防災分野における映像アプリケーション - Fujitsu

防災分野における映像アプリケーション
Video Monitoring Applications against Natural Disasters
あらまし
日本は,地震,台風,豪雨,豪雪などの災害が発生しやすい国土であり,毎年多くの人命
や財産が失われている。日本では,国土交通省などでこれら災害対策に向けた情報インフラ
の整備が進められており,なかでも映像情報の活用が重要な位置付けとなっている。
本稿では,国土管理における映像情報の活用として,従来型の映像監視システムと新しい
広域ネットワーク型の映像監視について比較する。また,映像アプリケーションの具体的な
活用例として,ゲートの遠隔監視制御と映像監視を遠隔の事務所から行う「河川管理施設の
広域運用」の事例,映像蓄積と災害情報検知を連動した「土砂災害監視向けVODシステム
活用」の事例,IPマルチキャストを使って多種多様な映像情報を提供する「関連機関,地域
住民との連携」の事例の三つを紹介する。
Abstract
Every year, natural disasters such as earthquakes, typhoons, and heavy rain and snow
take their toll on human life and property. To help protect against such disasters, the
Ministry of Land, Infrastructure, and Transport is developing nationwide information
networks and has established a wide range of disaster prevention systems that utilize video
information. In this paper, we discuss various kinds of video systems that can be used on
wide area networks and compare them with the conventional point-to-point video system.
We introduce three examples of remote video monitoring applications: a wide-area flood
control system that remotely controls and monitors water gates, a VOD system for
preventing sediment-related disasters that is linked with video recording and disaster
detection systems, and a public video distribution service that provides disaster-related
video through a TV station or local government.
山本善久(やまもと よしひさ)
新谷洋人(しんがい ひろと)
森西利匡(もりにし としまさ)
ソリューション統括部第一ソリュー
ション部 所属
現在,防災関連のアプリケーショ
ンシステムの企画,設計,構築に
従事。
ソリューション統括部第一ソリュー
ション部 所属
現在,防災関連のアプリケーショ
ンシステムの企画,設計,構築に
従事。
ソリューション統括部第一ソリュー
ション部 所属
現在,防災関連のアプリケーショ
ンシステムの企画,設計,構築に
従事。
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FUJITSU.54, 1, p.8-15 (01,2003)
防災分野における映像アプリケーション
きた。これらは,日常的な施設運用を目的としており,
ま え が き
主に施設内に限られた範囲で活用されるものである。
大規模地震や洪水,土石流,火山噴火などの災害に対
一方,広域災害に対応するものとしては,ヘリコプタ
して,その初期における情報収集,現地との連絡体制の
による空撮映像の伝送システムや,衛星通信車を用いた
確立,関係機関相互の連携の重要性が従来にも増して認
被災現場映像の伝送システムなどが活用されてきた。こ
識されている。日本では,国土交通省などでこれら災害
れらは,拠点間をマイクロ波無線回線や衛星通信回線で
対策に向けた情報インフラの整備が進められており,な
1対1または1対 n に結び,主要拠点に配置した映像ス
かでも映像情報の活用が重要な位置付けとなっている。
イッチの操作により配信先を選択するもので,少数の映
本稿では,国土管理,とくに危機管理における映像情
像ソースを分配していく利用形態であった。
報の活用について概観し,防災分野における映像アプリ
● 広域ネットワーク型の映像活用(1)
ケーションの活用事例をいくつか紹介するとともに,富
全国に配置された多数のCCTVカメラなどの映像を効
士通の対応姿勢について述べる。
率的に活用して広域的な災害に機動的に対処するために
は,必要に応じて「いつでも」
「誰でも」
「どのカメラの
国土管理における映像情報の活用
映像でも」選択して視聴し適切な対応をすることが求め
国土交通省では,公共施設管理・危機管理の高度化を
図るため,地方機関や防災関係機関などとの高速情報通
られた。
(1) 基本方式
信の基盤となる光ファイバ網の構築を進めている。また,
1万台規模のCCTVカメラを擁する全国規模のネット
多くのCCTVカメラを整備し,水門,排水機場などの施
ワークにおいて,拠点ごとの映像スイッチを用いる従来
設管理,河川道路空間の監視,火山地域などの遠隔監視
方式を適用したならば,複雑な構成と運用操作が必要と
に活用している。
なる。カメラ選択をシンプルに実現するためには,カメ
● 従来型の映像監視システム
ラ映像をIPマルチキャストにより「放送」し,各利用
せき
ダム・ 堰やトンネルなどの管理施設周辺の状況を把
握するための映像監視システムは,古くから整備されて
衛星通信車
者が任意の映像を選択受信する方式が適している
(図-1)
。
通信衛星
衛星通信車
通信衛星
(Ku-SAT)
(Ku-SAT)
災害現場
ヘリコプタ
災害現場
山上
中継局
首相官邸ほか
出張所
出張所
ルータ
事務所
出張所
出張所
地方整備局
出張所
出張所
本省
出張所
ルータ
出張所
ルータ
出張所
ルータ
事務所
地方整備局
出張所
出張所
ルータ
放送局
首相官邸ほか
ルータ
ルータ
地方整備局
ルータ
事務所
光
フ
ァ
イ
バ
網
出張所
出張所
出張所
光
フ
ァ
イ
バ
網
ルータ
国土交通省
事務所
自治体
事務所
ルータ
出張所
出張所
山上
中継局
ヘリコプタ
CCTVカメラ
放送局
自治体
事務所
光
フ
ァ
イ
バ
網
イ
ン
タ
ー
ネ
ッ
ト
へ
ルータ
ルータ
ルータ
地方整備局
イ
ン
タ
ー
ネ
ッ
ト
へ
図-1 従来型の映像監視システムと広域ネットワーク型の映像活用
Fig.1-Conventional video monitoring system and advanced video multi-casting.
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防災分野における映像アプリケーション
(2) IPマルチキャスト
ものである。
IPネットワーク上でのマルチキャストを実現する技
● システムの概略構成
術は,
本システムは,河川流域を管轄する工事事務所を単位
・配信ソースを識別するための「グループアドレス」
に整備したものである。個々の樋門・樋管に配置した
・グループへの参加メンバを管理するための「マルチ
CCTVカメラと被監視制御装置をIPネットワークで結び,
キャストグループ管理プロトコル」
工事事務所とその下部組織である出張所において集中的
・広域網での配信経路を制御するための「マルチキャス
ト経路制御プロトコル」
な監視制御を可能とするものである。
システムの概略構成を図-2に示す。工事事務所を頂点
である。ここでは,表-1に示す仕様を用いることとした。
(3) 画像符号化
に,出張所,管理施設の3階層から成るIPネットワーク
の上に,樋門・樋管の周辺の状況を映像で監視し,ゲー
アナログのビデオ信号を,ディジタルデータに変換・
ト制御などを遠隔で行うアプリケーションを構築し
圧縮する技術が画像符号化である。主要な方式としては,
ている。
MPEG-2(ISO/IEC13818)とMPEG-4(ISO/IEC14496)
があり,これらを場面に応じて使い分けることとした。
● システムの特徴
(1) 管理施設設置機器
この二つの符号化方式の特徴を表-2に示す。
管理施設においては屋外筐体内に機器を実装する必要
● リアルタイム映像配信/収集システムNexteye
があり,光ファイバは河川の左右岸を用いループ状の
富士通では,ブロードバンド時代に対応し,IPネッ
ルートに敷設されている。このため,IPネットワーク
トワーク上でリアルタイム映像の配信・収集を実現する
を構成するスイッチ機器として,耐環境性に優れループ
システム製品としてNexteyeを提供している。次章以降
構成での多段接続においても遅延などの悪影響が少ない
ではNexteyeを利用したシステム構築の事例を紹介する。
特徴を備えたFLASHWAVE2730を採用した。
河川管理施設の広域運用
また,管理施設に配置するIPエンコーダ(IP-700)
やIPテレメータなどの機器は,それぞれコンパクトか
河川には,ダム・堰などの大規模な管理施設に加え,
樋門・樋管など小規模な管理施設があり,流域を洪水か
つ耐環境性に優れたものとしている。
(2) センタ機器
ら守るために重要な役割を果たしている。これらは,流
現場の状況は,IPテレメータによる水位やゲート状
域全体に広く存在するが,運用の効率化を目指し遠隔か
態などの監視データに加え,CCTVカメラ映像,集音マ
らの監視・操作の実現が求められている。
イクによる音声などの複数メディアを用いて多角的に把
最初に紹介する事例は,映像,音声,データのメディ
握可能としている。また,すべての通信をIPにより実
アをIPで統合し,遠隔から安全な施設操作を実現した
現しており,従来型の専用監視制御卓や映像モニタを用
いた運用ではなく,1台のパソコンによる統合的な情報
表-1 IPマルチキャストの仕様
要素技術
採用仕様
グループアドレス
RFC2365に規定される
Organization Local Scopeの範囲
グループ管理プロトコル
IGMP version2(RFC2236)
経路制御プロトコル
PIM Sparse Mode(RFC2362)
提供を可能とした。また大勢での監視に用いるために,
デコーダ装置と壁掛け大型PDPモニタを組み合わせた
表示装置も配置している。
(3) 管理者向けの運用画面
パソコンを用いた管理者向けの運用画面は,Webブラ
ウザを用い,流域全体の広域情報から個々の管理施設の
詳細情報までの様々な情報を分かりやすく提供するもの
表-2 MPEG-2とMPEG-4
MPEG-2
MPEG-4
伝達速度
1.4 Mbps∼6 Mbps
25 kbps∼384 kbps
解像度
352×480,720×480
160×120以上
仕様確定から期間を経て異社
間での相互接続性が高い
高画質性を生かし,モニタ監
視,放送事業者への提供など
オブジェクトベースであり機
能の発展性を秘めている
一般職員のパソコンへの 提
供,蓄積や一覧画面など
項目
特徴
適用範囲
である。
図-3は映像監視画面である。広域監視としては,
MPEG-4または静止画による一覧を提供し,施設ごと
のMPEG-2によるフル動画表示のメニュー的な位置付
けとしている。
図-4は各管理施設をあらかじめ設定してあった順で切
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防災分野における映像アプリケーション
IPエンコーダ
(IP-700)
CCTVカメラ
出張所
FW2730
V
A
電源
3E
全開
開中
漏電
停止
非常
全閉
閉中
故障
FW2730
IPテレメータ
管理施設
IPエンコーダ
(IP-700)
工事事務所
レイヤ3スイッチ
河川管理用
光ファイバ網
FW2730
監視制御
サーバ
IPデコーダ
(IP-700)
(支線)
FW2740
大型表示
大型表示
V
A
電源
3E
全開
開中
漏電
停止
非常
全閉
閉中
故障
IPテレメータ
管理施設
大型表示
監視制御端末
FW2740
河川管理用
光ファイバ網
(本線)
IPエンコーダ
(IP-700)
CCTVカメラ
IPデコーダ
(IP-700)
レイヤ3スイッチ
出張所
統合管理
サーバ
FW2730
V
A
電源
3E
全開
開中
漏電
停止
非常
全閉
閉中
故障
FW2730
IPテレメータ
管理施設
IPエンコーダ
(IP-700)
レイヤ3スイッチ
河川管理用
光ファイバ網
FW2730
(支線)
IPデコーダ
(IP-700)
FW2740
監視制御
サーバ
監視制御端末
V
A
電源
3E
全開
開中
漏電
停止
非常
全閉
閉中
故障
管理施設
IPテレメータ
大型表示
監視制御端末
図-2 河川管理施設の広域運用の事例
Fig.2-Flood control system with dedicated IP networks.
MPEG-4による一覧表示
MPEG-2によるフル動画
図-4 パトロール監視画面
Fig.4-Screen of patrol monitoring.
図-3 映像監視画面
Fig.3-Screen of video monitoring.
するため,必ず数台のカメラで撮影した施設周辺の映像
を表示するとともに,周囲の音を集音してスピーカでモ
り替えて監視できるパトロール監視画面である。模式的
ニタして,周辺状況を確実に掌握した上で遠隔操作を行
な地図上に施設の配置を示し,シンボルの色替えなどに
うものとしている。
より全体状況を視覚的に表現している。合わせて左上の
● 整備効果と課題
映像が各施設を巡回していく。
監視・制御の集中化により,状況把握に要する時間と
図-5は管理施設ごとの監視制御画面である。樋門や樋
労力が大幅に削減され,操作の確実性の向上が期待でき
管のゲート操作などを遠隔で行う場合には,安全の確保
る。また巡視員が危険作業から解放され,災害時など
が絶対条件になる。不用意な操作により周辺の人に危険
現場への移動手段が制限された場合も施設操作が可
を及ぼすことがあってはならない。これらの危険を回避
能となる。
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防災分野における映像アプリケーション
NTSC
IPエンコーダ
(IP-700)
ローカル
ファイル
NTSC
土石流
監視サーバ
蓄積映像
IPエンコーダ
(IP-700)
アラーム事象
レ
イ
ヤ
3
ス
イ
ッ
チ
テンポラリファイル
ライブラリファイル
VODサーバ
ローカル
ファイル
蓄積映像
マルチキャスト
(ライブ)
ユニキャスト
(蓄積)
監視端末
図-5 管理施設の監視制御画面
Fig.5-Screen of monitoring and control of facilities.
図-6 土砂災害監視向けVODシステムの構成
Fig.6-VOD system against sediment-related disasters.
管理される。
より安全な運用のためには,管理施設内の人や動物な
● システムの特徴
どの侵入検知の併用や,あたかも現場をパトロールして
VODサーバのディスク容量に限りがあり,テンポラ
いるかのようなバーチャル監視的なGUIが効果的で
リファイルの蓄積映像は,一定時間を経過したものから
ある。
順次消されていく。一方,現場に設置したセンサなどに
土砂災害監視向けVODシステム
より,危険な降雨パターンや,土石流の発生を検知した
場合,監視サーバと連携しこれらのアラーム事象をトリ
がけ崩れ・土石流・地すべりなどの土砂災害は,全国
ガ情報として受信する。VODサーバではアラーム事象
で毎年約1,000件も発生し,自然災害における死者・行
発生の前後数分(設定は可変)間の蓄積映像を,ライブ
方不明者数の占める割合も高い状況にある。土砂災害に
ラリファイルに自動退避することとしている。さらに
よる被害を最小限に止めるため,砂防ダムなどによる
IPエンコーダのローカル保存機能を活用することでよ
ハード対策に併せ,地域住民の日常的な防災意識の向上
り大規模なシステムへも対応可能である。
はもとより,災害時の迅速かつ的確な状況の把握,地域
監視用のパソコン画面を図-7,図-8に示す。図-3のリ
住民への情報伝達などの実現が求められる。
アルタイム映像の監視画面とシームレスに連携したもの
つぎに紹介する事例は,火山灰台地で多発する土砂災
であり,アラーム事象発生時のスキップバック再生や,
害 を 監 視 す る CCTV シ ス テ ム に VOD ( Video on
ビデオ感覚での時間軸操作を可能としている。
Demand)機能を付加し,状況把握の精度向上を実現し
● 整備効果と課題
たものである。
素早くスキップバックが可能であるため,多数の危険
● システムの概略構成
か所の映像を限られた人員で監視する場合でも,アラー
本システムは,複数のIPエンコーダ(IP-700)と
ム事象の具体的な状況を見落とすことがなくなった。ま
VODサーバで構成される。システムの概略構成を図-6
た,蓄積された映像を後日詳細に解析することも可能と
に示す。
なった。
IPエンコーダ(IP-700)は,危険か所の状況を撮影
今後は,監視映像から異常事象を抽出するなどの画像
しているCCTVカメラの映像を入力とし,リアルタイム
処理技術の開発が望まれる。
映像をIPマルチキャスト配信すると同時に,ローカル
ディスクに常時一定時間分蓄積している。VODサーバ
関連機関,地域住民との連携
は,IPエンコーダ上の蓄積映像を集約保存し,監視用
洪水など災害時の情報は,あらゆる手段を用いて伝達
のパソコンからの要求に応じてユニキャストで提供する。
され,住民の避難行動計画などに役立たねばならない。
VODサーバ上の蓄積映像は,一定時間分のテンポラリ
そのためには様々なメディアを用いた行政からの積極的
ファイルと長期保存するライブラリファイルの2階層で
な情報発信が必要である。
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防災分野における映像アプリケーション
図-7 蓄積映像の選択画面
Fig.7-Screen of video file table.
図-9 台風15号時のNHK放送画面(2001.9.11)
Fig.9-Flood river at typhoon No.15 (11 Sep. 2001, NHK).
図-10 多摩川に現れたアゴヒゲアザラシ(2002.8.14)
Fig.10-Seal wandered into Tama river (14 Aug. 2002).
図-8 蓄積映像の表示画面
Fig.8-Screen of video playback.
概略構成を図-11に示す。イントラネットと地域との
相互接続ネットワークともに,レイヤ3スイッチとレイ
図-9は,2001年9月の台風15号による出水時に,多摩
ヤ2スイッチで構成されたギガbpsクラスの高速IPネッ
川に設置したCCTVカメラ映像を,NHKへ提供しリア
トワークである。このネットワークに,河川管理用に設
ルタイム中継した際のものである。地域住民にとっては,
置したCCTVカメラ(約60台)の映像を,6 Mbpsの
的確かつ迅速な情報源としてCCTVカメラ映像は非常に
MPEG-2によるフル動画でIPマルチキャスト配信して
有効である。また,図-10は,2002年8月に多摩川に出現
いる。
したアゴヒゲアザラシの姿である。偶然にもこの2枚の映
● システムの特徴
像は,同一の監視カメラが捉えたものであり,映像の持
本システムの特徴は,多種多様な映像情報の提供を,
(2)
つ速報性や表現力の高さを端的に示すものと言える。
IPマルチキャストを用いて効率良く実現したことに
本章で紹介する事例は,地方公共団体などの関連機関
ある。
との連携,放送事業者やインターネットなどを介した地
工事事務所と各出張所においては,全職員の机上のパ
域住民への情報提供を実現するものである。
ソコン(約200台)に,6 Mbpsの動画を提供している。
● システムの概略構成
Webコンテンツを閲覧する気軽さで現場状況の把握を可
本システムは,工事事務所と出張所間のイントラネッ
能としている。
トに加え,地域との相互接続ネットワークを構築したも
地域との相互接続ネットワークとしては,地方公共団
のである。
体や放送事業者などとの相互接続を行っている。地方公
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防災分野における映像アプリケーション
出張所
出張所
出張所
出張所
レイヤ2
スイッチ
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
IPエンコーダ
(IP-700)
操作端末
CCTV
カメラ
屋外型
河川表示板
カメラ制御サーバ
出張所
出張所
屋外型
河川表示板
レイヤ2
スイッチ
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
IPエンコーダ
(IP-700)
操作端末
CCTV
カメラ
カメラ制御サーバ
河
川
管
理
用
光
フ
ァ
イ
バ
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
河
川
管
理
用
光
フ
ァ
イ
バ
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
レイヤ2
スイッチ
操作端末
カメラ制御サーバ
出張所
出張所
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
レイヤ2
スイッチ
カメラ制御サーバ
出張所
出張所
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
IPデコーダ
(IP-700)
地方公共団体
地方公共団体
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
地域との相互接続
ネットワーク
放送事業者
放送事業者
放送
設備
カメラ制御サーバ
操作端末
CCTV
カメラ
L3-SW
レイヤ3
L3-SW
レイヤ3
F.W.
スイッチ
スイッチ
IPエンコーダ
(IP-700)
レイヤ2
スイッチ
レイヤ2
スイッチ
操作端末
CCTV
カメラ
TVモニタ
(水防司令室)
IPデコーダ
(IP-700)
操作端末
レイヤ2
スイッチ
レイヤ2
スイッチ
レイヤ2
スイッチ
放送事業者
放送事業者
放送
設備
Web
クライアント
IPエンコーダ
(IP-700)
操作端末
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
IPデコーダ
(IP-700)
CCTV
カメラ
画像Web
サーバ
レイヤ3
レイヤ3
スイッチ
スイッチ
TVモニタ
レイヤ2
スイッチ
CCTV
カメラ
Web
クライアント
IPエンコーダ
(IP-700)
操作端末
地方公共団体
地方公共団体
TVモニタ
Web
クライアント
IPエンコーダ
(IP-700)
カメラ制御
サーバ
画像Web 静止画
サーバ サーバ
Webクライアント
(職員机上PC)
工事事務所
工事事務所
図-11 関連機関,地域住民との連携の事例
Fig.11-Video distribution to TV stations and local governments.
共団体へは6 Mbpsの動画の提供に加え,防災目的の諸
進められている。また関係省庁や地方公共団体,地域社
情報をWeb画面などにより相互提供している。放送事業
会やインターネットを通じたよりグローバルな提供へと
者はIPデコーダ(IP-700)を介して得たNTSC映像を放
展開していくと考える。
送素材として使用している。また,駅前などの街頭に設
この場合,以下の課題が想定される。
置した屋外型の河川表示板では,コンテンツの一つとし
てライブ映像の提供を行っている。
(1) 広域になればなるほど,マルチベンダにおける映
像情報の相互接続性が要求される。
インターネットへの映像提供については,工事事務所
(2) 多くのカメラ映像による監視を行うに当たり,監
のイントラネット上のサーバでキャプチャした主要地点
視員の負担軽減のためにも画像処理における監視業
の10分更新静止画像を公開している。
務の効率化,蓄積システムの高度化,低価格化が必
● 整備効果と課題
要となってくる。
洪水などの緊急対応時に限らず,地域社会へ行政の役
(3) 光ケーブルが敷設されないところへのサービス提
割を伝える手段として大きな効果を上げている。
供方法や,ユビキタス社会向けラストワンマイルに
なお,河川空間は,平常時には住民の憩いの場として
おける無線LANの活用が必要となる。
も利用され,監視カメラの運用には,肖像権やプライバ
(4) ユーザ環境が多様化される中での適用方法(マシ
シーの権利への配慮が必要となる。運用ルールなどによ
ン性能,インフラ,ユーザスキルなど)を考慮する
る対策に加え,カメラ操作者への注意喚起機能や,シス
必要がある。
テム的な制限などの対策について,十分な検討と対策が
必要である。
富士通としての今後の展開
現在,災害映像の広域配信ネットワークの全国展開が
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(5) テレメータなどで観測した数値データとの連携や,
映像メタデータを用いた検索サービスなど,より高
度なサービス提供を実現する。
これらを踏まえ,より充実したサービスアプリケー
ションの開発を進めていきたい。
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防災分野における映像アプリケーション
む す び
生かしたものであるが,その可能性を十分に引き出した
ものではない。今後とも,新たな技術やサービスの適用
映像アプリケーションの具体的な適用事例として,国
に積極的に取り組み,日本の災害対策の進歩や防災行政
土交通省における防災分野の三つの事例を紹介した。河
の高度化に多少なりとも貢献していきたい。
川管理施設の広域運用は,映像,音声,数値データを統
合的に扱うことで,施設の遠隔操作の確実性や安全性を
参 考 文 献
考慮したものである。土砂災害監視向けVODシステム
(1) 国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室他:映像関連
は,数値データによる監視システムとの連携により,ア
システムの効果的な設計・運用に関する研究.国土技術研
ラーム事象発生時のスキップバック再生を可能としたも
究会論文集,2001.11.
のである。関連機関,地域住民との連携は,多様な相手
への映像情報の提供を実現しようとするものである。
(2) 国土交通省関東地方整備局京浜工事事務所:ホームペー
ジ.http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/
いずれも,IPネットワークで映像を扱うメリットを
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