P074-077 事例4_福祉.pdf - EM研究所

事例4/福祉
事例1 福祉
環境・菜園分科会
福祉施設から地域へ広げるEM環境活動
お お
だ
し
知的障害者通所授産施設ひまわり 島根県大田市
主任指導員 雲石 和仁
1.大田市の概要
大田市は島根県の東西の中央部
す。1⓺世紀前半から㆓₀世紀前半に
に位置し、出雲市に隣接していま
かけては、日本史上最大の銀鉱山
いわ み
であった石見銀山の繁栄と共に市
場町として賑わっていました。石
松江
鳥取県
大田市
岡山県
島根県
広島県
広島
山口県
当施設の所在地
見銀山(遺跡)は、平成1⓽年7月2
日に日本で1㆕番目、鉱山・産業遺跡
としては初の世界遺産に登録さ
知的障害者通所授産施設ひまわり
れ、以来世界中の注目を集めるよ
わり」は、大山隠岐国立公園に属
うになっています。
する三瓶山の南東部に位置し、自
知的障害者通所授産施設「ひま
然に恵まれたところにあります。
だい せん お
き
さん べ
2.授産種目にEM導入
EMの用途
た。中でもEMボカシづくりを始
⑨ プール清掃
「ひまわり」は、昭和⓹㆓年3月に
めとするEMを活用した作業は、
「共同作業所つくし園」として開所
利用者の誰もが容易に参加でき
したのが始まりで、平成2年1₀月
て、さらに応用範囲が広いことか
には第2つくし園を開設しまし
らいろいろと挑戦しています。E
島根環境浄化を進める会の指導を
た。発足当時7人だった利用者も
Mを活用した作業には以下のもの
受けてEMボカシづくりをスター
㆕₀人 以 上 に な り、 建 物 が 手 狭 に
があげられます。
トしました。すでに県下にある知
なったうえ、設備も不十分であっ
① EMボカシⅠ型製造
的障害者更生施設「桑の木園」が、
たことから、平成1柒年7月に施設
② EMボカシⅡ型製造
EMボカシづくりに取り組んでい
を新築、授産施設「ひまわり」に名
③ EM生ごみ発酵肥料づくり
て、その後も自然養鶏や廃油石け
EMとの出会い
EMとの出会いは平成9年で、
称を変えて再オープンしました。 ④ 無農薬野菜栽培
んづくり、給食生ごみ回収などに
新しい建物には授産種目にあわせ
⑤ 枯れ草堆肥づくり
EMを導入して地域社会との接点
た工房が設けられ、個々の能力に
⑥ EM活性液製造
を 広 げ て い る こ と は、 私 た ち に
応じた技術の習得と専門性を加味
⑦ EMボカシ入浴剤製造
とって大きな励みと刺激を与えて
した指導が行えるようになりまし
⑧ EM廃油石けん・粉石けんづくり
くれています。
EM活性装置
EM活性液
生ごみの発酵状態
EM生ごみ発酵肥料づくり
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EMボカシづくり
す。市内のショッピングセンター
す。ちなみに1柒年度約⓹₀₀袋(1袋
EMボカシづくりには現在、農
で販売していますが、年々注文数
⓹₀₀g)
、18年度約⓺₀₀袋、1⓽年度は
耕 班1㆕人 の 利 用 者 が 担 当 し て い
が増加して資材の調達や製造が間
約8₀₀袋の販売を見込んでいます。
て、週に約⓺₀ ~ 1₀₀kgを仕込みま
に合わなくなってきているほどで
乾燥工程
粉砕工程 ふるい工程 3.野菜の無農薬栽培と加工・商品化 生ごみから野菜
冬場は切り干しダイコン(商品名:
農耕班では、約叅₀₀坪の農地でス
切り干し三菜)を商品化するために、
イカやミニトマト、カボチャ、ナス、
主にダイコン・ニンジンを栽培して
ピーマン、ダイコン、ニンジンな
います。無農薬栽培で時には虫食い
ど旬の野菜を育てています。この
農地は近隣の農家の方々のご厚意
保育園児とお芋を収穫
被害にも遭いますが、安全・安心が
売り物です。切り干し三菜は、ダイ
で借りたものです。野菜の栽培は、
コン・ニンジン・シイタケを乾燥させ
調理場や生活寮の食料残さにEM
袋詰めした製品ですが、平成18年度
ボカシを振りかけて、EM生ごみ
は販売開始から約3ヶ月で完売とい
発酵肥料にしてすき込むなど可能
う状態で人気商品となっています。
な限り無農薬・無化学肥料で行って
います。収穫した野菜は、施設内
大学生の実習作業
平成1⓽年度は約1₀₀₀袋の製造・販売す
る予定です。
の昼食や生活寮の料理に使用する
ほか野菜市を開いて販売していま
す。特にスイカやミニトマトなど
は収穫してすぐに注分文や店頭で
完売するほどの人気商品です。
広い菜園は保育園児の芋掘り体
験や、農業大学生の実習にも活用
されて地域との交流の場になって
います。
㆓⓹₀本のシイタケの原木
約柒₀₀₀本のダイコン
シイタケ栽培にチャレンジ
また、平成1柒年度からEMシイ
タケの試験栽培を始めました。山
道に⓹₀本の原木を設置、翌平成18
年度はハウスで㆓⓹₀本の原木栽培
を試みたところ、肉厚でおいしい
収穫したてのダイコン
シイタケを収穫することができま
した。栽培方法は、EM家庭菜園
の本を参照しました。
保育園との合同芋掘り
人気商品は無農薬野菜から
袋詰めした切り干し三菜
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環境・菜園分科会
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4.市内小中学校のプール清掃と公園清掃
EM活用のプール清掃
た。EMを使用することで、環境
㆓₀₀㆕(平成1⓺)
年からEMを活用
面の改善とコスト削減が可能にな
したプール清掃を市内の各小中学
り、市としても喜んでくれている
校へ提案して活動しています。今
ようです。
では、大田市内に㆓₀校ある小中学
この活動は地域住民のボラン
校の内1₀校、出雲市内の1校、計
プール清掃の様子
ティア活動にも広がったことで注
11校がEMプール清掃の呼びかけ
きています。
目され、これまでにNHKをはじ
に賛同して実施しています。
米のとぎ汁EM発酵液をつくる
め新聞各社、有線放送、JA千両
前日には各家庭に呼びかけて、当
箱(JA石見銀山の広報誌)などで
日新鮮な米のとぎ汁を用意しても
取り上げられ反響を呼びました。
らっています。こうすることで、 さらに、授業で学んだEM情報
市内小学校における総合学習で紹介
実施校では総合学習の時間に
「EM」がとりあげられ、その際は
子どもたちはもとより保護者が関
を地域に発信しようと、ミニ田ん
心を持ち、地域へ広がり多くの協
ぼで稲づくりや野菜づくりを実践
力者を得ることができました。
している小学校の児童たちもいま
地域へ広がる活動
す。
なお、EM活性液は、施設に設
このように、薬品や化学合成洗
置した2基のEM活性装置(1₀₀
施設の職員や利用者が学校へ出向
剤を使わないプール清掃が各学校
L)で製造し、⓹₀₀mlのペットボト
き、EMの説明や米のとぎ汁EM
で定着しはじめていることで、そ
ルに利用者が小分けして販売して
発酵液のつくり方を指導していま
れまで大田市から受託した市内
います。販売先は主に、小中学校
す。利用者の皆さんは、子どもた
5ヶ所の公園清掃においてもEM
や施設内ショップ、野菜市、バザー
ちと共に米のとぎ汁EM発酵液を
洗剤(ひまわりが製造するEM廃
や地域の祭りやイベントなどで
つくったりプール清掃をすること
食油石けんを液状にしたもの)と、 行っています。
で、自分たちの活動に自信を持つ
EM活性液の希釈液を使用する清
ようになり表情も活き活きとして
掃方法に切り替える許可を得まし
米のとぎ汁EM発酵液づくり
総合学習の時間に
地域ボランティアが指導
公園のトイレ清掃にもEM活用
一斉にプールに投入
地域ボランティアの方と一緒に清掃
便器にはEM活性液を原液で
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5.今後の取り組みと課題
自立へのハードル
施設の役割
ない取り組みです。施設内におけ
しかしながら、どんなにハード
る資源の循環を確立して、地域に
支援法が施行されたことで、それ
ルが高くとも、就労と自立は利用
この循環が拡大定着することをめ
までの福祉行政のあり方が変わり、 者のみならず保護者・家族の皆さん
ざします。そこに実現するのは共
平成18年4月1日に障害者自立
「就労」
「自立」という目標が施設利
の望むところです。私たち「ひまわ
存共栄の社会で、一般就労とか自
用者の障害の程度に応じて設定さ
り」では、EMの活用は利用者の自
立支援などの言葉も無くなるので
れるようになりました。この中身
立促進に役立てる1つの有効な選
はないでしょうか。
は、施設利用に期限を設けるなど
択・取り組みであると評価していま
利用者の現実に即していない面な
す。
どもあって、利用者やその保護者、 今後の課題としては、地球温暖
ならびに私たち指導員も非常に困
化問題など、地域だけでなく地球
惑していると言うのが本音です。 規模で捉える環境意識が必要とさ
従来においても就労して自立する
れている今日、市民の環境問題に
ことは、利用者の誰もが目標とし
対する意識の高揚に「ひまわり」が
ていることでしたが、現状は知的・
果たせる役割を担っていきたいと
身体・精神に障害のある人が、一般
思います。EMを活用した生ごみ
の職場に雇用されることへのハー
の肥料化、野菜づくり、プール清
ドルは非常に高いのです。
掃などはすべて環境に負荷をかけ
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