平成 20 年 12 月 23 日 東海大 バイオフォトニクス 千葉大院融合 椎名 9.医療光計測技術 ̶フローサイトメーター̶ ・コールター原理 コールター原理は、W.H.Coulter が発明した電気抵抗を利用した粒子測定原理で、粒子が細孔を通過 する際に生じる、2 電極間の電気抵抗の変化を測定する。この電気抵抗は、通過する粒子の体積に正確 に比例している。細孔を通して流れるサンプル懸濁液の量は精密に制御されていて、粒子の正確な体 積から粒径と濃度を極めて高精度で測定することができる。この技術に基づいた分析装置は、1953 年 に製品化された。当初は、用途が見つからず、やがて細胞や血液の算定分析を自動化する医学部や検 査室向けの用途が見つかり、爆発的に普及した。その後、改良が加えられ、電気パルスを解析して、 ヒストグラムにすることにより、精密な粒度分布が測定できるようになった。 コールター原理は、細孔電気抵抗法と呼ばれ、電解質溶液(電解質の溶けた水溶液または有機溶剤) 中の小さな径の細孔(アパチャー)に一定の電流を流し、その系の電気抵抗を計測する。電解質溶液 中に粒子を均一に懸濁させ、陰圧により細孔を粒子が細孔を通過するようにする。粒子が細孔を通過 すると、粒子体積分の電解質溶液が置き換えられたことになる。この置き換えられた電解液の体積に よって、細孔の電気抵抗(インピーダンス)が増加する。一定電流を供給することにより、インピー ダンスの変化は、電圧パルスの変化によって計測できる。この電圧パルス高を 1 個ずつ計測処理して、 粒子の体積分布ヒストグラムが得られる。 33 平成 20 年 12 月 23 日 東海大 バイオフォトニクス 千葉大院融合 椎名 ・フローサイトメトリー 顕微鏡に代わる細胞係数の自動化のため、1948年に世界初の自動細胞計数装置 コールターカウンタ ー(コールター原理)がWallace Coulterによって発明されて以来、細胞などの微小な粒状物質におけ る情報を、フローを用いて容易に得ることが可能になった。1960年代の後半には、レーザーと層流を 利用した装置として、フローサイトメーター(Flow Cytometer)が登場し、より多くの情報が得られ るようになった。その後、コンピュータなどのエレクトロニクス技術の進歩とともに、より高機能で 簡便な操作の製品が次々に誕生し、従来行われてきたアナログ処理をデジタル化した高精度な装置ま で登場した。 フローサイトメーターは細胞などの粒子1個ずつから、大きさと形態の情報、ならびに、 DNA/RNA 蛍光染色や、タンパクなどを蛍光抗体で染色した蛍光の情報を1秒間に数千個以上の速度で取得し、そ れらの相関を解析するヒストグラムとして作成し、さらに目的の2種類の細胞集団などを1秒間に5千個 以上の速度で分取することが可能な装置で、生命工学や臨床検査などの分野において、重要な役割を 果たす装置として、なくてはならないものとなっている。 フローサイトメトリーは、サンプル中に存在する細胞や細菌などの特性を、光や蛍光色素などを利 用して1個ずつ、迅速かつ高感度に測定する方法である。測定可能なサンプルは、1個づつの状態の細 胞や粒子などの浮遊液であることが必要となる。この条件を満たしていれば、通常のシステムの場合、 個々の大きさが 0.3—40µm位までの範囲であれば、様々なものが測定可能である。 血球細胞(白血球、赤血球、血小板など) 動物細胞(培養細胞、単離組織など) 植物細胞 微生物(細菌、原虫など) 海洋生物(プランクトンなど) 精子、酵母など ラテックスビーズ(マルチプレックスによるサイトカイン定量解析など) 34 平成 20 年 12 月 23 日 東海大 バイオフォトニクス 千葉大院融合 椎名 測定原理 細胞がレーザーを横切る度に散乱光や蛍光が生じ、検出器から電圧パルスが発生する。通常のシス テムには5個から11個の検出器がついており、この電圧パルスは検出器が受け取った光の強度に比例す る。電圧パルスは、ピークパルス、面積パルス、パルス幅に分類される。検出された電圧パルスを処 理し定量する方法は、パルスの高さ、幅、面積の3種類の方法がある。 パルスの高さ(PeakまたはHeight)は、細胞がレーザー光を通過する間で、最も強く光を発した際 の瞬間的な明るさに相当する。初期のフローサイトメーターは、この方法でしかパルスを処理できな かった。 パルスの幅(Time of FlightまたはWidth)は、細胞がレーザー光を通過するのにかかった時間に相 当するので、細胞の大きさ(長さ)を反映する。 パルスの面積(IntegralまたはArea)は、細胞がレーザー光を通過する間に発した光の合計量に相 当する。 フローサイトメーターで測定可能なパラメータは、次のようなパラメータである。これらのパラメ ータは解析と分取の両方で使用可能である。各パラメータには、リニアスケールとログスケールのパ ラメータがある。 前方散乱光(Forward Scatter、FS)=細胞の大きさの目安 側方散乱光(Side Scatter、SS)=細胞内部の複雑さ 蛍光(Fluorescence、FL) 細胞容積(Cell Volume CV)高分解能型セルアナライザーのみ可能 RATIO(比率)=2つのパラメータの比率 例:蛍光1/蛍光2、蛍光/細胞容積 TIME(時間)=測定時間(経時変化) 35 平成 20 年 12 月 23 日 東海大 バイオフォトニクス 千葉大院融合 椎名 Memo 36
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