コンクリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,2010 論文 再生粗骨材 M のプレキャストコンクリート製品への利用に関する基 礎的研究 北辻 政文*1・丹野 恒紀*2・吉田 修栄*3・遠藤 孝夫*4 要旨:コンクリート廃材は,循環型社会の観点から再生骨材としてコンクリート材料への再利用が求められ ている。特に再生粗骨材Mは,製造コストが比較的低く,かつ回収率が高いことからその期待が大きい。し かし,乾燥収縮が大きいことと耐凍害性が低いため,その利用は地下構造物に限定されている。そこで本研 究では,これらの課題を解決するために,再生粗骨材Mをプレキャストコンクリート製品へ利用することを 検討した。研究の結果,再生骨材Mを用いたプレキャストコンクリート製品の強度および耐久性は,普通コ ンクリートと同等の品質を有することが明らかとなった。 キーワード:再生粗骨材 M,耐凍害性,フライアッシュ,乾燥収縮,プレキャストコンクリート製品 1.はじめに そこで,本研究では,これらの課題を解決するために,再 コンクリート廃材は年間 3,500 万トン排出され,建設系廃 1) 生粗骨材Mをプレキャストコンクリート製品へ利用すること 棄物の中では 42%を占めている 。これらの廃材は,主に下 を検討した。プレキャストコンクリート製品に利用した場合, 層路盤材料(クラッシャラン)として再利用が行われている 部材寸法が小さく,乾燥収縮による不具合が発生しにくいこ もののコンクリート用骨材(再生骨材)としてはほとんど利 と,また,凍結融解抵抗性についても土木研究所により簡易 用されていない。しかし,コンクリート廃材の発生量は増加 の判定法 3)が提案され,耐凍害性の有無を容易に判断できる の一途をたどると予想されているため,下層路盤としての利 ようになったことが利点としてあげられる。 用だけでは処理能力に限界があり,資源循環型社会の構築の 再生骨材のプレキャストコンクリート製品への利用に関す 観点から,コンクリート用骨材としての再利用が期待されて る研究は,日本コンクリート工学協会北海道支部 4)によって いる。 プレキャスト無筋コンクリート製品への適用について検討さ 現在,コンクリート用再生骨材はその品質を H,M,L の 3 2) ランクに分けて,それぞれ JIS 規格が制定された 。再生骨材 れている。また,プレキャスト鉄筋コンクリート製品につい ては北辻ら 5)6)の研究がある。 H は,レディーミクストコンクリートへも利用が可能であり, その品質は天然の骨材と同等である。しかし,それを製造す るためのエネルギーが多大で高コストであるため廃棄費用の 大きい大都市以外の地域では現実的ではない。さらに,高度 処理によって取り出せる粗骨材量はコンクリート廃材全体の コンクリート塊 コンクリート塊 ホッパ ホッパ 40mm以上 グリズリ フィーダ グリズリ 40mm以上 フィーダ ロールクラッシャ ロールクラッシャー 30~40%程度で,残りは微粉となり,その処理が課題となって 40mm 40mm 13mm いる。 磁選機 磁選機 リターン 13mm スク スクリーン リーン 一方,再生骨材 M と L は,H に比較して骨材製造は簡易と なるものの,使用範囲が限定されており,とくに再生骨材L 磁選機 磁選機 20mm は品質が極度に悪いため,水分管理が行えず,コンクリート の品質を一定水準に保つことが難しく,高い強度や耐久性が インパクト クラッシャ 20mm 13mm 13mm 5mm 5mm スク スクリーン リーン 要求されない裏込めや捨てコン等にしか利用できない。再生 骨材Mは品質と製造コストの面から最も利用普及の期待が大 きいものの,乾燥収縮や凍結融解作用の影響からその使用に 再生骨材 5-0 再生粗骨材M 20-5 再生細骨材インパクトクラッシャ2回 再生粗骨材 M M 5-0 20-5 あたっては,地下構造物のみに限定されており,東北地方な どの寒冷地では一般の構造物には利用できない状況にある。 *1 宮城大学 食産業部環境システム学科 教授 博(農) (正会員) *2 宮城大学 食産業部環境システム学科 *3 吉田セメント工業(株) *4 東北学院大学 工学部環境建設工学科 教授 博(工) (正会員) -1469- 図−1 再生骨材Mの製造フロー 表−2 フライアッシュの品質 表−1 再生粗骨材Mの品質 試験項目 試験値 試験項目 再生粗骨材 M JIS 規格値 試験値 二酸化ケイ素 % 67.7 湿分 % 0.1 % 4.0 g/cm3 2.17 45µ ふるい残分% 18.1 密度 表乾 2.51 − 3 g/cm 絶乾 2.41 2.30 以上 強熱減量 吸水率 % 4.31 5.00 以下 密度 微粒分量 % 0.11 1.5 以下 不純物量 % 0.00 3.0 以下 塩化物量 % 0.008 0.04 以下 粗粒率 6.53 − 骨材修正係 0.5 − 簡易凍結融解* % 1.03 5.0 以下 粉末度 比表面積 2 cm /g 3840 % 100 フロー値比 活性度指数 % 材齢 28 日 78 材齢 91 日 87 メチレンブルー吸着量 * 土木研究所法 3)による % 0.89 2.実験概要 石(表乾密度 2.65g/cm3,吸水率 0.87%,粗粒率 6.68)を用い 2.1 使用材料 た。細骨材は砕砂(表乾密度 2.62g/cm3,吸水率 1.74%,粗粒 (1)再生粗骨材M 率 2.71)を用いた。また混和材としてフライアッシュ原粉を 再生粗骨材 M は,中間処理業者から入手した。再生粗骨材 用いた。フライアッシュ使用の目的は,アルカリシリカ反応 M の製造に用いられる破砕機は,再生骨材Hに比べ簡易であ 対策のためである。すなわち出所不明の雑多なコンクリート り,多くの中間処理業者で既に有している。再生骨材 M の製 解体材を原料としているため,アルカリシリカ反応の有無を 造の一例を図−1 に示す。先ずロールクラッシャーやジョー 判断することが困難であるため,製造された再生骨材は「無 ラッシャー等で一次破砕後,インパクトクラッシャーやポラ 害でない」と判断し,対策を講じている。フライアッシュの ウダー等により1~2 回の二次破砕を行い,脆弱なモルタル分 成分および物理試験結果を表−2 に示す。試験結果より,今 を除去したものを粒度調整して製造される。再生粗骨材Mの 回用いたフライアッシュは活性度指数を除くと JIS フライア 回収率は 50~60%である。 ッシュⅡ種に相当する品質であることがわかる。 混和剤には,ポリカルボン酸系化合物を主成分とする高性 使用した再生粗骨材 M の品質を表−1 に示す。試験結果は 大きな問題となる点が1つもなく, JIS規格値を満たしている。 能減水剤(密度 1.04g/cm3)と樹脂酸塩を主成分とする AE 剤 また,骨材修正係数が,0.2∼0.8%程度あることから,空気量 (密度 1.04g/cm3)を用いた。 の管理には留意する必要がある。 2.2 実験方法 ここで,再生細骨材は木片やプラスチックなどの夾雑物や 配合を表−3 に示す。配合設計ではプレキャストコンクリ 融雪剤等の塩分含有量が高いこと,および吸水率の規格値を ート製品工場で用いられる配合を基準とし,設計基準強度 満足できないことから,本研究では対象外とした。 30N/mm2 を満足するための水セメント比として45%に統一し た。また,アルカリシリカ反応の対策としてコンクリート中 (2)その他の材料 セメントは普通ポルトランドセメント(密度 3.15g/cm ,比 の総アルカリ量を 3.0kg/m3 以下に規制し,フライアッシュを 表面積 3,280 ㎝²/g)を用いた。粗骨材は最大寸法 20mm の砕 使用した。すなわち,1)普通コンクリート,2)総アルカリ 3 表−3 コンクリートの配合 配合名 水セメ 細骨材 ント比 率 W/C (%) s/a 45.0 FARG 水 38.0 セメ フライアッ ント シュ C FA 162 360 − 162 360 162 360 W (%) NP RG290 単位量(kg/m3) 細骨材 S 粗骨材 G 再生骨材 砕石 混和剤(C×%) 減水剤 AE 剤 AD AE CG RG 671 1108 − 0.70 5A* − 671 787 290 0.70 5A 54 605 − 1003 0.70 30A *1A=C×0.002% -1470- NP RG290 FARG 0.15 圧縮強度(N/m㎡) ブリーディング量( g/cm 3 ) 50 0.2 0.1 0.05 NP RG290 FARG 40 30 20 10 0 0 0 50 100 150 経過時間(分) 200 1日 250 14日 28日(標準) 材齢(日) 図−3 圧縮強度試験結果(製品同一養生) 図−2 ブリーディング試験結果 量を3.0kg/m3 とするために再生粗骨材M で砕石を290kg 置換 3.1 フレッシュコンクリートの性状 したもの,および 3)粗骨材全量を再生粗骨材 M で置換し, 練り上がり後のフレッシュコンクリートの性状試験値は, アルカリシリカ反応の対策としてフライアッシュを混和材に スランプ 10±2.5cm,空気量 5±1.5%であり,いずれも目標範囲 用いたものの 3 種類とした。ただし,フライアッシュを使用 内であった。ただし,フライアッシュには未燃カーボンが含 する場合,コンクリートの初期強度が低下する恐れがあるた まれるため,AE 剤を吸着して空気が連行しにくい 7)ことが知 め,セメントの外割りで 15%使用した。これは,フライアッ られており,AE 剤の使用量を他の配合と比べて増やしている。 室内試験で採取したフレッシュコンクリートのブリーディ シュセメント B 種相当の置換率となる。 すべての配合においてスランプ 10±2.5cm,空気量 5±1.5% ング量試験結果を図−2 に示す。 FARG はブリーディング量を とした。 以下, 普通コンクリートを NP, 再生粗骨材 M で 290kg 抑制する効果が確認された。これは,再生粗骨材Mの吸水率 置換したものを RG290,再生粗骨材 M で全量置換したものを が適度に高く親水性であるため,練混ぜ水と骨材中の水が引 FARG と記す。 き合っていること,および結合材料多いこと等が理由として 試験項目は,ブリーディング量試験(JIS A 1223) ,圧縮強 考えられる。一方,RG290 と NP では大差はなく,再生粗骨 度試験(JIS A 1108) ,曲げ強度試験(JIS A 1106) ,引張強度試 材Mの置換率が低い場合,ブリーディング抑制効果は認めら 験(JIS A 1113) ,静弾性係数試験(JIS A 1149) ,凍結融解試験 れなかった。 (JIS A 1148 A 法),コンタクトゲージ法による乾燥収縮試験 3.2 硬化コンクリートの性質 (JIS A 1129‐2) ,中性化促進試験(JIS A 1153) ,およびプレ (1)強度特性 図−3 に圧縮強度試験結果を示す。いずれの材齢において キャストコンクリート製品の曲げ試験(JIS A 5372 推奨仕様 も 3 種類のコンクリートの強度はいずれも同等であった。一 5-3)である。 圧縮,割裂引張強度および静弾性係数試験用の供試体はφ 10×20cmの円柱供試体とし,曲げ強度,乾燥収縮,中性化促 進および凍結融解試験用は10×10×40cmの角柱供試体とした。 コンクリートの練混ぜ方法は,NPとRG290についてはセメ 般的にフライアッシュを混和材に用いると初期強度が小さい ことが知られている 8)。しかし,今回はフライアッシュをセ メントの外割りで使用したために強度低下は認められなかっ た 9)。 また出荷材齢である 14 日の強度は, 設計基準強度 30N/mm2 ントと細骨材を15秒間の空練り後,練混ぜ水を注入し60秒間 一方, FARG 練り, 粗骨材を投入して45秒間の本練りを行った。 を満足していることがわかる。 図−4 に曲げ強度,図−5 に引張強度試験結果を示す。一般 は注水後を180秒間練混ぜた。 練り上がったコンクリートはそれぞれ型枠に詰め,テーブ に曲げ強度は圧縮強度の 1/5∼1/8,引張強度は 1/9∼1/15 の範 ルバイブレ−タを用いて30秒間締固めて,型枠のまま蒸気養 囲にある。曲げ強度はすべての配合において,一般的な範囲 生を行った。 内に入っている。一方,引張強度はやや低い値となった。こ 蒸気養生は,通常工場で行われている前置き2時間,最高温 れは再生粗骨材Mに付着したモルタルがコンクリート骨材の 度65℃,保持2.0時間を目標とし約24時間後に脱型して,試験 界面において悪影響を及ぼすためであると考えられる。今後, 材齢まで屋外気中養生とした。すべてのコンクリートにおい 引張強度の低下の原因についてはさらに検討が必要である。 図−6 に静弾性係数試験結果を示す。コンクリート標準示 て,脱型までの目標マチュリティーは約800℃・hrに統一した。 なお,比較のために標準養生も行った。 方書では, 普通コンクリートの圧縮強度が 30N/mm2 のとき, 一般的な静弾性係数の値として,28kN/mm²としている。N 3.試験結果と考察 と RG290 は,土木学会基準と同等であるが,再生粗骨材の置 -1471- 5.0 σb/σc=1/5 6.0 4.0 σb/σc=1/7 2.0 NP RG290 FARG σT/σc=1/9 4.0 2 8.0 引張強度(N/mm ) 曲げ強度(N/m㎡) 10.0 3.0 2.0 1.0 0.0 σT/σc=1/15 NP RG290 FARG 0.0 20 25 30 35 40 圧縮強度(N/mm2) 45 50 20 25 図−4 曲げ強度試験結果 30 35 40 圧縮強度(N/mm2) 45 50 図−5 引張強度試験結果 換率が高くなると静弾性係数が小さくなるとの報告 10)が多く, 45 2 静弾性係数(kN/mm ) FARG は既報告と同様に小さくなる傾向となった。しかしな がら,FARG においても 25kN/mm²を超えており,鉄筋コン クリートの設計上問題となる程の低下はないと判断される。 (2)凍結融解試験結果 寒冷地コンクリートにおいて,耐凍害性能が高いことは不 可欠な条件である。 発生源が不明な原コンクリートは AE コンクリートである NP RG290 FARG 40 35 土木学会基準 30 25 20 15 20 25 とは限らないため,耐凍害性に留意する必要がある。とくに, JIS A 5308 レディーミクストコンクリートにおいてAE 剤の使 30 35 40 2 圧縮強度(N/mm ) 45 50 図−6 圧縮強度と静弾性係数の関係 用が義務付けられたのは 1978 年であり,それ以前のコンクリ ート構造物には AE 剤が使用されていない可能性もある。 100 相対動弾性係数(%) つまり吸水率が大きい再生骨材は,凍結融解作用により骨材 そのものが崩壊し,それを用いたコンクリートは,ポップア ウトや亀裂が生じる危険性があるのである。このため,再生 骨材 M を用いたコンクリートでは,地下構造物に利用範囲を 限定している。 一方,(独)土木研究所では,再生骨材の簡易な凍結融解試験 80 60 NP RG290 FARG 40 20 0 0 法 3)を提案している。これによると,再生骨材を水中凍結 50 (-20℃)16 時間−水中融解(20℃)8 時間を 1 日 1 サイクルと 100 150 200 サイクル数(回) 250 300 図−7 凍結融解試験結果(相対動弾性係数) して 10 日間行い,質量減少率が 10%未満の場合,耐久性指数 は 60%以上,5.0%未満の場合,耐久性指数は 85%以上を確保 できると判断するものである。さらに,この試験で用いられ -2 質量減少率(%) た再生骨材は,L 相当の品質のものが多く,本試験で使用し ている M よりも品質が劣るものであり,かつ AE 剤の混入の 有無に拘わらないとしている。本研究の試験結果は 1.03%で あった。判断基準の 5.0%を大きく下回り,今回用いた再生粗 骨材 M の凍結融解抵抗性は高いと推察される。 0 2 4 NP RG290 FARG 6 8 図−7 および図−8 は,JIS A 1148 A 法(水中凍結−水中融 10 0 解)により凍結融解試験を行った結果である。蒸気養生を行 った供試体は,脱型後は屋外気中養生を行ったため乾燥して 50 100 150 200 サイクル数(回) 250 300 図−8 凍結融解試験結果(質量減少率) いる。乾燥により水和反応が一時低下したコンクリートが試 験中に水分の供給を受け,再び水和反応が促進されるため, 試験中に動弾性係数が増加することがあり,劣化による動弾 では,試験前の 2 週間,水中養生を行うこととした。その結 性係数の低下だけをみることが難しくなる。このため本研究 果,動弾性係数の増加は認められなかった。 -1472- 材齢(週) 材齢(週) 5 10 0 15 0 0 0.02 2 深さ(mm) 乾燥収縮率(%) 0 0.04 NP RG290 RGFA 0.06 10 15 4 6 0.08 5 NP RG290 FARG 8 図−9 乾燥収縮試験結果 図−10 中性化促進試験結果 図−7 から,すべてのコンクリートにおいて 300 サイクル 材齢が経過し,ポゾラン反応が進行するとセメント硬化体の 13)14) ,二酸 終了時の相対動弾性係数は,90%以上を確保していることが 細孔径分布のピーク位置が微細側に移行するため 分かる。プレキャストコンクリート製品は,小断面であるこ 化炭素の拡散速度が抑えられ,中性化は抑制される。試験結 とが多いことから,劣化判定基準は 85%となるが,この値を 果では,フライアッシュを用いた FARG の初期値は大きく, 大きく上回っており,十分な耐凍害性能を有していると判断 材齢が経過するにつれてその値は落ち着き,既報告と同様の できる。また,図−8 より 300 サイクル終了時の質量減少率 結果が得られた。材齢 13 週において,FARG は普通コンクリ は,いずれのコンクリートも 1%程度で,大きなスケーリング ート同等の値を示した。一方, RG290 は普通コンクリートに やポップアウトも認められず,極めて良好な結果であった。 比べ小さい値となったが,この理由は定かでない。 このことは(独)土木研究所で提案している簡易凍結融解試験 (5)プレキャストコンクリート製品の試作 試作したプレキャストコンクリート製品は内幅 300mm, 法の結果と一致している。 長さ 2,000mmの落ちふた式U形側溝(JIS A 5372 推奨仕様 (3)乾燥収縮試験結果 乾燥収縮試験の供試体は蒸気養生後,材齢1日で脱型して 5‐3 1 種 300A) の本体および蓋である。 配合は表−3 の FARG 直ちに基準長さを測定した。測定長さは 300mm である。乾燥 とした。プレキャストコンクリート製品の外観を図−11 に示 条件は温度 20℃±1℃,相対湿度 60±5%とした。試験結果を図 す。出来上がったプレキャストコンクリート製品にはジャン −9 に示す。一般的に,吸水率が大きい低品質な再生骨材を カおよび材料分離も認められず,外観上問題となる点はなか 使用したコンクリートでは,乾燥収縮が大きくなるが 11) ,モ った。 ルタルの付着を抑えた高品質の再生骨材を使用した場合,普 通コンクリートと同等の性質を有すること 12) が知られている。 プレキャストコンクリート製品の曲げ強度試験は工場出荷 可能材齢である 14 日とした。本体および蓋の JIS 規格値はそ 粗骨材の27%を再生粗骨材で置換したRG290 は,普通コンクリ れぞれ 22.0kN/m,8.0kN/mである。JIS 規格値まで荷重をか ートと同等であった。これに対し,再生粗骨材Mを粗骨材として けたが,いずれもひび割れは発生せず,良好な結果であった。 全量使用した FARG は,前 2 者に比べわずかながら収縮率が さらに,作製したプレキャストコンクリート製品は福島県 大きい傾向は認められたものの,その数値差は小さいと思わ 内の国道工事現場へ設置した。製品の設置状況を図−12 に示 れ,コンクリートの品質に悪影響を及ぼすものではないと判 す。敷設後約 5 ヶ月間が経過したが,乾燥収縮等によるひび 断される。 (4)中性化促進試験結果 用排水路等の小断面のプレキャストコンクリート製品では, 十分なかぶり厚さを確保することが難しい。このため,中性 化が大きいコンクリートは鉄筋の腐食の危険性が高く,不向 きである。そこで,中性化促進試験を実施した。供試体は蒸 気養生後,材齢 14 日まで室内で気中養生を行い,その後促進 中性化試験を開始した。試験結果を図−10 に示す。コンクリ ートの中性化速度は,二酸化炭素の拡散速度に関係する細孔 構造と細孔溶液の pH 特性に関係するカルシウム量に依存す る。一般的にフライアッシュを混和したコンクリートはポゾ ラン反応によりカルシウムを消費するため中性化が進むが, -1473- 図−11 再生骨材コンクリートの外観 割れ等は発生していないことが確認された。今後も継続して 観察し,再生粗骨材 M を使用したプレキャストコンクリート 製品の実用化へ向けて,さらにデータを蓄積する予定である。 4.総括 再生粗骨材Mを用いたプレキャストコンクリート製品に関 する研究を行い,以下のことが明らかとなった。 1)粗骨材の 290kg(約 27%)および全量を再生粗骨材 M で 置き換えたプレキャストコンクリートは,強度および耐久 性において普通コンクリートと同等の性質である。 2)簡易凍結融解法において合格した再生粗骨材 M を用いた 図−12 製品の設置状況 コンクリートの耐凍害性は高かった。 3)再生粗骨材 M の吸水率は 4%を超えていたが,乾燥収縮に 4) (社)日本コンクリート工学協会北海道支部:リサイクル よる悪影響は認められなかった。 研究委員会報告書,pp.1-43,2002.4 4)再生粗骨材 M を用いたプレキャストコンクリート製品は 5)北辻政文,遠藤孝夫,夛田正明,万木正弘:混合セメント JIS の曲げ強度試験値を満足した。 および再生骨材のプレキャスト製品への利用に関する研 究, コンクリート工学年次論文集, Vol.27, No.2, pp.589-594, 5.おわりに 2005.7 再生粗骨材Mとフライアッシュを用いたコンクリートは室 6)北辻政文:電柱から取出した再生骨材を用いたコンクリー 内試験,フィールド試験ともに良好な結果であった。したが ト製品に関する研究,プレキャストコンクリート製品の課 って,プレキャストコンクリート用骨材としての利用の可能 性を確認できた。しかし,データ数が少なく,同様な実験を 題と展望に関するシンポジウム論文集,pp101-106,2008.2 7)須藤祐未,佐藤嘉昭,清原千鶴,大谷俊浩:石炭灰の未燃 行い,品質の変動等を把握するためのデータの蓄積が必要で 炭素がコンクリートのフレッシュ性状に及ぼす影響,日 ある。なお,今後,高炉セメントと再生骨材 M の組合せにつ 本建築学会大会学術講演梗概集A-1材料施工,pp.25-26, いて検討する予定である。 2004.8 また,現状では再生粗骨材 M を製造可能な工場が極めて少 8)平野利光,畑元浩樹:石炭灰の利用(その 2),電力土木, なく,安定的な供給ができない状況である。これらの製造工 場の普及とフィールド試験をさらに増やし,再生粗骨材 M を No.254,pp.69-75,1994.11 9)高巣幸二,松藤泰典:再生骨材を使用したフライアッシュ 用いたプレキャストコンクリート製品の拡張に努力したい。 外割混合コンクリートの強度性状,コンクリート工学年次 論文集,Vol.29,No.2,pp.589-594,2007.7 謝辞:本研究は(社)東北建設協会と宮城大学の共同研究で 10)柳啓,松井勇,笠井芳夫:再生骨材コンクリートの静弾 行われたものである。フィールド試験において国土交通省東 性係数に関する一考察,日本建築学会大会学術講演梗概集, 北地方整備局東北技術事務所の協力を得た。ここに記して感 謝申し上げる。 pp.1035-1036,2000.9 11)杉山一弥,内山則之,長谷川英規,神山行男:解体コン クリートのコンクリート用骨材への適用に関する研究,コ ンクリート工学論文集,第7巻,第1号,pp.91-101,1996.1 引用文献 12)柳橋邦生,米澤敏男,神山行男,井上孝之:高品質再生 1) (社)日本コンクリート工学協会:骨材の品質と有効利用 骨材の研究,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.21, に関する研究委員会報告書,pp13-15,2007.7 No.1,pp.205-210,1999.7 2)JIS A 5021,JIS A 5022,JIS A 5023,再生骨材 H,M,L を 13)山本武志ほか:フライアッシュのポゾラン反応に関する 用いたコンクリート,2007 研究,電力中央研究所報告,N04008,pp.1-27,2004.10 3)片平博,渡辺博志:再生骨材の簡易凍結融解試験法の提案, 14)小早川真ほか:ダムコンクリートにおけるフライアッシ コンクリート工学年次論文集, Vol.27, No.1, pp.1351-1356, 2005.7 ュのポゾラン反応率の考察,コンクリート工学論文集, Vol.15,No.1,pp.45-56,2004.1 -1474-
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