中耳真珠腫に対する低侵襲内視鏡下中耳手術

Otol Jpn 21 ( 4 ) : 347, 2011
ランチョンセミナー1
中耳真珠腫に対する低侵襲内視鏡下中耳手術
欠畑 誠治
山形大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座
【はじめに】
内視鏡下中耳手術(Endoscopic Ear Surgery:EES)とは、中耳手術のほとんどすべての行程を内視
鏡下で行う1)低侵襲で、2)明視化で安全な、3)生理的機能の回復を可能とする経外耳道手術であ
る。
1953年手術用顕微鏡の導入以来、手術用顕微鏡は耳科手術に必要不可欠な機器として定着している。
中耳内の病変部位に到達するために、1)外耳道内からのアプローチ、2)耳前部からのアプローチ、
3)耳後部からのアプローチが病変の拡がりと存在部位に応じて選択されている。いずれのアプローチ
法でも病変部位の十分な視野・術野を得るために、外耳道後壁や乳突部皮質骨などの骨削開を行う。こ
れまで、経外耳道法は外耳道が十分に広く彎曲による死角のない症例で、主に鼓膜形成術やアブミ骨手
術に行われてきた。一方、真珠腫に対しては耳内法や耳後法が用いられ、骨削開に際してはsaucering
が重要とされ、上鼓室など深部の観察のためには、手前の皮質骨や蜂巣は深部の2倍の範囲の削開が推
奨されてきた。これまでの顕微鏡下耳科手術の問題点として、1)解剖学的な死角の存在と、2)健常
な骨組織等の削開が必要であることが挙げられる。
一方、EESは、1)死角を制御し、2)換気ルートの回復を行い、3)乳突腔の温存を可能とするこ
とで、真珠腫の遺残を避け、真珠腫の再形成を予防し、正常なガス交換能を保存することを目指す術式
である。
【対象と方法】
弛緩部型および緊張部型真珠腫で、乳突洞への進展がないと術前診断された症例を対象としている。
外径2.8mm、有効長18cmの直視型と側視型の内視鏡(Storz)を用い、3チップHDCCDカメラとSXGA
の液晶モニター(Storz)に接続する。内視鏡下に外耳道内に弧状切開をおき、外耳道皮膚と鼓膜を剥
離翻転する。外耳道後壁削開や上鼓室開放には鋭匙の他に、超音波手術器(ソノペット:Stryker)を
用いる。明視化に真珠腫母膜を剥離・摘出する。鼓膜形成、scutumplastyには、耳珠軟骨とその軟骨膜
を用いる。耳小骨連鎖再建が必要な場合、耳珠軟骨を2段にトリミングしてIIIcとする。外耳道皮膚を
戻し、ジェルフォームを挿入し術終了とする。
【考察】
中耳真珠腫の手術は、1)顕微鏡下耳科手術、2)顕微鏡下耳科手術に内視鏡も組み合わせた方法、
そして3)内視鏡下耳科手術の選択が取り得る。これまでは、双眼視ができ立体的に捉えることができ
る利点から顕微鏡下耳科手術が主に行われており、鼓室洞など顕微鏡での死角部位の観察に内視鏡が併
用されるにすぎなかった。Transcanal approachでは、削開は真珠腫の進展範囲に応じて行われる。こ
れは顕微鏡に比べ広角な視野を持つ内視鏡に適した術式である。EESは下記のことをおこなうことで1)
低侵襲で、2)明視化で安全な、3)生理的機能の回復を可能とする。
1)死角の制御
後鼓室、特に鼓室洞は解剖学的死角となるが、内視鏡によって明視下に病変の摘出が可能となる。
健耳側から内視鏡を挿入することで、鼓室洞を術野のセンターに置くことができ、アクセスが容易と
なりより確実な操作が可能となる。
2)換気ルートの回復
峡部の清掃を行い本来の換気ルートを回復することにくわえ、鼓膜張筋ひだを除去することで新た
に前方の換気ルートを確保する。このことで再形成真珠腫を予防する。
3)乳突腔の温存
経外耳道的に最小限での骨削開で病変の除去が可能となる。乳突腔を温存することで、ガス交換能
やバッファー効果を確保する。上鼓室開放には超音波手術器を用いた内視鏡下中耳手術powered
endoscopic ear surgeryが有効である。
【今後の課題】
1.手術器械の開発:鼻内視鏡手術には専用の機械が必要であるように、EESにも専用の機械の開発が
必要である。内視鏡で見えているところに確実に届く形状の器械が望まれる。また、顕微鏡下手術で
は左手には主に吸引管を持ち、出血のコントロールを行っているが、EESでは片手操作となり、その
短所をおぎなうため吸引管を内蔵した 離子を開発している。
2.手術適応:現時点でコンセンサスはないが、乳突洞まで進展している場合は適応外と考えている。
そのため、乳突洞の陰影が真珠腫かどうかの術前診断が重要となる。MRIによる鑑別診断の精度の向
上が必要である。
3.術後成績:新しい術式であるため長期成績の報告は少ない。
Otol Jpn 21 ( 4 ) : 349, 2011
ランチョンセミナー2
めまい治療のポイント:メニエール病を中心に
武田 憲昭
徳島大学
厚生労働省難治性疾患克服事業・前庭機能異常調査研究班(渡辺行雄班長)の研究活動の一
環として、厚生省特定疾患メニエール病調査研究班が1974年に作成したメニエール病診断の手
引きの改訂を行い、2008年にメニエール病診断基準を作成した。本セミナーではまず、改定さ
れたメニエール病の診断基準について解説する。さらに本研究班では、メニエール病診療の標
準化と普遍化を図る目的で、2011年にメニエール病診療ガイドラインを発刊した。本セミナー
では、メニエール病の発作期の治療と発作予防の治療について、ガイドラインに沿って解説す
る。本セミナーが、明日からのメニエール病の診療に役立てば幸いです。
参考文献
1.厚生労働省難治性疾患克服事業・前庭機能異常調査研究班編:メニエール病診療ガイドラ
イン. 金原出版、2011.
2.渡辺行雄:メニエール病診断基準改定にあたって. Equilibrium Res 68: 101−106, 2009.
3.武田憲昭:メニエール病の診断基準と検査の進め方. JOHNS 25: 815−821, 2009.
4.武田憲昭:めまい疾患の診断と治療:メニエール病. CLINICIAN 587: 248−253, 2010.
メニエール病診断基準(厚生労働省難治性疾患克服事業・前庭機能異常調査研究班2008年)
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Ⅰ.メニエール病確実例
難聴、耳鳴、耳閉塞感などの聴覚症状を伴っためまい発作を反復する
[診断に当たっての注意事項]
メニエール病の初回発作時には、めまいを伴った突発性難聴と鑑別ができない場合が多いの
で、確定診断までに経過観察を要する場合がある。
Ⅱ.メニエール病非定型例
下記の症候を示す症例をメニエール病非定型例と診断する。
1.メニエール病非定型例(蝸牛型)
聴覚症状の増悪、軽快を反復するがめまい発作を伴わない。
2.メニエール病非定型例(前庭型)
メニエール病確実例に類似しためまい発作を反復する。一側または両側の難聴などの聴覚症
状を合併している場合があるが、この聴覚症状は固定性でめまい発作に関連して変動すること
はない。
[診断に当たっての注意事項]
この病型は内リンパ水腫以外の病態による反復性めまい症との鑑別が困難な場合が多い。め
まい発作の反復の状況を慎重に評価し、内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判
断された場合にメニエール病非定型例(前庭型)と診断すべきである。
[除外診断]
メニエール病確実例、非定型例の診断に当たっては、メニエール病と同様の症状を呈する外
リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍などの内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾
患など原因既知の疾患を除外する必要がある。
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Otol Jpn 21 ( 4 ) : 351, 2011
ランチョンセミナー3
感染症の現在・過去・未来
─病態を考えた未来の感染症治療をめざして─
佐藤 圭創
九州保健福祉大学薬学部生化学第一講座教授
感染症の歴史は、人類の歴史と言っても過言ではない。ヒトの動きともに感染症が広がり、
ヒトの人口密度が高くなるとさらに蔓延する。過去の感染症は、恐怖との戦い、感染症の現在
は、病原微生物との戦いである。そして、抗微生物療法のみでは、感染症の完全な制御は望め
ない場合が存在することがわかってきた。即ち、「よりきれいに治す」ためには、抗微生物療法
だけでなく、病原微生物が生成する病原性物質の生成の制御、病原微生物に対する生体側の反
応の制御が不可欠である。さらに、この考えをすすめることで、病原微生物を病原微生物では
ないようにする、「微生物との共存を目的とした感染症治療」が、見えてくる。つまり、未来の
感染症治療は、微生物感染に伴う病態を解析し、それに、即した治療を行うことであり、微生
物との共存を目指し、耐性微生物の出現を起こさないようにすることである。本発表では、マ
クロライド剤の新作用をとおして、病態に即した感染症治療について考えてみたい。
感染症の治療の新しい考え方を理解する上で、インフルエンザウイルス感染症をもとに考え
てみよう。インフルエンザウイルス感染症の病態は、インフルエンザ単独で発生しているもの
ではなく、1.インフルエンザウイルス、2.細菌性肺炎などの2次感染、3.インフルエン
ザ感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応、4.宿主のおかれている環境因子など
のファクターが組み合わさって形成されている。即ち、治療するにあたっては、これらの病態
に対して、適切な対応が必要となる。1のインフルエンザウイルスそのものに対する対応とし
ては、抗インフルエンザ薬としてノイラミダーゼ阻害剤、脱殻阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害
剤を使用することで、2の細菌などの2次感染の制御は、2次感染の徴候があるときは、でき
るだけ早く適切な抗菌薬を使用することである。4の環境に対しては、赤血球凝集素の開裂を
引き起こす、細菌やダニの酵素の制御があげられる。最後に、3の宿主の過剰な免疫反応は、
インフルエンザウイルスが増えない程度に過剰な免疫を抑える、即ち、免疫を制御する必要が
ある。我々は、これまでの研究で、インフルエンザ感染の病態では、フリーラジカルによる酸
化ストレスが惹起され組織障害が生じることを報告してきた。一方、クラリスロマイシン、ロ
キシスロマイシン、エリスロマイシンなどの14員環マクロライドは、工藤翔二先生らによるび
まん性汎細気管支炎への治療効果の発見に始まり、マクロライド新作用研究会を中心にその作
用機序が解析され、多くの慢性気道感染症の炎症制御薬として、使用されるようになった。こ
の、マクロライド少量長期投与をしている患者が、インフルエンザに罹患しにくく罹患しても
ひどくならないという臨床的事実から、我々は、マクロライドによるインフルエンザ治療を試
みた。その結果、マウス致死的インフルエンザウイルス感染モデルに対して、抗ウイルス剤を
用いることなく、マクロライド剤単独療法で、生存率と体重減少の著明な改善効果を認めるこ
とが判明した。さらに、そのメカニズムについて解析したところ、マクロライド剤がインフル
エンザウイルス感染によるインターフェロン(IFN)の生成を抑制し、その結果、・NOとO2・−
生成が減少し生存率が改善したことがわかった。さらに、実際のヒトインフルエンザウイルス
感染でも、マクロライドを少量長期投与した患者で、マウス同様に、フリーラジカル生成をマ
クロライドが抑制することが確認された。さらに、このマクロライドの作用機序が、マウスと
同様、IFNの生成抑制、・NO生成抑制、キサンチンオキシダーゼ活性抑制によるものであるこ
とを確認した。
感染症の治療の方向性は、抗微生物療法のみに頼っていてはだめで、その病態を解析し、治
療のターゲットを明確にして、Treat to targetを目指していかねばならない。当然、感染症の
治療は、「よりきれいに治す」ために、抗微生物療法+微生物の病原因子制御療法+宿主の過剰
な免疫制御療法を併用し、総合的な感染症治療を行うべきであると考えられる。その延長線上
に、「微生物と共存する」という世界があるのではないかと考える。
Otol Jpn 21 ( 4 ) : 353, 2011
ランチョンセミナー4
好酸球性中耳炎の診断と治療
飯野ゆき子
自治医科大学附属さいたま医療センター耳鼻咽喉科
1997年、Tomiokaらが気管支喘息に合併する難治性中耳炎に対し、好酸球性中耳炎という名
称を提唱し症例を報告した。その後同様の臨床症状を呈する難治性中耳炎症例の報告が相つぎ、
症例も蓄積し本疾患の臨床像も明らかとなってきた。2003年には東北大学耳鼻咽喉科小林俊光
教授を班長として、全国の基幹病院に対してアンケート調査が施行され、好酸球性中耳炎と診
断された190例に関して詳細な検討が行われた。さらに2009年には好酸球性中耳炎study group
が結成され、個々の症例を集め、好酸球性中耳炎の診断基準を提唱するに至った。好酸球性中
耳炎の診断基準は以下のごとくである。大項目:好酸球優位な中耳貯留液が存在する滲出性中
耳炎/慢性中耳炎。小項目:1)膠状の中耳貯留液、2)中耳炎に対する従来の治療(抗菌薬、
鼓膜切開、換気チューブ留置など)に抵抗性、3)気管支喘息の合併、4)鼻茸の合併。確実
例:大項目の他に、二つの小項目を満たすもの。除外診断: Churg-Strauss 症候群、好酸球増
多症候群(Hypereosinophilic syndrome)。中耳病態は滲出性中耳炎型と慢性穿孔性中耳炎型に
大きく分類される。後者はさらに単純穿孔型と肉芽型の二つのタイプに分類される。本疾患は、
単に従来の中耳炎に対する治療に抵抗する難治性中耳炎というだけではなく、高度難聴(時に
はろう)をきたす危険性の高い疾患という側面を持つため、早期の診断と適切な治療が必要で
ある。
治療に関しては、現在のところ全身的あるいは局所での副腎皮質ステロイドの投与が最も有
効とされている。鼓室内投与には、重症度に応じてトリアムシノロンアセトニド注射薬、デキ
サメサゾン注射薬、ベタメサゾンの点耳薬を用いる。鼓膜に穿孔のない滲出性中耳炎型の場合、
貯留液が大量に存在する場合はまず鼓膜切開を行い、その貯留液を排除してから上記薬剤を注
入する。貯留液が少量の場合は鼓膜を穿刺し薬液を中耳腔内に投与する。その際、Pneumatic
otoscopeを用い、加圧して薬液を耳管に逆通気する。好酸球性炎症の場が主に耳管と耳管鼓室
口であるのがその理由である。また感染を伴うと中耳粘膜肥厚が生じてくるため、感受性のあ
る抗菌薬の投与による感染のコントロールが必要である。肉芽の高度の症例、急性増悪例、骨
導閾値上昇時には副腎皮質ステロイドの全身投与を行なう。また鼻副鼻腔炎に対する治療も重
要である。フルチカゾンの鼻内噴霧を併用する、本ランチチョンセミナーでは近年重症気管支
喘息に適応となっている抗IgE抗体(オマリズマブ)の有効性に関しても述べてみたい。
Otol Jpn 21 ( 4 ) : 355, 2011
ランチョンセミナー5
患児および家族のQOLを含めた小児急性中耳炎の治療
工藤 典代
千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科
欧米の報告によると、急性中耳炎は1歳までに62%、生後3歳までに83%が少なくとも1回
は罹患するとされる上気道感染症のひとつである。
中耳炎起炎菌の耐性菌の増加や集団保育の低年齢化などにより、難治化例が目立つようにな
り、2006年には小児急性中耳炎診療ガイドラインが公表された。翌年にはMinds(日本医療機能
評価機構)に掲載され、2009年には改訂版が出版されている。このガイドラインには、単純性
急性中耳炎についてEBMに基づいた標準的な治療が示され、2009年版には反復性中耳炎につい
ても『付記』という形で述べられている。
単純性急性中耳炎に対しては抗菌薬の高用量の設定もあり、一般診療所での治療の選択肢が
増え治療が完結することが多くなったように思われる。しかし、反復性中耳炎、遷延性中耳炎
など、『otitis-prone』といわれるような中耳炎の乳幼児がいることも確かである。
ATOMS(Advanced Treatment for Otitis Media Study group)による全国33施設の調査で
は、急性中耳炎の治療で耳鼻咽喉科通院3回では治癒しなかった急性中耳炎症例は、2歳未満
では50.9%、2歳以上では24.5%というデータがある。このデータから、急性中耳炎で通院回数
が4回以上必要だった症例が低年齢ほど多いことが理解できる。
ところで、急性中耳炎治療のために耳鼻咽喉科通院を頻回に必要とするような、中耳炎経過
の長期化は患児および患児家族の心情やQOLに大きく影響すると考えられる。AQOSグループ
(AOM Impact on Guardian QOL Surveillance Study Group)が2009年に行った調査結果からは、
急性中耳炎の病態とQOLの関連性が伺える。
その調査によると、急性中耳炎の罹患回数が多くなるにつれて患者側のQOLは悪化する傾向
にあったが、統計学的な有意差は認められず、鼓膜切開の回数とQOLには有意差が認められ
(P=0.0113)、鼓膜切開の回数が多いほど、患者側のQOLは低下した。また、中耳炎患児のほか
に同胞がいるとQOLが低くなる傾向にあった。保護者の状態としては「よく眠れなかった」と
いう項目が多く、次いで「仕事や自分の研修を休んだ」、「神経質になったりいらいらした」と
答えた家族が多くみられた。これらの項目の頻度が高いほど家族のQOLは低下していた
(P<0.0001)。さらに、QOLが低いほど肺炎球菌ワクチンを希望していた(P=0.0214)
。
当然ながら、中耳炎罹患回数を減らし、鼓膜切開の回数を減らすことができれば患者側の
QOLは上昇する。中耳炎反復例や遷延例に対して如何に対処するかは、医療者に求められる大
きな課題である。現在、日常診療で実施できることは、中耳炎罹患児の起炎菌に対して抗菌力
の強い抗菌薬を十分量、短期間(5日間以内)投与すること、内服のコンプライアンスをはか
ること、丁寧な鼻処置や耳処置を行うこと、適宜鼓膜切開などで排膿し、鼓室の含気化をはか
ることであり、これらは最も基本的で重要な治療と考えている。ほかに、反復例や遷延例に対
し実施可能なもの、効果が期待できる治療としては
1.十全大補湯(1包2.5gを一日1∼2包内服)
2.鼓膜換気チューブ留置(短期型or長期型、患児の病態とその環境によって)
3.蛋白結合型肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンなどワクチン接種
4.生活環境(集団保育、間接喫煙、栄養など)の改善
5.低ガンマグロブリン血症(IgG≦800mg/dl)、IgG2欠乏症(IgG2≦80mg/dl)にはγグロブ
リン製剤の点滴(200mg/kg/回)を4週間に一度
等の対応が考えられる。
患児の病態と家族のQOLなど患児の背景を見ながら治療計画を立てることで、医療者にとっ
ても患児側にとってもより良い中耳炎の治療と経過が得られることを願っている。
Otol Jpn 21 ( 4 ) : 357, 2011
ランチョンセミナー7
Early Implantation, Binaural Hearing and New Indications for Cochlear Implants:
Worldwide Trends in Cochlear Implantation.
..
Joachim Muller
Section Cochlear Implants and Hearing Prosthetics,
Dept. of Otorhinolaryngology, Munich University (LMU), Germany
Over the past two decades, the fascinating possibilities of cochlear implants for deaf born children or children and adults with acquired deafness developed
tremendously and created a rapidly developing interdisciplinary research field.
The main advancements of cochlear implantation in the past decade are marked by significant improvement of hearing and speech understanding in CI users.
These improvements are attributed to the enhancement of further developed speech coding strategies.
The Implantation of more (and increasingly younger) children as well as the possibilities of the restoration of binaural hearing abilities with cochlear implants
reflect the high standards reached by this development. Despite this progress, modern cochlear implants do not yet enable normal speech understanding, not even
for the best patients. In particular speech understanding in noise remains problematic. Until the mid 1990ies research concentrated on unilateral implantation.
Remarkable and effective improvements have been made with bilateral implantation since 1996. Nowadays an increasing numbers of patients enjoy these benefits.
CI in young children: It’s only a few decades ago that the first year of life was believed to be not of interest with respect to the acquisition of language. Nowadays
early speech development and language acquisition is generally seen as a continuous process starting from birth or even beyond.
At present neonatal auditory screening has become common practice in many countries, and infants can be identified as hearing impaired early in their life. Since
the introduction of neonatal hearing screening it was and is possible to provide adequate treatment at a very early age of a childs life.
Early implantation in young children affected with deafness has shown to be effective in bringing the pediatric population into mainstream. Consequently, an
increasing number of surgeons and centers are performing CI in young and very young children. From January 2000 to November 2011, our team has performed
179 CI’s in infants and toddlers (age 4 months to 2 years), Out of these paediatric cochlear implantees, 25 children were younger or equal 6 months, 65 younger than
one year at the time of implantation.
We have found that there are fundamental aspects of the surgical procedure which must be adapted to the young skull:
Because skull’s thickness is reduced when compared to adults, drilling a recessed bed is not always feasible or advisable. A flat surface for the foot print of the
implant is sufficient, if the implant is fixated adequately. In addition, a double layer flap fixes the implant stable over time, aligns the shape of the implant to the
skull and protects against trauma. Avoiding exposure of the dura is advisable. Suture holes for fixation are best drilled in 2 steps: 1. with a large diameter burr
drilling vertical down 2. a side way access hole using a 0.6 mm drill. Orientation of the implant on the skull is adapted to finding a zone of maximum flatness on the
skull.
The facial recess is smaller in young children, requiring additional perseverance for electrode insertion. Complete or deep electrode insertion (up to 32 mm insertion with one model) is achievable in the majority of cases. A widely opened facial recess and an exposed fallopian canal are helpful to get appropriate access to the
basal turn, but also challenging for the surgeon due to the small dimensions in developing paediatric temporal bones.
As a result of the different proportions in paediatric temporal bones, the orientation of the cochlea, as seen from the facial recess, appears more rotated compared
to adults, requiring the cochleostomy to be more cranial and medial. This fact can make electrode insertion somewhat more difficult. Our experience consisting of
553 implant years in children implanted below the age 2 years (4150 implant years for children implanted<12years) demonstrates that skull growth does not cause
electrode extrusion. An extra loop of the electrode lead in the mastoidectomy and a fixation using a titanium clip is effective in accommodating more than 2 cm of
outward growth of the bone. The flap thickness in children is usually thin and power and signal transmission is optimum.
Also general aspects of surgery like the body weight, small blood volume (∼80ml/kg in a 6 months old child) as well as anaesthesiological aspects (small airways)
should be considered. This led to a team approach, which involves pediatric audiologists, surgeons, anaesthesiologists, and pediatricians to allow for a save surgical
intervention. Taking into consideration the child’s individual situation and circumstances, pediatric cochlear implantation is save at very young age.
Bilateral Cochlear Implants:
In the past, cochlear implants (CI) have been supplied monolaterally as a standard. Although results are often very good, normal hearing has not been restored.
With unilateral implantation the loss of binaural hearing abilities is still present, presumably resulting in a deterioration in speech understanding in noisy environments and in a missing ability to localize sounds. In an attempt to at least partly restore binaural hearing, we started with bilateral cochlear implantation in 1996
and have bilaterally implanted 358 Patients, 104 adults and 254 children, at the time of writing this abstract.
To evaluate the benefit and the risks of bilateral implantation, a series of studies has been conducted. These studies served the purpose to provide a broad image
on binaural hearing in bilateral CI users.
Neither in the adults nor in the paediatric population major surgical complications have been observed.
To assess binaural and monaural effects in adults, speech reception was measured in adult subjects using a set-up where speech was presented from the front
and noise from either left or right. At 10 dB SNR, the average sentence score was 31.1 % higher with both CIs compared to the CI ipsilateral to the noise, and 10.7
% higher with both CIs compared to the CI contralateral to the noise. The average monosyllable score in quiet was 18.7 % higher with both CIs than with the better unilateral CI.
To primarily assess binaural effects in adults, speech reception was measured using a symmetrical four-loudspeaker set-up that largely reduces any head shadow
effect. All subjects showed a substantial gain in SRT of around 4 dB on average. This gain was essentially stable over a period of up to 6.4. years.
To assess directional hearing in adults, sound localization experiments in the frontal horizontal plane where conducted. In addition, sensitivity to interaural cues
was investigated. 8 out of 9 subjects significantly showed the ability to localize sounds with a mean deviation in azimuth of 22.6°
. These subjects also showed a sig..
nificant sensitivity to ILD’s (mean rate oft shift towards the louder side: 1.4。 per unit on the Wurzburg loudness scale) and ITD’s (average time difference required
for complete lateralization: 1187μs; with two ci-user scoring ∼600μs, which is in the range for normal hearing subjects in this test).
To assess the bilateral benefit in children, speech reception was measured using the same four-loudspeaker as in adults, and sound localization in the frontal plane
was measured (14 subjects) in a simplified set-up. At 15 dB SNR, the mean score was 18.4 % higher when listening with both CIs as compared to listening with one
CI only. 13/14 children significantly showed the ability to localize sounds (mean deviation in azimuth: 24,8。)
From our results we conclude that bilateral cochlear implantation provides a significant benefit in speech understanding for both children and adults. Bilateral CI
users seem to benefit from all binaural and monaural effects that are known from normal hearing: head shadow effect, squelch effect and binaural summation.
In addition, bilateral cochlear implantation potentially restores spatial hearing in adults and allows children to develop the ability for directional and spatial hearing.
CI in patients with unilateral deafness ─
Unilateral deaf patients complain about the loss of binaural hearing abilities, resulting in deterioration of speech understanding in noisy environments and in a
missing ability to localize sounds. This results for the patients in their self assessment in a tremendously reduced quality of life.
A remarkable improvement of binaural hearing abilities is known for more than 15 years now from bilateral cochlear implantation. In an attempt to at least partly restore binaural hearing in single sided deaf patients, we started to implant selected unilateral deaf patients. At the time of writing, 12 subjects have been
implanted, including two children. To evaluate the benefit of bilateral hearing, a series of studies has been conducted to provide a broad image on binaural hearing
abilities in unilateral deaf patients after cochlear implantation.
From our results we conclude that cochlear implantation in unilateral deaf patients provides a significant benefit in speech understanding in noise and is superior
to the alternative treatment options (ie. Baha, CROS-HA). Unilateral deaf patients using a CI in addition to their normal ear seem to benefit from restored spatial
hearing. Performance increases over time. Initial experience with postlingual deaf children suggest, that simlar effects than in adults can be expected in a paediatric population. Binaural integration of electric and acoustic stimulation is possible even combining a CI with a normal hearing ear.
Experience with changing cochlear implant technology ─
Recent technological advances in cochlear implant design have increased performance of cochlear Implants and their reliability as well. This provides the
cochlear implant centre with a wider choice for their patients.
A retrospective analysis of our clinical data of more than 1200 implants within the last 12 years with different implant types showed that Speech Understanding
developed continuously over 5 Years after implantation. Surgical issues of the different implants (ceramic and titanium housing) will be reviewed. Medical complications (0.7%) and technical failure rates are low (literature1% − 5.4%,). With current implant technology, revision rates decreased to less than 1%. In Conclusion,
recent technological developments have enhanced the opportunities for the patient seeking a cochlear implant. New technology provides users with significant benefits. Cochlear implant user enjoy high levels of speech understanding in quiet and in noise at very low complication rates.
Otol Jpn 21 ( 4 ) : 359, 2011
ランチョンセミナー8
小児滲出性中耳炎の診断と治療
伊藤 真人
金沢大学大学院准教授 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
滲出性中耳炎は幼小児期と老年期に多い疾患であるが、幼小児が約90%を占めている。成人
の滲出性中耳炎の主な原因が、耳管機能不全であるのに対して、幼小児の滲出性中耳炎は急性
中耳炎後の炎症産物が中耳腔内に遺残し、周囲の粘膜を障害するために、中耳貯留液が産生さ
れ続けると考えられている。発症機序が異なれば、おのずと治療法も異なるわけだが、わが国
では耳鼻咽喉科医が参考とするべき小児滲出性中耳炎ガイドラインは確立しておらず、治療方
針が施設によって若干異なっているのが現状である。本セミナーでは、小児滲出性中耳炎の診
断の留意点と、治療アルゴリズムに基づいた治療法を概説するとともに、薬物治療として頻用
されるカルボシステインについての最新の知見を紹介する予定である
第70回耳鼻咽喉科臨床会総会(2008年長崎)において、聴衆参加型セミナー「小児滲出性中
耳炎の治療戦略」が自治医科大学さいたま医療センターの飯野教授の司会のもと開催された。
このセミナーにおいて、本邦の実地臨床現場における滲出性中耳炎治療のコンセンサスが把握
され、「小児滲出性中耳炎の治療アルゴリズム」としてまとめられた(耳鼻咽喉科臨床2009)。
対象を滲出性中耳炎のハイリスク児を除く、健常な3歳以上の小児とした場合の治療アルゴリ
ズムを紹介する。原典では3歳以上という年齢制限は設けられていないが、2歳以下の乳幼児
の滲出性中耳炎では、外科的治療を含む積極的治療が必要となる症例は限られているため、年
少児の滲出性中耳炎治療については別に扱うこととする。また得られたアルゴリズムは、クリ
ニカル・クエッションに対する選択肢形式の回答の集計であり、多くの耳鼻咽喉科医師が「あ
る一定の所見・条件下では、治療の選択肢の一つとして考慮する」ものであって、全ての症例
に対してその治療を行なっているわけではないことも、結果の解釈時には注意しなければなら
ない。
まず、「積極的な治療の対象となる滲出性中耳炎は、3か月以上貯留液を認める場合」である
というコンセンサス(45%)が得られた。このことは、本来滲出性中耳炎という疾患が、急性
中耳炎後の一過性の滲出液貯留などを除外した慢性疾患であることに一致する。実際に3カ月
以内に58%が自然治癒するとの報告がある。一方で、3カ月未満でも積極的治療を行うとの回
答も多く(55%)みられた。ではここで言う積極的治療とは何を指しているのだろうか? 次
の問いである「3か月未満の場合の治療法」として、86%の医師がムコダイン等の粘液調整薬
または鼻処置・ネブライザー治療との併用を選択していること、さらに3か月未満では鼓膜切
開は原則として行わないか、難聴の訴えが強い時に限るとの回答が83%を占めていることから、
積極的治療の意味する範囲は回答者により異なっていたようである。しかしこれらのQ&Aを合
わせて考えると、「鼓膜切開などの積極的(外科的)治療は、難聴の訴えが強くなければ3か月
までは行わない」というコンセンサスである。
では、①鼓膜切開や②鼓膜チューブ挿入術、③アデノイド切除術などの外科治療の積極的適
応は何であろうか? キーワードはそれぞれ、①難聴の訴えが強いとき、②鼓膜の病的変化
(内陥癒着傾向)が強いとき、③鼻閉による呼吸障害が強いときである。もちろん、鼓膜切開や
保存的治療によっても改善しない難治例に対しては、次のステップとして鼓膜チューブ挿入術
やアデノイド切除術が考慮される。また本邦では耳管通気(自己通気も含める)がこれらの外
科治療の前段階として広く行なわれていることも忘れてはならない。耳管通気はEBMに乏しく
将来のガイドライン作成時の課題となると思われる。しかし、鼓膜の強い内陥接着病変を認め
る症例では、例え長期留置型の鼓膜留置チューブを挿入してもすぐに脱落を繰り返し、鼓膜穿
孔も残りやすいことから、治療に苦慮することも少なくない。このような症例では、自己通気
さえできれば鼓膜の癒着や緊張部型真珠腫への移行など、更なる悪化を防ぐことが可能であり、
患児の成長に伴う自然治癒を待つことができる。