez Alaska 製油所にライセンスした他、DOE の助成を受けて3年間で菌体開
発から 5,000BPD 規模のプラント設計までを行うことを発表している。
(3)吸着分離
吸着分離法による軽油の低硫黄化も、米国 DOE の超クリーン燃料開発プロジェクトの一
つとなっている。吸着分離プロセスは、Phillips 社のガソリンの硫黄吸着除去プロセス(S
Zorb)をディーゼル燃料に適用しようとするものである。ディーゼル燃料の硫黄分を、15ppm
以下に低減できることが、パイロットプラントで実証されている。
吸着分離脱硫法も酸化脱硫法と同様に、水素化脱硫法と組み合わせ、深度脱硫した低硫
黄の原料油を対象とするなどで、超・超深度脱硫プロセスの可能性が考えられる。
2.4 高品質軽油製造技術
スウェーデン等では、硫黄分が 10ppm 以下の超・超低硫黄規格の軽油が、シティー軽油
として市販されている。しかし、この軽油の蒸留性状の T95 規格は、285℃以下であり、日
本の灯油に近い留分である。
米国カリフォルニア州では、硫黄分規制は 500ppm であるが、全芳香族分が 10vol%以下、
T90 が 290∼320℃等に規制されている。
これらの硫黄分や芳香族分の厳しい規制に対応できる代表的な水素化精製技術として、
表 2.4.1 に示す高品質軽油製造技術がある。
表 2.4.1 代表的な高品質軽油製造技術
プロセス
SynSat
Ultra Deep HDS
MAK Fining
MQD Unionfining
Deep HDS, HDAr
ライセンサー
Criterion/ABB Lummus/Shell
Topsoe
Mobil/Akzo/Kellogg/Fina
UOP
IFP
(1)SynSat プロセス
SynSat プロセスでは、反応ゾーンを 2 段にするため、反応塔を 1 基(1 塔式)あるいは 2
基(2 塔式)が採用されている。SynSat プロセスの基本コンセプトは、1 段目は原料油と水
素が併流のダウンフローであるが、2 段目では併流タイプと油がダウンフロー、水素がア
ップフローの向流タイプとを状況に応じて使い分けることにより、最適な反応塔システム
が採用されている。
SynSat プロセス(SYN-テクノロジー)は、高品質軽油製造技術として、次の 4 つの水素化
処理技術が含まれる。
1)SynSat HDS
2)SynSat HDS/HDA
3)SynShift
4)SynFlow
:深度脱硫
:深度脱硫/脱芳香族
:セタン価向上/沸点範囲拡大
:低温流動性改善
SynSat プロ セス は、スウ ェーデン以 外に ドイ ツ、米国 でも商業化されてい る。SynSat
プロセスの商業化例を表 2.4.2 に示す。米国、Lyondell-Citgo 製油所では、第 1 段階で卑
金属系触媒による脱硫、第 2 段階で貴金属触媒による脱芳香族を行う設備改造をしている。
第 1 段階の脱硫運転では、硫黄分 1.38wt%の原料油の処理で、硫黄分 5ppm 以下の結果が
報告されている(但し、短期間でのテスト運転であり、寿命テストは行っていない)。
表 2.4.2 SynSat プロセスの商業化例
会 社
Scanraff
Preem
Lyondell-Citgo
原料油性状
製品性状
硫黄分 T95
密度 芳香族 硫黄分 密度 芳香族
BPSD (wt%) (℃) g/cm 3 (vol%) (ppm) g/cm 3 (vol%)
0.54
323 0.841 22.1
100 0.835 11.3
48,000
0.34
286 0.827 21.5
1 0.812
4.4
0.14
338 0.866
100 0.858
37,000
0.1
277 0.827 21.8
2 0.815
3
50,000 1.38
367 0.902 58.2
<5 0.861 34.8
処理量
反応
形式
Co/Cnt
Co/Cnt
Co/Co
(2)Topsoe Ultra Deep HDS プロセス
Topsoe 社の Ultra Deep HDS(UDHDS)プロセスは、低硫黄/低芳香族軽油製造のための 2
段プロセスで、次の主たる 4 工程からなっている。
1)前段反応塔
2)中間ストリッピング
3)後段反応塔
4)後段ストリッピング
:超深度脱硫(Ni-Mo 触媒)
:硫化水素除去
:脱芳香族(貴金属触媒)
:沸点調整
前段の脱硫反応塔では、一層または二層の触媒床で Ni-Mo 系触媒が使用され、後段の脱
芳香族反応塔では、貴金属系触媒が使用される。
米国、San Joaquin 製油所の商業運転事例によると、表 2.4.3 に示されるように、硫黄
分 0.65wt%の原料油の処理では、前段の硫黄分が 9ppm、後段の硫黄分が 1ppm と報告され
ている。原料油性状や運転条件は明らかでないが、貴金属系の TK-907 触媒は、低硫黄の分
解軽油からカリフォルニア規格対応軽油の製造で、実装置による 18 ヶ月以上の操業実績を
有している。
表 2.4.3 Topsoe UDHDS プロセス商業化例
(San Joaquin 製油所)
密度
硫黄
窒素
芳香族
反応温度
(g/ml)
(ppm)
(ppm)
(vol%)
(℃)
原料軽油
0.91
6,515
775
33
前段出口
0.88
9
3
24
367
後段出口
0.87
1
0
3.5
287
原料油 T95:370℃、水素分圧:71kg/cm 2
(3)MAK Fining プロセス
MAK Fining のプロセスは、ExxonMobile、Akzo Nobel、Kellogg 及び Total-Fina によっ
てライセンスされる水素化精製プロセスである。現状及び将来の軽油アップグレーディン
グの要求に対応できるように、精製目的に合うようにプロセスと触媒を組み合わせて設計
される。
1)UDHDS
2)HDS+HDHDC
3)HDS/HDAr
4)MIDW
CFI
:超深度脱硫(Co-Mo 触媒)
:重質留分分解(Ni-Mo 触媒)
:脱多環芳香族(貴金属触媒)
:パラフィン異性化脱蝋
:n-パラフィン選択的分解
OMV ドイツ社(Burghausen 製油所)では、MAK Fining の UDHDS と MIDW 触媒の組合せシス
テムを採用している。原料油の性状は明らかでないが、直留軽油から硫黄分 10ppm 以下、
曇点-11℃以下(18℃改善)の軽油を製造していたが、さらに下流にゼオライト担体系触媒を
充填した HDHDC 用反応塔を増設し、多環芳香族分、密度及び T95 を低減した高品質軽油を
製造するための改造が行われている(表 2.4.4)。
表 2.4.4 MAK Fining プロセス(HDS+HDHDC)
(Burghausen 製油所) 原料油
ケース 1
ケース 2
T95
(℃)
356
353
349
硫黄
(ppm)
16,600
25
3
全芳香族
(wt%)
39
22
19
多環芳香族
(wt%)
15
1.2
0.7
セタン価
51
57
58
原料油:中東系軽油
(4)MQD Unionfining プロセス
UOP 社の MQD Unionfining プロセスでは、卑金属触媒を使用した 1 段反応及び、さらに
中間ストリッパーを経て、貴金属触媒を充填した反応塔と組合わせた 2 段反応プロセスと
があり、水素化処理、水素化処理と接触脱蝋、水素化処理と芳香族水素化等と触媒の組合
せにより、高品質、低硫黄軽油が製造できるプロセスとなっている。
2 段反応プロセスでは、中間に高温・高圧ストリッパーを設置し、ヒートインテグレー
ションシステムを採用することにより、投資コストと用役コストを低減させているのが特
徴である。
1)1段反応
2)2段反応
:水素化処理(HC-P,R,H,K 触媒)(N-108,40,200 触媒)
:水素化処理+水素化分解(HC-24 触媒)
:水素化処理+接触脱蝋(HC-80 触媒)
:水素化処理+芳香族水素化(AS-250 触媒)
:水素化処理+異性化(DW10 プロセス)
OMV オーストリア社(Schwechat 製油所)の商業プラント(ユニクラッキング/DW プロセス)
の運転実績では、硫黄分 0.95wt%の VGO の処理で、脱蝋 VGO 収率約 75%、脱蝋 VGO の硫黄
分は 20ppm との結果が報告されている。
(5)IFP Prime-D30 プロセス
IFP 社の Prime-D30 プロセスは、超低硫黄、多環芳香族の低減、セタン価向上のための
軽油処理プロセスである。セタン指数の向上を目指して芳香族水素化を行なうには、2 段
階水素化処理が必要であり、分解軽油を 1 段目で Ni-Mo 触媒を用いて比較的高圧(6∼8 MPa)
で硫黄分を 50wppm 以下まで低下させ、反応生成物を分留後、硫黄分及び硫化水素をほとん
ど含まない軽油留分を、2 段目で芳香族水素化処理する。
2 段目で用いられる貴金属触媒は、非常に活性の高い水素化触媒で、原料油中に相当量
の硫黄が含まれていても耐性を持つとされる。硫黄分が 1.58wt%の LCO を 2 段処理した場
合、1 段目で硫黄分を 3ppm まで低減させた後、2 段目で処理することにより、芳香族分を
1.4%まで下げている例が報告されている。
表 2.4.5 IFP Prime-D30 プロセス反応例
原料軽油
1 段出口
2 段出口
T95
(℃)
319
288
283
硫黄
(ppm)
15,800
3
<0.5
窒素
(ppm)
1,100
1
<0.5
芳香族
(wt%)
66.4
34.2
1.4
セタン
指数
27.5
45
53.4
原料油:LCO
(6)軽油超深度脱硫装置建設費
軽油の超・超深度脱硫への対応では、既存設備の改造や新たに設備を建設する必要がで
てくる。軽油超 深度脱硫装置 建設費は、原 料油性 状等の 製油所状況に より、BPSD 当たり
1,100∼3,000$と大きな幅があるが、30,000∼40,000BPSD 規模の設備では、60∼150MM$の
建設費が必要になる。
表 2.4.6 超深度脱硫装置への改造費用
改造項目等
硫黄分(ppm)
投資額(MM$)
基 準
500
触媒変更(50%活性向上)
285
リサイクルガス・スクラバー
180
1.8
メークアップ水素純度向上
140
2.4
EOR 温度増+反応器
120
0.6
反応器
30
1.4
運転期間 2 年→1 年
20
-
表 2.4.7 軽油超深度脱硫装置建設費
プロセス名
SynSat(2 段)
IFP(2 段)
MAK Fining
MQD Unionfining
IFP HYC
処理量
(BPSD)
30,000
30,000
35,000
45,000
40,000
品質目標等
S:10ppm、Ar:5vol%
S:<5ppm、セタン価
S:<10ppm
S:10ppm、PAH:2vol%
S:<10ppm、Ar:<8vol%
設備費
($/BPSD)
3,330
2,070
1,100∼2,000
3,310
2,500∼3,000
3.まとめ
軽油の低硫黄化に関しては、特に欧州の一部で先行しているが、それらの地域では、北
海原油等から得られる比較的低硫黄分で脱硫も容易な軽質留分を主原料としており、供給
量もあまり多くない。したがって、主原料が硫黄分の多い中東原油であることに加えて、
重質留分まで含めて処理しなければならない我が国の状況との間には大きな隔たりがある。
本調査結果によると、このようにより困難な状況であっても、反応条件の過酷化、触媒
改良、装置改良、プロセス開発等の成果を組み合わせることにより、硫黄分 10ppm の超・
超深度脱硫軽油を国内で生産することについて、技術的な目処が立ってきたと考えられる。
しかし、装置の改造・新設の検討に際しては、現有設備の状況や将来の展開計画により
投資額に大きな差が生じる可能性が大きいので、入手可能な原料基油の種類や量、硫黄分
以外に、軽油に要求される種々の製品規格、操業コスト、需給見通しと整合性のとれた収
率の確保、需給環境の変化に対するフレキシビリティ等を慎重に考慮して選定しなければ
ならない。
また、他の油種の混入は微量であっても、製品軽油の硫黄分への影響は多大であるので、
脱硫装置の出口から、製油所内での貯蔵、配送、サービスステーションのポンプ出口まで
を通して、連携の良いコンタミ防止対策を取ることが重要である。
以上
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