第46回(平成25年度)研究発表会論集 プレゼンテーション発表アブストラクト № 8 室内実験による養浜砂の粒径が地形変化に与える影響について 株式会社 ニュージェック 八尾 規子 1.はじめに 鳥取県東部に位置する鳥取砂丘海岸では,毎年,春季から夏季にかけて浚渫土砂を養浜するサンドリサイクルが実施されているがその 効果の検証は十分に行われていない.そこで,季節変化を想定した養浜の室内実験を行い養浜効果を検証する.また,最近では現地海浜 の粒径よりも大きい粒径の養浜材を投入する粗粒材養浜の有用性にも注目が集まっているため,養浜材の粒径の影響についても検討する. 2.実験方法 1)実験装置 図-1 に示す 2 次元波動水槽の一端に 1/10 勾配の移動床(中央粒径 0.23mm の硅砂を層厚 15cm で敷き詰めた)を設置し,不規則波 を作用させて実験を行った.本実験では季節変化を想定した侵食型波浪および堆積型波浪を作用させた. 2)実験内容 まず初めに,秋季から冬季を想定した侵食型の平衡海浜断面を形 成し,この断面に養浜を行い,その後,春季から夏季を想定した堆 積型波浪を作用させた.本実験に用いた養浜材は移動床の粒径と同 じ d50=0.23mm(粒径①) ,粗粒材養浜を想定した d50=0.70mm(粒 径②) ,また,砂利や礫を想定した d50=3.75mm(粒径③)の 3 種 類である.また,堆積型波浪を作用させた後,再び侵食型波浪を作 図-1 実験装置 用させ,粒径の異なる養浜材による汀線の後退速度についても検討 した. 25 3.実験結果 0.23mm(粒径①) 浜を行わないケースでほぼ同等であるが,粒径②(0.70mm)の汀線は より前進している.また,本研究における汀線は,水面と養浜前の 海浜断面の交点を 0 と定義したことから,養浜時は堆積型波浪作用 汀線変化量(cm) 図-2 に堆積型波浪作用下における汀線の時間的変化を示す.4 時間後の汀線変化量は粒径①(0.23mm)と粒径③(3.75mm)および養 0.70mm(粒径②) 3.75mm(粒径③) 養浜なし 20 15 10 5 開始時から見かけ上汀線が前進している.時間の経過とともに岸側 0 に土砂が移動し汀線付近に供給されるため,粒径②では波浪作用開 0 50 100 始から1時間を経過したあたりから,粒径③では2時間を経過した あたりから汀線がより前進している. 150 時間 (min) 200 250 図-2 堆積型波浪下における汀線の時間変化 図-3 は,堆積型波浪作用後の断面に,再び,侵食型の波浪を作 用させた場合の汀線の時間的変化である.侵食型波浪作用開始から 20 3時間後までは,ほとんど違いがみられないが,3時間経過後から 15 していることが確認できる.これは,堆積型波浪を作用させた際に 形成されたバームが,粒径の大きい養浜材と混合し,締め固まって いたことが原因として考えられる. 汀線変化量(cm) 粒径②および粒径③の後退速度が緩やかになり汀線後退量が停滞 0.23mm(粒径①) 0.70mm(粒径②) 3.75mm(粒径③) 養浜なし 10 5 0 0 50 100 150 200 250 -5 4.おわりに 実験結果より,移動床の粒径よりも粒径の大きい土砂を養浜する -10 と汀線がより前進することを確認した.しかし,養浜砂の粒径の大 時間 (min) 図-3 侵食型波浪下における汀線の時間変化 きさと汀線前進量は比例関係ではなく,本研究では,粒径② (d50=0.70mm)を養浜した場合の汀線が一番前進した.これは,養 浜した粒径の間隙を移動床の粒径がうまく埋めることができ海浜 参考文献 断面が安定したと考えられる.また,このことで,その後の侵食型 砂村継夫:自然海浜における汀線位置の時間的変化に関する予 波浪作用下での,汀線の後退を遅らせることができたと考えられる.測モデル,第 27 回海岸工学論文集,pp.225-259,1980.
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