トヨタ 「 i Q 」に見る超小型車の新しいカラー展開 - DICカラーデザイン

プレミアムをうたうマイクロカーのカラープランニング
ト ヨ タ「 i Q
」に
マイクロカーのカラーラインアップ分布(画像版)
見る超小型車の新しいカラー展開
色で攻める
川村雅徳( DICカラーデザイン http://www.dic-color.com )
トヨタ自動車から超小型サイズの新
は 139 万円と、軽自動車としては割高
しさ」
「元気さ」というイメージが付加さ
タリック <5A7> といったカラードシル
型車「 iQ(アイキュー)」が 11 月 20 日、
と言われていたが、iQ は 140 〜 160 万
れた。ホイールキャップまでがカラーコ
バー系のトレンドカラーを取り入れつ
発売された。i Q は来年初めから欧州で
円、フォーツークーペは 176 万円。こ
ーディネートされていたことからも、カ
つ、有彩色では、ディープアメジストマ
の販売も予定されており、車名も日欧同
うして比較すると、必ずしも割高ではな
ラーデザインに注力していたことが分か
イカメタリック <9AH> 、グレイッシュ
一の展開となる。こうしたことからも、
い気もする。エコ意識が強い欧州で展開
る。ツインは日常生活でサンダル代わり
ブルーメタリック <8R3> 、ジェイドグ
ライバル車としては、独ダイムラーの
していれば、日本市場とは異なる反響、
に使う「ちょい乗り車」がコンセプトで
リーンメタリック <6V5> という、落ち
「スマート フォーツークーペ」が予想さ
評価があったかもしれない。商品の成否
あったため、「気軽さ」を訴求したかっ
着き感じさせる赤、青、緑を設定し、高
れる。両車の最大の違いはパッケージン
は時代性との関係でも大きく左右され、
たのではないだろうか。
級車然としたカラーラインアップとなっ
グ。フォーツークーペは 2 人乗りだが、
ツインは、その投入のタイミングに恵ま
輸入車であるフォーツークーペにも同
ている。
i Q は 4 人乗車が可能だ。この差が、欧
れなかった車種と言えるだろう。
様の考え方がうかがえる。ツインに通じ
ニュートラルカラー(無彩色)におい
る赤、青、黄、白の 4 色にシルバーと黒
ては、ホワイトパールクリスタルシャイ
が加わったのが日本市場でのカラーライ
ン <070> やブラックマイカ <209> と
州マーケットでどのように評価されるか
「気軽さ」を表現するマイクロカーの色
楽しみだ。
日本のマイクロカーというと、2003
新カテゴリーを展開する際、イメージ
ンアップ。もともとカジュアルなデザイ
いうパール系カラーが設定されている。
年に発売され 2005 年まで生産されたス
訴求の戦略としてカラーデザインは大き
ンの腕時計で有名なスイスのスウォッチ
欧州市場でのカラー展開はまだ発表され
ズキの軽自動車「ツイン」が思い起こさ
な役割を担っている。
との協業で始まった事業であり、ツート
ていないが、同一であれば、欧州でのホ
れる。ツインは 2 人乗りだったが iQ よ
ツインは「シグナルカラー」をコンセ
ン調のカラーデザインは、その出自を色
ワイトパールの評判が楽しみだ。
りさらにコンパクト。画期的なことに、
プトにカラーラインアップが設定されて
濃く感じさせる。ブランドこそ「スマー
新開発色となるのはジェイドグリーン
軽自動車で初めてハイブリッドモデルが
いた。文字どおり、信号機の色になぞら
ト」であるが、実質的にはプレミアムカ
メタリック。
“ jade green ”とは、翡翠
設定されていた。燃費は、10 ・ 15 モー
えた赤、青、黄色の展開である。白も使
ーブランド「メルセデス・ベンツ」のプ
に見られる深緑を指す色名であり、色の
ドで 34km/L と、iQ の 23km/L を大き
われていたが、この色は廉価グレードの
ロダクトである。この 10 月には、発売
深みを意図したことがうかがえる。ま
く上回っていた。
専用色だった。ツインの造形をひとこと
10 周年記念車(日本投入は 2000 年)を
た、シルキーゴールドマイカメタリック
ツインの廉価版の価格は 49 万円と激
で言えば、「 丸くて小さい 」 。この造形
限定発売したが、カラーで特別な提案は
<5A7> はトヨタが海外展開で使用して
安。主力グレードの 3 速オートマチック
に基本的有彩色 3 色を掛け合わせたツー
なかった。
いた色であり、国内で販売する車では初
車でも 84 万円だ。ハイブリッドモデル
トンカラーで、
「シンプルさ」
「かわいら
〈 070 〉
〈 3PO 〉
〈 9AH 〉
〈1F7 〉
〈 5A7 〉
〈 8R3 〉
〈 209 〉
〈 4T3 〉
〈 6V5 〉
「 iQ 」の 9 色のカラーラインアップ。ビビッドな色はレッドの1 色のみ。唯一のソリッドカ
ラーでもある。全体感として高級な色をそろえていることがわかる
52
NIKKEI DESIGN 特集 ■ 2009 年 注目カラーはこの 3 色
マイクロカーのカラーラインアップ分布(カラーチップ版)
トヨタ・IQ
スマート・フォーツークーペ
スズキ・ツイン
設定の色。上品なゴールド色域であり、
新カテゴリーの創出に挑戦するiQ
トヨタ・IQ のカラーラインアップ
「 DIC カラーアナライザー」の色相・彩度図に各車各色の画像をマッピング。大きな画像は国内初設定
色のシルキーゴールドマイカメタリックと新開発色のジェイドグリーンメタリック
量的なヒットも期待できる色である。
i Q の場合はどうだろうか。最大の特
日本国内で i Q に課せられた使命は
徴は「 4 人乗車が可能」という点だが、
「マイクロプレミアムカー」という新し
他車との違いを明確にしているキーワー
い価値観に基づく市場の創出。とても
ドが「プレミアム」である。コンパクト
チャレンジャブルな試みである。「プレ
カーよりもさらに小さいマイクロカーで
ミアム」性を徹底するならば「レクサス」
ありながら、高い質感を備えたプレミア
ブランドがふさわしい気もするが、トヨ
ムカーを自称している。そのエクステリ
タ車としてネッツ系列での販売となって
アカラーではどのような展開がされてい
いる。数多く売れることが「エコ」につ
るのか。
ながるため、販売チャンネルが多い「ト
DIC カラーアナライザー( DCA )で
ヨタ」が適当だったとも言える。この新
分析した参考ビジュアルをご覧いただけ
しい提案で、果たしてトヨタが広めてい
れば分かるように、両車とは大きく異な
る「エコ替え」を促進することができる
るカラーラインアップになっている。ブ
のだろうか。ただ、エコ促進という目的
ロンズマイカメタリック <4T3(色番号、
を考えると、「ハイブリッド」モデルが
以下同)> やシルキーゴールドマイカメ
ないのが惜しまれる。
「 DIC カラーアナライザー」の色相・彩度図と色立体図に3 車種の各色をマッピングすると、iQだけが
ビビッドカラーではなく、低彩度色を幅広くそろえていることが分かる
December 2008 NIKKEI DESIGN
53