「臨床検査技師のあり方;チーム医療への取り組み」 ― 坂西 清

日本臨床検査医学会共催シンポジウム
「臨床検査技師のあり方;チーム医療への取り組み」
○坂西 清
(一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 執行理事)
【はじめに】
ものがあり、これらの問い合わせ件数は多く重要な役割を
一般社団日本臨床衛生検査技師会の宮島会長が昨年の
担っている。また医師に対しても検査の意義や病態との整
会長選に掲げたマニフェストの一つであるチーム医療推
合性、結果の解釈などを相談された場合でも、診断、治療
進検討委員会が、前・国立病院機構本部臨床検査専門職
への適切な検査依頼、指示そして判断が出せるよう支援す
の奥田勲氏を委員長とし、昨年の8月より開催された。こ
ることが求められており、それらの役割を果たすことは、
れまで半年間の論議を経て、今年の2月9日に優先課題で
診療支援につながり、患者が適切な臨床検査により診断、
あった「検査説明・相談のできる検査技師の育成」につい
治療を経て早期回復へと向かう利益に繋がって行く。
て答申を提出した。昨年、委員会の結成時に宮島会長は
患者向けの検査説明では、「検査結果を渡されても,専
「検査説明・相談のできる検査技師の育成」と「チーム医
門用語ばかりで項目の意味が分からない。」「自分の検査
療における検査技師が担うべき役割」の2点について委員
結果は基準範囲内なのか?」など患者の臨床検査に関す
会に諮問し、このうち2012年度は「検査説明・相談の出
る疑問や質問の声を良く耳にする。この事は、我々の医療
来る検査技師の育成」についての検討を行ってきた。私も
の提供が患者目線でないことを意味し、患者への説明は、
この委員会に参加し、委員会の中では様々な観点からチー
患者からの目線で検査を見る目が必要でありコミュニケー
ム医療について論議されてきました。今回、私は、現在の
ション技術を含む検査説明の意義を研修することが必要で
チーム医療の中での臨床検査技師の現状及び、今後日臨
あることを物語っている。医療技術の進歩により専門的な
技が取り組むべき事などを、2月9日に出された答申書の内
技術・知識を必要とする項目が増え、これらの検査説明は
容を踏まえて報告する。
検査の専門家である臨床検査技師が対応し、多忙な医師業
【現在の主な臨床検査技師が係るチーム医療活動】
務を支援することは役割分担の推進に繋がるといえる。更
(チーム医療推進検討委員会答申書より抜粋)
に診療に役に立つ検査室の構築(システム)には、臨床の
・感染制御チーム(ICT)・栄養サポートチーム(NST)
目線から検査を見る目と患者目線での検査を見る目の両方
・糖尿病教室(チーム)・褥瘡対策チーム
が必要とされる。その様な意味でも臨床検査技師が検査説
・乳がんチーム・呼吸リハビリテーションチーム
明・相談を行うことは他職種との連携を深めて検査へのイ
・臨床研究支援(試験、治験)・輸血療法委員会
ンフォームドコンセントを充実させる事は極めて重要であ
・医療安全対策委員会・クリニカルパスおよび検査
りチーム医療の一端を担う臨床検査技師の役割でもある。
説明・相談など
【今後の取り組み】
臨床検査技師が積極的にチーム医療に参画することによる
臨床検査技師は各医療機関で様々なチーム医療に積極
メリットとしてICT やNST などの横断的診療支援や、糖尿
的に参画し貢献している一方、患者や医師、看護師など他
病教室、臨床研究支援、検査説明・相談など医師や看護師
の医療従事者から要望の多い「臨床検査技師による検査説
などの医療従事者や患者向けのさまざまな医療サービスが
明・相談」の実施状況は必ずしも十分とは言えない。平成
展開でき、医療の質は向上することが考えられる。そして
19 年12 月28 日付厚生労働省医政局長通知(医師及び医
臨床検査は医学全体をカバーすることから様々なチーム医
療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進につ
療に関与することが可能であり、臨床検査技師はチーム医
いて)において更なる取り組みが促されている。「検査説
療の実践において重要な役割が期待される。
明・相談のできる臨床検査技師の育成」は今後、日本臨床
このように、臨床検査技師がチーム医療で専門性を発揮す
衛生検査技師会が全国レベルで取り組むべき課題であり、
るには、検査値と病態、検査結果の解釈、意義などの知識
患者(国民)の利益を最優先に、国の行政機関の支援を受
やコミュニケーション技術を含む検査説明の知識・技術が
けての、全国レベルの研修制度を早期に立ち上げ取り組む
基本として求められる。
ことが必要不可欠である。
【検査説明・相談に取り組む意義】
検査説明・相談には、医療者側および患者向けの検査説
明の2 面がある。
医療者側からの検査相談は、コスト、検査の意義、結果の
解釈、検査項目の選択などその場で即答を求められるも
の、診断・治療に関わる専門的な幅広い知識を必要とする
連絡先:新潟県厚生連魚沼病院検査科
E-mail:[email protected]
発表者氏名(カナ)
:坂西 清(サカニシ キヨシ)