7 - 素形材センター

鋳 造
伊藤鉄工所株式会社
薄肉軽量球状黒鉛鋳鉄製厨房器具の開発
軽量厨房器具の製品アイテムの拡大
をつけることとした。
1.開発の目的
柄は肉厚 2 ∼ 3 mm で幅が 20 mm 前後で容量が少
平成 17 年度から中小企業庁のプロジェクトである
なく、凝固が早くチルが出る。対策は、Si%の下限を
「JAPAN ブランド育成支援事業」として薄肉球状黒鉛
3 %とし、しかも接種を十分にすることとしたが、こ
鋳鉄鋳物で厨房器具を製造しようと取り組んでおり、
れだけでは解決できず、製造工程途中で柄が折れると
平成 18 年度は鋳造方案、平成 19 年度はその機能につい
いう問題も発生した。そこで、図 1 のよう柄の周囲に
て報告してきた。平成 20 年度には、今までに作り上げ
玉縁をつけることにした。
てきた薄肉鋳物製造技術を適用し、軽量鋳物鍋の種類
を増やし、鍋のみならずフライパンの製造も開始した。
これによって、折れ防止が出来たことと、チルの発
生が防止され、この部分の湯境不良もなくなった。
昨年来開発し、販売してきた 2 種類の鍋に加え、写
真 1 に示すような鍋およびフライパンの開発を行っ
※
た。また、SG マーク を取得する際に問題になったの
は底面の平面度で、面に置いたときにガタが出ない対
策が求められた。
図 1 チル防止の断面形状
(3)平面度の改良
薄肉であるため、鋳造後のショットブラスト作業で、
写真 1 開発した厨房器具
ショット時間が長いと変形し、またブラスト内で鋳造
品が多いと、その衝突で変形する。これについてはシ
ョット時間の短縮、数量の制限等を決めることで解決
2.開発の内容
した。
しかし、琺瑯時の空焼き、その後のショットブラス
(1)製品アイテムの拡大
昨年までの 230φ及び 150φに、その中間の 190φを
ト、琺瑯焼付け時等の変形が有ることも分かり、各々
加え、またこれらの径で今までの各々の深さ 121. 5mm
の工程について作業の改善を行いこれを解決した。
(230φ )、106. 5mm(190φ )、91. 5mm(150φ ) と い
うシリーズに加え、深さ 76. 5mm(230φ)、61. 5mm
3.開発の成果
(190φ)、56. 5mm(150φ)という浅いシリーズを開
薄肉、しかも琺瑯という高熱にさらされるという処
発した。これらは今までよりサイズが小さく、あるい
理で苦労したが、10 アイテムの薄肉軽量鋳鉄厨房器
は深さが浅くなるものであったので、鋳造は簡単にな
具の開発に成功した。
り、従来技術の延長で大きな問題はなかった。
4.特記事項
(2)フライパンの開発
フライパンには長い柄がついており、この部分に湯
これらの製品が安全に使ってもらえる商品であると
※
境、チルが出ることが必至でこの対策が必要である。
いう証である、SGマーク の認定も受けた。
湯境防止としては、注湯温度の下限を厳しく管理する
※:Safety Goods の略号 ㈶ 製品安全協会認定の安全な
商品である認定。
ことだけでの防止は困難であり鋳造方案について検討
した。すなわち、長い柄の部分を、この鋳造方法であ
る垂直割り縦型鋳造において、柄を上にするか、下に
するか、横にするか、また、早く注湯するために何処
にどのような堰にするかを検討し、試験鋳造により確
認した。結論は、柄の部分を横にし、先端にガス抜き
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