コンクリート工学年次論文集 Vol.32 - 日本コンクリート工学協会

コンクリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,2010
論文
再生粗骨材 M のプレキャストコンクリート製品への利用に関する基
礎的研究
北辻
政文*1・丹野
恒紀*2・吉田
修栄*3・遠藤
孝夫*4
要旨:コンクリート廃材は,循環型社会の観点から再生骨材としてコンクリート材料への再利用が求められ
ている。特に再生粗骨材Mは,製造コストが比較的低く,かつ回収率が高いことからその期待が大きい。し
かし,乾燥収縮が大きいことと耐凍害性が低いため,その利用は地下構造物に限定されている。そこで本研
究では,これらの課題を解決するために,再生粗骨材Mをプレキャストコンクリート製品へ利用することを
検討した。研究の結果,再生骨材Mを用いたプレキャストコンクリート製品の強度および耐久性は,普通コ
ンクリートと同等の品質を有することが明らかとなった。
キーワード:再生粗骨材 M,耐凍害性,フライアッシュ,乾燥収縮,プレキャストコンクリート製品
1.はじめに
そこで,本研究では,これらの課題を解決するために,再
コンクリート廃材は年間 3,500 万トン排出され,建設系廃
1)
生粗骨材Mをプレキャストコンクリート製品へ利用すること
棄物の中では 42%を占めている 。これらの廃材は,主に下
を検討した。プレキャストコンクリート製品に利用した場合,
層路盤材料(クラッシャラン)として再利用が行われている
部材寸法が小さく,乾燥収縮による不具合が発生しにくいこ
もののコンクリート用骨材(再生骨材)としてはほとんど利
と,また,凍結融解抵抗性についても土木研究所により簡易
用されていない。しかし,コンクリート廃材の発生量は増加
の判定法 3)が提案され,耐凍害性の有無を容易に判断できる
の一途をたどると予想されているため,下層路盤としての利
ようになったことが利点としてあげられる。
用だけでは処理能力に限界があり,資源循環型社会の構築の
再生骨材のプレキャストコンクリート製品への利用に関す
観点から,コンクリート用骨材としての再利用が期待されて
る研究は,日本コンクリート工学協会北海道支部 4)によって
いる。
プレキャスト無筋コンクリート製品への適用について検討さ
現在,コンクリート用再生骨材はその品質を H,M,L の 3
2)
ランクに分けて,それぞれ JIS 規格が制定された 。再生骨材
れている。また,プレキャスト鉄筋コンクリート製品につい
ては北辻ら 5)6)の研究がある。
H は,レディーミクストコンクリートへも利用が可能であり,
その品質は天然の骨材と同等である。しかし,それを製造す
るためのエネルギーが多大で高コストであるため廃棄費用の
大きい大都市以外の地域では現実的ではない。さらに,高度
処理によって取り出せる粗骨材量はコンクリート廃材全体の
コンクリート塊
コンクリート塊
ホッパ
ホッパ
40mm以上
グリズリ
フィーダ
グリズリ
40mm以上
フィーダ
ロールクラッシャ
ロールクラッシャー
30~40%程度で,残りは微粉となり,その処理が課題となって
40mm
40mm
13mm
いる。
磁選機
磁選機
リターン
13mm
スク
スクリーン
リーン
一方,再生骨材 M と L は,H に比較して骨材製造は簡易と
なるものの,使用範囲が限定されており,とくに再生骨材L
磁選機
磁選機
20mm
は品質が極度に悪いため,水分管理が行えず,コンクリート
の品質を一定水準に保つことが難しく,高い強度や耐久性が
インパクト
クラッシャ
20mm
13mm
13mm
5mm
5mm
スク
スクリーン
リーン
要求されない裏込めや捨てコン等にしか利用できない。再生
骨材Mは品質と製造コストの面から最も利用普及の期待が大
きいものの,乾燥収縮や凍結融解作用の影響からその使用に
再生骨材
5-0
再生粗骨材M
20-5
再生細骨材インパクトクラッシャ2回
再生粗骨材
M
M
5-0
20-5
あたっては,地下構造物のみに限定されており,東北地方な
どの寒冷地では一般の構造物には利用できない状況にある。
*1 宮城大学 食産業部環境システム学科 教授 博(農) (正会員)
*2 宮城大学 食産業部環境システム学科
*3 吉田セメント工業(株)
*4 東北学院大学 工学部環境建設工学科 教授 博(工) (正会員)
-1469-
図−1 再生骨材Mの製造フロー
表−2 フライアッシュの品質
表−1 再生粗骨材Mの品質
試験項目
試験値
試験項目
再生粗骨材 M
JIS 規格値
試験値
二酸化ケイ素
%
67.7
湿分
%
0.1
%
4.0
g/cm3
2.17
45µ ふるい残分%
18.1
密度
表乾
2.51
−
3
g/cm
絶乾
2.41
2.30 以上
強熱減量
吸水率
%
4.31
5.00 以下
密度
微粒分量
%
0.11
1.5 以下
不純物量
%
0.00
3.0 以下
塩化物量
%
0.008
0.04 以下
粗粒率
6.53
−
骨材修正係
0.5
−
簡易凍結融解* %
1.03
5.0 以下
粉末度
比表面積
2
cm /g
3840
%
100
フロー値比
活性度指数 %
材齢 28 日
78
材齢 91 日
87
メチレンブルー吸着量
*
土木研究所法 3)による
%
0.89
2.実験概要
石(表乾密度 2.65g/cm3,吸水率 0.87%,粗粒率 6.68)を用い
2.1 使用材料
た。細骨材は砕砂(表乾密度 2.62g/cm3,吸水率 1.74%,粗粒
(1)再生粗骨材M
率 2.71)を用いた。また混和材としてフライアッシュ原粉を
再生粗骨材 M は,中間処理業者から入手した。再生粗骨材
用いた。フライアッシュ使用の目的は,アルカリシリカ反応
M の製造に用いられる破砕機は,再生骨材Hに比べ簡易であ
対策のためである。すなわち出所不明の雑多なコンクリート
り,多くの中間処理業者で既に有している。再生骨材 M の製
解体材を原料としているため,アルカリシリカ反応の有無を
造の一例を図−1 に示す。先ずロールクラッシャーやジョー
判断することが困難であるため,製造された再生骨材は「無
ラッシャー等で一次破砕後,インパクトクラッシャーやポラ
害でない」と判断し,対策を講じている。フライアッシュの
ウダー等により1~2 回の二次破砕を行い,脆弱なモルタル分
成分および物理試験結果を表−2 に示す。試験結果より,今
を除去したものを粒度調整して製造される。再生粗骨材Mの
回用いたフライアッシュは活性度指数を除くと JIS フライア
回収率は 50~60%である。
ッシュⅡ種に相当する品質であることがわかる。
混和剤には,ポリカルボン酸系化合物を主成分とする高性
使用した再生粗骨材 M の品質を表−1 に示す。試験結果は
大きな問題となる点が1つもなく,
JIS規格値を満たしている。
能減水剤(密度 1.04g/cm3)と樹脂酸塩を主成分とする AE 剤
また,骨材修正係数が,0.2∼0.8%程度あることから,空気量
(密度 1.04g/cm3)を用いた。
の管理には留意する必要がある。
2.2 実験方法
ここで,再生細骨材は木片やプラスチックなどの夾雑物や
配合を表−3 に示す。配合設計ではプレキャストコンクリ
融雪剤等の塩分含有量が高いこと,および吸水率の規格値を
ート製品工場で用いられる配合を基準とし,設計基準強度
満足できないことから,本研究では対象外とした。
30N/mm2 を満足するための水セメント比として45%に統一し
た。また,アルカリシリカ反応の対策としてコンクリート中
(2)その他の材料
セメントは普通ポルトランドセメント(密度 3.15g/cm ,比
の総アルカリ量を 3.0kg/m3 以下に規制し,フライアッシュを
表面積 3,280 ㎝²/g)を用いた。粗骨材は最大寸法 20mm の砕
使用した。すなわち,1)普通コンクリート,2)総アルカリ
3
表−3 コンクリートの配合
配合名
水セメ
細骨材
ント比
率
W/C
(%)
s/a
45.0
FARG
水
38.0
セメ
フライアッ
ント
シュ
C
FA
162
360
−
162
360
162
360
W
(%)
NP
RG290
単位量(kg/m3)
細骨材
S
粗骨材 G
再生骨材
砕石
混和剤(C×%)
減水剤
AE 剤
AD
AE
CG
RG
671
1108
−
0.70
5A*
−
671
787
290
0.70
5A
54
605
−
1003
0.70
30A
*1A=C×0.002%
-1470-
NP
RG290
FARG
0.15
圧縮強度(N/m㎡)
ブリーディング量( g/cm 3 )
50
0.2
0.1
0.05
NP
RG290
FARG
40
30
20
10
0
0
0
50
100
150
経過時間(分)
200
1日
250
14日
28日(標準)
材齢(日)
図−3 圧縮強度試験結果(製品同一養生)
図−2 ブリーディング試験結果
量を3.0kg/m3 とするために再生粗骨材M で砕石を290kg 置換
3.1 フレッシュコンクリートの性状
したもの,および 3)粗骨材全量を再生粗骨材 M で置換し,
練り上がり後のフレッシュコンクリートの性状試験値は,
アルカリシリカ反応の対策としてフライアッシュを混和材に
スランプ 10±2.5cm,空気量 5±1.5%であり,いずれも目標範囲
用いたものの 3 種類とした。ただし,フライアッシュを使用
内であった。ただし,フライアッシュには未燃カーボンが含
する場合,コンクリートの初期強度が低下する恐れがあるた
まれるため,AE 剤を吸着して空気が連行しにくい 7)ことが知
め,セメントの外割りで 15%使用した。これは,フライアッ
られており,AE 剤の使用量を他の配合と比べて増やしている。
室内試験で採取したフレッシュコンクリートのブリーディ
シュセメント B 種相当の置換率となる。
すべての配合においてスランプ 10±2.5cm,空気量 5±1.5%
ング量試験結果を図−2 に示す。
FARG はブリーディング量を
とした。
以下,
普通コンクリートを NP,
再生粗骨材 M で 290kg
抑制する効果が確認された。これは,再生粗骨材Mの吸水率
置換したものを RG290,再生粗骨材 M で全量置換したものを
が適度に高く親水性であるため,練混ぜ水と骨材中の水が引
FARG と記す。
き合っていること,および結合材料多いこと等が理由として
試験項目は,ブリーディング量試験(JIS A 1223)
,圧縮強
考えられる。一方,RG290 と NP では大差はなく,再生粗骨
度試験(JIS A 1108)
,曲げ強度試験(JIS A 1106)
,引張強度試
材Mの置換率が低い場合,ブリーディング抑制効果は認めら
験(JIS A 1113)
,静弾性係数試験(JIS A 1149)
,凍結融解試験
れなかった。
(JIS A 1148 A 法),コンタクトゲージ法による乾燥収縮試験
3.2 硬化コンクリートの性質
(JIS A 1129‐2)
,中性化促進試験(JIS A 1153)
,およびプレ
(1)強度特性
図−3 に圧縮強度試験結果を示す。いずれの材齢において
キャストコンクリート製品の曲げ試験(JIS A 5372 推奨仕様
も 3 種類のコンクリートの強度はいずれも同等であった。一
5-3)である。
圧縮,割裂引張強度および静弾性係数試験用の供試体はφ
10×20cmの円柱供試体とし,曲げ強度,乾燥収縮,中性化促
進および凍結融解試験用は10×10×40cmの角柱供試体とした。
コンクリートの練混ぜ方法は,NPとRG290についてはセメ
般的にフライアッシュを混和材に用いると初期強度が小さい
ことが知られている 8)。しかし,今回はフライアッシュをセ
メントの外割りで使用したために強度低下は認められなかっ
た 9)。
また出荷材齢である 14 日の強度は,
設計基準強度 30N/mm2
ントと細骨材を15秒間の空練り後,練混ぜ水を注入し60秒間
一方,
FARG
練り,
粗骨材を投入して45秒間の本練りを行った。
を満足していることがわかる。
図−4 に曲げ強度,図−5 に引張強度試験結果を示す。一般
は注水後を180秒間練混ぜた。
練り上がったコンクリートはそれぞれ型枠に詰め,テーブ
に曲げ強度は圧縮強度の 1/5∼1/8,引張強度は 1/9∼1/15 の範
ルバイブレ−タを用いて30秒間締固めて,型枠のまま蒸気養
囲にある。曲げ強度はすべての配合において,一般的な範囲
生を行った。
内に入っている。一方,引張強度はやや低い値となった。こ
蒸気養生は,通常工場で行われている前置き2時間,最高温
れは再生粗骨材Mに付着したモルタルがコンクリート骨材の
度65℃,保持2.0時間を目標とし約24時間後に脱型して,試験
界面において悪影響を及ぼすためであると考えられる。今後,
材齢まで屋外気中養生とした。すべてのコンクリートにおい
引張強度の低下の原因についてはさらに検討が必要である。
図−6 に静弾性係数試験結果を示す。コンクリート標準示
て,脱型までの目標マチュリティーは約800℃・hrに統一した。
なお,比較のために標準養生も行った。
方書では,
普通コンクリートの圧縮強度が 30N/mm2 のとき,
一般的な静弾性係数の値として,28kN/mm²としている。N
3.試験結果と考察
と RG290 は,土木学会基準と同等であるが,再生粗骨材の置
-1471-
5.0
σb/σc=1/5
6.0
4.0
σb/σc=1/7
2.0
NP
RG290
FARG
σT/σc=1/9
4.0
2
8.0
引張強度(N/mm )
曲げ強度(N/m㎡)
10.0
3.0
2.0
1.0
0.0
σT/σc=1/15
NP
RG290
FARG
0.0
20
25
30
35
40
圧縮強度(N/mm2)
45
50
20
25
図−4 曲げ強度試験結果
30
35
40
圧縮強度(N/mm2)
45
50
図−5 引張強度試験結果
換率が高くなると静弾性係数が小さくなるとの報告 10)が多く,
45
2
静弾性係数(kN/mm )
FARG は既報告と同様に小さくなる傾向となった。しかしな
がら,FARG においても 25kN/mm²を超えており,鉄筋コン
クリートの設計上問題となる程の低下はないと判断される。
(2)凍結融解試験結果
寒冷地コンクリートにおいて,耐凍害性能が高いことは不
可欠な条件である。
発生源が不明な原コンクリートは AE コンクリートである
NP
RG290
FARG
40
35
土木学会基準
30
25
20
15
20
25
とは限らないため,耐凍害性に留意する必要がある。とくに,
JIS A 5308 レディーミクストコンクリートにおいてAE 剤の使
30
35
40
2
圧縮強度(N/mm )
45
50
図−6 圧縮強度と静弾性係数の関係
用が義務付けられたのは 1978 年であり,それ以前のコンクリ
ート構造物には AE 剤が使用されていない可能性もある。
100
相対動弾性係数(%)
つまり吸水率が大きい再生骨材は,凍結融解作用により骨材
そのものが崩壊し,それを用いたコンクリートは,ポップア
ウトや亀裂が生じる危険性があるのである。このため,再生
骨材 M を用いたコンクリートでは,地下構造物に利用範囲を
限定している。
一方,(独)土木研究所では,再生骨材の簡易な凍結融解試験
80
60
NP
RG290
FARG
40
20
0
0
法 3)を提案している。これによると,再生骨材を水中凍結
50
(-20℃)16 時間−水中融解(20℃)8 時間を 1 日 1 サイクルと
100
150
200
サイクル数(回)
250
300
図−7 凍結融解試験結果(相対動弾性係数)
して 10 日間行い,質量減少率が 10%未満の場合,耐久性指数
は 60%以上,5.0%未満の場合,耐久性指数は 85%以上を確保
できると判断するものである。さらに,この試験で用いられ
-2
質量減少率(%)
た再生骨材は,L 相当の品質のものが多く,本試験で使用し
ている M よりも品質が劣るものであり,かつ AE 剤の混入の
有無に拘わらないとしている。本研究の試験結果は 1.03%で
あった。判断基準の 5.0%を大きく下回り,今回用いた再生粗
骨材 M の凍結融解抵抗性は高いと推察される。
0
2
4
NP
RG290
FARG
6
8
図−7 および図−8 は,JIS A 1148 A 法(水中凍結−水中融
10
0
解)により凍結融解試験を行った結果である。蒸気養生を行
った供試体は,脱型後は屋外気中養生を行ったため乾燥して
50
100
150
200
サイクル数(回)
250
300
図−8 凍結融解試験結果(質量減少率)
いる。乾燥により水和反応が一時低下したコンクリートが試
験中に水分の供給を受け,再び水和反応が促進されるため,
試験中に動弾性係数が増加することがあり,劣化による動弾
では,試験前の 2 週間,水中養生を行うこととした。その結
性係数の低下だけをみることが難しくなる。このため本研究
果,動弾性係数の増加は認められなかった。
-1472-
材齢(週)
材齢(週)
5
10
0
15
0
0
0.02
2
深さ(mm)
乾燥収縮率(%)
0
0.04
NP
RG290
RGFA
0.06
10
15
4
6
0.08
5
NP
RG290
FARG
8
図−9 乾燥収縮試験結果
図−10 中性化促進試験結果
図−7 から,すべてのコンクリートにおいて 300 サイクル
材齢が経過し,ポゾラン反応が進行するとセメント硬化体の
13)14)
,二酸
終了時の相対動弾性係数は,90%以上を確保していることが
細孔径分布のピーク位置が微細側に移行するため
分かる。プレキャストコンクリート製品は,小断面であるこ
化炭素の拡散速度が抑えられ,中性化は抑制される。試験結
とが多いことから,劣化判定基準は 85%となるが,この値を
果では,フライアッシュを用いた FARG の初期値は大きく,
大きく上回っており,十分な耐凍害性能を有していると判断
材齢が経過するにつれてその値は落ち着き,既報告と同様の
できる。また,図−8 より 300 サイクル終了時の質量減少率
結果が得られた。材齢 13 週において,FARG は普通コンクリ
は,いずれのコンクリートも 1%程度で,大きなスケーリング
ート同等の値を示した。一方, RG290 は普通コンクリートに
やポップアウトも認められず,極めて良好な結果であった。
比べ小さい値となったが,この理由は定かでない。
このことは(独)土木研究所で提案している簡易凍結融解試験
(5)プレキャストコンクリート製品の試作
試作したプレキャストコンクリート製品は内幅 300mm,
法の結果と一致している。
長さ 2,000mmの落ちふた式U形側溝(JIS A 5372 推奨仕様
(3)乾燥収縮試験結果
乾燥収縮試験の供試体は蒸気養生後,材齢1日で脱型して
5‐3 1 種 300A)
の本体および蓋である。
配合は表−3 の FARG
直ちに基準長さを測定した。測定長さは 300mm である。乾燥
とした。プレキャストコンクリート製品の外観を図−11 に示
条件は温度 20℃±1℃,相対湿度 60±5%とした。試験結果を図
す。出来上がったプレキャストコンクリート製品にはジャン
−9 に示す。一般的に,吸水率が大きい低品質な再生骨材を
カおよび材料分離も認められず,外観上問題となる点はなか
使用したコンクリートでは,乾燥収縮が大きくなるが
11)
,モ
った。
ルタルの付着を抑えた高品質の再生骨材を使用した場合,普
通コンクリートと同等の性質を有すること
12)
が知られている。
プレキャストコンクリート製品の曲げ強度試験は工場出荷
可能材齢である 14 日とした。本体および蓋の JIS 規格値はそ
粗骨材の27%を再生粗骨材で置換したRG290 は,普通コンクリ
れぞれ 22.0kN/m,8.0kN/mである。JIS 規格値まで荷重をか
ートと同等であった。これに対し,再生粗骨材Mを粗骨材として
けたが,いずれもひび割れは発生せず,良好な結果であった。
全量使用した FARG は,前 2 者に比べわずかながら収縮率が
さらに,作製したプレキャストコンクリート製品は福島県
大きい傾向は認められたものの,その数値差は小さいと思わ
内の国道工事現場へ設置した。製品の設置状況を図−12 に示
れ,コンクリートの品質に悪影響を及ぼすものではないと判
す。敷設後約 5 ヶ月間が経過したが,乾燥収縮等によるひび
断される。
(4)中性化促進試験結果
用排水路等の小断面のプレキャストコンクリート製品では,
十分なかぶり厚さを確保することが難しい。このため,中性
化が大きいコンクリートは鉄筋の腐食の危険性が高く,不向
きである。そこで,中性化促進試験を実施した。供試体は蒸
気養生後,材齢 14 日まで室内で気中養生を行い,その後促進
中性化試験を開始した。試験結果を図−10 に示す。コンクリ
ートの中性化速度は,二酸化炭素の拡散速度に関係する細孔
構造と細孔溶液の pH 特性に関係するカルシウム量に依存す
る。一般的にフライアッシュを混和したコンクリートはポゾ
ラン反応によりカルシウムを消費するため中性化が進むが,
-1473-
図−11 再生骨材コンクリートの外観
割れ等は発生していないことが確認された。今後も継続して
観察し,再生粗骨材 M を使用したプレキャストコンクリート
製品の実用化へ向けて,さらにデータを蓄積する予定である。
4.総括
再生粗骨材Mを用いたプレキャストコンクリート製品に関
する研究を行い,以下のことが明らかとなった。
1)粗骨材の 290kg(約 27%)および全量を再生粗骨材 M で
置き換えたプレキャストコンクリートは,強度および耐久
性において普通コンクリートと同等の性質である。
2)簡易凍結融解法において合格した再生粗骨材 M を用いた
図−12 製品の設置状況
コンクリートの耐凍害性は高かった。
3)再生粗骨材 M の吸水率は 4%を超えていたが,乾燥収縮に
4)
(社)日本コンクリート工学協会北海道支部:リサイクル
よる悪影響は認められなかった。
研究委員会報告書,pp.1-43,2002.4
4)再生粗骨材 M を用いたプレキャストコンクリート製品は
5)北辻政文,遠藤孝夫,夛田正明,万木正弘:混合セメント
JIS の曲げ強度試験値を満足した。
および再生骨材のプレキャスト製品への利用に関する研
究,
コンクリート工学年次論文集,
Vol.27,
No.2,
pp.589-594,
5.おわりに
2005.7
再生粗骨材Mとフライアッシュを用いたコンクリートは室
6)北辻政文:電柱から取出した再生骨材を用いたコンクリー
内試験,フィールド試験ともに良好な結果であった。したが
ト製品に関する研究,プレキャストコンクリート製品の課
って,プレキャストコンクリート用骨材としての利用の可能
性を確認できた。しかし,データ数が少なく,同様な実験を
題と展望に関するシンポジウム論文集,pp101-106,2008.2
7)須藤祐未,佐藤嘉昭,清原千鶴,大谷俊浩:石炭灰の未燃
行い,品質の変動等を把握するためのデータの蓄積が必要で
炭素がコンクリートのフレッシュ性状に及ぼす影響,日
ある。なお,今後,高炉セメントと再生骨材 M の組合せにつ
本建築学会大会学術講演梗概集A-1材料施工,pp.25-26,
いて検討する予定である。
2004.8
また,現状では再生粗骨材 M を製造可能な工場が極めて少
8)平野利光,畑元浩樹:石炭灰の利用(その 2),電力土木,
なく,安定的な供給ができない状況である。これらの製造工
場の普及とフィールド試験をさらに増やし,再生粗骨材 M を
No.254,pp.69-75,1994.11
9)高巣幸二,松藤泰典:再生骨材を使用したフライアッシュ
用いたプレキャストコンクリート製品の拡張に努力したい。
外割混合コンクリートの強度性状,コンクリート工学年次
論文集,Vol.29,No.2,pp.589-594,2007.7
謝辞:本研究は(社)東北建設協会と宮城大学の共同研究で
10)柳啓,松井勇,笠井芳夫:再生骨材コンクリートの静弾
行われたものである。フィールド試験において国土交通省東
性係数に関する一考察,日本建築学会大会学術講演梗概集,
北地方整備局東北技術事務所の協力を得た。ここに記して感
謝申し上げる。
pp.1035-1036,2000.9
11)杉山一弥,内山則之,長谷川英規,神山行男:解体コン
クリートのコンクリート用骨材への適用に関する研究,コ
ンクリート工学論文集,第7巻,第1号,pp.91-101,1996.1
引用文献
12)柳橋邦生,米澤敏男,神山行男,井上孝之:高品質再生
1)
(社)日本コンクリート工学協会:骨材の品質と有効利用
骨材の研究,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.21,
に関する研究委員会報告書,pp13-15,2007.7
No.1,pp.205-210,1999.7
2)JIS A 5021,JIS A 5022,JIS A 5023,再生骨材 H,M,L を
13)山本武志ほか:フライアッシュのポゾラン反応に関する
用いたコンクリート,2007
研究,電力中央研究所報告,N04008,pp.1-27,2004.10
3)片平博,渡辺博志:再生骨材の簡易凍結融解試験法の提案,
14)小早川真ほか:ダムコンクリートにおけるフライアッシ
コンクリート工学年次論文集,
Vol.27,
No.1,
pp.1351-1356,
2005.7
ュのポゾラン反応率の考察,コンクリート工学論文集,
Vol.15,No.1,pp.45-56,2004.1
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