粘性土の繰返しせん断特性の評価に及ぼすせん断モードの影響

粘性土の繰返しせん断特性の評価に及ぼすせん断モードの影響
名城大学大学院
学生会員
福沢宏樹
名城大学
学生会員
三好直輔・山田久記
名城大学
正会員
小高猛司・板橋一雄
1.はじめに
粘土地盤の地震時挙動を予測する上で,繰り返しせん断特性の把握は非常に重要である。特に,自然堆積
粘土地盤は K0 応力状態にあるため,異方圧密条件下におかれた粘性土の繰返しせん断特性を適正に評価する
必要がある。地盤材料の繰返し強度特性を評価するためには,一般に繰返し三軸試験が用いられるが,三軸
試験は異方圧密条件を再現することはできても,異方圧密過程において,すでに圧縮方向に相当なせん断履
歴を与えているために,その後の繰返し載荷過程を評価することが難しい。著者らは,単純せん断試験を用
いて粘性土の繰返しせん断特性の評価を試みている
1)
が,本報では,等方圧密供試体を用いて,繰返し三軸
試験,繰返し単純せん断試験,さらに中空ねじりせん断試験を実施し,比較することにより,せん断モード
が粘性土の繰返しせん断特性の評価に及ぼす影響を検討する。
2.実験試料と実験方法
実験試料は東京湾で浚渫採取した有楽町層粘土である。液性限界,塑性限界および塑性指数はそれぞれ,
w L  86% , w P  31% および I P  55 である高塑性粘土である。この粘土を 420m のフルイで裏ごしして貝
などの固形物を取り除き,液性限界の 2 倍の含水比のスラリー状にしてミキサーで十分に攪拌した後に,
100kPa で一次元的に予圧密して再構成試料を作製した。供試体を三軸セルに設置後,二重負圧法で飽和化を
行い,拘束圧 200kPa で等方圧密した後に,非排水せん断試験を実施した。単純せん断試験の詳細は文献 1)
を参照されたい。
3.試験結果
図 1 に,三軸試験,中空ねじりせん断試験および単純せん断試験の単調載荷試験結果の応力~ひずみ関係
と有効応力経路を示す。すべての試験を同一尺度で比較するために,縦軸には偏差応力テンソルの第 2 不変
量 2J 2 (以下,偏差応力と呼ぶ)を用い,ひずみとして偏差ひずみテンソルの第 2 不変量  s (以下,偏差
ひずみと呼ぶ)を用いた。いずれの試験においても,応力~ひずみ関係に明確なピーク強度は見られず,偏
差応力が一定値で収束している。中空ねじりせん断試験と単純せん断試験はせん断モードがほぼ同一である
ために,両者の試験結果は非常に類似している。しかしながら,三軸試験と単純せん断試験および中空ねじ
りせん断試験の結果は,特に求められる偏差応力に大きな差があり,それに伴い破壊応力比も大きく異なる。
せん断モードの違いが,得られる偏差応力に大きな影響を及ぼしていることがわかる。
200
200
験および単純せん断試験の繰返し載
応力経路図に示した直線は,単調載
荷試験で得られた限界状態線を示す。
はじめに,図 2 の三軸試結果に着目
する。応力~ひずみ関係では,伸張
側に大きくひずみが偏る傾向が見ら
れる。有効応力経路は圧縮時と伸張
時には大きく傾向が異なり,さらに
圧縮時には限界状態線を越えてのせ
150
150
0.9
(2J2)1/2
荷試験結果である。それぞれの有効
1.4
三軸試験
中空ねじり試験
100
50
0
(2J2)1/2
図 2 および 3 はそれぞれ,三軸試
100
単純せん断試験
0
5
10
εs
15
(a)応力~ひずみ関係
20
50
0
0
50
100
150
σm’
(b)有効応力経路
図 1 単調載荷試験の比較
200
50
0
-50
-100
-10
150
100
100
50
0
-50
-100
-5
0
5
軸ひずみ(%)
-150
-10
10
-5
0
5
軸ひずみ(%)
10
50
0
-50
-100
-150
-15 -10 -5
応力~ひずみ曲線
100
150
100
100
-50
軸差応力(kPa)
0
50
0
-50
50
100
150
200
-150
0
250
5
10
15
50
0
-50
-100
-100
-100
0
0
軸ひずみ(%)
150
50
軸差応力(kPa)
軸差応力(kPa)
150
軸差応力(kPa)
軸差応力(kPa)
軸差応力(kPa)
100
平均有効応力(kPa)
-150
0
50 100 150 200 250 300
平均有効応力(kPa)
50 100 150 200 250 300
平均有効応力(kPa)
有効応力経路
応力比 0.2
応力比 0.25
応力比 0.3
図 2 三軸試験の繰返し載荷試験結果
-5
0
 (%)
5
0
-50
-10
10
 (kPa)
0
-50
-10
50
50
 (kPa)
 (kPa)
50
-5
0
 (%)
5
0
-50
-10
10
-5
0
 (%)
5
10
200
250
応力~ひずみ曲線
50
0
-50
0
50
100 150
m' (kPa)
200
0
-50
0
250
50
(kPa)
(kPa)
(kPa)
50
50
100 150
m' (kPa)
200
250
0
-50
0
50
有効応力経路
応力比 0.175
応力比 0.2
100 150
m' (kPa)
応力比 0.25
図 3 単純せん断試験の繰返し載荷試験結果
0.4
ん断挙動が顕著に観察できる。次に,図 3 の単純せん断試験に
DA=10%
返しせん断に伴い,均等にせん断ひずみは増大し,平均有効応
力は減少し,限界状態線に漸近してゆく。以上のように,図 2
と図 3 を見比べると,繰返しせん断特性を評価する上で,単純
せん断モードによる試験の優位性はあきらかである。
図 4 は両振幅ひずみが 10%で整理した繰返し強度曲線である。
この図だけ見れば,三軸試験と単純せん断試験では同一の繰返
しせん断強度と評価することができるが,実際のせん断挙動は
繰返し応力比
着目する。応力~ひずみ関係,有効応力経路ともに,左右の繰
三軸試験
0.3
単純せん断試験
0.2
0.1
0.0
1
10
100
1000
繰り返し回数
図 4 繰り返し強度曲線
大きく異なることは前述の通りである。
参考文献 1)山田ら:単純せん断試験による各種圧密条件下の粘性土のせん断強度特性の評価,土木学会中部支部,2010.