1093KB pdfファイル - 新城市

新 城 市 水 道 ビ ジ ョ ン
みちしるべ
【信頼される水道の道標】
広大な緑のダムが造り出す本市の水源
愛
知
県
新
城
市
平 成 2 0 年 5 月
目 次
Ⅰ はじめに ……………………………………………………………
1
Ⅱ 事業の現状分析・評価
1 新城市水道事業のあゆみ …………………………………………
2
2 給水区域と水道の普及状況 ………………………………………
4
3 水需要と水源 ………………………………………………………
6
4 浄水処理と浄水水質 ……………………………………………… 10
5 送・配水施設 ……………………………………………………… 12
6 維持管理 …………………………………………………………… 14
7 経営状況 …………………………………………………………… 16
Ⅲ 将来像の設定
1 水道事業の将来像 ………………………………………………… 19
Ⅳ 目標期間内における達成すべき施策
1 運営基盤の強化・顧客サービスの向上 ………………………… 20
2 安心・快適な給水の確保 ………………………………………… 22
3 災害対策などの充実 ……………………………………………… 23
4 環境・エネルギー対策 …………………………………………… 24
Ⅴ 施策の具体的な方針
1 運営基盤の強化・顧客サービスの向上 ………………………… 25
2 安心・快適な給水の確保 ………………………………………… 26
3 災害対策などの充実 ……………………………………………… 27
4 環境・エネルギー対策 …………………………………………… 27
Ⅵ 実施目標と施策内容
1 運営基盤の強化・顧客サービスの向上 ………………………… 28
2 安心・快適な給水の確保 ………………………………………… 31
3 災害対策などの充実 ……………………………………………… 34
4 環境・エネルギー対策 …………………………………………… 37
Ⅰ
はじめに
新城市は、平成 17 年 10 月1日に新城市・鳳来町・作手村の3市町村が新設
合併し、新たな歴史を歩み始めたところで、水道事業についてもその運営を大
きく変えようとしています。
水道事業は、昭和 34 年8月に給水を開始し、以来、人口の増加や生活様式の
変化による水需要の伸びと給水区域の拡大に併せた段階的な拡張事業を実施し
てきました。また、安定給水を図るため老朽施設の更新事業を実施しています。
平成 16 年6月、国は水道の現状と将来見通しを分析・評価し、水道のあるべ
き将来像について各水道事業者が共通目標を持って、その実現のため具体的な
施策や工程を包括的に示すための「水道ビジョン」を発表しました。さらに平
成 17 年 10 月には「水道ビジョン」に示された各種施策などが各水道事業者に
おいて着実に実施されるよう「地域水道ビジョン」の策定を求めています。
本市においては、これを受けて新たな視点に立った「新城市水道ビジョン」
を策定しました。
「新城市水道ビジョン」は、これまでに培われてきた各地区の特長を最大限
に活用するとともに、気象状況や生活様式など、水道事業を取り巻く環境の変
化に対応した本市にふさわしい新たな水道事業を推進するための【信頼される
みちしるべ
水道の 道 標 】としたいと考えています。
本ビジョンでは、平成 20 年度から平成 28 年度までを計画期間とし、水道事
業が抱えている課題に対する基本的な方針や将来像の実現に向けた各種施策な
どを定めております。
今後は、本ビジョンの実現に向けて計画の着実な事業進捗を図ることにより 、
「安全な水を安定的に供給する」という目標を目指し、市民(顧客)の皆様が水
道に満足していただけるよう努めてまいります。
-1-
Ⅱ
事業の現状分析・評価
1
新城市水道事業のあゆみ
(1)上水道地区
新城地区の*1上水道(事業)は、昭和 32 年度に創設認可を受け、昭和 34 年8
月に鰹淵浄水場から給水を開始しました。その後、産業経済の発展による人口
増加や生活様式の向上に伴い、段階的に事業の拡張を実施し、平成 17 年3月に
第6期拡張(その3)事業の認可を受け現在に至っています。
表-1.上水道の計画給水人口と計画 1 日最大給水量
称
計画給水人口
(人)
計画1日最大給水量
(m3/日)
新城市上水道
36,900
16,100.0
地区名
新城地区
名
(2)簡易水道地区
簡易水道(事業)は、昭和 27 年度に鳳来地区の川合簡易水道と大野簡易水
*2
道が創設され、その後の社会経済の急成長による生活様式の変化に伴い、鳳来
地区では 10 簡易水道、作手地区では2簡易水道が創設されました。
現在は、大野簡易水道の拡張整備事業および作手南部簡易水道の基幹改良事
業を実施し、普及率の向上と、より安全で安定的な水道水の供給に努めていま
す。
表-2.簡易水道の計画給水人口と計画 1 日最大給水量
地区名
鳳来地区
作手地区
名
称
鳳来中央簡易水道
北部簡易水道
鳳来峡簡易水道
東部簡易水道
南東部簡易水道
鳳来南部簡易水道
西部簡易水道
川合簡易水道
大野簡易水道
池場簡易水道
作手中央簡易水道
作手南部簡易水道
創設
年度
S36
S51
S47
S58
S56
S60
H2
S27
S27
H17
S53
S58
-2-
計画給水人口 計画1日最大給水量
(人)
(m3/日)
4,000
2,210.0
2,861
1,620.0
1,210
1,972.0
379
85.4
636
367.6
2,340
950.0
1,164
524.0
596
249.5
1,722
1,000.0
105
32.6
2,781
1,330.0
686
172.6
(3)その他水道地区
本市北部地域に散在する小集落について、鳳来地区では昭和 57 年度以降に恩
原簡易給水施設をはじめ 10 施設を、作手地区では昭和 60 年度に作手用水施設
を設置しました。
施設管理については、恩原簡易給水施設はじめ 10 施設は指定管理者である地
元管理組合が行い、作手用水施設は市の直営によりそれぞれ安全な飲料水の供
給に努めています。
表-3.簡易給水施設および用水施設の計画給水人口と計画 1 日最大給水量
地区名
鳳来地区
作手地区
名
称
創設
年度
恩原簡易給水施設
水ノ口簡易給水施設
中下島田簡易給水施設
北平簡易給水施設
上島田簡易給水施設
黒沢簡易給水施設
大林簡易給水施設
山中簡易給水施設
恩原下簡易給水施設
大代簡易給水施設
作手用水施設
S57
S61
S61
S61
H3
H3
H4
H4
H7
H12
S60
-3-
計画
給水人口
(人)
25
25
43
48
35
22
47
40
38
68
56
計画
1日最大給水量
(m3/日)
5.0
5.0
8.6
9.6
7.0
4.4
9.4
8.0
9.5
17.0
11.2
2
給水区域と水道の普及状況
(1)給水区域
本市水道事業の現状は、人口密集地である新城地区を上水道により給水し 、
森林豊かな鳳来地区・作手地区は、住居地区に合わせた 12 簡易水道と、10 簡易
給水施設、1用水施設により給水しています。
-4-
(2)*3水道普及率
上水道、簡易水道、簡易給水施設および用水施設を含めた全体の普及率は 、
平成 18 年度末現在で 98.88%となっています。
また、地区別の状況では、新城地区と鳳来地区においては 99%を超える高い
水準でありますが、作手地区においては 89.01%と低くなっています。
表-4.水道の普及状況
地区
項目
新城市
新城地区
鳳来地区
作手地区
A.行政区域内人口(人) B+G 計
53,141
36,645
13,339
3,157
B.行政区域内給水人口(人) C~F 計
52,546
36,469
13,267
2,810
36,469
36,469
0
0
15,686
0
12,920
2,766
347
0
347
0
44
0
0
44
595
176
72
347
98.88%
99.52%
99.46%
89.01%
C.上水道(人)
内 D.簡易水道(人)
訳 E.簡易給水施設(人)
F.用水施設(人)
G.その他(人)
H.水道普及率(%) B÷A
(平成 18 年度末現在)
【現状課題】
上水道区域とその区域に隣接する簡易水道、簡易給水施設や用水施設の事業
統合や未普及地域の解消や普及率の向上対策などの検討が必要です。
-5-
3
水需要と水源
(1)水需要の動向
給水人口は、新城地区では横ばいの傾向を示していますが、鳳来地区では減
少、作手地区については普及率の増加により微増する傾向にあります。
給水量については、節水思想や節水型機器の普及、生活様式の変化、工場な
どの水の循環利用などにより、新城地区では微増、鳳来、作手地区では微減、
全体では横ばいの状況となっています。
新城市水道事業全体の実績および推計
65,000
30,000
60,000
25,000
55,000
20,000
50,000
15,000
45,000
10,000
40,000
5,000
35,000
0
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
年度(平成)
給水区域内人口
給水人口
1日平均給水量
4
-6-
1日最大給水量
水量(㎥/日)
人口(人)
実績 | 推計
(2)水源の状況
①
種別
本市の水源は、愛知県水道用水供給事業(県水)からの受水と自己水源に大
別され、自己水源としては河川の*5表流水、*6伏流水および*7地下水に分類されま
す。県水受水点2箇所と自己水源 32 箇所の水源を確保し、安定取水に努めてい
ます。
表-5.水源の状況
水源種別
自己水源
表流水
伏流水
地下水
小計
愛知県水道用水供給事業
計
②
水源数
(箇所)
25
1
6
32
2(受水点)
34
水量
(㎥/日)
12,327.5
5,320.0
2,896.0
20,543.5
9,880.0
30,423.5
水量
現在、確保している水源水量は、30,423.5 ㎥/日で、計画1日最大給水量
24,770 ㎥/日や、平成 18 年度の1日最大給水量の実績値 22,021 ㎥/日に対し
ていずれも上回っています。
しかし、近年は少雨化傾向にあり、そのため渇水時にはその影響で表流水、
伏流水などで取水規制が生じることがあります。こうしたことから、非常時に
も安定した給水ができるように地下水の確保に取り組んでいます。
愛知県水道用水供給
事業9,880.0㎥/日
32%
地下水2,896.0㎥/日
10%
伏流水5,320.0㎥/日
17%
計30,423.5㎥/日
表流水12,327.5㎥/日
41%
-7-
②
原水水質
本市の自己水源である河川の表流水と伏流水および地下水の水質は、比較的
良好な状態です。
しかし、周辺の環境の変化による水質の変化が一部で確認されており、塩素
滅菌のみの浄水処理では対応が困難となってきたことから適正な浄水処理およ
び水質監視の強化に向け取り組んでいます。
表-6.各水源の注意すべき水質項目
地区名
種別
水源
注意すべき水質項目
新城地区
伏流水
豊川水源
濁度、農薬
表流水
市川水源
濁度
市川第2水源
濁度
野田1号井
硝酸態窒素、蒸発残留物
野田2号井
硝酸態窒素、蒸発残留物
野田3号井
硝酸態窒素、蒸発残留物
八名井1号井
硝酸態窒素、蒸発残留物
八名井2号井
硝酸態窒素、蒸発残留物
八名井3号井
硝酸態窒素、蒸発残留物
黄柳川水源
濁度、アンモニア態窒素、農薬
豊川水源
濁度、農薬
竹桑田沢水源
濁度、農薬
谷川水源
濁度
槙原水源
濁度、色度
黒沢水源
濁度
大島川水源
濁度
夏沢水源
濁度
漆川水源
濁度
赤峰沢水源
濁度
浦梨沢水源
濁度
白倉川水源
濁度、色度
栃沢水源
濁度
大六水源
濁度
鉛山水源
濁度
阿寺川水源
濁度
西沢川水源
濁度
作手第2水源
濁度
作手第3水源
濁度
作手第4水源
濁度
作手第5水源
濁度
作手第6水源
濁度
南部第1水源
濁度、アルミニウム、鉄
浅井戸
鳳来地区
作手地区
表流水
表流水
-8-
【現状課題】
現在確保している水源の中で、水量の安定性や水質について注意すべき水源
は、改修、更新、廃止を検討したり、災害時や渇水時に対応できるよう水源水
量の確保についても検討が必要です。
さらに安全・安心な水を供給するため、定期的な水源監視の強化について検
討が必要です。
作手第2水源
堰堤
白倉川水源
-9-
ウォータースクリーン
4
浄水処理と浄水水質
本市の浄水施設は、*8膜ろ過方式・*9急速ろ過方式・*10緩速ろ過方式で処理する
施設が 20 箇所、*11塩素消毒で処理する施設が 1 箇所あり、全体で 21 施設です。
また、新城地区では愛知県水道用水供給事業が、急速ろ過方式により浄水処
理した水を受水しています。
水質については、水道法に基づいた検査を実施しております。
表-7.各浄水場の処理能力
地
区 施設名
浄水処理
名
(平成 19 年度)
処理能力
(m3/日)
地
区 施設名
名
新 鰹淵浄水場
膜ろ過
城 八名井浄水場
膜ろ過
900.0 来
地 野田浄水場
塩素消毒
880.0 地
区 市川浄水場
急速ろ過
40.0 区
鳳 中央浄水場
急速ろ過
2,210.0
来 北部第1
地 浄水場
急速ろ過
1,000.0
区
北部第2
浄水場
急速ろ過
鳳来峡浄水場 急速ろ過
東部浄水場
緩速ろ過
巣山浄水場
緩速ろ過
七郷一色
浄水場
南部第1
浄水場
南部第2
浄水場
浄水処理
4,788.0 鳳 西部浄水場 緩速ろ過
620.0
川合浄水場 急速ろ過
大野浄水場
急速ろ過
緩速ろ過
(m3/日)
524.0
249.5
1,000.0
引地浄水場 緩速ろ過
37.5
池場浄水場
32.6
膜ろ過
作 中央浄水場 緩速ろ過
678.0
1,972.0 手 北部浄水場 緩速ろ過
85.4 地
南部浄水場 急速ろ過
100.0 区
652.0
急速ろ過
347.6
緩速ろ過
520.0
膜・急速・緩速ろ過方式
塩素消毒処理方式
計
膜ろ過
処理能力
416.6 愛知県水道用水
供給事業
- 10 -
172.6
16,345.8
880.0
17,225.8
急速ろ過
9,880.0
【現状課題】
表流水および伏流水を水源とする施設では、荒天時や上流での生活排水の混
入などによる水質悪化が懸念されることから、より安心できる水を供給するた
め高度浄水処理の導入や浄水施設の統廃合などの検討が必要です。
水道法における水質基準の検査体制について各施設で差はありませんが、一
部の施設においては、自主的に実施する検査項目について、項目・頻度の拡大
を図ることが必要です。
鰹淵浄水場
膜ろ過
北部第1浄水場
- 11 -
急速ろ過
5
送・配水施設
(1)配水池
本市の配水池は、69 箇所でその容量が 22,137.1 ㎥となっています。配水池容
量は、給水量の時間変動や非常時の対応のために1日最大給水量の 12 時間分以
上が望ましいとされていますが、本市では平成 18 年度の1日最大給水量が
22,021 ㎥で 24.1 時間分の容量を確保しています。
配水池は、将来の各地区の水需要に合わせて安定供給できるように整備して
いきます。
表-8.配水池容量別箇所数
(平成 18 年度)
地区名 新城地区 鳳来地区 作手地区
計
(箇所) (箇所) (箇所) (箇所)
容量
100 ㎥未満
100~1,000 ㎥未満
1,000 ㎥以上
2
4
4
21
17
1
18
2
0
41
23
5
計
10
39
20
69
※配水能力をもつ受水槽も含みます。
緑が丘配水池
- 12 -
(2)送・配水管
送・配水管の管路延長は、616.7km に達し、各地区の給水状況に応じ区域を網
羅しています。また、導水管を合わせると 639.3km となります。
表-9.管路延長
(平成 18 年度)
地区名
種別
配水管
送水管
計
導水管
合計
新城地区 鳳来地区 作手地区
(km)
(km)
(km)
280.9
207.8
76.5
5.2
45.9
0.4
286.1
253.7
76.9
3.7
15.0
3.9
289.8
268.7
80.8
計
(km)
565.2
51.5
616.7
22.6
639.3
【現状課題】
配水施設は、需要にあわせて適切に設置していますが、災害時の被害の軽減
や復旧の迅速化および適切水圧や水質の確保を図るため、配水ブロック化、耐
震化などの検討が必要です。また、石綿管や経年管の更新継続が必要です。
水 管 橋( 黒 田 地 内 )
- 13 -
6
維持管理
(1)施設管理
①
施設管理
浄水施設では、日常点検や定期的な詳細点検を行い取水や配水の状況の把握
および水質管理に努めています。また、管路施設では、水道管網台帳の修正や
更新を行い、管路の埋設状況の把握をしています。全ての地区において遠方監
視システムを導入し、水質や水量などの監視を行うとともに、夜間や休日につ
いても職員が非常時に備えています。これらの監視情報は地区ごとの確認とな
っており、全体の情報集約はされていません。
②
水道管網台帳
水道管網の状況を把握する台帳は、地区ごとに整理されていますが、その内
容や管理方法は地区ごとで異なっています。新城地区では主に*12マッピング上で
管理していますが、鳳来・作手地区では紙ベースによる管理となっています。
(2)事故対応
①
水質事故
配水管の布設工事に伴う切り替え作業時などにおいて、赤水および白水発生
による住民からの苦情がまれに寄せられています。また、水源の水質悪化が原
因と思われる給水栓での異臭の発生、末端給水栓での残塩濃度の低下の事例が
ありました。
②
施設事故
ポンプ設備に起因した事故は、毎年数件発生していますが、給水に影響を及
ぼすことはほとんどなく軽微なものとなっています。
また、落雷などによる停電が夏季に多く発生しますが、迅速な対応や自家発
電装置の稼動により給水に影響を与えることはありません。
【現状課題】
監視体制の強化を図るため、地区ごとに分散している取水量、配水量、水圧、
- 14 -
水質などの施設情報の集約化が必要です。
管路埋設状況や水圧、流量および給水台帳など効率的な検索および確認作業
ができるよう水道管網台帳についてもマッピングに統一することが必要です。
(3)応急給水体制、応急復旧体制
東海地震および東南海地震などの大規模地震を想定した非常時の飲料水確保
に向けて、必要な配水地の容量や耐震性が十分ではありません。
応急復旧体制は、「新城市地域防災計画」で明確化されています。
【現状課題】
応急給水の拠点となる配水池の新設、または緊急遮断弁や耐震性貯水槽の設
置が必要です。
応 急 給 水 訓 練(川 田 地 内 新 城 第 1 供 給 点)
- 15 -
7
経営状況
上水道の損益は、その柱となる水道料金が節水思想や節水型機器の普及、生
活様式の変化、工場などの水の循環利用などを起因とした使用水量の伸びの鈍
化により横ばい状況にあります。現在は黒字を維持しているものの、今後は給
水人口が微減していくことが予測され、収益の伸びは期待できない状況にあり
ます。給水原価と供給単価について、より原価を意識した経営努力と適正な料
金水準の検討が必要となっています。
内部留保資金の保有高は比較的確保されており、資金的には健全な状態にあ
ります。資産の老朽化が進んでいますが、施設利用率は概ね健全です。今後は
効率性の面からもより適正な規模の建設改良計画が必要となってきます。併せ
て配水量に占める受水割合が 50%以上と高く、自己水源の効率的な運用による
受水量の見直しやコスト削減策などの検討が必要です。
簡易水道の損益については、上水道と同様に使用水量の伸びの鈍化により横
ばい状況にあります。このため、料金回収率が非常に低く、給水コストを水道
料金で回収できないため、収支の不足分を一般会計からの繰入金に依存してい
ます。
また、未普及地域の解消や老朽管の更新など建設事業を行っておりますが、
過去の建設投資において企業債に多く依存したため、費用に占める支払利息や、
元金償還金の割合が高い状況です。
今後の建設改良は、将来の水量増加が見込めない状況であるため、財源のあ
り方や料金水準の検討が必要になります。
なお、水道料金体系については、現在、合併時の各市町村の体系を受け継い
でいますが、今後、簡易水道の料金を統一し、最終的には新城市の水道事業と
して 1 つの料金体系を作り上げていく予定です。
- 16 -
(1) 水道事業の経営状況一覧表
① 平成 16~18 年度の収入・支出(上水道)
本市の上水道における経営・財政状況は、以下のとおりです。収益的収支は収入
が収支を上回っており、現在は比較的安定していると思われます。
また、資本的収支について収入額が支出額に対して不足する額には、損益勘定留
保資金等にて補填しています。
年度
区分
収
入
上 水 道
H16年度
H17年度
H18年度
(千円)
(千円)
(千円)
1.営業収益
739,866
734,186
747,887
(1)料金収入
732,372
725,938
742,182
(2)受託工事収益
2,641
3,265
586
(3)その他
4,853
4,983
5,119
2.営業外収益
2,611
6,142
7,108
15
7
133
0
0
0
2,596
6,135
6,975
(4)消費税及び地方消費税還付金
0
0
0
3.特別利益
0
0
0
(1)固定資産売却益
0
0
0
(2)過年度損益修正益
0
0
0
742,477
740,328
754,995
(1)利息及び配当金
(2)他会計補助金
(3)雑収益
計(A)
収
益
的
収
支
1.営業費用
651,197
643,564
645,284
(1)原水及び浄水費
289,604
281,292
287,396
(2)配水及び給水費
44,506
46,967
38,360
(3)受託給水工事費
2,107
2,133
475
76,981
72,602
76,212
(5)減価償却費
228,756
232,265
234,926
(6)資産消耗費
9,234
8,228
7,897
(7)その他営業費用
0
0
0
(8)自動車重量税
9
77
18
2.営業外費用
89,165
85,858
81,987
(1)支払利息及び企業債取扱諸費
88,055
82,125
76,713
1,110
3,733
5,274
3.特別損失
0
0
0
(1)過年度損益修正損
0
0
0
(2)臨時損失
0
0
0
740,362
729,422
727,271
(4)総係費
支
出
(2)雑支出
計(B)
収支差引 (A) - (B) = (C)
収
入
2,115
10,906
27,724
1.工事負担金
31,687
46,700
32,666
2.加入分担金
16,550
17,729
16,533
3.補助金
15,678
8,456
48,830
720
0
33,579
63,700
60,000
112,200
計(D)
128,335
132,885
243,808
1.建設改良費
237,809
283,855
435,520
(1)配水設備拡張費
38,141
26,265
29,724
(2)配水設備改良費
165,226
237,667
301,483
4.他会計出資金
5.企業債
資
本
的
収
支
支
出
(3)営業設備費
(4)第6期拡張事業費
2.企業債償還金
1,817
1,122
325
32,625
18,801
103,988
127,900
126,745
119,088
3.貸付金
0
0
0
3.その他投資
0
0
0
365,709
410,600
554,608
237,374
277,715
310,800
237,374
277,715
310,800
計(E)
資本的収入額が資本的支出額に不足する額
(E) - (D) = (F)
補填財源増加額 計(G)
- 17 -
② 平成 16~18 年度の収入・支出(簡易水道)
本市の簡易水道における経営・財政状況は、以下のとおりです。収入が支出を上
回っており、現在は比較的安定していると見受けられますが、他会計繰入金を除い
た場合は、赤字会計となります。
年度
区分
簡易水道
H16年度
H17年度
H18年度
(千円)
(千円)
(千円)
1.営業収益
258,197
243,824
262,373
(1)料金収入
254,280
240,482
254,473
0
0
0
3,917
3,342
7,900
(2)受託工事収益
(3)その他
収
入
2.営業外収益
163,647
237,551
240,598
(1)国庫補助金
0
0
0
(2)都道府県補助金
0
0
0
43,388
138,784
152,008
(3)他会計繰入金
収
益
的
収
支
(4)その他
計(A)
1.営業費用
支
出
502,971
261,816
261,135
47,491
53,770
53,603
(2)受託工事費
0
0
0
(3)その他
153,358
208,046
207,532
2.営業外費用
100,055
102,815
100,413
98,480
97,177
96,554
1,575
5,638
3,859
300,904
364,631
361,548
計(B)
収支差引 (A) - (B) = (C)
支
出
88,590
481,375
200,849
(2)その他
資
本
的
収
支
98,767
421,844
(1)職員人件費
(1)支払利息
収
入
120,259
120,940
116,744
141,423
1.地方債
342,600
337,800
290,400
2.他会計繰入金
144,099
188,443
189,870
3.他会計補助金
0
0
0
4.他会計借入金
0
0
0
5.固定資産売却益
0
0
0
6.国庫補助金
206,885
188,910
159,911
7.都道府県補償金
123,273
117,660
104,045
8.工事負担金
105
0
0
9.その他
777
0
0
計(D)
817,739
832,813
744,226
1.建設改良費
736,968
720,259
621,069
2.地方債償還金
163,717
184,143
214,357
3.他会計長期借入金返済金
0
0
0
4.他会計への繰出金
0
0
0
5.その他
0
0
0
900,685
904,402
835,426
82,946
71,589
91,200
計(E)
資本的収入額が資本的支出額に不足する額
(E) - (D) = (F)
- 18 -
(2) 上水道の経営指標一覧表(平成 18 年度)
指標名
単位
指標名
計算値
Ⅰ.業務の概要
単位
計算値
Ⅵ.生産性
給水人口
(人)
36,469
職員1人当たり給水人口
(人/人)
5,209.9
水道普及率
(%)
99.5
職員1人当たり有収水量
(㎥/人)
590,416.1
給水人口1人1日当たり使用量
(㍑/人/日)
職員1人当たり営業収益
(千円/人)
106,841.1
職員1人当たり給水収益
(千円/人)
106,026.0
310.0
Ⅱ.収益性
総収支比率
(%)
103.8 Ⅶ.料金に関する項目
経営収支比率
(%)
103.8
給水原価
(円/㎥)
175.9
営業収支比率
(%)
115.9
供給単価
(円/㎥)
179.6
累積欠損金比率
(%)
-
回収率
(%)
102.1
不良債務比率
(%)
-
一か月10㎥当たり家庭用料金
(円)
1,459.0
自己資本回転率
(回)
0.2
一か月20㎥当たり家庭用料金
(円)
2,509.0
総資本回転率
(回)
0.1 Ⅷ.費用に関する項目
固定資産回転率
(回)
0.1
未収金回収率
(回)
3.6
職員給与費
(円/㎥)
13.0
0.4
支払利息
(円/㎥)
18.6
減価償却
(円/㎥)
56.8
動力費及び薬品費
(円/㎥)
14.2
修繕費
(円/㎥)
5.6
委託料
(円/㎥)
11.8
受水費
(円/㎥)
47.5
その他
(円/㎥)
6.5
総資本利益率
(%)
Ⅲ.減価償却状況
当年度減価償却率
(%)
3.2
企業債償還元金対償却費比率
(%)
50.7
Ⅳ.財務比率
1.流動性
流動比率
(%)
188.0
当座比率(酸性試験比率)
(%)
187.5
2.安全性
有収水量1㎥当たりの金額
給水収益に対する割合
職員給与費
(%)
7.2
92.6
企業債利息
(%)
10.3
固定資産構成比率
(%)
固定資産対長期資本比率
(%)
96.4
減価償却
(%)
31.7
固定比率
(%)
143.9
企業債償還元金
(%)
16.1
自己資本構成比率
(%)
64.3
職員給与費対営業収益比率
(%)
7.2
固定負債構成比率
(%)
31.7
有収水量1万㎥/日当たり職員数
(人/万㎥/日)
9.7
利子負担率
(%)
2.8
Ⅴ.施設効率
施設利用率
(%)
75.4
最大稼働率
(%)
88.4
負荷率
(%)
85.3
固定資産使用効率
(㎥/万円)
配水管使用効率
(㎥/m)
15.9
有収率
(%)
90.3
6.4
- 19 -
Ⅲ
将来像の設定
1
水道事業の将来像
本市の水道事業は、面的あるいは量的な拡張をしつつ、石綿管更新事業や膜
ろ過浄水処理システムの導入などの「安全・安定」に着目した事業を展開し、
安全な水を全ての顧客に安定して供給する水道を築いてきました。
我々水道事業者に課せられた使命は、顧客の信頼のうえに築き上げられてき
た水道を将来に向けてより良いかたちで引き継いでいくことであり、現在抱え
ている課題はもとより、今後発生するであろう種々の課題に対しても適切に対
処していくことであります。また、現在顧客から一定の負担をいただいて確保
されてきた給水サービス水準について、多様化、高度化する顧客のニーズにあ
わせ、よりきめ細かく迅速に対応することにより引き続き信頼を得ていく必要
があります。
以上により「安全な水を安定的に供給する」を目標として現状の把握と課題
を整理し次の4つの施策を設定しました。
1
運営基盤の強化・顧客サービスの向上
2
安心・快適な給水の確保
3
災害対策などの充実
4 環境・エネルギー対策
- 20 -
Ⅳ
目標期間内における達成すべき施策
1
運営基盤の強化・顧客サービスの向上
本市上水道では6期にわたる拡張工事を経て、水道施設を整備してきました。
また、簡易水道においても基幹改良事業などを推進し、施設を整備してきまし
た。そうした中、布設後 40 年を経過した配水管の総延長は 69.7km に及んでお
り老朽化が進行しています。このため、老朽管については計画的な更新を行う
ことにより安定した給水を確保します。
給水人口は微減となっておりますが、簡易水道を含めた1日平均給水量は、
この 10 年間では約5%の増加となっています。
しかしながら、水道事業の主要な財源である水道料金を支えるべき給水
人口の減少は、今後も同様の傾向が見込まれることから事業経営において
大きな課題になっています。
表-9.新城市全域の給水人口の実績と推計
年度
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
給水人口
53,845 53,384 53,484 53,154 53,035 53,012 52,870 52,616 52,285 52,155
実績値(人)
年度
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
H28
給水人口
50,700 50,500 50,300 50,000 49,900 49,800 49,700 49,500 49,400 49,500
推計値(人)
※推計値は 100 人単位で切り上げ
※給水人口実績は上水道人口と簡易水道人口の合計値
本市においては、市町村合併に伴う事業区域の広域化、分散化といった問題
があり、経営や運転管理を早期に一体化し、それらのレベルの向上が図られる
よう施設配置の最適化を視野に入れながら、総合的な水運用システムを構築
しなければなりません。そのために、外部委託の導入、官民連携などの様々な
形態による連携方策などを検討し、本市にとって最適かつ経済的で持続可能な
水道事業の運営形態の確立を目指します。
また、安全で安定した給水体制を確保した上で、顧客サービスを提供する
主体である職員の資質を高めるとともに、既存施設を有効に活用した、技術者
育成に向けた持続的な研修体制を確立します。
- 21 -
現在使用している「損益計算書」
「貸借対照表」といった財務諸表は専門的な
知識が必要であり、また、経営状況の実態を把握するためには、これらの資料
だけでは十分であるとは言えません。このため、*13業務指標(PI)の 手 法 を
活用するなどして、経営の評価、改善を行い、顧客に水道を身近に感じていた
だけるように情報の共有化を図り、広報体制の確立を実現します。
新城市 一日平均給水量の実績・推計 (㎥/日)
平成
地区名
簡易水道等名
9
10
新城地区 上水道
12,627
12,704
11
12,514
12
12,620
13
12,181
14
12,274
15
12,514
16
12,494
17
12,391
実績←
18
12,531
小計
鳳来地区 鳳来中央簡易水道
北部簡易水道
鳳来峡簡易水道
東部簡易水道
南東部簡易水道
鳳来南部簡易水道
西部簡易水道
川合簡易水道
大野簡易水道
12,627
1,467
724
965
62
80
403
121
272
437
12,704
1,512
710
886
67
79
414
139
162
569
12,514
1,405
709
843
67
223
690
219
156
594
12,620
1,391
1,063
810
72
125
346
284
158
368
12,181
1,336
991
783
73
134
417
241
169
319
12,274
1,239
1,251
780
72
138
410
224
148
317
12,514
1,397
999
957
70
146
444
226
149
334
12,494
1,414
1,216
756
71
137
731
246
142
333
12,391
1,327
1,067
765
79
156
677
343
148
335
12,531
1,348
1,006
782
77
162
558
284
154
567
小計
作手地区 中央簡易水道
南部簡易水道
4,531
728
136
4,538
779
128
4,906
774
119
4,617
898
113
4,463
1,004
111
4,579
984
113
4,722
1,126
112
5,046
1,129
118
4,897
1,000
118
4,938
1,038
132
小計
864
18,022
907
18,149
893
18,313
1,011
18,248
1,115
17,759
1,097
17,950
1,238
18,474
1,247
18,787
1,118
18,406
1,170
18,639
合計
→推計
19
12,341
20
12,352
21
12,398
22
12,410
23
12,433
24
12,488
25
12,527
26
12,545
27
12,625
計画年度
28
12,682
29
12,729
30
12,816
12,341
12,352
12,398
12,410
12,433
12,488
12,527
12,545
12,625
12,682
12,729
12,816
1,349
1,100
816
78
130
528
291
132
364
1,322
1,094
798
78
119
524
294
124
360
1,296
1,088
781
77
109
520
296
116
356
1,270
1,082
763
78
100
518
296
109
351
1,247
1,076
748
78
90
514
299
104
348
1,223
1,069
732
78
82
512
300
99
345
1,200
1,060
717
77
74
510
300
96
341
1,177
1,049
702
77
66
507
301
92
337
1,149
1,039
687
78
59
506
301
91
334
1,132
1,030
673
78
52
506
301
89
332
1,110
1,013
660
77
45
503
298
88
328
1,087
996
646
77
39
501
295
86
324
4,788
4,713
4,639
4,567
4,504
4,440
4,375
4,308
4,244
4,193
4,122
4,051
1,073
127
1,065
126
1,054
126
1,044
127
1,035
126
1,027
125
1,015
126
1,008
127
997
126
993
127
972
126
952
126
1,200
1,191
1,180
1,171
1,161
1,152
1,141
1,135
1,123
1,120
1,098
1,078
18,329
18,256
18,217
18,148
18,098
18,080
18,043
17,988
17,992
17,995
17,949
17,945
- 22 -
備考
2
安心・快適な給水の確保
近年、開発事業などに起因する濁度の増加、*14クリプトスポリジウムなどの病原
微生物の発生頻度増加などにより水源水質が悪化する傾向にあり、水道水質に向け
られる顧客の視線は厳しさを増しています。
これらに対応する方法として、事業費、維持管理費が最も経済的な浄水処理方法
の検討を行い採用するものとします。また、水源水質の監視システムなどを導入し
水質監視の強化を行います。
水源から給水栓までの総括的な水質管理については、配水管の定期的な洗浄
や更新の実施に努めて行きます。また、給水装置については維持管理の区分を
周知し、管理についても引き続き指導を行っていきます。
貯水槽(受水槽)水道の設置者に対しては、管理の不十分から水質悪化を招
*15
くことのないよう、管理の徹底を求めて指導、助言および勧告を行います。ま
た、3階建以上の建物を新築する場合などには、受水槽を使わず直接給水する
直結直圧給水やブースターポンプによる直結増圧給水を勧めていきます。
現在、簡易給水施設や水道の未普及地域が存在しますが、使用者の公衆衛生向上
のため未普及地域の解消は不可欠です。これらの解消には、新規に配水管の布設が
必要となり多くの費用が必要となりますが、緊急性や費用対効果などを考慮しなが
ら計画年次までに普及率 100%を目指した方策を検討します。
- 23 -
3
災害対策などの充実
本市は、昭和 54 年8月に「東海地震防災対策強化地域」
、平成 15 年 12 月には「東
南海・南海地震防災対策推進地域」に指定され水道施設への被害を最小限に抑える
ための対応が急務となりました。このような災害時においても、市民生活や経済産
業活動への影響を最小限に抑える必要があります。
このため老朽化施設の修繕・更新を行い、特に石綿管については計画的に解消を
図るよう計画します。基幹管路の耐震化率を早期に向上し、浄水場、配水池など
の基幹施設についても耐震調査を実施して、その結果に基づいた整備計画を立
案し、耐震化のための施策を展開します。
非常時における給水活動を円滑に行うため、
「新城市水道事業地震防災応急対
策要綱」に基づく災害時応急給水訓練を行います。その際は、協力関係を結ん
でいる関係団体や住民団体と連携していきます。
また、災害時の水道事業における対策本部として、機能を果たすのに十分な備蓄
資機材について検討し、計画的に備蓄を行うとともに、災害時における指定避難所
や病院などへの給水を確保することを目的に、耐震性貯水槽の建設および耐震型配
水池の増設など災害対策備蓄水拠点の整備を検討します。
近年は、水道施設へのテロ攻撃の可能性についても懸念されているため、浄水施
設への毒物混入などといった災害に備えて、現在未設置の施設については忍び返し
付フェンスなどを整備するほか、防犯カメラなどの設置についても検討します。
- 24 -
4
環境・エネルギー対策
近年の経済活動では、省エネルギーへの対応など自然環境への配慮が求められて
います。水道事業では自然環境の保全への取組みが水源水質の維持や水量の確保に
つながることから、事業全体を通じて環境負荷の低減化に取り組むなど環境、エネ
ルギー対策に努めます。
本市では、耐震化と*16有効率の向上を目的として石綿管更新事業を進めており
ます。漏水抑制による有効率の向上は、水循環系への負担を軽減するだけでなく、
浄水・送配水段階の循環負荷削減効果もあるため、今後も有効率の向上を図るため、
漏水調査や石綿管などの老朽管布設替事業を推進します。
また、環境負荷の低減の観点から水道工事に伴う建設発生材のリサイクル化を進
め、有効利用を促進し、浄水処理や水運用過程で消費する電気エネルギー、薬品使
用量などの削減を目指した効率的な水運用を行うとともに、事務所内での休憩時間
の消灯などにより環境負荷低減に努めます。豊川水系における治水及び水資源の安
定的確保を目的とした豊川水源基金の拡充も図ります。
以上、本市水道事業の具体的な課題とその克服すべき方向性や施策です。
施策の重要度、緊急度を考慮しながら、実施期間、具体的な施策内容について計
画したものが、
「Ⅴ 施策の具体的な方針」および「Ⅵ 実施目標と施策内容」に
示すものです。
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Ⅴ
施策の具体的な方針
基本項目1
運営基盤の強化・顧客サービスの向上
(1) 合理的な水運用システムの検討
① 本市の水道事業は、平成 17 年の合併によって旧市町村地区を越えた給
水が可能となった。このため、簡易水道地区およびその他水道地区の統合
を含めた施設の統廃合による効率的な水運用システムの構築を図る。
② 水運用システムの整備計画をもとに施設整備を行う。
(2) 効率的な事業運営手法の検討
① 財政分析を行い効率的な事業運営に取り組む。
② 経営統合後の料金のあり方について検討を行う。
③ 事務事業を見直し、職員配置の適正化に努める。
④ 情報の提供と共有に努め、顧客からの信頼の高い水道事業を目指す。
⑤ 浄水場運転管理業務などの民間委託が可能な業務について検討し、業務の
効率化・合理化に努める。
(3) 人材の育成と技術力の向上
① 顧客満足度の向上を目指すとともに持続可能な水道事業を確立するために、
職員の資質向上に向けた研修に取り組む。
② 水道の知識や技術の継承に努める。
③ 企業経営思想の醸成、顧客サービスの向上に努める。
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基本項目2
安心・快適な給水の確保
(1) 水質の向上対策
① よりおいしい水の供給を図るため、原水水質に適した浄水処理方式につい
て検討を行う。
② 水源から浄水および送配水施設での水質管理強化を図る。
③ 滞留水の改善について検討を行い残留塩素濃度の確保に努める。
(2) 未普及の解消に向けた取組み
① 各簡易給水施設水道組合と連携して、安心・安全な水道水としての普及に
努める。
② 配水管の新規整備を進め、普及率の促進を図る。
(3) 給水装置による事故の防止
① 貯水槽(受水槽)水道の設置者の適正な管理に向けた指導、助言および勧
告を徹底する。
② 給水装置基準の適正管理に関して啓発する。
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基本項目3
災害対策などの充実
(1) 基幹施設・管路網などの耐震化
① 浄水・送配水施設の耐震化計画を策定する。
② 石綿管などの老朽管の耐震管化を促進する。
(2) 応急給水体制の確立、災害復旧体制の整備
① 地震などの災害に対応できる組織の確立や人材の育成を行う。
② 拠点給水場所を指定避難場などと整合させるための調査を実施し、応急給
水体制を確立する。
③ 耐震型配水池の新設、耐震性貯水槽の整備、緊急遮断弁の設置を行い応急
給水用水の確保に努める。
(3) 人為的災害への対応
① 不審者侵入対策設備の設置を進める。
基本項目4
環境・エネルギー対策
(1) 環境への負荷低減策の推進
① エネルギー使用量を削減する省エネ型の設備導入を行う。
② 計画的な漏水調査を実施する。
③ 建設副産物や浄水汚泥などのリサイクル化を推進する。
④ 水源基金による水源涵養事業
⑤ 石油代替エネルギーの導入
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Ⅵ 実施目標と施策内容
1
運営基盤の強化・顧客サービスの向上
簡易水道地区に関する事業の統合、廃止の検討を行い施設・配管などの整備の施
策についてまとめます。
(1) 水運用システムの構築
① 給水区域の再編成および事業の統廃合
現在、本市にある1上水道、12 簡易水道、10 簡易給水施設、1用水施設を統合
して、将来的には1つの上水道に統合します。
地区名
新城地区
鳳来地区
作手地区
名称
事業内容
目標年度
上水道
鳳来地区の5簡易水道、
1簡易給水施設と作手
簡易水道を統合
H28
中央簡易水道
鳳来中央簡易水道、南東
部簡易水道、1簡易給水
施設を統合
H21~H25
北部簡易水道
北部簡易水道、西部簡易
水道と9簡易給水施設
を統合
H22~H24
大野簡易水道、鳳来峡簡
鳳来峡簡易水道 易水道、東部簡易水道と
川合簡易水道を統合
H24~H26
作手中央簡易水道と作
手南部簡易水道、作手用
水事業を統合
H21~H22
作手簡易水道
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備考
② 電気計装設備の更新
水道施設を管理・監視していく上で重要な設備である電気計装設備は、設置後
更新されておらず老朽化してきています。また、計装設備の設置されていない施
設もあるため、電気計装設備を更新・設置していきます。
地区名
事業内容
目標年度
新城地区
電気計装設備更新
H20~H27
鳳来地区
電気計装設備更新
H25~H26
作手地区
電気計装設備更新
H20~H22
- 30 -
備考
(2) 事業運営の効率化
① 経営状況の分析と情報共有化
業務指標(PI)の手法を活用するなどして、経営の評価、改善を行い顧客に
対し分かりやすく経営状況に関する情報提供を行います。現在、市のホームペー
ジを通じて水道情報のPRを行っていますが、より一層の情報公開に努めます。
② 事務事業と水道料金の適正化
現行の業務について検証を行い顧客へのサービス向上への施策に人員を配置で
きるよう抜本的な見直しにより業務の効率化を図っていきます。
また、今後の水需要の伸びが期待できない中で、老朽化した施設や管路の更
新、補修を進めなければなりません。このため、一層のコスト削減に取り組むと
ともに水需要の見通しなどを踏まえた計画的な料金改訂について検討を進め、適
切な収支状況を目指します。
③ 民間委託の検討
平成 14 年の改正水道法において、浄水場の管理運転や水質管理などについて包
括的に第三者に委託することが可能となりました。現行業務の見直しを実施し、
費用対効果を検討した上で安全性や安定性を十分に確保しつつ、業務内容や委託
の開始時期を決定していきます。
(3) 人材育成と技術力向上
① 技術力の継承と向上
安全で安定的な給水のために長年培ってきた技術や知識を次世代へ継承してい
くとともに、水道技術の実務研修や法定資格取得のための研修など職員の資質向
上に向けた取組みを行います。
② 顧客サービスの向上
水道情報の公開とともにホームページを活用した双方向での意見交換、アン
ケートなどの様々な広報活動を行い多様化する顧客のニーズを把握しながら事業
に反映していきます。
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2
安心・快適な給水の確保
新城市水道事業の顧客に対して安全でおいしい水を提供するために、水源から給
水栓までの各段階において、以下の施策について計画をまとめます。
(1) 給水能力の向上
① 浄水処理方法の見直し
水源周辺の環境の変化により水質の悪化や有害物質の混入が予測され、これに
よりクリプトスポリジウムや大雨時の水質悪化にも対応可能な浄水処理への見直
しを行います。
地区名
事業内容
目標年度
新城地区
野田浄水場の改良
H23~H25
鳳来地区
原水水質悪化時の処理向
上に対応した浄水処理
H20~H21
備考
② 取水能力の向上
大雨時の土砂による取水施設での取水口の土砂堆積や集水埋管の詰まりなどを
改良するために、水源でのウォータースクリーンの設置または堰堤の改良などを
行います。
地区名
事業内容
目標年度
鳳来地区
ウォータースクリーン設置
H23~H26
作手地区
堰堤改良・ウォータースクリーン設置
H23~H26
- 32 -
備考
③ 水源水質の監視
水源の上流部に下水処理場などがあり、今後の水質悪化に不安がある取水箇所
において原水水質監視のための水質計器を設置します。
地区名
事業内容
目標年度
新城地区
濁度計、PH 計設置
H21~H27
鳳来地区
濁度計、PH 計、アンモニア態窒
素計、水質計測装置設置
H21~H27
備考
④ 配水池施設の能力向上
配水流量が少量である配水池では、滞留時間が長くなることにより残留塩素濃
度管理が困難となります。これらの解消には、塩素の追加注入と消費した塩素を
復帰させる淡水電解装置の設置が考えられます。塩素の追加注入にはトリハロメ
タン生成や塩素臭の問題が生じる場合もあるため、配水池の容量・水質にあった
方法で整備を行います。
地区名
事業内容
目標年度
新城地区
滞留水の改善
H23~H25
鳳来地区
滞留水の改善
H23~H25
- 33 -
備考
(2) 未普及地域解消事業
配水管が布設されていない地域に新たに配水管を布設し、給水区域の拡張を図
ります。
地区名
事業内容
目標年度
追分地区への給水
H25
東矢田地区への給水
H25
下島田地区への給水
H28
備考
鳳来地区
作手地区
(3) 給水装置、貯水槽(受水槽)水道の管理指導
給水装置については維持管理の区分を周知し、顧客が適切に管理できるよう呼
びかけていきます。
貯水槽(受水槽)水道の設置者に対しては、適正管理の徹底を求め、啓発活動
を推進していきます。
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3 災害対策などの充実
水道の存在なくしては、健康な生活も経済活動もできない都市の重要な社会基盤
施設であり、災害が発生した緊急時には被災者の生命や生活を支えるライフライン
として、その果たす役割は大きなものとなっています。このため、災害にも強い頼
れるライフラインを築くために必要な施策をまとめます。
(1) 水道施設の耐震化
① 基幹施設の耐震化
各地区の水道施設には老朽化してきているものもあり、また、耐震対策が不十
分な施設もあります。このため、これら施設の定期的な更新、耐震補強を行って
いきます。
地区名
事業内容
目標年度
新城地区
川田受水場耐震補強
配水管耐震化
H20~H23
鳳来地区
中央浄水場耐震補強
配水池耐震補強、配水池新設
H22~H25
作手地区
配水池の増設
H21~H22
備考
② 管路施設の更新
経年劣化した配水管について、適正口径への見直しを図りながら、計画的な更
新を行い管破損事故、漏水、赤水などを防止し、安全で安定的な給水を確保しま
す。
老朽管布設替事業
地区名
事業内容
目標年度
新城地区
老朽管布設替え
H20~H28
鳳来地区
老朽管布設替え
H23~H25
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備考
石綿管更新事業
地区名
事業内容
目標年度
鳳来地区
石綿管布設替え
H21~H25
備考
(2) 応急給水体制の確立
① 災害対応力の強化
新城市地域防災計画に基づいて、災害時対応力の向上に努めます。また 、
職員、組織一丸となった体制を構築するとともに、災害時における協力関係を結
んでいる関係団体や住民団体との連携強化を図ります。
② 災害拠点給水施設の整備
現在、簡易水道地区では災害拠点給水施設が整備されていません。簡易水道で
は配水池などの貯留施設が標高の高い箇所に設置されており、災害時に給水拠点
とすることは非常に困難であります。
このため、耐震性貯水槽などの施設を整備していきます。
地区名
事業内容
目標年度
鳳来地区
耐震性貯水槽整備
H21~H27
作手地区
耐震性貯水槽整備
H21~H27
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備考
③ 緊急遮断弁の設置
災害時の飲料水確保のため、配水池の流出管に緊急遮断弁を設置し、水道水の
流出を防ぎます。
地区名
事業内容
目標年度
鳳来地区
緊急遮断弁設置
H20~H27
作手地区
緊急遮断弁設置
H22
備考
(3) 水質事故や犯罪などの防止対策
取水場や浄水場、配水池などの無人施設については、忍び返し付フェンスなど
による侵入防止対策を強化します。
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4 環境・エネルギー対策
近年、発生している異常気象は、地球温暖化などが原因であることが指摘
されています。地球環境保護の見地から、
「新城エコガバナンス宣言」の内容も
考慮し、環境負荷の低減を図っていきます。
(1) 環境負荷低減策の推進
① 省エネ型機器の導入
経年劣化した施設や設備の更新時に消費電力を削減するため、省エネル
ギータイプの機器を導入するなど、エネルギー消費量の低減を図ります。さ
らに、市民への節水意識の呼びかけなど節水型社会の形成や水の有効利用に
よるエネルギー消費の削減を進めます。
② 漏水調査の実施
管路網における管種は老朽化が進み、高水圧の箇所では破損事故が発生し
ていることから、有効率の低下が生じています。今後も、有効率を向上させ
ることを目標とし、計画的に漏水調査を実施します。
③ 浄水汚泥の有効活用
処理の過程で注入した薬品を含む浄水汚泥については、より環境への負荷
が低い実現可能な手法を検討します。
④ 水源基金による人材育成
有収水量 1m3 当り 1 円の財団法人豊川水源基金の水源林保全流域協働事業
による水源涵養等の事業を拡充していきます。
⑤ 石油代替エネルギーの導入
沈殿池、ろ過池に覆蓋に太陽光パネルを設置し、太陽光発電システムの導
入を図ります。
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用語の説明
*1 上水道 (事業)
(P.2)
:計画給水人口が 5,000 人を超える水道。
*2 簡易水道(事業)
(P.2)
:計画給水人口が 101人以上 5,000 以下の水道。
*3 水道普及率
(P.5)
:現状における給水人口と行政区域内人口の割合。
*4 一日最大給水量
(P.6)
:年間の 1 日給水量(㎥/日)のうち、最大のもの。
*5 表流水
(P.7)
:陸水のうち河川、湖沼の水のようにその存在が完全に地表面にあるもの。
*6 伏流水
(P.7)
:河川の流水が川床の地質や土質に応じて河底の下へ浸透し、水脈を保ってい
る極めて浅い地下水。
*7 地下水
(P.7)
:降水が地下に浸透して海まで流下する水のことで、自由水面を持つ表層地下
水を浅井戸、持たない被圧地下水を深井戸という。
*8 膜ろ過方式
(P.10)
:懸濁物質を通さない微細な孔を有する有機もしくは無機質の薄い膜状のフ
ィルターによって原水をこし、懸濁質を除去する固液分離プロセスの一種。
*9 急速ろ過方式
(P.10)
:あらかじめ懸濁物質を凝集、フロック化しておくことで高い効率で懸濁質の
除去を行う浄水システム。
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*10 緩速ろ過方式
(P.10)
:比較的ゆっくりとした速度で砂のろ層に原水を通すことで表層に生物膜が生
成し、この効果によって原水から懸濁物質と一部の溶解性物質を除去する浄
水処理。
*11 塩素消毒
(P.10)
:水道法において、給水栓水で保持すべき残留塩素の量が規定されており、塩
素により消毒すること。厚生労働省の通知によって、水道水の消毒には塩素
剤以外の使用を認められていない。
*12 マッピング
(P.14)
:コンピュータを用いて地図情報を作成、管理する技術で、地図情報に地下埋
設管や関連施設の図形に加え、管路の口径、管種、埋設年度と言った属性情
報や計画や管路情報などをデータベースとして、一元管理するシステム。
*13 業務指標(PI)
(P.21)
:水道業務の効率を図るために活用できる規格の一種で、水道事業体が行っ
ている多方面にわたる業務を定量化し、厳密に定義された算定式により評
価するもの。
*14 クリプトスポリジウム
(P.22)
:動物の腸に寄生する大きさ約 5μm の原虫で、下痢や軽い発熱などの症状
を引き起す病原微生物である。クリプトスポリジウムへの対策としては、
塩素消毒の効果が弱いため、浄水場では徹底したろ過処理により水中から
の除去を行っている。
*15 貯水槽水道
(P.22)
:ここでの貯水槽水道とは受水槽有効容量が 10 ㎥以下のもの。
*16 有効率
(P.24)
:浄水場から送られた水が途中で漏水することなく、どれだけ有効に利用で
きたかを示す率。有効率=一日平均有効水量(総配水量から漏水などの水量
を除いたもの。)/一日平均給水量で算出される。
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