2.ガイドラインに基づいたLED道路照明灯設置について[PDF:410KB]

ガイドラインに基づいた LED 道路照明灯設置について
相武国道事務所
管理第二課
猿ヶ澤正人
1.はじめに
北海道洞爺湖サミットで世界に約束した温室効果ガスの排出削減目標の達成や道
路維持管理費の削減、東日本大震災による電力不足のためにも省エネルギー技術が
注目を浴びている。
これらの背景の中、発光ダイオード(Light Emitting Diode) (以下「LED」という)
照明技術の進展やコスト低減に伴い、使用電力の節減などを目的として業務用や家
庭用の LED 照明の導入が急速に進んでいる。国土交通省においても平成23年10
月18日付けで「LED 道路・トンネル照明導入ガイドライン(案)」が通知されたと
ころである。
2.LED 照明について
LED は、従来の高輝度放電ランプ(High Intensity Discharge Lamp)(以下 HID(HID ランプ
とは水銀灯やメタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ)ランプの総称である。)に変
わる照明である。LED 照明の参考写真を図1~4に示す。
図1
LED 照明器具
図3
LED 光源
図2
図4
LED モジュール
高圧ナトリウム光源
LED 照明(図1)は、LED チップ(単に LED とも呼ばれる)を複数個基板に実装
した LED モジュール(図2)と呼ばれる光源を灯具に取り付けて使用する。そのた
め、LED 照明ではランプと灯具が一体となって製作される。
次に、LED 照明と水銀灯照明の照射について図5、6に示す。LED 照明(図3)と水
銀照明(図4)を比較すると LED 照明は道路外への光が低減され車道部のみが照らされ
ているように見える。それに対し、水銀灯照明は道路外へも照射していて広範囲が照らさ
れているように見える。
図5
LED照明灯
図6
水銀灯
3.LED 照明改修・設置の基準と相武国道管内の施工状況
LED 照明の新規導入又は HID ランプ照明更新に当たっては、照明器具の設置などに係
わるイニシャルコストと照明の電気料などに係わるランニングコストを合わせたライフサ
イクルコスト(以下「LCC」という)が HID ランプによる道路照明と同等かそれ以上の
経済性を確認する必要がある。設計条件とコスト比較の図7・表1を下記に示す。
光源の設定は図7のフローで LCC の比較から判断をする。表1のとおり LCC を算出
すると HID 照明に比べ LED 照明が優位であることがわかる。
図7
設計条件の設定
引用:LED 道路・トンネル照明導入ガイドライン(案)
表1 コスト比較例
LED照明(120W)
高圧ナトリウム照明(180W)
水銀灯(400W)
灯具の価格
約20万円
約6万円
約6万円
工事費
約49万円
約46万円
約49万円
15年間メンテナンス不要
6年または10年ごとにランプ
等の交換が必要
3年または10年ごとにランプ
等の交換が必要
ランプ灯の交換
不要
約10万円/15年
約15万円/15年
電気代
約13万円/15年
約25万円/15年
約45万円/15年
メンテナンス
維持管理費
約13万円/15年
約35万円/15年
約60万円/15年
ランプの寿命
維持管理費合計
60,000時間(15年)
24,000時間(6年)
12,000時間(3年)
安定器の寿命
60,000時間(15年)
40,000時間(10年)
40,000時間(10年)
ライフサイクルコスト
約85万円/15年
約87万円/15年
約115万円/15年
引用:事務連絡(平成23年10月20日)「 LED 道路照明灯の導入について」
相武国道事務所では、ガイドライン導入後に LCC の差が大きい水銀灯 150 灯(昨年度:
88 灯、今年度:62)を LED に改修する工事を行っている。管内の水銀灯はすべて共架型
であるがため、今後 LED 化を進めるものは自立型の高圧ナトリウムランプになる。
高圧ナトリウム照明(約 4000 灯)については今後の15年間で LED 化する計画である。
4.LED 照明設計について
LED 照明は図5、6で示したとおり光の指向性を持っており、設置箇所の条件の変化
で器具の性能を検討する必要がある。管内の工事は共架照明の改修工事であるため、現地
ごとに状況が異なり、照度計算の作業が非常に重要であった。検討結果を図8~図11、
表2に示す。
高出力照明器具の場合
表2 設計照度計算表 管理番号
16U-3327
東電柱
図8
図9
図10
図11
平均照度
から
10Lx確保
判定
判定
判定
判定
路肩の アーム長:0.1m
(基準 アーム長:0.1m (基準 アーム長:1.1m (基準 アーム長:1.1m (基準 (照明灯左右20mずつ) に必要な
灯具高さ 道路幅員
距離
アーム長
角度:5° 10.0Lx) 角度:10° 10.0Lx) 角度:5° 10.0Lx) 角度:10° 10.0Lx) ア ー ム 長:調整
(A)
※1
灯具傾斜角:5°
8000
6700
2400
8500
6500
6300
16D-3343
16D-3343
16D-3389
8500
6500
2600
16D-3405
8.8 ㏓
NG
9.7 ㏓
NG
10.2 ㏓
OK
10.9 ㏓
OK
-
-
2.7 ㏓
NG
3.5 ㏓
NG
3.5 ㏓
NG
4.4 ㏓
NG
10.0 ㏓
4.8 M
4.2 ㏓
NG
5.2 ㏓
NG
5.3 ㏓
NG
6.5 ㏓
NG
10.2 ㏓
3.2 M
適用
架空線が多く、新設が困難なた
め向かい側の電柱に設置
共架柱では、平均照度を確保すること
が困難であり、道路線形が変わること
から別途調整とする。
8.3 ㏓
NG
9.4 ㏓
NG
9.8 ㏓
NG
10.6 ㏓
OK
-
-
-
6.4 ㏓
NG
7.6 ㏓
NG
8.0 ㏓
NG
9.1 ㏓
NG
-
-
-
8000
6600
3500
9.5 ㏓
NG
11.2 ㏓
OK
11.8 ㏓
OK
13.4 ㏓
OK
-
-
-
16D-3505
8500
7200
1700
9.4 ㏓
NG
10.1 ㏓
OK
10.5 ㏓
OK
10.8 ㏓
OK
-
-
-
16D-3512
8500
7100
1000
10.5 ㏓
OK
10.8 ㏓
OK
11.2 ㏓
OK
11.1 ㏓
OK
-
-
-
8500
6600
3100
16D-3405
16D-3626
16D-3626
7.3 ㏓
NG
8.4 ㏓
NG
8.8 ㏓
NG
9.8 ㏓
NG
-
-
-
10.7 ㏓
OK
12.4 ㏓
OK
12.9 ㏓
OK
14.3 ㏓
OK
-
-
-
現場条件で変化があるのは灯具の取付高さ、路肩からの距離、道路の幅員である。今回
は図8~11の様に共架アームの長さや角度を変えることで照度の確保を行った。なお満
足しなければならない照度は 10lx である。
結果は表2のとおりである。当初の設置位置では満足できない場合、角度を変えるだけ
で照度を満足する箇所や、長さを伸ばしても照度を満足できない箇所もあった。そのよう
な箇所では自立柱を建てることや高出力の光源を使用して照度を満足させた。
HID 照明ではこれらの作業を行わずとも照度の確保が可能であった。これは HID 照明
が無指向性で広範囲の照射が可能であったからである。
また、LED 照明は保守上で問題が生じている。LED 照明では不点灯を確認しても HID
照明のようにランプの交換だけでなく器具ごとの交換となる。しかし、 LED 照明器具は
メーカーごとの製品であるため、受注生産品になってしまう(入荷に時間(約2ヶ月)が
かかる)。予備品の保管を考えても LED 照明は精密機械であり保管状態により寿命が短く
なるため在庫の保管が困難である。これは、今後の運用のための大きな課題の一つである。
5.まとめ
LED 照明を使用することで省エネルギー化が可能であるということは周知の事実であ
るが、LED 照明は照射特性のように HID 照明と異なる特性がある。それらの特性を考慮
した上でガイドラインでは機器仕様を定めているところであるが、共架照明の例のように
設計条件の設定ができていない例も存在する。そのような条件に対して適切に施工を行う
ためにも LED 照明の特性を理解した上で施工を行う必要がある。
同時に、ガイドラインで網羅できていない事象については追記を行う必要があり、各工
事の結果を参考にしてガイドラインの修正を行う必要があると思われる。