平成25年度 教育論文 -学校行事を生かした かした特別活動の指導の充実を を目指して- 熊本市立大江小学校 教諭 荒木 隆伸 はじめに 今年は、本校に赴任して5年目になりました。 本 校 で は 、 平 成 2 0 年 度 か ら 、 道 徳 の 時 間 を 要 と し な が ら 、「 な す こ と に よ っ て 学 ぶ」特別活動の指導理念のもと、望ましい集団活動を通して、自主的・実践的な態度 やよりよい人間関係をはぐくむことを本校研究の方向性として取り組んでいます。昨 年度から、本校研究に道徳の時間も視点に加え、道徳教育のより充実した取組を目指 しています。 赴 任 し た 当 時 は 、「『 特 別 活 動 に お け る 道 徳 的 実 践 』 と は ? 」 と い う 難 題 に 取 り 組 ん できたことを思い出されて止みません。しかし、研究を積み重ねるにつれ、子どもた ちの姿から、そのことが次第に理解できてきました。 本 校 で は 、「 ほ ほ え み の 種 を ま こ う 」 と い う 前 校 長 の 呼 び か け の も と 、 子 ど も た ち に「ほほえみの種」と呼ばれている「4つの心」が誕生しました。子どもたちにも分 かり易いように、それらを「 り ん ご 」「 さ や え ん ど う 」「 た ん ぽ ぽ 」「 稲 穂」とアイコン化しています。 さ て 、 平 成 2 0 年 1 月 の 中 教 審 答 申 の 中 で は 、 特 別 活 動 の 課 題 と し て 、「 特 別 活 動 の 充 実 は 学 校 生 活 の 満 足 度 や 楽 し さ と 深 く か か わ っ て い る が 、他 方 、そ れ ら が 子 ど も た ち の 資 質 や 能 力 の 育 成 に 十 分 つ な が っ て い な い 状 況 も 指 摘 さ れ て い る 。」 と 示 さ れ ました。その課題解決のためにも、本校の「4つの心」を目指した取組は、大きな意 味をもつと考えています。 今 回 の 論 文 は 、「 学 校 行 事 を 生 か し た 特 別 活 動 の 指 導 の 充 実 を 目 指 し て 」 と い う 副 題 の 下 、今 年 度 の 5 年 生 の 子 ど も た ち と の 実 践 を ま と め た も の で す 。昨 年 度 に 引 き 続 き「自他 とかかわり な がら、自 己を 生かそ う とする 子ども の育 成」として まとめ るこ とにより本研究を検証し、教育実践のさらなる充実に努めていきたいと思います。 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ P .1 目次 1 2 3 Ⅰ 研 究 主 題 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ P .2 「自他とかかわる」とは 「自己を生かそうとする」とは 「学校行事を生かした特別活動の指導の充実」とは 1 2 3 Ⅱ 研 究 の 構 想 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ P .3 ~ 5 研究の目的 研究の仮説 研究の手だて 1 2 3 Ⅲ 研 究 の 実 際 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ P .6 ~ P .16 検証授業① 検証授業② 検証授業③ 1 2 3 Ⅳ 研 究 を 支 え る 取 組 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ P .17~ P .18 学級会を子どもたちの日常生活に位置づける 個人の月目標でめあての立て方を学ぶ 道徳の時間を大切にする 1 2 Ⅴ 研 究 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ P .19 研究の成果 研究の課題 お わ り に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ P .20 参考文献 -1- 自他とかかわりながら、自己を生かそうとする子どもの育成 -学校行事を生かした特別活動の指導の充実を目指して- Ⅰ 1 研究主題について 「自他とかかわる」とは 授業の中での「かかわり」を、以下のようにとらえている。 学ぶ対象に出合うことで、自分の考えをもつ→他者が学んだ考えを知る→自他の考え を交流する→より高まった学びを獲得していく。 こ の 「 より高 まった学 びを獲 得 していく」 こ と が す な わ ち 、 子 ど も 一 人 一 人 の 能 力 ・ 態 度 を高めることになり、価値観を形成することにつながるのである。学級活動の活動内容 (1)に お い て は 、子 ど も た ち が 共 同 の 問 題 を 考 え る 。そ し て 、話 合 う こ と に つ い て 考 え た り 、 調 査 し た り し て 、 自 分 の 考 え を ま と め る な ど 問 題 意 識 を も つ 。 ま た 、 活 動 内 容 (2) においては、その問題に向かって解決する中で、話し合うことについて考えたり、自分 の現状や学級の現状を知ったり調べたりして、問題意識をもつ。その問題に対して、自 分なりのめあてを考え、そのめあてに向かって活動する中で、友達の意見を参考に活動 の修正をしたり、自分自身であるいは友達と工夫して活動したりしながら、よりよい自 分、よりよい学級にすることとらえている。 2 「自己を生かそうとする」とは 小学校段階においては、学校や家庭・地域での学習などで、その一員としての役割を 果たすことにより、自分のよさや得意分野に気付き、日々の生活の中でそれらを生かそ うとする意欲・態度を育てることと考える。 つまり、自分の役割・役目を果たすことで、自分のよさに気付き、集団の中で自己を 生かそうとする子どもが育つと考えられる。現行の学習指導要領解説特別活動編にも特 別活動の目標改善の一つとして、「道徳の改善を踏まえて、道徳的実践の指導の充実を 図る観点から『自己の生き方についての考えを深め、自己を生かす能力を養う』を加え た。」と明記されている。 集団の一員として自己を生かすことで、自分の役割や可能性に気付き、自分の成長に 実感をもち、自分の生き方についての望ましい認識をもつなど、考えを深めることがで きるととらえている。 3 「学校行事を生かした特別活動の指導の充実」とは 学習指導要領解説特別活動編に「行事や児童の実態から遊離し、形式的なものとなっ て教育効果を十分に発揮していない行事なども少なからず見られる。(中略)特に学校 行事の年間指導計画は、それぞれの行事が教育的価値を十分に発揮し、教育効果を高め ることができるように、弾力性、融通性に富むものであることが望ましい。」と書かれ ている。 さらに、特別活動には、「なすことによって学ぶ」という理念があり、自主的、実践 的な態度を身に付ける活動であるため、学校行事をとおして、自主的、実践的な態度を 育てることにおいて重要な役割を果たしていることが改訂された指導要領の中からも読 み取ることができる。今回の研究は、学校行事をとおして、特別活動の特質を踏まえな がら、指導の充実を検証していくこととする。 -2- Ⅱ 1 研究の構想 研究の目的 本研究は、5年生の実態から作成した学級活動年間指導計画に位置づけられた学校行 事をとおして、学級活動を展開し、子どもの実践を、本校で設定している「4つの心( 図1)」で振り返らせ、子どもたちに自己の成長を実感させていくことにする。 2 研究の仮説 子どもの実態を把握し、「4つの心」を発揮させる題材の工夫を図ったり、学校行事 をとおした実践を「4つの心」で振り返らせたりすれば、子どもが自己の成長に気付く とともに集団の中で自己を生かそうとする意欲や態度が身に付くだろう。 3 研究の手だて 図1「研究の構想図」 仮説から下ろした研究の手だてを表1に示し、研究の検証に生かした。また、研究の 構想図を図1で示す。 表1「仮説から下ろした研究の手だて」 手だて(1) :子どもの実態把握 第5学年の発達段階や実態から、子どもに付けたい力を設定し、学級活動年間計画や題 材を位置づける。 手だて(2) :「4つの心」を発揮させる題材化の工夫 「4つの心」を発揮できる場面を取り入れた題材化の工夫を行う。 手だて(3) :「4つの心」での振り返り 実践をとおして、実践の中の行動は「4つの心」のどの心がはたらいたのか振り返ら せるために「ほほえみいっぱいバッグ」や学級会ノートや学習カードを活用する。 -3- (1) 実 態 把 握 の 方 法 に つ い て 本校では、めざす子どもの姿を 「ほほえみいっぱい大江っ子(図 2)」として、校内に掲示してい る。この「ほほえみいっぱい大江 っ子」は、保護者の願い、教師の 見取りなどから、子どもの実態を 調査し、毎年見直している。そし て、子どもたちの実態に応じて改 良を加えている。 その子どもの姿から、アンケー 図2「ほほえみいっぱい大江っ子」 ト用紙「大江小質問紙(図3)」 (29項目4件法)を作成してい る。例えば、「ほほえみいっぱい 大江っ子」の「 自分を伸ばす」 の中の「①自分の生活を見直し、 規 則 正 し い 生 活 に 心 が け る 」か ら 、 「早寝早起きや朝食をきちんと食 べるなど、規則正しい生活を心が けることができる。」という設問 内容を作っている。そしてアンケ 図 3 「 大 江 小 質 問 紙 ( 高 学 年 用 )」 ート調査を行い、そこから設問項 目の平均値や標準偏差、及び相関 を分析しながら実態分析シートに まとめている(図4)。本学級の 実態として、「 自分を伸ばす」 の項目の「自分を見つめ、自分の よいところを伸ばそうと、努力す ることができる。」は、他の多く の項目と相関を見ることができた。 この項目を伸ばすことで、他の項 目も伸びることが予想される。 この学級の年間指導計画は、教 師の指導すべきことや子どもに任 せることができる自治的な範囲を 見定め、1年間のゴールを見据え て、作成している。この中には、 道徳の時間や総合的な学習の時間、 行事などとも関連を図って作成し ている。 図4「5年3組の実態分析表」 -4- (2) 「 4 つ の 心 」 に つ い て 本校には、道徳の4つの視点か ら考えた、大事にしたい4つの心 がある(表2)。 その4つの心を、子どもたちも 職員も共有するために、マークと 簡単な言葉で示している。 り ん ご の 心 は 、「 自 分 を 伸 ば す 」、 さ や え ん ど う の 心 は「 人 と 仲 よ く 」、 命 を 感 じ る 」、 表 2 「『 4 つ の 心 』 と 『 道 徳 教 育 の 4 つ の 視 点 』」 大 江 小 学 校 で 大 事 にし て い る 4 つ の 心 と 道徳教育の4つの視点 自分を伸ばす →1 主として自分自身に関すること 人と仲よく →2 主として他の人とのかかわりに関すること 命を感じる →3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること た ん ぽ ぽ の 種 は「 稲 穂 の 種 (種 籾 )は「 み ん な の た め に 」の の4つであ みんなのために →4 主として集団や社会とのかかわりに関すること る。これにより、1年生にも4つ の心が一目で分かるようになり、教師もこの絵を使って、子どもに分かりやすく価値 づけすることができる。 (3) 「 ほ ほ え み い っ ぱ い バ ッ グ 」 に つ い て 本校の「めざす子どもの姿」に迫るために、ファイルケースを「ほほえみいっぱい バッグ(図5)」として、子どもたち一人一人が所有している。 そこには、「4つの心」ごとのポケットに、ワークシートなどを入れている。入れ ていくことで、学習の価値付けを図るとともに、子どもたちに「4つの心」を意識さ せることができるように、活用を図っている。 図5「ほほえみいっぱいバッグ」 図6は、学級活動で使用した学習シートを一部抜粋したものであるが、活動を振り 返る場面でどの心で取り組んだかチェックし、そのチェックした心のアイコンで示し て あ る ポ ケ ッ ト の 中 に 入 れ て い く 。学 級 活 動 は も ち ろ ん 、道 徳 の ワ ー ク シ ー ト な ど も 、 この中に入れている。この他、子どもががんばった漢字大会のテストや水泳カードな ども入れていくと、子ども独自の「ほほみいっぱいバッグ」ができる。これにより、 他教科等の関連や、学習の積み重 今回の活動で「ほほえみいっぱいバッグ」の中に入った心はどの心ですか。チェックしよう。 ねを子どもたち自身が実感するこ とができ、学びを「4つの心」で 価値付けることができると考える。 □自分を伸ばす □人と仲よく □命を感じる □みんなのために 図 6「『 4 つ の 心 』を チ ェ ッ ク す る( 学 級 活 動 ワ ー ク シ ー ト よ り 抜 粋 )」 -5- Ⅲ 1 研究の実際 検証授業① 学級活動内容(2) (1) 子 ど も の 実 態 把 握 子どもたちのアンケートから、 特に【自分を伸ばす】の設問項 目の一つの「自分を見つめ、自 分のよいところを伸ばそうと、 努力することができる。」は、 他の項目とたくさんの相関が見 られ、このことを意識した学級 活動に取り組むことで、他の項 目の値も向上し、成果が出ると 予想された。 それらの客観的なデータを参 考に、学級目標の達成に向けて の学級活動と、道徳の時間の指 導計画や総合的な学習の時間、 行事などを意識して、学級活動 年間指導計画(図7)を作成し た。そして、道徳の時間と学級 活動の安易な関連づけは避けな がらも、それぞれの特質を生か して、自然と関連が図られるよ うにしている。 図7「5年3組の学級活動年間指導計画」 学級活動年間指導計画は、1年間を見通して、学級目標の達成に向けた学級活動の 活 動 内 容( 1 )・( 2 )を 意 図 的・計 画 的 に 配 置 す る よ う に し て い る 。活 動 内 容( 1 ) については、予想される議題や活動を緩やかに示しておくことで、1年間の子どもた ちの心の動きや集団の成長の過程を見通した活動の流れを、指導者が意識できるよう にしている。また、「4つの心」をどの時期に重点的にはぐくんでいくかを考慮し、 子どもたちの心と行動の変容を考えながら、活動や体験的な活動を作りだすことがで きると考えた。 年間指導計画の中にある学級目標は表3のとおりである。 これは、4月に5年3組の担任に決ま 表3「5年3組の学級目標」 り、それから子どもたちの実態を担任が 素直な心をもち、 見取ったり、前担任から聞き取ったりし 仲間と教室いっぱいありがとう。 て、「こんな学級にしたい。」と担任の みんなのために動き、 願いを子どもたちに伝えた。そして、子 命を輝かせる 5年3組 どもたちは、「4つの心」から下ろして、どんな学級にしていきたいかを自分たちの 実態と照らして、一人一人に考えてもらった。学級目標が決まると、子どもたち手作 りの学級目標を教室前面に掲示し、いつも意識できるようにしている。 -6- (2) 「 4 つ の 心 」 を 発 揮 さ せ る 題 材 化 の 工 夫 本校での大きな行事は、5月に実施される運動会と、11月に実施される音楽会で ある。運動会は、「自主・自発性・責任をもつことの大切さを自覚すること」、音楽 会は「表現能力を培いながら演奏を楽しむこと」などが目的に掲げられている。 それぞれの行事の目的の意味を鑑み、それらの行事に向けた題材目標を表4のよう に設定した。 表4「検証授業の題材の目標」 「 自 分 を 伸 ば す 」: 行 事 に 向 け て 、 自 分 な り の め あ て を 立 て 、 具 体 的 な 活 動 を と お し て 目標に向かって努力しようとする態度を育てる。 「 人 と 仲 よ く 」: 問 題 解 決 に 向 け て 話 し 合 い 、 実 行 し 、 振 り 返 る こ と を と お し て 、 信 頼 し、支え合って、より楽しく豊かな学級にしていこうとする態度を育てる。 「 み ん な の た め に 」: 行 事 の 成 功 に 向 け て 、 め あ て を 意 識 し な が ら 、 自 分 の 役 割 に 対 し て進んで責任を果たそうとする意欲や態度を育てる。 ● 検証授業①:題材名「運動会に向けて、自分を高めよう」 【5月中旬】 図8のように活動を計画し、題材を考え検証授業に取り組んだ。 事前 活動内容(1) 運動会の 役割を決め よう 検証授業① 事前 活動内容(2) 運動会に向け て、自分を高 めよう 学級目標 意識調査 事後 事後 めあてに 向かって 実践 行事 運動会 事後 振り返り 図8「検証授業①の題材のながれ」 ① 事前活動 本 校 の 運 動 会 は 、5 月 の 第 4 日 曜 日 に 行 わ れ る 。全 て の 学 年 が 徒 走 と 技 走 を 行 い 、 それに加え、2・4・6年生が表現運動を、1・3・5年生が団体運動を行う。そ して、運動会の係を5・6年生が担っている。5年生にとっては係を初めて担うこ とになる。授業に入る前に、子ども自身が今の自分の課題を把握しやすいようにす るために、学級目標「素直な心をもち、仲間と教室いっぱいありがとう。みんなの ために動き、命を輝かせる5年3組」の到達度の意識調査(図9・表5)をした。 図9「学級目標到達度」 表5「学級目標到達度の理由」 ● 植 木 ば ち に 、と き ど き 水 や り を 忘 れ る ●そんなに発表できない。 ことがある。 ●素直な心で反省できないことがある ●危険なことをやるときがある。 ●「 「 あ り が と う 」と な か な か 言 え な い と ● 朝 の ボ ラ ン テ ィ ア は 、ま だ 全 員 が や っ ていない。 ●「 高 学 年 と し て 」と い う 気 持 ち で 動 い ていない きがある。 ●男女別に行動するときがある。 -7- ② 学級活動の実際 活動の流れ 1 学級目標の達成度 を振り返る。 2 運動会 にどんな思いで取り 組んでいるのか を 出 し 合う。 ○教師のかかわり ・子どもの反応 ★評価 ○学級目標の達成度と運動会に向けた意識調査の結果をグラ フで示し、自分の立ち位置に気付く。 ・素直に取り組もうとしないときがあり ます。 ・まだまだ高学年として朝のボランティ アなどで動けていません。 ○ 運 動 会 に 取 り 組 ん で い る 画 像 を 提 示 し 、運 動 会 に 向 け た 一 人一人の思いや願いをもたせる。 3 ・みんなで協力してがんばるためだと思います。 ・家族に自分たちのがんばりを見てもらうためだと思います。 ・学校の伝統をぼくたちが受け継いでいくためだと思います。 ○ 運 動 会 と い う 大 き な 行 事 を と お し て 、学 級 目 標 の 達 成 に 近 づ くことに気づかせる。 ○ 昨 年 度 の 自 分 た ち の 運 動 会 の と き の 姿 を 見 せ 、真 剣 に 踊 っ て いたときの気持ちを想起させる。 ○ ど ん な こ と が 大 切 か を 話 し 合 う よ う に し 、裏 方 と し て の 仕 事 で、子どもが見えない部分は伝える。 運 動 会 は 、何 の た め に行われるのかを話 し合う。 運動会に向けて、自分にできることを考えよう 4 現状を考える。 ○運動会に向けてがん ば り た い こ と・が ん ば っていることを理由 を付けて出し合う。 5 めあてを決める。 6 運動会のめあてを 交 流 し 合 い 、め あ て へ の 意 識 を 高 め た り 、修 正したりする。 7 実践への意欲を高 める。 ○ 昨年の高学年のビ デオを見る。 ○ 班 の 中 で 、が ん ば り た い こ と や が ん ば っ て い る こ と を 出 し 合 い、それに一言感想を添えるようにする。 ○気づいたことを出し合えるようにする。 ○いつ・何を・どうするかなど、運動会まで に取り組む具体的なめあてを考えることが できるように支援する。 ・ 応 援 係 な の で 、 声 を 出 す た め に 、「 あ い さ つ をたくさんする」をめあてにしました。 ・ そ れ だ っ た ら 、「 た く さ ん 」 を 「 何 回 」 か 回 数を入れたら具体的になると思います。 ・そ れ で は「 一 日 10 人 の 人 に あ い さ つ を 自 分 か ら 先 に す る 」に め あ て を 修 正 し ま す 。 ★運動会に向けて、具体的なめあてを決めることができる。 【 思 ・ 判 ・ 実 】( カ ー ド ・ 観 察 ) ○ 昨 年 の 運 動 会 の 映 像 を 見 せ 、高 学 年 が 取 り 組 む 運 動 会 の 様 子 をイメージできるようにする。 ○ 一 生 け ん め い が ん ば る 姿 に 気 づ か せ 、「 め あ て に 向 か っ て が んばりたい。」という意欲をもたせる。 ★ 自分のめあてを積極的に実践しようとする意欲をもてた か。 【感・意・態】(観察) ○ 一 人 一 人 の 伸 び が 学 級 全 体 の 伸 び と な り 、学 級 目 標 の 達 成 に つながり学級全体の伸びにつながることを知らせる。 -8- ③ 事後活動 め あ て を 決 め た 後 、子 子 ど も た ち は 毎 日 の 振 り 返 り を し 、学 習 カ ー ド に 記 入 し て い くようにした。帰りの会でお互いのがんばりや気付きを紹介し合うことで、より意 欲を高めるようにした。 (4) 「 4 つ の 心 」 で の 振 り 返 り 運 動 会 を 終 え 、子 ど も た ち は 、自 分 の 行 動 を「 4 つ の 心 」で 振 り 返 り( 図 10)、感 、感 想 交 流 を 行 っ た( 表 6 )。そ し て 、運 動 会 後 に 、ア ン ケ ー ト 結 果 を 分 析 し た も の が 表 7 で あ る 。 表 4 の 質 問項目【 図 10「 運 動 会 」 自分を伸ばす】では、有意差(あきらかな変容) は、見ることができなかった。これは、運動会に向けて、自分 自 身 の こ と よ り 、係 や 自 分 の 役 割 に 意 識 が 向 い た た め と 考 え ら れ る 。【 人 と 仲 よ く 】【 みんなのために】では、運動会 に 向 け て 、各 係 で 話 し 合 っ た り 、準 備 の た め に 活 動 し た り す る 図 11「 振 り 返 り 」 こ と を と お し て 、感 謝 の 思 い が 高 ま っ た り 、進 ん で 働 く こ と の よ さ を 実 感 し た り し た ことが有意に高い結果になったと推察される。 表6「感想交流の一場面」 Aくん:ぼくのめあては、「10回 以 上 あいさつする」でした。そのめあては毎 あいさつする 日 できたけど、10回 できたけど は少 なかったで す。これからもあいさつを続 けて、「サヤエンドウ」の心 けて を伸 ばしたいです。 Bさん:毎 日 10回 以 上 のあいさつもすごいのに、それを楽 のあいさつもすごいのに 々達 成 して、さらに伸 ばしたいというところがすごい です。 Cくん:ぼくのめあては、「6 年 生 の組 組 体 操 が最 高 の思 い出 になるように、石 拾 いを 50 個 以 上 する」でした。 稲 穂 の心 でがんばり、6 年 生 の組 組 体 操 を見 て、心 がじんとしました。 Dさん:6 年 生 もきっと嬉 しいでしょうね。 しいでしょうね 50 個 も拾 うってさすがです! 「有意に高い結果」を 得られた項目に関しては、 表 7 「 実 践 後 の 意 識 の 変 容 ( N=2 27 設問項目番号・設問内容 子どもたちにその理由を ㉔ 自 分 を 見 つ め 、自 分 の よ い と こ ろ を 伸 ば そ う と 、努 力 す る こ と が で き る 。【 自 分 を 伸 ば す 】 尋ねるようにしている。 ⑯ 日 々 の 生 活 は 、み ん な の 支 え 合 い で 成 り 立 っ て い る こ と を 理 解 し 、感 謝 す る こ と が で き る 。【 人 と 仲 よ く 】 子どもたちは、自分たち ⑰ 働 く こ と の 大 切 さ が 分 か り 、み ん な の た め に 進 ん で 働 く こ と が で き る 。【 み ん な の た め に 】 の変容の理由を次の表8 4 件 法 )」 4月 7月 有意確率 3.04 (0.72) 2.77 (0.86) 3.15 (0.67) 3.27 (0.60) t=-0.59 n.s t=-5 **p< .01 t=-2.53 2.93 3.22 *p < .05 (0.96) (0.89) カッコ内は標準偏差 のようにとらえている。 表8 「『 人 と 仲 よ く 』『 み ん な の た め に 』 変 容 の 理 由 」( 記 述 式 ) 「人 と仲 よく」 みんなが、係 などの仕 などの 事 で 6 年 生 と話 し合 ったり納 得 したりして、6年 したりして 生 ってすごいな ぁと 思 っ た か らだと 思 い ます 。 / 団 体 競 技 の 「 台 風 の 目 」 で、 練 習 の と き はけ ん か ば かり か して いた け ど、後 では班 のみんなに「ありがとう ありがとう。」と思 ったからだと思 います。/一 一 人 一 人 がめあてをもって運 動 会 を大 成 功 させ て、みんなで声 声 を掛 け 合 って、赤 団 も白 団 も 関 係 なく、学 学 校 が 一 つにな れた から だと思 います。 「みんなの た めに」 ぼくは、運 運 動 会 に向 け て、放 送 の 練 習 をが んばりました。 それが 結 果 的 にはみん の た めにな った と 思 います。 一 人 一 人 が みんな の た めに動 く こと が でき ました 。 /運 動 会 の 片 付 け を初 めてしました。私 たち 5 年 生 も高 学 年 として少 しずつ自 覚 が生 まれ、みんなのために みんなのために動 けるよ うになったからだと思 います。 運 動 会 を と お し て 、子 子 ど も た ち は「 は 4 つ の 心 」で 振 り 返 り( 図 11) 11 、な ぜ そ の 力 が 伸 び た か の か を 実 感 を 伴 っ た 理 由 を 述 べ る こ と が で き た 。 表 7 で は 、「 自 分 を 伸 ば す 」 の 設 問 項 目 は 、 平 均 値 の 向 上 は 見 ら れ る も の の 、 有 意 差 は 出 て い な い 。「 分 析 シ ー ト 」 と 照らすと、設問項目㉔を伸ばすことで、他の力も伸びてくることが予想されるので、 今後は、この設問項目の力を伸ばす手立てが必要となってくる。 -9- 2 検証授業② 学級活動内容(2) (1) 子 ど も の 実 態 把 握 運動会の結果を受けて、まずは、自分の課題に気付かせたいと思い、【 自分を 伸 ば す 】へ の 意 識 を 高 め る 必 要 が あ る こ と を 実 感 し た 。そ こ で 、 「4つの心」を同心円状に示し、音楽会(ハートフルコンサー ト)に向けて頑張りたいことを子どもたちに付箋に書かせ、自 分 の 立 ち 位 置 に 気 付 か せ る こ と に し た 。図 12 の よ う に 、子 ど も たちの意識は、 【 自 分 を 伸 ば す 】の と こ ろ に 集 中 し て い る 。 そこから意識を同心円の外側の【 図 12「 実 践 前 『 4 つ の 心 」 と 同 心 円 図 」 人と仲よく】【 みん なのために】に向けていきたいと思った。 (2) 「 4 つ の 心 」 を 発 揮 さ せ る 題 材 化 の 工 夫 ● 検 証 授 業 ② : 題 材 名 「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト に む け て 自 分 を 高 め よ う 」【 1 0 月 中 旬 】 事前 音楽 合奏の役割 や合唱のパ ート決めよ う 事後 検証授業② 事前 学級目標 意識調査 活動内容(2) 音楽会に向け て、自分を高 めよう めあてに向 かって実践 図 13「 検 証 授 業 ② ・ 検 証 授 業 ③ 学級会 活動内容(1) 音楽会に向け て、学級の一 文字を決めよ う 事後 行事 音楽会(ハー トフルコン サート) 事後 振り返り 題材のながれ」 「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」に 向 け て 、図 13 の よ う に 活 動 内 容( 2 )で 、個 人 個 人 の 意識を高め、活動内容(1)で、学級の集団の意識を高めようと考えた。 「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」と い う 大 き な 行 事 の 一 つ に 、活 動 内 容( 2 )と 活 動 内 容 (1)を仕組み、子どもたちの意識を2段階で高めていきたいと考え、題材を設定し た。 ① 事前活動 本校の音楽会は、「ハートフルコンサート」と言い、隣接する県立劇場を貸し切 って行われる。毎年11月に行われ、県立劇場で行うのは、今年で20周年を迎え る。多くの観客を前に、学年単位で、合唱と合奏を行う。年々音楽の質も高まり、 保護者の方々も楽しみにされている。使用する楽器は、当時の父母と教師の会会長 (PTA会長)が毎年トラックで運んでくださっている。役員の方々は、会場のい ろいろなお世話も引き受けてくださっているが、高学年の子どもたちも楽器の搬出 入 、会 場 設 営 や 片 付 け 、当 日 の 進 行 な ど 、自 分 た ち の 係 の 仕 事 を 進 ん で 行 っ て い る 。 授 業 に 入 る 前 に 、子 ど も 自 身 が 今 の 自 分 の 課 題 を 把 握 し や す い よ う に す る た め に 、 学 級 目 標「 素 直 な 心 を も ち 、仲 間 と 教 室 い っ ぱ い あ り が と う 。み ん な の た め に 動 き 、 命 を 輝 か せ る 5 年 3 組 」の 到 達 度 の 意 識 調 査( 図 14・表 9 )を し た 。運 動 会 を 経 て 、 全体的に学級目標への意識が高まってきていると言える。 ② 学級活動の実際 図 14「 学 級 目 標 到 達 度 」 - 10- 表9「学級目標到達度に対する意識」 ●素直な心で行動できないことがある。 ●命を輝かせている実感がない。 ●まだまだ発表ができない場面がある。 ●危険なことをやることがある。 ●「 「 あ り が と う 」と 仲 の よ い 友 達 に し か ●係の仕事をときどき忘れることがあ る ●「 高 学 年 と し て 」と い う 気 持 ち で 動 い ていない。 言えないときがある。 ●あいさつをもう少しがんばりたい。 ② 学級活動の実際 活 動 の 流 れ 1 学級目標や「ハートフ ルコンサート」について のアンケートをもとに課 題に気付く。 ◯どんな思いで取り組んで いるのかを出し合う。 ○教師のかかわり ・子どもの反応 ★評価 ○学級目標の達成度の自己評価の結果や「ハートフルコン サート」に対する意識をグラフで示 す。 ○「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」に 向 け た 一 人一人の思いや願いをもたせるため に、練習している画像を提示する。 ・オルガンなので家でも練習しています。 ・音楽は苦手なので、あまり練習していません。 ハートフルコンサートに向けて、自分にできることを考えよう 2「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」 ○「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」と い う 大 き な 行 事 を と お し て 、 について話し合う。 学級目標の達成に近づくことに気づかせる。 ◯学級のどんな力を高めた ・みんなが協力して頑張る。 いのかを話し合う。 ・みんなで心と音を合わせる。 ・高学年としてみんなを支える。 3 現状を考える。 ○「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」 ○ 班 の 中 で 、 が ん ば り た い こ と や が ん ば っ て い る こ と を 出 に向けてがんばりたいこ し合い、一言感想を添えることで、気付きを出しやすく と、がんばっていることを する。 理由を付けて出し合う。 ・私は、合唱のアルトを毎日歌っています。それは、歌う の が 好 き だ し 、歌 う こ と で み ん な の 役 に 立 っ て い る と 思 う からです。 ・ ぼ く は 、あ ま り 練 習 し て い ま せ ん 。 元 々 音 楽 は 苦 手 だ し 、 練習するのが面倒くさく感じるからです。 今年も楽器運 地域を一緒に び頑張ります。 盛り上げまし ○高学年として行事に取り組む気持ちを自覚できるように 楽しみにして ょう。活躍に期 います。 す る た め に 、い つ も 楽 器 を 運 ん で く だ さ る 地 域 の 方 の 声 を 待します。 聞かせる。 4 めあてを決める。 ○ハートフルコンサートまでに取り組む具体的なめあてを ○「ハートフルコンサート」成 考えることができるように、サンプルなどを示し、支援 功に向けて、どのように取り する。 組むかめあてを決める。 ・みんなの気持ちがまとまるように「一日一回以上は、歌ったり同じパ ートの人と練習したりします。 」 ・地域の方たちに喜んでもらえるように、 「朝のボランティアを20分 間はする」にします。 - 11- ◯「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」 ・ぼくは、練習も頑張るけど、朝のあいさつ運動 のめあてを交流し合う で、地域の方々にあいさつ運動を毎朝続けます。 ・あいさつ運動がんばって。私も時々手伝うよ。 ★ ハートフルコンサートに向けて、具体的なめあ てを決めることができる。 【 思 ・ 判 ・ 実 】( カ ー ド ・ 観 察 ) 5 実践への意欲を高め る。 ○音楽専科の声を聞く。 音楽会は、地域の方々 の支えなどで、20年 間続いています。みな さん一人一人の頑張り ◯「ハートフルコンサート」への思いや願いを語られる映 像 を 見 せ 、「 め あ て に 向 か っ て が ん ば り た い 。」 と い う 意 欲をもたせる。 ★自分のめあてを積極的に取り組もうとする意欲をもてた か 。【 関 ・ 意 ・ 態 】( 観 察 ) ○一人一人の伸びが学級全体の伸びとなり、学級目標の達 成につながり学級全体の伸びにつながることを知らせ る。 が必要です。 ③ 事後活動 めあてを決めた後、子どもたちは毎日の振り返りを し、学習カードに記入していくようにした。また、昼 休みは、子どもたちが自主的に練習に取り組む姿を見 る こ と が で き た( 図 15 )。そ こ に は 、授 業 で は「 面 倒 くさい」と言っていた子どもの姿もあった。 図 15 「 練 習 風 景 」 (4) 「 4 つ の 心 」 で の 振 り 返 り 「ハートフルコンサートにむけて自分を高めよう」の事後活動の取組(1週間)を 終 え 、子 ど も た ち は 、自 分 の 行 動 を「 4 つ の 心 」で 振 り 返 り 、感 想 交 流 を 行 っ た( 表 10)。 子 ど も た ち の 活 動 を 振 り 返 り 、「 4 つ の 心 」 の ど の 心 が は た ら い た の か を 考 え な がら、自己評価や他者評価を行った。 表 10「 感 想 交 流 の 一 場 面 」 Aさん:「一 日 一 回 15 分 間 以 上 アコ ーディオ ンの 練 習 をする」をめあてに 頑 張 りました。 練 習 を 重 ねることで、指 が動 くようになりました。リンゴの心 くようになりました が成 長 したような気 したような がします。「ハ ートフルコンサート」に向 けて、もっとがんばって成 けて 功 させたいです。 Bくん:アコーディオンの演 奏 がとても上 がとても 手 になったね。ぼくも来 年 は、アコーディオンに アコーディオンに挑 戦 した いな。 Cくん:「一 日 一 回 以 上 練 習 して、地 して 域 の方 々の期 待 以 上 のハートフルコンサートにする」を頑 のハートフルコンサートにする 張 りました。ぼくは、リンゴの リンゴの心 を伸 ばしました。地 域 の方 々には、タンポポの タンポポの心 を感 じてもら えて嬉 しいです。 Dさん:私 もCくんと同 じで地 地 域 の方 のことを考 えました。だから、「掃 除 など人 など のために考 えて、 隅 々をそうじする」というめあてで というめあてで頑 張 りました。稲 穂 の心 でコンサートの準 でコンサートの 備 もてきぱき としていきたいです。 みんなで:よし、みんなで力 を合 合 わせてがんばろう! 感 想 交 流 を し て い る 中 で 、 自 然 と 「 が ん ば ろ う ! 」「 よ ー し 、 盛 り 上 げ て い こ う ! 」 などの声が挙がり、ハートフルコンサートに向けての意識の高まりが感じられた。こ のように、子どもたちの自然な会話や行動の中に、道徳的実践の実感と道徳的実践力 が生まれていることを感じることができた。 - 12- 3 検証授業③ 学級活動内容(1) (1) 子 ど も の 実 態 把 握 活動内容(2)で、一人一人が自分のめあ て に 向 か っ て 実 践 し た こ と で 、「 ハ ー ト フ ル コ ンサートに向けてがんばっていることがある」 と い う 設 問 に 対 し て 、殆 ど の 子 ど も が が ん ば っ て い る こ と が 図 16 か ら 分 か る 。 「 2:あ ま り 」 と 答 え た 子 ど も は 、そ の 理 由 と し て 、「 昼 休 み ハートフルコンサートに向けてがんばっていることがある に 委 員 会 活 動 の 仕 事 を や っ て い た の で 、自 分 の 図 16「 「ハートフルコンサートへの意識」 思 う よ う に 練 習 で き な か っ た 。」と 答 え た 。前 述 し た 、図 、 図 9 の よ う に 、子 ど も た ち の 意 識は、【 自分を伸ばす】のところに集中している。次に個人から、学級に意識を向 け 、同 心 円 の 外 側 の【 人 と 仲 よ く 】【 み ん な の た め に 】に 向 け て い き た い と 思 っ た。 (2) 「 4 つ の 心 」 を 発 揮 さ せ る 題 材 化 の 工 夫 ● 検 証 授 業 ③ : 題 材 名 「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト に 向 け て 学 級 の 一 文 字 を 作 ろ う 」 【 11 月 上 旬 】 ① 事前活動 本 校 の 企 画 委 員 会 が 全 校 に 呼 び か け て 、「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト に 向 け て 、 学 級 の意気込みを漢字一字で表そう」という企画がある。それぞれの学級で、話合いを 行 い 、 漢 字 一 字 を 決 め 、 B 4 の 画 用 紙 に 表 し 、「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト 」 当 日 、 県 立劇場の会場入り口に全学級の漢字一文字が掲示される。学級の意識を【 仲 よ く 】【 人と みんなのために】に向けて、高めるための絶好の機会と捉え、題材 として年間計画の中に位置づけていた。 そのため、学級活動に向けて、計画委員も自主的に議題案を決め、一緒に打合せ をし、議題として子どもたちに提示した。そして、一人一人が自分の思う漢字一文 字を考え、その理由を考えて、学級会に臨んだ。 ② 学級活動の実際 活動の流れ 議題名:「ハートフルコンサートに向けて、5 年 3 組にふさわしい一文字を決めよう」 ○教師のかかわり ・子どもの反応 ★評価 【司:司会、副:副司会、企:企画委員、書:ノート書記】 1 学級の歌 司:今から第11回学級会を始めます。 2 はじめの言葉 今 日 の 議 題 は 、「 ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト に 向 け て 、 学 級 3 役割紹介 目標に近づけるような、学級の一文字を決めよう」です。 4 議題の確認 堤:ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト が 近 づ い て 5 提案理由の説明 きました。ハートフルコンサート 6 先生の話 の成功に向けて、学級の心も一つ 7 話合いのめあて にならなければなりません。そこ 「友達の意見と比べながら、 で、学級で漢字一文字を決め、心 意 見 を 言 お う 」「 5 年 3 組 を一つにしたいと思います。心が にふさわしい一文字か考 一つになることで、学級目標に近 えよう」 づくと思い提案しました。 8 話合い 〈小柱①〉 〇活動への意欲を高めるために、昨年の高学年の漢字一文 5 年 3 組 に ふ さ わ し い 、漢 字 字の写真を活用する。 一文字はどれか。 ・「 力 」 が い い と 思 い ま す 。 練 習 し て い て も っ と「 力 強 く 」演 奏 す る 必 要 があると思ったからです。 - 13- 〈小柱②〉 画用紙にどんな表し方をす るか。 9 決まったことの発表 10 感想交流 11 先 生 の 話 12 終 わ り の 言 葉 ③ ・ 「 笑 」が い い と 思 い ま す 。演 奏 す る と き に 、お 家 の 人 に も 、 地域の方々にも笑顔の私たちの姿を見てもらえるからで す。 ・「 実 」 が い い と 思 い ま す 。 実 り の あ る ハ ー ト フ ル コ ン サ ー トにしたいし、実力を付けて行くという点では、提案理 由にある「成功に向けて」と同じだと思うからです。 ・「 挑 」 が い い と 思 い ま す 。 挑 戦 す る こ と で 、「 自 分 を 伸 ば す 」 こ と に も つ な が る し 、「 仲 間 と 教 室 い っ ぱ い あ り が と う」の学級目標にも近づけると思うからです。 ・「 実 」 に 賛 成 で す 。 み ん が 実 り を 実 感 す る こ と で 、 ハ ー ト フルコンサートの成功に近づけると思うからです。 ・「 挑 」に 賛 成 で す 。ぼ く は 、最 初「 力 」と 考 え て い た け ど 、 「挑」の「学級目標に近づける」と聞いて「なるほど」と 納得したからです。 ★学級目標達成に近づける漢字一文字を考えることができ る 。【 思 ・ 判 ・ 実 】( 観 察 ) (提案理由「成功に向けて」や学級目標を意識した発言が 多数出た。多数決で「挑」に決定) ・ただ文字を書くのではなくて、3Dのように浮かび上が るように見えるのがいいと思います。 ・「 挑 」 の 文 字 を 生 か す な ら 、 み ん な が 挑 戦 し て 燃 え て い る ような炎を背景につけたらいいと思います。 ・可愛いキャラクターを付けたらいいと思います。 ・キャラクターもいいとは思うんですけど、一文字にこだ わるなら、文字以外は表さない方がいいと思います。 ・キャラクターもいいとは思いますが、一文字にこだわる べきだと思います。 ・そ れ で は 、字 の 中 に 一 人 一 人 の 顔 を 入 れ た ら ど う で す か ? ・それは、いいと思います。みんなが一つになれる気がし ます。 ・「 3 D 」 も 「 炎 」 も 「 顔 を 入 れ る 」 の ど れ も い い と 思 う の で、3つを合わせたらいいと思います。 ・今 日 の 話 合 い は 、み ん な が 自 然 に 話 す こ と が で き て 、 「挑」 という文字にこだわっていきたいと思いました。僕たち で盛り上げてぜひ成功させたいと思います。 〇昨年度の6年生のハートフルコンサートの映像を見せ、 高学年として初めて臨む実践への意欲を高める。 ★活動に向けて自主的に取り組もうとしている。 【 関 ・ 意 ・ 態 】( 観 察 ・ ノ ー ト ) 事後活動 漢 字 一 文 字 ( 図 17) ) を 決 め た 後 、「 顔 を 映 す カ メ ラ マン係」 「一文字を筆で書く係」 「炎をちぎる係」 「発砲 スチロールを切り抜く係」 「写真を文字に合わせて切り 抜く係」に分かれて、一文字作成に取り組んだ。 漢字一文字が完成すると、一斉に歓声が上がり、自 然と拍手が起き、みんなが笑顔だった。漢字一文字を 見て「ハートフルコンサートに向けて学級みんなでが んばりたい」 「自分の苦手な演奏の部分も挑戦していき たい「 」高学年として初めてのハートフルコンサートな の で 、楽 器 運 び を が ん ば り た い 」な ど の 声 が 聞 か れ た 。 図 17「 学 級 の 漢 字 一 文 字 」 - 14- (4) 「 4 つ の 心 」 で の 振 り 返 り 1 1 月 1 6 日( 土 )、子 ど も た ち は 、県 立 劇 場 の ス テ ージの上で、スポットライトを浴びて、ワーグナー作 曲 の「 タ ン ホ イ ザ ー 大 行 進 曲 」を 合 奏( 奏 図 18 )し 、嵐 が歌う「ふるさと」を合唱した。 図 18「 「ハートフルコンサートの一場面」 「ハートフルコンサート」を終え、子どもたちは、自分の 行 動 を 「 4 つ の 心 」 で 振 り 返 り 、 感 想 交 流 を 行 っ た ( 図 19・ 表 11)。 子 ど も た ち の 活 動 を 振 り 返 り 、「 4 つ の 心 」 の ど の 心 がはたらいたのかを考えながら、自己評価や他者評価を行っ た。感想からも分かるように、自然な会話の中に、道徳的実 践の実感が生まれている。 表 11 図 19 「 感 想 交 流 の 様 子 」 「感想交流の一場面」 Aさん:「タンホイザー大 大 行 進 曲 を演 奏 して、すごく達 成 感 を感 じることができました。これが先 じることができました 生 が言 われた『たんぽぽ たんぽぽ』の心 だと思 います。」 Bくん:「何 と言 っても6年 生 がとてもすごかったので、ぼくはああいう6年 がとてもすごかったので 年 生 になろうと思 いま した。今 回 は、高 学 年 として初 として めてでいつもより大 変 だったけど、楽 しかったです。」 しかったです Cくん:「6 年 生 は、楽 器 運 びもてきぱきとしていたね。めあての『みんなのために びもてきぱきとしていたね みんなのために楽 器 運 びをが んばる』は、6 年 生 にはかなわなかったけど、しっかりできました。来 にはかなわなかったけど 来 年 は6年 生 として、今 まで以 上 に、稲 穂 の心 で、準 で 備 などを頑 張 ろうと思 いました。 Dさん:そうだね。私 たちにとって、来 たちにとって 年 は最 後 のハートフルコンサートなので、来 のハートフルコンサートなので 年 はもっとよい ハートフルコンサートにしたいです ハートフルコンサートにしたいです。そして、今 年 の 6 年 生 のように、下 下 級 生 から憧 れられ る存 在 になっていきたいです。 になっていきたいです そして、ハートフルコ ンサート後に、アンケー ト結果を分析したものが 表 12 「 実 践 後 の 意 識 の 変 容 ( N=2 N= 7 設問項目番号・設問内容 ㉔ 自 分 を 見 つ め 、自 分 の よ い と こ ろ を 伸 ば そ う と 、努 力 す る こ と が で き る 。【 自 分 を 伸 ば す 】 表 12 で あ る 。表 7 の 質 問 ⑯ 日 々 の 生 活 は 、み ん な の 支 え 合 い で 成 り 立 っ て い る こ と を 理 解 し 、感 謝 す る こ と が で き る 。【 人 と 仲 よ く 】 項目【 ⑰ 働 く こ と の 大 切 さ が 分 か り 、み ん な の た め に 進 ん で 働 く こ と が で き る 。【 み ん な の た め に 】 自分を伸ばす】 では、自分自身をしっか 4 件 法 )」 7月 12 月 有意確率 3.15 (0.67) 3.27 (0.60) 3.46 (0.58) 3.54 (0.51) t=-2.31 *p< .05 t=-3.03 **p< .01 t=-0.53 3.22 3.30 n.s (0.89) (0.61) カッコ内は標準偏差 り見つめ、そこから自 分にできることを考え たことで、有意に高い 結果に結び付いたと考 え ら れ る 。【 人と仲 よく】では、初めて地 域の方の声や思いを聞 図 12「 実 践 前 『 4 つ の 心 」 と 同 心 円 図 」 図 20「 「実践後『4つの心」と同心円図」 い た こ と で 、「 支 え 合 い 」 に 気 付 き 、 そ こ か ら 自 分 の 行 動 に 結 び 付 い た と 推 察 さ れ る 。 【 み ん な の た め に 】で は 、有 、有 意 差( あ き ら か な 変 容 )は 、見 る こ と が で き な か っ た 。 し か し 、図 20 に あ る よ う に 、実 践 後 は 、前 述 し た( P .10)図 . 12 と 比 較 す る と【 と と 仲 よ く 】【 み ん な の た め に 】に 貼 っ た 子 ど も た ち が 増 え て い る 。こ れ は【 は 人 自分 を伸ばす】で、自分たちの足元の課題には取り組みつつ、自分から周りの人へ、さら にみんなのために頑張りたいという子どもたちが増えたことが理解できる。子どもた ち は 、 自 分 た ち の 変 容 の 理 由 を 表 13 の よ う に と ら え て い る 。 - 15- 表 13「 意 識 変 容 の 理 由 」( 記 述 式 ) 「自 分 を伸 ばす」 ぼくは、一 一 人 一 人 が頑 張 らないとハートフルコンサートは成 らないとハートフルコンサートは 功 しないと思 った からだと思 います。これからも自 自 分 の力 を高 めて、行 事 などで高 学 年 として活 として 躍 したいです。/ みんなが、挑 戦 する気 持 ちで休 休 み時 間 に自 主 的 に練 習 して、納 得 したからだと思 したからだと います。 「人 と仲 よく」 休 み時 間 に同 じパートの人 じパートの と一 緒 に練 習 したからだと思 います。自 います 分 がまちがっ ていたパートも親 切 に教 えてくれました。/昼 えてくれました 休 み時 間 に、全 員 で練 習 したからだと思 したからだと います。 学 級 が一 つになれました。 「みんなのために」 「人 のため」 」ということを考 えながら動 けるようになりました。これからも生 けるようになりました 活 の中 で、掃 除 時 間 などに「人 人 のため」という気 持 ちで頑 張 りたいです。/ 。/やはり、6年 生 はす ごかったです。準 備 もてきぱきとこなしたり、言 もてきぱきとこなしたり われなくても楽 器 の積 み下 下 ろしを頑 張 ったりし ていました。ぼくたちもそんな6 6年 生 を目 指 していきたいと思 います。 子どもたちの感想にあるように、 「 み ん な の た め に 」で は 、6 年 生 と 自 分 た ち と を 比 較 することで、自分たちへの評価が低くなったことが推察される。しかし、この6年生と いう「モデル」と比較することで、自己評価により客観性が出てくると考える。 3 検証授業の考察 3 つ の 検 証 授 業 を と お し て 、 設 問 項 目 の 変 容 を 図 21 で 表 す 。 **p< .01 **p< .01 ㉔自分を見つめ 、 自 分 *p< の よ.05 いところを n.s 伸 ば そ う と 、努 力 す る こ と が で き る 。 **p< .01 **p< .01 **p< .01 *p< .05 n.s ㉔ 自分を見つめ、自分のよいところを ⑯日々の生活は、みんなの支え合いで成り立って ⑰働くことの大切さが分かり、みんなの ために進んで働くことができる。 伸 ば そ う と 、努 力 す る こ と が で き る 。 い る こ と を 理 解 し 、 感 謝 す る こ と が で き る 。 図 21 「設問項目ごとの変容(調査人数27人 4 件 方 )」 3つの設問項目共に、4月と12月とを比較すると、1%水準未満で有意差を見るこ とができた。設問項目㉔は、検証授業①後に、同心円図を使って「自分を伸ばす」こと を意識させる手立てをとったことが変容の要因の一つとなったと考える。 設問項目⑰は、7月と12月とを比較すると、有意差は出なかった。しかし、4月と 12月とを比較すると、1%水準で有意さを見ることができた。3つの検証授業は、子 どもたちの変容に効果的にはたらいたと考える。 検証授業をとおして、学級目標達成度を活用してきたが、子どもたちの学級目標の到 達 度 の 意 識 調 査 の 結 果 ( 図 22) の よ う に 、 達 成 度 の 高 ま り を 感 じ る こ と が で き た 。 図 22 「学級目標達成に向けた子どもたちの式の変容」 - 16- Ⅳ 1 研究を支える日常的な取組 学級会を子どもたちの日常生活の一部にする 学級会を運営する計画委員の子どもたちは、生 活班の輪番制で担当している。計画委員会の子ど も と は 事 前 に 十 分 打 ち 合 わ せ を し 、図 23 の 学 級 活 動 コ ー ナ ー を 基 に 活 動 を 常 に 振 り 返 ら せ た 。特 に 、 図 23 右 下 の 計 画 委 員 活 動 サ イ ク ル は 、計 画 委 員 会 の進捗状況が、誰にでも分かるように工夫してい る 。表 14 は 、子 ど も た ち と 共 通 理 解 し て い る 、学 図 23「 学 級 活 動 コ ー ナ ー 」 級会本番までの活動内容である。これらの学級活動コーナーにより、子どもたちの自発 的・自治的な実践活動になっている。 表 14 議題集め 議題案の整理 「計画委員活動サイクル」 学 級 目 標 を意 識 して、みんなで学 級 や学 校 のためにできることはないか考 える よう伝 え、日 常 生 活 の 中 で気 付 いたことやみんな で考 えたいこと を議 題 ポストに 入 れるように計 画 委 員 の 子 どもたちが学 級 全 体 に呼 びかける段 階 。 計 画 委 員 の 子 どもと 共 に、議 題 ポストを開 き、提 案 を問 題 解 決 の 優 先 順 位 、適 時 性 等 を整 理 し必 要 感 のある議 題 案 を選 択 する段 階 。 話 合 うことを決 める。そして、計 画 委 員 の子 どもと、提 案 者 と担 任 で、提 案 理 由 議題の選定 を基 に、議 題 を決 定 する段 階 。 計 画 委 員 の 子 ども た ちと 、議 題 から、小 柱 や話 合 いの めあて、集 団 決 定 の 仕 方 、 活 動 内 容 の 焦 点 化 板 書 計 画 まで活 動 内 容 をじっくり話 合 って、焦 点 化 していく段 階 。また、計 画 委 員 の子 どもたちの役 割 (司 会 ・副 司 会 ・黒 板 記 録 ・ノート記 録 など)も決 めていく。 学級会ノートへの記入 一 人 一 人 が自 分 の思 いや考 えを伝 え合 うことで話 合 いが充 実 すると伝 え、帰 りの会 の際 に、学 級 会 ノートに事 前 に考 えをまとめておく段 階 。 計 画 委 員 の子 どもたちと、もう一 度 、話 合 いの柱 や進 め方 などを相 談 し、より具 計 画 の 作 成 体 的 な活 動 計 画 を作 成 していく段 階 。 2 個人の月目標でめあての立て方を学ぶ 学級活動内容(2)は、集団での話合いを通して、 個人の目標を自己決定して、そこで決定したことを、 一人一人が実践し、自主的・実践的な活動を特質とし ている。しかし、自己決定したことが、単に努力目標 に終わることなく、いつ、どこで、何をどのように努 力するのかなどを具体的に決められるようにすること が大切である。さらに、学級活動に充てられる授業時 数 に も 限 り が あ る こ と か ら 、日 ご ろ の 取 組 と し て 図 24 のように、子どもたちは、毎月「月のめあて」を立て ている。学級目標と照らしながら、学習面・生活面に 関するめあてを立て、月の終わりには達成度をチェッ クし、一言振り返りの言葉を添えるようにしている。 これにより自分に合っためあての立て方を学んでいる。 - 17- 図 24「 月 の め あ て 」 3 道徳の時間を大切にする 普段から、子どもたちに道徳的実践力に裏付けられた道徳的実践を充実させていくこ とが大切である。そのためには、本校の研究の視点に沿って、道徳の授業実践も大切に している。道徳的価値という基盤をつくるための授業例を以下に示す。 (1) 主 題 名 : 公 共 で の マ ナ ー 【 役 割 ・ 責 任 】 4 -( 1 ) 資 料 名 「 シ ン ガ ポ ー ル の 思 い 出 」 5 年 生 の 道 徳 ( 文 溪 堂 ) (2) 題 材 の 目 標 【 規 則 尊 重 ・ 公 徳 心 ・ 権 利 義 務 】 公徳心をもって法やきまりを守り、進んで義務を果たそうとする態度を育てる。 学習活動(主な発問) ○教師の支援 1 2 「きまり」について考える。 資料「シンガポールの思い出」 を読んで話し合う。 ・シンガポールから帰ってきた「わ たし」と、丹野さんの話の続きを 考える。 丹野さんの言葉が気にかかった 「 わ た し 」は 、ど ん な こ と を 考 え たでしょう きまりが厳しい からきれいな国 というのは本当 の意味で「きれ い」と言えるの か。 3 これまでの自分のきまりについ てどんな思いで取り組んできた か、振り返る。 教師の説話を聞く。 4 ・子どもの反応 ★評価 ○「マナー」について思いついたことを出し合い、 のアイコンを提示し価値への方向付けをした。 ○放置自転車、たばこの吸い殻、トイレの汚れなどに 着目させ、状況を十分に想像させ「わたし」の気持 ちを考えさせた。 ・【わたし】日本はとても汚い。きまりをつくればよい。 ・【丹野さん】きまりばかりでは暮らしづらくなる。 ○学習シートに記入し、自分の考えを明確にもつこと ができるようにした。 ・「きまりは、罰金を払いたくないから守るのはおか しい。でも自分は守れるかは自信がない。」 ・「きまりがなくてもみんながきれいな国にするのがいい。」 ○気持ちを示すグラフを使った板書の工夫をすること で、価値に気付くことができるようにした。 ★「わたし」の考えが丹野さんの言葉で揺れ動くのを 押さえることができたか。(学習シート、発言) ○グループや全体での話し合いを取り入れ、一人一人 の考えを広げ、それぞれの価値感を共有することが できるようにした。 ★自分の心と態度を振り返ることができたか。(学習 シート) ○本時の学習をとおして思ったことや気づいたことを 出し合い、意欲が高まるようにした。 (3) 価 値 の 自 覚 安心 安全 自由 授業の中 行動 生活 で主題と関 導入 困る 展開後段 係があり、 子どもたち 当然 気持ち 守る 自分 安心 嫌 に 身 近 な 町 「きまり」 何だか 必要 言う 怒る 守る 社会 危険 破る 安全 開後段とで 意識 迷惑 生まれる 窮屈 大切 感じ 図 25 う考えるか を導入と展 感じる 誰か についてど 命 比較した。 国 「子どもたちの発言の比較分析」 これは、子 どもたちの発言を解析ソフトで検定した。出現パターンの似通った語を線で結んだネ ッ ト ワ ー ク で 表 し た も の が 図 25 で あ る 。「 き ま り を 守 る 」 こ と が 、 自 分 た ち の 生 活 を 安 心・安 全 に つ な が る こ と が 、語 彙 同 士 の 相 関 関 係 が 密 に な っ て い る こ と か ら 分 か る 。 このように、道徳的価値の自覚を深めることは、道徳的実践を生み出すエネルギーに なることにつながると考える。 - 18- Ⅳ 1 研究のまとめ 研究の成果 (1)子どもの実態把握 表 15「 1 学 期 と 3 学 期 の 『 4 つ の 心 』 の 変 容 」 自分を伸ばす 人と仲よく 命を感じる みんなのために 5 月上旬 11 月 下 旬 5 月上旬 11 月 下 旬 5 月上旬 11 月 下 旬 5 月上旬 11 月 下 旬 3.2 3.5 3.3 3.5 3.1 3.3 3.2 3.4 【自分を伸ばす】の項目の一つ「自分を見つめ、自分の よ い と こ ろ を 伸 ば そ う と 、努 力 す る こ と が で き る 。」を 意 識 した学級活動に取り組むことで、 【 自 分 を 伸 ば す 】の 項 目 の 値 が 伸 び た ば か り か 、他 の 設 問 項 目 の 値 も 向 上 し て い る( 表 15)。図 26 は 、11 月 下 旬 の 子 ど も た ち の 姿 で あ る 。進 ん で 図 26「 朝 の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 の 様 子 」 ボランティア活動を行う子どもたちが増えている。運動会 で「 石 拾 い を 50 個 以 上 す る 」こ と を め あ て に し て い た 子 ど も が 、運 動 会 後 、朝 か ら 黒 板に「朝ボラがんばろう!」と書き、みんなに呼びかけた。すると、今では子どもた ちの日常での自然な活動となった。3学期の始業式の日、朝から白い息を吐きながら 自主的に体育館の床を拭いている子どもたちの姿があった。 (2)「4つの心」を発揮させる題材化の工夫 特別活動のねらいに応じて、題材を設定 し、題材の目標の中に「4つの心」を設定 した。そして、学級活動に取り組み、子ど もたちが自己決定したことを実践しながら、 学 習 カ ー ド( 図 27)な ど で 毎 日 実 践 を 振 り 返り、友達の考えや道徳的実践の姿を共有 することで、子どもたちが自分自身の成長 を実感することができたと考える。 (3)「4つの心」での振り返り 学 習 カ ー ド( 図 27)の 一 番 下 に は 、「 4 つの心」のチェック項目がある。自分の活 動を振り返って、どんな心がはたらいて実 践したのかをチェックして「ほほえみいっ ぱいバッグ」に入れている。この積み重ね に よ り 、道 徳 的 実 践 の 意 識 が 高 ま っ て い る 。 子どもたちは、日常生活の中でも、自分の 行動や友達の行動を「4つの心」で価値付 図 27「 学 習 カ ー ド の 実 際 」 け、道徳的実践の姿に気付くようになってきた。 2 研究の課題 ( 1 )教 師 の 見 取 り や 客 観 的 な 分 析 を し な が ら 、見 通 し を も っ て 年 間 計 画 を 作 成 す る 必 要 がある。成果のあった取り組みは、次年度につなぐ必要がある。 ( 2 )特 別 活 動 の 特 質 を 十 分 踏 ま え た 上 で 、道 徳 の 時 間 と の 安 易 な 関 連 づ け は 避 け な が ら 、 より効果的な道徳的実践の場となる学級活動の題材を作っていく必要がある。 ( 3 )子 ど も た ち に 成 長 の 実 感 を 味 わ わ せ る 、振 り 返 り の 時 間 を 十 分 確 保 す る 必 要 が あ る 。 - 19- おわりに 検 証 授 業 ② の 授 業 を 参 観 さ れ た 、熊 本 県 特 別 活 動 会 長 の 清 村 幸 一 校 長 先 生 か ら 、次 の よ う に 言 葉 を い た だ き ま し た 。「 行 事 に 取 り 組 ま せ る と き に 、 や や も す る と 、 つ い き つ い 口 調 で 指 導 し て し ま う こ と も あ る が 、今 日 の 授 業 の よ う に 、子 ど も の 思 い を 大 事 に し て 、心 を 掘 り 起 こ し て 取 り 組 む こ と が 大 事 な ん だ と 改 め て 学 ば せ て も ら い ま し た 。」 私 の 実 践 は 決 し て “ 特 別 ” な 実 践 で は あ り ま せ ん 。 内 容 を 変 え る と 、 ど こ で も 誰 で も で き る 実 践 で す 。そ の 実 践 を 評 価 し て い た だ き 、ほ っ と す る と 同 時 に 嬉 し く 思 いました。 さ て 、検 証 授 業 ② の あ と 、子 ど も た ち は そ れ ぞ れ の め あ て に 向 か っ て 取 り 組 み ま し た 。 そ し て 、 本 番 を 迎 え た 1 1 月 1 6 日 ( 土 )。 子 ど も た ち は 、 県 立 劇 場 の ス テ ー ジ の 上 で 、ス ポ ッ ト ラ イ ト を 浴 び て 、堂 々 と ワ ー グ ナ ー 作 曲 の「 タ ン ホ イ ザ ー 大 行 進 曲 」 を 合 奏 し 、嵐 が 歌 う「 ふ る さ と 」を 合 唱 し ま し た 。い ず れ も 難 易 度 が 高 く 、不 安 も あ りましたが、最高の発表ができました。 「ハートフルコンサート」の後、子どもたちが、自分たちの実践を振り返る中で、そ れぞれ友達の実践に一言感想を添えながら、友達の行動を価値付けていくと、一人一人 の表情が明るくなっていきました。そして私が、子どもたちの前で、保護者の方々から いただいた「ハートフルコンサート」の感想を、読み上げると、子どもたちの表情はさ らに輝き自然にほほえみが生まれました。 「ハートフルコンサート」を終えた11月下旬、6年生が修学旅行のために出発した 日 の 朝 の こ と で す 。教 室 の 黒 板 に 、「 今 日 は 6 年 生 が い ま せ ん 。5 年 生 が 学 校 の リ ー ダ ー として2日間がんばりましょう!」と書かれていました。そして、子どもたちは朝から 箒を手に、落ち掃きや、委員会の仕事に精を出していました。そこには、ゆっくりでは ありますが、確実に成長している子どもたちの姿がありました。 このように、子どもたちの成長を感じたとき、私自身が子どもたちからエネルギーを もらうことができました。そして、子どもに還るような特別活動の指導の充実をさらに 積み上げていきたいという思いが益々強くなりました。 このように、研究をまとめる機会を与えてくださった、熊本市教育委員会並びに関係 各 位 様 、そ し て 共 に 研 究 実 践 を 積 み 重 ね て い る 本 校 職 員 と 子 ど も た ち に 感 謝 い た し ま す 。 【参考文献】 ○ 小学校学習指導要領解説 総則編 文部科学省 ○ 小学校学習指導要領解説 道徳編 文部科学省 ○ 小学校学習指導要領解説 特別活動編 文部科学省 ○ 心を育て、つなぐ特別活動 ○ KH Coder 2.x リ フ ァ レ ン ス ・ マ ニ ュ ア ル - 20- 杉田 洋編 樋口 耕一 文溪堂 立命館大学産業社会学部
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