は じ め に

は じ め に
技能講習や特別教育の安全教育は 1 度受講して修了証を手にすると、そのあ
とは「受講済み」の扱いとなります。能力向上教育の仕組みもあまり活用され
ていません。5 年前の修了証でも 10 年前のものでも資格としては通用してし
まいます。
そして、その長い作業経験を重ねる間に、ともすれば正しい作業手順からは
ずれて、自分に対して楽なように作業ができる自己流に方法が身についてしま
いがちになります。実は、このような思い込みや勘違いなどが災害に結びつく
大きな落とし穴になってしまうのです。
本冊子の特徴は、実際の災害事例をもとにした設問により作業員の方に問題
意識を持っていただいた後に、○×式の問題により作業手順が正しいかどうか、
解説欄の右下に○×表示をし、すぐ自己チェックができる構成となっています。
普段なにげなく行動していることが正しかったのか誤っていたのかが、はっき
り確認できます。
解答の解説には根拠となった法令・通達等を記載していますので、
興味を持っ
た箇所は原文を読み、一層の理解を深めていただければと思います。
本冊子が、作業員の方々や作業所の安全活動に貢献できることを願っていま
す。
目 次
1 まさか自分が当事者になるとは思わない … ……… 3
2 クレーンの作業及び玉掛けの作業 … …………………… 4
3 足場組立の作業 …………………………………………………………… 8
4 地山掘削及び土止め支保工の作業 … ………………… 12
5 車両系建設機械等の作業 ……………………………………… 16
6 ずい道(シールド工事)等の作業 ………………………… 20
7 電動工具(携帯用丸のこ盤等)の作業 ………………… 24
8 職長・安全衛生責任者の職務 ……………………………… 28
解答と解説 … ……………………………………………………………… 30
デザイナー TAKEDASO. Design
イラストレータ 小島サエキチ
3
足場組立の作業
足場からの墜落・転落による労働災害の防止は、平成 21 年 3 月の労働安全衛
生規則改正により、平成 24 年 2 月に 「足場からの墜落・転落災害防止総合対策
推進要綱」 が策定されました。墜落・転落災害発生状況は、長期的には減少傾
向にあるものの、依然として後を絶たず起こっています。足場について、より
一層の安全対策が必要です。
「単管足場」を躯体(構造物)の周囲に組み立てた時
は、壁つなぎは不要だ
か か?
壁つなぎを省略したため
に足場が倒壊した事例が毎
年のように発生し、歩道を通
行していた小学生の上に崩
れてきた災害も起こっていま
す。労働安全衛生規則や通
達で間隔や強度などが定め
られており、壁つなぎの垂直
方向は 5m 以下、水平方向
は 5.5m 以下の間隔で設け
なければなりません。
解答
労働安全衛生規則第 570 条
8
「わく組足場」は既製品を使用するので、躯体と大
きな隙間が生じてもよい
か か?
わく組足場と躯体との隙間が
45cm あいており墜落防止措置を
行っていなかったため、作業者が
墜落した事例があります。人の身
体は左右の幅はありますが、前後
の厚みは 45cm もありません。隙
間は 25 ~ 30cm 以下で計画しま
しょう。
解答
「わく組足場」の妻面は、手すり、中さん、幅木を
設ける
か か?
妻 面 は「 わ く 組 足 場 以 外
の足場」に該当しますの
で、高さ 85cm 以上の位置
幅 木
に手すり、高さ 35cm 以上
手すり
50cm 以下 の位置に中さん
中さん
及び幅木を設けます。
解答
労働安全衛生規則第 570 条、第 571 条、足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱等
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なぜ決められているの?
これだけは知ってみんなで守ろう!
バックホウ(ドラグショベル)により荷の吊り上げを行うなど、主
たる用途以外の用途に車両系建設機械を使用してはならないことに
なっています。荷の吊り上げ作業でこの規則が適用にならないのは、
次 の 要 件 を い ず れ も 満 た し て い る 時 だ け で す( 労 働 安 全 衛 生 規 則 第
164 条)。
① 作業の性質上やむを得ないときまたは安全な作業の遂行上必要なとき。
② アーム、バケット等の作業装置に次のいずれにも該当するフック、
シャックル等の金具その他の吊り上げ用の器具を取り付けて使用す
るとき。
(1) 負荷させる荷重に応じた十分な強度を有するものであること。
(2) 外れ止め装置が使用されていること等により当該器具から吊り
上げた荷が落下するおそれのないものであること。
(3) 作業装置から外れるおそれのないものであること。
③ 「①、②」の場合に、危険防止措置を下図のようにすべて講じたとき。
最大荷重を
超えない
吊り荷との接触・吊り荷の落下箇所への
立ち入り禁止
平坦な場所
合図者
玉掛用具が
ワイヤーロープの場合
・安全係数 6 以上、1 よりの
素線切断が 10%未満
・直径の減少が公称径の 7%
以下
・キンク、著しい形崩れ、腐
食していないもの
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玉掛用具が
吊りチェーンの場合
玉掛用具が
左欄以外の場合
・安全係数5以上または4以 著しい損傷や腐食がないもの
上(一定要件を満たすもの)
・伸びが5%以下
・リンク断面の直径減少が
10%以下
・き裂がないもの
あなたの理解度を
か
チェックしよう!
地山掘削の作業
かで
正解数
問
10 問中
❶地山掘削の作業を行う前に、地質や地層の状態、湧水等の有無、埋設物
等の有無などを調査した。
❷掘削深さが 2m を超える個所で作業を行う時は、はしごやステップなど
の昇降設備を設けた。
❸掘 削深さが 2m 以上になる場
合、路面上には墜落を防止す
るために手すり等を設けた。
〈すかし掘り〉
❹大雨の後や震度 4 以上の地震
後に、掘削作業箇所やその周
辺の地山の点検を行った。
❺工 期短縮のために作業の能率
を考えて、右図のような「す
かし掘り」を行った。
土止め支保工の作業
❻土止め支保工を組み立てる時に、あらかじめ組立図の入った作業手順書
で、確認をした。
❼掘削が順調に進んだので、ダンプの台数を増やして、予定より深く掘削
してから、腹起しを設置した。
❽鋼矢板を打設して設置した土止め箇所の大きさが設計図より小さかった
ので、腹起しを突合せ継手から重ね継手に変更して設置した。
❾深さ 2m 以上の腹起しや切梁上に部材やボルトの点検を行うために、安
全帯を掛けられる親綱を設置した。
❿土止め支保工の切梁や腹起しの取付けまたは取りはずし作業を行う時は、
関係作業者以外の作業者が立ち入ることを禁止した。
※「解答と解説」は、30 ページ参照
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