第18号 - 創価大学附属図書館

図書館報
2012 . 7 vol.18
SEASON
特集
池田文庫
十五周年記念展示会
ISSN 1349-3760
法科大学院図書室 島田館長 『思い出に残るこの一冊を』… 2
特集 池田文庫十五周年記念展示会… 4
連載 第 2 回(全4回)
CETL 山崎めぐみ准教授『探し物を見つける場所』… 6
図書館からのお知らせ … 8
この一冊を』
島田新一郎
(しまだ しんいちろう)
購入して読み始めたことを今で
訂 民 法 総 則︵ 民 法 講 義 Ⅰ ︶﹂ を
す。私も、
大学1年生のとき﹁新
妻栄著﹁民法講義﹂シリーズで
書の定番は、岩波書店刊行の我
ていました。当時の民法の教科
あった小さな図書室で勉強をし
無く、多くの学生は文系A棟に
た昭和
年当時、中央図書館は
私が創価大学法学部に入学し
きましたが、実務家として必要
書面を数え切れないほど書いて
み、訴状や準備書面などの訴訟
法律に関する様々な文献を読
を経た今、概説書や判例集等々
なりました。大学入学から
の法曹人生の原点となる一書と
ベ十数回は読むことになり、私
学を卒業するまでの4年間に延
先生の﹁新訂民法総則﹂は、大
るようになりました。この我妻
年
も覚えています。
聞きながら、5回位読み直した
る舟橋淳一先生の民法の講義を
す。それでも、芸術的ともいえ
苦しかったことを思い出しま
当然なのですが、当時はとても
一つですから理解できなくても
でも民法では最高峰の概説書の
講義シリーズは、おそらく現在
ので、古典的名著を読んでもそ
きは社会的な経験値が足りない
れたりします。しかし、若いと
典的名著を読みなさい﹂と言わ
かりませんので、ひとまず﹁古
いっても、何が良本かはよくわ
られています。しかし、良本と
くさん読みなさい﹂と言い続け
私の学生時代から﹁良本をた
とされる﹁読解力﹂と﹁文章力﹂
頃に、ようやく内容が理解でき
﹁読解力﹂と﹁文章力﹂とは、
もっとも高校を卒業したばか
文化復興﹂を実現するために始
厳密に言えば別物ですが、定評
を 身 に 着 け る 訓 練 の 第 1 歩 が、
まったものですが、学生の皆さ
りの大学1年生の知識と経験で
特に社会的な紛争をいかに公
んに即して言えば、
﹁活字文化﹂ のある良本を我慢強くしっかり
この﹁新訂民法総則﹂の読み込
平に解決するかが主題となる法
とは
﹁読書をする習慣そのもの﹂ と 読 み 込 む こ と に よ っ て、
﹁読
は、日本語の字面を追うことは
曹にとっては、この社会的経験
解力﹂も﹁文章力﹂もある程度
みにあったことは間違いないと
値を高めることは非常に重要で
です。そして、なぜ﹁読書の習
向上することは、経験上、間違
できても、内容は全く理解でき
す。物事を公平に解決するため
慣化の復興﹂が必要なのかとい
いありません。書かれているこ
感じています。
には、物事を多面的・多角的に
えば、学生の皆さんの社会的な
ませんでした。我妻先生の民法
理解していること、物事の捉え
ませんし、何より優れた文章に
論理的な関係性を考えざるを得
との意味内容を本当に理解しよ
実社会にでれば実感します
です。
経験値を高めて、人間的・社会
す。
し た が っ て、 学 生 時 代 に は、
験値を高める絶好の機会を失っ
ことは益々減少して、社会的経
ておかないと、将来、本を読む
いうのも、ここで習慣づけをし
物 事 の 理 解 に バ ラ ン ス が と れ、 慣化して欲しいと思います。と
が、より多角的・多面的になり、 が、それと同じ程度に読書を習
習慣化されていると思います
や携帯電話を使うことはすでに
す。皆さんは、スマートフォン
ひ習慣化して欲しいと思いま
は社会人にとって大きな武器と
パーを書き上げる力を持つこと
のことを報告書やリサーチペー
確に問題点や課題を理解し、そ
人は意外に多くありません。的
ではありますが、実際にできる
は、社会人として不可欠な能力
書き上げるスキルがあること
の報告書を、限られた時間内に
せん。過不足のない的確な内容
つも書けなければ仕事になりま
ちょっとした﹁報告書﹂のひと
ます。
本を読んでいって欲しいと思い
めないというくらい徹して良い
生活を大切にして、これ以上読
どうか、かけがえのない大学
ということです。
いう経験値を高めることが必要
様々な日本語の表現に触れると
を 考 え る 経 験 値 を 高 め る こ と、
読 書 に よ っ て、 論 理 的 に 物 事
と が で き る か ら で す。 つ ま り、
彩な日本語の表現方法を学ぶこ
が、 ど ん な 職 場 で あ っ て も、 たくさん触れることによって多
てしまうからです。
なります。
うになるわけです。
正しく理解することがで き る よ
り、書かれている内容を 、 よ り
向上に直結するわけです 。 つ ま
ことが、前述した﹁読解 力 ﹂ の
て、この社会的経験値が 上 が る
洞察にも深みができます 。 そ し
に直面する社会的事象の 捉 え 方
れば、自分の人生におい て 様 々
いきます。社会的経験値 が 高 ま
﹁ Soka Book Wave
﹂運動
は、創立者が提唱される﹁活字
自らの社会的な経験値を 高 め て
35
52
方に偏りがなくバランスが取れ
1977 年 創価大学法学部法律学科入学(7 期)
1981 年 同卒業
1989 年 司法試験合格
1990 年 最高裁判所司法研修所入所
1992 年 同所修了・弁護士登録(東京弁護士会)
1998 年 上智大学大学院法学研究科博士前期課程入学
2000 年 同課程修了(法学修士)
2004 年 創価大学法科大学院教授
うとすれば、どうしても文章の
経歴
的に大きく成長して欲しいから
法科大学院研究科長補佐
ていることが不可欠だからで
法科大学院図書室館長
じ て 他 人 の 経 験 や 思 考 を 学 び、 たくさんの本を読むことを、ぜ
す。そのため、人間は読 書 を 通
験できることには限りが あ り ま
一 人 の 人 間 が、 一 生 の 間 に 経
くことが大事です。
断基準を少しずつ作り上 げ て い
身のなかに、良本かどう か の 判
かく、たくさん読んで、 自 分 自
ん読む﹂ということです 。 と に
で皆さんへのお勧めは﹁ た く さ
面白くないのが普通です 。 そ こ
の 内 容 の 奥 深 さ が 理 解 で き ず、
『思い出に残る
寄せられました。
と思いました﹂など、感動の声が多数
感 し ま し た。 自 分 も も っ と 勉 強 し よ う
山の本を読まれたいたことを改めて痛
た﹂、﹁創立者が本を愛され、本当に沢
来 場 し た 方 か ら は、﹁ 創 立 者 の 若 き
日からの勉学求道の姿に感動しまし
特集 池田文庫十五周年記念展示会
創価大学中央図書館に設置されてい
る﹁池田文庫﹂が、本年5月8日で開
設 十 五 周 年 を 迎 え、 5 月 3 日 か ら 約
1 ヶ 月 間、
﹁池田文庫十五周年記念展
示会﹂を開催いたしました。
池田文庫は、創立者から創価大学に
寄贈された約7万冊の蔵書で構成され
ており、哲学、政治、経済、法律、科
学、文学など幅広い分野の図書があり
ます。
この度の展示会では、創立者が師事
し た 戸 田 城 聖 先 生 の も と で 学 ん だ 際、
使用された教科書や創立者の直筆揮毫
のある図書をはじめ、貴重な図書を展
示しました。また、創立者の若き日の
読 書 や 世 界 の 知 性 と の 対 話 に も 触 れ、
創立者の幅広い見識をご紹介しまし
陶と読書によって築かれたのだと深く感銘を
た。
池田先生が若き頃からどのように学んでこら
受けました。︵ 代 女性︶
しました。創大で教員免許を取得し、教師と
池田先生の若き日からの勉学求道の姿に感動
決意しました。︵ 代 男性︶
して現場にいますが、更に勉強していこうと
ら講義をお受けしているとの思いで力をつけ
私は高校生ですが、日々の授業を池田先生か
れ た か を 知 る こ と が で き 感 銘 を 受 け ま し た。
来場者の声
30
ていきます。︵ 代 男性︶
戸田大学について朝早くから戸田先生と勉強
女性︶
していたことを知りました。私は受験生です。
朝勉強を始めます。︵高
読書が大好きです。大学生になったらこの図
書館で勉強したいです。︵ 歳 女性︶
入学式のスピーチ引用図書で紹介されてい
た﹁努力﹂というのがあり、心に残りました。
︵ 代 女性︶
した。︵ 代 女性︶
想をさらに広めゆく決意と原点の日になりま
素晴らしい展示、感動しました。創立者の思
40
高3の息子ときました。師弟のすばらしさを
改めて感じました。受検合格を願いながら展
示を見させていただきました。︵ 代 女性︶
池田先生が本を愛され、本当に沢山の本を読
る と 思 い、 強 く 胸 を 打 た れ ま し た。
︵
︵ 代 女性︶
代 今 日 よ り は、 読 書 を こ こ ろ が け て い き ま す。
素 晴 ら し い 展 示、 あ り が と う ご ざ い ま し た。
男性︶
も も っ と 勉 強 し よ う と 思 い ま し た。︵
女性 卒業生︶
戸田大学での教科書がとても興味深かったで
20
す。読書をしようと思いました。
︵ 代 男性︶
わかりました。池田先生が読まれた本を拝見
代 男
若き日の池田先生の薫陶を身近にふれ、目の
非常に興味深い展示でした。私ももっと学ん
でいきたいと思いました。︵ 代 男性︶
情を結ばれた土台は、若き日の戸田大学の薫
時間をおしんで、読書し知性を磨いて、生涯・
60
勉強だと決意しました。︵ 代 女性︶
60
20
池田先生が世界各国の指導者から尊敬され友
30
性︶
で き て 非 常 に う れ し く 思 い ま す。
︵
若き日に戸田大学でいかに学ばれたか、よく
50
代 まれたいたことを改めて痛感しました。自分
戸田先生との師弟がこの戸田大学の講義にあ
40
3
7
40
10
さめるような思いがしました。︵ 代 女性︶
20
50
10
す。長女の場合は特に、「日本語で」
探し物を
見つける場所
連載第 2 回 (連載全 4 回)
山﨑めぐみ 准教授
「読めて」「好きな」本がなかなか見
ていくうちに、「このことについて
つかりませんでした。そこで大活躍
もっと知りたい。」「この図鑑は家に
したのが図書館です。彼女は、とり
ほしい。」と思うようになるのだと
あえずいろいろな本を借りて読み始
思います。本屋さんでおねだりされ
めました。シリーズになっている本
るのは、図鑑がほとんどです。
が好きらしく、とりあえず第 1 巻
好きな本を探すために本屋さんを
を読んで好きかどうか探りをいれて
何軒もまわったり、コンピュータで
いました。あれだけ、四苦八苦して
自分の知りたいことを調べるのも楽
読んでいた日本語の年齢相応の本で
しいとは思います。でも、図書館に
したが、今では 18 巻シリーズを楽
行くと、何軒もの本屋さんを合わせ
しそうに読んでいます。娘が同じ本
たくらいの本や、図書館司書の方に
を何回も読みたい、という気持ちに
教えてもらいながら調べることがで
なったらその本を買うようにしてい
きます。大学生の皆さんも、自分の
ます。
好きな本を見つけたり、調べ物をし
私には小学生の子供が 2 人いま
好きなのかを紹介したいと思いま
一方、長男は「調べる」ことが大
す。2 人とも、図書館に行くことが
す。みなさんは、「好きな本」はあ
好きです。家にも図鑑はありますが
大好きです。2 年以上も前の話にな
りますか ? どの本が面白いか、ウェ
全巻そろっているわけではありませ
りますが、私が以前働いていた大学
ブサイトや本屋さんで立読みをしな
ん。そこで活躍するのが図書館で
では、大学図書館と市民図書館がと
がら探したりしませんか ? それでも
す。知りたいことをノートに書き出
なりどうしでした。これ幸いと、子
なかなか、
「買った本がおもしろかっ
し、図書館に行き、本やコンピュー
供の学校が休みで私がどうしても仕
た」「もう一回読んでみたい」と思
タでいろいろ調べてきます。図書館
事に行かなければならない時には、
う経験は少ないのではないでしょう
のテーブルで、図鑑を見ながら絵を
私は大学図書館で、子供たちは市民
か。
描いたり、説明をメモしています。
図書館で過ごしていました。市民図
前回、書かせていただきましたが
書館では、子供の喜びそうなクッ
私(私の家族)は、アメリカで長い
ションが置いてあり、そこで寝そべ
間生活をしていました。子供たち
りながら本をゆっくり読むことがで
は、2 年前に日本に来るまではアメ
きました。私は、ノートパソコンで
リカ生まれのアメリカ育ちです。帰
大学図書館の電子データベースを使
国して困ったことがありました。そ
いながら仕事をしていたという感じ
れは、子供たちは本を読むことが好
です。
きなのですが、年齢相応の「読める」
今回は、子供たちがなぜ図書館が
本を見つけることが難しかったので
に「発表」してくれるのです。調べ
たりと図書館を大いに活用してみて
ください。
それを、画用紙にまとめて、私たち
山﨑めぐみ先生 略歴
1991 年 玉川大学 文学部教育学科 初等教育専攻 学士号
1995 年 ミネソタ大学 International Development Education 専攻 修士号
2002 年 ミネソタ大学 Comparative International Development Education 専攻 博士号
1995 年 ミネソタ大学 College of Education and Human Development アカデミックアドバ
イザー
1998 年 ミネソタ大学 General College アカデミックアドバイザー、キャリアプラニング /
フレッシュマンセミナー担当
2004 年 メトロポリタン州立大学 Interdisciplinary Studies 准教授
2010 年 創価大学 学士課程教育機構 准教授
図書館からのお知らせ
SBW 講演会と選書ツアーを開催しました
〈SBW 特別講演会〉
7 月 5 日に中央図書館2階ブラウジングルームにて、SBW 読書講演会を開催しました。
講師に経済学部の勘坂純市教授をお招きし、
「社会科学の古典を読む~経済学部教授、読書を語る~」と題
して、講演を行なっていただきました。
講演では、勘坂教授がなぜ読書(勉強)が好きになったのかを、学生時代の経験を通して読書の魅力や
読み方、お薦めの図書など多岐に渡ってお話していただきました。
参加者からは、「新しい見方を知ることができ嬉しかった。新書や古典は苦手意識があったが、以前より
興味が湧いた」「読書の必要性、方法、また具体的な推薦図書などを知ることができ、とても有意義な時間
を過ごすことができた」などの声が寄せられました。
〈選書ツアー〉
6 月 23 日に紀伊國屋書店 新宿南店にて選書ツアーを開催しました。
これは、創価大学中央図書館に所蔵して欲しい図書を、学生が選書するという内容で、4回目となる今回
のツアーには学部生 15 名が参加して、
中央図書館に所蔵したい図書を参加者の感性で自由に選書しました。
参加した学生からは、
「初めて選書ツアーに参加しましたが、楽しみながら、また自分の興味の幅を広げな
がら本を選ぶことができたと思います」
「参加して本当に良かったと思います」などの感想が寄せられまし
た。
選書ツアーで購入した図書は、中央図書館2階 SBW コーナーに配架する予定です。
中国館開設にともなう
施設利用の変更について
中国政府の対外交流活動「感知中国」一環として、中国政府から今後10年間にわたって合計 3000 冊
の図書が寄贈されます。
それにともない、旧グループ学習室 A に中国館を設置し、旧 Language Study Room にグループ学習
室 A を移設いたしました。
動画やCD・DVDを使った語学学習などは AV ライブラリーもしくは LB 教室でのご利用をお願いいた
します。ご不便をおかけいたしますが、ご了承のほどをお願い申し上げます。
旧グループ学習室 A → 中国館(準備中)
〒〒192‑8577
192-8577 東京都八王子市丹木町
1-236
東京都八王子市丹木町1 ‑236
Tel:
042‑691‑3191 Fax: 042‑691‑9308
Tel
: 042-691-3191 Fax
: 042-691-9308
www.soka.ac.jp/Library/
http://lib.soka.ac.jp
旧 Language Study Room → グループ学習室 A