「博士号取得支援事業」 2011年度秋季 「 人 間 は 感 動 す る 心 を 失 わ ず、 何事かを学び続ける限り、年齢に とらわれない生き方をすることが 年度・秋季 で き る 」。 生 涯 学 習 開 発 財 団 の 設 立理念と同様、平成 募集の博士号取得支援事業の授与 式では、年齢にとらわれない輝く 笑顔があふれていた。応募も前回 よりも倍増し、研究領域も日本企 業、日本外交、地域社会から体育 の 授 業、 感 染 症 防 止、 ス ト レ ス、 北朝鮮・ベトナム経済まで多岐に 渡り、今後の事業のさらなる発展 を伺わせる内容だった。 理事長・松田妙子は、「皆さん、 まだまだお若いですから、博士号 取得は当然として、日本の未来を 支えるために、熟年の力を発揮し てください」と、さらなる奮起を 9名中5名が女性という結果だった が、それが話題にものぼらないくら い当財団ではあたりまえのこと。 (五十音順、年齢は授与式当日) ●平成 年度秋季「博士号取得支援事業」 歳) 助成金授与者 池上萬奈( 八代 弘( 歳) 歳) 歳) 歳) 歳) 歳) 歳) 歳) 「北朝鮮の改革・開放政策の変遷と市場化」 文 聖姫( 「わが国のコーポレートガバナンスにおける 「株主主権」の撹乱状況に関する考察」 西村 毅( 「小学校児童のストレスと口腔疾患の関連性の検討」 中野玲子( 「危機管理の視点から捉えた感染対策と 学校保健教育に関する研究」 豊島幸子( 「意識の変化が運動パフォーマンスに及ぼす影響」 民内利昭( 「ベトナム経済の現状と今後」 鎌田 隆( 「持続可能な発展のための内発的教育」 岩佐礼子( 「第一次石油危機における日本外交 ︱石油安定供給確保と日米関係︱」 60 54 70 50 57 60 68 50 71 助成金支給者決定 授与式では、理事長・松田妙子と選 考委員長・張競先生から、一人ずつ 祝福と激励の言葉とともに決定通知 書と目録が手渡された。 23 思います。 実にこの支援事業を推進していきたいと 員 一 同 は 皆 さ ん と と も に、 こ れ か ら も 着 め、 よ り よ い 社 会 を 作 る た め に、 選 考 委 い も の が あ り ま す。 生 涯 学 習 の 機 会 を 広 高 齢 化 が 急 速 に 進 ん で い る 今 日、 本 財 団の博士取得支援事業はたいへん意義深 るよう、期待しています。 は 研 究 に 励 み、 一 日 も 早 く 成 果 を 得 ら れ 願 っ て い ま す。 そ し て、 合 格 者 の 皆 さ ん た 応 募 者 に は 来 年 も 応 募 す る よ う、 切 に ませんでしたが、今回、残念な結果になっ 助 成 枠 の な か で、 合 格 者 を 絞 ら ざ る を 得 は 難 し い 決 断 が 迫 ら れ ま し た。 限 ら れ た 者 の 実 力 が 伯 仲 し て お り、 選 考 委 員 た ち て い ま す。 と り わ け 第 二 次 選 考 で は 候 補 今回の秋季募集では応募者が大幅に増 えただけでなく、研究水準も確実に上がっ んの元気な姿は強く印象に残りました。 若い人たちに負けずに努力している皆さ るよう努力するとの抱負を語っています。 明を行い、全員1、2年中に学位を取得す 補者たちは博士号取得の計画について説 ま で 多 岐 に わ た り ま す。 面 接 の 中 で、 候 社会系のものから歯学や経営学にいたる 「中小企業におけるISО9001品質マネジメント システム構築・運用による組織文化の変革」 は 確 実 に 増 え、 今 回 の 募 集 で は 全 部 で りました。 されました。 9 名 の 合 格 者の う ち、 最 高 齢 は 歳。 専 攻 分 野 は 多 種 多 彩 で、 研 究 課 題 も 人 文 に合格通知書と目録が手渡されました。 松田妙子理事長から合格者の一人ひとり 選考の結果にもとづき、3月 日午後、 本 財 団 の 理 事 長 室 で 授 与 式 が 挙 行 さ れ、 12 9 名( う ち 継 続 申 請 1 名 ) の 合 格 が 決 定 選 考 委 員 会 が 開 か れ、 最 終 選 考 の 結 果、 面 接 が 行 わ れ ま し た。 面 接 の 後、 第 二 次 理 事 長 を は じ め、 4 人 の 選 考 委 員 に よ る 名 の 候 補 者 に 対 し、 3 月 1 日、 松 田 妙 子 よ り 面 接 日 を 変 更 し ま し た が、 残 り の 9 れ ま し た。 2 名 の 候 補 者 は 特 別 の 事 情 に 名 の 候 補 者( う ち 継 続 申 請 1 名 ) が 選 ば 第一次選考では選考委員の先生方によ る 慎 重 な 銓 衡 が 行 わ れ、 名 の う ち、 19 む) 、 春季募集に 比べて 倍以上の 急増とな 名 の 応 募 が あ り( う ち 継 続 申 請 1 名 を 含 19 12 促した。 張競 選考終了にあたって 選考委員長 (明治大学教授/博士(学術)) 本財団の2011年度秋季博士取得支 援 事 業 は 昨 年 6 月 に 募 集 を 開 始 し、 月 日 に 締 め 切 ら れ ま し た。 本 支 援 事 業 の 12 71 今期授与者の最高齢は71歳 の八代 弘氏。70代で博士号 挑戦も常識になりつつある。 理事長・松田妙子の激励を 聞きながら、授与者の顔が どんどん明るくなってくる。 みなさん年齢より若々しく、 応募書類の写真とは見違え るほどいい表情だ。 23 社 会 的 な 知 名 度 が 上 が る に つ れ、 応 募 者 30 介 生涯学習開発財団 活 動 紹 2011年度秋季 研究テーマ 池上萬奈 60歳 ● 研究テーマ 研究テーマ を求めたとの解釈が一般的。この論文では日 当時の日本外交は米国との衝突は辞さない 態度で、中東諸国に特使を派遣し、石油入手 ■研究目的 とを理論とデータで実証していく。事例研究 域社会を持続させる潜在的なパワーであるこ 人間が自然の恵みと禍の両面と真摯に向き 合う時に発生する地域独自の生きる力が、地 ■研究目的 ③今後の展望について調査・分析を試みる。 政 策 と そ の 否 定 的 側 面、 ② 現 時 点 で の 課 題、 用 化政策に負うところが多い。ドイモイ政策採 ベトナム経済の発展は1986年以降採用 されてきたドイモイ(刷新)政策という民主 ■研究目的 ベトナム経済の現状と今後 本の中東外交により生じた日米対立が既に特 の調査地は宮崎県綾町上畑地区と山形県西川 既 に 研 究 成 果 は 経 済 理 論 誌『 経 済 』 の 周年の昨年2011年を機に、①高成長 使派遣前に解決されており、日本政府は悪化 町太井沢地区。綾町では既に確立している自 道筋としてポイントとなる。日本ではまだ閲 書の調査が今後、事実を明らかにするための にある米国立公文書記録管理局新館にある文 依拠する外交資料は日米両国の外交資料。 中でも米国メリーランド州カレッジ・パーク ■合格のコメント 活動を実践していく。また、東日本大震災か 取りながら、独自の地域づくりに貢献できる 崎県綾町、宮崎県椎葉村などの方々と連携を 分を拠点に、熊本県水俣市、事例調査地の宮 できる運動につなげていきたい。出身地の大 地域共同体の生活の質を向上させる地域社 会の教育を、学位取得後は地域レベルで推進 ■合格のコメント 豊富な聴き取り調査や、各界各層の意見の取 ドイモイの「未来社会像」 』作成時に行なった 2006年4月の著書『ベトナムの可能性︱ と な っ て い る。 研 究 の ベ ー ス と な っ て い る 出し、博士号を取得することがひとつの目標 経済理論誌『経済』掲載の「ベトナム経済 の 現 状 と 今 後( 仮 題 ) 」を基に博士論文を提 ■合格のコメント も公表されている。 覧できていない文書で、論文に書かれた事実 を行なう予定だ。 研究テーマ しく問われている。そこで身体に負担が少な は、今回の学習指導要領改訂で存在意義が厳 既存のスポーツによる競技性を重視した指 導で、運動能力の良否で評価する体育の授業 ■研究目的 置として実施の高校3年生を対象とした第4 2012年は2008年から5年間の時限措 体保有率向上には予防接種が不可欠。そこで 日本では麻疹ゼロを目指しているが根絶さ れていない。麻疹は感染性が非常に高く、抗 ■研究目的 健康状態を把握するのは不十分なため、スト る可能性がある。現行の学校健診では、心の の原因となって、口腔の健康状態にも影響す 身体に負担を感じる精神的ストレスは免疫 力低下につながるとされており、様々な疾患 ■研究目的 小学校児童のストレスと 口腔疾患の関連性の検討 く、高い効果が得られる効率の良い動きを歩 ■合格のコメント レスマーカー測定によるストレスを客観的に 今回、自律神経刺激により放出されるクロ モグラニンを精神的ストレスマーカーとして 期定期予防接種が最終年度を迎えるため、予 ■合格のコメント 着目したが、ストレスに特異的に唾液中に発 行・疾走動作から特定・抽出し、短時間でで 予防接種により防ぐことができる感染症に ついて学校教育の役割は大きく、成人や母性 現するRNAやたんぱく質を新たなストレス 正しく評価する手法の導入を図る。家庭環境 ■合格のコメント に多大な影響を及ぼすと考えられる。学童期 マーカーとして探す研究を進めていく。有用 調査による外部からのストレス刺激の評価と、 意識を変えると歩行・疾走動作は変化する ことを核に、体育の教育現場で経験してもら から予防接種手帳の記録を活用した健康教育 性の高いストレスマーカーを測定し、客観的 防接種率向上のための教育結果との関連を解 い、その効果の程を比較分析する。現場では を教育課程に組み入れれば、大きな教育効果 数値によるストレス評価ができれば、いじめ 析することにした。さらに高校生、大学生の ビデオ映像等を駆使した、わかりやすい指導 が期待できる。予防接種の理解を高めるため や不登校、自殺などを防ぐ対策を学校医、教 きる指導法を確立し、体育の授業への導入を 法を提案し、授業への導入を図る。研究成果 の教育、指導は小中高を通して行なわれるこ 促進する。導入効果としては体育・スポーツ を学校での指導に結びつけるための研究室と と が 重 要 だ。 麻 疹 撲 滅 の た め だ け で は な く、 その刺激によるストレス生体応答の評価(唾 実践現場を行き来し、体育・スポーツ分野で 罹患歴、予防接種歴、抗体保有状況を把握し、 研究と実践を結ぶ役割を担いたい。 そのステッ ストレス把握へも応用の可能性がある。 職員、保護者などと協力してとれる。大人の 育の充実につなげてきたい。 今後はインフルエンザなどを含めた感染症教 生かせると信じている。 プとして公立高校の教師としての指導経験を 実践に伴う怪我等のマイナス要因の減少を生 医療法人聖ぶどうの会 中野歯科医院院長 鶴見大学大学院 歯学研究科 液流量の測定・解析など)が主な内容。 60歳 教育前後の結果との相関を解析していく。 ● の信憑性を高める一助として期待している。 統を含めた地域再生を問い直す。 25 り上げは継続しており、さらに現状把握のた 群馬県立勢多農林高校 養護教諭 群馬大学大学院 医学系研究科 らの復興を目指す人々の内発的発展と、それ ● より一層の研鑽を積み、戦後から現在に至る たい。 研究テーマ 57歳 危機管理の視点から捉えた感染対策と 学校保健教育に関する研究 豊島幸子 み、児童・生徒の日常生活に貢献できる。 千葉県立木更津東高校教諭 東京大学大学院 教育学研究科 学校教育高度化専攻 めに今年の4月と7月にベトナムの現地調査 ● を支える学びとは何かを調査し、結論に加え なりたい。 研究テーマ 50歳 意識の変化が 運動パフォーマンスに及ぼす影響 民内利昭 までの日本外交史を教壇で教えられるように 本外交の新局面が浮かび上がる。 治公民館制度と照合しながら考察し、太井沢 ● することがない日米関係を基軸に、産油国と 沖縄国際大学名誉教授 沖縄・ベトナム友好協会会長 明治大学大学院 商学研究科 石油消費国としての信頼を築きながら、米国 70歳 2010年1月号と2011年6月号に掲載 ● では小中学校の自然学習と地域の自然や住民 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 が提唱した多国間協調外交を併行して中東で 54歳 された他、明治大学大学院での研究報告会で 持続可能な発展のための 内発的教育(内発的ESD) 岩佐礼子 との関係を軸に、出羽三山信仰など地域の伝 池上商事株式会社 代表取締役 慶應義塾大学大学院 法学研究科政治学専攻 展開したことを明らかにしている。当時の日 第一次石油危機における日本外交 ︱石油安定供給確保と日米関係︱ 鎌田 隆 中野玲子 決定をうけて 博士号取得支援 介 生涯学習開発財団 活 動 紹 介 生涯学習開発財団 活 動 紹 研究テーマ 68歳 立命館大学大学院 社会学研究科 ● 研究テーマ 研究テーマ 71歳 ● る。 「株主主権」を優先するグループに異議を 当に回そうとする経営者の行動が問題視され 収益を従業員に還元するよりも、株主への配 てきた。例えば景気回復途上、増加した企業 が入り込み、 経済発展を阻害する足かせとなっ 日本の大企業では「従業員主権」が実態で あ る の に、 経 営 者 の 意 識 の 中 に「 株 主 主 権 」 ■研究目的 は中朝国境も訪問し、より多角的な研究も進 国営商店での価格調査等を実施した。本年に 設現場の視察、 ③市民生活のリサーチ、 ④市場・ のレクチャー、意見交換、②工場、企業、建 地調査を行なっている点。①経済研究者から 日米中韓、周辺国の文献資料の分析はもち ろん、この研究の最大の特徴は北朝鮮での現 ■研究目的 的に気付き、社会環境の変化に即応できる組 員の意識改革などにつなげるという本来の目 とする組織が多いが、経営基盤の強化や従業 証取得の目的を、取引上の制約条件への対応 変革の有効性を実証する。ISО9001認 務経験を基にISО9001による企業文化 この研究では、第5の経営資源と言われる 企業文化の本質を考察しながら、今までの実 ■研究目的 ら、企業を支える人材に私の思いを訴え、現 すれば良いか。こうした問題意識を持ちなが 持って仕事に打ち込めるようにするにはどう に、監査役が本来の役割を発揮し、使命感を 日本の企業経営のスタンスを正道に戻すため しているのに危機感を持つ人が少なかった。 監査役在任中、勉強会などで他社の監査役 と交流する中で、全国的に不祥事などが多発 ■合格のコメント な朝鮮半島研究にも着手する計画だ。 鮮の改革・開放の及ぼす影響力など、多角的 般の社会、文化、歴史にも関心を寄せ、北朝 表していく。今後は韓国も含めた朝鮮半島全 かった詳細な地域性についても研究成果を公 農業中心の地区など、これまで知られていな 中心とした西海岸の工業地帯、反対の東側の 朝鮮研究を継続していく。首都ピョンヤンを 2013年前半には博士号を取得予定。取 得後は経済政策、市民社会の動きを中心に北 ■合格のコメント 分析を大いに参考にしてほしい。 テム構築に生かしてほしい。規格運用の事例 た。その有効性を実感し、認証取得後、シス し、組織文化変革機能の視点から規格を捉え え方、意思決定の仕方、行動パターンと定義 組織のメンバーが共有する価値観、ものの考 本質的な部分を理解してほしい。組織文化を、 定の背景、規格の変遷、規格のポイントなど ISОはイギリスで生まれ、日本に移入し れた品質マネジメントシステム規格。規格制 ■合格のコメント れを大きな渦にしていきたい。 実の社会の変化に対応しつつ、正道に戻す流 意識変革を促したい。 めていく予定だ。こうした生の情報と文献資 八代技術士事務所所長 龍谷大学大学院 経営学研究科 唱え、日本の企業経営のスタンスを正道に戻 中小企業におけるISО9001 品質マネジメントシステム 構築・運用による組織文化の変革 八代 弘 織づくりに運用してほしい。特に中小企業に ● 料、先行研究を融合させ、論文のオリジナル 東京大学大学院 人文社会系研究科・ 韓国朝鮮文化研究専攻 す道筋を作りたい。これまでの監査役の実務 50歳 性を高めていく。 北朝鮮の改革・開放政策の 変遷と市場化 文 聖姫 経験をベースに理想の企業経営を打ち立てる。 わが国の コーポレートガバナンスにおける 「株主主権」の撹乱状況に関する考察 西村 毅
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