コンクリート工学年次論文集 Vol.26 - 日本コンクリート工学協会

コンクリート工学年次論文集,Vol.26,No.2,2004
RC 柱の耐震性能に関する 3 次元繰返し非線形 FEM 解析
論文
坂本
憲吾*1・余
勇*2・柏崎
隆志*3・野口
博*4
要旨:本研究では,内田・野口の単調載荷時の 3 次元 FEM 解析プログラムをベースとし,
地震時の 3 次元問題について検討可能な 3 次元繰返し FEM 解析プログラムの開発を行い,
多方向載荷時の RC 柱の破壊挙動,及び繰返し加力により曲げ降伏後にせん断破壊した RC
柱の破壊挙動を把握するとともに,RC 柱の内部破壊状況、載荷履歴の違いによる影響につ
いて検討を行った。更に,解析結果より,RC 柱の大変形域までの劣化性状や累積吸収エネ
ルギーについて定量的に検討した。
キーワード:RC 柱,有限要素法,繰返し荷重,累積吸収エネルギー,3 次元解析
1. はじめに
Darwin-Pecknold の等価一軸ひずみに基づく直交
現行の RC 柱の設計法では,水平 2 方向の地震
異方性亜弾性モデルを 3 次元に拡張したモデル
動は別々に作用していると仮定し,X,Y 両方向
を用いた。破壊曲面には,Kupfer らの実験に基
の設計が独立に行われている。しかし,この仮
づく Willam-Warnke の 5 パラメータモデルを仮定
定は弾性範囲では成り立つが,大変形塑性域で
した。応力-ひずみ関係には、野崎・小林・櫻
は成立しない。大変形塑性域にまで及ぶ多方向
井
繰返し載荷時の RC 部材に関する実験的研究は,
た(図-1)。ひび割れたコンクリートの圧縮強度
1)
・衣笠
3)
らにより開発された繰返しモデルを導入し
らにより近年精力的
低減には,飯塚式(図-2)を用いた。ひび割れ
に行われてきているが,繰り返し載荷時の解析
モデルは,直交固定ひび割れモデルを用い,ひ
的研究は未だ十分に行われているとは言えない。
び割れ方向のせん断伝達特性には Al-Mahaidi モ
市之瀬
・芳村
2)
5)
本研究では,内田・野口の 3 次元 FEM 解析プ
ログラム
4)
デル
6)
(図-3)を用いた。また、ひび割れの判
定は、引張先行,圧縮先行共に図-1 中の T 点の
をベースとし,RC 部材の 3 次元繰返
し FEM 解析プログラムの開発を行い,多方向載
ひずみで行った。
荷時の RC 柱の破壊挙動,及び繰返し加力により
2.2 鉄筋
曲げ降伏後にせん断破壊した RC 柱の破壊挙動
鉄筋には,2 節点トラス要素を用いた。繰返し載
について解析的検討を行った。更に,解析結果
荷モデルとして,バウシンガー効果を考慮できる
より RC 柱の大変形域までの劣化性状や累積吸
Ciampi らにより提案された修正 Menegotto-Pinto モ
収エネルギーについて定量的に検討した。
デル(図-4)を導入した。
2.3 付着
2. 解析モデル
付着特性には,2 節点のボンドリンク要素を用
2.1 コンクリート
いた。繰返し載荷モデルとして,森田・角モデ
ル 7)(図-5)を導入した。
コンクリートには,アイソパラメトリック 8
節点ソリッド要素を用いた。構成則には,
*1 松田平田設計(株)
*2 千葉大学大学院
(前千葉大学大学院自然科学研究科博士前期課程)
自然科学研究科博士後期課程
工修(正会員)
*3 千葉大学
工学部デザイン工学科(建築系)助手
工修(正会員)
*4 千葉大学
工学部デザイン工学科(建築系)教授
工博(正会員)
-211-
工修(正会員)
引張から圧縮へ
順序:O→T→F1→H1→J1→E1
→C1→D1→P1→F1
引張応力
T
F1
化した(1/2 モデル)。コンクリート及び鉄筋の
材料特性を表-1に示す。載荷方法は一方向単調
載荷(軸力有り,軸力なし),正負繰返し載荷(軸
F2
P1
O
圧縮ひずみ
J2
D1
H1
の計 5 種類である。軸力比 0.062(軸力有りの場
引張応力
T 点:ひび割れ発生点
T
F 点:引張側除荷点
J 点:圧縮側包絡線復活点
J1
P2
C1
X1
力有り,軸力なし),片側繰返し載荷(軸力有り)
H2 引張ひずみ
圧縮ひずみ
合),繰返し載荷の加力サイクルは,8/1000rad(水
F1
平変位 4.8mm)漸増タイプとした。
O
H1 引張ひずみ
P1
E1
圧縮応力
圧縮から引張へ
順序:O→E1→C1→D1→
P1→T→F1→H1→J1→X1
J1
D1
D2
Z
E 点:圧縮側除荷点
P 点:残留ひずみ点
C 点:コモンポイント
X
C1
Z
Y
X1
E2
E1
X
コンクリート
圧縮応力
図-1 コンクリートの圧縮~引張間の履歴ルール
圧縮強度低減係数λ
λ = exp( −0.2(ε ct / ε c 0 ) 0.5 × K ( fc)) (≤ 1)
K ( fc) = − fc / 250
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
飯塚式
0
0.005 0.01
現在のひずみ
コンクリート
鉄筋
Al-Mahaidi model
0
εt0
境界条件
表-1 材料特性
G/G
0.015
鉄筋
図-6 要素分割及び境界条件
1000
2000
3000 4000
εl(×10 -6)
図-2 圧縮強度低減係数λ 図-3 ひび割れ方向の
せん断伝達モデル
D16
4φ
圧縮強度(MPa)
31.3
降伏強度(MPa)
359
531
引張強度(MPa)
2.69
引張強度(MPa)
455
577
1/3割線弾性係数(MPa)
2.33×104
ヤング係数(MPa)
1.95×105
1.98×105
3.2 荷重-変形関係
各試験体の実験及び解析から得られた荷重-
変形関係を図-7に示す。実験と解析の比較から,
全試験体において初期剛性は概ね良好な結果と
付着応力
応力
なった。最大耐力についても軸力なしの試験体
B
A
においては実験の約 1.2 倍,軸力有りの試験体に
N
M
L
ひずみ
Y
Z
J
おいては約 1.1 倍と良好な結果が得られたとい
0
I
A’
E
滑り
載荷経路
0→A→B→E→I→
A’ →J→L→M→N
図-4 鉄筋の履歴ルール 図-5 付着の履歴ルール
3.
の起こる変位が,実験より解析の方が早い結果
となった。正負繰返し載荷の試験体について、
実験では逆 S 字型となっているのに対し、解析
では紡錘型の履歴形状となった。片側繰返し載
載荷履歴が異なる RC 柱の FEM 解析
荷の試験体については概ね良好な結果が得られ
3.1 解析概要
市之瀬ら
える。単調載荷の試験体については,耐力劣化
2)
により行われた試験体を解析対象
とした。試験体は 25cm×25cm の柱部材で,主
筋には D16 を用いた(引張鉄筋比 1.27%)。また,
横補強筋には 4φの丸鋼を用い,横補強筋間隔を
40mm とした(横補強筋比 0.25%)。要素分割を
図-6に示す。XZ 平面での対称性を利用して,対
称面を面ローラ拘束し,試験体の半分をモデル
たといえる。載荷履歴の違いによる耐力低下点
の違いは実験同様,解析でも見られなかった。
3.3 内部ひずみ-変形関係
各試験体の実験及び解析から得られた内部ひ
ずみ-変形関係を図-8に示す。ここで,内部ひ
ずみは実験同様,危険断面から 175mm の位置の
水平方向の相対変位を有効せい 212mm で除した
-212-
150
100
100
100
50
50
50
0
-50
-100
0
10 20
変位(mm)
30
-50
-30 -20 -10
40
0
10 20
変位(mm)
30
0
-50
-100
実験値(単調載荷)
実験値(繰返し載荷)
-150
-30 -20 -10
40
150
100
100
100
50
50
50
-50
-100
-30 -20 -10
0
10 20
変位(mm)
30
0
-50
-100
解析値(単調載荷)
解析値(繰返し載荷)
-150
荷重(kN)
150
0
40
-30 -20 -10
(1)軸力なし
0
10 20
変位(mm)
30
0
10 20
変位(mm)
30
40
0
-50
-100
解析値(単調載荷)
解析値(繰返し載荷)
-150
実験値
-150
150
荷重(kN)
荷重(kN)
-30 -20 -10
0
-100
実験値(単調載荷)
実験値(繰返し載荷)
-150
荷重(kN)
150
荷重(kN)
荷重(kN)
150
解析値
-150
40
-30 -20 -10
(2)軸力有り
0
10 20
変位(mm)
30
40
(3)軸力あり(片側繰返し)
図-7 荷重-変形関係
値をとった。「 Center」は断面中央のひずみ,
3.4 軸方向ひずみ-変形関係
「Side」は部材表面から 1/5 の位置のひずみであ
各試験体の実験及び解析から得られた軸方向
る。実験値と解析値の比較から、単調載荷及び
ひずみ-変形関係を図-9に示す。ここで,軸方
繰返し載荷の両試験体において、軸力のない場
向ひずみは,実験同様,危険断面から 401mm の
合には、ほぼ同等のひずみとなっているのに対
位置での鉛直変位を柱長さ 401mm で除した値を
し、軸力のある場合は解析の方がひずみが小さ
とった。軸力の無い試験体については実験と同
くなる傾向が見られた。
等のひずみとなったが,軸力のある試験体につ
40
-30 -20 -10
80
-3
)
Center(解析値,単調載荷)
Side(解析値,単調載荷)
Center(解析値,繰返し載荷)
Side(解析値,繰返し載荷)
60
40
0
10 20
変位 (mm)
)
30
80
Center(解析値,単調載荷)
Side(解析値,単調載荷)
Center(解析値,繰返し載荷)
Side(解析値,繰返し載荷)
0
10 20
変位 (mm)
(1)軸力なし
30
40
40
30
40
Center(解析値)
Side(解析値)
60
0
0
-30 -20 -10
30
20
20
0
0
10 20
変位 (mm)
40
40
20
-30 -20 -10
40
)
40
-3
30
内部ひずみ (×10
0
10 20
変位 (mm)
内部ひずみ (×10
)
-3
内部ひずみ (×10
0
0
-30 -20 -10
60
60
20
20
0
Center(実験値)
Side(実験値)
40
40
20
80
-3
)
-3
60
80
Center (実験値,繰返し載荷)
Side (実験値,繰返し載荷)
Center (実験値,単調載荷)
Side (実験値,載荷単調)
内部ひずみ (10
80
Center (実験値,単調載荷)
Side (実験値,単調載荷)
Center (実験値,繰返し載荷)
Side (実験値,繰返し載荷)
内部ひずみ (10
60
内部ひずみ (×10
-3
)
80
-30 -20 -10
0
10 20
変位 (mm)
30
40
(2)軸力有り
図-8 内部ひずみ-変形関係
-213-
-30 -20 -10
0
10 20
変位 (mm)
(3)軸力あり(片側繰返し)
6
4
2
0
)
6
4
2
0
-30 -20 -10
12
8
6
4
2
0
-2
30
0
10 20
変形 (mm)
30
40
6
4
2
0
-30 -20 -10
12
)
10
8
6
4
2
0
10
0
10 20
変位 (mm)
30
40
0
10 20
変位 (mm)
30
40
解析値
8
6
4
2
0
-2
-2
-30 -20 -10
8
40
解析値(単調載荷)
解析値(繰返し載荷)
)
解析値(単調載荷)
解析値(繰返し載荷)
0
10 20
変位 (mm)
-3
40
-3
10
30
軸方向ひずみ (×10
)
12
0
10 20
変形 (mm)
実験値
10
-2
軸方向ひずみ (×10
-30 -20 -10
-3
8
-2
-2
軸方向ひずみ (×10
-3
)
8
12
実験値(単調載荷)
実験値(繰返し載荷)
10
軸方向ひずみ (×10
-3
)
-3
軸方向ひずみ (10
12
実験値(単調載荷)
実験値(繰返し載荷)
10
軸方向ひずみ (×10
12
-30 -20 -10
(1)軸力なし
0
10 20
変位 (mm)
30
-30 -20 -10
40
(2)軸力有り
(3)軸力あり(片側繰返し)
図-9 軸方向ひずみ-変形関係
いては,実験値より小さい結果となった。
4.
表-2 材料特性
コンクリート 最大強度(MPa) 最大強度時ひずみ(%) 1/3割線剛性(MPa)
4
FSシリーズ
27.0
0.209
2.57×10
4
Sシリーズ
25.1
0.200
2.59×10
鉄筋
降伏強度(MPa)
降伏時ひずみ(%)
ヤング係数(MPa)
5
D10(SD295A)
355
0.186
1.91×10
D19(SD345)
387
0.194
1.99×105
5
D22(SD490)
547
0.281
1.95×10
二方向入力を受ける RC 柱の FEM 解析
4.1 解析概要
芳村ら
3)
により行われた試験体を解析対象と
した。試験体は,曲げ降伏後にせん断破壊する
Z
タイプ(FS シリーズ)と曲げ降伏せずにせん断
X
破壊するタイプ(S シリーズ)の 2 種類である。
試験体数は,各タイプで 3 体ずつ計 6 体である
Z
Y
(尚,実験では S0 試験体は行われていないため
X
計 5 体である)。断面は FS シリーズでは 30cm×
コンクリート
30cm,S シリーズでは 40cm×40cm の正方形で,
鉄筋
FS シリーズ
試験体高さは両シリーズとも 60cm である。主筋
境界条件
Z
は,FS シリーズでは,12-D19(引張鉄筋比 1.91%),
X
S シリーズでは 16-D22(引張鉄筋比 1.69%)で
ある。横補強筋は,FS シリーズでは□-D10@75
Z
( 横 補 強 筋 比 0.63 % ), S シ リ ー ズ で は □
Y
-D10@180(横補強筋比 0.20%)である。コンク
X
コンクリート
リート及び鉄筋の材料特性を表-2に示す。図-10
に要素分割を示す。軸力比は FS シリーズでは
0.26,S シリーズでは 0.20 とした。載荷履歴を模
鉄筋
S シリーズ
境界条件
図-10 要素分割及び境界条件
X
Y X
Y X
Y
式的に図-11 に示す。水平 1 方向の「単調載荷」
と「両振り載荷」,水平「2 方向載荷」の載荷履
歴を考慮した。試験体名中の数字が 0 は単調載
-214-
単調載荷(FS0,S0) 両振り載荷(FS1,S1) 2 方向載荷(FS2,S2)
図-11 載荷履歴
0
-100
-300
-4 -2
方向載荷の FS2,S2 については両方向の
実験と比較し概ね良好な結果が得られた
500
400
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
-500
いない。従って,多方向から荷重を受け
る部材(S2,FS2)に対して,大変形域
200
200
100
0
-100
-200
として求めた。軸力による累積吸収エネ
-13 に示す。FS1 において,全体累積吸
収エネルギーE は,限界状態時まで実験
とほぼ同等のエネルギー特性となった。
Y方向水平力 (kN)
の関係及び,限界状態での E の比較を図
-200
-4 -2 0 2 4 6 8 10
X方向水平変形 (%)
300
200
200
100
0
-100
-200
実験値(FS2)
解析値(FS2)
-300
100
0
-100
-200
解析値(FS2)
-300
-4 -2 0 2 4 6 8 10
Y方向水平変形 (%)
500
400
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
-500
実験値(S2)
500
400
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
-500
-4 -2 0 2 4 6 8 10
X方向水平変形 (%)
ネルギーEH の和を部材全体の累積吸収
に関する累積吸収エネルギーと水平変形
0
(3)FS2(曲げせん断,2 方向載荷)
ルギーEV 及び水平力による累積吸収エ
エネルギーE として計算した。S1 と FS1
8 10
-100
-4 -2 0 2 4 6 8 10
Y方向水平変形(%)
X方向水平力 (kN)
それぞれの変形増分をかけたものの累積
実験値(FS2)
-300
問題点が挙げられる。
累積吸収エネルギーは軸力と水平力に
0 2 4 6
水平変形(%)
100
300
でのひび割れ状況を完全に表現できない
4.3 累積吸収エネルギー
-4 -2
8 10
-4 -2 0 2 4 6 8 10
X方向水平変形(%)
Y方向水平力(kN)
による非直交ひび割れの発生を許容して
0 2 4 6
水平変形(%)
300
限界状態時まで表現することができなか
デルを用いているため,特に繰返し載荷
8 10
解析値(S1)
解析値(S0)
300
-300
果が得られたが,その後,解が安定せず,
った。本解析では,直交固定ひび割れモ
0 2 4 6
水平変形(%)
500
400
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
-500
X方向水平力 (kN)
FS2 では,最大耐力付近までは良好な結
X方向水平力(kN)
大耐力後,耐力低下が激しくなった。S2,
-4 -2
(2)S0,S1(せん断,単調載荷と両振り載荷)
状であるのに対し,解析では紡錘型の履
耐力付近まで良好な結果となったが,最
解析値(FS0)
解析値(FS)
-300
8 10
実験値(S1)
-4 -2
と言えるが,実験では逆 S 字型の履歴形
歴形状となった。FS1 については,最大
0
-100
-200
水平力(kN)
水平力(kN)
(3),(4))。図中に最大耐力点(2 方向
をそれぞれ◇,○で示す。S1 については,
0 2 4 6
水平変形(%)
100
(1)FS0,FS1(曲げせん断,単調載荷と両振り載荷)
荷重-変形関係を示した(図-12 中の
状態点(軸力を保持できなくなった時点)
実験値(FS0)
実験値(FS1)
-200
荷重-変形関係を図-12 に示す。尚,2
載荷では 2 方向のベクトル和)及び限界
水平力(kN)
200
100
Y方向水平力 (kN)
各試験体の実験及び解析から得られた
300
200
X方向水平力 (kN)
4.2 荷重-変形関係
300
500
400
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
-500
実験値(S2)
-4 -2 0 2 4 6 8 10
Y方向水平変形 (%)
解析値(S2)
-4 -2 0 2 4 6 8 10
X方向水平変形 (%)
Y方向水平力 (kN)
を,それぞれ表している。
水平力(kN)
荷を,1 は両振り載荷を,2 は 2 方向載荷
500
400
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
-500
解析値(S2)
-4 -2 0 2 4 6 8 10
Y方向水平変形 (%)
(4)S2(せん断,2 方向載荷)
しかし,実験では,軸力による累積吸収
図-12 荷重-変形関係
-215-
は,早い段階から軸縮みが生じたため,全
体累積吸収エネルギーE に対する軸力によ
る累積吸収エネルギーEV の比率が大きい
30
E(FS1)
Ev(FS1)
20
10
0
解析値
-10
-4 -2
結果となった。図-13 中の●で示した点に
0 2
4
6
水平変形(%)
8
5.
まとめ
0
実験値
-10
-4 -2
0 2
4
6
水平変形(%)
8
解析値
実験値
50
E(S1)
Ev(S1)
40
30
20
10
40
30
20
10
0
解析値
-10
0
-4 -2
本研究では,3 次元繰返し FEM 解析プ
0 2
4
6
水平変形(%)
(2)S1
ログラムの開発を行い,多方向から加力を
8
10
S0
S1
S2 FS0 FS1 FS2
(3)限界状態時 E の比較
受ける RC 柱の劣化性状,累積吸収エネル
図-13 累積吸収エネルギーと水平変形関係(FS1,S1),
ギーについて検討を行った。その結果,初
及び限界状態時 E の比較
期剛性,最大耐力,耐力低下点,及び累積
10
60
50
E(kN・m)
いることが分かる。
10
(1)FS1
吸収エネルギー(kN・m)
に柱脚に累積吸収エネルギーが集中して
E(FS1)
Ev(FS1)
20
10
おける累積吸収エネルギーの分布状況を
図-14 に示す。図-14 から FS1,S1 とも
吸収エネルギー(kN・m)
5%以降に増大しているのに対し,解析で
30
吸収エネルギー(kN・m)
エネルギーEV が最終載荷時の水平変形約
Z
Z
吸収エネルギーについて概ね良好な結果
Y
が得られた。更にせん断や付着劣化による
X
Y
(kN・m)
0.0E0
X
1.0E-3
履歴ループの逆 S 字化などを表現するた
2.0E-3
め,非直交固定ひび割れモデル,及び繰返
3.0E-3
し載荷に対応したひび割れ方向のせん断
4.0E-3
伝達モデルを開発中である。
5.0E-3
謝辞
(1)FS1
本研究は、日本学術振興会科学研究費補
(2)S1
図-14 累積吸収エネルギーコンター図
助金・基盤研究(B)(2)(課題番号:14350293、
研究代表者:野口博)により行われた。
参考文献
1) 松澤敦行,伊吉允,梅村恒,市之瀬敏勝:載荷
履歴と軸力が RC 部材の耐力低下に及ぼす影響,
JCI 年次論文集,Vol.24,No.2,pp.877-882,2002
2) 山中憲行,芳村学:低軸力下での曲げせん断型
及びせん断破壊型 RC 柱の崩壊に関する研究,
JCI 年次論文集,Vol.22,No.3,pp.325-330,2000
3) 衣笠秀行,野村設郎,西村徹,西村俊彦:RC
柱部材の曲げ降伏後の繰り返し載荷によって
発生する破壊メカニズムについて,JCI 年次論
文報告集,Vol.16,No.2,pp.485-490,1994
4) 内田和弘,野口博:梁貫通型接合部を有する柱
RC・梁 S 構造 2 層 2 スパン架構の力学的挙動
に 関 す る 解析 的 研 究 ,AIJ 構 造 系 論 文 集 ,
1998.12
5) 櫻井輝雄,柏崎隆志,野口博:繰返し荷重を受
ける RC 面材に関する非線形 FEM 解析モデル
の開発,JCI 年次論文集,Vol.24,No.2,pp.139-144,
2002
6) Al-Mahaidi, R. S. h.: Nonlinear Finite Element
Analysis of Reinforced Concrete Deep Members,
Report No.79-1, Department of Structural
Engineering, Cornell University, Jan.1979.
7) 森田司郎,角徹三:繰返し荷重下における鉄筋
とコンクリート間の付着特性に関する研究,
AIJ 論文報告集,第 229 号,pp.15-24,昭和 50
年3月
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