事業者のリスク情報活用への取り組み 平成22年10月7日 電気事業連合会 原子力開発対策委員会 総合部会長 東京電力株式会社 常務取締役 小森 明生 電気事業連合会 The Federation of Electric Power Companies 1 1.安全確保活動におけるリスク情報の活用 災害防止上支障がない=リスクが抑制された状態 原子力安全上の問題: 新知見や社会環境の変動等により変化 →リスク情報により体系的に捕捉・分析が可能 リスク情報から得られる安全上の特徴の把握(見える化)、 それに基づく対応を可能とする設備対応、技術力の維持、 体制整備が重要 国民の代理人たる規制当局: 事業者のリスク抑制活動を把握し対応することが重要 電気事業連合会 The Federation of Electric Power Companies 2 2.リスク情報活用の特徴 新知見に基づく 安全裕度の拡充 新知見に基づく 安全裕度の見直し 確率論で確認可能な 安全レベル 安全 裕度 守るべき 安全レベル 現在 の姿 事業者として確保 すべき安全レベル 安全 裕度 決定論をベースとした設計等 (単一故障、外部電源無し等) により手当てされている領域 設計段階:決定論に基づく設計の基本方針の妥当性確認 →様々なリスクに対し安全裕度は最適化されていない 運転段階:確率論に基づく安全裕度(安全上の特徴)の把握 →得られた”リスク情報”は、効果的な安全確保活動に活用可能 確率論は効果的な安全確保・最適な資源配分に有益な情報を提供 電気事業連合会 The Federation of Electric Power Companies 3 3.これまでの取り組み 主として設計段階の取り組み(これまで) ○ABWRやAPWR:新炉型の安全設計 ○アクシデントマネジメント(AM)の整備 主として運転段階の取り組み(現状) ○保全重要度へのリスク重要度の考慮 リスク重要度高 リスク重要度低 ① ③ ② ④ 安全重要度高 安全重要度低 ②(安重低・リスク高)の保全重要 度を低から高に変更するのみ リスク情報活用として未成熟 電気事業連合会 ○プラント停止時におけるリスク管理 一部の電力にてリスク情報の活用 と して先行実施 The Federation of Electric Power Companies 4 4.先進的な活用例(米国の事例) ○国民的な合意のもとリスク情報活用を推進 リスク情報活用政策声明書(60FR42622,Aug.16,1995年) 規制プロセスの3つの分野の改善に寄与 確率論的安全評価の使用により高度化される安全判断 NRC(規制当局)の資源の有効活用 許認可取得者に対する不要な負荷の軽減 ○リスクとパフォーマンスに基づく保全の導入 保守規則の制定(10CFR50.65、1999年改訂時) 保守の内容ではなく機器のパフォーマンスと プラントのリスクを監視 ○機器分類にリスク情報を活用 安全クラスの見直し(10CFR50.69、2004年) 安全-非安全(2クラス) →リスク情報を活用した4クラス 米国での重要度分類の見直し ①~④の安全上のグレードを考慮し て設備の保守管理の方法等を決定 リスク重要度高 リスク重要度低 ① ③ ② ④ 安全系 非安全系 単なるリスク情報付加ではなく、規制・事業者双方の資源配分適正化を志向 電気事業連合会 The Federation of Electric Power Companies 5 5.リスク情報活用の促進に向けて リスク情報の活用=規制当局、事業者も含む国民経済全 体の利益につながるとの理解 こうした理解のもと、安全確保活動における資源配分を適 正化 リスク情報のバランスを欠いた活用=上記の利益を阻害 するおそれ 以上の認識を社会全体で共有し、利益を享受できるよう 理解促進を図るとともに、産官学の連携が重要 事業者における活用の方向性:運転管理段階における安 全確保活動(運転中保全の本格化に向けたリスクモニタ の準備、供用期間中検査の高度化) 電気事業連合会 The Federation of Electric Power Companies 6 【参考】 現在実施している基盤整備 項目 PSAモデル改善 活用範囲の 拡大に寄与 状況 ・内的事象・外的事象のPSAモデルの構築・ 改善・標準化 ・順次原子力学会標準を整備 中 ・運転中保全実施時のリスク把握、安全管理 等を目的とした運転時リスクモニタの整備 ・運転時リスクモニタ:電事連 リスクモニタ整備 で導入目標を定め順次導入 ・プラント停止中の安全管理を目的とした停 止時リスクモニタの整備 故障率データ ベース整備 品質向上 に寄与 具体的実施事項(例) ・国内データ、個別プラントデータの採取等、 ・国内データはNUCIAが活 用可能 より精度の高いPSAを目指した国内データ ベースの整備 •個別プラントデータを整備中 ・PSAの品質確保を目的としたピアレビュー ビアレビュー実施 (日本原子力技術協会(JANTI)のガイドラ インに準拠) 電気事業連合会 ・実施中 The Federation of Electric Power Companies 7 【参考】 設計段階でのリスク情報の活用事例 ○ABWRの設計 LOCA TC 高圧注水・ 減圧失敗 格納容器 除熱失敗 TB 格納容器 除熱失敗 LOCA TB 高圧注水・ 減圧失敗 •高圧注水と減圧に失敗し炉心損傷 →高圧注水のECCSを2台から3台に •格納容器からの除熱に失敗し炉心損傷 →格納容器除熱に用いる熱交換器を2台 から3台に 炉心損傷頻度を約1/10に低減 TQUV BWR-5 TQUV ABWR ○AMの整備 LOCA TC TW TB TQUX TQUV BWR-5(AM前) 電気事業連合会 炉心健全 •止める機能(制御棒挿入機能の強化等) •冷やす機能(補給水系等による注水等) •閉じ込め機能(耐圧強化ベント等) •電源機能(隣接号機からの電源融通) 炉心損傷頻度を約1/10に低減 BWR-5(AM後) The Federation of Electric Power Companies 8
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