PDF - 農林水産省

Ⅷ
水稲、麦、大豆に係る研究開発の推進状況
平成14年3月
農林水産技術会議事務局
Ⅰ
農林水産研究・技術開発の推進方向
○農林水産研究・技術開発の重点的・計画的な推進
(1)農林水産関係の研究・技術開発は、
①農林水産業・食品産業の生産性の向上
②農林水産物・食品の高付加価値化の要請
③さらには地球規模の人口・食料・環境・エネルギー問題
等に対処していく上で極めて重要である。
研究開発の政策的方向付け
食料・農業・農村基本計画
農林水産研究基本目標
〔今後10年間を見通した我が国の農林水産研究開発全体の目標〕
(2)このため、食料・農業・農村基本計画に沿って、今後10
年間を見通した「農林水産研究目標」を策定するとともに、
これを着実に達成していくため、今後5年間及び10年間の
具体的な達成目標水準と推進方策を明確化した「農林水産研
究・技術開発戦略」を取りまとめ(平成13年4月 )
、これ
に沿って、研究開発の重点的かつ計画的な推進を図っている 。
(3)研究・技術開発の基本的方向としては、
①品開発良、栽培技術の改善、機械化等の現場に直結した研
究
と
②ゲノム研究に代表されるバイオテクノロジー等の基礎的・
先端的研究
を両輪として、両者の密接な連携の下に推進していくこととし
ている。
研究・技術開発戦略
(研究開発の具体的な実行計画)
○
以下の主要技術分野ごとに今後5年間及び10年間で達成す
べき具体的目標水準等を明確化
①土地利用型農業
②園芸
③作物育種
④畜産
⑤ゲノム等先端
⑥環境
⑦食品
⑧農山漁村
⑨国際
⑩農業機械開発改良
○研究・技術開発戦略(土地利用型農業)における主要な達成目標の例
小
麦
大
豆
水
稲
Ⅰ期(平成17年度まで)
Ⅱ期(平成22年度まで)
めんの食感を改善した品種を早期に育
成
【製めん評点を現状より3点向上】
めんの色の改良により、ASWに匹敵する
高品質品種を育成
【製めん評点を現状より5点向上】
梅雨被害回避のため、早生品種と早播
栽培技術を早期に開発
農林 61号より1週間収穫期を
前進化
より早生で高品質の早播栽培に適した品種
の育成により、早播栽培技術を安定化
たん白含量の低い「タマホマレ」に代 機械化収穫適性を付与した高品質多収品種
わる高たん白品種を育成
を育成
【たん白含量 39%→ 44%】
【単収を 10 %向上】
稲発酵粗飼料用イネについて、可消化
養分総量(TDN収量)の高い品種を育
成
【TDN収量: 0.9t → 1.1t/10a】
TDN収量がとうもろこし並みのイネ発酵
粗飼料用イネ品種を育成
【TDN収量: 1.3t/10a】
(注)ここに掲げた数値目標は、試験研究段階での達成水準である。
1
2
○
国における水稲、麦、大豆に係る研究開発の推進状況(概要)
品種開発
水
稲
①直播適性品種
高出芽性、耐倒伏性、晩播適性等の形質を持つ品種開発
(例)どんとこい(H7)、いただき(H12)
②新形質米品種
低アミロース米、有色素米、低グルテリン米等新たな形質
を持つ品種開発
(例)ミルキークイーン( H7)、朝紫(H8)、エルジーシー1(H13)
③飼料稲(ホールクロップサイレージ用)品種
高TDN(可消化養分総量)収量で飼料価値が高い品種
開発
栽培技術(無農薬・減農薬等)
(1)殺菌・殺虫剤の低減を目指した総合的病害虫管理(IPM)技
術の開発
①水稲
病害虫抵抗性品種や微生物を利用した防除技術を開発
・いもち病、白葉枯病複合抵抗性品種「おきにいり(H8)
」を育成
・立枯れ細菌病、もみ枯細菌病を抑える微生物農薬を商品化
②麦及び大豆
病害虫抵抗性品種を中心とした技術開発
・縞萎縮病、雪腐病、うどんこ病複合抵抗性小麦「きたもえ(H12)
」を
育成
・モザイク病、シストセンチュウ複合抵抗性品種「ハタユタカ(H11)
」
を育成
・大豆作において、フェロモンを利用したカメムシ発生予察法を開発中
(例)関東飼 206 号、中国 146 号、中国 147 号(各 H13)
①小麦早生品種
収穫期の雨害回避のため、早生化しても収量がおちない品
種開発
(例)イワイノダイチ(H11 )
、あやひかり(H11)
②高品質品種
麦
アミロース含量が低く粘弾性に優れる小麦、精麦品質に優
れた六条大麦、ビール醸造適性に優れた二条大麦品種開発
(例)小
麦:ネバリゴシ(H12)
六条大麦:ファイバースノウ(H12)
二条大麦:スカイゴールデン(H12)
③パン用小麦品種
需要拡大を図るため高たん白小麦の品種開発
(例)ニシノカオリ(H11)
、はるひので(H12)
①用途別高品質品種
豆腐用として高たん白、煮豆、納豆用として食味や加工適
性に重点をおいた品種開発
大
(例)豆腐用:ハタユタカ(H11)、サチユタカ(H13)
豆腐・煮豆用:おおすず(H10)
納豆用:すずこまち(H13)
②機械化適性品種
コンバイン収穫に対応した、最下着莢位置が高く、難裂莢
豆 性、耐倒伏性が優れる品種開発
(2)除草剤の低減
①水稲種子を固定した再生紙マルチを代かき後の田面にカーペットのよう
に敷設する直播栽培技術を開発(実用化には低コスト・軽労化が課題)
②条間及び株間の機械的同時防除が可能な乗用型水田除草機を開発(H13)
③ヘアリーベッチ等アレロパシー植物を利用した水田における雑草防除技
術を開発中
(3)化学肥料の低減
①土壌中に過剰の窒素成分の溶出防止のため、植物の根の生育に応じ養分
が溶け出す根圏感応性肥料を開発中
②地力や生育状況をモニタリングし、これらの情報を基に、自動的に施肥
量の調節が可能な技術体系を開発中
③前作された窒素固定能力を有するマメ科植物をすきこむことで地力窒素
を補い、窒素肥料投入量を低減する緑肥植物導入による技術体系を開発
中
④家畜乾燥糞尿から、ペレット状にすることで養分の溶出速度の調節が可
能なペレット堆肥を開発(H10)
(例)ハヤヒカリ(H10)、ユキホマレ(H13)
③新規形質・高機能性品種
新規形質又は高い機能性成分を持つ品種開発
(例)青臭みのない品種エルスター(H12)
低アレルゲン品種ゆめみのり(H13)
○この他、省力化・低コスト・安定生産技術の開発に取り組んでいると
ころ(本文参照)
-3-
Ⅱ 国における水稲、麦及び大豆に係る研究開発の推進状況
1.品種開発
(1)水稲
ア 品種開発の方向性
①省力化を可能にする直播適性品種
②新たな需要拡大につながる新形質米品種
③畜産飼料の自給率向上と水田高度利用のための飼料稲品種
等の開発を目指し、取り組んでいるところ。
イ
研究の主要な成果と取組状況
①直播適性品種
高出芽性、耐倒伏性、晩播適性等、直播栽培に適応した形
質を持った品種開発を行っているところ。
○近年育成された主な直播適性品種
品種名
育成年
(育成地)
平成 7
(北陸)
どんとこい
いただき
平成 12
(北陸)
ミレニシキ
平成 12
(農研センター)
特性、適地等
中生の中、耐倒伏性強、いもち病抵抗性やや強、良質
・良食味。北陸・東北南部・関東以西向け。作付面積
5,500ha。
耐倒伏性強、葉いもち抵抗性やや強、穂発芽性難、良
食味、苗立ち良好。北陸、東北南部、関東以西向け。
作付面積 280ha
耐倒伏性強、葉いもち抵抗性強、穂発芽性難。温暖地
・暖地の平坦地向け。
○新形質米品種の例
これまでに、耐倒伏性が強く食味も良好である「どんと
こい」
( 平7)
、
「 いただき」
( 平12)
、
「 ミレニシキ」
(平12)
を育成。
②新形質米品種
粘りが強く冷めても食味が落ちない低アミロース米、血圧
降下成分を豊富に含む胚芽が大きい巨大胚米、抗酸化能を持
つポリフェノール等を多く含む有色素米、腎臓病患者向けの
低グルテリン米等の新たな形質を持つ品種の開発に取り組ん
でいるところ。
これまでに、低アミロース米として「ミルキークイーン」
(平7)、「たきたて」(平13)、巨大胚米として「はいみ
のり」(平11)、有色素米として「朝紫」(平8)
、「おくの
むらさき」(平12 )、低グルテリン米として「エルジーシー
1」(平13)等を育成。
巨大胚米「はいみのり」
○新たに育成された飼料稲品種のTDN含量の比較(日本晴比)
120
118
115
110
110
③飼料稲(ホールクロップサイレージ用)品種
畜産飼料の自給率向上と水田高度利用のために、飼料価値
の高い飼料用稲品種の開発に取り組んでいるところ。
112
T
D
N
収
量
(日本晴対比)
100
これまでに、TDN収量が従来品種に比べて1∼2割程
度高い「関東飼206号」、「中国146号」、「中国147
号」を育成(本年度中に命名登録される予定)。
4
有色素米(紫黒米)
「おくのむらさき 」
(うるち)と
「朝紫」(もち)
100
90
日本晴
タ
カ
ナ
リ 中国146
(昭 38 育 成)
( 平 2 育成)
5
中国147 関東飼206
( 平 13 育成)
注)TDN 収量:穂と茎葉に含ま
れる可消化養分総量の単位面
積当たり収量。
○小麦品種の成熟期と収量の変遷(九州)
収量 (2)麦
ア 品種開発の方向性
①収穫期の降雨による品質劣化を避けるための早生品種
②実需者ニーズに対応した高品質品種
③新たな需要拡大につながるパン用品種
等の開発を目指し、取り組んでいるところ。
450
(kg/10a)
400
●
イワイノ
ダイチ
昭 和49年 ∼
平成6年育成
●
チクゴイズミ
昭和 19年育成
(
早播)
●
●
シロガネ
コムギ
350
イ 研究の主要な成果と取組状況
①早生品種
収穫期の雨害の回避や稲麦二毛作地帯における田植作業との
競合を回避するため、早生化しても収量が低下しない小麦品種
の開発に取り組んでいるところ。
これまでに、「農林61号」より1週間早期収穫できる
「イワイノダイチ」(平成 11 年)、2日程度早い「あやひか
り」(平成 11 年)等を育成。
平成12年育成
農 林61号
5/27 6/1 6/6 (成熟期)
○小麦の製麺適性と収量向上の推移
②高品質品種
麦の民間流通への移行等に対応し、消費ニーズに対応した高
品質品種の開発に取り組んでいるところ。
これまでに、アミロース含量が低く、めんの粘弾性と滑
らかさが優れる「あやひかり」(平成 11 年)、「ネバリゴシ」
(平成 12 年)等の小麦品種、精麦品質に優れた六条皮麦
「ファイバースノウ」(平成 12 年)、ビール醸造適性に優れ
た二条大麦「スカイゴールデン」(平成 12 年)等を育成。
○パン用品種「ニシノカオリ」のたん白含量
③パン用品種
地産地消の動きに対応し、小麦の需要拡大を図る観点から高
たん白小麦品種の開発に取り組んでいるところ。
これまでに、「ニシノカオリ」(平成 11 年)、「はるひの
で」(平成 12 年)、「ハルイブキ」(平成 13 年)等を育成。
6
7
(3)大豆
ア 品種開発の方向性
①消費ニーズに対応した用途ごとの高品質品種
②低コスト生産に向けた機械化適性品種
③新たな需要拡大につながる新規形質・高機能性品種
等の開発を目指し、取り組んでいるところ。
○近年育成された品種(豆腐用)の収量とたん白含量
46
サチユタカ(平13年育成)
45
蛋 44
白 43
含
量 42
お お す ず (平 1 0 年 育 成 )
(東北)
︵
% 41
(北海道)
オクシロメ(昭47年育成)
︶
イ 研究の主要な成果と取組状況
①用途別高品質品種
豆腐用として高たん白、煮豆や納豆用として食味や加工適性
に重点をおいた品種開発に取り組んでいるところ。
これまでに、豆腐用として「ハタユタカ」
(平成 11 年)
、
「サチユタカ」(平成 13 年)、豆腐・煮豆用として「おおす
ず」(平成 10 年)、納豆用として「すずこまち」(平成 13
年)等を育成。
ハタユタカ(平11年育成)
(西南暖地)
スズユタカ(昭57年育成)
40
タマホマレ(昭55年育成)
39
38
240 250 260 270 280 290 300 310 320 330
子 実 収 量 (kg/10a)
○近年育成された機械化適性品種(北海道)の特性比較
②機械化適性品種
コンバイン収穫に対応した、最下着莢位置が高く、難裂莢性
で耐倒伏性が優れる等の機械化適性品種開発に取り組んでいる
ところ。
これまでに、「ハヤヒカリ」(平成 10 年)、「ユキホマレ」
(平成 13 年)等を育成。
③新規形質・高機能性品種
青臭みが少ない、低アレルゲン等の新規形質をもった大豆や
抗酸化能が高いサポニン等を多く含む大豆の開発に取り組んで
いるところ。
これまでに、青臭みの少ないリポキシゲナーゼ欠失大豆
「エルスター」
(平成 12 年 )、低アレルゲン品種「ゆめみのり」
(平成 13 年)を育成。
また、動脈硬化を防ぐサポニンや細胞のガン化を抑制す
るイソフラボン含量の高い品種を育成中。
8
育成
品種名
年度
最下着莢位置
耐倒伏性
難裂莢性
ユキホマレ
平成13年
○
○
○
ハヤヒカリ
平成10年
△
○
○
トヨコマチ
昭和63年
○
○
×
トヨムスメ
昭和60年
△
○
×
キタムスメ
昭和43年
○
△
×
○新規形質・高機能性大豆品種の特性と主要な用途
品種名
特性
主な利用用途
製品の例
エルスター
リポキシゲナーゼ欠失 青臭みの少ない豆乳を用いた食品 豆乳・
プリン・冷菓など
ゆめみのり
低アレルゲン
大豆アレルギー患者向けの食品
煮豆、納豆、味噌など
東北126号
高イソフラボン
健康食品
豆腐など
9
2.栽培管理技術
○ IPM の概念
生物的防除(天敵、有用微生物等)
耕種的防除(抵抗性品種等)
化学合成農薬
発生予察法の確立
経済的被害許容水準以下に管理
イ 除草剤の低減
①再生紙マルチ水稲直播栽培技術の開発
再生紙マルチに水稲種子を固定した「再生紙マルチ直播シ
ート」を代かき後の田面にカーペットのように敷設する直播
栽培法を開発。育苗・田植・除草剤散布が不要であるが、実
用化に向けては、低コスト・軽労化が課題。
物理的防除(熱水消毒等)
適切な防除のための 組合せを選定
②麦及び大豆
病害虫抵抗性品種の開発を中心に取り組んでいるところ。
これまでに、
・縞萎縮病 、雪腐病 、うどんこ病複合抵抗性小麦「 きたもえ 」
(平成12年)を育成。
・モザイク病・シストセンチュウ複合抵抗性大豆「ハタユ
タカ 」(平成 11 年)を育成。
・大豆作において、集合フェロモンを利用したカメムシ類
の発生予察法を開発中。
IPM とは、化学合成農薬のみならず、農薬によらない物理
的、生物的、耕種的防除法を適切に組み合せ、被害を経済
的に許容しうる水準に管理する技術体系
農薬によら
ない防除技術
(1)減農薬等低投入栽培技術
ア 殺菌・殺虫剤の低減を目指した総合的病害虫管理(IPM )
技術の開発
①水稲
病害虫抵抗性品種や微生物を活用した防除技術等の開発に
取り組んでいるところ。
これまでに、
・いもち病、白葉枯病複合抵抗性稲「おきにいり 」(平成
8年)を育成。
・立枯れ細菌病、もみ枯細菌病を抑える微生物農薬を商品
化 (( 独 ) 農業技術研究機構とセントラル硝子が共同開発 、
平成 13 年 )。
(
気象情報等に基づく発生時期・
発生量の予測 等)
○再生紙マルチの敷設と効果
写真1
直播シートの敷設作業
写真2
雑草抑制効果
「再生紙マルチ直播種シート」を代かき
初中期一発除草剤には劣るものの、実用
後のほ場に敷設するだけで作業が終了す
上は十分な効果があり、除草剤が不要。
る。育苗・田植えは不要。
○水田除草機
②水田除草機の開発
条間及び株間の機械的除草を同時に行うことのできる乗用
型の高精度水田用除草機を開発し実用化段階(平成13年、
生研機構が開発 )。
③アレロパシー植物を利用した雑草防除技術の開発
水田における除草剤使用の低減を目指して、雑草の生育抑
制物質を排出するヘアリーベッチ(マメ化の蔓性植物)等の
アレロパシー植物を利用した栽培体系を検討中。
10
条間を回転ロータで、株間を揺動レーキで除草する。作業能率は、3条用
歩行型に比べ約5倍。
11
ウ
化学肥料の低減
①肥効調節型肥料の開発
土壌中に過剰の窒素成分が溶出するのを防止するため、肥
料成分のまわりを包む資材を工夫することによって、植物の
根の生育に応じて養分が溶け出すようにした根圏感応性肥料
等の開発に取組んでいるところ。
(イ)ペレット堆肥の開発
化学肥料投入量の低減と家畜糞尿の有効利用を目指し、
家畜乾燥糞を原料としてペレット状に整形したペレット堆
肥を開発(平成10年 )。ペレット状にすることで養分の
溶出速度は抑制され、硝酸態窒素の流亡量も低減できる。
また、異なる家畜種の糞の混合比率を変えることで窒素肥
効の調節が可能。
③精密農業技術の開発
地力や作物生育状態をモニタリングし、これらの情報をも
とに、自動的に施肥量を調節しながら施肥する技術体系の開
発に取り組んでいるところ。
○ペレット堆肥の形状
アレロパシー植物
②有機物の利用技術
(ア)緑肥作物の導入
窒素固定能のあるマメ科植物等を前作として栽培し、そ
のまますき込むことで地力窒素を補い、窒素肥料の投入量
を低減する技術開発に取り組んでいるところ。
また、窒素を補う目的の他に、土壌病害虫の低減やアレ
ロパシーによる雑草防除効果を併せ持つ緑肥植物の実用化
研究にも取り組んでいるところ。
○アレロパシーの検定
検定植物
アレロパシー植物に近づく
につれ、検定植物の根の伸
長が抑制されているのがわ
かる
写真(直径約 9mm、長さ約 3cm
○精密農業技術の概念図(施肥の場合)
人工衛星
位置情報
位置情報
車載コンピュータ
作物生育情報
葉色センサー
診断情報(処方箋)
ほ場内の養分状
態のばらつき等
の面的情報
肥料投入量
を制御
スポット施肥
土壌情報センシング
12
GPS受信機
肥料不足
13
(2)省力化・低コスト・安定生産技術
○代かき同時土中点播直播機の仕組
酸素発生剤を粉衣
した籾を回転ディ
スクで加速し、代
かきと同時に土壌
に打ち込み播種
する。1cm 前後の
播種深の確保と株
形成により良好な
苗立ちと耐倒伏性
が得られる。
ア
水稲の直播栽培技術
水稲生産の省力・低コスト化が期待される直播栽培におい
て、苗立ちを安定化し、耐倒伏性を強化する技術開発に取り組
んでいるところ。
これまでに、「代かき同時土中点播直播機」(平成11年)
とこれに対応した栽培技術の開発に取り組んできたところ。
(直播栽培面積:平5;7,200ha →平13;10,000ha )
イ
小麦の早生化・早期収穫技術
収穫期の雨害による品質の低下を回避するため、早播による
早期収穫技術の開発に取組んでいるところ。また、春播小麦の
根雪前播種による多収穫技術に取り組んでいるところ。
これまでに、最近育成した品種の早生化を最大限に発揮さ
せるための早播栽培技術を開発。新品種イワイノダイチは、
標準播種(11 月下旬)より 20 日早播することで既存品種よ
り1週間早く収穫が可能。また、春播小麦を秋の根雪前に簡
易な耕耘法(チゼル耕)を用いて播種することで、生育期間
を長くし、早生化と多収が可能。
大豆の不耕起播種技術
作業時間を大幅に短縮し、梅雨期の土壌水分が高い場合でも
播種可能な「不耕起播種技術」体系の確立に向けて取組んでい
るところ。
これまでに、不耕起播種栽培での密植による多収化技術を
開発。また、密植栽培により雑草の発生を抑え、中耕培土の
省略を可能にする不耕起狭畦無中耕栽培についても取組中。
○イワイノダイチの早播栽培技術
12 日
被害
ウ
イワイノダイチは、既存品種より茎の伸び始める時期(茎
立期)が遅いため、早播栽培により凍霜害に遭う危険が少
なくなり、また、梅雨前に成熟するため早期収穫と安定生
産が可能
○ハイクリアランス型立毛間播種機
小麦の立毛中に大豆を畦
間に播種
エ
小麦−大豆輪作のための立毛間播種技術
寒冷地において、小麦−大豆の作業の競合を回避し、2年3
作の栽培を可能にする栽培技術の開発に取組んでいるところ。
これまでに、ハイクリアランス型立毛間播種機により、小
麦の畦間に大豆を、大豆の畦間に小麦を播く立毛間播種技術
(平成10年)等を開発。
14
15
Ⅲ
都道府県における研究開発
1.研究開発の取組状況
(1)品種開発
米については、地域条件に適応した良食味品種の開発、ま
た、麦及び大豆については、一部の県において地産地消等の
消費ニーズと地域条件に適応した品種の開発が行われてい
る。
(2)栽培技術の開発・改良
省力化・低コスト・安定生産の観点から、各県において、
各地域に設置された国の試験研究機関(平成13年4月以降
独立行政法人農業技術研究機構)との密接な連携の下で、こ
れまでの国の研究成果も活かしつつ、地域条件に応じた栽培
技術の開発・改良が行われているところ。
2.研究開発の取組の推進
(1)国として、都道府県における研究開発の取組を推進するた
め、
①地域の基幹となる技術体系を確立するため、複数県が連携
・協力して行う総合的な研究
②バイオテクノロジー等先端的な研究成果を迅速かつ効率的
に都道府県に技術移転するため、県と民間企業等が連携・
協力して行う研究
に対し、助成を行っているところ。
(2)また、平成14年度からは新たに、行政ニーズに的確に対
応するとともに、地域の技術シーズを活用した研究開発の推
進と研究成果の現場への迅速な普及を図るため、競争的な研
究制度(農林水産研究高度化事業)を創設したところ。
16
○
都道府県より開発された主な品種(例)
( 水稲)
・耐冷性強の良食味品種:「 あきほ」(平8、北海道)
・高温登熟性を持った極良食味品種:
「こしいぶき」(平11、新潟)
・極早生の良食味品種「夢つくし」(
: 平5、福岡)
(麦)
・めん用小麦品種「つるぴかり」(平成8、群馬)
・讃岐うどんに適した小麦品種「さぬきの夢 2000」(平成 12、香川)
(大豆)
・早熟、良質安定多収の青大豆「あきたみどり」(平成 10、秋田)
・豆腐加工適性に優れた「むらゆたか」(平成2、佐賀)
○
都道府県が取り組んでいる栽培技術の研究課題(例)
・水稲点播直播を基幹とした暖地水田高度輪作技術
(平成9∼ 13 年:福岡県、熊本県、大分県、鹿児島県)
・寒冷地における立毛間播種機利用による麦・大豆輪作栽培技術
(平成 13 ∼ 17 年:岩手・宮城・山形)
・四国地域の稲・野菜(レタス)・大豆2年三毛作における作業競合
軽減技術の開発
(平成 12 ∼ 15 年:香川県、愛媛県)
○
農林水産研究高度化事業の仕組(H14新規)
農林水産省では、現場に密着した農林水産分野の試験研究の迅速な推進を図るため、平
成 14 年度から新たに提案公募型の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」を実施
することとなりました。
研究課題は、産学官連携による研究グループから公募し、採択された案件に対し委託研究
を行います。
行政ニーズに
対応した研究
地域の技術シーズを
活用した研究
<新たな競争的資金の創設>
生産現場に密着した農林水産分野
の試験研究の推進
産
学
官
の
連
携
先端技術を活用した農林水産
研究高度化事業
17
Ⅳ
研究成果の生産現場への移転
(1)品種開発については、開発から普及まで長期間を要するこ
とから、生産現場への普及に要する期間を短縮する観点から、
開発のできるだけ早い段階から実需者評価を取り入れるとと
もに、品種に適応した栽培技術の開発等に取り組むことに努
力しているところ。
(2)新しい品種や栽培技術の開発成果を円滑に生産現場に普及
するために、都道府県農業試験場や普及組織との連携の下に、
実用規模での新品種の特性評価や栽培技術の確立に資する現
地実証ほを設置するとともに、品種ごとの栽培技術マニュア
ルを作成しているところ。
また、消費者、実需者を対象に 、
(独)農業技術研究機構の
各地域農業研究センター(全国5カ所)において、新品種に
よる生産物や加工品の試食会等を行うイベントを開催してい
るところ。
(3)研究開発の成果については、農林水産省や独立行政法人の
ホームページを通じ、インターネット上で幅広く公表すると
ともに、稲、麦、大豆、飼料作物については 、(独)農業技
術研究機構の各地域農業研究センターに窓口を設置し、各種
相談に対応することとしているところ。
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○
品種の開発・普及の加速化の例(麦新品種開発における取組)
育種の段階から実需者評価、栽培法の改善、種子増殖を行い、
品種育成後、速やかに農家での実用栽培を実施
これにより生産現場へ普及する期間が2∼3年短縮
品種
育成
実需者による
品質評価
品種特性に応じた
栽培技術の開発
配布用種子の
増殖
産地毎に実証栽培(実需者による品質評価)
実需者ニーズに応じた本格生産
○普及センターにおける展示実証ほの設置数
(平成12年度、単位:ヶ所)
全
設 置 数
体
22, 997
水稲
畑作
野菜
果樹
その他
7, 649
2, 655
6, 627
2, 579
3, 487
○新しい品種及び技術の普及の取組事例
地
域
取 組 内 容 等
新技術・品種
三 重 県 小 麦 新 品 種 ○地域特産物「伊勢うどん 」の新たな原料として 、市 、
Y 市 、 「あやひかり 」
JA、農家組合、県製麺協同組合等が協力して 、
「あ
K町
やひかり 」の実証栽培を実施(平成 12 年播き:17.2ha)。
○普及センター、県農業技術センター、JAが連携し
て現地指導、栽培講習会等の技術指導を実施。
○製粉性・製麺性の優性が確認され、平成 13 年播きで
約 93ha まで面積を拡大。
福島県
A町
湛水直播
・代かき同時
土中点播直
播機
・落水出芽法
○省力・低コスト化を図る栽培技術として 、無人ヘリ、
代かき同時土中点播直播機、落水出芽法等を用いた
水稲直播の実証栽培を実施。
○普及センター、県農業試験場、JAが連携して栽培
技術の検討、栽培マニュアルの作成・配布、現地指
導を実施
○労働時間と生産費の大幅削減、収量安定性が確認さ
れ、H13 の直播栽培面積は地域全体で 214 ha に拡大
(H8:78ha )。
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