新大医保紀要 WT1、SART1 mRNA 導入単球由来樹状細胞を用いた抗原特異的 T 細胞の誘導 杼木 梶 希1)、成田美和子1)、斎藤杏里1)、渡部紀宏1)、 昌美1)、佐藤謙亨1)、山平晶恵1)、中村岳史1)、高橋益廣1) 1)新潟大学大学院保健学研究科血液・腫瘍検査学 要旨 樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫療法への応用を目的として、我々は腫瘍抗原(WT1 および SART1)mRNA 導入単球由来樹状細胞を用いて抗原特異的細胞傷害性 T 細胞の誘導を試み た。HLA-A24 陽性の末梢血単核球から分離した CD14+細胞に GM-CSF/IL-4 を添加し 7 日間 培養後、TNF-α, IL-1α, IL-6, PGE2 を添加培養することで単球由来成熟樹状細胞を誘導した。 未処理の単球由来樹状細胞で前刺激した自己リンパ球は HLA-A24 陽性の標的細胞に対して 細胞傷害性を示さなかったが、腫瘍抗原 mRNA 導入単球由来樹状細胞でパルスしたリンパ 球は腫瘍抗原を提示している HLA-A24 陽性細胞に対して細胞傷害性を示し、この細胞傷害 性は抗 MHC class I 抗体を加えることによって抑制された。これらの結果から、WT1 mRNA または SART1 mRNA 導入単球由来樹状細胞は腫瘍抗原特異的 T 細胞を誘導可能で、細胞免 疫治療に応用可能であると思われた。 Keywords: Antigen-specific CTL, Monocyte-derived DCs, WT1, SART1, In vitro-transcribed mRNA, 1.はじめに 樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫療法の開発には、簡便で高率に樹状細胞に腫瘍抗原を提示 させる方法を確立することが重要である。腫瘍抗原ペプチドをパルスする方法が一般的で あるが、ペプチドパルスには MHC の拘束性というハードルが存在する。樹状細胞への腫瘍 抗原 mRNA 導入が有用であることは既に確認されており1)、腫瘍抗原 RNA の導入方法とし ては、受動的パルス2)、リポフェクション3)、電気穿孔法(electroporation)4)などの方法 が報告されている。腫瘍抗原 mRNA 導入樹状細胞を用いた抗原特異的細胞傷害性 T 細胞誘 導の有用性は、human telomerase reverse transcriptase (hTERT), survivin, MART-1, Melan-A, carcinoembryonic antigen (CEA), alpha-fetoprotein (AFP), NY-ESO-1, folate receptor-α, tyrosinase-related protein 2 , MUC1 mRNA において報告されている。臨床的には、前立腺がん や乳がん、肺がんへの細胞免疫療法として、PSA, CEA, hTERT などの mRNA 導入樹状細胞 として既に報告されている。 mRNA 導入法は、腫瘍抗原 mRNA だけではなく、total RNA にも応用できる。Total RNA を導入した樹状細胞を用いれば、個々の腫瘍細胞上に提示されている全ての腫瘍抗原に対 して複数の CTL を増幅可能であり、かつ、腫瘍抗原が特定されない症例に対しても樹状細 胞療法を行うことができる。 Wilms’ tumor 1 (WT1)遺伝子は最初、ウィルムス腫瘍から腫瘍抑制遺伝子として分離され たが、この遺伝子は急性および慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、骨髄異形成症 候群を含む血液悪性腫瘍、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、結腸/直腸がん、甲状腺がん、腎 臓がん、骨/軟部組織肉腫、頭頸部扁平上皮がんを含む大多数の固形腫瘍で高率に発現して いることが確認された5)。in vitro の検討では、HLA-A*0201 あるいは A*2402 陽性の末梢 血リンパ球を WT1 ペプチドでパルスした抗原提示細胞で刺激することによって WT1 特異 的細胞傷害性 T 細胞が誘導されることが確認されている6,7,8)。WT1 ペプチドは、急性骨髄 性白血病、骨髄腫、骨髄異形成症候群、脳腫瘍、乳がん、結腸・直腸がん、甲状腺がんな どの HLA-24 陽性例に対してすでに臨床試験が開始されている9)。 Squamous cell carcinoma antigen recognized by T cells-1 (SART1) 遺伝子は大多数の扁平上 皮癌と腺癌において高率に発現している。SART1 ペプチドを用いた免疫療法の臨床試験は HLA-A26+または A24+の扁平上皮がんと腺がんの患者ですでに行われている10)。 樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫治療において WT1 または SART1 mRNA を導入した単球由 来樹状細胞の有用性を評価することを目的として、我々は WT1 または SART1 mRNA 導入 単球由来樹状細胞でリンパ球を刺激することで抗原特異的細胞傷害性 T 細胞が誘導される かを検討した。 2.材料と方法 2-1. 単球由来樹状細胞の培養 健常人の末梢血からLymphoprep (Axis-Shield PoC AS, Oslo, Norway)を用いて単核球を分離 し、抗CD14抗体 (Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を加えて15分間 incubateし、洗浄後microbeads を加えて15分間 incubateした。洗浄後、magnetic columnを用いてCD14+細胞(単球)を分離 した。分離したCD14+細胞を、50 ng/ml GM-CSF (Kirin Brewery Co. Takasaki, Japan) と5 ng/ml IL-4 (Schering-Plough Research Institute, Kenilworth, NJ) を加えた5%自己血清添加RPMI-1640 (Gibco, Grand Island, NY) で6日間培養して未熟単球由来樹状細胞(immature dendiritc cell) を誘導した。この未熟樹状細胞培養系に5 ng/ml TNF-α (Hayashibara Biochemical Labs, Okayama, Japan), 1,000 U/ml IL-1α (Peprotech, London, UK), 10 ng/ml IL-6 (Kirin Brewery Co), 1 µg/ml PGE2 (Ono Pharmaceutical Co. Osaka, Japan) を追加し一日間培養を継続することで成 熟樹状細胞(mature dendiritc cell)を誘導した。 2-2. In vitro transcribed (IVT) mRNAの作成 Plasmid pGEM4Z/EGFP/A64はDr. E. Gilboa (University of Miami, FL) から供与を受けた pGEM4Z/SART1/A64は、pGEM4Z/GFP/A64からGFPを切り出しSART1のcDNAを組み込んで 作成した。EGFP mRNAとSART1 mRNAはそれぞれのプラスミドをDNAテンプレートとして T7 mMESSAGEmMACHINE kit (Ambion Inc., Austin, TX)を用いて作成した。WT1 cDNAを含 むプラスミドpcDNA3.1(+)から転写されたWT1 mRNAは Poly(A) Tailing Kit (Ambion Inc.)を 用いて Poly(A) tailingを行った後に転写増幅した。 2-3. 細胞株 誘導したCTLの細胞傷害活性試験のtargetとしては以下の4種類の細胞株を用いた。まず、 HLA-A*2402陽性の腫瘍細胞株としては、WT1を高発現している巨核芽球性白血病細胞株 Meg01とSART1を高発現している食道癌細胞株KE4を用いた。HLA-A*2402に特異的なWT1 あるいはSART1 ペプチドを人為的に発現させたtargetとしては、HLA-A, B, Cを欠損させた 変異lymphoblastoid cell line (LCL) にHLA-A*2402 cDNAを遺伝子導入しHLA-A24のみを発 現させた 721.221/A*2402 Bリンパ芽球様細胞株 B-LCLと、TAPを欠損させたヒトT, Bハイ ブリドーマ細胞であるT2細胞にHLA-A24を発現させたT2-A24 細胞を用いた(両者とも愛知 県がんセンターの赤塚美樹先生より供与)。 2-4. 単球由来樹状細胞へのIVT腫瘍抗原mRNAの導入 電気穿孔法チャンバーに成熟樹状細胞 5x107 /mlと 50 µg/ml IVT WT1 またはSART1 mRNAを入れ、本研究室の以前の検討48)において単球由来樹状細胞に対するmRNA導入の 最適条件であることを確認した 1.75 kV/cmの電気強度と 250 µsのパルス幅で単矩形波脈を 用いて導入した。mRNAを導入した単球由来樹状細胞の一部は凍結保存し、培養リンパ球の 再刺激に使用した。 2-5. total RNAの抽出と逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR) 単球由来樹状細胞にWT1 mRNAを導入後、2時間、48時間培養した後にTrizol (Gibco-BRL, Grand Island, NY) を用いてtotal RNAを抽出した。抽出したRNAをavian myeloblastosis virus (AMV) reverse transcriptase (Takara, Kyoto, Japan) のoligo dT-adaptor primer法を用いてcDNA を作成し、deoxynucleotide triphosphate, upperプライマー、lowerプライマー、 Taq DNA polymerase (TaKaRa Ex Taq HS, Takara)を含むPCRバッファーと混合した。WT1のプライマー はupper : AATGGACAGAAGGGCAGAGC, lower : ATTTTGTTCACTTTTCGGGA (product length : 465 bp) を用いた。PCR反応の35 cycleは、1 cycleがdenaturing : 94℃で 0.5分、 annealing : 54.5℃で 0.5分、extraction : 72℃で 1分という構成でreal-time PCR system (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて反応させた。反応産物は 1%アガロースゲルで電 気泳動を行った。 2-6. 抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導 抗原特異的細胞傷害性T細胞の誘導に用いたリンパ球や単球由来樹状細胞は、HLA-A24陽 性を確認した細胞を使用した。腫瘍抗原mRNA導入成熟樹状細胞をstimulator, 自己の末梢血 非附着細胞(non-adherent cells : NACs)をresponderとして、stimulator : responder = 1 : 10 の 割合で5%自己血清加RPMI 1640培養液で共培養した。培養開始後1週間ごとに凍結しておい た腫瘍抗原mRNA導入成熟樹状細胞を解凍し、共培養系に加えリンパ球への再刺激を行った。 再刺激は3回行った。培養開始の2日目に IL-7 (10 ng/ml)を添加し、3日目に IL-2 (30 IU/ml) を加えた。その後IL-7とIL-2を週に2回の割合で追加添加した。3回目の再刺激をした1週間 後に、抗原特異的細胞傷害性T細胞の活性を51Cr-release assayを用いて測定した49)。 2-7. 細胞傷害性の測定 Meg01やKE4, IVT WT1 mRNAまたは IVT EGFP mRNAを導入した721.221/A*2402 LCL、 SART1259 ペプチド(HLA-A24-restricted 9mer peptides, EYRGFTQDF)をパルスしたT2-A24細 胞を細胞傷害性試験のtargetとした。target細胞を100 µCi Na51CrO4 (Perkin-Elmer, Boston, MA) でラベルしたのち、RPMI 1640培養液で3回洗浄した。腫瘍抗原mRNAを導入した単球由来 樹状細胞で刺激したリンパ球をeffecter細胞とした。37℃、5% CO2の環境下で、51Crラベル したtarget細胞とeffecter細胞を種々の割合で混合し、96穴丸底プレート(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ) で4時間供培養した。培養後上清を回収し、上清中の51Cr放出量 を auto-well gamma system Aloka ARC-300 (Aloka, Tokyo, Japan)で測定した。target細胞のみのwell には1N HClを添加しmaximum51Cr放出量を測定し、培養液のみのwellからの検出量を spontaneous 51Cr放出量をとして、細胞傷害活性を以下のように計算した。細胞傷害性=[( 51Cr release of sample wells - spontaneous 51Cr release)/(maximum 51Cr release - spontaneous 51Cr release)] 100. 2-8. MHC class I を介したCTLの細胞傷害活性の確認 WT1ペプチド特異的CTLの細胞傷害活性のtargetであるMeg01、SART1特異的CTLの細胞傷 害活性のtargetであるKE4ならびにSART1ペプチドをパルスしたT2-A24細胞について、51Cr release assayによって認められた細胞傷害がMHC-class I(HLA-A:2402)を介した反応である ことを確認するため、抗MHC-class I 抗体の添加による細胞傷害活性の解除についての検討 を行った。抗-MHC class I 抗体 (clone W6/32, mouse IgG2a; Serotec, Oxford, UK)、抗-MHC class II 抗体 (clone Tu39, mouse IgG2a; BD Pharmingen, San Diego, CA)、isotype control (clone MPC-11, mouse IgG2a; BD Pharmingen) を 10 µg/ml加えて30分間培養後、effecter細胞のリン パ球を加えて供培養し、以下前述の方法と同様に51Cr-releaseを測定した。 2-9. 統計分析 51 Cr-release cytotoxicity 測定の統計関連は双方向分散分析テストで評価し、GraphPad Prism software (GraphPad Soft ware Inc, San Diego, CA)を用いて計算した。 3.結果 3-1. 電気穿孔法による単球由来樹状細胞へのWT1 mRNAの導入 単球由来成熟樹状細胞にWT1 mRNAを電気穿孔法により導入2時間後と48時間後の樹状 細胞から抽出したtotal RNAを用いた RT-RCR解析では、効率的にWT1 mRNAが導入され、 48時間後においてもWT1 mRNAが細胞内に残存していることが確認された(図1)。 3-2. WT1 mRNA導入単球由来樹状細胞を用いたWT1特異的CTLの誘導 WT1 mRNA導入単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球は、Meg01やKE4に対して明らかな 細胞傷害性を示した。どちらの細胞もHLA-A24とWT1の発現が陽性であり、効果細胞:標 的細胞比依存性に細胞傷害性が増強した。一方、effecterのコントロールとしたmRNA非導入 単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球においては細胞傷害性を示さなかった(図2)。さら に、WT1 mRNA導入単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球は、HLA-A24陽性でWT1を発現 していない721.221/A*2402 LCLを標的細胞とした場合,WT1 mRNAを導入し発現させた 721.221/A*2402 LCLに対しては細胞傷害が認められたが,コントロールとしてEGFP mRNA 導入し発現させた721.221/A*2402 LCLに対しては細胞傷害が認められなかった(図3)。WT1 mRNA導入単球由来樹状細胞で刺激されたリンパ球の細胞傷害性は Meg01をターゲット細 胞としたときの細胞傷害性試験で、抗MHC class I 抗体の添加によって明らかな細胞傷害性 の抑制が認められたが、抗MHC class II 抗体を添加したときには抑制は認められず(図4)、 class I 拘束性のCTLが誘導されていたことが示された。 3-3. SART1 mRNA導入単球由来樹状細胞を用いたSART1特異的CTLの誘導 SART1 mRNA導入単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球はSART1を発現しているKE4に 対して強い細胞傷害活性を有し、この細胞傷害活性は、効果細胞:標的細胞比依存性に増 強した。mRNAを導入していない単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球では細胞傷害性は認 められなかった(図5)。加えて、SART1ペプチドをパルスしたT2-A24細胞もKE4と同様に、 SART1 mRNA導入単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球によって傷害され、効果細胞:標 的細胞比依存性に細胞傷害性が増強した。この検討においてもコントロールとしたmRNA 非導入単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球の細胞傷害性とSART1 mRNA導入単球由来樹 状細胞で刺激したリンパ球の細胞傷害性には顕著な差が認められた(図5)。WT1における 検討と同様に、SART1 mRNA導入単球由来樹状細胞で刺激したリンパ球のKE4やSART1ペプ チドをパルスしたT2-A24細胞に対する細胞傷害性は抗MHC class I 抗体添加によって抑制 されたが、抗MHC class II 抗体添加では細胞傷害活性の抑制の程度は低かった(図6)。 4.考察 抗原を樹状細胞へ効率よく取り込ませ提示させる方法の開発は、樹状細胞を用いた抗腫 瘍免疫療法の確立には極めて重要である。一般的には腫瘍ペプチドや腫瘍細胞から抽出し たタンパクの樹状細胞へのパルスが用いられており、この他、腫瘍細胞のcDNAを導入によ る方法1)や腫瘍抗原mRNAを導入する方法も報告されている3)。これらの方法の中でも、 RNA導入に関しては、腫瘍細胞由来total RNAを,逆転写反応、PCRによる増幅、in vitroの 転写反応を用いて,サンプル中に存在するmRNAの比率に従って、mRNAを増幅することが できるという利点がある。 樹状細胞にmRNAを導入する方法には受動的パルス、リポソームを用いた方法、電気穿孔 法の3つがある。受動的パルスについては、mRNA導入効率は低いが、十分に抗腫瘍免疫を 誘導できることは証明されている。リポソームや電気穿孔法は標的細胞に若干の細胞傷害 性を示すが、受動的パルスよりもRNA導入効率は高く、電気穿孔法の使い方によっては導 入細胞の傷害を最小限に止めることが可能である11)。 mRNAを導入した樹状細胞の臨床検討はいくつか報告されている。Heiserらは転移性前立 腺腫瘍に対するIVT PSA mRNA導入樹状細胞を用いた臨床試験を行い、多くの患者の血清中 のPSAの増加が抑制されたことを報告している12)。MorseらはCEA発現悪性腫瘍の化学療法 後や外科切除後にCEA mRNA導入自己樹状細胞療法を追加し、CEA特異的細胞傷害性T細胞 の誘導が確認されたことを報告している13)。 今回、我々の研究においても、腫瘍抗原mRNAを導入していないHLA-A24陽性樹状細胞 で刺激されたHLA-A24陽性リンパ球には、腫瘍抗原発現細胞に対する細胞傷害活性を認め なかったが、WT1 mRNAやSART1 mRNA導入樹状細胞で刺激されたHLA-A24陽性リンパ球 は、HLA-A24陽性腫瘍抗原発現細胞に対する明らかな細胞傷害活性を示した。これらの細 胞傷害活性は抗MHC class I 抗体を加えることで抑制され、細胞傷害活性にはHLA class I拘 束性があることが裏付けられた。SART1 mRNA導入樹状細胞を用いた検討においては、抗 MHC class II 抗体を加えた場合にも細胞傷害活性が若干抑制されたが、SART1分子に対する 細胞傷害性CD4+T細胞も同時に誘導された可能性が考えられた。 以上、WT1 mRNAまたはSART1 mRNA導入樹状細胞は抗原特異的細胞傷害性T細胞を誘導 することができること、WT1やSART1発現腫瘍症例に対する樹状細胞を用いた細胞免疫治 療の新たな手段となりうることを確認した。扁平上皮癌や腺癌においてはWT1タンパクと SART1タンパクが共に発現している場合が多く、WT1とSART1 mRNA導入樹状細胞を用い た細胞免疫療法はこれらの腫瘍に対する新しい効率的な臨床治療の方法になりうるものと 考えられた。 参考文献 1. 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Induction of antigen-specific cytotoxic T lymphocytes by using monocyte-derived DCs transfected with in vitro-transcribed WT1 or SART1 mRNA Nozomi Tochiki1, Miwako Narita1, Anri Saitoh1, Norihiro Watanabe1, Masami Kaji1, Noriyuki Satoh1, Akie Yamahira1, Takeshi Nakamura1, Masuhiro Takahashi1 1 Laboratory of Hematology and Oncology, Graduate School of Health Sciences, Niigata University, Niigata, Japan Abstract To evaluate the usefulness of monocyte-derived dendritic cells transfected with tumor antigen mRNA for dendritic cell-based antitumor immunotherapy, we attempted to generate antigen-specific cytotoxic T cells by priming lymphocytes with monocyte-derived dendritic cells transfected with in vitro-transcribed tumor antigen mRNA. Mature monocyte-derived dendritic cells were generated from microbeads-separated CD14+ cells by culturing with GM-CSF/IL-4 for 7 days and with TNF-α, IL-1α, IL-6, and PGE2 for the last one day. Monocyte-derived dendritic cells, lymphocytes, and target cells, which were positive for HLA-A24, were used in the present study. Although lymphocytes prestimulated with untransfected monocyte-derived dendritic cells did not possess the cytotoxic ability against the target cells in a 51 Cr-release cytotoxicity assay, lymphocytes primed with tumor antigen RNA-transfected monocyte-derived dendritic cells were cytotoxic against the tumor antigen expressing cells but not against the target cells without the expression of the antigen. The cytotoxic ability of the lymphocytes was blocked by the addition of antibodies against MHC class I but not by antibodies against MHC class II. These findings revealed that monocyte-derived dendritic cells transfected with WT1 or SART1 mRNA are able to induce tumor antigen-specific cytotoxic T cells and applicable for antitumor dendritic cell-based cellular immunotherapy. Keywords: Antigen-specific CTL, Monocyte-derived DCs, WT1, SART1, In vitro-transcribed mRNA 図の説明 図1 単球由来樹状細胞への WT1 mRNA 導入 樹状細胞に IVT WT1 mRNA を導入し、2 時間後と 48 時間後の樹状細胞から total RNA を抽 出し、RT-PCR 後の反応産物を電気泳動した。 図2 WT1 特異的 CTL の細胞傷害性 WT1 mRNA 導入樹状細胞で刺激したリンパ球(―)とコントロール樹状細胞で刺激したリ ンパ球( 図3 )の腫瘍細胞(Meg01, KE4)に対する細胞傷害性を測定した。 CTL の抗原特異的な細胞傷害 WT1 mRNA 導入樹状細胞で刺激したリンパ球の WT1 mRNA 導入 721.221/A*2402 LCL(―) に対する細胞傷害性を測定した。コントロールとして EGFP mRNA 導入 721.221/A*2402 LCL ( 図4 )を用いた。 WT1 特異的 CTL による MHCclass I 拘束性細胞傷害 WT1 mRNA 導入樹状細胞で刺激したリンパ球の Meg01 に対する細胞傷害性試験の際に MHC class I 抗体もしくは MHC class II 抗体を添加した。 図5 SART1 特異的 CTL の細胞傷害性試験 SART1 mRNA 導入樹状細胞で刺激したリンパ球(―)とコントロール樹状細胞で刺激した リンパ球( )の腫瘍細胞(KE4 または SART1 ペプチドでパルスした T2-A24)に対する細 胞傷害性を測定した。 図6 SART1 特異的 CTL による MHCclass I 拘束性細胞傷害 SART1 mRNA 導入樹状細胞で刺激したリンパ球の腫瘍細胞(KE4 または SART1 ペプチドで パルスした T2-A24)に対する細胞傷害性試験の際に MHC class I 抗体もしくは MHC class II 抗体を添加した。
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