● 特集 新成長産業から見る日本の型技術の方向性 ● Part 1:成長産業の技術開発動向と型技術の役割 <解説 3> 航空機部品製造における 板金生産技術の方向性 三菱重工業㈱ 民間航空機製造業の動向 世界の民間航空機製造業界は、中∼大型機 (座席 200 ∼400 席超)を製造しているボーイング(アメリカ) 藤井 和慶* グ 767、777 の胴体、最新鋭機である 787 の複合材主 翼の製造などに携わってきた。これらの経験を活かし て、今まさに MRJ を製造する完成機体メーカーへ脱 却しようとしている。 とエアバス(欧州)の 2 社による寡占状態となって 近年、航空機製造産業を取り巻く経営環境は厳しさ いる。また、航続距離 3, 000 km 未満で 100 席以下 を増し、グローバル市場で勝ち抜ける低コスト化が必 のリージョナルジェットと呼ばれる小型機では、ボン 須な状況である。その要因として、ボーイングやエア バルディア(カナダ) 、エンブラエル(ブラジル)が バス、ボンバルディアなど大手メーカーで行われてい 市場で高いシェアを占めている。 る低コスト化の推進や、低賃金国(BRICs、東南アジ 航空旅客量は、今後 20 年間で現在の約 3 倍になる ア)の追い上げがある。その例として、ボーイングで と予測されている。また、リージョナルジェット機の は、トヨタ生産方式を取り入れて 737 のファイナル 需要も大幅に増加すると予測され、今後 20 年間で全 組立工程でムービングライン化(図 2)を実施した。 世界 5, 000 機以上の新規需要が見込まれている。当 この工程は、製造工程の中で最もコストがかかってい 社では、2008 年 3 月にリージョナルジェ ットの製造に参入するために、MRJ(図 1)の開発をローンチした。このクラスに 新規参入しようとしているメーカーは、 当社だけではなく、中国では ARJ 21、ロ シアでは Superjet 100 の開発が進んでい る。既存の 2 社も新機種開発を開始し、 今後このクラスでの開発競争が激化する と考えられる。 当社は、これまで民間の完成機体メー カーの 1 次下請け企業として、ボーイン *Kazuyoshi Fujii:名古屋航空宇宙システム製 作所 部品工作部 〒455−8515 名古屋市港区大江町 10 TEL(03) 611−2121 図 1 国産旅客機 MRJ(三菱航空機㈱提供) 型技術 第 26 巻 第 1 号 2011 年 1 月号 029
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