スレーブ・プログラミング

ハードウェアRTOS内蔵! ルネサスのARM Cortex-M3マイコンR-IN32で試す
制御用イーサネット EtherCAT
スレーブ・プログラミング
大熊 和則
マスタ
EtherCAT通信
LANポート
オシロスコープ
ch1
スレーブ
15m
スレーブ
同じ基板
ch2
表 1 実験で使った評価ボード TS-R-IN32M3-EC の仕様
項 目
R-IN32M3-EC(ルネサス エレクトロニクス)
CPU コア
Cortex-M3 100MHz
搭載フラッシュ ROM
EtherCAT通信用IC
R-IN32M3-EC
(ルネサス エレクトロニクス)
仕 様
搭載 CPU
32M ビット× Dual(シリアル)
2M × 16 ビット(パラレル)
EEPROM
16K ビット
インターフェース
UART,I2C,CAN,CSI,
Ethernet/EtherCAT(RJ45),GPIO,
オプション:CC-Link
図 1 実験の構成
RJ45 コネクタ
に補正することで高精度同期を実現しています.このほか
にも高精度同期を維持するためのしくみもあります.
1台のマスタと2台のEtherCATスレーブを用意し,
スレー
ブ間の時刻同期性能を図 1 の構成で確認しました.スレー
ブは 2 台のルネサス エレクトロニクスの Cortex-M3 マイコ
ン搭載の通信用 IC R-IN32M3-EC を搭載する写真 1,表 1 の
CPU:R-IN32M3-EC
評価ボード TS-R-IN32M3-EC に実装しました.R-IN32M3EC はリアルタイム OS の機能をハードウェア化した通信用
のマイコンです.
本稿では,EtherCAT スレーブで必要なハードウェアと
写真 1 使った評価ボード TS-R-IN32M3-EC(テセテ・テクノ
ロジー)には Cortex-M3 搭載の EtherCAT 用通信 IC R-IN32M3EC が載っている
EtherCAT は産業用イーサネットの一つで,半導体製造
装置をはじめ各種産業機器で採用されつつあります.伝送
ソフトウェアを紹介し,R-IN32M3-EC で実際にスレーブを
作成するときの実践的な使い方を解説します.
実験内容
スピードは 100Mbps と平凡ですが,その独特な通信方式に
● 2 台のスレーブ間の同期性能を測定
より帯域使用率が 90%以上と高く,高速大容量の通信が特
図 1 の構成で遅延時間を実際に測定してみました.2 台の
徴です(1).
同じスレーブ基板の通信割り込み処理で GPIO に出力した
もう一つの特徴としてスレーブ機器が高精度で同期して
波形のずれは図 2 に示すように約 700ns となっています.こ
動作できるしくみがあります.Distributed Clock(DC)と
れは主にスレーブ側のコントローラ IC の内部処理による遅
呼ばれ,全てのスレーブ機器が 1μs の精度で同期して動作
延です.それに対し DC 機能が出力する Sync0 割り込み処
できます.伝送遅延が問題となりますが,スレーブ間の伝
理で GPIO に出力した波形は図 3 に示すようにほぼ一致して
送遅延時間を計測するしくみを備えており,計測結果を基
います.
112
Oct. 2013