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答申第 581 号
諮問第 965 号
件名:開示請求人が補正を拒否したときに、実施機関が相当な期間、拒否の決
定をしないことが不作為違法になるとする見解が示された文書等の不開
示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が別記に掲げる文書 1
及び文書 2 の文書(以下、併せて「本件請求対象文書」という。
)について、
不存在を理由として不開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 3 月 9 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 18 日付けで行った不
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係る行政文書を
作成又は取得しているというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
ア 文書 1 について
条例第 6 条においては、実施機関は開示請求書に形式上の不備がある
と認めるときは、開示請求者に対し補正を求めることができるとされ、
愛知県情報公開条例解釈運用基準(以下「運用基準」という。)の第 6
条関係においては、相当な期間を定めて補正を求めたにもかかわらず、
当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補正されない場合は、開示
請求は拒否されることとなるものとされている。
文書 1 は、開示請求者が条例第 6 条の規定による補正を拒否したとき
に、実施機関が相当な期間を経ても開示請求を拒否する決定をしないこ
とが不作為であり違法となるとする見解が示された文書であると解され
509
る。
イ 文書 2 について
本件開示請求における「不作為」とは、開示請求者が補正を拒否して
いるにもかかわらず、実施機関が意味のない補正を求め続けて、行政処
分をしないことをいうものと解される。
したがって、文書 2 は、開示請求者が補正を拒否したときに意味のな
い補正依頼を続け、行政処分をしない事例が記載されている文書及びそ
のような事例についての法的解釈が記載されている文書であると解した。
(2) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 について
開示請求者が補正を拒否したときに、実施機関が相当な期間を経ても
開示請求を拒否する決定をしないことが不作為違法になるとする規定等
は存在しない。
行政不服審査法(昭和 37 年法律第 160 号)及び行政事件訴訟法(昭
和 37 年法律第 139 号)においては、不作為についての不服申立て及び
不作為の違法確認の訴えが認められているが、これらの法律は行政上の
不服申立て及び行政事件訴訟に関する一般法である。
開示請求者が補正を拒否したときに、実施機関が相当な期間を経ても
開示請求を拒否する決定をしない場合に不作為違法となるか否かについ
ても、教育委員会は、他の申請に対する処分と同様に、これらの法律に
従って判断するものであり、独自の見解を有するものではない。
また、文書 1 に該当するような独自の見解を示した文書を作成してお
かなければ、事務の遂行に支障を来すという事例もなかったため、当該
文書は作成又は取得しておらず、不存在である。
イ 文書 2 について
教育委員会では、開示請求者が一度目の補正に応じないとしても、再
度の補正依頼を行うことがある。これは、一度目の補正依頼に対し、開
示請求者から補正に従う意思がない旨の明確な表明があった場合を除き、
開示請求者の利益のために、開示請求書の不備による開示請求の拒否を
できる限り回避するためである。そして、開示請求者が再度の補正依頼
にも応じなかった場合には、行政文書不開示決定を適切に行っている。
ところで、教育委員会では、このように開示請求者から補正の応答が
ない場合に、再度行う補正依頼を「意味のない補正依頼」だとは考えて
おらず、むしろ情報公開制度の趣旨にかなった有意義なものであると考
えている。
なお、開示請求者によっては、補正依頼に対して不作為の異議申立て
を提起することがあり、そのような場合には開示請求者に対し、「補正
に応じない旨の意思表示をしているとみなしてよいか」を確認したうえ
510
で、補正非応答の不開示決定をしている場合もある。
以上のとおり、開示請求者が補正を拒否したときに意味のない補正依
頼を続け、開示請求を拒否する決定をしない事例(不作為が発生してい
る事例)はないため、そのような事例に関する文書は作成又は取得して
おらず、不存在である。
したがって、そのような事例について法的解釈を示した文書が必要と
なったことはないため、当該文書は作成又は取得しておらず、不存在で
ある。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
ア 文書 1 について
条例第 6 条第 2 項においては、「実施機関は、開示請求書に形式上の
不備があると認めるときは、当該開示請求書を提出したものに対し、相
当の期間を定めて、その補正を求めることができる。」とされている。
そして、運用基準の第 6 条関係においては、「「相当の期間」(第 2 項)
とは、当該補正をするのに社会通念上必要とされる期間をいい、個々の
ケースによって判断されるべきものである。なお、実施機関が「相当の
期間」を定めて補正を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、
開示請求書の不備が補正されない場合には、その開示請求は拒否される
ことになる。
」とされている。
また、行政不服審査法第 2 条第 2 項においては、「この法律において
「不作為」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内にな
んらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、
これをしないことをいう。」とされており、行政事件訴訟法第 3 条第 5
項において「この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政
庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決を
すべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を
求める訴訟をいう。」とされている。
文書 1 は、実施機関が、開示請求者に補正を求めても拒否された場合
に、相当な期間を経ても開示請求を拒否する旨の不開示決定を行わない
511
ことが不作為違法となる見解が示された文書であると解される。
イ 文書 2 について
文書 2 にいう「不作為」とは、本件開示請求書の括弧書きの文言、す
なわち「開示請求人が補正を拒否しているにもかかわらず、意味のない
補正を求め続けること」から判断すれば、実施機関の解釈どおり、開示
請求者が補正を拒否しているにもかかわらず、実施機関が意味のない補
正を求め続けて行政処分をしないことをいうものと解される。
したがって、文書 2 は、開示請求者が補正を拒否したときに、実施機
関が意味のない補正依頼を続け、行政処分をしない事例が記載されてい
る文書及びそのような事例についての法的解釈が記載されている文書で
あると解される。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 について
実施機関は、開示請求書の不備が補正されない場合、開示請求は拒否
されることになる旨が運用基準に定められているが、開示請求者が補正
を拒否したときに、実施機関が相当な期間を経ても開示請求を拒否する
決定をしないことが不作為違法となるとする規定等は存在せず、また、
不作為違法に関しては、行政不服審査法及び行政事件訴訟法において定
めがあることから、それらの法と異なる独自の見解を有していない旨説
明する。そして、過去においても、前記 3(2)で述べた規定の他に、文
書 1 に該当するような規定等を定めなければならないような事案は存在
せず、当該規定等を定める必要はなかったとのことであった。
ところで、実施機関が開示請求者に補正を求めたにもかかわらず、補
正されない場合の手続や、行政処分に係る不作為の定義等は、前記(2)
で述べた規定等で明らかにされていることから、実施機関において、こ
れらの規定等とは別に、文書 1 に該当するような独自の見解を示した文
書を作成しておかなければ、情報公開事務の遂行に支障を来すような明
らかな事情は認められない。
したがって、文書 1 を作成又は取得していないとの実施機関の説明は
首肯しうるものであり、実施機関が文書 1 を作成又は取得しておらず不
存在であるとしたことは妥当であると認められる。
イ 文書 2 について
実施機関によれば、開示請求書の不備による開示請求の拒否をできる
限り回避するため、開示請求者の利益のために、再度の補正依頼を行う
ことがあるが、開示請求者が再度の補正依頼にも応じなかった場合には、
不開示決定を適切に行っているとのことである。
開示請求者の利益のために、再度の補正依頼を行うことはあっても、
開示請求者が再度の補正依頼にも応じなかった場合には、それ以上の補
512
正依頼を行う必要性は通常認められないものである。よって、開示請求
者が補正を拒否したときに意味のない補正依頼を続け、開示請求を拒否
する決定をしない事例(不作為が発生している事例)はなく、当該事例
に関する文書を作成又は取得していない旨の実施機関の説明は首肯でき
るものである。
したがって、そのような事例があった場合についての法的解釈を示し
た文書が必要となったことはないため、当該文書は作成又は取得してお
らず、不存在である旨の実施機関の説明も不合理ではない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
別記
総務課、特別支援教育課、岡崎養護学校、岡崎聾学校、一宮東養護学校、総
合教育センター特別支援教育相談室
文書 1 情報公開制度上で実施機関が補正を求めた場合において、開示請
求人が補正を拒否したときに実施機関が相当な期間、拒否の決定を
しないことが不作為違法になるとする見解が示された文書
文書 2 不作為が発生している事例(開示請求人が補正を拒否しているに
もかかわらず、意味のない補正を求め続けることの法的解釈が記載
されている文書)
513
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
5
内
容
諮問
23.
2.23
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
2.25
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 3.15
(第 324 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 6.10
(第 330 回審査会)
審議
23. 7.19
(第 333 回審査会)
審議
514
答申第 582 号
諮問第 966 号
件名:行政不服審査法 47 条をめぐる学説判例が記載されている文書の不開示
(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が「総務課、義務教育
課 行政不服審査法 47 条をめぐる学説判例が記載されている文書」(以下
「本件請求対象文書」という。)について、不存在を理由として不開示とし
たことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 3 月 18 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 30 日付けで行った不
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係る行政文書を
作成又は取得しているというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
行政不服審査法(昭和 37 年法律第 160 号)第 47 条においては、異議申立
てに対する決定について規定している。本件請求対象文書は、総務課又は義
務教育課において事務の参考とするために、同条の解釈等に係る学説や、同
条の解釈等を示した判例を収集して、組織的に用いるものとして管理してい
るものである。
行政処分に対する異議申立てがあった場合は、行政不服審査法第 47 条の
規定に基づき何らかの決定等をすることとなるが、総務課又は義務教育課に
おいては、同条の解釈について独自の見解は有していない。仮に同条の解釈
について疑義等があり、学説や判例を調べる必要があれば、その都度市販の
解説書を参照したり、裁判所のホームページで判例を検索する等で対応でき
るため、総務課及び義務教育課において、同条の解釈等に係る学説や判例を
515
収集してとりまとめたものをあらかじめ作成して、組織的に管理しておかな
ければ事務に支障を来すような特別な事情はない。
したがって、実施機関は本件請求対象文書を作成又は取得しておらず、管
理していないことから不開示(不存在)決定をしたものである。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
本件請求対象文書は、総務課又は義務教育課において事務の参考とする
ために、行政不服審査法第 47 条の解釈等に係る学説や判例について、組
織的に用いるものとして管理しているものであると解される。
(3) 本件請求対象文書の存否について
実施機関によれば、行政処分に対する異議申立てがあった場合は、行政
不服審査法第 47 条の規定に基づき何らかの決定等をすることとなるが、
総務課又は義務教育課においては、同条の解釈について独自の見解は有し
ておらず、仮に同条の解釈について疑義等があり、学説や判例を調べる必
要があれば、その都度市販の解説書を参照したり、判例を検索する等で対
応できるため、総務課及び義務教育課において、同条の解釈等に係る学説
や判例を収集してとりまとめたものをあらかじめ作成して、組織的に管理
しておかなければ事務に支障を来すような特別な事情はないとのことであ
る。
一般的に、法律の解釈についての疑義等があれば、その都度市販の解説
書を参照したり、判例を検索する等で十分対応できることからすれば、あ
らかじめ学説や判例を収集して組織的に管理しておく必要はないという実
施機関の説明は首肯できるものである。
以上のことから、実施機関は本件請求対象文書を作成又は取得しておら
ず、不存在であるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、
不合理な点があるとは認められない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
516
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.11.
5
諮問
23.
3.
2
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
3.
7
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 6.10
(第 330 回審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 6.28
(第 332 回審査会)
審議
23. 8. 4
(第 335 回審査会)
審議
517
答申第 583 号
諮問第 931 号
件名:愛知県情報公開条例解釈運用基準のうち第 6 条関係の開示決定に関する
件
答
申
1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。)が、「補正協議の終了時期についての
運用・解釈が記載されている文書(補正要求に異議申立てをした事例につい
て)」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)に対し、「愛知県情報公
開条例解釈運用基準のうち第 6 条関係」
(以下「本件行政文書」という。
)を
特定して開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 3 月 25 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、知事が同月 30 日付けで行った開示決定
(以下「本件開示決定」という。
)の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、次のとおりである。
文書特定に誤りがある。愛知県情報公開条例解釈運用基準第 6 条関係に
は、開示請求人が求めている内容が記載されていない。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件行政文書を特定して開示としたと
いうものである。
(1) 本件行政文書について
条例第 6 条第 2 項においては、実施機関は開示請求書に形式上の不備が
あると認めるときは、開示請求者に対し補正を求めることができるとされ、
愛知県情報公開条例解釈運用基準(平成 13 年 3 月 30 日付け 12 広報第 98
号県民生活部長通知。以下「運用基準」という。)のうち第 6 条関係にお
いては、相当の期間(以下、単に「相当の期間」という。)を定めて補正
を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補
正されない場合には、その開示請求は拒否されることになるものとされて
いる。
518
本件行政文書は、開示請求書に形式上の不備があると認めるときに、開
示請求者に対し、相当の期間を定めて補正を求めた場合についての解釈及
び運用が記載されている文書である。
(2) 本件行政文書を特定した理由
ア 異議申立人は、平成 22 年 2 月 19 日付けで提起した別件の異議申立て
(以下「別件異議申立て」という。)に対する決定書の写しを本件開示
請求書に添付しており、別件異議申立ては条例に基づく行政文書の開示
請求に関するものであったため、本件開示請求の対象は、行政文書の開
示請求についての補正協議の終了時期に関する解釈及び運用が記載され
ている文書であると解した。
イ 条例第 6 条第 1 項は、開示請求の手続について規定し、また、同条第
2 項は、実施機関は、開示請求書に形式上の不備があると認めるときは、
当該開示請求書を提出したものに対し、相当の期間を定めて、その補正
を求めることができ、その際には、開示請求書を提出したものに対し、
補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならないことを規定
している。
補正協議とは、このように実施機関が開示請求者に補正を求め、開示
請求者から実施機関が回答を得るなどの一連のやりとりを指すものであ
ると解した。
補正協議をこのように解した場合、その終了時期としては、通常、補
正が完了し、文書特定が可能となった時点をいうものであるが、本件開
示請求は「(補正要求に異議申立てをした事例について)」と付記されて
いるため、このような通常の補正協議の終了時期を示した文書を求めて
いるものとは解されない。
そして、運用基準のうち第 6 条関係においては、上記のとおり、相当
の期間を定めて補正を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、
開示請求書の不備が補正されない場合には、その開示請求は拒否される
ことになるものとされており、補正協議の終了時期に関する記載がある
ため、本件行政文書を特定したものである。
ウ 異議申立人は、本件行政文書には求める内容が記載されていないと主
張しているが、補正協議の終了時期に関しては運用基準のうち第 6 条関
係に記載されているのみであり、本件行政文書の他に補正協議の終了時
期に関して記載された文書は存在しない。
なお、愛知県情報公開事務取扱要領(平成 13 年 3 月 30 日付け 12 広
報第 98 号県民生活部長通知。以下「取扱要領」という。)第 3 の 3(1)及
び(3)は、開示請求書の補正について記載しているが、取扱要領は、条
例及び運用基準を基に情報公開事務に携わる職員が実際に行う開示請求
書の事務処理について記載しているものであり、補正協議の終了時期に
519
ついての解釈及び運用が記載されているものではない。
以上から、本件行政文書の特定に誤りはない。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈及び運用されなければならない。
そして、この目的を達成するためには、開示請求の対象となる行政文書
が適切に特定されることが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、本件開示請求に係る文書の特定について、以下判断するもので
ある。
(2) 本件行政文書の特定について
実施機関によると、本件開示請求の対象は、条例に基づく行政文書の開
示請求についての補正協議の終了時期に関する解釈及び運用が記載されて
いる文書であると解したとのことであり、異議申立人が条例に基づく行政
文書の開示請求に関する別件異議申立てに対する決定書の写しを本件開示
請求書に添付していることからすれば、この実施機関の解釈は首肯できる
ものである。
そして、当審査会で本件行政文書を見分したところ、本件行政文書には、
開示請求書に形式上の不備があると認めるときに、開示請求者に対し、相
当の期間を定めて補正を求めた場合についての解釈及び運用が記載されて
おり、「実施機関が「相当の期間」を定めて補正を求めたにもかかわらず、
当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補正されない場合には、その
開示請求は拒否されることになる。」との記載があることから、本件行政
文書には補正協議の終了時期に関する記載があるものと認められ、実施機
関が本件行政文書を特定したことは不合理なものではない。
ところで、異議申立人は異議申立ての理由として、単に「文書特定に誤
りがある。愛知県情報公開条例解釈運用基準第 6 条関係には、開示請求人
が求めている内容が記載されていない。」と主張しているのみである。ま
た、当審査会において、実施機関が作成した開示理由説明書を異議申立人
に送付した際、異議申立人に対し、実施機関の開示理由に対する意見・反
論等を書面で提出するよう求めたが何ら提出はなく、意見陳述の機会を設
ける旨の通知に対しても回答はなかったため、異議申立人からの具体的な
主張は全くなされていない。これらの事情に鑑みれば、実施機関の主張を
520
覆す特段の事情が存在するものとは認められない。
以上のことから、本件開示請求に対し、実施機関が本件行政文書を特定
して開示としたことに誤りはないものと認められる。
(3) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
521
(審査会の処理経過)
年
月
日
6
内
容
22.
5.
諮問
22.
6.10
実施機関から開示理由説明書を受理
22.
6.11
異議申立人に実施機関からの開示理由説明書を送付
23. 5.13
(第 327 回審査会)
実施機関職員から開示理由等を聴取
23. 8. 5
(第 336 回審査会)
審議
23. 9.29
(第 340 回審査会)
審議
522
答申第 584 号
諮問第 932 号
件名:建築確認申請書及び添付資料等の一部開示決定に関する件(第三者異議
申立て)
答
申
1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。)が、特定の建築確認申請書及び添付
資料並びに計画変更確認申請書及び添付資料(以下「本件行政文書」とい
う。)の一部開示決定において開示することとした部分のうち、設計者の携
帯電話番号を不開示とすべきである。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成 22 年 3 月 4 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、知事が開示請求者に対して同年 4 月 15
日付けで行った一部開示決定(以下「本件一部開示決定」という。)を取
り消し、本件行政文書の全部不開示を求めるというものである。
知事は、本件行政文書に異議申立人に関する情報が記録されていること
から、条例第 15 条第 1 項の規定に基づき、異議申立人に対して意見書を
提出する機会を与えた上で、本件一部開示決定を行い、同時に、異議申立
人に対して同条第 3 項の規定に基づき、本件行政文書のうち一部を開示と
する旨の通知をしたところ、本件一部開示決定の取消しを求める本件異議
申立てが提起されたものである。
なお、本件異議申立ての提起とともに本件行政文書の一部開示について
執行停止の申立てがなされたため、知事は一部開示の執行停止を決定し、
開示請求者及び異議申立人に対し、同月 28 日付けで、本件異議申立てに
係る決定に至るまで開示を停止する旨の通知をした。
(2) 異議申立ての理由
ア 異議申立書における主張
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、異議申立書によると次の
とおりである。
今般開示前から第三者によるネット上の中傷並びに当社の社員に対し
てのストーカー行為が行われていることと、過去にも店長が強盗に襲わ
れたりしているため。また、今般、刑事告発の訴訟準備中であるため。
523
イ 意見陳述における主張
意見陳述における異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。
建築確認図面を見たいという人の見当はついている。隣近所に何か迷
惑をかけている人がいるなら、その人に見てもらっても別に構わないが、
少し書類を出しただけで同業者に内情を見られ、ノウハウを盗まれるの
は困る。
3 実施機関の主張要旨
(1) 建築確認について
建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)第 6 条第 1 項の規定において、
建築主は建築物を建築しようとする場合、その計画が建築基準関係規定に
適合するものであることについて、確認申請書を提出して建築主事の確認
を受け、確認済証の交付を受けなければならないとされている。また、当
該確認を受けた建築物の計画の変更をして、建築物を建築しようとする場
合も同様とすると規定されている。
(2) 建築計画概要書及び処分等概要書の閲覧について
建築計画概要書は、建築確認又は計画変更の申請を行う者が作成するも
ので、建築確認又は計画変更の申請を行う際に建築確認申請書類とともに
提出されるものである。処分等概要書は、建築確認等の内容が記載され、
建築主事が作成する。建築基準法第 93 条の 2 及び建築基準法施行規則
(昭和 25 年建設省令第 40 号)第 11 条の 4 において、建築計画概要書及
び処分等概要書を閲覧に供さなければならない旨が定められており、所管
の各建設事務所において閲覧に供されている。計画変更申請があった場合
は、変更前の建築計画概要書についても閲覧に供しており、数度の計画変
更があった場合は、その都度建築計画概要書が作成され、そのいずれもが
閲覧に供される。本件行政文書に関して作成された建築計画概要書におい
ては、第一面に建築主等の概要が記載されており、建築主の氏名及び住所、
代理者、設計者、工事監理者及び工事施工者の登録又は許可の番号及び氏
名並びに事務所又は営業所の名称、登録番号、所在地及び電話番号、設計
者の作成した設計図書、工事監理者が工事と照合する設計図書、建築物の
名称及び工事名等が記載されている。第二面には、建築物及びその敷地に
関する事項が記載されており、主なものとして、敷地の地名地番、用途地
域、道路幅員、接道部分の長さ、敷地面積、主要用途、工事種別、建築面
積、建ぺい率、申請部分及び申請以外の部分の延べ面積、容積率、建築物
の数、最高の高さ、階数及び構造、建築基準法第 56 条第 7 項の規定によ
る特例の適用の有無(以下、単に「特例の適用の有無」という。)、確認済
証の番号及び交付年月日、計画変更確認済証の番号及び交付年月日、工事
予定年月日、計画変更の概要等が記載されている。第三面には、付近見取
524
図及び建物配置図が記載され、建築物の寸法及び軒高、各敷地境界線種別、
敷地及び隣地のレベル、前面道路の種類及び幅員、浄化槽の型式及び配置
等が記載されている。また、本件行政文書に関して作成された処分等概要
書においては、建築確認及び検査の処分概要が記載されており、主なもの
として、確認済証の交付者、番号及び交付年月日、検査日、検査済証の交
付者、番号及び交付年月日等が記載されている。
(3) 本件行政文書の内容及び一部開示することとした理由について
本件行政文書は、建築主により、愛知県(以下「県」という。)の建築
主事に申請された建築確認申請書及び添付資料並びに計画変更確認申請書
及び添付資料である。
ア 建築確認申請書及び添付資料
(ア) 確認申請書(建築物)(第一面)
当該文書は確認申請書の鑑文である。
当該文書には、標題、申請文、申請年月日、建築主の氏名、住所及
び印影、設計者の氏名、建築士登録番号、印影及び携帯電話番号並び
に事務所の名称、建築士事務所登録番号、所在地、電話番号及びファ
クシミリ番号、申請受付機関に係る受付日、受付番号及び受付印、関
係消防機関の同意文及び印影、建設事務所及び建築指導課の受付印、
決裁欄及び印影、確認済証の番号及び交付年月日、敷地の地名地番、
建築物の名称、主要用途、工事種別、延べ面積、申請棟数、建築物の
構造及び階数等が記載されている。
このうち、決裁欄の印影については個人識別情報であるため条例第
7 条第 2 号本文には該当するものの、職務の遂行に係る公務員の氏名
であり、同号ただし書ハに該当するため、開示とした。また、建築主
の氏名及び住所、設計者の氏名及び建築士登録番号並びに事務所の名
称、建築士事務所登録番号、所在地及び電話番号、確認済証の番号及
び交付年月日、敷地の地名地番、建築物の名称、主要用途、工事種別、
延べ面積、申請棟数(建築物の数)並びに建築物の構造及び階数につ
いては、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にさ
れている情報であるので開示とした。これらを除いた部分のうち建築
主及び設計者の印影を除いた部分については、異議申立人等の事業に
関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより
異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ
はないと認められるため、開示とした。
建築主及び設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当する
ため不開示とした。
(イ) 確認申請書(建築物)の追加資料
当該文書は、確認審査において建築主事の指摘に対して追加で提出
525
された資料(以下「追加資料」という。)であり、以下の(a)から(q)
までの文書で構成されている。
(a) 表紙
当該文書は、追加資料の表紙である。
当該文書には、標題、日付、あて名、追加資料を提出する旨の文
言、建築主の氏名及び印影、設計者の氏名及び印影、敷地の地名地
番、建築物の名称、主要用途、工事種別、受理日欄並びに受付印が
記載されている。
このうち、建築主及び設計者の氏名、敷地の地名地番、建築物の
名称、主要用途並びに工事種別については、前記(2)で述べたとおり、
法令の定めるところにより公にされている情報であるので開示とし
た。標題、日付、あて名、追加資料を提出する旨の文言、受理日欄
及び受付印については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報
又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権
利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認めら
れるため、開示とした。
建築主及び設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当す
るものとして不開示とした。
(b) 意匠補足資料
当該文書は、確認審査において建築主事に指摘された事項の一覧
であり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとしてその全部を不開
示とした。
(c) 案内・付近見取り図
当該文書には、申請地(申請対象建築物の敷地)の地図、日付、
建築物の名称、工事種別、図面名称並びに設計者の氏名、印影及び
建築士登録番号並びに事務所の名称、所在地、電話番号及びファク
シミリ番号が記載されている。
このうち、建築物の名称、工事種別並びに設計者の氏名及び建築
士登録番号並びに事務所の名称、所在地及び電話番号については、
前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされてい
る情報であることから開示とした。申請地(申請対象建築物の敷
地)の地図、日付、図面名称及び設計者の事務所のファクシミリ番
号については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウ
ハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争
上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、
開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとし
て不開示とした。
526
(d) 換気設備性能計算書及び建築材料表
換気設備性能計算書には、標題、天井裏等の制限、換気設備性能
計算、クロルピリホスの制限、石綿等の制限並びに設計者の氏名及
び印影が記載されている。建築材料表には、標題、各部屋名、床面
積、天井高、居室容積、一般的な換気に係る算定式の係数、使用接
着剤の種別、設計者の氏名及び印影等が記載されている。
このうち、設計者の氏名については、前記(2)で述べたとおり、
法令の定めるところにより公にされている情報であることから開示
とした。一般的な換気に係る算定式の係数については、建築基準法
施行令(昭和 25 年政令第 338 号)第 20 条の 7 において公にされて
いる情報であることから開示とした。建築材料表のうち、客席等の
客が使用する室に関する床面積等については、一般の者が視認する
ことが可能であり、当該部分の寸法等はおおよそ推定できる情報で
あることから開示とした。これらを除いた部分のうち、換気設備性
能計算書のうち設計者の印影、天井裏等の制限、換気設備性能計算、
クロルピリホスの制限及び石綿等の制限の内容が記載された部分並
びに建築材料表のうち客席等の客が使用する室以外の室に関する床
面積等及び使用接着剤の種別を除いた部分については、異議申立人
等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にす
ることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益
を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとし
て不開示とした。換気設備性能計算書のうち天井裏等の制限、換気
設備性能計算、クロルピリホスの制限及び石綿等の制限の内容が記
載された部分並びに建築材料表のうち客席等の客が使用する室以外
の室に関する床面積等及び使用接着剤の種別については、同条第 3
号イに該当するものとして不開示とした。
(e) 金属製換気扇等のカタログの写し
当該文書は、設計において採用された機器等のカタログの写しで
あり、機器等の品番、価格、寸法、性能等が記載されている。当該
文書に記載された情報は、カタログ等により公にされている情報で
あり、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには
該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位
その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、当該文
書はその全部を開示とした。
(f) 構造計算によって建築物の安全性を確かめた旨の証明書
当該文書は、建築士法(昭和 25 年法律第 202 号)第 20 条第 2 項
の規定により、構造計算によって建築物の安全性を確かめた場合の
527
証明書であり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全
部を不開示とした。
(g) 構造計算等補足資料
当該文書は、確認申請に対する構造審査において、建築主事が指
摘した事項の一覧であり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとし
て、その全部を不開示とした。
(h) 指導課指摘後再構造計算書
当該文書は、確認審査における建築主事の指摘内容に対して提出
された文書であって、構造計算ソフトによる再検討結果が記載され
ており、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとしてその全部を不開
示とした。
(i) 構造計算書
当該文書は、申請対象建築物の構造計算を電算で行い、出力され
たものであり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全
部を不開示とした。
(j) 評定書
当該文書は、基礎の工法における構造安全性について評定した証
明書であり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全部
を不開示とした。
(k) 地質調査報告書
当該文書は、申請地の地質調査報告書であり、条例第 7 条第 3 号
イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
(l) 地盤の液状化判定
当該文書は、申請地の地盤の液状化及び沈下について検討したも
のであり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全部を
不開示とした。
(m) QL デッキ構造計算
当該文書は、2 階の床の構造について安全性を検討したものであ
り、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全部を不開示
とした。
(n) 構造計算によって建築物の安全性を確かめた旨の証明書
当該文書は、前記(f)と同様の文書であり、同様の理由により、
その全部を不開示とした。
(o) 構造計算書
当該文書は、前記(i)と同様の文書であり、同様の理由により、
その全部を不開示とした。
(p) 杭基礎の設計検討書等
当該文書は、杭基礎の設計検討書及びそれに伴う構造計算書であ
528
り、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全部を不開示
とした。
(q) 構造計算書
当該文書は、前記(i)及び(o)と同様の文書であり、同様の理由に
より、その全部を不開示とした。
(ウ) FAX 送信票
当該文書は、建築指導課から設計者に対し確認申請における訂正事
項を送付する際の送信票であり、標題、日付、設計者の氏名及び事務
所のファクシミリ番号、建築指導課の所在地、電話番号、ファクシミ
リ番号及び担当者名、送付文、件名、建築主の氏名、本文、追加説明
書の様式のダウンロード先アドレス、確認審査における指摘事例集の
掲載先アドレス等が記載されている。
このうち、建築主及び設計者の氏名については、前記(2)で述べたと
おり、法令の定めるところにより公にされている情報であり、また、
これらを除いた部分についても、県のウェブサイト等において公にさ
れている情報が主であり、公にしても異議申立人等の正当な利益を害
するとは認められないことから、当該文書はその全部を開示とした。
(エ) 建築基準法第 6 条第 13 項の規定による適合するかどうかを決定す
ることができない旨の通知書
当該文書は、建築主事が申請書の記載によっては建築基準関係規定
に適合するかどうかを決定することができない等の旨及びその理由を
記載した通知書である。当該文書には、標題、文書番号、日付、建築
主及び建築主事の氏名、本文、申請年月日、建築場所、建築主事によ
る指摘内容、備考等が記載されている。
このうち、建築主事の氏名については個人識別情報であるため条例
第 7 条第 2 号本文に該当するものの、職務の遂行に係る公務員の氏名
であり、同号ただし書ハに該当するため、開示とした。また、建築主
の氏名及び建築場所(敷地の地名地番)については、前記(2)で述べ
たとおり、法令の定めるところにより公にされている情報であるので
開示とした。さらに、これらを除いた部分のうち、建築主事による指
摘内容を除いた部分については、異議申立人等の事業に関する内部管
理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等
の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認め
られるため、開示とした。
建築主事による指摘内容については、同条第 3 号イに該当するもの
として不開示とした。
(オ) 建築基準法チェックシート及び経過表(指摘事項)
建築基準法チェックシートは、建築主事の審査におけるチェック項
529
目を整理した表であり、建築主事により、関連法規とその概要が記載
された各項目についてチェックがされたものである。また、経過表
(指摘事項)については、審査における指摘内容が記載されている。
このうち、建築基準法チェックシートは、単に各項目の審査が終了
した旨を記載するのみであって、審査の内容や結果については記載し
ないものであり、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウ
ハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上
の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開
示とした。
経過表(指摘事項)は、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして
その全部を不開示とした。
(カ) 現地調査票
当該文書は、申請地について、確認申請を受け付けた市により作成
されたものである。当該文書は、標題、受付日付及び番号、申請書の
種類、建築主の氏名、建築場所、建築用途、敷地周辺の状況、地域地
区関係、都市計画法関係、その他法令、申請地に接する道路関係、交
通関係、道路占用公共用物許可等、環境関係、農地法関係、下水道関
係、申請手数料、調査票作成者の氏名及び印影、各調査事項における
調査担当及び主査の印影、関係各課における決裁時の印影等が記載さ
れている。
このうち、調査票作成者の氏名及び印影、各調査事項における調査
担当及び主査の印影並びに関係各課における決裁時の印影については、
個人識別情報であるため条例第 7 条第 2 号本文に該当するものの、職
務の遂行に係る公務員の氏名であり、同号ただし書ハに該当する。ま
た、建築主の氏名、建築場所(敷地の地名地番)及び建築用途(主要
用途)については、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところに
より公にされている情報である。さらに、敷地周辺の状況、地域地区
関係、都市計画法関係、その他法令、申請地に接する道路関係、環境
関係、農地法関係及び下水道関係については、公的施設において誰も
が取得できる情報である。これらを除いた部分については、異議申立
人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にす
ることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を
害するおそれはないと認められる。以上により、当該文書はその全部
を開示とした。
(キ) 手数料
当該文書は、確認申請における申請手数料について、申請手数料表
に基づき、県収入証紙が貼付されたものである。
当該文書に記載された情報は、手数料の金額等、県のウェブサイト
530
等において公にされている情報が主であり、公にしても異議申立人等
の正当な利益を害するとは認められないことから、当該文書はその全
部を開示とした。
(ク) 確認申請書(第二面~第五面)
当該文書は、確認申請書の一部であり、以下の(a)から(d)までの文
書で構成されている。
(a) 第二面
当該文書には、建築主等の概要が記載されており、建築主の氏名、
住所及び電話番号、代理者、設計者、工事監理者及び工事施工者の
登録又は許可の番号及び氏名並びに事務所又は営業所の名称、所在
地及び電話番号、設計者の携帯電話番号、設計者の事務所のファク
シミリ番号、設計者の作成した設計図書、工事監理者が工事と照合
する設計図書並びに建築物の名称及び工事名が記載されている。
このうち、建築主の氏名及び住所、代理者、設計者、工事監理者
及び工事施工者の登録又は許可の番号及び氏名並びに事務所又は営
業所の名称、所在地及び電話番号、設計者の作成した設計図書、工
事監理者が工事と照合する設計図書並びに建築物の名称及び工事名
(工事種別)については、前記(2)で述べたとおり、法令の定める
ところにより公にされている情報であるので開示とした。設計者の
事務所のファクシミリ番号については、異議申立人等の事業に関す
る内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより異
議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ
はないと認められることから開示とした。
建築主の電話番号及び設計者の携帯電話番号については、条例第
7 条第 2 号に該当するものとして、不開示とした。
(b) 第三面
当該文書には、建築物及びその敷地に関する事項が記載されてお
り、敷地の地名地番、用途地域、道路幅員、接道部分の長さ、敷地
面積の概要、主要用途、工事種別、建築面積、建ぺい率、延べ面積、
容積率、建築物の数、最高の高さ、階数及び構造、特例の適用の有
無、新築時の確認済証の番号及び交付年月日並びに工事予定年月日
が記載されている。
このうち、新築時の確認済証の番号及び交付年月日を除いた部分
については、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより
公にされている情報である。新築時の確認済証の番号及び交付年月
日については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウ
ハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争
上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められる。以
531
上により、当該文書はその全部を開示とした。
(c) 第四面
当該文書には、建築物別概要が記載されており、建物用途、工事
種別、建築物の構造、耐火建築物、建築物の階数、最高の高さ及び
軒高、建築設備の種類、確認の特例、床面積、屋根、外壁及び軒裏
の仕様、居室の床の高さ並びに便所の種類が記載されている。
このうち、建物用途(主要用途)、工事種別、床面積(延べ面
積)並びに建築物の構造、階数、最高の高さ及び軒高については、
前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされてい
る情報である。屋根、外壁及び軒裏の仕様については、一般の者が
視認することが可能であり、当該部分の仕様、寸法等はおおよそ推
定できるものと認められる。耐火建築物、建築設備の種類、確認の
特例、居室の床の高さ及び便所の種類については、異議申立人等の
事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にするこ
とにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害
するおそれはないと認められる。以上により、当該文書はその全部
を開示とした。
(d) 第五面
当該文書は、建築物の階別概要が記載されており、階の高さ、居
室の天井の高さ、用途別床面積等が記載されている。
当該文書に記載された情報は、異議申立人等の事業に関する内部
管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立
人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはない
と認められることから、当該文書はその全部を開示とした。
(ケ) 一級建築士免許証の写し
当該文書は、法令の定めるところにより提出された設計者の一級建
築士免許証の写しであり、標題、設計者の本籍地、氏名、生年月日、
建築士登録番号及び登録年月日、認証文、日付、建設大臣の氏名等が
記載されている。
このうち、建設大臣の氏名については個人識別情報であるため条例
第 7 条第 2 号本文に該当するものの、職務の遂行に係る公務員の氏名
であり、同号ただし書ハに該当するため、開示とした。設計者の氏名
及び建築士登録番号については、前記(2)で述べたとおり、法令の定
めるところにより公にされている情報であるので開示とした。これら
を除いた部分のうち、設計者の本籍地及び生年月日を除いた部分につ
いては、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには
該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位そ
の他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
532
設計者の本籍地及び生年月日については、条例第 7 条第 2 号に該当
するものとして、不開示とした。
(コ) 一級建築士事務所登録済証の写し
当該文書は、建築士法第 23 条に基づき、一級建築士が他府県で一級
建築士事務所の登録を受けた場合に、その旨を証明するものである。
当該文書には、標題、日付、建築士事務所登録番号及び登録年月日、
有効期間、事務所の名称及び所在地、登録申請者の氏名、管理する建
築士の登録番号及び氏名、知事の氏名等が記載されている。
このうち、登録申請者及び知事の氏名については個人識別情報であ
るため条例第 7 条第 2 号本文に該当するものの、登録申請者は法人の
代表者として登記により公示されているため、登録申請者の氏名は同
号ただし書イに該当し、知事の氏名は職務の遂行に係るものであるた
め、同号ただし書ハに該当する。建築士事務所登録番号、事務所の名
称及び所在地並びに管理する建築士の登録番号及び氏名については、
前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている
情報である。これらを除いた部分については、異議申立人等の事業に
関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより
異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ
はないと認められる。以上により、当該文書はその全部を開示とした。
(サ) 委任状
当該文書は、建築主が代理人を定め、建築確認申請手続を委任する
ことを証明するものであり、標題、日付、委任する旨の文言、代理人
の資格及び氏名並びに事務所の名称、建築士事務所登録番号、所在地
及び電話番号、建築主の氏名、印影、住所及び電話番号、敷地の地名
地番、主要用途、工事種別並びに委任事項が記載されている。
このうち、代理人(設計者)の資格(登録番号)及び氏名並びに事
務所の名称、建築士事務所登録番号、所在地及び電話番号、建築主の
氏名及び住所、敷地の地名地番、主要用途並びに工事種別については、
前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている
情報であるので開示とした。標題、日付、委任する旨の文言及び委任
事項については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウ
ハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上
の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開
示とした。
建築主の印影及び電話番号については、条例第 7 条第 2 号に該当す
るものとして不開示とした。
(シ) 既存浄化槽に関する資料
当該文書は、既設の浄化槽を再利用する場合において、当該浄化槽
533
の構造等を確認するために提出された文書であり、以下の(a)から(c)
までの文書で構成されている。
(a) 浄化槽算定書
当該文書は、建築主及び設計者が建築主事に対して、申請建築物
における、浄化槽の算定及び根拠を報告したものであり、標題、日
付、あて名、建築主及び設計者の住所、氏名及び印影、報告する旨
の文言、建築物の所在地、用途、構造、階数及び延べ面積、浄化槽
処理対象人槽算定方法並びに客に提供される具体メニューが記載さ
れている。
このうち、建築主及び設計者の住所及び氏名並びに建築物の所在
地(敷地の地名地番)、用途(主要用途)、構造、階数及び延べ面積
については、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより
公にされている情報であるので開示とした。また、浄化槽処理対象
人槽算定方法については、その算定式及び係数が屎尿浄化槽の処理
対象人員の算定方法(昭和 44 年建設省告示第 3184 号)及び日本工
業規格「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準
(JISA3302)」により一般に公表されている情報であるため開示と
した。標題、日付、あて名及び報告する旨の文言については、異議
申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、
公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当
な利益を害するおそれはないと認められるため開示とした。
建築主及び設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当す
るものとして不開示とした。また、客に提供される具体メニューに
ついては、同条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(b) 浄化槽保守点検記録票
当該文書は、既存浄化槽の保守点検記録であり、標題、点検年月
日、設置場所、建築物の名称、浄化槽の型式、保守点検業者の名称
及び所在地、保守点検実施者の氏名、項目、点検事項、点検結果及
び措置並びに汚水の各種水質指標における濃度が記載されている。
このうち、設置場所(敷地の地名地番)、建築物の名称及び浄化
槽の型式については、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるとこ
ろにより公にされている情報であるので開示とした。これらを除い
た部分のうち、保守点検実施者の氏名、保守点検業者の名称及び所
在地、点検事項のうち「その他」の項、点検結果及び措置並びに汚
水の各種水質指標における濃度を除いた部分については、異議申立
人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公に
することにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利
益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
534
保守点検実施者の氏名については条例第 7 条第 2 号に該当するも
のとして不開示とした。保守点検業者の名称及び所在地、点検事項
のうち「その他」の項、点検結果及び措置並びに汚水の各種水質指
標における濃度については、同条第 3 号イに該当するものとして不
開示とした。
(c) 浄化槽清掃届
当該文書は、浄化槽を清掃したことの届出書であり、標題、清掃
された日付、浄化槽の設置場所及び使用者、清掃施行者の所在地、
名称、代表者名及び法人の印影、浄化槽の型式、汲取汚でい量等が
記載されている。
このうち、清掃施行者の所在地、名称、代表者名及び法人の印影
を除いた部分については、異議申立人等の事業に関する内部管理情
報又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の
権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認め
られるため、開示とした。
清掃施行者の所在地、名称、代表者名及び法人の印影については、
条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(ス) 構造耐力規定に関する既存不適格調書
当該文書は、増築等に係る既存建築物に対する構造耐力規定(建築
基準法第 20 条)の緩和規定(建築基準法第 86 条の 7 及び建築基準法
施行令第 137 条の 2)の適用にあたり、既存建築物の概要について、
建築主及び調査者(設計者)が建築主事に報告するものであり、日付、
標題、あて名、建築主の氏名及び印影、設計者の住所(事務所の所在
地)、資格、氏名、印影及び電話番号(事務所の電話番号)、以下の
(a)から(h)までの内容等が記載されている。
(a) 増築等に係る部分の概要
(b) 既存不適格建築物の概要
(c) 設計図書等の有無
(d) 新築又は増築等の時期を示す書類
(e) 基準時以前の建築基準関係規定の適合
(f) 構造耐力規定の緩和条件
(g) 安全確認の方法
(h) 総合所見
このうち、建築主の氏名並びに設計者の資格(登録番号)及び氏名
並びに事務所の所在地及び電話番号については、前記(2)で述べたと
おり、法令の定めるところにより公にされている情報であるので開示
とした。これらを除いた部分のうち、建築主及び設計者の印影並びに
(a)から(h)までの内容を除いた部分については、異議申立人等の事業
535
に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることによ
り異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそ
れはないと認められるため、開示とした。
建築主及び設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当する
ものとして不開示とした。また、(a)から(h)までの内容については、
同条第 3 号イに該当するものとしてすべて不開示とした。
(セ) 増築工事の経緯報告書
当該文書は、前記(ス)における建物履歴を示す添付資料である。
当該文書には、標題、日付、あて名、建築主の住所、氏名及び印影、
報告する旨の文言、建築物(既設)の概要、増築工事の経緯等が記載
されている。
このうち、建築主の住所及び氏名については、前記(2)で述べたとお
り、法令の定めるところにより公にされている情報であるので開示と
した。これらを除いた部分のうち、建築主の印影、建築物(既設)の
概要及び増築工事の経緯を除いた部分については、異議申立人等の事
業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることに
より異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するお
それはないと認められるため、開示とした。
建築主の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして
不開示とした。また、建築物(既設)の概要及び増築工事の経緯につ
いては同条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(ソ) 登記事項証明書
当該文書は、前記(ス)における建物履歴を示す添付資料である。
当該文書には、表題部(主である建物の表示)
、権利部の甲区(所有
権に関する事項)及び乙区(所有権以外の権利に関する事項)の各欄
があり、建物の所在地、権利者の住所又は所在地及び氏名又は名称、
登記官の認証文言、日付、法務局の名称、登記官の氏名等が記載され
ている。
このうち、登記官の氏名については個人識別情報であるため条例第
7 条第 2 号本文に該当するものの、職務の遂行に係る公務員の氏名で
あり、同号ただし書ハに該当する。登記官の氏名を除いた部分につい
ても、当該文書は公的施設において誰もが取得できるため、公にする
ことにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害
するおそれはないと認められる。以上により、当該文書はその全部を
開示とした。
(タ) 既存図面
当該文書は、前記(ス)における既存建物に係る図面であり、以下の
(a)及び(b)で構成されている。
536
(a) 配置図
当該文書には、建築物の名称、工事種別、図面名称、日付、縮尺、
方位、凡例、建物配置図(建築物の寸法、各敷地境界線種別、前面
道路の種類及び幅員、浄化槽の型式及び配置等)、敷地面積、建築
面積、1 階床面積、延床面積、建ぺい率、容積率、設計者の印影等
が記載されている。
このうち、建築物の名称、工事種別、建物配置図、敷地面積、建
築面積、1 階床面積(申請以外の部分の延べ面積)
、延床面積(申請
以外の部分の延べ面積)、建ぺい率及び容積率については、前記(2)
で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報で
あるので開示とした。これらを除いた部分のうち、設計者の印影及
び既存建物に係る凡例の一部を除いた部分については、異議申立人
等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にす
ることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益
を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとし
て不開示とした。また、既存建物に係る凡例の一部については、同
条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(b) 平面図・屋根伏せ図
当該文書は、1 階平面図及び屋根伏せ図であり、建築物の名称、
図面名称、日付、縮尺、方位、凡例、各室名、寸法、屋根における
使用部材名等が記載されている。
1 階平面図のうち客が使用する室に係る部分については、客とし
て誰もが入ることができる室における情報であり、一般の者が視認
することが可能であるため、開示とした。また、屋根伏せ図及び屋
根における使用部材名については、建物外部から一般の者が視認す
ることが可能であり、当該部分の仕様、寸法等はおおよそ推定でき
る情報であることから開示とした。これらを除いた部分のうち、1
階平面図のうち客が使用する室以外の室に係る部分及び凡例の一部
を除いた部分については、異議申立人等の事業に関する内部管理情
報又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の
権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認め
られるため、開示とした。
1 階平面図のうち客が使用する室以外の室に係る部分及び凡例の
一部については、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして不開示
とした。
(チ) 耐震診断等報告書
当該文書は、増築に係る既存不適格部分の建築部分について、新耐
537
震基準の適合性により、地震に対して構造耐力上安全であることを設
計者が調査・確認した旨の報告書であり、条例第 7 条第 2 号又は同条
第 3 号イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
(ツ) 既設建物躯体の現況報告
当該文書は、前記(チ)における添付図書であって、既設建物躯体の現
況について、設計者、施工者及び代理者が現場にて立会い確認を行っ
た結果の報告書であり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、
その全部を不開示とした。
(テ) 計画図面
当該文書は確認申請書の添付図書である。
当該文書には、以下の(a)から(m)までの文書が含まれるが、共通事
項として、日付、建築物の名称、工事種別、図面名称、縮尺並びに設
計者の氏名、印影及び建築士登録番号並びに事務所の名称、所在地、
電話番号、ファクシミリ番号及びメールアドレスが記載されている。
このうち、建築物の名称、工事種別並びに設計者の氏名及び建築士
登録番号並びに事務所の名称、所在地及び電話番号については、前記
(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報
であるため開示とした。日付、図面名称、縮尺並びに設計者の事務所
のファクシミリ番号及びメールアドレスについては、異議申立人等の
事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすること
により異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する
おそれはないと認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして、
不開示とした。
以下、(a)から(m)までの説明においては、上記共通事項を除いた部
分についてのみ述べることとし、「全部を開示」又は「全部を不開
示」という場合の「全部」には上記共通事項で開示又は不開示とした
部分は含まれないものとする。
(a) 仕上げ表
当該文書には、建築物の名称、工事種別、建築場所、用途地域、
建物用途、道路幅員、接道部分の長さ、建築物の最高の高さ、軒高
及び構造、屋根、外壁、軒裏及び開口部の仕様、使用部材の認定番
号、建物外部の仕上げ、下地凡例、各室の名称及び天井高さ並びに
内装の下地及び仕上げ材料が記載されている。
このうち、建築物の名称、工事種別、建築場所(敷地の地名地番)、
用途地域、建物用途(主要用途)、道路幅員、接道部分の長さ並び
に建築物の最高の高さ、軒高及び構造については、前記(2)で述べ
たとおり、法令の定めるところにより公にされている情報であるの
538
で開示とした。また、使用部材の認定番号については、ウェブサイ
ト等において公にされている情報であるため開示とした。屋根、外
壁、軒裏及び開口部の仕様並びに建物外部の仕上げについては、一
般の者が視認することが可能であり、また、一般的な材料であるた
め、当該部分の仕様等はおおよそ推定できることから、開示とした。
下地凡例並びに各室の名称及び天井高さについては、異議申立人等
の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にする
ことにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を
害するおそれはないと認められるため、開示とした。
内装の下地及び仕上げ材料については、条例第 7 条第 3 号イに該
当するものとして不開示とした。
(b) 配置図
当該文書は、敷地における申請建物、増築部分及び浄化槽の配置
図であり、方位、凡例、建物配置図(建築物の寸法及び軒高、各敷
地境界線種別、敷地及び隣地のレベル、前面道路の種類及び幅員、
浄化槽の型式及び配置、建築物の最高の高さ等)、外部階段の仕様、
敷地面積、建築面積、各階床面積、延床面積、建ぺい率、容積率等
が記載されている。
このうち、建物配置図、敷地面積、建築面積、各階床面積(申請
部分及び申請以外の部分の延べ面積)、延床面積(延べ面積)、建ぺ
い率及び容積率については、前記(2)で述べたとおり、法令の定め
るところにより公にされている情報である。外部階段の仕様につい
ては、一般的な材料であり、一般の者が視認することが可能な情報
である。これらを除いた部分については、異議申立人等の事業に関
する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより
異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそ
れはないと認められる。以上により、当該文書はその全部を開示と
した。
(c) 平面図・建具伏せ図
当該文書には、方位、各階の間取り、寸法、外部建具及び屋根に
おける使用部材名、設備機器の位置及び品番、部分詳細図、敷地面
積、建築面積、各階床面積、延床面積、建ぺい率、容積率、消防法
(昭和 23 年法律第 186 号)による無窓階の算定における算定式、
消火器の型及び設置数、各開口部の寸法及び建具番号、建築基準法
開口部における検討チェック等が記載されている。
このうち、敷地面積、建築面積、各階床面積(申請部分及び申請
以外の部分の延べ面積)、延床面積(延べ面積)、建ぺい率及び容積
率については、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところによ
539
り公にされている情報であるため、開示とした。外部建具及び屋根
における使用部材名については一般的な材料であり、これら及び客
室に係る外部開口部の寸法等については、一般の者が視認すること
が可能であるため、開示とした。これらを除いた部分のうち、各階
の間取り、客室以外の室に係る外部開口部の寸法、設備機器の位置
及び品番、部分詳細図、消防法による無窓階の算定における算定式
並びに建築基準法開口部における検討チェックを除いた部分につい
ては、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには
該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位
その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示と
した。
各階の間取り、客室以外の室に係る外部開口部の寸法、設備機器
の位置及び品番、部分詳細図、消防法による無窓階の算定における
算定式並びに建築基準法開口部における検討チェックについては、
条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(d) 立面図
当該文書には、東西南北の各方面における立面図、建物外部の仕
上げ、建築物の最高の高さ及び軒高が記載されている。
このうち、建築物の最高の高さ及び軒高については、前記(2)で述
べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報である。
立面図は、一般の者が視認することが可能な情報である。建物外部
の仕上げは一般的な材料であり、一般の者が視認することが可能で
あるため、仕上げの仕様等がおおよそ推定できる情報である。以上
により、当該文書はその全部を開示とした。
(e) 自動火災報知設備図
当該文書は、前記(c)の平面図・建具伏せ図に、自動火災報知設
備のレイアウトを追記したものである。開示又は不開示とした部分
及び理由は前記(c)と同様である。
(f) 断面図
当該文書は、建物の東西方向と南北方向の 2 面を切った断面図で
あり、各室名、各室の天井高さ、開口部の寸法、2 階床の下地及び
仕上げ材名、建築物の最高の高さ及び軒高を含む建物各部の寸法並
びに部分詳細図が記載されている。
このうち、建築物の最高の高さ及び軒高については、前記(2)で
述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報であ
るため開示とした。各室名、各室の天井高さ並びに開口部及び建物
各部の寸法については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報
又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権
540
利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認めら
れるため、開示とした。
部分詳細図並びに 2 階床の下地及び仕上げ材名については、条例
第 7 条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(g) 建具表 1
当該文書には、各建具の建具番号、建具名、姿図、寸法、数量、
設置位置、材質、硝子の種類及び使用金具が記載されている。
このうち、客が使用する室以外の室において使用される外部建具
に係る建具番号及び設置位置を除いた部分については、客として誰
もが入ることができる室における情報であり、一般の者が視認する
ことが可能であるため、開示とした。
客が使用する室以外の室において使用される外部建具に係る建具
番号及び設置位置については、条例第 7 条第 3 号イに該当するもの
として不開示とした。
(h) 消防設備系統図
当該文書には、1 階、2 階及び天井裏に係る消防設備機器の配置
及び数、配線の種類、各機器の名称及びその種類等が記載されてお
り、当該文書は、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その
全部を不開示とした。
(i) 構造特記仕様書
当該文書には、各工事における施工上の注意点や使用される各材
料の仕様、グレード、品質の程度等が記載されている。また、当該
文書のひな形を作成した団体の名称、電話番号、ファクシミリ番号
及びウェブアドレスが記載されている。
このうち、当該文書のひな形を作成した団体の名称、電話番号、
ファクシミリ番号及びウェブアドレスについては、ウェブサイト等
において公にされている情報であるため開示とした。
これらを除いた部分は、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとし
て不開示とした。
(j) 構造標準図(1~4)
当該文書には、各工事における施工上の一般的な使用材料及び工
法等が記載されている。
当該文書に記載された情報は、一般的な工法等が記載されている
ものであり、公にしても異議申立人等の正当な利益を害するとは認
められないことから、全部を開示とした。
(k) ベースパック柱脚工法標準図、QL デッキ合成スラブ設計・施工標
準及びスクリューパイル EAZET 仕様書
当該文書には、各工事における施工上の使用材料及び工法等が記
541
載されており、当該文書は、条例第 7 条第 3 号イに該当するものと
して、その全部を不開示とした。
(l) 基礎伏図・杭伏図・基礎リスト
当該文書には、基礎の詳細図、杭の詳細図、土間コンクリートの
仕様等が記載されており、当該文書は、条例第 7 条第 3 号イに該当
するものとして、その全部を不開示とした。
(m) 梁伏せ図・軸組図、軸組図・部材リスト及び鉄骨継手リスト・架
構図
当該文書には、新規に設ける柱や梁等の寸法、材質、部材配置、
部材高さ、継ぎ手の工法、溶接種別等が記載されており、当該文書
は、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全部を不開示
とした。
(ト) 構造計算によって建築物の安全性を確かめた旨の証明書
当該文書は、前記(イ)(f)と同様の文書であり、同様の理由により、
その全部を不開示とした。
(ナ) 構造計算書
当該文書は、構造計算を電算で行い、出力されたものであって、計
算条件・計算式・計算結果、部材寸法等が記載されており、条例第 7
条第 3 号イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
(ニ) 補正により抹消された図書
当該文書は、確認申請に対する建築主事の審査において指摘を受け、
補正のために抹消された図面であり、前記(テ)の(b)、(c)、(f)、(g)、
(k)、(l)及び(m)と同様の文書が含まれている。開示又は不開示とし
た部分及び理由については、それらの文書と同様である。
イ 計画変更確認申請書及び添付資料
(ア) 計画変更確認申請書(建築物)(第一面)
当該文書は、計画変更確認申請書の鑑文である。
当該文書には、標題、申請文、あて名、申請年月日、建築主及び設
計者の氏名及び印影、計画を変更する建築物の直前の確認における確
認済証の番号、交付年月日及び交付者の氏名、計画変更の概要、申請
受付機関に係る受付日、受付番号及び受付印、関係消防機関の同意文
及び印影、建設事務所及び建築指導課の受付印、確認済証の番号及び
交付年月日、県収入証紙及び消印等が記載されている。
このうち、確認済証交付者の氏名については個人識別情報であるた
め条例第 7 条第 2 号本文には該当するものの、職務の遂行に係る公務
員の氏名であり、同号ただし書ハに該当するため開示とした。また、
建築主及び設計者の氏名、確認済証の番号及び交付年月日、計画を変
更する建築物の直前の確認における確認済証(計画変更確認済証)の
542
番号及び交付年月日並びに計画変更の概要については、前記(2)で述
べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報であるた
め開示とした。これらを除いた部分のうち建築主及び設計者の印影を
除いた部分については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又
はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、
競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるた
め、開示とした。
建築主及び設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当する
ため不開示とした。
(イ) 現地調査票
当該文書は、前記ア(カ)と同様の文書であり、同様の理由によりそ
の全部を開示とした。
(ウ) 確認申請書(第二面~第五面)
当該文書は、確認申請書の一部であり、前記ア(ク)(a)から(d)までと
同様の文書で構成され、開示又は不開示とした部分及び理由について
も同様である。
(エ) 構造耐力規定に関する既存不適格調書
当該文書は、前記ア(ス)と同様の文書であり、開示又は不開示とし
た部分及び理由についても同様である。
(オ) 耐震診断等報告書
当該文書は、前記ア(チ)と同様の文書であり、同様の理由によりそ
の全部を不開示とした。
(カ) 建築基準法第 12 条第 5 項に基づく報告書
当該文書は、建築基準法第 12 条第 5 項に基づき、建築主、設計者・
工事監理者及び工事施工者が、それぞれ建築主事に対して、建設当時
の状況を報告したものである。
当該文書は、個人の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当する
ものとして、また、個人の印影を除いた部分については、同条第 3 号
イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
(キ) 登記事項証明書
当該文書は、前記ア(ソ)と同様の文書であり、同様の理由によりそ
の全部を開示とした。
(ク) 委任状
当該文書は、建築主が設計者を代理人と定め、建築基準法に関する
手続を委任することを証明するものであり、標題、日付、あて名、建
築主の氏名、住所及び印影、設計者の氏名及び事務所の名称、委任す
る旨の文言、申請の区分、建築物等の区分、建築場所等が記載されて
いる。
543
このうち、建築主の氏名及び住所、設計者の氏名及び事務所の名称、
建築物等の区分並びに建築場所(敷地の地名地番)については、前記
(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報
であるため、開示とした。これらを除いた部分のうち、建築主の印影
を除いた部分については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報
又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、
競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるた
め、開示とした。
建築主の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして、
不開示とした。
(ケ) 固定資産(家屋)評価証明書
当該文書には、家屋所有者及び家屋の詳細、価格等が記載されてい
る。
当該文書は、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全部
を不開示とした。
(コ) 既存図面
当該文書には、以下の(a)から(d)までの文書が含まれるが、(a)、
(b)及び(d)には、共通事項として、日付、建築物の名称、工事種別、
図面名称、縮尺、設計者の氏名、印影及び建築士登録番号並びに事務
所の名称等が記載されている。
このうち、設計者の印影を除いた部分については、異議申立人等の
事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすること
により異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する
おそれはないと認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして、
不開示とした。
以下、(a)、(b)及び(d)の説明においては、上記共通事項を除いた部
分についてのみ述べることとし、「全部を開示」という場合の「全
部」には上記共通事項で開示又は不開示とした部分は含まれないもの
とする。
(a) 配置図
当該文書は、現況敷地における既存建物及び浄化槽の配置が記載
されており、方位、凡例、建物配置図(建築物の寸法、各敷地境界
線種別、前面道路の種類及び幅員、浄化槽の型式及び配置等)、敷
地面積、建築面積、各階床面積、延床面積、建ぺい率、容積率等が
記載されている。
このうち、建物配置図、敷地面積、1 階床面積(申請以外の部分
の延べ面積)、建ぺい率及び容積率については、前記(2)で述べたと
544
おり、法令の定めるところにより公にされている情報であるので開
示とした。これらを除いた部分のうち、凡例の一部を除いた部分に
ついては、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウ
には該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の
地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開
示とした。
凡例の一部については、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとし
て不開示とした。
(b) 平面図・屋根伏せ図
当該文書は、平面図及び屋根伏せ図であり、各室名、寸法、屋根
における使用部材名、方位、敷地面積、建築面積、各階床面積、延
床面積、建ぺい率、容積率等が記載されている。
このうち、敷地面積、1 階床面積(申請以外の部分の延べ面積)、
建ぺい率及び容積率については、前記(2)で述べたとおり、法令の
定めるところにより公にされている情報であるので開示とした。平
面図のうち客が使用する室に係る部分については、誰もが入ること
ができる室における情報であり、一般の者が視認することが可能で
あるため、開示とした。また、屋根伏せ図及び屋根における使用部
材名については、建物外部から一般の者が視認することが可能であ
り、当該部分の仕様、寸法等はおおよそ推定できる情報であること
から開示とした。これらを除いた部分のうち、平面図のうち客が使
用する室以外の室に係る部分を除いた部分については、異議申立人
等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にす
ることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益
を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
平面図のうち客が使用する室以外の室に係る部分については、条
例第 7 条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(c) 平面プラン
当該文書は、過去の計画プランの一つであり、客席の配置、客が
使用する室以外の室の内部配置、敷地境界線、寸法等が記載されて
いる。
このうち、客席の配置については、過去の計画プランの一つであ
って、実際の配置とは異なるものであるため、公にすることにより
異議申立人等の正当な利益を害するおそれはないと認められる情報
であることから、開示とした。客席の配置を除いた部分のうち、客
が使用する室以外の室の内部配置を除いた部分については、異議申
立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公
にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な
545
利益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
客が使用する室以外の室の内部配置については、条例第 7 条第 3
号イに該当するものとして、不開示とした。
(d) 立面図
当該文書には、東西南北の各方面における立面図が記載されてい
る。
当該文書に記載された情報は、一般の者が視認することが可能な
情報であり、公にすることにより異議申立人等の正当な利益を害す
るおそれはないと認められることから、当該文書はその全部を開示
とした。
(サ) 委任状
当該文書は、建築主が設計者を代理人と定め、建築確認申請手続を
委任することを証明するものであり、標題、日付、設計者の氏名及び
事務所の名称、委任する旨の文言、委任する内容、建築物の名称、工
事種別、敷地の地名地番並びに建築主の氏名、印影、住所及び電話番
号が記載されている。
このうち、設計者の氏名及び事務所の名称、建築物の名称、工事種
別、敷地の地名地番並びに建築主の氏名及び住所については、前記
(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報
であるので開示とした。標題、日付、委任する旨の文言及び委任する
内容は、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには
該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位そ
の他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
建築主の印影及び電話番号については、条例第 7 条第 2 号に該当す
るものとして不開示とした。
(シ) 浄化槽算定書
当該文書は、前記ア(シ)(a)と同様の文書であり、開示又は不開示と
した部分及び理由についても同様である。
(ス) 換気設備性能計算書及び建築材料表
当該文書は、前記ア(イ)(d)と同様の文書であり、開示又は不開示と
した部分及び理由についても同様である。
(セ) 計画図面
当該文書は、前記ア(テ)(a)から(h)までと同様の文書であり、開示又
は不開示とした部分及び理由についても同様である。
(4) 本件行政文書のうち開示とした部分は、条例第 7 条のうち第 2 号及び第
3 号イ以外の各号に該当しないことは明らかである。
4 審査会の判断
546
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈・運用されなければならない。
一方、条例第 15 条第 1 項は、開示請求に係る行政文書に第三者に関す
る情報が記録されている場合に、当該第三者に意見書を提出する機会を与
えることを定めている。
当審査会は、第三者の権利利益及び公益との調整を図りつつ、行政文書
の開示を請求する権利が不当に侵害されることのないよう、原則開示の理
念に立って、条例を解釈し、以下判断するものである。
(2) 本件行政文書について
本件行政文書の構成及び記載内容並びに開示又は不開示とした部分は前
記 3(3)で実施機関が説明するとおりであると認められる。
実施機関は、建築主の印影及び電話番号、設計者の印影、携帯電話番号、
本籍地及び生年月日並びに浄化槽保守点検実施者の氏名(以下「建築主の
印影等」という。
)を条例第 7 条第 2 号に該当するとして不開示としてい
る。
また、換気設備性能計算書のうち天井裏等の制限、換気設備性能計算、
クロルピリホスの制限及び石綿等の制限の内容が記載された部分、建築材
料表のうち客席等の客が使用する室以外の室に関する床面積等及び使用接
着剤の種別、建築基準法第 6 条第 13 項の規定による適合するかどうかを
決定することができない旨の通知書のうち建築主事による指摘内容、浄化
槽算定書のうち客に提供される具体メニュー、浄化槽保守点検記録票のう
ち保守点検業者の名称及び所在地、点検事項の「その他」の項、点検結果
及び措置並びに汚水の各種水質指標における濃度、浄化槽清掃届のうち清
掃施行者の所在地、名称、代表者名及び法人の印影、構造耐力規定に関す
る既存不適格調書のうち増築等に係る部分の概要、既存不適格建築物の概
要、設計図書等の有無、新築又は増築等の時期を示す書類、基準時以前の
建築基準関係規定の適合、構造耐力規定の緩和条件、安全確認の方法及び
総合所見、増築工事の経緯報告書のうち建築物(既設)の概要及び増築工
事の経緯、配置図のうち既存建物に係る凡例の一部、平面図のうち客が使
用する室以外の室に係る部分及び凡例の一部、仕上げ表のうち内装の下地
及び仕上げ材料、平面図・建具伏せ図及び自動火災報知設備図のうち各階
の間取り、客室以外の室に係る外部開口部の寸法、設備機器の位置及び品
番、部分詳細図、消防法による無窓階の算定における算定式並びに建築基
準法開口部における検討チェック、断面図のうち部分詳細図並びに 2 階床
547
の下地及び仕上げ材名、建具表 1 のうち客が使用する室以外の室において
使用される外部建具に係る建具番号及び設置位置、建築基準法第 12 条第 5
項に基づく報告書のうち個人の印影を除いた部分並びに平面プランのうち
客が使用する室以外の室の内部配置並びに意匠補足資料、構造計算によっ
て建築物の安全性を確かめた旨の証明書、構造計算等補足資料、指導課指
摘後再構造計算書、構造計算書、評定書、地質調査報告書、地盤の液状化
判定、QL デッキ構造計算、杭基礎の設計検討書等、経過表(指摘事項)、
耐震診断等報告書、既設建物躯体の現況報告、消防設備系統図、構造特記
仕様書、ベースパック柱脚工法標準図、QL デッキ合成スラブ設計・施工標
準、スクリューパイル EAZET 仕様書、基礎伏図・杭伏図・基礎リスト、梁
伏せ図・軸組図、軸組図・部材リスト及び鉄骨継手リスト・架構図並びに
固定資産(家屋)評価証明書(以下「天井裏等の制限等」という。)を条
例第 7 条第 3 号イに該当するとして不開示としている。
本件行政文書のうち、実施機関が開示としたのは建築主の印影等及び天
井裏等の制限等を除いた部分である。
異議申立人は、本件行政文書の全部について不開示を求めている。
(3) 条例第 7 条第 2 号該当性について
ア 条例第 7 条第 2 号は、基本的人権を尊重する立場から、個人に関する
情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照
合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを
含む。)が記録されている行政文書は、不開示とすることを定めるとと
もに、特定の個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を
害するおそれのある情報が記録された行政文書についても、同様に不開
示とすることを定めたものである。
また、その一方で、ただし書イからニまでのいずれかに規定された情
報が記録されている行政文書については、条例の目的に照らし、原則開
示と個人の権利利益の最大限の尊重との調整を図ることにより、開示す
ることとしたものである。
この考え方に基づき、本件行政文書において実施機関が開示とした部
分が同号に該当するか否かを、以下検討する。
イ 本件行政文書において実施機関が開示とした部分には、建築主の氏名
及び住所、設計者の氏名及び携帯電話番号、工事監理者及び工事施工者
の氏名並びに公務員の氏名及び印影が記載されている。これらは個人を
識別することができる情報であるため、条例第 7 条第 2 号本文に該当す
る。
このうち、建築主の氏名及び住所並びに設計者、工事施工者及び工事
監理者の氏名は、当審査会で見分したところ、建築計画概要書に記載さ
れていることが確認された。また、建築計画概要書は、建築基準法第 93
548
条の 2 及び建築基準法施行規則第 11 条の 4 の規定により所管の建設事
務所において閲覧に供されており、計画変更申請があった場合はその都
度建築計画概要書が作成され、そのいずれもが閲覧に供されるものであ
る。よって、当該部分は、同号ただし書イに該当する。
しかし、設計者の携帯電話番号は建築計画概要書に記載されていない
ため公にされているわけではなく、また、公にすることが予定されてい
るともいえないことから、同号ただし書イに該当しない。さらに、同号
ただし書ロ、ハ及びニに該当しないことは明らかである。
公務員の氏名及び印影はその職務遂行に係るものであるため、同号た
だし書ハに該当する。
ウ 本件行政文書において実施機関が開示とした部分には、他に条例第 7
条第 2 号本文に該当する情報は記載されていない。
エ したがって、本件行政文書において実施機関が開示とした部分のうち、
設計者の携帯電話番号は条例第 7 条第 2 号に該当するが、それ以外の部
分は同号に該当しない。
(4) 条例第 7 条第 3 号イの該当性について
ア 条例第 7 条第 3 号イは、自由経済社会においては、法人等又は事業を
営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、
事業活動に係る情報で、公にすることにより、当該法人等又は個人の権
利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものが記録さ
れている行政文書は、不開示とすることを定めたものである。
そして、当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益
を害するおそれがあるものとは、事業者の生産・技術・販売上のノウハ
ウ、経理、人事等の内容で、公にすることにより、事業者の事業活動が
損なわれると認められる情報をいう。
この考え方に基づき、本件行政文書において実施機関が開示とした部
分が同号イに該当するか否かを、以下検討する。
イ(ア) 本件行政文書には、建築計画概要書及び処分等概要書に記載された、
代理者、設計者、工事監理者及び工事施工者の登録又は許可の番号並
びに事務所又は営業所の名称、建築士事務所登録番号、所在地及び電
話番号、確認済証の番号及び交付年月日、敷地の地名地番、主要用途、
建築物の名称、数、最高の高さ、階数及び構造、特例の適用の有無、
工事種別、申請部分及び申請以外の部分の延べ面積、設計者の作成し
た設計図書、工事監理者が工事と照合する設計図書、用途地域、道路
幅員、接道部分の長さ、敷地面積、建築面積、建ぺい率、容積率、計
画変更確認済証の番号及び交付年月日、工事予定年月日、計画変更の
概要並びに建物配置図(建築物の寸法、各敷地境界線種別、敷地及び
隣地のレベル、前面道路の種類及び幅員、浄化槽の型式及び配置、軒
549
高等)
(以下「設計者等の登録番号等」という。)が記載されている。
前記(3)イで述べたとおり、建築計画概要書は計画変更申請の度に
作成され、処分等概要書とともに所管の建設事務所において閲覧に供
されているものである。
したがって、当該部分は、法令の定めるところにより公にされてい
る情報である。
(イ) 現地調査票のうち敷地周辺の状況、地域地区関係、都市計画法関係、
その他法令、申請地に接する道路関係、環境関係、農地法関係及び下
水道関係(以下「敷地周辺の状況等」という。)並びに登記事項証明
書のうち登記官の氏名を除いた部分については、公的施設において誰
もが取得できる情報である。
(ウ) 換気設備性能計算書のうち一般的な換気に係る算定式の係数につい
ては、建築基準法施行令第 20 条の 7 において公にされている情報で
ある。
また、浄化槽算定書のうち浄化槽処理対象人槽算定方法における算
定式及び係数については、建設省告示及び日本工業規格により一般に
公表されている情報である。
(エ) 金属製換気扇等のカタログの写しは、カタログとして一般に配布さ
れ、公にされている情報であると認められる。
また、FAX 送信票のうち建築指導課の所在地、電話番号及びファク
シミリ番号、追加説明書の様式のダウンロード先アドレス並びに確認
審査における指摘事例集の掲載先アドレス(以下「建築指導課の所在
地等」という。)並びに確認申請の手数料の金額等は、県のウェブサ
イト等において公にされている情報である。
さらに、仕上げ表のうち使用部材の認定番号並びに構造特記仕様書
のひな形を作成した団体の名称、電話番号、ファクシミリ番号及びウ
ェブアドレス(以下「団体の名称等」という。)は、一般のウェブサ
イト等において公にされている情報であると認められる。
(オ) 以上により、設計者等の登録番号等、敷地周辺の状況等、登記事項
証明書のうち登記官の氏名を除いた部分、一般的な換気に係る算定式
の係数、浄化槽処理対象人槽算定方法、金属製換気扇等のカタログの
写し、建築指導課の所在地等、確認申請の手数料の金額等、使用部材
の認定番号及び団体の名称等はいずれも公にされている情報であり、
本件一部開示決定によって公にしても、異議申立人等の権利、競争上
の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものとは認められない。
ウ(ア) 本件行政文書には、建築材料表のうち客席等の客が使用する室に関
する床面積等、屋根、外壁、軒裏及び客室に係る外部開口部の仕様又
は寸法、屋根伏せ図、屋根における使用部材名、建物外部の仕上げ、
550
外部階段の仕様、立面図、建具表 1 のうち各建具の建具番号(客が使
用する室以外の室において使用される外部建具に係るものを除く。)、
建具名、姿図、寸法、数量、設置位置(客が使用する室以外の室にお
いて使用される外部建具に係るものを除く。)、材質、硝子の種類及び
使用金具並びに平面図のうち客が使用する室に係る部分(以下「客席
等の客が使用する室に関する床面積等」という。)が記載されている。
これらの情報は、一般の者が視認することが可能な建築物の部分又
は一般的な材料によるものであり、当該部分の仕様、寸法等はおおよ
そ推定できるものと認められ、異議申立人等の事業の内部管理情報又
はノウハウに該当するとは認められない。
(イ) 建築基準法チェックシートは、単に各項目の審査が終了した旨を記
載するのみで、審査の内容や結果については記載しないものであり、
異議申立人等の事業の内部管理情報又はノウハウに該当するとは認め
られない。
(ウ) 構造標準図は、一般的な工法等が記載されているものであり、異議
申立人等の事業のノウハウに該当するとは認められない。
(エ) 平面プランのうち、客席の配置については、過去の計画プランの一
つで、実際の配置とは異なるものであり、異議申立人等の事業の内部
管理情報又はノウハウに該当するとは認められない。
(オ) 以上により、客席等の客が使用する室に関する床面積等、建築基準
法チェックシート、構造標準図及び平面プランのうち客席の配置は、
公にしても、異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を
害するおそれがあるものとは認められない。
エ 本件行政文書において実施機関が開示とした部分のうち、前記イ及び
ウにおいて判断した部分以外の部分を見分したところ、異議申立人等の
事業上のノウハウ、異議申立人が営む事業に関する内部管理情報等、公
にすることにより異議申立人等の事業活動が損なわれる情報が含まれて
いるとは認められず、これを公にしても異議申立人等の権利、競争上の
地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
オ 以上のとおり、実施機関が開示とした部分は、条例第 7 条第 3 号イに
は該当しない。
(5) 本件行政文書のうち実施機関が開示とした部分は、条例第 7 条のうち第
2 号及び第 3 号イ以外の各号に該当しないことは明らかである。
(6) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々の主張をしているが、本件行政文書の不開示
情報該当性については、前記(3)から(5)までにおいて述べたとおりである
ことから、異議申立人のその他の主張は、当審査会の判断に影響を及ぼす
ものではない。
551
(7) まとめ
以上により、
「1
審査会の結論」のとおり判断する。
552
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.
5.14
諮問
22.
8.10
実施機関から不開示理由説明書を受理
22.
8.12
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
22.11.19
(第 313 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
22.12.17
(第 315 回審査会)
異議申立人の意見陳述を聴取
23. 4.22
(第 325 回審査会)
審議
23. 5.13
(第 327 回審査会)
審議
23. 9. 9
(第 338 回審査会)
審議
553
答申第 585 号
諮問第 967 号
件名:補正要求に対する異議申立てに対してなした「決定」に係る文書一式の
不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が「総務課 H21 年度
補正要求に対する異議申立てに対してなした「決定」に係る文書一式(決定
に係る会議で配布された文書及び議事録)」(以下「本件請求対象文書」とい
う。)について、不存在を理由として不開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 3 月 25 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 30 日付けで行った不
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係る行政文書を
作成又は取得しているというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
本件開示請求書には、「補正要求に対する異議申立てに対してなした
「決定」に係る文書一式(行政文書開示請求書、補正要求文書、決定書、
異議申立書、決定に係る会議で配布された文書及び議事録)」と記載され
ていることから、本件開示請求における「補正要求」とは、情報公開制度
上の補正要求のことであると解した。
条例第 6 条第 2 項においては、実施機関は開示請求書に形式上の不備が
あると認めるときは、開示請求者に対し補正を求めることができる旨が規
定されている。
教育委員会は開示請求者に対して補正を求める場合があるが、開示請求
者から、この補正要求に対する異議申立てがなされることがある。教育委
554
員会としては、補正要求自体を行政処分とは考えていないが、当該異議申
立てについては、開示決定等を行っていないという不作為についての異議
申立てであると広く解することとしている。
当該異議申立てに対しては、既に原処分がなされていて不作為が存在し
ない場合など、当該異議申立てが不適法であるときは、行政不服審査法
(昭和 37 年法律第 160 号)第 50 条第 1 項に基づき、決定で却下すること
となる。なお、同条第 2 項においては、申請に対する何らかの行為をする
か、又は書面で不作為の理由を示すことが規定されているが、これは決定
でなされるものではない。
したがって、本件請求対象文書は、情報公開制度上の補正要求に対する
異議申立てに対し、行政不服審査法第 50 条第 1 項に基づき却下の決定を
行うにあたって開催された会議で配付された文書及び議事録であると解し
た。
(2) 本件請求対象文書の存否について
教育委員会においては、補正要求に対する異議申立てがあった場合は、
決裁で組織としての意思決定を行っており、教育委員会内部で会議を開催
することはない。
また、教育委員会の担当者が当該決裁を起案する前に、情報公開制度の
所管課である愛知県県民生活部県民総務課(以下「県民総務課」とい
う。)の担当者と協議することはあるが、当該協議は、開示請求書、決定
通知書、補正通知書、異議申立書等の現物を見ながら、どのような対応が
最も適切であるかを担当者間で話し合うものであり、文書を配付したり、
議事録を作成することもない、担当者同士の打合せである。
以上のことから、教育委員会は本件請求対象文書を作成又は取得してお
らず、管理していないことから、条例第 11 条第 2 項に基づき、不存在に
よる不開示決定を行ったものである。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
「補正要求に対する異議申立てに対してなした「決定」に係る文書一式
(行政文書開示請求書、補正要求文書、決定書、異議申立書、決定に係る
555
会議で配布された文書及び議事録)」という本件開示請求書の文言からす
れば、本件開示請求書における「補正要求」とは、実施機関の解釈どおり
情報公開制度上の補正要求のことであると解される。
そして、実施機関によれば、補正要求自体を行政処分とは考えていない
が、補正要求に対する異議申立てについては、開示決定等を行っていない
という不作為についての異議申立てであると広く解することとしており、
当該異議申立てに対しては、既に原処分がなされていて不作為が存在しな
い場合など、当該異議申立てが不適法であるときは、行政不服審査法第 50
条第 1 項に基づき、決定で却下するとのことである。
これらの内容は、実施機関が作成した不開示理由説明書に記載されてい
るところ、当審査会において、当該不開示理由説明書を異議申立人に送付
して意見を求めたが異議申立人から意見はなく、意見陳述の機会を設ける
旨の通知に対しても回答はなかった。
したがって、本件請求対象文書は、情報公開制度上の補正要求に対する
異議申立てに対し、行政不服審査法第 50 条第 1 項に基づき却下の決定を
行うにあたって開催された会議で配付された文書及び議事録であると解さ
れる。
(3) 本件請求対象文書の存否について
実施機関によれば、補正要求に対する異議申立てがあった場合は、決裁
で組織としての意思決定を行っており、実施機関内部で会議を開催するこ
とはないとのことである。
また、実施機関の担当者が当該決裁を起案する前に、情報公開制度の所
管課である県民総務課の担当者と協議することはあるが、当該協議は、開
示請求書、決定通知書、補正通知書、異議申立書等の現物を見ながら、ど
のような対応が最も適切であるかを担当者間で話し合うものであって、文
書を配付したり、議事録を作成することもないとのことである。
補正要求に対する異議申立てについて、行政不服審査法第 50 条第 1 項
に基づいて行う却下の決定が、異議申立てが不適法な場合になされる形式
的なものであることからすれば、決裁で組織としての意思決定を行ってお
り、実施機関内部で会議を開催することはないとの実施機関の説明は不合
理ではない。さらに、却下決定が形式的な判断であることからすれば、県
民総務課の担当者と協議すること等があっても、当該協議は、文書を配付
したり、議事録を作成することもない、担当者同士の打合せである、とい
う実施機関の説明は不自然ではない。
以上のことから、実施機関は本件請求対象文書を作成又は取得しておら
ず、不存在であるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、
不合理な点があるとは認められない。
(4) まとめ
556
以上により、
「1
審査会の結論」のとおり判断する。
557
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.11.
5
諮問
23.
3.
2
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
3.
7
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 6.10
(第 330 回審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 7.19
(第 333 回審査会)
審議
23. 8.31
(第 337 回審査会)
審議
558
答申第 586 号
諮問第 968 号
件名:行政文書開示請求書の補正について等の一部開示決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。
)が、
「H22 年 3 月 15 日付
け 21 教総第 942 号に係る文書一式」の開示請求に対し、別記に掲げる行政文
書(以下「本件行政文書」という。
)を特定して一部開示としたことは妥当で
ある。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 3 月 10 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)に
基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 30 日付けで本件行政文書
を特定して行った一部開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示決定の期限についての
文書が特定されていないというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件行政文書を特定して一部開示とし
たというものである。
(1) 本件行政文書について
ア 本件開示請求は、平成 22 年 3 月 18 日に受理したもので、その内容は
平成 22 年 3 月 15 日付け 21 教総第 942 号に係る文書一式というものであ
る。
平成 22 年 3 月 15 日付け 21 教総第 942 号とは、特定人から平成 22 年
3 月 4 日付けで提出のあった行政文書開示請求について、
「行政文書の名
称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」の欄の記
載が、行政文書を特定するために必要な事項としては十分ではなかった
ため、同月 15 日付けで補正依頼をした文書である。
そこで、当該文書の起案文書一式(起案文・補正通知案・行政文書開
示請求書)及び開示請求者あてに送付した補正通知書の写しを、本件行
政文書として特定した。
559
イ
異議申立人は、異議申立書において「開示決定の期限についての文書
が特定されていない」と主張している。
開示決定等の期限については、条例第 12 条第 1 項において「開示請求
があった日から起算して 15 日以内にしなければならない。ただし、第 6
条第 2 項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した
日数は、当該期間に算入しない。」と定め、開示決定等の期限までの期間
に補正に要した日数を算入しない旨を規定しているが、補正を求めた場
合の開示決定等の期限についてあらかじめ開示請求者に通知しなければ
ならない旨の規定はない。これは、開示請求者が補正に応じる日数をあ
らかじめ想定することは困難であるためと考えられる。
本件行政文書は補正を依頼する段階で作成したものであり、開示決定
等の期限についてはあらかじめ開示請求者に通知する必要がないため記
載していない。また、他にも開示決定等の期限が記載された文書は存在
しない。
したがって、本件行政文書の特定に誤りはない。
(2) 条例第 7 条第 2 号該当性について
本件行政文書に記載されている開示請求者の氏名、住所、電話番号及び
FAX番号は、いずれも特定の個人を識別することができる情報であるた
め、当該部分は、条例第 7 条第 2 号に該当するとして、不開示とした。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈・運用されなければならない。
そして、この目的を達成するためには、開示請求の対象となる行政文書
が適切に特定されることが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、本件開示請求に係る文書の特定について、以下判断するもので
ある。
(2) 本件行政文書の特定について
ア 実施機関によると、本件開示請求書に記載されている「H22 年 3 月 15
日付け 21 教総第 942 号」とは、特定人から提出のあった行政文書開示請
求について補正を依頼した文書であることから、当該補正通知の起案文
書一式(起案文・補正通知案・行政文書開示請求書)及び開示請求者あ
てに送付した補正通知書の写しを特定したとのことである。
560
本件開示請求は、
平成 22 年 3 月 15 日付け 21 教総第 942 号という特定
の文書に係る文書一式を求めるものであることから、実施機関が当該文
書の起案文書一式及び補正通知書の写しを特定したことに不合理な点は
見当たらない。
イ 異議申立人は、異議申立書において、開示決定の期限についての文書
が特定されていないと主張している。
これに対し、実施機関は、本件行政文書は補正を依頼する段階で作成
したものであり、補正を求めた場合の開示決定等の期限についてあらか
じめ開示請求者に通知する必要がないため期限を記載しておらず、
また、
他にも、平成 22 年 3 月 15 日付け 21 教総第 942 号に関して開示決定等の
期限が記載された文書は存在しないと説明する。
条例第 12 条第 1 項では、開示決定等の期限について、「開示請求があ
った日から起算して 15 日以内にしなければならない。ただし、第 6 条第
2 項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数
は、当該期間に算入しない。
」と定めており、実施機関が開示請求書の記
載内容について補正を求めた場合には、当該補正に要した日数に応じて
開示決定等の期限が変動することとなる。しかし、実施機関において開
示請求者がいつ補正に応じるか予測することは困難であり、補正を依頼
する時点で補正に要する日数を確定することは不可能であることから、
実施機関があらかじめ開示決定等の期限を定めることは想定していない
ものと認められる。
したがって、
補正依頼の通知である平成 22 年 3 月 15 日付け 21 教総第
942 号に係る本件開示請求に関して、開示決定等の期限を記載した文書
は存在しないとする実施機関の主張は首肯しうるものである。
ウ 以上のことから、本件開示請求に対し、実施機関が本件行政文書を特
定したことに誤りはないものと認められる。
(3) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
別記
・行政文書開示請求書の補正について(起案文書)
・行政文書開示請求書の補正について(施行文書の写し)
561
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
5
内
容
諮問
23.
3.18
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
3.24
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 6.28
(第 332 回審 査会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 7.19
(第 333 回審 査会 )
審議
23. 8.31
(第 337 回審 査会 )
審議
562
答申第 587 号
諮問第 926 号
件名:交通事故速報等の一部開示決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。
)が、別表の 1 欄に掲げ
る行政文書(以下「本件行政文書」という。)の一部開示決定において、同
表の 3 欄に掲げる部分を不開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 21 年 8 月 17 日及び 31 日
付けで愛知県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」
という。)に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同年 9 月 25 日及
び 10 月 14 日付けで行った 2 件の一部開示決定の取消しを求めるというも
のである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、条例第 7 条第 2 号、第 5 号
及び第 6 号に該当しないというものである。
3
本件異議申立ての併合について
異議申立人は、2 件の一部開示決定に対しそれぞれ異議申立てを提起して
いるが、当該 2 件の一部開示決定は、開示請求があった日及び一部開示決定
をした日は異なるものの、それぞれの一部開示決定において特定した行政文
書が一部重複している。重複する行政文書については、同一の部分を同一の
理由により不開示としたことから、実施機関は 2 件の異議申立てを併合する
こととしたものである。
4 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件行政文書を一部開示としたという
ものである。
(1) 本件行政文書について
本件行政文書は、平成 20 年度に教育委員会が懲戒処分を行った、公立
学校教員による交通事故に関する事案(以下「事案 1」という。)
、わいせ
つ行為に関する事案(以下「事案 2」という。)及び覚せい剤取締法違反
563
に関する事案(以下「事案 3」という。)について作成又は取得した 12 の
文書である。
ア 事案 1 に関するもの
本件行政文書のうち事案 1 に関するものは、公立学校教員による交通
事故に関し、教育委員会が処分内容を決定するために作成又は取得した
別表の 1 欄に掲げる文書 1 から文書 4 までの文書である。
(ア) 文書 1「交通事故速報」
当該文書は、公立学校教員による交通事故について、当該公立学校
の管理責任者である校長が速やかに事実関係を調査し、その内容を市
教育委員会に報告し、市教育委員会が県教育事務所を経由し、教育委
員会に提出したものである。
当該文書には、被処分者の所属、職名及び氏名、校長の氏名、相手
方の住所、職業、氏名及び年齢、事故発生の状況、人身傷害・物損の
程度等が記載されており、そのうち開示しないこととした部分は、被
処分者の学校の名称(被処分者の所属のうち学校設置者名及び学校種
別を除く部分をいう。以下同じ。)及び氏名、校長の氏名並びに相手
方の住所、職業、氏名及び搬送された病院名である。
(イ) 文書 2「交通事故報告書について」
当該文書は、前記(ア)の交通事故速報を提出した後、校長が改めて
調査した事実関係を詳細に記載した交通事故報告書を作成し、市教育
委員会、県教育事務所長を経由し、教育委員会教育長(以下「県教育
長」という。)へ提出したものであり、県教育事務所長の鑑文に交通
事故速報及び交通事故報告書が添付されている。また追加資料として、
県教育事務所長の鑑文に、被処分者の申立書、校長の意見書及び遺族
からの嘆願書が添付されている。
県教育事務所長の鑑文には、標題、担当者名、電話番号等が、交通
事故速報には、前記(ア)と同様の内容が、交通事故報告書には、被処
分者の所属、職名及び氏名、相手方の住所、氏名、年齢、損害の状況
等、事後措置等の状況、事故発生の状況等が、追加資料の県教育事務
所長の鑑文には、被処分者の所属、職名及び氏名、追加資料名等が、
被処分者の申立書には、被処分者の所属、氏名、申立内容等が、校長
の意見書には、校長の氏名、職名、印影、意見等が、遺族からの嘆願
書には、遺族の住所、氏名、申立内容等が記載されており、そのうち
開示しないこととした部分は、被処分者の学校の名称、氏名及び申立
書、校長の氏名、印影及び意見、相手方の住所、職業、氏名及び搬送
された病院名並びに遺族からの嘆願書である。
(ウ) 文書 3「教員の処分について(平成 20 年 8 月 16 日起案)
」
当該文書は、処分内容を決定するために教育委員会が作成したもの
564
で、起案文、辞令案、処分事由説明書案、通知案、記者発表案及び施
行文書の写しのほか、副申、内申及び意見書で構成されている。
起案文は、担当者が決裁を受けるための書類で、起案者氏名、標題、
決裁者等の印、伺い文等が記載されている。
辞令案は、懲戒処分を行う際に被処分者に交付する辞令の案として
作成されるもので、被処分者の所属、職名、氏名、発令事項等が記載
されており、そのうち開示しないこととした部分は、被処分者の学校
の名称及び氏名である。
処分事由説明書案は、地方公務員法(昭和 25 年法律第 261 号)第
49 条第 1 項の規定に基づき、懲戒等の処分を行う任命権者に対し、
被処分者に交付することを義務付けた、処分の事由を記載した説明書
の案であり、被処分者の所属、職名、氏名、処分内容、処分理由等が
記載されており、そのうち開示しないこととした部分は、被処分者の
学校の名称及び氏名である。
通知案は、懲戒処分について、県教育長が県教育事務所長に通知す
る案であり、被処分者の所属、職名、氏名、処分内容等が記載されて
おり、そのうち開示しないこととした部分は、被処分者の学校の名称
及び氏名である。
記者発表案は、懲戒処分について、報道機関に公表するための案で
あり、被処分者の学校種別、職名、年齢、処分内容、処分理由等が記
載されている。
施行文書の写しは、決裁を受けた後、県教育長が県教育事務所長に
通知した文書の写しであり、通知文、辞令及び処分事由説明書で構成
されている。記載内容及び開示しないこととした部分は、通知案、辞
令案及び処分事由説明書案と同様である。
副申、内申及び意見書のうち、内申とは、市教育委員会が、教員の
処分内容について教育委員会に意見を申し出る文書を指し、その詳細
な意見内容については、意見書という文書名を付した文書が別紙とし
て添付されている。副申とは、内申が県教育事務所長へ提出されたこ
とを受け、県教育事務所長がこの内申についての意見を付して県教育
長に送付する文書である。
副申には、標題、市教育委員会から内申があったこと、県教育事務
所長の意見等が記載されており、そのうち開示しないこととした部分
は、県教育事務所長の意見である。
内申には、標題、被処分者の所属、職名及び氏名、市教育委員会が
内申した処分内容等が記載されており、そのうち開示しないこととし
た部分は、被処分者の学校の名称及び氏名並びに市教育委員会が内申
した処分内容である。
565
意見書には、被処分者の所属、職名及び氏名、市教育委員会が内申
した処分内容及び意見等が記載されており、そのうち開示しないこと
とした部分は、被処分者の学校の名称及び氏名並びに市教育委員会が
内申した処分内容及び意見である。
(エ) 文書 4「教員の処分について(平成 20 年 8 月 22 日付け)
」
当該文書は、県教育事務所長が、県教育長に処分した結果について
報告したものである。
当該文書には、標題、処分日時、被処分者の所属、職名、氏名及び
処分内容、立会者等が記載されており、そのうち開示しないこととし
た部分は、被処分者の学校の名称及び氏名並びに校長の氏名である。
イ 事案 2 に関するもの
本件行政文書のうち事案 2 に関するものは、公立学校教員によるわい
せつ行為に関し、教育委員会が処分内容を決定するために作成又は取得
した別表の 1 欄に掲げる文書 5 から文書 8 までの文書である。
(ア) 文書 5「非違行為に関する速報」
当該文書は、公立学校教員による非違行為について、当該公立学校
の管理責任者である校長が速やかに事実関係を調査し、その内容を町
教育委員会に報告し、町教育委員会が県教育事務所を経由し、教育委
員会に提出したものである。
当該文書には、被処分者の所属、職名、氏名、生年月日及び休暇の
取得情報、教頭の氏名、非違行為の内容、取材を受けた報道機関名及
び記者の姓等が記載されており、そのうち開示しないこととした部分
は、被処分者の生年月日及び休暇の取得情報並びに取材を受けた報道
機関の記者の姓である。
(イ) 文書 6「非違行為報告書について」
当該文書は、前記(ア)の非違行為に関する速報を提出した後、校長
が改めて調査した事実関係を詳細に記載した非違行為報告書を作成し、
町教育委員会教育長(以下「町教育長」という。
)、県教育事務所長を
経由し、県教育長へ提出したものであり、県教育事務所長の鑑文に、
町教育長の鑑文、校長の鑑文、非違行為報告書、被処分者の申立書、
校長の意見書及び町教育長名の被処分者の申立書の訂正文が添付され
ている。
県教育事務所長の鑑文には、標題、担当者名、電話番号等が、町教
育長の鑑文には、標題、提出書類名、担当課名、電話番号等が、校長
の鑑文には、標題、提出書類名、教頭の氏名、電話番号等が、非違行
為報告書には、被処分者の所属、職名、氏名及び生年月日、教頭の氏
名、非違行為の概要、相手の状況、事後措置等が、被処分者の申立書
には、被処分者の所属、職名、氏名、申立内容等が、校長の意見書に
566
は校長の所属、職名、氏名、印影、意見等が、町教育長名の被処分者
の申立書の訂正文には、申立書の記載内容に誤りがあること、記載内
容の正誤等が記載されており、そのうち開示しないこととした部分は、
被処分者の生年月日及び申立書、校長の意見並びに町教育長名の被処
分者の申立書の訂正文中の記載内容の正誤である。
(ウ) 文書 7「教員の人事について(平成 20 年 8 月 7 日起案)
」
当該文書は、解雇予告除外認定の申請をするために教育委員会が作
成したもので、起案文、解雇予告除外認定の申請案、解雇予告除外認
定申請書案及び施行文書の写しで構成されている。
起案文は、担当者が決裁を受けるための書類で、起案者氏名、標題、
決裁者等の印、伺い文等が記載されている。
解雇予告除外認定の申請案は、教員を解雇するにあたり、労働基準
法(昭和 22 年法律第 49 号)第 20 条第 1 項の規定に基づき、教員の
解雇予告除外認定をするため、教育委員会が町長に申請する鑑文の案
であり、標題、被処分者の所属及び職名、解雇予告除外認定の申請を
する旨等が記載されている。
解雇予告除外認定申請書案は、労働基準法施行規則(昭和 22 年厚
生省令第 23 号)第 7 条に規定される申請書の案で、被処分者の所属、
氏名、生年月日及び雇用年月日、労働者の責に帰すべき事由等が記載
されており、そのうち開示しないこととした部分は、被処分者の生年
月日である。
施行文書の写しは、決裁を受けた後、教育委員会が町長に申請した
文書の写しであり、申請文及び解雇予告除外認定申請書で構成されて
いる。記載内容及び開示しないこととした部分は、解雇予告除外認定
の申請案及び解雇予告除外認定申請書案と同様である。
(エ) 文書 8「教員の処分について(平成 20 年 8 月 11 日起案)
」
当該文書は、処分内容を決定するために教育委員会が作成したもの
で、起案文、辞令案、処分事由説明書案、通知案、記者発表案及び施
行文書の写しのほか、副申、町教育長の鑑文、内申及び意見書で構成
されている。
起案文は、担当者が決裁を受けるための書類で、起案者氏名、標題、
決裁者等の印、伺い文等が記載されている。
辞令案は、懲戒処分を行う際に被処分者に交付する辞令の案として
作成されるもので、被処分者の所属、職名、氏名、発令事項等が記載
されている。
処分事由説明書案は、処分の事由を記載した説明書の案であり、被
処分者の所属、職名、氏名、処分内容、処分理由等が記載されている。
通知案は、懲戒処分について、県教育長が県教育事務所長に通知す
567
る案であり、被処分者の所属、職名、氏名、処分内容等が記載されて
いる。
記者発表案は、懲戒処分について、報道機関に公表するための案で
あり、被処分者の所属、職名、氏名、年齢、処分内容、処分理由等が
記載されている。
施行文書の写しは、決裁を受けた後、県教育長が県教育事務所長に
通知した文書の写しであり、通知文、辞令及び処分事由説明書で構成
されている。記載内容は、通知案、辞令案及び処分事由説明書案と同
様である。
副申及び内申は、前記ア(ウ)で述べたとおりのものであり、副申に
は、標題、町教育委員会から内申があったこと、県教育事務所長の意
見等が記載されており、そのうち開示しないこととした部分は、県教
育事務所長の意見である。
内申は町教育長の鑑文に添付されており、鑑文には標題、担当課名、
電話番号等が、内申には、被処分者の所属、職名及び氏名、町教育委
員会が内申した処分内容等が記載されており、そのうち開示しないこ
ととした部分は、町教育委員会が内申した処分内容である。
意見書には、標題、町教育委員会の意見等が記載されており、その
うち開示しないこととした部分は、町教育委員会の意見である。
ウ 事案 3 に関するもの
本件行政文書のうち事案 3 に関するものは、公立学校教員による覚せ
い剤取締法違反に関し、教育委員会が処分内容を決定するために作成又
は取得した別表の 1 欄に掲げる文書 9 から文書 12 までの文書である。
(ア) 文書 9「非違行為に関する速報」
当該文書は、公立学校教員による非違行為について、当該公立学校
の管理責任者である校長が速やかに事実関係を調査し、その内容を町
教育委員会に報告し、町教育委員会が県教育事務所を経由し、教育委
員会に提出したものである。
当該文書には、被処分者の所属、職名、氏名及び生年月日、非違行
為の発生場所、校長の氏名、弁護士に関する情報、非違行為の内容、
関係機関の意見が分かる部分等が記載されており、そのうち開示しな
いこととした部分は、被処分者の生年月日、非違行為の発生場所、弁
護士に関する情報及び関係機関の意見が分かる部分である。
(イ) 文書 10「職員の非違行為について」
当該文書は、前記(ア)の非違行為に関する速報を提出した後、校長
が改めて調査した事実関係を詳細に記載した非違行為報告書を作成し、
町教育委員会、県教育事務所長を経由し、県教育長へ提出したもので
あり、県教育事務所長の鑑文に、町教育委員会の鑑文、非違行為報告
568
書、被処分者の申立書及び校長の意見書が添付されている。
県教育事務所長の鑑文には、標題、担当者名、電話番号等が、町教
育委員会の鑑文には、標題等が、非違行為報告書には、被処分者の所
属、職名、氏名及び生年月日、非違行為の発生場所、校長の氏名、非
違行為の概要、相手の状況、事後措置等が、被処分者の申立書には、
被処分者の氏名、申立内容等が、校長の意見書には、校長の所属、職
名、氏名、印影及び意見、非違行為の発生場所等が記載されており、
そのうち開示しないこととした部分は、被処分者の生年月日及び申立
書、非違行為の発生場所、関係機関の意見が分かる部分並びに校長の
意見である。
(ウ) 文書 11「教員の人事について(平成 20 年 12 月 3 日起案)
」
当該文書は、解雇予告除外認定の申請をするために教育委員会が作
成したもので、起案文、解雇予告除外認定の申請案、解雇予告除外認
定申請書案及び施行文書の写しで構成されている。
起案文は、担当者が決裁を受けるための書類で、起案者氏名、標題、
決裁者等の印、伺い文等が記載されている。
解雇予告除外認定の申請案には、標題、被処分者の所属及び職名、
解雇予告除外認定の申請をする旨等が記載されている。
解雇予告除外認定申請書案には、被処分者の所属、氏名、生年月日
及び雇用年月日、労働者の責に帰すべき事由等が記載されており、そ
のうち開示しないこととした部分は、被処分者の生年月日である。
施行文書の写しは、決裁を受けた後、教育委員会が町長に申請した
文書の写しであり、申請文及び解雇予告除外認定申請書で構成されて
いる。記載内容及び開示しないこととした部分は、解雇予告除外認定
の申請案及び解雇予告除外認定申請書案と同様である。
(エ) 文書 12「教員の処分について(平成 20 年 12 月 17 日起案)
」
当該文書は、処分内容を決定するために教育委員会が作成したもの
で、起案文、辞令案、処分事由説明書案、通知案、記者発表案及び施
行文書の写しのほか、副申、町教育長の鑑文、内申及び意見書で構成
されている。
起案文は、担当者が決裁を受けるための書類で、起案者氏名、標題、
決裁者等の印、伺い文等が記載されている。
辞令案は、懲戒処分を行う際に被処分者に交付する辞令の案として
作成されるもので、被処分者の所属、職名、氏名、発令事項等が記載
されている。
処分事由説明書案は、処分の事由を記載した説明書の案であり、被
処分者の所属、職名、氏名、処分内容、処分理由等が記載されている。
通知案は、懲戒処分について、県教育長が県教育事務所長に通知す
569
る案であり、被処分者の所属、職名、氏名、処分内容等が記載されて
いる。
記者発表案は、懲戒処分について、報道機関に公表するための案で
あり、被処分者の所属、職名、氏名、年齢、処分内容、処分理由等が
記載されている。
施行文書の写しは、決裁を受けた後、県教育長が県教育事務所長に
通知した文書の写しであり、通知文、辞令及び処分事由説明書で構成
されている。記載内容は、通知案、辞令案及び処分事由説明書案と同
様である。
副申及び内申は、前記ア(ウ)で述べたとおりのものであり、副申に
は、標題、町教育委員会から内申があったこと、県教育事務所長の意
見等が記載されており、そのうち開示しないこととした部分は、県教
育事務所長の意見である。
内申は町教育長の鑑文に添付されており、鑑文には標題、担当課名、
電話番号等が、内申には、被処分者の所属、職名及び氏名、町教育委
員会が内申した処分内容等が記載されており、そのうち開示しないこ
ととした部分は、町教育委員会が内申した処分内容である。
意見書には、標題、町教育委員会の意見等が記載されており、その
うち開示しないこととした部分は、町教育委員会の意見である。
(2) 条例第 7 条第 2 号該当性について
ア 本件行政文書のうち、今回不開示とした被処分者の学校の名称、氏名、
生年月日及び休暇の取得情報、相手方の住所、職業、氏名及び搬送され
た病院名、被処分者が所属する学校の校長の氏名及び印影、取材を受け
た報道機関の記者の姓、非違行為の発生場所並びに弁護士に関する情報
(以下「被処分者の学校の名称等」という。)は、個人に関する情報で
あって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合する
ことにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含
む。)である。
このうち、非違行為の発生場所については、当該発生場所が被処分者
の自宅であることから、非違行為の発生場所も、特定の個人を識別する
ことができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別
することができることとなるものを含む。)であるため、条例第 7 条第
2 号本文に該当する。
イ 本件行政文書のうち、被処分者の申立書(申立書記載内容の正誤を含
む。)及び遺族からの嘆願書は、被処分者自身や被害者の遺族が事故又
は非違行為の事実経過及び自らの心情を詳細に記載した文書であり、全
体として個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができ
るもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することが
570
できることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはでき
ないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあ
るものであるため、条例第 7 条第 2 号本文に該当する。
ウ 被処分者の学校の名称等、被処分者の申立書及び遺族からの嘆願書は、
人の生命等を保護するため公にすることが必要であると認められる情報
ではないため、条例第 7 条第 2 号ただし書ロには該当しない。
また、被処分者は公務員であるが、懲戒処分を受けたことは、職務
の遂行に係る情報ではないため、同号ただし書ハにも該当しない。さら
に、予算の執行を伴うものではないため、同号ただし書ニにも該当しな
い。
ところで、本件開示請求に係る懲戒処分はいずれも、実施機関が自ら
公表しているが、今回不開示とした被処分者の学校の名称等については、
公表していない。また仮に、被処分者の学校の名称等の情報が報道され
ており、一時的に公衆の知り得る状態に置かれていたとしても、当該情
報は、報道機関の独自の取材に基づき報道されたものであって、実施機
関自らが積極的に公表しているものではないことから、そのことをもっ
て、当該情報が慣行として公にされ又は公にすることが予定されている
情報に該当するとは認められない。したがって、被処分者の学校の名称
等は、同号ただし書イに該当しない。
エ 以上のことから、被処分者の学校の名称等、被処分者の申立書及び遺
族からの嘆願書は、条例第 7 条第 2 号に該当する。
(3) 条例第 7 条第 5 号該当性について
本件行政文書のうち、校長の意見、県教育事務所長の意見、市又は町
教育委員会が内申した処分内容及び市又は町教育委員会の意見(以下「校
長の意見等」という。)には、処分の量定等に関する県教育事務所長、市
町教育委員会又は校長としての意見が記載されており、処分を決定するた
めの審議、検討又は協議に関する情報であることから、校長の意見等が公
にされると、関係者の率直な意見の交換がなされなくなるおそれがあり、
これらの記録の形骸化が避けられなくなる。また、校長の意見等が公にさ
れると、関係者の意見等が十分入手できなくなるおそれがあり、教育委員
会の審議、検討等に必要不可欠な資料が提供されないことにより、教育委
員会の公正・中立的な審議、検討等に支障を及ぼし、県の意思決定に対す
る支障が生ずるおそれがある。
なお、本件の懲戒処分については、審議、検討等が終了し、意思決定
が行われているが、審議、検討等の過程が分かる情報が公になると、将来
予定される懲戒処分に係る審議、検討等に不当な影響を与えるおそれがあ
る。
したがって、校長の意見等は、条例第 7 条第 5 号に該当する。
571
(4) 条例第 7 条第 6 号該当性について
本件行政文書のうち、校長の意見等は、教員の任命権者である教育委員
会による任命権の行使という人事管理に係る事務に関する情報であって、
これを公にすることが前提になれば、関係者の率直な意見が得られず、作
成者である校長等も開示されることを意識した記述をせざるを得なくなる
ことから、非違行為の発生の際における諸般の事情を客観的に把握するこ
とができなくなるおそれがあるなど、人事管理上の事務に関し、公正かつ
円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある。
また、本件行政文書のうち、関係機関の意見が分かる部分は、関係機関
との信頼関係の下、非公表を前提に情報が提供されており、仮にこれを公
にすると当該機関との信頼関係が損なわれることから、今後、同様の事例
において必要な情報が十分に得られなくなることが考えられるため、人事
管理上の事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれが
ある。
以上のことから、校長の意見等及び関係機関の意見が分かる部分は、条
例第 7 条第 6 号に該当する。
(5) 同一の行政文書に対する開示請求に対する決定について
本件行政文書のうち、事案 1 及び事案 2 に係る、文書 1 から文書 8 まで
の文書については、審査会より、平成 21 年 12 月 15 日に、一部開示決定
処分は妥当である旨の答申(答申第 501 号)を受けている。
5
審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈・運用されなければならない。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、原則開示の理念に立って、条例を解釈し、以下判断するもので
ある。
(2) 本件行政文書について
一般職に属する地方公務員が地方公務員法第 29 条第 1 項各号に該当す
る場合においては、これに対して懲戒処分として戒告、減給、停職又は免
職の処分をすることができることとされている。市町村立小中学校職員に
ついては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和 31 年法律第
162 号)第 37 条第 1 項により、その任命権は都道府県教育委員会に属す
るものとされ、同法第 38 条第 1 項により、都道府県教育委員会は、市町
572
村教育委員会の内申をまって、任免その他の進退を行うものとされている。
また、労働基準法第 20 条第 1 項では、労働者の責に帰すべき事由に基
づいて労働者を解雇する場合は、解雇予告を行う義務又は解雇予告手当を
支払う義務はないとされているが、解雇が労働者の責に帰すべき事由に基
づくかどうかは、行政官庁の認定を受けなければならないものとされてい
る。
実施機関によれば、教育委員会が任命権を有する市町村立小中学校職員
が非違行為等を行った場合、まず、市町村教育委員会から速報及び当該職
員本人の申立書、所属長の意見書、遺族からの嘆願書等を添付した報告書
が、県教育事務所長を経由して県教育長に提出される。その後、市町村教
育委員会が意見書を添付して処分案を記載した内申が、県教育事務所長の
副申とともに県教育長に提出される。この内申をまって、教育委員会は処
分を決定し、記者発表を行う。また、処分が懲戒免職である場合は、市町
村長に解雇予告除外の認定を申請するとのことである。
本件行政文書は、この懲戒処分等の手続に係る行政文書のうち、平成
20 年度に教育委員会が行った 3 件の懲戒処分に関し作成又は取得した報
告文書、決裁文書等である。
その構成及び内訳は別表の 1 欄及び 2 欄に掲げるとおりであり、その記
載内容は前記 4(1)で実施機関が説明するとおりであると認められる。
実施機関は、別表の 3 欄に掲げる部分のうち、被処分者の学校の名称等、
被処分者の申立書及び遺族からの嘆願書を条例第 7 条第 2 号に該当すると
して、校長の意見等を同条第 5 号に該当するとして、校長の意見等及び関
係機関の意見が分かる部分を同条第 6 号に該当するとして不開示としてい
る。
(3) 条例第 7 条第 2 号該当性について
条例第 7 条第 2 号は、基本的人権を尊重する立場から、個人に関する情
報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照合す
ることにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。
以下同じ。)が記録されている行政文書は、不開示とすることを定めると
ともに、特定の個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を
害するおそれのある情報が記録されている行政文書についても、同様に不
開示とすることを定めたものである。
また、その一方で、ただし書イからニまでに規定された情報が記録され
ている行政文書については、条例の目的に照らし、原則開示と個人の権利
利益の最大限の尊重との調整を図ることにより、開示することとしたもの
である。
この考え方に基づき、本件行政文書のうち、今回不開示とした、被処分
者の学校の名称等、被処分者の申立書及び遺族からの嘆願書が同号に該当
573
するか否かを、以下検討する。
ア 条例第 7 条第 2 号本文該当性について
(ア)被処分者の学校の名称等は、個人に関する情報であって、特定の個
人を識別することができるものであると認められる。
このうち、非違行為の発生場所については、当該発生場所が被処分
者の自宅であることから、非違行為の発生場所も、特定の個人を識別
することができるものであると認められる。
また、校長の氏名及び印影は、被処分者を特定できることとなる情
報であることから、特定の個人を識別することができるものであると
認められる。
(イ) 被処分者の申立書は、被処分者自身が交通事故又は非違行為の事実
経過を詳細に説明し、自らの心情を綴ったものであり、遺族からの嘆
願書は、被害者の遺族が被害者の生活状況、事故の状況、被処分者に
対する心情等を綴ったものであり、いずれも全体として、特定の個人
を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできな
いが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあ
るものであると認められる。
(ウ) したがって、これらの情報は、条例第 7 条第 2 号本文に該当する。
イ 条例第 7 条第 2 号ただし書該当性について
本件開示請求に係る懲戒処分はいずれも、実施機関が自ら公表してい
るが、本件一部開示決定において不開示とした、被処分者の学校の名称
等については、公表していない。また仮に、被処分者の学校の名称等の
情報が報道されており、一時的に公衆の知り得る状態に置かれていたと
しても、当該情報は、報道機関の独自の取材に基づき報道されたもので
あって、実施機関自らが公表しているものではないことから、そのこと
をもって、当該情報が慣行として公にされ又は公にすることが予定され
ている情報に該当するとは認められない。したがって、被処分者の学校
の名称等、被処分者の申立書及び遺族からの嘆願書は、条例第 7 条第 2
号ただし書イに該当しない。
また、被処分者は公務員であるが、懲戒処分を受けたことは、被処分
者の職務遂行の内容に係る情報とは認められないことから、被処分者の
学校の名称等、被処分者の申立書及び遺族からの嘆願書は、同号ただし
書ハには該当しない。
さらに、被処分者の学校の名称等、被処分者の申立書及び遺族からの
嘆願書が同号ただし書ロ及びニに該当しないことは明らかである。
ウ 結論
以上により、被処分者の学校の名称等、被処分者の申立書及び遺族か
らの嘆願書は、条例第 7 条第 2 号に該当する。
574
(4) 条例第 7 条第 5 号該当性について
条例第 7 条第 5 号は、審議、検討又は協議に関する情報について、検討
途中の段階の情報を開示することの公共性を考慮してもなお、県や国等の
意思決定に対する支障が看過し得ない程度のものである場合には、当該審
議、検討又は協議に関する情報が記録されている行政文書は、不開示とす
ることを定めたものである。
この考え方に基づき、本件行政文書のうち、校長の意見等が同号に該当
するか否かを、以下検討する。
校長の意見等には、処分の量定等に関する県教育事務所長、市町教育委
員会又は校長としての意見が記載されていることから、処分を決定するた
めの審議、検討又は協議に関する情報であると認められ、当該部分が公に
されると、関係者の率直な意見が得られなかったり、また、その内容が形
骸化する等により、審議、検討等に必要不可欠な情報が提供されなくなる
おそれがあり、教育委員会の意思決定に支障を及ぼすおそれがあると認め
られる。
また、本件開示請求に係る懲戒処分については、いずれも審議、検討等
が終了し、意思決定が行われているが、審議、検討等の過程が分かる情報
が公になると、将来予定される懲戒処分に係る審議、検討等に不当な影響
を与えるおそれがあると認められる。
したがって、校長の意見等は、条例第 7 条第 5 号に該当する。
(5) 条例第 7 条第 6 号該当性について
条例第 7 条第 6 号は、県の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共
団体若しくは地方独立行政法人が行う事務事業は、公益に適合するよう適
正に遂行されるものであるが、これらの事務事業に関する情報の中には、
公にすることにより、当該事務事業の性質上、その適正な遂行に支障を及
ぼすおそれがあるものが含まれるため、これらの情報が記録された行政文
書は不開示とすることを定めたものである。
この考え方に基づき、校長の意見等及び関係機関の意見が分かる部分が
同号に該当するか否かを、以下検討する。
前記(4)で述べたとおり、校長の意見等を公にすることになれば、教育
委員会における審議、検討等に支障を及ぼしたり、不当な影響を与えるお
それがあり、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支
障を及ぼすおそれがあると認められる。
また、関係機関の意見が分かる部分を公にすることになれば、当該機関
との信頼関係が損なわれ、今後、同様の事例において必要な情報が十分に
得られなくなるおそれがあることから、人事管理に係る事務に関し、公正
かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
したがって、校長の意見等及び関係機関の意見が分かる部分は、条例第
575
7 条第 6 号に該当する。
(6) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
576
別表
事
案
1
1 行政文書
文書 1
交通事故速報
文書 2
交通事故報告
書について
文書 3
教員の処分に
ついて(平成
20 年 8 月 16
日起案)
3
2 内 訳
実施機関が開示しないことと
した部分
被処分者の学校の名称及び氏
名、校長の氏名並びに相手方の
住所、職業、氏名及び搬送され
た病院名
県教育事務所長の なし
鑑文
交通事故速報
被処分者の学校の名称及び氏
名、校長の氏名並びに相手方の
住所、職業、氏名及び搬送され
た病院名
交通事故報告書
被処分者の学校の名称及び氏名
並びに相手方の住所、氏名及び
搬送された病院名
県教育事務所長の 被処分者の学校の名称及び氏名
鑑文
被処分者の申立書 すべて
校長意見書
被処分者の学校の名称並びに校
長の氏名、印影及び意見
遺族からの嘆願書 すべて
起案文
なし
辞令案
被処分者の学校の名称及び氏名
処分事由説明書案 被処分者の学校の名称及び氏名
通知案
被処分者の学校の名称及び氏名
記者発表案
なし
施行文書の写し
被処分者の学校の名称及び氏名
副申
県教育事務所長の意見
内申
被処分者の学校の名称及び氏名
並びに市教育委員会が内申した
処分内容
意見書
被処分者の学校の名称及び氏名
並びに市教育委員会が内申した
処分内容及び意見
577
事
案
2
1 行政文書
3
2 内 訳
実施機関が開示しないことと
した部分
文書 4
被処分者の学校の名称及び氏名
教員の処分に
並びに校長の氏名
ついて(平成
20 年 8 月 22
日付け)
文書 5
被処分者の生年月日及び休暇の
非違行為に関
取得情報並びに取材を受けた報
する速報
道機関の記者の姓
文書 6
県教育事務所長の なし
非 違 行 為 報 告 鑑文
書について
町教育長の鑑文
なし
校長の鑑文
なし
非違行為報告書
被処分者の生年月日
被処分者の申立書 すべて
校長の意見書
校長の意見
町教育長名の被処 記載内容の正誤
分者の申立書の訂
正文
起案文
なし
文書 7
教 員 の 人 事 に 解雇予告除外認定 なし
つ い て ( 平 成 の申請案
20 年 8 月 7 日 解雇予告除外認定 被処分者の生年月日
起案)
申請書案
施行文書の写し
被処分者の生年月日
起案文
なし
文書 8
教 員 の 処 分 に 辞令案
なし
つ い て ( 平 成 処分事由説明書案 なし
20 年 8 月 11 通知案
なし
日起案)
記者発表案
なし
施行文書の写し
なし
副申
県教育事務所長の意見
町教育長の鑑文
なし
内申
町教育委員会が内申した処分内
容
意見書
町教育委員会の意見
578
事
案
3
1 行政文書
文書 9
非違行為に関
する速報
文書 10
職員の非違行
為について
文書 11
教員の人事に
ついて(平成
20 年 12 月 3
日起案)
文書 12
教員の処分に
ついて(平成
20 年 12 月 17
日起案)
3
2 内 訳
実施機関が開示しないことと
した部分
被処分者の生年月日、非違行為
の発生場所、弁護士に関する情
報及び関係機関の意見が分かる
部分
県教育事務所長の なし
鑑文
町教育委員会の鑑 なし
文
非違行為報告書
被処分者の生年月日、非違行為
の発生場所及び関係機関の意見
が分かる部分
被処分者の申立書 すべて
校長の意見書
非違行為の発生場所及び校長の
意見
起案文
なし
解雇予告除外認定 なし
の申請案
解雇予告除外認定 被処分者の生年月日
申請書案
施行文書の写し
被処分者の生年月日
起案文
なし
辞令案
なし
処分事由説明書案 なし
通知案
なし
記者発表案
なし
施行文書の写し
なし
副申
県教育事務所長の意見
町教育長の鑑文
なし
内申
町教育委員会が内申した処分内
容
意見書
町教育委員会の意見
579
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.
2.22
諮問
23.
6.24
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
6.29
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 7.19
(第 333 回 審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 8.31
(第 337 回 審 査 会 )
審議
23.11. 4
(第 342 回 審 査 会 )
審議
580
資料2※
答申第 588 号
諮問第 947 号
件名:職員会議等で配付された文書等の不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が、別記に掲げる文書
(以下「本件請求対象文書」という。)について、不存在を理由として不開
示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 21 年 10 月 15 日付けで愛
知県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」とい
う。)に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 29 日付けで行っ
た不開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、概ね次のとおりである。
ア 異議申立書における主張
開示請求に係る行政文書を作成又は取得している。
イ 意見書における主張
(ア) 職員会議校内各種部会、委員会研究会で配布された文書及び議事録
については、文書を保有していると主張する。
県立高校は、高等学校教育課が必要とする文書を提出する。例えば、
県立高校生徒、教師が事件で逮捕された場合、生徒、教師の自殺、刑
事事件の被害者になった場合、風水害の被害を被った場合を想定する
と、県立高校は、関係する文書を作成して、高等学校教育課に提出す
る。提出する文書は、職員会議、校内部会、委員会で配布される。
高等学校教育課が開示請求に係る文書は存在しないと主張する場合
は、県立高校が文書を提出する必要がないと明言する必要がある。議
論は、職員会議等で配布された文書を県立高校が提出したかどうかで
ある。文書の提出を求めていないことと、県立高校が文書の提出をす
ることは別の問題である。異議申立人が例示した案件は、文書提出の
必要はあると考える。
(イ) 裁判に関する文書一式については、文書を保有していると主張する。
裁判に関する文書一式は、教育委員会に提起された裁判に限定され
581
ていない。開示請求文書には、教育委員会が被告になった場合との記
載がない。原告になった場合も含まれると解するべきである。さらに、
裁判に関する文書一式の意味を、裁判上の原告、又は被告になった場
合にも限定する必要はない。保有する裁判資料の全部を対象として開
示等の判断をする必要がある。
事件、事故に関するものは、裁判の当事者でなくても、裁判所に書
類を提出する場合がある。裁判に提出されることを了解して、学校が
文書の作成をする場合がある。刑事事件について、公的機関が文書を
作成することがある。文書探索の範囲が意図的に限定されて、開示不
開示の判断をするうえで十分な、必要とされる文書に対する探索がな
されていない。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
ア 別記文書 1(以下「文書 1」という。
)について
愛知県立学校管理規則(昭和 32 年愛知県教育委員会規則第 9 号。以
下「管理規則」という。)第 13 条の 2 第 1 項の規定により、校長の職務
の円滑な執行に資するため、県立高等学校に職員会議を置くこととされ、
同条第 2 項の規定により、職員会議は、校長が招集し、その運営を管理
することとされている。仮に、高等学校教育課の職員による会議がもし
行われたとしても、職員会議と称することはない。また、管理規則第
13 条において、校長は、校務分掌に関する組織を定め、所属職員に分
掌を命じ、校務を処理することとされていることを受け、県立高等学校
において校務を処理するために各種部会、委員会及び研究会が開催され
ている。
したがって、文書 1 は、各県立高等学校で行われる職員会議、各種部
会、委員会及び研究会(以下「職員会議等」という。)で配付された文
書及び議事録のうち、高等学校教育課で管理しているものであると解し
た。
イ 別記文書 2(以下「文書 2」という。
)について
愛知県教育委員会事務局組織規則(昭和 39 年愛知県教育委員会規則
第 9 号)第 6 条第 5 項の規定により、高等学校教育課の所管事務は、高
等学校の教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること等と
されている。また、愛知県が当事者となり、教育委員会が訴訟事務を行
う裁判のうち、同課の所管事務に関するものについては、同課が関与す
る。
582
よって、文書 2 は、愛知県が当事者となり、教育委員会が訴訟事務を
行う裁判であって、高等学校教育課が関与するもののうち、平成 20 年
4 月 1 日から本件開示請求書を受理した日までに結審したものに関して
同課が作成又は取得した文書であると解した。
(2) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 について
前記(1)で説明したとおり、管理規則により、職員会議は、校長が招
集し、その運営を管理することとされている。また、管理規則において、
校長が、校務分掌に関する組織を定め、所属職員に分掌を命じ、校務を
処理することとされていることを受け、校務を処理するために各種部会、
委員会及び研究会が開催されている。
よって、県立高等学校の職員会議等の配付資料又は議事録は各県立高
等学校が作成するものであり、高等学校教育課が職員会議等の配付資料
として何らかの文書を作成することはない。また、職員会議等は、各県
立高等学校における校務の処理のために開催されるものであり、学校内
の事項を取り扱うものであるため、同課がその内容を逐一把握する必要
性はないことから、各県立高等学校に提出を求めてはいない。したがっ
て、同課では文書 1 を作成又は取得しておらず、不開示とした。
なお、異議申立人は、意見書において、いくつかの事例をあげて、県
立高等学校がそれらの事例に関係する文書を作成して高等学校教育課に
提出すること、そして、同課に提出する文書は、職員会議等で配付され
ることを主張している。
確かに、教育委員会では、異議申立人が例示する事故等が発生した場
合においては、各教育機関の長等は、教育長通知に基づく所定の様式に、
事故の内容を記載のうえ主務課室長へ報告することとされている。高等
学校教育課においても、県立高等学校生徒が事件で逮捕された場合や風
水害等事故のうち教科書関係の被害があった場合等は、報告を受けるこ
ととなる。しかしながら、これらの報告書は、通常、職員会議等で配付
されるものではない。仮に、これらの報告書の中に職員会議等で配付さ
れた資料が存在したとしても、通常、高等学校教育課に提出された文書
を見ただけでは配付されたか否かを判別することはできない。そのよう
な文書を特定するためには、各県立高等学校が保管する文書と照合する
作業が必要となり、作業量は膨大なものとなる。本件開示請求からは、
そのような内容の請求であると読み取ることはできない。
イ 文書 2 について
教育委員会においては、裁判に関する事務については、教職員課が所
管しており、高等学校教育課では所管していないが、高等学校教育課が
所管する事務(高等学校の教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導
583
に関すること等)に関する裁判については、同課においても当該裁判に
関与することとなり、裁判に関する文書等を作成又は取得することとな
る。
しかし、愛知県が当事者となり、教育委員会が訴訟事務を行う裁判で
あって、高等学校教育課が関与するもののうち、平成 20 年 4 月 1 日か
ら本件開示請求書を受理した日までに結審したものは存在しなかった。
また、高等学校教育課の職員が刑事事件に関与した場合等には、当該
事件等に係る裁判に関する文書を作成又は取得することも想定されるこ
とから、同課が管理する行政文書を調査し、該当する文書がないか探索
をしたが、存在しなかった。
以上により、文書 2 を作成又は取得していないことから、不開示とし
た。
異議申立人は、意見書において、裁判に関する文書一式の意味を裁判
上の原告又は被告になった場合に限定する必要はなく、高等学校教育課
が保有する裁判資料の全部を対象として開示等の判断をする必要がある
こと及び裁判の当事者でなくても、裁判所に書類を提出する場合があり、
裁判に提出されることを了解して、学校が文書の作成をする場合がある
ことを主張している。しかし、そのような文書を確認するためには同課
で保管する文書すべての探索が必要となる。そのような請求内容では文
書の特定が不十分であり、異議申立人の主張は合理性に欠けるものであ
る。
4
審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
ア 文書 1 について
(ア) 文書 1 は、本件開示請求書の文言からすれば、職員会議等で配付さ
れた文書及び議事録のうち、高等学校教育課で管理しているものであ
ると認められる。
(イ) ところで、異議申立人は、意見書において、県立高等学校生徒、教
師が事件で逮捕された場合や風水害の被害を被った場合などの、いく
つかの事例をあげて、県立高等学校がそれらの事例に関係する文書を
584
作成して高等学校教育課に提出すること及び提出する文書は職員会議
等で配付されることを主張している。
確かに、高等学校教育課に提出された文書の中には、職員会議等で
配付された文書が存在している可能性があり、同課に提出された文書
と各県立高等学校で保管する職員会議等の配付資料及び議事録を突き
合わせて特定する方法も考えられる。しかし、このような突き合わせ
作業は、約 150 校ある県立高等学校の職員会議等で配付された文書と
いう、膨大な文書との照合を行わなければならない作業であり、実施
機関に通常求められる文書の特定作業とは異なる、特別の作業である
と認められる。
条例は、このような特別の作業を行うことまでを実施機関に義務づ
けているものではない。
したがって、異議申立人が意見書で述べたような、突き合わせ作業
によらなければ特定できない文書は、請求対象とはならないと解され
る。
イ 文書 2 について
実施機関は、文書 2 について、愛知県が当事者となり、教育委員会が
訴訟事務を行う裁判であって、高等学校教育課が関与するもののうち、
平成 20 年 4 月 1 日から本件開示請求書を受理した日までに結審した裁
判に関して作成又は取得した文書と解したとのことである。また、実施
機関によれば、教育委員会においては、裁判に関する事務は、教職員課
が所管しており、高等学校教育課では所管していないとのことである。
これに対し、異議申立人は、「裁判に関する文書一式の意味を、裁判
上の原告、又は被告になった場合にも限定する必要はない。保有する裁
判資料の全部を対象として、開示等の判断をする必要がある。事件、事
故に関するものは、裁判の当事者でなくても、裁判所に書類を提出する
場合がある。裁判に提出されることを了解して、学校が文書の作成をす
る場合がある。刑事事件について、公的機関が文書を作成することがあ
る。」と主張しているため、実施機関が前記のとおり解釈した点に誤り
がないか検討する。
確かに、教育委員会が訴訟事務を行わない裁判に関しても、県立高等
学校において発生した事件、事故等又は刑事事件について、裁判所に提
出する資料として高等学校教育課が何らかの文書を作成することが全く
想定できないわけではない。しかし、本件開示請求書には「(結審年度
が H20 年度~H21 年度)」とあり、結審年度がわかる裁判に関する文書
を求めているところ、裁判の当事者以外の者は、結審の時期を把握して
いないことが通常であるため、本件開示請求書の文言からは、異議申立
人の主張するような文書を請求するものとは読み取れない。よって、実
585
施機関が本件開示請求における「裁判」とは、愛知県が当事者となり、
教育委員会が訴訟事務を行う裁判のことをいうと解したことは不合理で
はない。
また、文書 2 の請求には高等学校教育課と明記されている。同課が教
育委員会における裁判に関する事務を所管していないことを考慮すると、
実施機関が、本件開示請求における「裁判」とは、愛知県が当事者とな
り、教育委員会が訴訟事務を行う裁判のうち、同課が関与するもののみ
をいうと解したことは不合理ではない。
したがって、実施機関が文書 2 を、愛知県が当事者となり、教育委員
会が訴訟事務を行う裁判であって、高等学校教育課が関与するもののう
ち、平成 20 年 4 月 1 日から本件開示請求書を受理した日までに結審し
た裁判に関して作成又は取得した文書と解した点に誤りはないものと認
められる。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 について
実施機関によれば、文書 1 は、各県立高等学校で作成しており、高等
学校教育課が職員会議等の配付資料として何らかの文書を作成すること
はないとのことである。また、職員会議等は各県立高等学校における校
務の処理のために開催されるものであり、同課がその内容を逐一把握す
る必要性はないため、各県立高等学校に提出を求めてもいないことから、
同課では文書 1 を取得していないとのことである。
職員会議等はいずれも県立高等学校内における校務の処理のために設
置される内部組織であると認められるから、それらの会議で配付される
文書及び議事録は、通常各県立高等学校で作成するものと考えられる。
また、県立高等学校は約 150 校あり、職員会議等は相当な頻度で開催
されるから、県内における職員会議等の配付資料及び議事録の全体量は
膨大なものとなるうえ、その内容は各県立高等学校内部の事務に関する
ものがほとんどであると考えられることから、高等学校教育課がそれら
の資料を常に収集し、職員会議等の内容を逐一把握しておく必要性は低
いと考えられる。よって、同課が、文書 1 の提出を求めていないとして
も不自然ではない。
以上により、文書 1 を作成又は取得しておらず、当該文書は不存在で
あるとした実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点があるとは認め
られない。
イ 文書 2 について
実施機関によれば、教育委員会においては、裁判に関する事務は、教
職員課が所管しており、高等学校教育課では所管していないが、高等学
校教育課が所管する事務(高等学校の教育課程、学習指導、生徒指導及
586
び職業指導に関すること等)に関する裁判については、同課においても
当該裁判に関与し、文書等を作成又は取得することとなるとのことであ
る。しかし、愛知県が当事者となり、教育委員会が訴訟事務を行う裁判
であって、同課が関与したもののうち、平成 20 年 4 月 1 日から本件開
示請求書を受理した日までに結審した裁判は存在しないため、文書 2 を
作成又は取得していないとのことである。
実施機関においては、教育委員会が行った処分に対する取消請求事件
や、学校での事故等による損害賠償請求事件など、当事者が愛知県であ
って、教育委員会が訴訟事務を行う裁判のうち、平成 20 年度及び平成
21 年度に係属した事件の一覧(以下「事件一覧」という。)を作成して
いる。
当審査会において、実施機関から事件一覧の提出を受けてこれを見分
したところ、事件一覧には、高等学校教育課が所管する事務に関する裁
判は存在しないことが認められた。
さらに、実施機関は、高等学校教育課の職員が刑事事件に関与した場
合等には、当該事件に係る裁判に関する文書を作成又は取得することも
想定されるため、同課が管理する行政文書を調査し、該当する文書がな
いか探索をしたが、存在しなかったとのことである。
よって、文書 2 を作成又は取得しておらず、当該文書は不存在である
とした実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点があるとは認められ
ない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
別記
高等学校教育課分
文書 1 職員会議、校内各種部会、委員会及び研究会で配付された文書及
び議事録 H20 年度及びH21 年度
文書 2 裁判に関する文書一式(結審年度がH20 年度及びH21 年度)
587
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22. 7. 30
諮問
2 2 . 9 . 1 0
実施機関から不開示理由説明書を受理
2 2 . 9 . 1 5
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
2 2 . 9 . 1 7
異議申立人から不開示理由説明書に対する意見書を受理
2 3 . 6 . 3
(第 329 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 9. 29
(第 339 回審査会)
審議
23.10.31
(第 341 回審査会)
審議
588
答申第 589 号
諮問第 949 号
件名:計画変更確認申請書及び添付資料の一部開示決定に関する件(第三者異
議申立て)
答
申
1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。)が、特定の計画変更確認申請書及び
添付資料(以下「本件行政文書」という。)の一部開示決定において、別記
に掲げる部分を除いた部分を開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成 22 年 4 月 14 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、知事が開示請求者に対して同年 5 月 28
日付けで行った一部開示決定(以下「本件一部開示決定」という。)を取
り消し、本件行政文書の全部不開示を求めるというものである。
知事は、本件行政文書に異議申立人に関する情報が記録されていること
から、条例第 15 条第 1 項の規定に基づき、異議申立人に対して意見書を
提出する機会を与えた上で、本件一部開示決定を行い、同時に、異議申立
人に対して同条第 3 項の規定に基づき、本件行政文書のうち一部を開示と
する旨の通知をしたところ、本件一部開示決定の取消しを求める本件異議
申立てが提起されたものである。
なお、本件異議申立ての提起とともに本件行政文書の一部開示について
執行停止の申立てがなされたため、知事は一部開示の執行停止を決定し、
開示請求者及び異議申立人に対し、同年 6 月 11 日付けで、本件異議申立
てに係る決定に至るまで開示を停止する旨の通知をした。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、概ね次のとおりである。
ア 異議申立書における主張
民事及び刑事係争中のため
イ 意見陳述における主張
開示請求者は、同業者であるとわかっている。この 2 年ほど、いろい
ろないきさつがあり、その人には見せたくない。相手には全然迷惑をか
けていない。見たいという意図がわからない。仮に隣の家の人が見たい
589
というのなら、それなりに納得するのだが。
3 実施機関の主張要旨
(1) 建築確認について
建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)第 6 条第 1 項の規定において、
建築主は建築物を建築しようとする場合、その計画が建築基準関係規定に
適合するものであることについて、確認申請書を提出して建築主事の確認
を受け、確認済証の交付を受けなければならないとされている。また、当
該確認を受けた建築物の計画の変更をして、建築物を建築しようとする場
合も同様とすると規定されている。
(2) 建築計画概要書及び処分等概要書の閲覧について
建築計画概要書は、建築確認又は計画変更確認の申請を行う者が作成す
るもので、建築確認又は計画変更確認の申請を行う際に建築確認申請書類
とともに提出されるものである。処分等概要書は、建築確認等の内容が記
載され、建築主事が作成する。建築基準法第 93 条の 2 及び建築基準法施
行規則(昭和 25 年建設省令第 40 号)第 11 条の 4 において、建築計画概
要書及び処分等概要書を閲覧に供さなければならない旨が定められており、
所管の各建設事務所において閲覧に供されている。計画変更確認申請があ
った場合は、変更前の建築計画概要書についても閲覧に供しており、数度
の計画変更確認があった場合は、その都度建築計画概要書が作成され、そ
のいずれもが閲覧に供される。本件行政文書に関して作成された建築計画
概要書においては、第一面に建築主等の概要が記載されており、建築主の
氏名及び住所、代理者、設計者、工事監理者及び工事施工者の登録又は許
可の番号及び氏名並びに事務所又は営業所の名称、登録番号、所在地及び
電話番号、設計者の作成した設計図書、工事監理者が工事と照合する設計
図書、建築物の名称及び工事名等が記載されている。第二面には、建築物
及びその敷地に関する事項が記載されており、主なものとして、敷地の地
名地番、用途地域、道路幅員、接道部分の長さ、敷地面積、主要用途、工
事種別、建築面積、建ぺい率、申請部分及び申請以外の部分の延べ面積、
容積率、建築物の数、最高の高さ、階数及び構造、建築基準法第 56 条第 7
項の規定による特例の適用の有無(以下、単に「特例の適用の有無」とい
う。)、確認済証の番号及び交付年月日、計画変更確認済証の番号及び交付
年月日、工事予定年月日、計画変更の概要等が記載されている。第三面に
は、付近見取図及び建物配置図が記載され、建築物の寸法及び軒高、各敷
地境界線種別、敷地及び隣地のレベル、前面道路の種類及び幅員、浄化槽
の型式及び配置等が記載されている。また、本件行政文書に関して作成さ
れた処分等概要書においては、建築確認及び検査の処分概要が記載されて
おり、主なものとして、確認済証の交付者、番号及び交付年月日、検査日、
590
検査済証の交付者、番号及び交付年月日等が記載されている。
(3) 本件行政文書の内容及び一部開示することとした理由について
本件行政文書は、建築主により、愛知県(以下「県」という。)の建築
主事に申請された計画変更確認申請書及び添付資料である。
ア 計画変更確認申請書(建築物)
(第一面)
当該文書は計画変更確認申請書の鑑文である。
当該文書には、標題、申請文、あて名、申請年月日、建築主及び設計
者の氏名及び印影、計画を変更する建築物の直前の確認における確認済
証の番号、交付年月日及び交付者の氏名、計画変更の概要、申請受付機
関に係る受付印、県収入証紙及び消印、関係消防機関の同意文及び印影、
決裁欄の印影、確認済証の番号及び交付年月日、建設事務所及び建築指
導課の受付印等が記載されている。
このうち、確認済証交付者の氏名及び決裁欄の印影については個人識
別情報であるため条例第 7 条第 2 号本文には該当するものの、職務の遂
行に係る公務員の氏名であり、同号ただし書ハに該当するため開示とし
た。また、建築主及び設計者の氏名、計画を変更する建築物の直前の確
認における確認済証(計画変更確認済証)の番号及び交付年月日、計画
変更の概要並びに確認済証の番号及び交付年月日については、前記(2)
で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報である
ため開示とした。これらを除いた部分のうち建築主及び設計者の印影を
除いた部分については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又は
ノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争
上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開
示とした。
建築主及び設計者の印影については、同号に該当するため不開示とし
た。
イ 確認申請書(建築物)の追加資料
当該文書には、標題、日付、あて名、追加資料を提出する旨の文言、
建築主及び設計者の氏名及び印影、敷地の地名地番、建築物の名称、主
要用途、工事種別、受理日欄、受付印並びに追加説明が記載されている。
このうち、建築主及び設計者の氏名、敷地の地名地番、建築物の名称、
主要用途並びに工事種別については、前記(2)で述べたとおり、法令の
定めるところにより公にされている情報であるので開示とした。標題、
日付、あて名、追加資料を提出する旨の文言、受理日欄及び受付印につ
いては、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該
当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他
正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
建築主及び設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するも
591
のとして不開示とした。また、追加説明は、同条第 3 号イに該当するも
のとしてすべて不開示とした。
ウ 構造耐力規定に関する既存不適格調書
当該文書は、増築等に係る既存建築物に対する構造耐力規定(建築基
準法第 20 条)の緩和規定(建築基準法第 86 条の 7 及び建築基準法施行
令(昭和 25 年政令第 338 号)第 137 条の 2)の適用にあたり、既存建築
物の概要について、建築主及び調査者(設計者)が建築主事に報告する
ものであり、日付、標題、あて名、建築主の氏名及び印影、設計者の住
所(事務所の所在地)、資格、氏名、印影及び電話番号(事務所の電話
番号)並びに以下の(ア)から(ク)までが記載されている。
(ア) 増築等に係る部分の概要
(イ) 既存不適格建築物の概要
(ウ) 設計図書等の有無
(エ) 新築又は増築等の時期を示す書類
(オ) 基準時以前の建築基準関係規定の適合
(カ) 構造耐力規定の緩和条件
(キ) 安全確認の方法
(ク) 総合所見
このうち、建築主の氏名並びに設計者の資格(登録番号)及び氏名並
びに事務所の所在地及び電話番号については、前記(2)で述べたとおり、
法令の定めるところにより公にされている情報であるので開示とした。
日付、標題及びあて名については、異議申立人等の事業に関する内部管
理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の
権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められ
るため、開示とした。
建築主及び設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するも
のとして不開示とした。また、(ア)から(ク)までについては、同条第 3 号
イに該当するものとしてすべて不開示とした。
エ 耐震診断等報告書
当該文書は、増築に係る既存不適格部分の建築部分について、新耐震
基準の適合性により、地震に対して構造耐力上安全であることを設計者
が調査・確認した旨の報告書であり、条例第 7 条第 2 号又は同条第 3 号
イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
オ 基礎施工図
当該文書は、新規に設ける基礎等の詳細図であり、条例第 7 条第 3 号
イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
カ 工事施工写真
当該文書は、基礎工事における既設部分の確認のための記録写真、説
592
明等であり、条例第 7 条第 3 号イに該当するものとして、その全部を不
開示とした。
キ FAX 送信票
当該文書は、建築指導課から設計者に対し確認申請における訂正事項
を送付する際の送信票であり、標題、日付、設計者の氏名、建築指導課
の所在地、電話番号、ファクシミリ番号及び担当者名、送付文、件名、
建築主の氏名、本文、追加説明書の様式のダウンロード先アドレス、確
認審査における指摘事例集の掲載先アドレス等が記載されている。
このうち、建築主及び設計者の氏名については、前記(2)で述べたと
おり、法令の定めるところにより公にされている情報であり、また、こ
れらを除いた部分についても、県のウェブサイト等において公にされて
いる情報が主であり、公にしても異議申立人等の正当な利益を害すると
は認められないことから、当該文書はその全部を開示とした。
ク 建築基準法第 6 条第 13 項の規定による適合するかどうかを決定する
ことができない旨の通知書
当該文書は、建築主事が申請書の記載によっては建築基準関係規定に
適合するかどうかを決定することができない等の旨及びその理由を記載
した通知書である。当該文書には、標題、文書番号、日付、建築主及び
建築主事の氏名、本文、申請年月日、建築場所、建築主事による指摘内
容、備考等が記載されている。
このうち、建築主事の氏名については個人識別情報であるため条例第
7 条第 2 号本文に該当するものの、職務の遂行に係る公務員の氏名であ
り、同号ただし書ハに該当するため、開示とした。また、建築主の氏名
及び建築場所(敷地の地名地番)については、前記(2)で述べたとおり、
法令の定めるところにより公にされている情報であるので開示とした。
さらに、これらを除いた部分のうち、建築主事による指摘内容を除いた
部分については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハ
ウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地
位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示とし
た。
建築主事による指摘内容については、同条第 3 号イに該当するものと
して不開示とした。
ケ 現地調査票
当該文書は、申請地について、確認申請を受け付けた市により作成さ
れたものである。当該文書は、標題、受付日付及び番号、申請書の種類、
建築主の氏名、建築場所、建築用途、敷地周辺の状況、地域地区関係、
都市計画法関係、その他法令、申請地に接する道路関係、道路占用公共
用物許可等、環境関係、農地法関係、下水道関係、申請手数料、調査票
593
作成者の氏名及び印影、各調査事項における調査担当の印影、関係各課
における決裁時の印影等が記載されている。
このうち、調査票作成者の氏名及び印影、各調査事項における調査担
当の印影並びに関係各課における決裁時の印影については、個人識別情
報であるため条例第 7 条第 2 号本文に該当するものの、職務の遂行に係
る公務員の氏名であり、同号ただし書ハに該当する。また、建築主の氏
名、建築場所(敷地の地名地番)及び建築用途(主要用途)については、
前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情
報である。さらに、敷地周辺の状況、地域地区関係、都市計画法関係、
その他法令、申請地に接する道路関係、農地法関係及び下水道関係につ
いては、公的施設において誰もが取得できる情報である。これらを除い
た部分については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウ
ハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の
地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められる。以上により、
当該文書はその全部を開示とした。
コ 確認申請書(第二面~第五面)
当該文書は、確認申請書の一部であり、以下の(ア)から(エ)までの文書
で構成されている。
(ア) 第二面
当該文書には、建築主等の概要が記載されており、建築主の氏名、
住所及び電話番号、代理者、設計者、工事監理者及び工事施工者の登
録又は許可の番号及び氏名並びに事務所又は営業所の名称、所在地及
び電話番号、設計者の作成した設計図書、工事監理者が工事と照合す
る設計図書並びに建築物の名称及び工事名が記載されている。
このうち、建築主の氏名及び住所、代理者、設計者、工事監理者及
び工事施工者の登録又は許可の番号及び氏名並びに事務所又は営業所
の名称、所在地及び電話番号、設計者の作成した設計図書、工事監理
者が工事と照合する設計図書並びに建築物の名称及び工事名(工事種
別)については、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところによ
り公にされている情報であるので開示とした。
建築主の電話番号については、条例第 7 条第 2 号に該当するものと
して不開示とした。
(イ) 第三面
当該文書には、建築物及びその敷地に関する事項が記載されており、
敷地の地名地番、用途地域、道路幅員、接道部分の長さ、敷地面積の
概要、主要用途、工事種別、建築面積、建ぺい率、延べ面積、容積率、
建築物の数、最高の高さ、階数及び構造、特例の適用の有無、確認済
証の番号及び交付年月日、計画変更確認済証の番号及び交付年月日、
594
工事予定年月日、計画変更の概要並びに設計者の印影が記載されてい
る。
このうち、設計者の印影を除いた情報は、前記(2)で述べたとおり、
法令の定めるところにより公にされている情報であるので開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして
不開示とした。
(ウ) 第四面
当該文書には、建築物別概要が記載されており、建物用途、工事種
別、建築物の構造、耐火建築物、建築物の階数、最高の高さ及び軒高、
建築設備の種類、確認の特例、床面積、屋根、外壁及び軒裏の仕様、
居室の床の高さ、便所の種類、計画変更の概要並びに設計者の印影が
記載されている。
このうち、建物用途(主要用途)、工事種別、床面積(延べ面積)、
建築物の構造、階数、最高の高さ及び軒高並びに計画変更の概要につ
いては、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にさ
れている情報であるので開示とした。屋根、外壁及び軒裏の仕様につ
いては、一般の者が視認することが可能であり、当該部分の仕様、寸
法等はおおよそ推定できるものと認められるため、開示とした。耐火
建築物、建築設備の種類、確認の特例、居室の床の高さ及び便所の種
類については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハ
ウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の
地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示
とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして
不開示とした。
(エ) 第五面
当該文書は、建築物の階別概要が記載されており、階の高さ、居室
の天井の高さ、用途別床面積、計画変更の概要、設計者の印影等が記
載されている。
このうち、計画変更の概要については、前記(2)で述べたとおり、
法令の定めるところにより公にされている情報であるので開示とした。
計画変更の概要を除いた部分のうち、設計者の印影を除いた部分につ
いては、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには
該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位そ
の他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして
不開示とした。
サ 委任状
595
当該文書は、建築主が代理人を定め、建築確認申請手続を委任するこ
とを証明するものであり、標題、日付、委任する旨の文言、代理人の資
格及び氏名並びに事務所の名称、建築士事務所登録番号、所在地及び電
話番号、建築主の氏名、印影、住所及び電話番号、敷地の地名地番、主
要用途、工事種別並びに委任事項が記載されている。
このうち、代理人(設計者)の資格(登録番号)及び氏名並びに事務
所の名称、建築士事務所登録番号、所在地及び電話番号、建築主の氏名
及び住所、敷地の地名地番、主要用途並びに工事種別については、前記
(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報で
あるので開示とした。標題、日付、委任する旨の文言及び委任事項につ
いては、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該
当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他
正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
建築主の印影及び電話番号については、条例第 7 条第 2 号に該当する
ものとして不開示とした。
シ 変更図面
当該文書は確認申請書の添付図書である。
当該文書には、以下の(ア)から(カ)までの文書が含まれるが、共通事項
として、日付、建築物の名称、工事種別、図面名称、縮尺並びに設計者
の氏名、印影及び建築士登録番号並びに事務所の名称、所在地、電話番
号、ファクシミリ番号及びメールアドレスが記載されている。
このうち、建築物の名称、工事種別並びに設計者の氏名及び建築士登
録番号並びに事務所の名称、所在地及び電話番号については、前記(2)
で述べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報である
ため開示とした。日付、図面名称、縮尺並びに設計者の事務所のファク
シミリ番号及びメールアドレスについては、異議申立人等の事業に関す
る内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすることにより異議申
立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと
認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして、
不開示とした。
以下、(ア)から(カ)までの説明においては、上記共通事項を除いた部分
についてのみ述べることとし、「全部を開示」又は「全部を不開示」と
いう場合の「全部」には上記共通事項で開示又は不開示とした部分は含
まれないものとする。
(ア) 配置図
当該文書は、敷地における申請建物、増築部分及び浄化槽の配置図
であり、方位、凡例、建物配置図(建築物の寸法及び軒高、各敷地境
596
界線種別、敷地及び隣地のレベル、前面道路の種類及び幅員、浄化槽
の型式及び配置、建築物の最高の高さ等)、設計者の印影、敷地面積、
建築面積、各階床面積、延床面積、建ぺい率、容積率等が記載されて
いる。
このうち、建物配置図、敷地面積、建築面積、各階床面積(申請部
分及び申請以外の部分の延べ面積)、延床面積(延べ面積)、建ぺい率
及び容積率については、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるとこ
ろにより公にされている情報であるので開示とした。これらを除いた
部分のうち、設計者の印影を除いた部分については、異議申立人等の
事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、公にすること
により異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する
おそれはないと認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして
不開示とした。
(イ) 平面図・建具伏せ図
当該文書には、方位、各階の間取り、寸法、外部建具及び屋根にお
ける使用部材名、設備機器の位置及び品番、部分詳細図、敷地面積、
建築面積、各階床面積、延床面積、建ぺい率、容積率、消防法(昭和
23 年法律第 186 号)による無窓階の算定における算定式、消火器の型
及び設置数、各開口部の寸法及び建具番号、建築基準法開口部におけ
る検討チェック、設計者の印影等が記載されている。
このうち、敷地面積、建築面積、各階床面積(申請部分及び申請以
外の部分の延べ面積)、延床面積(延べ面積)、建ぺい率及び容積率に
ついては、前記(2)で述べたとおり、法令の定めるところにより公に
されている情報であるため、開示とした。外部建具及び屋根における
使用部材名については一般的な材料であり、これら及び客室に係る外
部開口部の寸法等については、一般の者が視認することが可能である
ため、開示とした。これらを除いた部分のうち、各階の間取り、客室
以外の室に係る外部開口部の寸法、設備機器の位置及び品番、部分詳
細図、消防法による無窓階の算定における算定式、建築基準法開口部
における検討チェック並びに設計者の印影を除いた部分については、
異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウハウには該当せず、
公にすることにより異議申立人等の権利、競争上の地位その他正当な
利益を害するおそれはないと認められるため、開示とした。
設計者の印影については、条例第 7 条第 2 号に該当するものとして
不開示とした。また、各階の間取り、客室以外の室に係る外部開口部
の寸法、設備機器の位置及び品番、部分詳細図、消防法による無窓階
の算定における算定式並びに建築基準法開口部における検討チェック
597
については、同条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(ウ) 立面図
当該文書には、東西南北の各方面における立面図(建物外観図)、
建物外部の仕上げ並びに建築物の最高の高さ及び軒高が記載されてい
る。
このうち、建築物の最高の高さ及び軒高については、前記(2)で述
べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報である。
立面図(建物外観図)は、一般の者が視認することが可能な情報であ
る。建物外部の仕上げは一般的な材料であり、一般の者が視認するこ
とが可能であるため、仕上げの仕様等がおおよそ推定できる情報であ
る。以上により、当該文書はその全部を開示とした。
(エ) 断面図
当該文書は、建物の東西方向と南北方向の 2 面を切った断面図であ
り、各室名、各室の天井高さ、開口部の寸法、2 階床の下地及び仕上
げ材名、建築物の最高の高さ及び軒高を含む建物各部の寸法並びに部
分詳細図が記載されている。
このうち、建築物の最高の高さ及び軒高については、前記(2)で述
べたとおり、法令の定めるところにより公にされている情報であるた
め開示とした。各室名、各室の天井高さ並びに開口部及び建物各部の
寸法については、異議申立人等の事業に関する内部管理情報又はノウ
ハウには該当せず、公にすることにより異議申立人等の権利、競争上
の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められるため、開
示とした。
2 階床の下地及び仕上げ材名並びに部分詳細図については、条例第
7 条第 3 号イに該当するものとして不開示とした。
(オ) 基礎伏図・杭伏図・基礎リスト
当該文書には、基礎の詳細図、杭の詳細図、土間コンクリートの仕
様等が記載されており、当該文書は、条例第 7 条第 3 号イに該当する
ものとして、その全部を不開示とした。
(カ) 梁伏せ図・軸組図及び軸組図・部材リスト
当該文書には、新規に設ける柱や梁等の寸法、材質、部材配置、部
材高さ、溶接種別等が記載されており、当該文書は、条例第 7 条第 3
号イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
ス 補正により抹消された図書
当該文書は、確認申請に対する建築主事の審査において指摘を受け、
補正のために抹消された図面であり、前記シの(エ)、(オ)及び(カ)のうち
梁伏せ図・軸組図と同様の文書が含まれている。開示又は不開示とした
部分及び理由については、それらの文書と同様である。
598
セ 構造計算書
当該文書は、構造計算を電算で行い、出力されたものであって、計算
条件・計算式・計算結果、部材寸法等が記載されており、条例第 7 条第
3 号イに該当するものとして、その全部を不開示とした。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈・運用されなければならない。
一方、条例第 15 条第 1 項は、開示請求に係る行政文書に第三者に関す
る情報が記録されている場合に、当該第三者に意見書を提出する機会を与
えることを定めている。
当審査会は、第三者の権利利益及び公益との調整を図りつつ、行政文書
の開示を請求する権利が不当に侵害されることのないよう、原則開示の理
念に立って、条例を解釈し、以下判断するものである。
(2) 本件行政文書について
本件行政文書の構成及び記載内容並びに開示又は不開示とした部分は前
記 3(3)で実施機関が説明するとおりであると認められる。
実施機関は、建築主の印影及び電話番号並びに設計者の印影(以下「建
築主の印影等」という。)を条例第 7 条第 2 号に該当するとして不開示と
している。
また、確認申請書(建築物)の追加資料のうち追加説明、構造耐力規定
に関する既存不適格調書のうち増築等に係る部分の概要、既存不適格建築
物の概要、設計図書等の有無、新築又は増築等の時期を示す書類、基準時
以前の建築基準関係規定の適合、構造耐力規定の緩和条件、安全確認の方
法及び総合所見、耐震診断等報告書、基礎施工図、工事施工写真、建築基
準法第 6 条第 13 項の規定による適合するかどうかを決定することができ
ない旨の通知書のうち建築主事による指摘内容、平面図・建具伏せ図のう
ち各階の間取り、客室以外の室に係る外部開口部の寸法、設備機器の位置
及び品番、部分詳細図、消防法による無窓階の算定における算定式並びに
建築基準法開口部における検討チェック、断面図のうち 2 階床の下地及び
仕上げ材名並びに部分詳細図、基礎伏図・杭伏図・基礎リスト、梁伏せ
図・軸組図、軸組図・部材リスト並びに構造計算書(以下「追加説明等」
という。)を同条第 3 号イに該当するとして不開示としている。
本件行政文書のうち、実施機関が開示としたのは建築主の印影等及び追
599
加説明等を除いた部分である。
異議申立人は、本件行政文書の全部について不開示を求めている。
(3) 条例第 7 条第 2 号該当性について
ア 条例第 7 条第 2 号は、基本的人権を尊重する立場から、個人に関する
情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照
合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを
含む。)が記録されている行政文書は、不開示とすることを定めるとと
もに、特定の個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を
害するおそれのある情報が記録された行政文書についても、同様に不開
示とすることを定めたものである。
また、その一方で、ただし書イからニまでのいずれかに規定された情
報が記録されている行政文書については、条例の目的に照らし、原則開
示と個人の権利利益の最大限の尊重との調整を図ることにより、開示す
ることとしたものである。
この考え方に基づき、本件行政文書において実施機関が開示とした部
分が同号に該当するか否かを、以下検討する。
イ 本件行政文書において実施機関が開示とした部分には、建築主の氏名
及び住所、代理者、設計者、工事監理者及び工事施工者の氏名並びに公
務員の氏名及び印影が記載されている。これらは個人を識別することが
できる情報であるため、条例第 7 条第 2 号本文に該当する。
このうち、建築主の氏名及び住所並びに代理者、設計者、工事監理者
及び工事施工者の氏名は、当審査会で見分したところ、建築計画概要書
に記載されていることが確認された。また、建築計画概要書は、建築基
準法第 93 条の 2 及び建築基準法施行規則第 11 条の 4 の規定により所管
の建設事務所において閲覧に供されており、計画変更確認申請があった
場合はその都度建築計画概要書が作成され、そのいずれもが閲覧に供さ
れるものである。よって、当該部分は、条例第 7 条第 2 号ただし書イに
該当する。
公務員の氏名及び印影はその職務遂行に係るものであるため、同号た
だし書ハに該当する。
ウ 本件行政文書において実施機関が開示とした部分には、他に条例第 7
条第 2 号本文に該当する情報は記載されていない。
エ したがって、本件行政文書において実施機関が開示とした部分は条例
第 7 条第 2 号に該当しない。
(4) 条例第 7 条第 3 号イ該当性について
ア 条例第 7 条第 3 号イは、自由経済社会においては、法人等又は事業を
営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、
事業活動に係る情報で、公にすることにより、当該法人等又は個人の権
600
利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものが記録さ
れている行政文書は、不開示とすることを定めたものである。
そして、当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益
を害するおそれがあるものとは、事業者の生産・技術・販売上のノウハ
ウ、経理、人事等の内容で、公にすることにより、事業者の事業活動が
損なわれると認められる情報をいう。
この考え方に基づき、本件行政文書において実施機関が開示とした部
分が同号イに該当するか否かを、以下検討する。
イ(ア) 本件行政文書には、建築計画概要書及び処分等概要書に記載された、
計画変更確認済証の番号及び交付年月日、計画変更の概要、確認済証
の番号及び交付年月日、敷地の地名地番、主要用途、建築物の名称、
数、最高の高さ、階数及び構造、工事種別、代理者、設計者、工事監
理者及び工事施工者の登録又は許可の番号並びに事務所又は営業所の
名称、建築士事務所登録番号、所在地及び電話番号、設計者の作成し
た設計図書、工事監理者が工事と照合する設計図書、用途地域、道路
幅員、接道部分の長さ、敷地面積、建築面積、建ぺい率、容積率、申
請部分及び申請以外の部分の延べ面積、特例の適用の有無、工事予定
年月日並びに建物配置図(建築物の寸法及び軒高、各敷地境界線種別、
敷地及び隣地のレベル、前面道路の種類及び幅員、浄化槽の型式及び
配置等)(以下「計画変更確認済証の番号等」という。)が記載されて
いる。
前記(3)イで述べたとおり、建築計画概要書は計画変更申請の度に
作成され、処分等概要書とともに所管の建設事務所において閲覧に供
されているものである。
したがって、計画変更確認済証の番号等は、法令の定めるところに
より公にされている情報である。
(イ) 現地調査票のうち敷地周辺の状況、地域地区関係、都市計画法関係、
その他法令、申請地に接する道路関係、農地法関係及び下水道関係
(以下「敷地周辺の状況等」という。)については、公的施設におい
て誰もが取得できる情報である。
(ウ) FAX 送信票のうち建築指導課の所在地、電話番号及びファクシミリ
番号、追加説明書の様式のダウンロード先アドレス並びに確認審査に
おける指摘事例集の掲載先アドレス等(以下「建築指導課の所在地
等」という。)は、県のウェブサイト等において公にされている情報
である。
(エ) 以上により、計画変更確認済証の番号等、敷地周辺の状況等及び建
築指導課の所在地等はいずれも公にされている情報であり、本件一部
開示決定によって公にしても、異議申立人等の権利、競争上の地位そ
601
の他正当な利益を害するおそれがあるものとは認められない。
ウ 本件行政文書には、屋根、外壁及び軒裏の仕様、外部建具及び屋根に
おける使用部材名、客室に係る外部開口部の寸法等、立面図(建物外観
図)並びに建物外部の仕上げが記載されている。
これらの情報は、一般の者が視認することが可能な建築物の部分又は
一般的な材料によるものであり、当該部分の仕様、寸法等はおおよそ推
定できるものと認められ、異議申立人等の事業の内部管理情報又はノウ
ハウに該当するとは認められない。
エ 本件行政文書において実施機関が開示とした部分のうち、前記イ及び
ウにおいて判断した部分以外の部分を見分したところ、異議申立人等の
事業上のノウハウ、異議申立人が営む事業に関する内部管理情報等、公
にすることにより異議申立人等の事業活動が損なわれる情報が含まれて
いるとは認められず、これを公にしても異議申立人等の権利、競争上の
地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
オ 以上のとおり、実施機関が開示とした部分は、条例第 7 条第 3 号イに
は該当しない。
(5) 本件行政文書のうち実施機関が開示とした部分は、条例第 7 条のうち第
2 号及び第 3 号イ以外の各号に該当しないことは明らかである。
(6) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々の主張をしているが、本件行政文書の不開示
情報該当性については、前記(3)から(5)までにおいて述べたとおりである
ことから、異議申立人のその他の主張は、当審査会の判断に影響を及ぼす
ものではない。
(7) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
602
別記
・建築主の印影及び電話番号並びに設計者の印影
・確認申請書(建築物)の追加資料のうち追加説明
・構造耐力規定に関する既存不適格調書のうち増築等に係る部分の概要、既存
不適格建築物の概要、設計図書等の有無、新築又は増築等の時期を示す書類、
基準時以前の建築基準関係規定の適合、構造耐力規定の緩和条件、安全確認
の方法及び総合所見
・耐震診断等報告書
・基礎施工図
・工事施工写真
・建築基準法第 6 条第 13 項の規定による適合するかどうかを決定することが
できない旨の通知書のうち建築主事による指摘内容
・平面図・建具伏せ図のうち各階の間取り、客室以外の室に係る外部開口部の
寸法、設備機器の位置及び品番、部分詳細図、消防法による無窓階の算定に
おける算定式並びに建築基準法開口部における検討チェック
・断面図のうち 2 階床の下地及び仕上げ材名並びに部分詳細図
・基礎伏図・杭伏図・基礎リスト
・梁伏せ図・軸組図及び軸組図・部材リスト
・構造計算書
603
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.
8.24
諮問
22.
9.30
実施機関から開示理由説明書を受理
22.10.13
異議申立人に実施機関からの開示理由説明書を送付
23. 6.27
(第 331 回審査会)
実施機関職員から開示理由等を聴取
23. 7.22
(第 334 回審査会)
異議申立人の意見陳述を聴取
23. 9.29
(第 339 回審査会)
審議
23.11.14
(第 343 回審査会)
審議
604
答申第 590 号
諮問第 962 号
件名:駐車違反に係る交通反則切符の不開示(適用除外)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県警察本部長(以下「警察本部長」という。)が「駐車違反に係る交
通反則切符(平成 13 年 4 月 1 日から平成 22 年 9 月 7 日まで)のうち中川警
察署で保管するもの」(以下「本件請求対象文書」という。)について、愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)の
適用を受ける行政文書に該当しないことを理由として不開示としたことは妥
当である。
2 審査請求の内容
(1) 審査請求の趣旨
本件審査請求の趣旨は、審査請求人が平成 22 年 9 月 7 日付けで条例に
基づき行った開示請求に対し、警察本部長が同月 22 日付けで行った不開
示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 審査請求の理由
審査請求人の主張する審査請求の理由は、次のとおりである。
刑事訴訟法(昭和 23 年法律第 131 号)第 53 条第 1 項により、訴訟記録
は終結後、何人も閲覧することができ、同条第 2 項により弁論の公開を禁
止した事件以外の一部公開が可能である。また、閲覧に不適切及び禁止さ
れた訴訟記録については、写しを取り、個人を特定できる部分について黒
塗りすることで、一部公開可能である。訴訟記録の保管者の許可が必要と
の部分は、保管者の心証などに左右されるため、一定の規定を提示すべき
であり、公平性の観点から、閲覧不可の訴訟記録の提示を請求する。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の説明は、次の理由により本件請求対象文書は刑事訴訟法第 53
条の 2 に規定する「訴訟に関する書類」に該当し、条例第 29 条第 1 号の規
定により条例の適用を受ける行政文書に該当しないことから、警察本部長は
不開示の決定をしたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
交通反則切符は、1 枚目の交通反則告知書・免許証保管証、2 枚目の交
通事件原票、3 枚目の交通反則通告書、4 枚目の告知報告書・交通法令違
605
反事件簿(以下「違反事件簿」という。)及び 5 枚目の取締り原票の 5 枚
綴りの複写式で構成されており、このうち、取扱警察署が保管すべき文書
は違反事件簿である。本件請求対象文書は、平成 13 年 4 月 1 日から平成
22 年 9 月 7 日までの間の中川警察署管内の駐車違反に係る違反事件簿であ
ると特定した。
(2) 交通反則通告制度について
交通反則通告制度は、反則行為(道路交通法(昭和 35 年法律第 105
号)違反のうち、比較的軽微かつ明白、定型的な違反行為)を犯した者が、
所定の手続に従って反則金相当額を仮納付し、又は反則金を納付すれば、
公訴を提起されず、又は家庭裁判所の審判に付されない制度をいい、交通
反則切符により処理されるものである。一方、反則行為となるべき違反行
為は、反則行為と犯罪行為との二面性を有しており、刑事訴訟手続の面か
ら見れば、刑事訴訟法上の捜査活動を否定するものではなく、現行犯逮捕
等の強制捜査も含め、刑事訴訟法に基づく必要な捜査を実施し、立件する
こととなるものである。
(3) 本件請求対象文書の条例第 29 条第 1 号該当性について
刑事訴訟法第 53 条の 2 の「訴訟に関する書類」とは、被疑事件・被告
事件に関して作成され、又は取得された全ての書類と解されており、条例
第 29 条第 1 号では条例の規定を適用しないとされている。
これは、捜査、公判に関する活動の適正の確保は、司法機関である裁判
所により図られるべきであること、「訴訟に関する書類」が刑事訴訟法及
び刑事確定訴訟記録法(昭和 62 年法律第 64 号)により、開示要件及び手
続が自己完結的に整備されていること、類型的に高い秘密性を有し、その
大部分が個人に関わる情報であり、開示により犯罪捜査、公訴の維持その
他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいこと等の理由に
よるものである。
違反事件簿は、交通反則切符の一部を構成する文書であり、交通反則切
符を構成する他の 4 枚の用紙と同様、共通記載事項として、違反者氏名、
違反車両、違反日時、違反場所、違反事項・罰条等が複写されている。交
通反則切符については、刑事事件である道路交通法違反事件を処理するた
め作成されるものであるから、被疑事件・被告事件に関して作成される捜
査書類であることは明らかである。
4 審査会の判断
(1) 本件請求対象文書について
実施機関によれば、交通反則切符は、5 枚綴りの複写式で構成されてい
るところ、取扱警察署が保管する文書は、そのうちの 4 枚目の違反事件簿
であるとのことである。よって、本件請求対象文書は、平成 13 年 4 月 1
606
日から平成 22 年 9 月 7 日までの間の中川警察署管内の駐車違反に係る違
反事件簿であると解される。
(2) 本件請求対象文書に対する条例の規定の適用について
審査請求人は、訴訟記録の閲覧について定めた刑事訴訟法第 53 条の規
定を引用して、本件不開示決定の取消しを求めている。
しかしながら、実施機関は、そもそも本件請求対象文書は、刑事訴訟法
第 53 条の 2 の「訴訟に関する書類」に該当し、条例第 29 条第 1 号により、
条例の規定が適用されない旨を説明するので、以下この点について検討す
る。
ア 「訴訟に関する書類」を条例の適用除外とする趣旨について
刑事訴訟法第 53 条の 2 の「訴訟に関する書類」とは、被疑事件・被
告事件に関して作成され、又は取得された書類であると解されるが、同
条がこれを行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成 11 年法
律第 42 号。以下「情報公開法」という。)の規定の適用から除外した趣
旨は、①「訴訟に関する書類」については、刑事司法手続の一環である
捜査・公判の過程において作成・取得されたものであり、捜査・公判に
関する活動の適正確保は、司法機関である裁判所により図られるべきで
あること、②刑事訴訟法第 47 条により、公判開廷前における訴訟に関
する書類の公開を原則として禁止する一方、被告事件終結後においては、
同法第 53 条及び刑事確定訴訟記録法により、一定の場合を除いて何人
にも訴訟記録の閲覧を認め、その閲覧を拒否された場合の不服申立てに
つき準抗告の手続によることとされるなど、これらの書類は、刑事訴訟
法(第 40 条、第 47 条、第 53 条、第 299 条等)及び刑事確定訴訟記録
法により、その取扱い、開示・不開示の要件、開示手続等が自己完結的
に定められていること、③これらの書類は、類型的に秘密性が高く、そ
の大部分が個人に関する情報であるとともに、開示により犯罪捜査、公
訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大き
いものであることによるものである、とされている。そして、条例は、
情報公開法の規定を適用しないこととされたもののうち、実施機関が管
理する行政文書については、法との整合性を図る必要があることから、
条例第 29 条第 1 号により、「訴訟に関する書類」については条例の規
定を適用しないこととしたものである。
イ 本件請求対象文書について
本件請求対象文書である違反事件簿は、交通反則切符の一部を構成す
る文書であり、交通反則切符を構成する他の 4 枚の用紙と同様、共通記
載事項として、違反者氏名、違反車両、違反日時、違反場所、違反事
項・罰条等が複写されている。また、犯罪捜査規範(昭和 32 年国家公
安委員会規則第 2 号)第 222 条によれば、交通法令違反事件については、
607
犯罪事件受理簿及び犯罪事件処理簿に代えて、交通法令違反事件簿を作
成し、捜査等の指揮の責任及び事件の送致又は送付その他の経過を明ら
かにしておかなければならないこととされている。このように、違反事
件簿は、刑事事件である道路交通法違反事件を処理するために作成され
る捜査書類と認められるものであることから、被疑事件・被告事件に関
して作成され、又は取得された書類、すなわち刑事訴訟法第 53 条の 2
に規定する「訴訟に関する書類」に該当すると解される。
なお、道路交通法違反事件の中には、反則金の納付の通告を受けた違
反者がその反則金を納付すべき期間内に反則金を納付すれば、公訴を提
起されず、又は家庭裁判所の審判に付されないため、行政手続である交
通反則事案として終了するものがある。確かに、それらについては、刑
事訴訟法及び刑事確定訴訟記録法により、開示手続等が自己完結的に定
められているとは言い難い。しかしながら、札幌地方裁判所平成 16 年 7
月 12 日判決及びその控訴審である札幌高等裁判所平成 17 年 3 月 17 日
判決によれば、反則金の納付によって違反者が公訴の提起を確定的に免
れても、このことにより、当初「訴訟に関する書類」であった行政文書
が、その性質を変じて「訴訟に関する書類」ではない行政文書になると
解すべき根拠もなく、反則金納付後の交通事件原票及びその付属書類の
閲覧等については、刑事訴訟法等による立法政策に委ねられている旨が
判示されている。この考え方によれば、仮に道路交通法違反事件におい
て、反則金が納付された場合であっても、なお違反事件簿については刑
事訴訟法第 53 条の 2 の「訴訟に関する書類」に該当し、条例第 29 条第
1 号の規定により条例の規定を適用しないと解したとしても、不合理と
まではいえない。
(3) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
608
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.10.29
諮問
22.12.10
実施機関から不開示理由説明書を受理
22.12.14
審査請求人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 2.23
(第 322 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 4.27
(第 326 回審査会)
審議
23. 5.20
(第 328 回審査会)
審議
23. 6.28
(第 332 回審査会)
審議
23. 8.31
(第 337 回審査会)
審議
23.10.12
(第 340 回審査会)
審議
609
答申第 591 号
諮問第 936 号
件名:実施機関ではない課長等が補正を開示請求者に求めた場合の法的効力に
ついて定めた文書の不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が「実施機関ではない
課長等が補正を開示請求者に求めた場合の法的効力について定めた文書(規
則、規程を含む。)」(以下「本件請求対象文書」という。)について、不存在
を理由として不開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 21 年 10 月 16 日付けで愛
知県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」とい
う。)に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 29 日及び 30 日
付けで行った不開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係る行政文書を
作成又は取得しているというものである。
3
本件異議申立ての併合について
異議申立人は、7 件の不開示決定に対しそれぞれ異議申立てを提起してい
るが、いずれも同じ開示請求書に記載された請求内容に係る不開示(不存
在)決定に対する異議申立てであることから、実施機関は、7 件の異議申立
てを併合することとしたものである。
4 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
「実施機関ではない課長等」の意味を異議申立人に電話で確認したとこ
ろ、自己情報開示請求に対し、課長又は校長名で補正依頼文を出した課長
又は校長であるとのことであった。
そのため、本件請求対象文書は、教育委員会が自己情報開示請求者に書
610
面で補正を依頼する際、文書の発信者名が課長又は校長名である場合に、
補正を求めたことが有効か否かについての法的効力について記載した文書
であると解した。
(2) 本件請求対象文書の存否について
教育委員会では、自己情報開示請求がなされた際、開示請求書に記載さ
れた文言では、対象となる保有個人情報を特定できないときは、口頭又は
書面により補正を求めているが、特にその様式等が定められているわけで
はない。
また、愛知県個人情報保護条例(平成 16 年愛知県条例第 66 号)、愛知
県個人情報保護条例解釈運用基準及び愛知県教育委員会個人情報保護事務
取扱要領において、補正を求める文書の発信者名によって、補正を求めた
ことが有効か否かといったような補正の法的効力について定めた規定は存
在しない。
さらに、これまでに、教育委員会が書面で補正を求めた場合に、当該補
正を求めたことが有効か否かといった法的効力について問題になったこと
がないことから、補正の法的効力について定めた文書を作成又は取得して
いない。
以上のことから、本件請求対象文書を作成又は取得しておらず、管理し
ていないことから、不存在による不開示決定を行ったものである。
5 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
実施機関は、前記 4(1)で説明するとおり、「実施機関ではない課長等」
について異議申立人に確認したやりとりから、本件請求対象文書を、教育
委員会が自己情報開示請求者に書面で補正を依頼する際、文書の発信者名
が課長又は校長名である場合に、補正を求めたことが有効か否かについて
の法的効力について記載した文書であると解したとのことである。
当審査会において、この実施機関の解釈を記載した不開示理由説明書を
異議申立人に送付して意見を求めたが異議申立人から意見はなく、意見陳
述の機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかったことから、実施機関
の解釈に誤りはないと認められる。
611
(3) 本件請求対象文書の存否について
実施機関によれば、愛知県個人情報保護条例において、発信者名によっ
て、補正を求めたことが有効か否かといったような補正の法的効力につい
て定めた規定は存在しないとのことである。
当審査会で、愛知県個人情報保護条例、愛知県個人情報保護条例解釈運
用基準及び愛知県教育委員会個人情報保護事務取扱要領を見分したところ、
これらの文書には、実施機関が補正を求める際の方法等については記載さ
れているものの、補正を求める文書の発信者名が課長や校長である場合に
当該補正が有効か否かということについては記載されていないものと認め
られた。
また、実施機関によれば、これまでに、書面で補正を求めた場合に、当
該補正を求めたことが有効か否かといった法的効力について問題になった
ことがないことから、補正を求めたことの法的効力について定めた文書を
作成又は取得していないとのことである。
実施機関において、補正を求めたことの法的効力について問題になった
ことがないとすれば、補正を求めたことの法的効力について定めた文書を
作成又は取得していなかったとしても不合理とはいえない。
なお、異議申立人は、異議申立書において「開示請求に係る行政文書を
作成又は取得している」と主張しているのみであったため、当審査会にお
いて、異議申立人に対し、その具体的内容や理由を主張するよう求めたが
何ら回答はなかった。
以上のことから、実施機関は本件請求対象文書を作成又は取得しておら
ず、不存在であるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、
不合理な点があるとは認められない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
612
(審査会の処理経過)
年
月
日
1
内
容
22.
7.
諮問
23.
6.23
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
6.29
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 7.19
(第 333 回審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23.11.25
(第 344 回審査会)
審議
23.12.16
(第 346 回審査会)
審議
613
資料1
答申第 592 号
諮問第 959 号
件名:平成 20 年度初任者研修(校内研修)前期・後期指導報告書の一部開示
決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が別記に掲げる文書
(以下「本件行政文書」という。)の一部開示決定において、指導教員又は
教科指導員(以下「指導教員等」という。)の所感を不開示としたことは妥
当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 21 年 7 月 6 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同年 8 月 14 日付けで行っ
た一部開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、条例第 7 条第 2 号及び第 6
号に該当しないというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件行政文書を一部開示としたという
ものである。
(1) 本件行政文書について
本件開示請求は、一宮養護学校に対し、平成 20 年度の「研修会結果が
記載されている文書」の開示を求めるものである。請求内容について、特
別支援教育課職員が異議申立人に確認したところ、初任者研修の校内研修
に関するものの請求ということであった。
教育公務員特例法(昭和 24 年法律第 1 号)第 23 条第 1 項は、「公立の
小学校等の教諭等の任命権者は、当該教諭等(政令で指定する者を除
く。)に対して、その採用の日から 1 年間の教諭の職務の遂行に必要な事
項に関する実践的な研修(以下「初任者研修」という。)を実施しなけれ
ばならない。」と規定しており、教育委員会では、初任者研修を実施する
ため、初任者研修実施要項を定めている。
614
同要項では、初任者研修の校内研修の前期又は後期が終了した場合、県
立学校の校長は初任者研修(校内研修)前期・後期指導報告書を教育関係
職員の研修を所管する愛知県総合教育センターに提出することとしている。
また、平成 20 年度における一宮養護学校の初任者研修の対象者は 3 名で
あった。
よって、平成 20 年度初任者研修(校内研修)前期・後期指導報告書
(前期及び後期 3 名分)を本件行政文書として特定した。
本件行政文書には、初任者の氏名、研修実施日、指導者の氏名、研修項
目、指導内容、初任者の教科・科目、指導教員等の氏名及び所感等が記載
されている。このうち開示しないこととした部分は、指導教員等の所感が
記載された部分である。
(2) 条例第 7 条第 2 号該当性について
指導教員等の所感には、指導教員等の初任者に対する評価等が記載され
ている。指導教員等から初任者がどのような評価を受けているかという情
報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるも
の(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる
こととなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、
公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものであ
ることから、条例第 7 条第 2 号本文に該当する。
なお、指導教員等の所感は、慣行として公にされ、又は公にすることが
予定されている情報ではないため、同号ただし書イに該当せず、人の生命
等を保護するため公にすることが必要な情報ではないため、同号ただし書
ロにも該当しない。また、指導教員等が初任者に対する自己の率直な意見
を記載したもので、公務員等の職務遂行に係る情報でもないため、同号た
だし書ハに該当せず、予算の執行を伴うものではないため、同号ただし書
ニにも該当しない。
以上のことから、指導教員等の所感は条例第 7 条第 2 号に該当する。
(3) 条例第 7 条第 6 号該当性について
指導教員等の所感は、初任者の性格、研修に取り組む姿勢等、指導教
員等が初任者に対する率直な意見又は評価を記載したものであり、これ
を公にすることが前提になれば、開示されることを意識した記述になら
ざるを得なくなり、その内容が形骸化し、初任者に対する適正な指導、
評価ができなくなるおそれがあるなど、初任者研修を含む、学校の運営
事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
以上のことから、指導教員等の所感は条例第 7 条第 6 号に該当する。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
615
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈・運用されなければならない。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、原則開示の理念に立って、条例を解釈し、以下判断するもので
ある。
(2) 本件行政文書について
本件行政文書の記載内容及び開示しないこととした部分は、前記 3(1)
で実施機関が述べたとおりであると認められる。
(3) 条例第 7 条第 2 号該当性について
ア 条例第 7 条第 2 号は、基本的人権を尊重する立場から、個人に関する
情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照
合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを
含む。)が記録されている行政文書は、不開示とすることを定めるとと
もに、特定の個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を
害するおそれのある情報が記録された行政文書についても、同様に不開
示とすることを定めたものである。
また、その一方で、ただし書イからニまでのいずれかに規定された情
報が記録されている行政文書については、条例の目的に照らし、原則開
示と個人の権利利益の最大限の尊重との調整を図ることにより、開示す
ることとしたものである。
この考え方に基づき、実施機関が開示しないこととした部分である指
導教員等の所感が同号に該当するか否かを、以下検討する。
イ 指導教員等の所感には、指導教員等の初任者に対する評価等が記載さ
れている。指導教員等から初任者がどのような評価を受けているかとい
う情報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することがで
きるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別すること
ができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはで
きないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれが
あるものであると認められることから、指導教員等の所感は条例第 7 条
第 2 号本文に該当する。
また、指導教員等の所感は、慣行として公にされ、又は公にすること
が予定されている情報ではないため、同号ただし書イに該当せず、公務
員等の職務遂行に係る情報でもないため同号ただし書ハにも該当しない。
さらに、同号ただし書ロ及びニに該当しないことは明らかである。
したがって、指導教員等の所感は条例第 7 条第 2 号に該当する。
616
(4) 条例第 7 条第 6 号該当性について
ア 条例第 7 条第 6 号は、県の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公
共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務事業は、公益に適合するよ
う適正に遂行されるものであるが、これらの事務事業に関する情報の中
には、公にすることにより、当該事務事業の性質上、その適正な遂行に
支障を及ぼすおそれがあるものが含まれるため、これらの情報が記録さ
れた行政文書は不開示とすることを定めたものである。
この考え方に基づき、実施機関が開示しないこととした部分である指
導教員等の所感が同号に該当するか否かを、以下検討する。
イ 指導教員等の所感には、初任者の性格、研修に取り組む姿勢等、指
導教員等の初任者に対する率直な意見又は評価が記載されていると認
められる。これを公にすることになれば、開示されることを意識した
当たり障りのない記述となり、その内容が形骸化するおそれがあるた
め、初任者に対する適正な指導、評価ができなくなるなど、初任者研
修を含む、学校の運営事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある
と認められる。
したがって、指導教員等の所感は条例第 7 条第 6 号に該当する。
(5) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
別記
一宮養護学校に対する開示請求
平成 20 年度初任者研修(校内研修)前期・後期指導報告書
(前期及び後期 3 名分)
617
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.10.15
諮問
23.
3.16
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
3.25
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 7.22
(第 334 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 9.29
(第 339 回審査会)
審議
23.12. 1
(第 345 回審査会)
審議
618
資料3
答申第 593 号
諮問第 961 号
件名:実態調査のうち特別な支援を必要とする生徒の特有な行動に関するもの
の不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が「県立学校分 特定
の職員等が実施した実態調査のうち特別な支援を必要とする生徒の特有な行
動に関するもの H22 年度」(以下「本件請求対象文書」という。)について、
不存在を理由として不開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 7 月 15 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 29 日付けで行った不
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、異議申立書によると、次の
とおりである。
開示請求に係る行政文書を作成又は取得している。平成 22 年 7 月 9 日
付け陳述書において、県立学校においては発達障害等の特別な支援を必要
とする生徒は「1 校あたりほとんどが 1 名又は 2 名もしくは数名です」と
特定の職員は主張されている。実態調査をしたからこそ、主張できること
である。調査をすることなく主張することはできない。裁判における主張
に根拠を求めることなく陳述することは、公的機関の職員としては、して
はいけないモラルの問題である。
発達障害に関しての調査が進んでいると考えられている特定の市の教育
機関、特定の市教育委員会の資料によると、小中学校生徒のうち、500 人
を超える者が発達障害を有するということになっている。特別支援教育課
はこの資料のいくつかを入手している。
陳述書が正しいとすると、以上のことから、特定の職員は実態調査をし
ている。そうでなければ日本を代表する自閉症調査研究者の一人である研
究者の見解と異なる見解を示すことができないと考える。
619
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
異議申立人が提起した、教育委員会が行った処分の取消しを求める訴訟
において、特定の職員は陳述書を提出している。当該陳述書には、発達障
害等の特別な支援を必要とする生徒の在籍数に関する記載があり、本件開
示請求は、当該陳述書の提出後に開かれた口頭弁論の直後に提出されてい
ることから、本件開示請求は、陳述書の根拠となる文書の開示を求めたも
のであると解した。
なお、このことは、異議申立人の異議申立書における「平成 22 年 7 月 9
日付け陳述書において、県立学校においては発達障害等の特別な支援を必
要とする生徒は「1 校あたりほとんどが 1 名又は 2 名もしくは数名です」
と特定の職員は主張されている。実態調査をしたからこそ、主張できるこ
とである」という記載からも裏付けられる。
そして、陳述書を作成した特定の職員は、教育委員会学習教育部高等学
校教育課(以下「高等学校教育課」という。)の職員であり、本件開示請
求においては、
「H22 年度」と年度を指定していることから、本件請求対象
文書は、平成 22 年度に高等学校教育課が実施した実態調査に関するもの
であると解した。
高等学校教育課では、平成 19 年度より、各県立高等学校を対象とし、
県立高等学校における特別な支援を必要とする生徒についての実態把握及
び支援体制の充実等を目的として「特別支援教育体制整備等状況調査」
(以下「状況調査」という。)及び「高等学校における特別な支援を必要
とする生徒に関する調査」(以下「生徒に関する調査」という。)を行って
いる。
状況調査は、文部科学省が行う調査であり、校内における特別支援教育
に係る制度面の実態調査であって、個々の生徒の障害の有無や行動に係る
調査ではない。
一方、生徒に関する調査は、高等学校教育課が独自に行う調査で、特別
な支援を必要とする生徒の在籍状況と障害の種類を調査するものであり、
この調査の項目には、「LD(学習障害)」や「ADHD(注意欠陥/多動性障
害)」など、特別な支援を必要とする生徒に特有な行動と考えられる項目
がある。高等学校教育課では、生徒に関する調査の他に、特別な支援を必
要とする生徒に関する実態調査を行っていないことから、本件請求対象文
書は、平成 22 年度に高等学校教育課が実施した、生徒に関する調査の結
果が記載されている行政文書であると解した。
(2) 本件請求対象文書の存否について
620
ア
前記(1)で述べたとおり、本件開示請求書には、「H22 年度」と記載さ
れ、年度が指定されている。高等学校教育課では、生徒に関する調査を
例年 11 月に実施しているところ、平成 22 年度の調査についても例年同
様に 11 月に実施したため、本件開示請求があった平成 22 年 7 月の時点
では、まだ実施していなかった。よって、開示請求日時点では、本件請
求対象文書を作成又は取得していなかったため、不存在による不開示決
定を行ったものである。
異議申立人は、異議申立書において、陳述書の内容は、実態調査をし
たからこそ主張できることであるとしているが、当該陳述書は平成 19
年度から平成 21 年度までの間に実施した、生徒に関する調査の結果を
基に作成したものである。
イ 異議申立人は、発達障害に関する調査が進んでいると考えられている
特定の市教育委員会の資料のいくつかを教育委員会学習教育部特別支援
教育課(以下「特別支援教育課」という。)が入手していると主張して
いる。確かに、特別支援教育課では、市町村教育委員会に対して発達障
害のある児童生徒の実態調査を隔年で行っている。しかし、当該調査の
対象は名古屋市を除く全公立小中学校であり、高等学校教育課は、小中
学校に関する事務を所管していないため、同調査の結果が必要になった
ことはなく、同調査の結果が記載された文書は取得していない。
よって、上記異議申立人の主張は、前記アで述べた結論に影響を及ぼ
すものではない。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
ア 本件開示請求において、異議申立人は「県立学校分 特定の職員等が
実施した実態調査のうち特別な支援を必要とする生徒の特有な行動に関
するもの H22 年度」の開示を請求している。
イ 実施機関は、本件開示請求における「特定の職員等が実施した実態調
査」とは、高等学校教育課で実施した実態調査のことであると解してい
るが、そのような解釈が妥当であるか否か、以下検討する。
実施機関によれば、異議申立人が提起した、教育委員会が行った処分
621
の取消しを求める訴訟において、特定の職員の陳述書が提出されており、
本件開示請求は、当該陳述書を提出した後に開かれた口頭弁論の直後に
提出されたものであるとのことである。また、異議申立人は、異議申立
書において、実態調査をしたからこそ当該陳述書における主張ができる
と主張している。
このような本件開示請求書が提出された経緯に鑑みると、本件開示請
求は、実施機関の説明のとおり、陳述書の記述の根拠となる文書の開示
を求めたものであると認められる。そして、陳述書は高等学校教育課の
職員が作成したものであることからすれば、「特定の職員等」とは、陳
述書を作成した職員を含む、高等学校教育課の職員のことであると認め
られる。
また、当審査会において、実施機関が作成した不開示理由説明書を異
議申立人に送付し、それに対する意見・反論等を書面により提出するよ
う求めたが、異議申立人からは何ら提出されず、意見陳述の機会を設け
る旨の通知についても回答はなかった。
よって、実施機関が「特定の職員等が実施した実態調査」を高等学校
教育課が実施した実態調査であると解したことは、妥当である。
ウ 実施機関によれば、高等学校教育課では、各県立高等学校を対象に、
特別な支援を必要とする生徒の在籍状況と障害の種類を調査する、生徒
に関する調査を行っており、その調査項目に、「LD(学習障害)」や
「ADHD(注意欠陥/多動性障害)」などの項目があることから、生徒に
関する調査が「特別な支援を必要とする生徒の特有な行動に関するも
の」に該当すると解したとのことである。
当審査会において、高等学校教育課が作成した、生徒に関する調査に
ついての調査票を実施機関から提出を受け、これを見分したところ、調
査項目に「LD(学習障害)」や「ADHD(注意欠陥/多動性障害)」などの
記載があり、実施機関の説明のとおりであることが認められた。
また、高等学校教育課では、生徒に関する調査の他に、特別な支援を
必要とする生徒に関する実態調査を行っていないとのことであり、当該
調査の他に、特別な支援を必要とする生徒に関する実態調査を行ってい
ると窺われる事情は認められない。
さらに、当審査会において、実施機関の解釈を記載した不開示理由説
明書を異議申立人に送付し、それに対する意見・反論等を書面により提
出するよう求めたが、異議申立人からは何ら提出されず、意見陳述の機
会を設ける旨の通知についても回答はなかった。
よって、生徒に関する調査が「特別な支援を必要とする生徒の特有な
行動に関するもの」に該当するという実施機関の解釈に誤りはないもの
と認められる。
622
エ
以上により、本件請求対象文書は、平成 22 年度に高等学校教育課が
実施した、生徒に関する調査の結果が記載されている行政文書であると
認められる。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 実施機関によれば、生徒に関する調査は例年 11 月に実施していると
ころ、本件開示請求があった平成 22 年 7 月時点では、平成 22 年度の調
査は、まだ実施していなかったとのことであり、生徒に関する調査の他
には、特別な支援を必要とする生徒に関する実態調査を行っていないと
のことである。
当審査会において、高等学校教育課が作成した、平成 22 年度の生徒
に関する調査の依頼についての施行文書を実施機関から提出を受け、こ
れを見分したところ、施行日は、平成 22 年 11 月 4 日と記載されており、
実施機関の説明のとおりであることが認められた。
よって、開示請求日においては、いまだ本件請求対象文書を作成又は
取得しておらず不存在であるとしたことについての実施機関の説明に、
特段不自然、不合理な点があるとは認められない。
イ ところで、異議申立人は、異議申立書において、特定の市教育委員会
の実態調査の資料を特別支援教育課が入手していると主張している。
しかしながら、実施機関が主張するとおり、市町村教育委員会に対す
る発達障害のある児童生徒の実態調査は、小学校及び中学校の特別支援
学級に関する事務を所管する、特別支援教育課が実施するものであると
ころ、本件請求対象文書は、前記(2)で述べたとおり、高等学校教育課が
実施した実態調査に関する文書であると認められることから、この異議
申立人の主張は、前記アで述べた結論に影響を及ぼすものではない。
(4) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々主張をしているが、本件請求対象文書の存否
については、前記(3)で述べたとおりであることから、異議申立人のその
他の主張は、当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
(5) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
623
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.10.27
諮問
23.
2.15
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
2.17
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 7.22
(第 334 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 9.29
(第 339 回審査会)
審議
23.12.19
(第 347 回審 査 会 )
審議
624
答申第 594 号
諮問第 963 号
件名:児童生徒に係る問題行動報告書(速報)等の一部開示決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「県教育委員会」という。
)が、別記 1 に掲げる文
書(以下「本件行政文書」という。
)の一部開示決定において、別記 2 に掲げ
る部分を不開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 2 月 5 日付けで愛知県
情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)に基
づき行った開示請求(以下「本件開示請求」という。
)に対し、県教育委員
会が同月 19 日付けで行った一部開示決定の取消しを求めるというものであ
る。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、条例第 7 条第 2 号及び第 6
号に該当しないというものである。
3 実施機関の主張要旨
(1) 本件行政文書について
本件開示請求は、愛知県尾張教育事務所の特定の課の、特定のグループ
を指定して、平成 20 年度及び平成 21 年度の、児童生徒に係る問題行動報
告書を請求するものである。
そこで、本件開示請求に対し、当該グループが担当する市町の教育委員
会から平成 20 年度及び平成 21 年度に提出された、児童生徒に係る問題行
動報告書(速報)及び児童生徒に係る問題行動報告書(計 20 件)を特定し
た。
本件行政文書は、学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)又は児童福祉法
(昭和 22 年法律第 164 号)に規定されるものではなく、県教育委員会が小
中学校の設置者である市町村教育委員会にその提出を依頼しているもので
ある。「児童生徒に係る問題行動報告書(速報)」については、問題行動発
生後速やかに、
「児童生徒に係る問題行動報告書」については、問題行動へ
の対応・措置の終了後速やかに、問題行動の発生した学校が事実関係を調
625
査してその内容を市町村教育委員会に報告し、市町村教育委員会が教育事
務所を通じて県教育委員会に報告するものである。
ア 児童生徒に係る問題行動報告書(速報)
当該文書には、標題、報告受信日時、報告者氏名、市町の名称が分か
る部分、作成者氏名、発生日時、学校名、問題行動の種別、該当児童生
徒、被害教師(者)
、被害程度、事件概要、学校の対応、マスコミの報道
状況、警察の対応及びファクシミリ番号が記載されている。そのうち開
示しないこととした部分は、市町の名称が分かる部分、作成者の氏名、
学校名、該当児童生徒欄、被害教師欄、被害程度欄、事件概要欄、学校
の対応欄、マスコミ報道等欄、警察等欄及びファクシミリ番号である。
イ 児童生徒に係る問題行動報告書
当該文書には、標題、日付、区分、市町村名、学校名、校長名、教職
員数、児童生徒数、学級数、発生年月日、問題行動の概要、学校におけ
る対応・措置、市町村教育委員会における対応・措置及びファクシミリ番
号が記載されている。そのうち開示しないこととした部分は、市町の名
称が分かる部分、学校名、校長名、教職員数、児童生徒数、学級数、問
題行動の概要欄、学校における対応・措置欄、市町村教育委員会におけ
る対応・措置欄及びファクシミリ番号である。
(2) 条例第 7 条第 2 号該当性について
別記 2 に掲げる部分は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別
することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人を識別
することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別すること
はできないが、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものであること
から、当該部分は、条例第 7 条第 2 号本文に該当する。
なお、当該部分は、慣行として公にされ又は公にすることが予定されて
いる情報ではなく、人の生命等を保護するため公にすることが必要である
と認められる情報ではないことから、
同号ただし書イ及びロに該当しない。
また、当該部分は、職務の遂行に係る情報ではなく、予算の執行を伴うも
のではないため、同号ただし書ハ及びニにも該当しない。
以上のことから、当該部分は、条例第 7 条第 2 号に該当する。
(3) 条例第 7 条第 6 号該当性について
別記 2 に掲げる部分は、児童生徒及び保護者と教師との対話等の中で信
頼関係に基づいて入手された情報に基づいて記載されたものであるため、
当該部分が開示されることになれば、その信頼関係が成り立たなくなり、
当該情報が入手困難となって、学校における適切な生徒指導が成り立たな
くなるおそれがある。
また、当該部分が開示されることになれば、関係者は開示を意識して、
問題行動の内容や指導の実態など詳細で正確な内容を報告しなくなるおそ
626
れがあり、そうなれば、県教育委員会は市町村教育委員会に適切な指導、
助言等をできなくなる。そして、県教育委員会は、県内の問題行動の実態
を把握できなくなり、生徒指導全般に係る県内市町村教育委員会への指導・
助言等にも支障をきたすおそれがあり、さらには、県教育委員会の行う学
校教育に係る施策全般への信頼を失わせるおそれもある。
以上のことから、当該部分は、条例第 7 条第 6 号に該当する。
(4) まとめ
以上のとおり、別記 2 に掲げる部分は、条例第 7 条第 2 号及び第 6 号に
該当する。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権利
を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有す
るその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の推
進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念のも
とに解釈・運用されなければならない。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、原則開示の理念に立って、条例を解釈し、以下判断するもので
ある。
(2) 本件行政文書について
本件行政文書の記載内容及び開示しないこととした部分は、前記 3(1)で
実施機関が述べたとおりであると認められる。
(3) 条例第 7 条第 2 号該当性について
ア 条例第 7 条第 2 号は、基本的人権を尊重する立場から、個人に関する
情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照
合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを
含む。
)が記録されている行政文書は、不開示とすることを定めるととも
に、特定の個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を害
するおそれのある情報が記録された行政文書についても、同様に不開示
とすることを定めたものである。
また、その一方で、ただし書イからニまでのいずれかに規定された情
報が記録されている行政文書については、条例の目的に照らし、原則開
示と個人の権利利益の最大限の尊重との調整を図ることにより、開示す
ることとしたものである。
この考え方に基づき、
別記 2 に掲げる部分が同号に該当するか否かを、
以下検討する。
イ(ア) 別記 2 に掲げる部分のうち、マスコミ報道等欄を除いた部分(以下
627
「マスコミ報道等欄を除いた部分」という。)については、個人に関す
る情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報
と照合することにより特定の個人を識別することができることとなる
ものを含む。
)又は特定の個人を識別することはできないが、公にする
ことにより、なお個人の権利利益を害するおそれのある情報と認めら
れるため、同号本文に該当する。
しかし、マスコミ報道等欄に記載された情報は、問題行動に関する
事案について、新聞、テレビ、インターネット等でどのように報道さ
れたかが記載されてはいるものの、特定の個人を識別することができ
る情報(他の情報と照合することにより特定の個人を識別することが
できることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはでき
ないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれの
ある情報が記載されているとは認められないため、同号本文には該当
しない。
(イ) ところで、マスコミ報道等欄を除いた部分の中には、問題行動の発
生した当時、新聞報道等で公にされている情報が含まれていることが
認められた。しかし、問題行動事案に関する一般の関心や記憶は、公
にされた時点から時間が経過するに従い薄れていく一方、問題行動の
当事者である児童生徒の更生を妨げないため、児童生徒の権利利益を
守る必要性は時間の経過とともに増していくと考えられる。よって、
過去のある時点において公にされた事実のみをもって、慣行として公
にされ、又は公にすることを予定されている情報であると言うことは
できない。また、未成年である児童生徒にあっては、少年法(昭和 23
年法律第 168 号)第 61 条の趣旨に鑑み、慣行として公にされ、又は公
にすることを予定されている情報であるか否かについては、より慎重
に判断すべきである。
以上の考え方に基づき、マスコミ報道等欄を除いた部分について、
新聞報道の記事の大きさ及び頻度、新聞報道等から経過した時間等を
検討すると、新聞報道等された事案はいずれも、一段見出しの小さな
記事(いわゆるベタ記事)が一度掲載されたのみであり、報道から半
年程度が経過しているものであることが認められた。よって、マスコ
ミ報道等欄を除いた部分は、慣行として公にされ、又は公にすること
を予定されている情報であるとは認められず、条例第 7 条第 2 号ただ
し書イには該当しない。
また、マスコミ報道等欄を除いた部分には、作成者の学校名及び氏
名、校長名等の公務員に関する情報が含まれるが、マスコミ報道等欄
を除いた部分に記載された情報は児童生徒の個人情報であり、児童生
徒は公務員ではないため、マスコミ報道等欄を除いた部分は同号ただ
628
し書ハには該当せず、同号ただし書ロ及びニに該当しないことは明ら
かである。
(ウ) したがって、マスコミ報道等欄を除いた部分は、条例第 7 条第 2 号
に該当する。
(4) 条例第 7 条第 6 号該当性について
ア 条例第 7 条第 6 号は、県の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公
共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務事業は、公益に適合するよ
う適正に遂行されるものであるが、これらの事務事業に関する情報の中
には、公にすることにより、当該事務事業の性質上、その適正な遂行に
支障を及ぼすおそれがあるものが含まれるため、これらの情報が記録さ
れた行政文書は不開示とすることを定めたものである。
この考え方に基づき、
別記 2 に掲げる部分が同号に該当するか否かを、
以下検討する。
イ 別記 2 に掲げる部分のうち、被害程度欄、事件概要欄、学校の対応欄、
マスコミ報道等欄、警察等欄、問題行動の概要欄、学校における対応・
措置欄及び市町村教育委員会における対応・措置欄(以下「被害程度欄
等」という。
)には、問題行動の内容、指導の実態等が詳細に記載されて
いる。これらを公にすれば、関係者は開示を意識して、詳細で正確な内
容を報告しなくなるおそれがあり、県教育委員会の、生徒指導に係る県
内市町村教育委員会への指導・助言事務等の遂行に支障を及ぼすおそれ
があると認められる。
よって、被害程度欄等は、条例第 7 条第 6 号に該当する。
別記 2 に掲げる部分のうち、被害程度欄等を除いた部分については、
公にしたとしても、関係者が開示を意識して、詳細で正確な内容を報告
しなくなるおそれがあるとは認められず、県教育委員会の、生徒指導に
係る県内市町村教育委員会への指導・助言事務等の遂行に支障を及ぼす
おそれがあるとは認められないことから、同号には該当しない。
(5) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
629
別記 1
・児童生徒に係る問題行動報告書(速報)
・児童生徒に係る問題行動報告書
(計 20 件)
別記 2
・市町の名称がわかる部分
・作成者の氏名
・学校名
・該当児童生徒欄
・被害教師欄
・被害程度欄
・事件概要欄
・学校の対応欄
・マスコミ報道等欄
・警察等欄
・ファクシミリ番号
・校長名
・教職員数
・児童生徒数
・学級数
・問題行動の概要欄
・学校における対応・措置欄
・市町村教育委員会における対応・措置欄
630
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
2
内
容
諮問
23.
2.23
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
2.28
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 7.22
(第 333 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23.10.31
(第 341 回審査会)
審議
23.11.14
(第 343 回審査会)
審議
23.12. 1
(第 345 回審査会)
審議
631
答申第 595 号
諮問第 969 号
件名:「企画委員会」の内容がわかる文書等の不開示(不存在)決定に関する
件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が、別記に掲げる文書
(以下「本件請求対象文書」という。)について、不存在を理由として不開
示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 4 月 22 日、23 日及
び 26 日付けで愛知県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下
「条例」という。)に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同年 5
月 6 日付けで行った不開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係る行政文書を
作成又は取得しているというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張によると、次の理由により本件請求対象文書を管理してお
らず不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 別記文書 1 から 14 まで(以下「文書 1 から 14 まで」という。このよう
に、以下別記文書については、単に「文書 1」のようにいうこととす
る。)の文書について
平成 22 年 4 月 12 日付け 22 名盲第 14 号(開示請求書では、名盲第 14
号と記載されているが、正しくは 22 名盲第 14 号である。)は、平成 22
年 4 月 1 日付け行政文書開示請求に対する補正依頼通知である。当該通知
において、愛知県立名古屋盲学校における校内委員会を例示していること
から、これらの校内委員会の内容について、文書 1 から 14 までの開示請
求がなされたものと想定できる。
名古屋盲学校の主務課である教育委員会学習教育部特別支援教育課(以
下「特別支援教育課」という。)によれば、校内委員会は、各県立学校長
の判断で独自に置かれるものであり、具体的にどのような委員会を設置し、
632
どのような業務を行わせるかについて特別支援教育課が統一的に規定をし
たり、又は指示をしたりするものではないとのことである。ただし、それ
らについて相談がある場合は、特別支援教育課において行っているとのこ
とであった。
したがって、名古屋盲学校における校内委員会の事務の具体的内容につ
いて、相談等を受けていない教育委員会管理部総務課(以下「総務課」と
いう。)では把握しておらず、それらが記載された文書を作成又は取得し
ていないことから、不開示(不存在)決定をした。
(2) 文書 15 から 21 までの文書について
当該開示請求書には「○○の意味は教育企画室という意味である」と記
載がある。この記載は、「総務課○○」だけでは不十分であると考えた開
示請求者が、このような補足をすることにより、「総務課○○」とは、平
成 22 年度に総務課教育企画室(以下「教育企画室」という。)の職員であ
った○○主任主査(平成 21 年度は主査)を指すことを明確にしたもので
あると解した。
ア 文書 15 について
開示決定等とは、行政文書開示請求及び自己情報開示請求に対する
開示決定等であると解した。また「開示決定等を指示した文書」は、
それらの請求に対して開示、一部開示又は不開示決定をするよう指示
を出した開示決定等通知書又は当該開示請求に係る対象行政文書であ
ると解した。
開示決定等について、教育委員会事務局においては、本庁の場合は
愛知県教育委員会事務決裁規程(平成 15 年愛知県教育委員会訓令第 1
号)別表第 1 の 17 の項、地方機関等(県立学校を除く。
)の場合は同
規程別表第 2 の 11 の項の規定により、所属長が専決することとしてい
る。また県立学校においては愛知県立学校事務決裁規程(平成 19 年愛
知県教育委員会訓令第 5 号)別表第 1 の 11 の項の規定により、校長が
専決することとしている。
教育企画室は教育委員会における情報公開及び個人情報保護を担当
していることから、○○主任主査は開示決定等に関する相談に応じる
ことがある。しかし、あくまで意見をするだけであり、上記のとおり
各所属の開示決定等を指示する権限はない。なお、○○主任主査が相
談に応じた結果を記録し、行政文書として保管することもしていない。
また、教育企画室に対する開示請求に対しては、開示決定等の決裁
にあたり○○主任主査が承認者の一人となりうるが、前述のとおり、
総務課における開示決定等は最終的に総務課長が決裁することとなり、
○○主任主査が専決することはない。
以上のことから、文書 15 を作成又は取得していないため、不開示
633
(不存在)とした。
イ 文書 16 について
教育企画室は、愛知県教育委員会事務局組織規則(昭和 39 年愛知県
教育委員会規則第 9 号)第 5 条第 4 項で規定する事務をつかさどること
としているが、当該事務に発達障害の定義について指示することは含ま
れておらず、教育企画室職員である○○主任主査が、職務上「発達障
害」の定義について指示する必要はなく、実際に指示していない。その
ため、文書 16 を作成又は取得していないため、不開示(不存在)とし
た。
ウ 文書 17 について
旅行命令簿とは、通常、職員が出張をする際に発せられる旅行命令書
を綴じた行政文書ファイルのことをいうため、文書 17 においても同様
のものを請求していると解した。しかし、旅行命令簿の定義は定められ
ておらず、したがって○○主任主査が独自に定義することはなく、また
その必要もない。そのため、文書 17 を作成又は取得していないため、
不開示(不存在)とした。
エ 文書 18 から 21 までの文書について
これらの文書はいずれも、○○主任主査が旅行命令をした旅行命令書
であると解した。
旅行命令は、教育委員会事務局においては、愛知県教育委員会事務決
裁規程別表第 1 の 10 の項の規定により、出張する者の職に応じ、課長
補佐等以上の職にある者が専決できるとしている。そのため、主任主査
又は主査の職にある職員は専決できないことから、○○主任主査(平成
21 年度は主査)が旅行命令することはない。
以上のことから、文書 18 から 21 までの文書を作成又は取得していな
いため、不開示(不存在)とした。
オ 文書 22 について
本件開示請求の内容を、いわゆる行政処分について、その意味を総務
課から県立高等学校宛てに説明した文書であると解した。
しかしながら、行政処分そのものの意味について、総務課から県立高
等学校に対して説明する必要性がなかったため、平成 21 年度及び平成
22 年度に説明をしていない。よって、文書 22 を作成又は取得していな
いため、不開示(不存在)とした。
カ 文書 23 について
教育委員会は、財団法人愛知県教育振興会との共催により、教育研究
論文を募集している。よって、本件開示請求における「研究論文」とは、
この教育研究論文のことであると解した。教育研究論文は県内の公立学
校に勤務する職員又はその職員で構成するグループであれば誰でも応募
634
できる。平成 20 年度及び平成 21 年度において、県立学校並びに豊橋市
立豊橋高等学校及び豊田市立豊田養護学校(以下「県立学校等」とい
う。)の職員又はグループが教育研究論文を提出する場合には、総務課
に提出することとされていた。また、名古屋市立を除く市町村立学校は、
所管の県教育事務所へ、名古屋市立学校は、名古屋市教育委員会へ提出
することとされていた。
この論文の審査は総務課で行わないことから、総務課は、提出された
教育研究論文を、審査を担当する所属へ速やかに送付しており、また審
査後の論文については、速やかに応募者へ返却している。したがって、
総務課においては、県立学校等職員から提出された教育研究論文を一時
的に保管することとなるが、あくまで経由しているだけであり、本件開
示請求がなされた平成 22 年 4 月 26 日現在においては保管していなかっ
た。
以上のことから、総務課においては文書 23 を管理していないため、
不開示(不存在)とした。
キ 文書 24 について
本件開示請求の対象は、その請求内容から、平成 20 年度に愛知県で
発覚した「不適正な会計処理」に関して、監査委員による監査、監査委
員事務局による監査により指摘を受けた県立学校が、総務課に「不適正
な会計処理」についての対応策を報告した文書であると解した。
請求内容にある委員監査及び事務局監査は、地方自治法(昭和 22 年
法律第 67 号)第 199 条に基づき実施されるものであり、委員監査は監
査委員が、事務局監査は監査委員事務局の職員が行うものである。
委員監査については、監査実施後は、立会者及び監査委員事務局が報
告書を作成するのみで、県立学校は報告書を作成していない。
事務局監査については、監査実施後、県立学校が監査報告書を作成し、
総務課に報告書を提出しているが、監査時に指摘された事項や、話題に
なったことを記載するのみで、対応策まで記載するものではない。
また、監査において県立学校が指摘を受けた場合、通常は、当該学校
が是正した結果について、総務課を経由して監査委員へ報告している。
しかし、平成 20 年度の不適正経理に関しては、該当する県立学校が一
括して指摘を受け、指摘事項に対する措置についても教育委員会全体と
して報告しており、個々の県立学校において独自に対応策を検討してい
ないため、県立学校から総務課に対し、対応策を記載した文書は提出さ
れていない。
以上のことから、文書 24 を作成又は取得していないため、不開示
(不存在)とした。
635
4
審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
本件開示請求は、総務課に対してなされたものであることが明記されて
いるので、本件請求対象文書は、総務課で管理する文書 1 から 24 までの
文書である。
実施機関は、本件請求対象文書について、前記 3 で説明するとおり解釈
したとのことである。当審査会において、実施機関の解釈を記載した不開
示理由説明書を異議申立人に送付して意見を求めたが異議申立人から意見
はなく、意見陳述の機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかったこと
から、実施機関の解釈に誤りはないと認められる。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 から 14 までの文書について
当該文書は、名古屋盲学校に設置している 14 の校内委員会の内容が
記載されている文書である。
実施機関によると、校内委員会は、学校長の判断で独自に置かれるも
のであり、どのような委員会を設置し、どのような業務を行わせるかに
ついて統一的に規定されていないとのことである。また、設置等につい
て相談に応じるのは、主務課である特別支援教育課のため、総務課では、
校内委員会の事務の具体的内容について把握しておらず、それらが記載
された文書を作成又は取得していないとのことである。
特別支援学校の校内委員会が学校長の判断で設置されるものならば、
特別支援学校の主務課ではない総務課が、校内委員会の内容を具体的に
把握する必要はなく、よって、文書 1 から 14 までの文書を作成又は取
得していないという実施機関の説明は不合理ではない。
イ 文書 15 から 21 までの文書について
(ア) 文書 15 について
当該文書は、○○主任主査が、開示決定等を指示した開示決定等通
知書又は当該請求に係る対象行政文書である。
実施機関によれば、○○主任主査は、開示決定等に関する相談に応
じることはあるが、あくまで意見をするだけであって、各所属の開示
決定等を指示する権限はないとのことであり、また、教育企画室に対
636
する開示請求についても、最終的な決裁者は総務課長であり、○○主
任主査が専決することはないとのことである。
行政文書開示請求及び自己情報開示請求に対する決定等に関する決
裁については、実施機関が説明するとおり、愛知県教育委員会事務決
裁規程及び愛知県立学校事務決裁規程において、本庁においては課長
が、地方機関等においては当該地方機関の長が、県立学校においては
校長が、それぞれ専決すると規定されていることからすれば、本件開
示請求の対象年度である平成 21 年度及び平成 22 年度に主査又は主任
主査であった○○主任主査に開示決定等の権限はなく、開示決定等を
指示することはないものと認められることから、実施機関の説明は首
肯しうるものである。
(イ) 文書 16 について
当該文書は、総務課○○主任主査が指示した発達障害の定義である。
実施機関によれば、教育企画室の所掌事務に、発達障害の定義につ
いて指示することは含まれておらず、教育企画室職員である○○主任
主査が、発達障害の定義について指示する必要はなく、また、実際に
指示していないとのことである。
愛知県教育委員会事務局組織規則第 5 条第 4 項の規定からすれば、
教育企画室が処理する事務に発達障害に関することは含まれないもの
と認められ、したがって、教育企画室の職員が、発達障害の定義につ
いて指示することは想定されないことから、実施機関の説明は首肯し
うるものである。
(ウ) 文書 17 について
当該文書は、総務課○○主任主査が指示した旅行命令簿の定義であ
る。
実施機関によれば、現在、旅行命令簿の定義は定められていないも
のであり、また、○○主任主査が独自に旅行命令簿の定義について指
示することはなく、その必要もないとのことである。
前記(イ)で述べたとおり、教育企画室の所掌事務からすれば、教育
企画室の職員が、実施機関として定めていない旅行命令簿の定義につ
いて独自に指示することは想定されないことから、実施機関の説明は
首肯しうるものである。
(エ) 文書 18 から 21 までの文書について
当該文書は、総務課○○主任主査が旅行命令を行った旅行命令書で
ある。
実施機関によれば、旅行命令は、出張する者の職に応じ、課長補佐
等以上の職にある者が専決できるとしていることから、本件開示請求
の対象年度である平成 21 年度及び平成 22 年度に主査又は主任主査の
637
職にあった○○主任主査が旅行を指示することはないとのことである。
旅行命令については、実施機関が説明するとおり、愛知県教育委員
会事務決裁規程において、課長補佐等以上の職にある者が専決すると
規定されていることから、本件開示請求の対象年度である平成 21 年
度及び平成 22 年度に、当該職員が旅行を指示することはないという
実施機関の説明は首肯しうるものである。
ウ 文書 22 について
当該文書は、総務課から県立高等学校宛てに、行政処分の意味を説明
した文書である。
実施機関によれば、行政処分そのものの意味について、総務課から県
立高等学校に対して説明する必要性がなかったため、説明をしていない
とのことである。
教育委員会は、通常の業務において様々な行政処分を行っており、行
政処分そのものの意味について改めて県立高等学校に説明する必要性は
乏しいと考えられることから、当該文書を作成又は取得していないとす
る実施機関の説明は、不合理なものではないと認められる。
エ 文書 23 について
当該文書は、実施機関が財団法人愛知県教育振興会との共催により募
集している教育研究論文である。
実施機関によれば、総務課は、教育研究論文の提出先ではあるものの、
提出された教育研究論文については、審査を担当する所属へ速やかに送
付しており、また審査後の論文については、速やかに応募者へ返却して
いるため、本件開示請求がなされた平成 22 年 4 月 26 日現在においては
保管していなかったとのことである。
当該研究論文は、総務課を一時的に経由するのみで、総務課において
は開示請求日に管理していなかったとする実施機関の説明は不合理なも
のではないと認められる。
オ 文書 24 について
当該文書は、平成 20 年度に発覚した不適正な会計経理に関して、監
査により指摘を受けた県立学校が総務課に提出した、不適正な会計処理
についての対応策を報告した文書である。
(ア) 実施機関によれば、県立学校においては、委員監査について報告書
を作成していないとのことである。
当審査会において、委員監査及び事務局監査の際に総務課から関係
課及び県立学校に通知される文書を見分したところ、委員監査におい
ては監査に立会した関係課の職員が報告書を作成する旨の記載があり、
委員監査について、県立学校において報告書を作成しないという実施
機関の説明に不自然な点はないと認められる。
638
(イ) 実施機関によれば、事務局監査については、県立学校で報告書を作
成しているが、指摘事項への対応策まで記載するものではないとのこ
とである。
当審査会において、県立学校が作成した事務局監査の報告書を見分
したところ、指摘・注意事項については記載されているものの、対応
策は記載されておらず、事務局監査の報告書は指摘事項への対応策ま
で記載するものではないという実施機関の説明に不合理な点はないと
認められる。
(ウ) 実施機関によれば、監査において県立学校が指摘を受けた場合、通
常は、当該学校において是正した結果を記載し、総務課を経由して監
査委員へ報告しているが、平成 20 年度の不適正経理に関しては、教
育委員会全体として対応したことから、県立学校から総務課に対し、
対応策を記載した文書は提出されていないとのことである。
当審査会において、教育委員会が監査委員に通知した、監査結果に
対する措置状況を見分したところ、平成 20 年度の不適正経理に関し
ては、一括して指摘を受けた県立学校の措置状況として、全庁的及び
部局全体の取り組みが記載されており、教育委員会全体として対応し
たものと認められることから、個々の県立学校から対応策を記載した
文書の提出を受けていないとする実施機関の説明は不合理とはいえな
い。
カ 以上のことから、本件請求対象文書を管理しておらず不存在であると
したことについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点がある
とは認められない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
639
別記
総務課 H21 年度
文書 1 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「企画委員会」の内容が
わかる文書
文書 2 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「教育課程委員会」の内
容がわかる文書
文書 3 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「単位認定委員会」の内
容が記載されている文書
文書 4 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「入学者選考委員会」の
内容が記載されている文書
文書 5 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「学校評価委員会」の内
容が記載されている文書
文書 6 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「学校保健委員会」の内
容が記載されている文書
文書 7 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「学校評議員会」の内容
が記載されている文書
文書 8 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「校内就学委員会」の内
容が記載されている文書
文書 9 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「重複障害教育委員会」
の内容が記載されている文書
文書 10 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「交流委員会」の内容が
記載されている文書
文書 11 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「生活指導委員会」の内
容が記載されている文書
文書 12 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「初任者研修委員会」の
内容が記載されている文書
文書 13 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「センター的機能推進委
員会」の内容が記載されている文書
文書 14 平成 22 年 4 月 12 日付け名盲第 14 号の「安全衛生委員会」の内
容が記載されている文書
総務課 H21 年度、H22 年度
文書 15 総務課○○が開示決定等を指示した文書
文書 16 総務課○○が指示した発達障害の定義
文書 17 総務課○○が指示した旅行命令簿の定義
文書 18 総務課○○が指示した旅行命令簿のうち県外分
文書 19 総務課○○が指示した旅行命令簿のうち県内分
文書 20 総務課○○が指示した旅行命令簿のうち障害関係分
640
文書 21 総務課○○が指示した旅行命令簿のうち人権関係分
○○の意味は教育企画室という意味である
総務課 H21 年度、H22 年度
文書 22 行政処分の意味県立高校に説明した文書
総務課 H20 年度、H21 年度
文書 23 教育研究論文募集事務に関する研究論文
総務課 H19 年度~H21 年度
文書 24 委員監査、事務局監査により「不適正」な会計処理を指摘され
た県立学校から提出された適正会計処理に向けての対応策が記載
されている文書
641
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
5
内
容
諮問
23.
7.27
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
7.29
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 8. 4
(第 335 回 審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23.12.16
(第 346 回 審 査 会 )
審議
24. 1.13
(第 348 回 審 査 会 )
審議
642
答申第 596 号
諮問第 971 号
件名:研修承認申請書等の不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が別記に掲げる文書
(以下「本件請求対象文書」という。)について、不存在を理由として不開
示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 5 月 17 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同年 6 月 1 日付けで行った
不開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係る行政文書を
作成又は取得しているというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 教育委員会管理部総務課(以下「総務課」という。)がつかさどる事務
について
本件開示請求は、総務課に対する請求である。総務課がつかさどる事務
は、愛知県教育委員会事務局組織規則(昭和 39 年愛知県教育委員会規則
第 9 号)第 5 条第 2 項に、教育委員会の会議に関すること、教育委員会の
所掌に係る予算経理に関することなどが規定されている。
同規則第 4 条第 3 項第 4 号では「教育課程、学習指導等教育内容の指導
に関すること」は学習教育部がつかさどる事務であると規定されている。
例えば、高等学校の教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関する
ことは学習教育部高等学校教育課が所管し(同規則第 6 条第 5 項第 1 号)
、
特別支援学校及び特別支援学級等の教育課程、学習指導、生徒指導及び職
業指導に関することは学習教育部特別支援教育課が所管する(同条第 7 項
第 2 号)こととしている。すなわち、高等学校並びに特別支援学校及び特
643
別支援学級等の教育課程、学習指導等教育内容の指導については、学習教
育部が所管しており、管理部に属する総務課は所管していない。
(2) 別記文書 1 及び 2 について
研修承認申請書については、愛知県立学校職員服務規程(平成 19 年愛
知県教育委員会訓令第 6 号)第 16 条第 1 項において「教職員は、教育公
務員特例法第 22 条第 2 項の規定により、勤務時間中に勤務場所を離れて
研修を行う場合には、あらかじめ研修承認申請書(様式第 13)及び総務
事務システムにより校長の承認を受けなければならない。」と規定されて
いる研修承認申請書であると解した。
また、研修結果報告書については、同規程第 16 条第 2 項において「教
職員は、研修の結果について、研修結果報告書(様式第 14)を研修終了
後速やかに校長に提出しなければならない。」と規定されている研修結果
報告書であると解した。
このように研修承認申請書及び研修結果報告書は、同条第 1 項及び第 2
項の規定に基づき、教職員が、その所属する学校長の承認を受けたり、学
校長に提出するものであって、総務課がその承認等を行うことはなく、ま
た、総務課が各学校の承認等の状況を把握する必要もないことから、各学
校から総務課に提出されることはない。
したがって、当該文書を作成又は取得していないため、不開示(不存
在)とした。
(3) 別記文書 3、6 から 17 まで及び 20 から 38 までについて
(1)に記載したとおり、高等学校並びに特別支援学校及び特別支援学級
等の教育課程、学習指導等教育内容の指導については、学習教育部が所管
しており、管理部に属する総務課は所管していない。そのため、総務課は
異議申立人が請求するような様々な障害の定義や判断基準、説明文書、指
導に必要な様式等を常に保有する必要はない。本件開示請求を受け、念の
ため本件開示請求に係るこれらの文書の管理について総務課各グループに
確認したが、作成したことはなく、また他の所属等から取得したこともな
かった。
以上のことから、当該文書を作成又は取得していないため、不開示(不
存在)とした。
(4) 別記文書 4 及び 5 について
愛知県立学校管理規則(昭和 32 年愛知県教育委員会規則第 9 号)第 15
条において「校長は、所属職員の現職研修に関する計画を定め、教育委員
会に報告しなければならない。」と規定されており、全ての県立学校にお
いて、当該所属職員を対象とした研修が実施されている。本件開示請求の
「校内研修」とは、同条に基づく現職研修をはじめ、各県立学校において
実施された研修であると解した。
644
しかし、総務課においては、各県立学校において実施された研修で使用
した資料の提出は求めていない。また、総務課職員が平成 21 年度に各県
立学校における研修に講師等として出席した事実がなかったことから、総
務課職員が研修で資料を使用した事実もない。
以上のことから、当該文書を作成又は取得していないため、不開示(不
存在)とした。
(5) 別記文書 18 及び 19 について
愛知県立学校管理規則第 13 条第 1 項では「校長は、校務分掌に関する
組織を定め、所属職員に分掌を命じ、校務を処理しなければならない。」
と規定しており、県立学校においては一般に校務分掌ごとに委員会や部会
等が開かれる。また同規則第 13 条の 2 第 1 項では「学校に、校長の職務
の円滑な執行に資するため、職員会議を置く。」と規定しており、職員会
議は同条第 2 項に基づき校長が招集し開催する。
ところで、職員会議及び校内各種委員会、部会、研究会等(以下「職員
会議等」という。)で配付された文書については、総務課がその送付を求
めることはない。会議録も同様に、送付を求めていない。また、総務課職
員が平成 21 年度に県立学校における職員会議等に出席した事実もなかっ
たことから、総務課職員が職員会議等で資料を配付した事実もない。
以上のことから、当該文書を作成又は取得していないため、不開示(不
存在)とした。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
本件請求対象文書は、別記に掲げる文書 1 から 38 までの文書である。
本件請求対象文書の特定については、実施機関が作成した不開示理由説
明書に記載されているところ、当審査会において、当該不開示理由説明書
を異議申立人に送付して意見を求めたが異議申立人から意見はなく、意見
陳述の機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかった。
したがって、当審査会においては、実施機関が行った文書の特定の仕方
には、誤りがないものとして以下検討する。
(3) 本件請求対象文書の存否について
645
ア
別記文書 1 及び 2 の文書について
当該文書は、研修承認申請書及び研修結果報告書であって、学習障害
に関するものである。
実施機関によれば、研修承認申請書及び研修結果報告書は、愛知県立
学校職員服務規程第 16 条第 1 項及び第 2 項の規定に基づき、教職員が、
その所属する学校長の承認を受けたり、学校長に提出するものであって、
総務課がその承認等を行うことはなく、また、総務課が各学校の承認等
の状況を把握する必要もないことから、各学校から総務課に提出される
ことはないとのことである。
愛知県立学校職員服務規程第 16 条第 1 項及び第 2 項の研修は、同規
程第 2 条に規定する教諭等の教職員を対象とするものであり、総務課は
教諭等の教職員の研修を所管していない(愛知県教育委員会事務局組織
規則第 5 条第 2 項)ことからすれば、当該文書を作成又は取得していな
いという実施機関の説明は不自然ではない。
イ 別記文書 4 及び 5 の文書について
当該文書は、校内研修で使用した資料であって、不適応行動に関する
ものである。
実施機関によれば、本件開示請求における「校内研修」とは、愛知県
立学校管理規則第 15 条に基づく現職研修をはじめとした各県立学校に
おいて実施された研修であると解したとのことである。
前記のとおり、総務課は教職員の研修を所管していないことからすれ
ば、各県立学校において実施された研修で使用された資料の提出を求め
ていないという実施機関の説明は不自然ではない。また、各県立学校に
おいて実施される校内研修であれば、そこで使用する資料は、通常各県
立学校で作成するものと解される。そして、実施機関が説明するように、
総務課職員が平成 21 年度に各県立学校における研修に講師等として出
席した事実がなければ、総務課職員が研修で使用した資料がないことは
不自然ではない。
ウ 別記文書 18 及び 19 の文書について
当該文書は、職員会議に提出された文書及び会議録並びに校内各種委
員会、部会、研究会等で配付された文書及び会議録である。
職員会議は、愛知県立学校管理規則第 13 条の 2 第 2 項によれば、校
長が招集し、その運営を管理することとされている学校内部の会議であ
る。また、実施機関によれば、校内委員会や部会は校務分掌ごとに開か
れるとのことであり、これらも学校内部の会議であると解される。この
ように、職員会議等が学校内部の会議であることからすれば、その配付
資料や会議録について総務課が送付を求めていないという実施機関の説
明は不自然ではない。また、職員会議等が学校内部の会議であることか
646
らすれば、その配付資料や会議録は、通常学校が作成するものと解され
る。そして、実施機関が説明するように、総務課職員が平成 21 年度に
職員会議等に出席した事実がなければ、総務課職員が職員会議等で配付
した資料がないことも不自然ではない。
エ 別記文書のうち、アからウまでに掲げる文書を除いた文書について
当該文書は、様々な障害の定義や判断基準、説明文書、指導に必要な
様式等である。
実施機関が説明するとおり、高等学校並びに特別支援学校及び特別支
援学級等の教育課程、学習指導等教育内容の指導については、学習教育
部が所管しており、管理部に属する総務課は所管していないと解される
(愛知県教育委員会事務局組織規則第 4 条、第 6 条等)
。したがって、
総務課は異議申立人が請求するような様々な障害の定義や判断基準、説
明文書、指導に必要な様式等を常に保有する必要はないとの実施機関の
説明は不自然ではない。また、実施機関によれば、念のため請求に係る
文書の管理について総務課各グループに確認したが、作成したことはな
く、また他の所属等から取得したこともなかったとのことである。
よって、当該文書を作成又は取得していないという実施機関の説明は
不自然ではない。
オ 以上のことから、本件請求対象文書を作成又は取得しておらず不存在
であるとした実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点があるとは認
められない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
647
別記
総務課に対する開示請求(平成 21 年度)
文書 1 研修承認申請書(学習障害に関するものに限る。)
文書 2 研修結果報告書(学習障害に関するものに限る。)
文書 3 不適応行動の定義が記載されている文書(教員が共通理解している
ものに限る。
)
文書 4 校内研修で使用した資料(不適応行動に関するもの)
文書 5 校内研修で使用した資料(文部科学省が定義している不適応行動に
関するもの)
文書 6 知的障害の定義(教員が共通理解しているものに限る。)
文書 7 知的障害の判定基準が記載されている文書(校長が採用しているも
の)
文書 8 知的障害の程度が記載されている文書
文書 9 個別指導計画の様式(不適応行動を有する児童生徒に使用している
もの)
文書 10 個別教育様式(不適応行動を有する児童生徒に使用しているも
の)
文書 11 行政文書ファイル管理簿上の個別教育計画作成に関する文書一式
文書 12 行政文書ファイル管理簿上の個別指導計画に関する文書一式
文書 13 自閉症児童生徒の行動特徴が記載されている文書(在籍する児童
生徒の社会性に関するもの)
文書 14 自閉症児童生徒の行動特徴が記載されている文書(在籍する児童
生徒の興味の極限性に関するもの)
文書 15 自閉症児童生徒の行動特徴が記載されている文書(在籍する児童
生徒の言語の遅れに関するもの)
文書 16 肢体不自由児童生徒の発達評価表(アセスメント表)の様式
文書 17 数の概念に関する学習についての教育課程の様式(学年、知的障
害の程度ごと)
文書 18 職員会議に提出された文書及び会議録(不適応行動に関するも
の)
文書 19 校内各種委員会、部会、研究会等で配布された文書及び会議録
(不適応行動に関するもの)
文書 20 知的障害が障害名であると説明した文書(文部科学省が作成した
もの)
文書 21 知的障害の定義が記載されている文書(愛知県が作成したもの)
文書 22 知的障害児童生徒の知的機能について記載されている文書
文書 23 知的障害者の障害の程度の判定基準(小牧養護学校が採用してい
るもの)
648
文書 24 知的障害者の定義(新任研修で使用しているもの)
文書 25 適応障害を説明した文書(小牧養護学校が採用しているもの)
文書 26 適応障害を説明した文書(愛知県が知的障害者の程度の判定基準
で採用しているもの)
文書 27 身体障害を伴う知的障害児童生徒に対する援助に関する文書
文書 28 身体障害を伴う知的障害の程度を説明した文書
文書 29 知的障害の程度を説明した文書(愛知県が採用しているもの)
文書 30 知的機能について説明した文書(愛知県総合教育センターが採用
しているもの)
文書 31 知的障害児童の評価基準(自立機能に関するもの、小牧養護学校
が採用しているもの)
文書 32 知的障害児童の評価基準(運動機能に関するもの、小牧養護学校
が採用しているもの)
文書 33 知的障害児童の評価基準(意思の交換に関するもの、小牧養護学
校が採用しているもの)
文書 34 知的障害児童の評価基準(読み、書き、計算に関するもの、小牧
養護学校が採用しているもの)
文書 35 知的障害児童の評価基準(社会的行動に関するもの、小牧養護学
校が採用しているもの)
文書 36 知的障害児童生徒の評価基準(作業に関するもの、小牧養護学校
で採用しているもの)
文書 37 身体障害者障害程度等級表
文書 38 身体障害認定表
649
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
5
内
容
諮問
23.
6.22
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
6.29
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 7.19
(第 333 回審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23.12.16
(第 346 回審査会)
審議
24. 1.13
(第 348 回審査会)
審議
650
答申第 597 号
諮問第 972 号
件名:協議文書の不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。
)が「H21 年度 H22 年度
協議文書(開示決定に関するもの、補正に関するもの)」(以下「本件請求対
象文書」という。)について、不存在を理由として不開示としたことは妥当
である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 6 月 9 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 18 日付けで行った不
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、次のとおりである。
開示請求に係る行政文書を作成又は取得している。制度上、協議をする
ことになっているので、協議の内容を記載した文書を作成又は取得してい
ると考える。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
愛知県教育委員会情報公開事務取扱要領(平成 17 年 3 月 31 日付け 16
教総第 732 号教育長通知)第 3 の 3(1)ウ及び(2)ア並びに愛知県教育委員
会個人情報保護事務取扱要領(平成 17 年 3 月 31 日付け 16 教総第 735 号
教育長通知)第 4 章第 1 の 2(1)ウ及び(2)オの規定により、開示決定等を
する際や補正を求める場合は県民生活部県民総務課や関係課室との協議を
経ることとされている。
よって、本件開示請求の対象となる文書は、教育委員会と県民総務課等
との、開示決定、補正等に係る協議に関する文書のうち、平成 21 年度及
び平成 22 年度に係るものであって、また、本件開示請求が愛知県教育委
651
員会尾張教育事務所(以下「尾張教育事務所」という。)に対するもので
あることから、尾張教育事務所で管理するものであると解した。
(2) 本件請求対象文書の存否について
異議申立人は「制度上、協議をすることになっているので、協議の内容
を記載した文書を作成又は取得している」と主張している。
確かに、前記(1)で述べたとおり、教育委員会では開示決定、補正等を
する際には、原則として県民総務課等との協議を行うこととしている。
しかし、当該協議は、開示請求書、対象行政文書の現物等を見ながら、
どのような対応が最も適切であるかを担当者間で話し合って行っており、
協議の過程で文書を配付したり、また、協議の内容を文書化したりする必
要もない。
仮に協議の際に担当者が備忘的メモを作成することがあっても、開示決
定等の文書を作成した段階で破棄している。
念のため、平成 21 年度から本件開示請求があった日である平成 22 年 6
月 9 日までの間に県民総務課等との協議に出席した職員に対し、本件請求
対象文書を作成したかどうかを確認したが、作成しておらず、他課から取
得もしていなかった。
以上のことから、本件請求対象文書を作成又は取得しておらず、管理し
ていないことから、不存在による不開示決定を行ったものである。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
実施機関によれば、愛知県教育委員会情報公開事務取扱要領や愛知県教
育委員会個人情報保護事務取扱要領の規定により、開示決定等をする場合
や補正を求める場合は県民総務課や関係課室との協議を経ることとされて
いる、とのことである。
また、異議申立人は、異議申立書において「制度上、協議をすることに
なっているので、協議の内容を記載した文書を作成又は取得している」と
主張している。
これらの内容は、実施機関が作成した不開示理由説明書に記載されてい
るところ、当審査会において、当該不開示理由説明書を異議申立人に送付
652
して意見を求めたが異議申立人から意見はなく、意見陳述の機会を設ける
旨の通知に対しても回答はなかった。
よって、本件請求対象文書は、実施機関と県民総務課等との、開示決定、
補正等に係る協議に関する文書のうち、平成 21 年度及び平成 22 年度に係
るもので、尾張教育事務所で管理するものであると認められる。
(3) 本件請求対象文書の存否について
(2)で述べたとおり、実施機関では、愛知県教育委員会情報公開事務取
扱要領等の規定により、開示決定等をする場合や補正を求める場合は県民
総務課等との協議を行うこととしており、当該協議は、開示請求書、対象
行政文書の現物等を見ながら、どのような対応が最も適切であるかを担当
者間で話し合うものとのことである。
当審査会において、愛知県教育委員会情報公開事務取扱要領等の規定を
見分したところ、協議の様式等、協議に関する文書について定めた規定は
存在しなかった。
また、当該協議が、開示請求書、対象行政文書の現物等を見ながら、ど
のような対応が最も適切であるかを話し合う、担当者同士の打合せといっ
た性質のものであれば、協議の過程で文書を配付したり、また、協議の内
容を文書化したりする必要もない、との実施機関の説明は不合理ではない。
なお、実施機関によれば、仮に協議の際に担当者が備忘的メモを作成す
ることがあっても、開示決定等の文書を作成した段階で破棄しているとの
ことである。備忘的メモであれば開示決定等の文書を作成した段階で破棄
しているとの実施機関の説明も不自然ではない。
さらに、実施機関は、念のため、県民総務課等との協議に出席した職員
に対し、本件請求対象文書を作成したかどうかを確認したが、作成してお
らず、他課から取得もしていなかったとのことである。
以上のことから、本件請求対象文書を作成又は取得しておらず不存在で
あるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点が
あるとは認められない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
653
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
5
内
容
諮問
23.
3.18
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
3.24
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 6.28
(第 332 回審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23.11.25
(第 344 回審 査 会 )
審議
23.12.16
(第 346 回審査会)
審議
654
答申第 598 号
諮問第 977 号
件名:
「違反建築物に対する愛知県の対応」が掲載されている通達等の指導文書
一式等の不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。
)が、別記に掲げる文書(以下「本件請
求対象文書」という。
)について、不存在を理由として不開示としたことは妥
当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 6 月 12 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)に
基づき行った開示請求に対し、知事が同年 8 月 27 日付けで行った不開示決
定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
ア 異議申立書における主張
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、異議申立書によると次の
とおりである。
通報等各種の経過を記載した行政文書は存在するものと考えるが、開
示しないのは不当である。
イ 意見書における主張
実施機関から不開示理由説明書が提出されたことを受け、異議申立人
に同書を送付したところ、異議申立人から意見書が提出された。その内
容は、概ね次のとおりである。
(ア) 本件は、当初知立建設事務所に問合せを行ったところ、違反建設物
の指導は、県建設指導課の指導に基づいて行っているとの回答があっ
たゆえに県建設指導課に知立建設事務所が指導を行っている指導内容
及び根拠について、問合せを行って「違反建築物に対する愛知県の対
応」の提出を得たものである。
知立建設事務所が指導の内容及び根拠としているものが「違反建築
物に対する愛知県の対応」であり、同文書は、知立建設事務所が県よ
り指示を受けて、現場での指導を行っているものであり、地方事務所
が指導を行うための根拠としているものとの説明を受けているもので
655
ある。知立建設事務所の担当者もその説明を実際に当方に行っている。
それゆえに、県に問合せを行い、提出を受けたものである。
したがって、
「違反建築物に対する愛知県の対応」は現場の各建設事
務所で第一線における指導の根拠とするものであるが、愛知県の主張
によると、
「違反建築物に対する愛知県の対応」が各事務所に県から通
達、通知もされずに、各事務所にも存在しないこととなり、各事務所
では、指導を行う根拠がないものとなり、不合理であり、全く不当で
ある。
県から各事務所に通知は行われていなければ指導を行うことはでき
ないものであり、各事務所は、指導を行うために存在しているもので
あり、県の主張は全く現実と離れた全く不当なものである。
本件のごとく、重要な文書・書類が県から各事務所に指示、通達、
通知されていないことは全く不当であり、上記のとおり、存在しなけ
れば各事務所の業務が行えないものであり、必ず県から各事務所に指
示、通達、通知された文書は存在するものであり、速やかに開示すべ
きである。
(イ) 「違反建築物に対する愛知県の対応」が作成されたのは、平成 20 年
度であり、それ以前に案の形で事前運用されたこともないとされてい
るが、「事前運用されたこともない」とのことであれば、それ以前は、
各事務所は、どのような指導をしていたのか、現場の各事務所におい
ては、現実に各種の指導を行っていたものであるが、それまでは、ど
のような基準でどのような指導を行っていたのか、その実態を示され
ていないが、違反建築物に対する指導を全く行っていないということ
がありうるのか、また、県が各事務所の実態について把握したうえで、
本件回答を行っているのか、全く把握さえ行っていなく、ないとして
いるのか、説明責任を果たし明らかにすべきである。
少なくとも、
「事前運用されたこともない」とのことは、当該事案が
全く発生していなかったのか、本件で問題にしている、違反建築物に
対する対応が全く行われていなかったとのことは、現実には考えられ
ないことであり、本件請求対象文書は存在するはずであり、開示すべ
きである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 開示請求書の補正について
異議申立人から提出された平成 22 年 6 月 12 日付け開示請求書には形式
上の不備があったため、同月 22 日付け、同年 7 月 6 日付け及び同月 13 日
656
付けの文書にて請求内容の補正を依頼したところ、
同月 13 日に補正された。
本件に係る補正後の請求内容は別記のとおりである。
(2) 「違反建築物に対する愛知県の対応」について
違反建築物とは、建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)に違反して建て
られた建築物をいう。
特定行政庁(都道府県及び建築主事を置く市町村をいう。)は、違反建築
物については、建築主、工事請負人、所有者等に対して、工事の施工の停
止又は当該建築物の除却、移転、改築、修繕、模様替、使用禁止、使用制
限その他必要な措置をとることを命令することができる旨が建築基準法第
9 条に定められている。
「違反建築物に対する愛知県の対応」は、平成 20 年度に、同条に定める
命令に至る手順及び命令を発した後の対応について、措置の段階ごとに、
措置の内容、法的根拠等を要約した資料として、愛知県建設部建築指導課
(以下「建築指導課」という。
)において、違反建築物への対応に関する事
務の参考のために作成されたものである。
(3) 本件請求対象文書の存否について
本件請求対象文書は、建築基準法に違反している建築物に対して、県が
行う対応の概要を記載した文書である「違反建築物に対する愛知県の対応」
に関して、実施機関が作成し、又は取得した文書である。
なお、不開示理由説明書において文書 7、14 及び 16 と称していたものは
請求対象文書ではなく、他の文書に関する補足であったため、別記のとお
り、末尾に文書の番号を付さずに括弧書でその内容を記載することとした。
ア 文書 1 から 3 までの文書について
(ア) 文書 1 の「掲載されている通達等の指導文書一式」とは、「違反建築
物に対する愛知県の対応」が登載されている例規集、法規集等がある
とした場合の当該例規集、法規集等をいうと解した。
文書 2 の「県から建設事務所に通達等を行った文書一式」とは、建
築指導課が愛知県の建設事務所に「違反建築物に対する愛知県の対応」
の通知を行ったとした場合の当該通知文書をいうと解した。
文書 3 の「県民に対して周知されている書類一式」とは、
「違反建築
物に対する愛知県の対応」が県民に周知されているとした場合に、周
知方法、周知内容等が記載されている文書をいうと解した。
(イ) 前記(2)で述べたとおり、「違反建築物に対する愛知県の対応」は、
建築指導課の職員が違反建築物への対応に関する事務の参考のために
作成したものである。
よって、
「違反建築物に対する愛知県の対応」を建設事務所に通知し
ておらず、県民に対して周知していないし、また、
「愛知県法規集」に
も登載されていない。
657
(ウ) したがって、文書 1 から 3 までの文書を作成又は取得していない。
イ 文書 4 から 6 までの文書について
(ア) 文書 4 から 6 までの文書はいずれも、平成 20 年度から平成 22 年度
までの間に、建築基準法第 9 条に定める命令が実際に行われたことを
前提に、当該期間内において、命令後の催告、再催告、告発(刑事訴
訟法(昭和 23 年法律第 131 号)第 239 条)又は行政代執行(建築基準
法第 9 条第 12 項)(以下、併せて「催告等」という。)が実際に行われ
た事例に関する文書である。
(イ) 平成 20 年度に「違反建築物に対する愛知県の対応」が作成された後
に、催告等を実際に行った事例はなかった。
(ウ) よって、文書 4 から 6 までの文書を作成又は取得していない。
ウ 文書 7 から 12 までの文書について
(ア)文書 7 については平成 15 年度から平成 19 年度まで、文書 8 について
は平成元年度から平成 19 年度まで、文書 9 から 12 までの文書はいず
れも、昭和 20 年度から平成 19 年度までの間に、
「違反建築物に対す
る愛知県の対応」に関して、違反建築物に関する口頭若しくは文書に
よる行政指導(以下、併せて「行政指導」という。
)、建築基準法第 9
条に定める命令又は催告等が実際に行われた事例に関する文書であ
る。
(イ) 「違反建築物に対する愛知県の対応」が作成されたのは平成 20 年度
であり、平成 19 年度以前に、当該文書に関して行政指導、命令又は催
告等を行った事例はない。
(ウ) よって、文書 7 から 12 までの文書を作成又は取得していない。
エ 文書 13 について
(ア) 平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書において、
「経過表」
の平成 20 年 8 月 11 日分の記録のうち、県担当者が発言した部分に「勧
告の措置」及び「違反指示の措置」の文言が記載されている。
文書 13 は、当該措置に関して、県がその具体的な内容や時期等を検
討した場合に、その検討に使用した文書である。
(イ) 平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書の「経過表」におけ
る平成 20 年 8 月 11 日分の記録に記載された勧告等の措置に関しては、
建設事務所内部で検討する際に、検討に参加する職員は事案の内容に
ついて承知していたため、改めて検討するための資料を作成する必要
はなかった。
(ウ) よって、文書 13 を作成又は取得していない。
オ なお、念のため本件請求対象文書に関連する文書が管理されていると
考えられるすべての行政文書ファイルを探索したが、該当する文書は存
在しなかった。
658
カ
以上の理由により、本件請求対象文書を作成又は取得していないため、
不開示(不存在)決定を行ったものである。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
ア 文書 1 から 12 までの文書について
文書 1 から 12 までの文書は、「違反建築物に対する愛知県の対応」に
関する文書である。実施機関によれば、
「違反建築物に対する愛知県の対
応」は、平成 20 年度に、建築指導課において違反建築物への対応に関す
る事務の参考のために作成されたものであるとのことである。
「「違反建築物に対する愛知県の対応」文書に関して」との文言が付せ
られていることからすると、文書 1 から 12 までの文書は、
「違反建築物
に対する愛知県の対応」が作成された後に作成又は取得した文書を請求
するものであると認められる。
イ 文書 13 について
文書 13 の文言からすると、文書 13 は、平成 17 年 11 月 1 日の違反発
見に係る違反調書における「経過表」の平成 20 年 8 月 11 日分の記録に
記載された「勧告の措置」及び「違反指示の措置」に関して、県がその
具体的な内容や時期等を検討した場合に、その検討に使用した文書であ
ると認められる。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 から 3 までの文書について
文書 1 の「掲載されている通達等の指導文書一式」とは、
「違反建築物
に対する愛知県の対応」が登載されている例規集、法規集等があるとし
た場合の当該例規集、法規集等をいうと解される。また、文書 2 の「県
から建設事務所に通達等を行った文書一式」とは、建築指導課が愛知県
の建設事務所に「違反建築物に対する愛知県の対応」の通知を行ったと
した場合の当該通知文書をいい、文書 3 の「県民に対して周知されてい
る書類一式」とは、
「違反建築物に対する愛知県の対応」が県民に周知さ
れているとした場合に、周知方法、周知内容等が記載されている文書を
いうと解される。
659
実施機関によると、
「違反建築物に対する愛知県の対応」は、建築指導
課の職員が違反建築物への対応に関する事務の参考のために作成したも
のであるため、
「愛知県法規集」には登載されていないうえ、当該文書を
建設事務所に通知しておらず、県民に対して周知もしていないとのこと
である。
当審査会で「違反建築物に対する愛知県の対応」を見分したところ、
当該文書は A4 サイズ 1 枚のものであることが確認でき、その分量、です
ます調の文体及び手続を簡単に羅列するのみのものであることを考慮す
ると、当該文書は、県民に手続の流れを説明する際に使用されることは
あるとしても、違反建築物に対する指導の根拠となるものではないと認
められた。
また、当審査会で「愛知県法規集」を見分したところ、
「違反建築物に
対する愛知県の対応」は登載されていないことが認められた。
さらに、実施機関によると、念のため本件請求対象文書に関連する文
書が管理されていると考えられるすべての行政文書ファイルを探索した
が、該当する文書は存在しなかったとのことであるから、
「違反建築物に
対する愛知県の対応」を愛知県の建設事務所に通知しておらず、県民に
対して周知もしていないとの実施機関の主張は不合理なものではない。
したがって、文書 1 から 3 までの文書を作成又は取得しておらず不存
在であるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理
な点があるとは認められない。
イ 文書 4 から 6 までの文書について
文書 4 から 6 までの文書はいずれも、平成 20 年度から平成 22 年度ま
での間に、建築基準法第 9 条に定める命令が実際に行われたことを前提
に、当該期間内において、催告等が実際に行われた事例に関する文書で
あると解される。
実施機関によると、当該期間内において、催告等を実際に行った事例
はなかったとのことである。
異議申立人からは、この点に関して特に具体的な反論はなく、また、
当該期間内に催告等が実際に行われたことが窺われる事情もない。
よって、文書 4 から 6 までの文書を作成又は取得しておらず不存在で
あるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点
があるとは認められない。
ウ 文書 7 から 12 までの文書について
文書 7 から 12 までの文書は、文書 7 については平成 15 年度から平成
19 年度まで、文書 8 については平成元年度から平成 19 年度まで、文書 9
から 12 までの文書はいずれも、昭和 20 年度から平成 19 年度までの間に、
「違反建築物に対する愛知県の対応」に関して、行政指導、建築基準法
660
第 9 条に定める命令又は催告等が実際に行われた事例に関する文書であ
ると解される。
実施機関によると、「違反建築物に対する愛知県の対応」が作成された
のは平成 20 年度であるため、平成 19 年度以前に、当該文書に関して行
政指導、命令又は催告等を行った事例はないとのことである。
前記(2)アで述べたとおり、文書 1 から 12 までの文書はいずれも、
「違
反建築物に対する愛知県の対応」が作成された後に作成又は取得した文
書を請求するものであると認められることから、平成 19 年度以前の文書
7 から 12 までの文書を作成又は取得していないとの実施機関の説明は、
首肯できるものである。
よって、文書 7 から 12 までの文書を作成又は取得しておらず不存在で
あるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点
があるとは認められない。
エ 文書 13 について
実施機関によると、平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書の
「経過表」における平成 20 年 8 月 11 日分の記録に記載された勧告等の
措置(以下「勧告等の措置」という。
)に関しては、建設事務所内部で検
討した際には、検討に参加する職員は事案の内容について承知していた
ため、当該措置に関して、改めて検討するための資料を作成する必要は
なかったとのことである。
当審査会において、平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書の
「経過表」の該当箇所を見分したところ、事案の内容はさほど複雑とは
いえないことが認められ、勧告等の措置に関しては、
「今後も会えない状
況が続くのであれば」又は「それにも従わなければ」と記載され、仮定
の条件を前提とするものであることが確認できた。
事案の内容がさほど複雑でないならば、検討に参加する職員が資料に
よらずとも事案を把握することが可能であると認められる。また、仮定
の話であれば、勧告等の措置について、本庁に報告、協議、情報提供等
を行う必要があるとは必ずしもいえない。
よって、勧告等の措置に関して、改めて検討するための資料を作成す
る必要はなかったとの実施機関の説明は、不合理なものではない。
したがって、文書 13 を作成又は取得しておらず不存在であるとしたこ
とについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理な点があるとは認
められない。
(4) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々の主張をしているが、本件請求対象文書の存
否については、前記(3)において述べたとおりであることから、異議申立人
のその他の主張は、当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
661
(5) まとめ
以上により、
「1
審査会の結論」のとおり判断する。
662
別記
・「違反建築物に対する愛知県の対応」文書に関して
文書 1 掲載されている通達等の指導文書一式
文書 2 県から建設事務所に通達等を行った文書一式
文書 3 県民に対して周知されている書類一式
文書 4 「⑦催告、再催告(期限までに命令の措置の履行がない場合、催告
及び再催告を行います。)」を実際に行った事例に関する書類一式(平成
20 年度以降平成 22 年度までについて)
文書 5 「⑧告発(刑事訴訟法第 239 条)
(再催告にかかわらず、命令が履
行されない場合で、告発を要するものについては、告発の手続きをとり
ます。
)」を実際に行った事例に関する書類一式(平成 20 年度以降平成 22
年度までについて)
文書 6 「⑨行政代執行(建築基準法第 9 条第 12 項)
(告発した場合で、特
に必要があるものについて、行政代執行の手続きをとります。
)を実際に
行った事例に関する書類一式(平成 20 年度以降平成 22 年度までについ
て)
文書 7 「④口頭による是正指導(行政指導)( 違反者等に自発的に是正
していただくために、事情聴取、是正計画書の作成・提出・履行等を口
頭で求めます。)」と同等の行政指導を実際に行った事例に関する書類一
式(平成 15 年度以降平成 19 年度までについて)
文書 8 「⑤文書勧告による行政指轟(行政指導)(文書で是正措置を勧告)
」
と同等の行政指導を実際に行った事例に関する書類一式(平成元年度以
降平成 19 年度までについて)
文書 9 「⑥命令(行政処分:建築基準法第 9 条)( 違反の是正は、行政
指導により違反者自身が自主的に取り組むことが望ましいが、違反者が
指導に従わない場合には、
「命令」という強制的な手段をとります。)」と
同等の行政処分を実際に行った事例に関する書類一式(昭和 20 年度以降
平成 19 年度までについて)
文書 10 「⑦催告、再催告(期限までに命令の措置の履行がない場合、催
告及び再催告を行います。)」と同等の催告、再催告を実際に行った事例
に関する書類一式(昭和 20 年度以降平成 19 年度までについて)
文書 11 「⑧告発(刑事訴訟法第 239 条)
(再催告にかかわらず、命令が履
行されない場合で、告発を要するものについては、告発の手続きをとり
ます。
)」と同等の告発を実際に行った事例に関する書類一式(昭和 20 年
度以降平成 19 年度までについて)
文書 12 「⑨行政代執行(建築基準法第 9 条第 12 項)(告発した場合で、
特に必要があるものについて、行政代執行の手続きをとります。)」と同
等の行政代執行を実際に行った事例に関する書類一式(昭和 20 年度以降
663
平成 19 年度までについて)
(文書 4 から 12 までの文書については、愛知県内 9 建設事務所の決定に係
るものである場合は、それらのものが愛知県本庁に報告、協議あるいは情
報提供等されたものについて、愛知県本庁に保管された書類一切の文書)
・「平成 17 年 11 月 1 日違反発見年月日「違反調書」」に関して
文書 13 H20.8.11 の「経過」欄に書かれた
「○ ・・・今後も是正指導を行っていきたい。今後も会えない状況が
続くのであれば、勧告の措置を取ることになる。
」
「○ ・・・是正計画の提出からになる。それができなければ勧告を行
って、それにも従わなければ違反指示の措置に向けて動くことになる。
」
について
H20.8.11 の「経過」欄に書かれた内容について検討されたことに関する
書類一式
(愛知県内 9 建設事務所の決定に係るものである場合は、それらのものが
愛知県本庁に報告、協議あるいは情報提供等されたものについて、愛知県
本庁に保管された書類一切の文書)
664
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.11.10
諮問
23.
実施機関から不開示理由説明書を受理
9.30
23.10.
4
23.10.21
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
異議申立人から不開示理由説明書に対する意見書を受理
23.10.31
(第 342 回 審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23.12. 1
(第 345 回審査会)
審議
24. 1.16
(第 349 回審査会)
審議
665
答申第 599 号
諮問第 978 号
件名:愛知県建築基準法関係事務処理要領第 1 条及び第 10 章の開示決定に関
する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。)が、別記に掲げる開示請求(以下
「本件開示請求」という。)に対し、「愛知県建築基準法関係事務処理要領平
成 17 年度版(案)第 1 条及び第 10 章」
(以下「本件行政文書」という。
)を
特定して開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 6 月 12 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、知事が同年 8 月 27 日付けで行った開示
決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
ア 異議申立書における主張
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、異議申立書によると次の
とおりである。
「愛知県建築基準法関係事務処理要領平成 17 年度版(案)」について、
(ア) 法令に係る事務処理期間の別表 2 をはじめとして、本文に記載され
た「別表」
、「様式」、「台帳」等が添付されていなく、不開示となって
おり、不当である。
(イ) (案)となっており、説明もなく、理由もなく、決定版ではなく、
不当である。
(ウ) 32 ページについて、
「平成 17 年 11 月 1 日付け違反調書」は、同要
領添付のもの(違反調査書)と違う名称であり、開示した文書以外に
同様の要領が存在するものと考えられ、このような整合性がとれない
ものは、信頼性に欠けるものであり、不当である。また、「平成 17 年
11 月 1 日付け違反調書」の根拠となる、要領となっていないので、
不当である。
(エ) 32 ページについて、是正勧告について何ら開示されていなく、不
当である。
666
イ 意見書における主張
実施機関から開示理由説明書が提出されたことを受け、異議申立人に
同書を送付したところ、異議申立人から意見書が提出された。その内容
は、概ね次のとおりである。
(ア) 本件行政文書の特定について
本件行政文書以外のものの存在が全く記載されていない。本件行政
文書以外の文書の存在の有無を明らかにして、具体的詳細に回答し、
これ以外の文書についても開示すべきである。
(イ) (案)について
本件行政文書は案となっており、未だに確定版がなく行政が行われ
ていることは不自然であり、確定版を開示すべきである。
県は開示理由説明書において「本件開示請求に係わる部分以外の一
部取扱の変更を検討するために(案)のまま運用されていたため」と
しているが、何故、本件開示請求に係わる部分以外に限定して「一部
取扱の変更を検討するために」としているのか、合理的な理由もない
ので、開示した文書以外の文書の存在を明らかにして、開示すべきで
ある。
「違反建築物に対する愛知県の対応」作成につながる部分の検討も
あったはずであり、この県の主張は不合理であり、「違反建築物に対
する愛知県の対応」についても、本件行政文書を検討して作成したも
のであり、「本件開示請求に係わる部分以外の一部取扱の変更を検討
するために(案)のまま運用されていたため」の県の主張は明らかに
間違いであり、本件開示したもの以外についても明らかにして開示す
べきである。
(ウ) 別表、様式、台帳等について
別表、様式、台帳等は本件行政文書と一体のものである。県が主張
するように、あえて除外する合理的な理由もなく、不合理であり、不
当であり開示すべきである。
(エ) 平成 17 年 11 月 1 日付け違反調書について
県の主張は、理由に合理性が認められない。平成 17 年 11 月 1 日付
け違反調書の添付のものとは違うものであり、違反調書の根拠となる
文書が存在するはずであり、この点を明らかにして、開示すべきであ
る。
(オ) 是正勧告について
県の主張は、理由が不合理であり、不当である。すべての文書の存
在を明らかにして、開示すべきである。
3 実施機関の主張要旨
667
実施機関の主張は、次の理由により本件行政文書を特定して開示としたと
いうものである。
(1) 開示請求書の補正について
異議申立人から提出された平成 22 年 6 月 12 日付け開示請求書には形式
上の不備があったため、同月 22 日付け、同年 7 月 6 日付け及び同月 13 日
付けの文書にて請求内容の補正を依頼したところ、同月 13 日に補正され
た。本件に係る補正後の請求内容は別記のとおりである。
(2) 本件行政文書について
ア 本件開示請求について
(ア) 本件開示請求は、①「違反建築物に対する愛知県の対応」の作成の
根拠とした書類一式、②同書と関係法令との関係を示す書類一式、③
平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書に登場する「是正指導
を行って」、「勧告の措置を取ること」、「勧告を行って」及び「違反指
示の措置に向けて動く」の文言及び用語について、その意味するもの
に関する書類一式、④同調書に登場する「是正指導を行って」、「勧告
の措置を取ること」、「勧告を行って」及び「違反指示の措置に向けて
動く」の文言及び用語について、その根拠となる関係法令、県の通達、
指導文書等の書類一式並びに⑤同調書に登場する「是正指導を行っ
て」、「勧告の措置を取ること」、「勧告を行って」及び「違反指示の措
置に向けて動く」の文言及び用語について、「違反建築物に対する愛
知県の対応」との関連に関する書類一式あるいは関係を示す書類一式
を請求するものである。
(イ) 「違反建築物に対する愛知県の対応」について
違反建築物とは、建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)に違反し
て建てられた建築物をいう。
特定行政庁(都道府県及び建築主事を置く市町村をいう。)は、違
反建築物については、建築主、工事請負人、所有者等に対して、工事
の施工の停止又は当該建築物の除却、移転、改築、修繕、模様替、使
用禁止、使用制限その他必要な措置をとることを命令することができ
る旨が建築基準法第 9 条に定められている。
「違反建築物に対する愛知県の対応」は、平成 20 年度に、同条に
定める命令に至る手順及び命令を発した後の対応について、措置の段
階ごとに、措置の内容、法的根拠等を要約した資料として、愛知県建
設部建築指導課(以下「建築指導課」という。)において違反建築物
への対応に関する事務の参考のために作成されたものである。
(ウ) 平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書について
愛知県知立建設事務所において作成した平成 17 年 11 月 1 日の違反
発見に係る違反調書の経過表のうち、平成 20 年 8 月 11 日分には、県
668
の担当者と相手方との電話におけるやりとりが記載されており、その
やりとりにおいて「是正指導を行って」等の文言が使用されている。
この電話のやりとりは違反建築物に関するものであり、「是正指導
を行って」等の文言は、違反建築物に関する行政指導等の措置を示す
ものである。
イ 本件行政文書について
愛知県建築基準法関係事務処理要領平成 17 年度版(案)(以下「本件
要領」という。)は、県における建築基準法に基づく事務の標準的な処
理方法について、具体的に内容を定めることにより、円滑な運用を図る
ことを目的に平成 17 年度に作成されたものであり、第 1 条に本件要領
の目的が、また、第 10 章に違反処理に係る事務が記載されている。
第 1 条には、本件要領は、建築指導課及び愛知県の建設事務所におけ
る建築基準法関係事務の処理について、標準的な処理方法を定め、円滑
な運用を図ることを目的とすることが規定されている。
第 10 章には、違反建築物に対する調査、調査結果の報告、容易に是
正できる違反に対する是正指導、是正指導に従わない場合の是正勧告、
明らかに建築基準法に違反し緊急に工事施工停止を要するものへの工事
停止の指示及び工事停止命令、緊急に使用禁止又は使用制限を要するも
のへの仮命令、工事停止命令がなされている建築物にその他の是正措置
が必要な場合及び仮命令書交付から 3 日以内の意見聴取の請求がない場
合又は意見聴取の結果仮命令が不当でない場合の是正命令、是正措置が
履行されない場合の催告及び再催告、工事停止命令に対して工事を続行
した場合及び再催告に対して履行されない場合の告発、告発したもので
特に必要があるものについての行政代執行等の事務処理が規定されてい
る。
ウ 本件行政文書の特定について
(ア) ①について
①は、「違反建築物に対する愛知県の対応」の作成の根拠とした書
類一式を請求するものである。
「違反建築物に対する愛知県の対応」は本件行政文書に基づいて作
成されたものであり、他に作成の根拠とした文書は存在しない。
よって、①に該当するものとして本件行政文書を特定した。
(イ) ②について
②は、「違反建築物に対する愛知県の対応」と関係法令との関係を
示す書類一式を請求するものである。
前記イで述べたとおり、本件行政文書は、「違反建築物に対する愛
知県の対応」の関係法令である建築基準法に基づく事務の標準的な処
理方法について、具体的に内容を定めることにより、円滑な運用を図
669
ることを目的に作成されたものであり、「違反建築物に対する愛知県
の対応」と関係法令との関係を示すものである。
よって、②に該当するものとして本件行政文書を特定した。
(ウ) ③について
③は、平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書に登場する
「是正指導を行って」等の文言について、その意味するものに関する
書類一式を請求するものである。
本件行政文書の第 97 条第 2 項には、是正指導及び是正勧告に関す
る定めがあり、これに基づき是正指導等は進められている。
よって、③に該当するものとして本件行政文書を特定した。
(エ) ④について
④は、「是正指導を行って」等の文言について、その根拠となる関
係法令、県の通達、指導文書等の書類一式を請求するものである。
是正指導及び是正勧告は行政指導であり、建築基準法の個別の条文
に基づくものではない。そこで、そのような行政指導についても恣意
的な運用を防止するため、その具体的な運用方法を本件行政文書の第
97 条第 2 項で定めている。
また、違反指示の措置は本件行政文書の第 109 条の是正命令に相当
し、その具体的な運用方法が記載されている。
したがって、④に該当するものとして本件行政文書を特定した。
(オ) ⑤について
⑤は、「是正指導を行って」等の文言について、「違反建築物に対す
る愛知県の対応」との関連又は関係を示す書類一式を請求するもので
ある。
前記(ア)で述べたとおり、「違反建築物に対する愛知県の対応」は本
件行政文書に基づいて作成されたものである。また、前記(エ)で述べ
たとおり、本件行政文書は是正指導、是正勧告及び違反指示の措置
(是正命令)の具体的な運用方法が記載されたものであり、「是正指
導を行って」等の文言について記載された文書である。
よって、「是正指導を行って」等の文言と「違反建築物に対する愛
知県の対応」について、両者の関連及び関係を示すものとして本件行
政文書を特定した。
(3) 異議申立人の主張について
ア 異議申立人は、本件行政文書の本文に記載された「別表」、「様式」、
「台帳」等が添付されず不開示となっており不当であると主張している。
しかし、本件開示請求は、「違反建築物に対する愛知県の対応」の作
成の根拠となる書類一式、同書と関係法令との関係を示す書類一式又は
「是正指導を行って」等の文言の意味若しくは根拠となる関係法令等を
670
請求するものであるところ、本文以外の別表、様式及び台帳にはこれら
の請求内容に対応する内容は記載されていない。
よって、本文を開示すれば足りると判断したものである。
イ 異議申立人は、本件行政文書は(案)となっており、説明もなく、理
由もなく、決定版ではなく、不当であると主張している。
確かに、本件行政文書は(案)のまま使用されていたが、その理由は、
本件開示請求に係る部分以外の一部取扱いの変更を検討するために本件
要領が(案)のまま運用されていたためである。なお、これ以外に開示
請求に係る文書を作成又は取得していないため、本件行政文書を開示し
たものである。
ウ 異議申立人は、本件行政文書の 32 ページに記載された違反調査書は、
平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書と違う名称であり、開示
した文書以外に同様の要領が存在するものと考えられ、このような整合
性がとれないものは信頼性に欠けるものであり、不当であり、本件行政
文書は平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反調書の根拠となる要領
とはなっていないので、不当であると主張している。
確かに、本件行政文書の第 96 条及び第 97 条は違反調査書という名称
が使用されているが、実務においては、違反調書という名称を使用する
慣行があり、両者は同一のものである。本件要領の他に、平成 17 年 11
月 1 日違反発見に係る違反調書の根拠となるものはない。
エ 異議申立人は、本件行政文書の 32 ページについて、是正勧告に関し
何ら開示されていないため、不当であると主張している。
しかしながら、本件行政文書のうち、第 97 条第 2 項には、是正勧告
に関する定めが記載されている。
オ 以上により、本件行政文書の特定に誤りはないものと考える。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈及び運用されなければならない。
そして、この目的を達成するためには、開示請求の対象となる行政文書
が適切に特定されることが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、本件開示請求に係る文書の特定について、以下判断するもので
ある。
671
(2) 本件行政文書の特定について
ア 本件開示請求は、①「違反建築物に対する愛知県の対応」の作成の根
拠とした書類一式、②「違反建築物に対する愛知県の対応」と関係法令
との関係を示す書類一式、③平成 17 年 11 月 1 日の違反発見に係る違反
調書に登場する「是正指導を行って」等の文言について、その意味する
ものに関する書類一式、④同調書に登場する「是正指導を行って」等の
文言について、その根拠となる関係法令、県の通達、指導文書等の書類
一式及び⑤同調書に登場する「是正指導を行って」等の文言について、
「違反建築物に対する愛知県の対応」との関連に関する書類一式あるい
は関係を示す書類一式の開示を請求するものである。
イ 実施機関は、①「違反建築物に対する愛知県の対応」は本件行政文書
に基づいて作成されたものであり、他に作成の根拠とした文書は存在し
ないこと、②本件行政文書は、「違反建築物に対する愛知県の対応」の
関係法令である建築基準法に基づく事務の標準的な処理方法について、
具体的に内容を定めることにより、円滑な運用を図ることを目的に作成
されたものであり、「違反建築物に対する愛知県の対応」と関係法令と
の関係を示すものであること、③本件行政文書の第 97 条第 2 項には、
是正指導及び是正勧告に関する定めがあり、これに基づき是正指導は進
められていること、④是正指導及び是正勧告は行政指導であり、そのよ
うな行政指導についても恣意的な運用を防止するため、その具体的な運
用方法を本件行政文書で定めていること、また、違反指示の措置は本件
行政文書の第 109 条の是正命令に相当し、その具体的な運用方法が記載
されていること並びに⑤本件行政文書は是正指導、是正勧告及び違反指
示の措置(是正命令)の根拠となるものであり、「是正指導を行って」
等の文言について記載された文書であることを説明している。
ウ 当審査会において「違反建築物に対する愛知県の対応」を見分したと
ころ、同書には、現地調査(行政指導)、現地調査の報告、是正方針、
口頭による是正指導、文書勧告による行政指導、命令、催告及び再催告、
告発並びに行政代執行の項目について記載されていることが認められた。
また、本件行政文書の第 1 条には、本件要領は、建築基準法に関する
事務の標準的な処理方法について、具体的に内容を定めたものであると
規定されていることが認められた。さらに、本件行政文書の第 10 章は
「違反処理」と題され、同章には、違反建築物の発見から是正までの各
段階における具体的な運用方法、命令等の根拠となる法令及び通達並び
に行政指導(是正指導及び是正勧告)の具体的な運用方法が規定されて
いることが認められた。
よって、本件行政文書は、「違反建築物に対する愛知県の対応」の根
拠となるものであって、同書と法令との関係及び同書と「是正指導を行
672
って」等の文言との関係並びに「是正指導を行って」等の文言の意味及
び根拠を示すものであるといえ、前記アで述べた①から⑤までの請求項
目に合致するものであると認められる。
エ しかし、異議申立人は、具体的な箇所を挙げて文書特定の誤りを主張
していることから、以下、異議申立人が主張する箇所について、文書特
定に誤りがあるか否かを検討することとする。
(ア) 別表、様式及び台帳について
異議申立人は、本件行政文書には、本件要領の別表、様式、台帳等
が添付されておらず、不当であると主張している。
これに対し、実施機関は、本件開示請求は、「違反建築物に対する
愛知県の対応」の作成の根拠となる書類一式、同書と関係法令との関
係を示す書類一式又は「是正指導を行って」等の文言の意味若しくは
根拠となる関係法令等(以下「「違反建築物に対する愛知県の対応」
の作成の根拠等」という。)を請求するものであるところ、本件要領
の本文以外の別表、様式及び台帳には請求内容に対応する内容が記載
されていないため、本文を開示すれば足りると判断したと説明してい
る。
当審査会において、事務局職員をして本件要領を確認させたところ、
巻末には別表、様式及び台帳が添付されていること並びにそれら以外
には何も添付されていないことが報告された。
また、当審査会において、別表を見分したところ、別表 1 は本庁と
事務所の事務分掌を整理した表であること、別表 2 は標準処理期間を
事項ごとに一覧表にしたものであること及び別表 3 は申請書等の保存
年限を文書ごとに一覧表にしたものであることが認められた。「違反
建築物に対する愛知県の対応」には本庁と事務所の事務分掌、標準処
理期間及び保存年限に関する事項は記載されていないことから、別表
1、2 及び 3 はいずれも「違反建築物に対する愛知県の対応」の作成の
根拠等に該当せず、本件開示請求の対象とはならないものと認められ
る。
さらに、様式及び台帳が「違反建築物に対する愛知県の対応」の作
成の根拠等に該当しないのは明らかである。
よって、実施機関の説明は首肯できるものである。
(イ) (案)について
異議申立人は、本件行政文書は案となっており、未だに確定版がな
く行政が行われていることは不自然であり、確定版を開示すべきであ
ると主張している。
これに対し、実施機関は、本件開示請求に係る部分以外の一部取扱
いの変更を検討するために(案)のまま運用されていたためであると
673
説明している。
確かに、本件要領を案のまま運用していたという実施機関の説明が
不自然な印象を与えることは否定できない。しかし、本件要領が現実
に「(案)」が付されたまま運用され、他に特定すべき文書が存しない
とすれば、当該文書を特定する以外にない。
当審査会において、事務局職員をして本件要領について建築指導課
が管理する起案文書等を探索させたところ、平成 17 年 3 月 31 日付け
で起案された「建設事務所の建築住宅課等の組織改編に伴う愛知県建
築基準法関係事務処理要領等の改正について」という題名の文書が存
在し、本件要領は「(案)」を付したまま建設事務所に通知されている
ことが窺われる旨が報告された。
よって、「(案)」を付したまま本件要領を運用していたとする実施
機関の説明は不自然ではあるものの、これを覆すに足りる証拠はなく、
これを是認するほかない。
(ウ) 違反調書の名称について
異議申立人は、本件行政文書の 32 ページについて、
「平成 17 年 11
月 1 日付け違反調書」は、本件要領添付のもの(違反調査書)と違う
名称であり、開示した文書以外に同様の要領が存在するものと考えら
れ、このような整合性がとれないものは、信頼性に欠け、不当である
と主張している。
これに対し、実施機関は、確かに本件行政文書の第 96 条及び第 97
条において違反調査書という名称が使用されているが、両者は同一の
ものであり、本件要領の他に、平成 17 年 11 月 1 日違反発見に係る違
反調書の根拠となるものはないと説明している。
当審査会において、本件要領の違反調査書の様式と平成 17 年 11 月
1 日違反発見に係る違反調書を見分したところ、両者の記載項目はほ
とんど同一であることが認められた。また、違反調査書と違反調書は
名称もよく似ており、字義もほぼ同一である。
よって、実施機関の説明は首肯できるものである。
(エ) 是正勧告について
異議申立人は、本件行政文書の 32 ページについて、是正勧告に関
し何ら開示されていないので、不当であると主張している。
これに対し、実施機関は、本件行政文書のうち、第 97 条第 2 項に
は是正勧告に関する定めが記載されていると説明している。
当審査会において、本件行政文書を見分したところ、第 97 条第 2
項には、どのような場合に、誰に、どのように是正勧告を行うかの定
めが記載されていることが認められた。
よって、実施機関の説明は首肯できるものである。
674
(オ) 以上により、異議申立人が具体的に主張する箇所について検討した
結果、実施機関が本件行政文書を特定して開示としたことに誤りはな
いものと認められる。
(3) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々の主張をしているが、本件行政文書の特定に
ついては、前記(2)において述べたとおりであることから、異議申立人の
その他の主張は、当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
675
別記
「違反建築物に対する愛知県の対応」文書に関して
①作成の根拠とした書類一式
②関係法令との関係を示す書類一式
「平成 17 年 11 月 1 日違反発見年月日「違反調書」」に関して
H20.8.11 の「経過」欄に書かれた
「○ ・・・今後も是正指導を行っていきたい。今後も会えない状況が
続くのであれば、勧告の措置を取ることになる。
」
「○ ・・・是正計画の提出からになる。それができなければ勧告を行
って、それにも従わなければ違反指示の措置に向けて動くことにな
る。」について
③これらの文書に登場する「是正指導を行って」、「勧告の措置を取るこ
と」、「勧告を行って」、「違反指示の措置に向けて動く」の文言及び用語
についてのその意味するものに関する書類一式
④これらの文書に登場する「是正指導を行って」、「勧告の措置を取るこ
と」、「勧告を行って」、「違反指示の措置に向けて動く」の文言及び用語
について文言の根拠となる関係法令、県の通達、指導文書等の書類一式
⑤これらの文書に登場する「是正指導を行って」、「勧告の措置を取るこ
と」、「勧告を行って」、「違反指示の措置に向けて動く」の文言及び用語
について、「違反建築物に対する愛知県の対応」文書との関連に関する
書類一式あるいは関係を示す書類一式
676
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.11.10
諮問
23.
実施機関から開示理由説明書を受理
9.30
23.10.
4
23.10.21
異議申立人に実施機関からの開示理由説明書を送付
異議申立人から開示理由説明書に対する意見書を受理
23.10.31
(第 342 回 審 査 会 )
実施機関職員から開示理由等を聴取
23.12. 1
(第 345 回審査会)
審議
24. 1.16
(第 349 回審査会)
審議
677
答申第 600 号
諮問第 979 号
件名:違反調査書の一部開示決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。)が、別表の 1 欄に掲げる開示請求
(以下「本件開示請求」という。)に対し、同表の 2 欄に掲げる文書(以下
「本件行政文書」という。
)を特定して一部開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 6 月 12 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、知事が同年 8 月 27 日付けで行った一部
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
ア 異議申立書における主張
異議申立書における異議申立人の主張は、いずれも文書 4 に関するも
のであり、次のとおりである。
(ア) 平成 18 年 3 月 22 日から平成 19 年 4 月 13 日までの間について、違
反調書に全く記載がされていなく、不開示とされ、不当である。
それなのに、平成 18 年 4 月 10 日付け及び同年 10 月 5 日付けの呼
出状が出されており、矛盾するものであり、不当である。別に記載さ
れている書類があると考えられるが、それらを不開示とされ不当であ
る。
(イ) 平成 20 年 8 月 25 日から平成 21 年 4 月 23 日までの間の経過表の記
載が全くなく、別に記載されている書類があると考えられるが、それ
らを不開示とされ不当である。
平成 21 年 2 月の口頭指導の記録がないが、口頭指導を行った記録
が他に存在し、それらは行政文書となり、開示の対象とされるべきも
のが開示されてなく、不当である。
(ウ) 平成 21 年 4 月 24 日記載の東側の道路入り口の件は、違反調書は作
成されていないが、理由もわからずに、作成されていて不開示とされ
ている可能性があり、不当である。同年 6 月 16 日欄に記載されてい
る○○氏及び○○宅と関連するものか。
678
(エ) 平成 22 年 1 月 25 日で経過表の記載は終了しているが、その後記載
は行われていないが、何の対応も行っていないことは考えられなく、
何か書類があると考えられるが、不開示とされ不当である。
(オ) 平成 22 年 5 月 21 日に知立事務所は来庁通知書を出しているが、こ
れらのことが記載された違反調書、経過表あるいはこれらに準じる書
類があると考えられるが、不開示であり不当である。
(カ) 平成 22 年 5 月 21 日に知立事務所は来庁通知書を出しているが、こ
の中で、2 件出しているが、1 件分の違反調書の開示しかされていな
く、不当である。
イ 意見書における主張
実施機関から不開示理由説明書が提出されたことを受け、異議申立人
に同書を送付したところ、異議申立人から意見書が提出された。意見書
における異議申立人の主張は、不開示理由説明書において実施機関が説
明した事項に関するものであって、いずれも文書 4 に関するものであり、
概ね次のとおりである。
(ア) 文書 4 のうち、平成 18 年 3 月 22 日から平成 19 年 4 月 13 日までの
間に関する実施機関の主張について
県の主張は曖昧であり不合理であり、不当である。
特に、あえて、平成 18 年 3 月 22 日から平成 19 年 4 月 13 日までの
間の経過等が記載されていないのは全く信憑性がないものであり、理
由も全くもって曖昧なものである。違反調書は、社会通念上、一般常
識であれば、違反調書は、重要な事柄を記載するものであり、特に来
庁通知などは相手を呼び出すものであり、必ず記載すべき項目であり、
それをあえてどこに綴られているか、明らかにして開示すべきである。
また、不透明な起案文を参照すればよいなどと主張するが、全く理
由のないものであり、不合理極まりないものである。県の主張では、
何のために違反調書を作るか意味・目的が全く不明であり、平成 18
年 3 月 22 日から平成 19 年 4 月 13 日までの間の経過等が記載されて
いないのは、県の指導に対応していない、本来の業務を行っていない
ことであり、そのようなことは正常なものではない。県の主張は全く
信憑性がないものであり、平成 18 年 3 月 22 日から平成 19 年 4 月 13
日までの間の経過等についても必ず記載された書類があるはずであり、
本件は、被害者、通報者が何回も連絡を取っており、重要な案件であ
ったはずであり、あえてそのような案件について、特定の期間のみの
記載を省略する、それも公権力を行使して呼び出しを行うような重要
な事項を記載していないことは、全く不合理であり、必ず平成 18 年 3
月 22 日から平成 19 年 4 月 13 日までの間の経過等を記載した書類は
あるものであり、開示すべきである。
679
(イ) 文書 4 のうち、平成 20 年 8 月 25 日から平成 21 年 4 月 23 日までの
間に関する実施機関の主張について
上記(ア)と同様な理由により、平成 20 年 8 月 25 日から平成 21 年 4
月 23 日までの記載がされていないことは全く不当であり、必ず存在
するものであり、開示すべきである。
特に口頭指導については、公権力を有した機関が公権力を利用して
行う行為であり、詳細に具体的に正確に記載すべき内容であり、それ
がないことは全く不当である。
必ず他に文書として存在するものであり、開示すべきである。
特に平成 21 年 2 月の口頭指導については、記していないことはあ
り得ないことであり、業務に支障が生じるものであり、県のそして建
設事務所の本来確実に行わなければならないものであり、県民に対す
る背信行為である。
さらには、その理由として県は「担当者の判断により、特に重要と
思われない事項をあえて記載しなかったものと思われる。」と主張し
ているが、県民に対して口頭指導したことを「特に重要と思われない
事項」と断定して、さらには、「あえて記載しなかったもの」と主張
して、あえて故意により記載しなかったとしているが、言語道断な主
張であり、矛盾だらけの全く不合理な見解であり、全く信憑性を欠く
ものである。何か隠さざるを得ない事情があるのか、何か開示できな
い理由が存在することが推認できるものである。これについては、貴
会とされて徹底的に調査を行い、不開示の文書が必ず存在するもので
あり、これらの文書を明らかにして開示すべきである。
(ウ) 文書 4 のうち、平成 21 年 4 月 24 日記載の東側の道路入り口の件に
関する実施機関の主張について
「ひとまず文書 4 の経過表に記載したものと思われる」としている
が、「ひとまず」の話であり、少なくとも最終的には違反調書は、作
成されて、存在しているものであり、さらには、作成しなければなら
ない書類であり、存在する文書であり、県としても知立建設事務所に
当然確認を行うべき書類でもあり、開示すべきである。
また、このような、探してもないなどとする杜撰な管理が許される
ものではなく、開示すべきである。
さらに、県は「思われる」としているが、知立建設事務所に確認を
とって、事実を明らかにして、事実を断定するべきであり、改めて、
事実確認を行い、改めて回答を行うべきである。
(エ) 文書 4 のうち、平成 22 年 1 月 25 日以降の記録に関する実施機関の
主張について
平成 22 年 1 月 25 日以降の記録は、指導を継続しており、懸案の事
680
項であり、必ず記載された書類が存在するものであり、開示すべきで
ある。
また、県の主張は全く合理性がなく、現実性もなく、抽象的な想定
を行っているものであり、存在しなければならない文書であり、開示
すべきである。
さらに、県は「思われる」としているが、知立建設事務所に確認を
とって、事実を明らかにして、事実を断定するべきであり、改めて、
事実確認を行い、改めて回答を行うべきである。
(オ) 文書 4 のうち、平成 22 年 5 月 21 日付け来庁通知書に係る経過表に
関する実施機関の主張について
県の主張は、起案文書を参照すれば確認できるからそれ以外に文書
を開示していないが、少なくとも違反のある事案について、一連の経
過表の書類等に記載されなければならないものであり、そうでなけれ
ば正常な業務が行えないものであり、必ず存在する書類であり、開示
すべきである。
さらに、県は「思われる」としているが、知立建設事務所に確認を
とって、事実を明らかにして、事実を断定するべきであり、改めて、
事実確認を行い、改めて回答を行うべきである。
(カ) 文書 4 において、平成 22 年 5 月 21 日付け来庁通知書を 2 件出して
いることに関する実施機関の主張について
県は「同一案件だから」と主張しているが、違反を起こしている対
象は別であり、当然県の指導対象は別であり、通報者は同一であるか
ら、同一案件とする主張は全く不合理であり、根拠、理由がないもの
であり、必ず書類は、存在するものであり、開示すべきである。
また、県の「同一案件だから」との主張を行うのであればその根拠
を明らかにして示すべきである。それを示さないのは不当である。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件行政文書を特定して一部開示とし
たというものである。
(1) 開示請求書の補正について
異議申立人から提出された平成 22 年 6 月 12 日付け開示請求書には形式
上の不備があったため、同月 22 日付け、同年 7 月 6 日付け及び同月 13 日
付けの文書にて請求内容の補正を依頼したところ、同月 13 日に補正され
た。本件に係る補正後の請求内容は別表の 1 欄に掲げるとおりである。
(2) 「違反建築物に対する愛知県の対応」について
違反建築物とは、建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)に違反して建
てられた建築物をいう。
681
特定行政庁(都道府県及び建築主事を置く市町村をいう。)は、違反建
築物については、建築主、工事請負人、所有者等に対して、工事の施工の
停止又は当該建築物の除却、移転、改築、修繕、模様替、使用禁止、使用
制限その他の必要な措置をとることを命令することができる旨が建築基準
法第 9 条に定められている。
「違反建築物に対する愛知県の対応」は、平成 20 年度に、同条に定め
る命令に至る手順及び命令を発した後の対応について、措置の段階ごとに、
措置の内容、法的根拠等を要約した資料として、愛知県建設部建築指導課
(以下「建築指導課」という。)において違反建築物への対応に関する事
務の参考のために作成されたものである。
(3) 本件行政文書について
本件行政文書は、いずれも愛知県の地方機関である建設事務所で作成さ
れ、建設事務所から本庁の建築指導課に送付されたものである。
本件行政文書のうち、違反建築物の是正指導に係る経過表は、当該事務
の担当者が相手方と交わした会話等、指導の経緯について記録したもので、
後日の参考となる事項を担当者が取捨選択して記録するものである。
(4) 本件行政文書の特定について
ア 本件開示請求は、平成 20 年度以降平成 22 年度までの間において、
「違反建築物に対する愛知県の対応」に関して、①口頭による是正指導、
②文書勧告による行政指導及び③建築基準法第 9 条の命令(行政処分)
を実際に行った事例に関する書類一式を請求するものである。
これに対し、県は、②に対して平成 21 年 2 月 17 日付け違反調査書を、
③に対して平成 20 年 3 月 24 日付け違反調査書を、①に対してこれらの
文書を含む本件行政文書全部を特定した。
イ 異議申立人は、異議申立書において、平成 18 年 3 月 22 日から平成 19
年 4 月 13 日までの間について、違反調書に全く記載がされていないの
に、平成 18 年 4 月 10 日付け及び同年 10 月 5 日付けの呼出状が出され
ており、矛盾するものであり、別に記載されている書類があると考えら
れるが、それらを不開示とされ不当であると主張している。
この異議申立人の主張は、文書 4 の経過表において、平成 18 年 3 月
22 日から平成 19 年 4 月 13 日までの間の経過等が記載された文書が特定
されていないので、当該文書を特定すべきであるという主張と解される。
確かに、文書 4 の経過表には、平成 18 年 3 月 22 日から平成 19 年 4
月 13 日までの間の経過等が記載されていないが、平成 18 年 4 月 10 日
付け及び同年 10 月 5 日付け来庁通知に係る起案文書を参照することに
より経過を確認できるため当該事項の記載が省略されているものであり、
文書 4 の他に当該事項が記載された文書は存在しない。
ウ 異議申立人は、異議申立書において、平成 20 年 8 月 25 日から平成 21
682
年 4 月 23 日までの間の経過表の記載が全くなく、別に記載されている
書類があり、それらを不開示とされ不当である、平成 21 年 2 月の口頭
指導の記録が他に存在すると考えられ、それらは開示の対象とされるべ
きものであるのに開示されておらず、不当であると主張している。
この異議申立人の主張は、文書 4 において、平成 20 年 8 月 25 日から
平成 21 年 4 月 23 日までの間の経過表及び平成 21 年 2 月の口頭指導の
記録が記載された文書が特定されていないので、当該文書を特定すべき
であるという主張と解される。異議申立人がこのように主張しているの
は、文書 4 の内容が異議申立人に関するものであるところ、平成 21 年 2
月の口頭指導の記録が当該文書に記載されていないためであると思われ
る。
確かに、文書 4 の経過表には、平成 20 年 8 月 25 日から平成 21 年 4
月 23 日までの間の経過等の記載は存在しない。
これは、担当者の判断により、特に重要と思われない事項をあえて記
載しなかったものと思われる。なお、関連するファイルを探索したが、
平成 20 年 8 月 25 日から平成 21 年 4 月 23 日までの間の経過表及び平成
21 年 2 月の口頭指導の記録が記載された文書は存在しなかった。
エ 異議申立人は、異議申立書において、平成 21 年 4 月 24 日記載の東側
の道路入り口の件は、違反調書は作成されていないが、理由もわからず
に、作成されていて不開示とされている可能性があり不当である、平成
21 年 6 月 16 日欄に記載されている○○氏及び○○宅と関連するものか
と主張している。
この異議申立人の主張は、文書 4 の経過表(平成 21 年 4 月 23 日から
平成 22 年 1 月 25 日まで)における、「平成 21 年 4 月 24 日記載の道路
入り口の件」に関する違反調書が作成されている可能性があるところ、
当該文書が特定されていないので、当該文書を特定すべきであるという
主張と解される。
「平成 21 年 4 月 24 日記載の東側の道路入り口の件」は文書 4 の案件
に関連する事項であったため、担当者の判断により、ひとまず文書 4 の
経過表に記載したものと思われる。
なお、関連するファイルを探索したが、文書 4 の他に「平成 21 年 4 月
24 日記載の道路入り口の件」が記載された文書は存在しなかった。
オ 異議申立人は、異議申立書において、平成 22 年 1 月 25 日で経過表の
記載は終了しており、その後記載は行われていないが、何の対応も行っ
ていないことは考えられなく、何か書類があると考えられるが、不開示
とされ不当であると主張している。
この異議申立人の主張は、文書 4 の経過表(平成 21 年 4 月 23 日から
平成 22 年 1 月 25 日まで)において、平成 22 年 1 月 25 日より後にも何
683
らかの対応を行っているはずであり、その対応について記載された文書
が作成されている可能性があるところ、当該文書が特定されていないの
で、当該文書を特定すべきであるという主張と解される。
建築指導課において、同日より後の記録については、是正計画書の提
出を依頼する通知の起案文書や違反開発・建築物件の是正指導方針協議
書の起案文書などが存在し、これらの文書を特定している。なお、是正
計画書の提出を依頼する通知及び是正指導方針協議書の起案文書等を参
照することにより経過を確認できたため、担当者の判断により、経過表
には平成 22 年 1 月 25 日より後の記録が記載されていないものと思われ
る。
カ 異議申立人は、異議申立書において、平成 22 年 5 月 21 日に愛知県知
立建設事務所(以下「知立建設事務所」という。)は来庁通知書を出し
ているが、これらのことが記載された違反調書、経過表あるいはこれら
に準じる書類があると考えられるが不開示であり不当であると主張して
いる。
この異議申立人の主張は、同日に知立建設事務所が来庁通知書を発出
しているため、当該通知書に関する事項が記載された文書が作成されて
いる可能性があるところ、当該文書が特定されていないので、当該文書
を特定すべきであるという主張と解される。
来庁通知書を発出した事実は、その起案文書を参照することにより確
認できるため、担当者の判断により、あえて経過表に記載しなかったも
のと思われる。
なお、関連するファイルを探索したが、文書 4 の他に来庁通知書を発
出した旨が記載された文書は存在しなかった。
キ 異議申立人は、異議申立書において、平成 22 年 5 月 21 日に知立建設
事務所は来庁通知書を出しているが、この中で、2 件出しているが、1
件分の違反調書の開示しかされていなく、不当であると主張している。
この異議申立人の主張は、同日に知立建設事務所は 2 通の来庁通知書
を発出しているので、文書 4 の他に別の違反調書があるはずであり、そ
れを特定すべきであるという主張と解される。
当該通知書は、同一の案件に係る通知文であるため、別の違反調書を
作成すべきものではない。よって、当該通知書に関し、文書 4 の他に特
定すべき文書はない。
(5) 不開示情報該当性について
ア 条例第 7 条第 2 号該当性について
本件行政文書のうち、個人の氏名、住所、生年月日、年齢、電話番号
及び印影、登記事項証明書、住民票並びに続柄(以下「個人の氏名等」
という。)並びに建築確認済証の番号及び交付年月日、建築物の用途が
684
分かる部分、面積、建ぺい率、容積率、工事進捗状況、設計者、工事施
工者及び工事監理者がわかる部分、位置図、公図、配置図、現況図、平
面図、立面図、都市計画法の許可の日付及び番号並びに検査済証の日付
及び番号(以下「建築確認済証の番号等」という。)は、個人に関する
情報であって、特定の個人を識別することができるもの又はその記載か
らだけでは特定の個人を識別することはできないが、他の情報と照合す
ることにより、特定の個人を識別することができることとなるものであ
る。
よって、個人の氏名等及び建築確認済証の番号等は、条例第 7 条第 2
号本文に該当する。
また、個人の氏名等及び建築確認済証の番号等は、慣行として公にさ
れ、又は公にすることが予定されている情報ではないため、同号ただし
書イに該当せず、さらに、同号ただし書ロ、ハ及びニに該当しないこと
は明らかである。
したがって、個人の氏名等及び建築確認済証の番号等は、条例第 7 条
第 2 号に該当する。
イ 条例第 7 条第 3 号イ該当性について
本件行政文書のうち、法人等の名称、所在地、代表者等の氏名及び役
職名、電話番号、登記事項証明書並びに印影(以下「法人等の名称等」
という。)並びに建築確認済証の番号等は、法人等の事業活動に係る情
報である。法人等が違反建築物に関与している事実が公になると、法人
等の社会的評価が低下するおそれがあり、当該法人等の権利、競争上の
地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、法人等の名称等及び
建築確認済証の番号等は、条例第 7 条第 3 号イに該当する。
ウ 条例第 7 条第 5 号該当性について
本件行政文書のうち、違反物件の是正指導方針を検討又は協議した部
分は、県の機関の内部における検討又は協議に関する情報であって、
公にすることにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることな
どにより、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれ
るおそれがあるため、条例第 7 条第 5 号に該当する。
エ 条例第 7 条第 6 号該当性について
本件行政文書のうち、違反物件の是正指導方針を検討又は協議した部
分及び是正の期限は、県の機関が行う建築指導事務に関する情報であ
って、公にすることにより、検査、違反指導に係る事務に関し、正確
な事実の把握やその発見を困難にするなど、当該事務の性質上、当該
事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、条例第 7 条第 6
号に該当する。
オ 以上により、本件行政文書のうち、個人の氏名等、建築確認済証の
685
番号等、法人等の名称等、違反物件の是正指導方針を検討又は協議した
部分及び是正の期限を開示しないこととした。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈及び運用されなければならない。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、以下判断するものである。
(2) 本件行政文書について
本件行政文書は、違反建築物の是正指導等を行うために作成された違反
調書のうち、建築指導課が管理するものである。
本件行政文書のうち、開示しないこととした部分及びその理由は、前記
3(5)に記載のとおりである。
(3) 本件行政文書の特定について
ア 本件開示請求は、平成 20 年度以降平成 22 年度までの間において、
「違反建築物に対する愛知県の対応」に関して、①口頭による是正指導、
②文書勧告による行政指導及び③建築基準法第 9 条の命令(行政処分)
を実際に行った事例に関する書類一式を請求するものである。実施機関
は、②については文書 17 を、③については文書 7 を、①についてはこ
れらの文書を含む本件行政文書全部を特定して一部開示としている。
これに対し、異議申立人は、前記 2(2)のとおり、本件一部開示決定に
は、対象となる文書全部が特定されていない誤りがあるため、全部の文
書を特定すべきであると主張している。
もっとも、異議申立人は、異議申立書及び意見書において、文書 4 以
外の文書については何ら主張していない。また、異議申立人は、文書 4
のうち、具体的な箇所を挙げて文書特定の誤りを主張している。よって、
以下では、文書 4 のうち、異議申立人が主張する箇所について、文書特
定に誤りがあるか否かを検討することとする。
イ 文書 4 の経過表について
(ア) 平成 18 年 3 月 22 日から平成 19 年 4 月 13 日までの間について
異議申立人は、当該期間におけるやりとりが違反調書に全く記載が
されていないのは不当であり、これは平成 18 年 4 月 10 日付け及び同
年 10 月 5 日付け来庁通知書と矛盾するものであると主張している。
また、異議申立人は、別途当該期間におけるやりとりが記載された文
686
書が存在すると考えられることを主張している。
これらの異議申立人の主張は、文書 4 において、当該期間における
経過等が記載された文書が特定されていないので、当該文書を特定す
べきという主張と解される。
これに対し、実施機関は、違反建築物の是正指導に係る経過表は、
当該事務の担当者が相手方と交わした会話等、指導の経緯について記
録したもので、後日の参考となる事項を担当者が取捨選択して記録す
るものであるところ、来庁通知に係る起案文書を参照することにより
経過を確認できるため当該事項の記載が省略されているものであり、
文書 4 の他に当該事項が記載された文書は存在しないと説明している。
当審査会において、文書 4 の該当箇所を見分したところ、実施機関
が説明するとおり、平成 18 年 4 月 10 日付け及び同年 10 月 5 日付け
来庁通知書の起案文書が綴られていることが確認された。来庁通知書
の起案文書が綴られている以上、起案文書を参照すれば通知の事実を
確認できるので、事務に支障を来すとまではいえない。
よって、実施機関の説明は不合理とはいえない。
(イ) 平成 20 年 8 月 25 日から平成 21 年 4 月 23 日までの間について
異議申立人は、当該期間の経過表の記載が全くないが、その間にお
けるやりとりが記載された文書が存在すると考えられることを主張し
ている。また、異議申立人は、平成 21 年 2 月の口頭指導についての
記載がないのはあり得ないこと、当該口頭指導について、県が「担当
者の判断により、特に重要と思われない事項をあえて記載しなかった
ものと思われる。」と主張したのは不合理であることを主張している。
これらの異議申立人の主張は、文書 4 において、当該期間における
経過等が記載された文書が特定されていないので、当該文書を特定す
べきという主張と解される。
これに対し、実施機関は、前記(ア)で述べたとおり、経過表は後日
の参考となる事項を担当者が取捨選択して記録するものであって、文
書 4 の経過表に当該期間の経過等の記載が存在しないのは、担当者の
判断により、特に重要と思われない事項をあえて記載しなかったため
であると思われると説明している。
当審査会において、文書 4 を見分したところ、平成 20 年 12 月 26
日付け来庁通知書 2 通が綴られていることが確認された。よって、当
該期間における記録が、文書 4 に全く存在しないわけではない。また、
当該通知書は平成 21 年 1 月 15 日又は 19 日に知立建設事務所に来庁
するよう通知するものであること、さらに、同年 4 月 23 日の経過表
の記録には、当該来庁通知に応じてもらえなかったので、同年 2 月に
口頭による是正指導を行った旨が記載されていることが確認された。
687
当該口頭指導は当該来庁通知に付随するものであると考えられ、そう
だとすれば、来庁通知書の写しを添付したうえで、さらに記録を作成
しなければならないとまではいえない。
他に異議申立人の主張を裏付け、実施機関の説明を覆すに足りる事
情は窺われない。
よって、実施機関の説明は不合理とはいえない。
(ウ) 平成 21 年 4 月 24 日記載の「東側の道路入り口の件」について
異議申立人は、「東側の道路入り口の件」について違反調書が作成
されている可能性があり、その場合はその文書を開示すべきであると
主張している。
これに対し、実施機関は、「東側の道路入り口の件」に関する違反
調書は存在せず、「東側の道路入り口の件」は文書 4 の案件に関連す
る事項であったため、文書 4 の経過表に記載したものと思われること
を説明している。
当審査会において、事務局職員をして実施機関に「東側の道路入り
口の件」の詳細について確認をさせたところ、「東側の道路入り口の
件」は文書 4 の案件に関連する事項であることが認められた。また、
事務局職員をして実施機関に聴き取った内容を報告させたところ、
「東側の道路入り口の件」について別途違反調書を作成していること
が窺われる事情は認められなかった。
他に異議申立人の主張を裏付け、実施機関の説明を覆すに足りる事
情は窺われない。
よって、実施機関の説明は不合理とはいえない。
(エ) 平成 22 年 1 月 25 日より後の経過表について
異議申立人は、平成 22 年 1 月 25 日で経過表の記載は終了し、その
後記載は行われていないが、何の対応も行っていないことは考えられ
ないと主張している。
これに対し、実施機関は、同日より後の記録については、是正計画
書の提出を依頼する通知の起案文書や違反開発・建築物件の是正指導
方針協議書の起案文書などが存在するため、これらの文書を特定して
いるし、前記(ア)で述べたとおり、経過表は後日の参考となる事項を
担当者が取捨選択して記録するものであって、是正計画書の提出を依
頼する通知及び是正指導方針協議書の起案文書等を参照することによ
り経過を確認できたため、担当者の判断により、経過表にその旨の記
録が記載されていないものと思われると説明している。
当審査会において、文書 4 の該当箇所を見分したところ、実施機関
が説明するとおり、同日より後の記録については各種の起案文書が綴
られていることが確認された。それらの起案文書が綴られている以上、
688
起案文書を参照すれば通知等の事実を確認できるので、事務に支障を
来すとまではいえない。
よって、実施機関の説明は首肯できるものである。
ウ 文書 4 の平成 22 年 5 月 21 日付け来庁通知書について
(ア) 経過表への記載について
異議申立人は、知立建設事務所は平成 22 年 5 月 21 日に 2 通の来庁
通知書を発出しており、このことが記載された違反調書、経過表等が
存在すると考えられるところ、不開示とされたのは不当であると主張
している。また、異議申立人は、少なくとも違反のある事案について
は、一連の経過表の書類等に記載されなければならないものであって、
そうでなければ正常な業務が行えないものであるから、必ず書類が存
在するので、それを開示すべきと主張している。
これに対し、実施機関は、前記イ(ア)で述べたとおり、経過表は後
日の参考となる事項を担当者が取捨選択して記録するものであって、
来庁通知書を発出した事実は、その起案文書を参照することにより確
認できるため、担当者の判断により、あえて経過表に記載しなかった
ものと思われると説明している。
当審査会において、文書 4 の該当箇所を見分したところ、実施機関
が説明するとおり、平成 22 年 5 月 21 日付け来庁通知書に係る起案文
書が綴られていることが確認された。当該起案文書が綴られている以
上、起案文書を参照すれば通知の事実を確認できるので、事務に支障
を来すとまではいえない。
よって、実施機関の説明は首肯できるものである。
(イ) 2 通発出していることについて
異議申立人は、平成 22 年 5 月 21 日付け来庁通知書を 2 通発出して
いるのに、1 件分の違反調書しか開示されていないのは不当であると
主張している。また、異議申立人は、違反を起こしている対象及び県
の指導対象は別であるから、同一案件とする県の主張は不合理であっ
て、文書 4 以外に平成 22 年 5 月 21 日付け来庁通知書に係る違反調書
が存在するはずであるから、その文書を開示すべきであると主張して
いる。
これに対し、実施機関は、当該通知書は、同一の案件に係る通知文
であるため、別の違反調書を作成すべきものではなく、当該通知書に
関し、文書 4 の他に特定すべき文書はない旨を説明している。
当審査会において、文書 4 の該当箇所を見分したところ、当該通知
書は同一の建築物に係るものであることが認められた。
よって、実施機関の説明は首肯できるものである。
エ 以上により、本件開示請求に対し、実施機関が本件行政文書を特定し
689
たことに誤りはないものと認められる。
(4) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々の主張をしているが、本件行政文書の特定に
ついては、前記(3)において述べたとおりであることから、異議申立人の
その他の主張は、当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
(5) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
690
別表
1 開示請求の内容
2 行政文書の名称
「違反建築物に対する愛 文書 1 平成 17 年 4 月 28 日付け違反調査書 A
知県の対応」文書に関し 文書 2 平成 17 年 4 月 28 日付け違反調査書 B
て
文書 3 平成 17 年 4 月 28 日付け違反調査書 C
文書 4 平成 17 年 11 月 1 日付け違反調書
・「④口頭による是正指導 文書 5 平成 19 年 5 月 1 日付け違反調書
(行政指導)(違反者等 文書 6 平成 19 年 8 月 27 日付け違反調書
に自発的に是正してい 文書 7 平成 20 年 3 月 24 日付け違反調査書
ただくために、事情聴 文書 8 平成 20 年 4 月 1 日付け違反調書
取 、 是 正 計 画 書 の 作 文書 9 平成 20 年 5 月 7 日付け違反調書
成・提出・履行等を口 文書 10 平成 20 年 5 月 16 日付け違反調査書
頭で求めます。)」を実 文書 11 平成 20 年 6 月 16 日付け違反調書
際に行った事例に関す 文書 12 平成 20 年 7 月 22 日付け違反調査書
る書類一式(平成 20 年 文書 13 平成 20 年 8 月 29 日付け違反調書
度以降平成 22 年度まで 文書 14 平成 20 年 9 月 1 日付け経過表
について)
文書 15 平成 20 年 11 月 10 日付け違反調書
(上記については、愛 文書 16 平成 20 年 12 月 16 日付け違反調査書
知県内 9 建設事務所の 文書 17 平成 21 年 2 月 17 日付け違反調査書
決定に係るものである 文書 18 平成 21 年 3 月 26 日付け違反調査書
場合は、それらのもの 文書 19 平成 21 年 7 月 27 日付け違法建築対
が愛知県本庁に報告、
策について
協議あるいは情報提供 文書 20 平成 21 年 10 月 22 日付け違反物件
等 さ れ た も の に つ い 文書 21 平成 21 年 10 月 28 日付け相談案件
て、愛知県本庁に保管 文書 22 平成 21 年 10 月 29 日付け違反調査書
された書類一切の文
書。)
「違反建築物に対する愛
知県の対応」文書に関し
て
・「⑤文書勧告による行政
指轟(行政指導)(文書
で是正措置を勧告)」を
文書 17 平成 21 年 2 月 17 日付け違反調査書
実際に行った事例に関
する書類一式(平成 20
年度以降平成 22 年度ま
でについて)
(上記については、愛知
県内 9 建設事務所の決
定に係るものである場
691
合は、それらのものが
愛知県本庁に報告、協
議あるいは情報提供等
されたものについて、
愛知県本庁に保管され
た書類一切の文書。)
「違反建築物に対する愛
知県の対応」文書に関し
て
・「⑥命令(行政処分:建
築基準法第 9 条)
(違反
の是正は、行政指導に
より違反者自身が自主
的に取り組むことが望
ましいが、違反者が指
導に従わない場合には、
「命令」という強制的
な手段をとります。)」
文書 7
を実際に行った事例に
関する書類一式(平成
20 年度以降平成 22 年
度までについて)
(上記については、愛知
県内 9 建設事務所の決
定に係るものである場
合は、それらのものが
愛知県本庁に報告、協
議あるいは情報提供等
されたものについて、
愛知県本庁に保管され
た書類一切の文書。)
平成 20 年 3 月 24 日付け違反調査書
692
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.11.10
諮問
23.
実施機関から不開示理由説明書を受理
9.30
23.10.
4
23.10.21
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
異議申立人から不開示理由説明書に対する意見書を受理
23.10.31
(第 342 回 審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23.12. 1
(第 345 回審査会)
審議
24. 1.16
(第 349 回審査会)
審議
693
答申第 601 号
諮問第 942 号
件名:学校経営案等の開示決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。
)が、別表 1 の 1 欄に掲
げる項目 1 から項目 4 までの開示請求(以下、併せて「本件開示請求」とい
う。)に対し、同表の 2 欄の第 1 分類から第 4 分類までに掲げる 115 の行政
文書(以下、併せて「本件行政文書」という。)を特定して開示としたこと
は妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 21 年 6 月 9 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同年 7 月 23 日付けで本件
行政文書を特定して行った開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係わる行政文書
の全部を対象とすべきである、文書特定に誤りがあるというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件行政文書を特定して開示としたと
いうものである。
(1) 本件行政文書について
ア 第 1 分類に掲げる文書について
本件行政文書のうち、第 1 分類に掲げる文書 1 から 27 までの文書は、
平成 20 年 4 月 1 日から本件開示請求がなされた日である平成 21 年 6 月
9 日までの間(以下「本件請求対象期間」という。)に、教育委員会学
習教育部特別支援教育課(以下「特別支援教育課」という。)が愛知県
立一宮養護学校(以下「一宮養護学校」という。)から収受したもので
あり、特別支援教育課が各特別支援学校に行った調査等の回答、事業の
計画書及び報告書、学校行事の計画書等である。
イ 第 2 分類に掲げる文書について
本件行政文書のうち、第 2 分類に掲げる文書 28 から 85 までの文書は、
694
本件請求対象期間に、特別支援教育課から一宮養護学校へ送付したもの
であり、当該学校へ通知、調査又は配付依頼のために送付したもの、各
種事務手続に係るもの等である。
ウ 第 3 分類に掲げる文書について
県立学校に関する校長会には、愛知県立高等学校長会、愛知県公立高
等学校長会があり、この他に特別支援学校に関する校長会として特別支
援学校長会がある。また、県立学校に関する教頭会には、愛知県立学校
教頭会があり、この他に特別支援学校に関する教頭会として愛知県特別
支援学校教頭会がある。校長会又は教頭会は、校長又は教頭が集まり、
種々の協議や情報交換を行う会である。
本件行政文書のうち、第 3 分類に掲げる文書 86 から 103 までの文書
は、本件請求対象期間において、特別支援学校長会で配付された特別支
援学校長会配付資料及び愛知県特別支援学校教頭会で配付された愛知県
立学校教頭会が発行する教頭会報である。
その他、上記校長会とは別に県立学校長会議が開催されることがある。
特別支援学校長会配付資料の中には、県立学校長会議の直後に行われる
特別支援学校長会で必要に応じて配付される県立学校長会議配付資料が
含まれることもあり、文書 86 はそのような文書である。
エ 第 4 分類に掲げる文書について
本件行政文書のうち、第 4 分類に掲げる文書 104 から 115 までの文書
は、本件請求対象期間に、特別支援教育課が行った、特別支援学校への
学校訪問において各校に指導又は助言を行ったものを記録した文書であ
る。
(2) 本件行政文書を特定した理由
ア 第 1 分類に掲げる文書について
特別支援教育課が特別支援学校から収受する文書は、ほとんどが特別
支援学校に調査等を依頼した案件に対する回答や提出書類である。本件
請求対象期間において、特別支援学校に回答や提出を求めた依頼文等を
調べた結果、第 1 分類に掲げる文書 1 から 27 までの文書及び別表 2 の
2 欄の第 1-2 分類に掲げる文書 116 から 121 までの文書がリストアップ
され、これら以外の文書はなかった。そして、全部開示できるものとし
て第 1 分類に掲げる文書を、不開示とすべき部分があるものとして第
1-2 分類に掲げる文書をそれぞれ特定した。なお、本件請求対象期間内
に、一宮養護学校のみに回答、提出等を求めたことはなかった。
また、特別支援学校で事故等があった場合は、特別支援教育課は特別
支援学校から事故等に関する報告を受けることがあるため、当該報告に
係る文書についても調べたところ、本件請求対象期間に一宮養護学校か
ら特別支援教育課に提出されたものは見当たらなかった。
695
したがって、本件請求対象期間内に特別支援教育課が一宮養護学校か
ら収受した文書は、第 1 分類及び第 1-2 分類に掲げる文書以外に存在し
ない。
イ 第 2 分類に掲げる文書について
本件請求対象期間において、特別支援教育課が特別支援学校へ送付し
た文書については、特別支援教育課で保管している平成 20 年度及び平
成 21 年度の起案綴りをすべて調べた結果、第 2 分類に掲げる文書 28 か
ら 85 までの文書及び別表 2 の 2 欄の第 2-2 分類に掲げる文書 122 から
130 までの文書がリストアップされ、これら以外のものは存在しなかっ
た。そして、全部開示できるものとして第 2 分類に掲げる文書を、不開
示とすべき部分があるものとして第 2-2 分類に掲げる文書をそれぞれ特
定した。また、特別支援教育課において、他に請求対象となる文書がな
いか、関連すると思われるファイルを探索したが、該当する文書は見当
たらなかった。
なお、本件請求対象期間内には、一宮養護学校のみに送付したことは
なかった。
したがって、本件請求対象期間内に一宮養護学校へ送付した文書は、
第 2 分類及び第 2-2 分類に掲げる文書以外には存在しない。
ウ 第 3 分類に掲げる文書について
特別支援教育課が校長会又は教頭会から入手する文書は、概ね月 1 回
の頻度で定期的に行われる特別支援学校長会において配付される資料及
び年 2 回の頻度で定期的に行われる愛知県特別支援学校教頭会において
配付される資料のみである。これら以外に、校長会又は教頭会から特別
支援教育課が何らかの文書を入手することはない。第 3 分類に掲げる文
書 86 から 103 までの文書は、これらの会議で配付された資料である。
したがって、本件請求対象期間内に校長会及び教頭会から入手した文
書は、第 3 分類に掲げる文書以外には存在しない。
エ 第 4 分類に掲げる文書について
特別支援教育課が特別支援学校に対して指導又は助言を行うのは、各
特別支援学校への学校訪問を行う場合又は特別支援学校において何らか
の事故等が発生したときに報告を受けた場合である。本件請求対象期間
において、特別支援教育課が各特別支援学校へ指導又は助言した文書に
ついて、平成 20 年度及び平成 21 年度の学校訪問ファイルを調べたとこ
ろ、第 4 分類に掲げる文書 104 から 115 までの文書以外には存在しなか
った。特別支援教育課において、他に請求対象となる文書がないか、関
連すると思われる事故関係ファイルを探索したが、該当する文書は見当
たらなかった。
ところで、特別支援教育課は、特別支援学校に対する学校訪問を毎年
696
度計画的に実施しており、年度当初に各特別支援学校に対し、訪問を実
施する学校及び期日を通知している。平成 20 年度の学校訪問について
は、第 4 分類で特定された特別支援学校の他にも、3 校の学校訪問を実
施しているが、学校訪問報告書を作成することとしたのは平成 20 年 9
月からであり、それ以前は、学校訪問の際に特別支援学校から提出され
た資料を供覧するのみで、特別支援学校に対する指導又は助言の内容に
ついては、口頭で報告していた。よって、平成 20 年 9 月より前に学校
訪問を実施した 3 校分については、特別支援学校に対する指導又は助言
が記載されている文書は存在しない。
したがって、本件請求対象期間内に作成された文書のうち、特別支援
学校への指導又は助言の内容が記載された文書は、第 4 分類に掲げる文
書以外には存在しない。
(3) 本件行政文書の閲覧について
異議申立人は、開示の実施の方法として、閲覧を希望していたにもか
かわらず、開示決定した本件行政文書を全く閲覧していない。異議申立
人は、異議申立書において、開示請求に係る行政文書の全部を特定すべ
きである、文書特定に誤りがあると主張しているが、何を根拠に文書特
定に誤りがあると主張するものか、不明である。
4
審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例は、第 1 条に規定されているとおり、行政文書の開示を請求する権
利を保障し、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有
するその諸活動を県民に説明する責務が全うされ、公正で民主的な県政の
推進に資することを目的として制定されたものであり、原則開示の理念の
もとに解釈・運用されなければならない。
そして、この目的を達成するためには、開示請求の対象となる行政文書
が適切に特定されることが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件開示請求
に係る文書の特定について、以下判断するものである。
(2) 本件行政文書の特定について
本件行政文書は、項目 1 から項目 4 までの 4 つの請求項目に対する第 1
分類から第 4 分類までに掲げる 115 の文書である。実施機関は、本件行政
文書の全てを開示としている。
なお、項目 1 及び項目 2 の 2 つの請求項目について、実施機関は、対象
行政文書のうち、不開示とすべき部分がある行政文書については、別表 2
の 2 欄の第 1-2 分類及び第 2-2 分類に掲げるとおり、15 の行政文書(以
697
下「別件行政文書」という。)を特定して、別途一部開示決定している。
異議申立人は、開示請求に係る行政文書の全部を対象とすべきであり、
文書特定に誤りがあると主張している。
よって、本件開示請求に対し、実施機関が特定した本件行政文書及び別
件行政文書のほかに、対象となる行政文書があるか否かについて、以下検
討する。
ア 第 1 分類及び第 1-2 分類並びに第 2 分類及び第 2-2 分類に掲げる文
書について
(ア) 第 1 分類及び第 1-2 分類に掲げる文書は、
「学校経営案(平成 20 年
度)」等、項目 1 に対して実施機関が特定した文書 1 から 27 まで及び
文書 116 から 121 までの 33 の文書である。
第 2 分類及び第 2-2 分類に掲げる文書は、「平成 20 年度訪問教育児
童生徒集団学習の実施について(依頼)(平成 20 年 4 月 2 日)」等、
項目 2 に対して実施機関が特定した文書 28 から 85 まで及び文書 122
から 130 までの 67 の文書である。
(イ) これらの文書の作成日付等を見ると、本件請求対象期間において満
遍なく特定されており、ある時期のものだけが欠落しているとは認め
られない。
また、文書の内容も、通知、依頼、照会、回答、報告など一般的に
想定される様々な種類の文書が特定されており、ある種類のものだけ
が見落とされ、特定されていないとも認められない。
さらに、実施機関は、各特別支援学校に回答や提出を求めた依頼文
書や特別支援教育課で保管している平成 20 年度及び平成 21 年度の起
案綴り等対象となる行政文書が存在すると考えられる行政文書ファイ
ルを探索したと説明しているが、その探索の仕方が不十分であるとの
明らかな事情も認められない。
なお、異議申立人からは、項目 1 及び項目 2 に対する対象行政文書
の特定の誤りについて、具体的な主張はされていない。
(ウ) 以上のことから、項目 1 及び項目 2 の開示請求に対し、実施機関が
第 1 分類及び第 1-2 分類並びに第 2 分類及び第 2-2 分類に掲げる文書
を特定したことに特段不自然、不合理な点はないものと認められる。
イ 第 3 分類に掲げる文書について
第 3 分類に掲げる文書は、
「平成 20 年度第 1 回県立学校長会議配付資
料」等、項目 3 に対して実施機関が特定した文書 86 から 103 までの 18
の文書である。
実施機関によれば、校長会又は教頭会は、校長又は教頭が集まり、
種々の協議や情報交換を行う会であり、校長会には特別支援学校長会等
が、教頭会には愛知県特別支援学校教頭会等があるとのことである。
698
また、特別支援教育課が校長会又は教頭会から入手する文書は、概ね
月 1 回の頻度で定期的に行なわれる特別支援学校長会で配付される資料
及び年 2 回の頻度で定期的に行われる愛知県特別支援学校教頭会で配付
される資料のみであるとのことであり、特別支援学校長会で配付される
資料の中には、県立学校長会議の直後に行われる特別支援学校長会で必
要に応じて配付される県立学校長会議配付資料が含まれるとのことであ
る。
当審査会において、当該文書の作成日付等を見分したところ、本件請
求対象期間において、実施機関が説明する間隔において満遍なく特定さ
れており、ある時期のものだけが欠落しているとは認められなかった。
さらに、異議申立人からは、項目 3 に対する対象行政文書の特定の誤
りについて、具体的な主張はされていない。
以上のことから、項目 3 の開示請求に対し、実施機関が第 3 分類に掲
げる文書を特定したことに特段不自然、不合理な点はないものと認めら
れる。
ウ 第 4 分類に掲げる文書について
第 4 分類に掲げる文書は、
「平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20
年 9 月 10 日:豊田養護学校)」等、項目 4 に対して実施機関が特定した
文書 104 から 115 までの 12 の文書である。
実施機関によれば、特別支援教育課が特別支援学校に対して指導又は
助言を行うのは、各特別支援学校への学校訪問を行う場合又は特別支援
学校において何らかの事故等が発生したときに報告を受けた場合である
とのことである。また、本件請求対象期間において、特別支援教育課が
各特別支援学校へ指導又は助言を行った文書について、学校訪問ファイ
ルを調べたところ、第 4 分類に掲げる文書 104 から 115 までの文書、す
なわち学校訪問報告書以外には存在しなかったとのことである。
当審査会において、第 4 分類に掲げる文書を見分したところ、当該報
告書には、学校管理・学校運営等に関する評価、授業参観の所感、管理
職員等との懇談内容と指導事項等が記載されており、当該報告書は特別
支援学校に対する指導又は助言について記載されている文書であると認
められた。
ところで、実施機関によると、平成 20 年度の学校訪問については、
第 4 分類で特定された特別支援学校の他にも 3 校の学校訪問を実施して
いるとのことである。そして、学校訪問報告書を作成することとしたの
は平成 20 年 9 月からであり、それ以前は学校から提出された資料を供
覧するのみで、学校に対する指導又は助言の内容については、口頭で報
告していたため、特別支援学校に対する指導、助言が記載されている文
書はないとのことである。
699
当審査会において、事務局職員をして、特別支援教育課が管理する平
成 20 年度の学校訪問ファイルを確認させたところ、平成 20 年 9 月より
前の 3 校分については、実施機関の説明のとおりであり、特別支援学校
に対する指導又は助言が記載されている文書の存在は確認できなかった
こと及び学校訪問報告書の他に、特別支援学校に対する指導又は助言が
記載された文書の存在は認められなかったことが報告された。
また、実施機関は、平成 20 年度及び平成 21 年度の学校訪問ファイル
の他に、関連する事故関係ファイルを探索したと説明しており、その探
索の仕方が不十分であるとの明らかな事情も認められない。
さらに、異議申立人からは、項目 4 に対する対象行政文書の特定の誤
りについて、具体的な主張はされていない。
以上のことから、項目 4 の開示請求に対し、実施機関が第 4 分類に掲
げる文書を特定したことに特段不自然、不合理な点はないものと認めら
れる。
エ ところで、本件異議申立書には異議申立ての理由として、単に開示請
求に係わる行政文書の全部を対象とすべきである、文書特定に誤りがあ
ると記載されているのみで、その具体的な理由は一切記載されていない。
また、当審査会において、実施機関が作成した開示理由説明書を異議
申立人に送付した際、異議申立人に対し、実施機関の開示理由に対する
意見・反論等を書面で提出するよう求めたが何ら提出はなく、また、意
見陳述の機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかった。
さらに、実施機関の説明によると、異議申立人は、開示決定した本件
行政文書を閲覧することもなく、本件異議申立てを提起したとのことで
ある。
当審査会は、異議申立人、実施機関それぞれの主張を聞いて、本件開
示請求に係る文書の特定が妥当であるか否かを判断するものであるが、
このような状況では、異議申立人がさらにどのような文書を特定すべき
と主張しているのかが不明である。本件開示請求は、年間を通じて特別
支援教育課が特別支援学校とやりとりをした文書のすべてを請求するも
のであり、特定した文書は 130 件に及ぶという事情を考慮すると、異議
申立人が真に本件行政文書以外の文書の開示を求めているのか疑問の余
地さえある。
(3) 結論
前記(2)で述べたとおり、本件開示請求に対し、実施機関が特定した本
件行政文書及び別件行政文書のほかに、対象となる行政文書は存在しない
ものと認められる。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
700
別表 1
1
開示請求の内容
2
行政文書の名称
項目1
第1分類
特別支援教育課分
文書1 学校経営案(平成 20 年度)
一 宮 養護 学校 か ら収
文書2 学校要覧(平成 20 年度)
受した文書(H20 年
文書3 平成 20 年度「心をつなぐ学校づくり推進事業」実施計画書
度、H21 年度)
文書4 平成 21 年度使用教科書一覧表
文書5 平成 20 年度教科書以外の使用教材の届け出について(平成 20 年 4 月 17
日)
文書6 平成 20 年度自立支援推進事業実績報告書
文書7 平成 20 年度教科用図書(小学部)関係書類について(提出)
(平成 20 年 4
月 7 日)
文書8 平成 21 年 3 月特別支援学校高等部卒業予定者の就職内定状況等に関する調
査票(平成 21 年 3 月末現在)
文書9 平成 21 年 3 月特別支援学校高等部卒業者の進路状況に関する調査票(平成
21 年 3 月末現在)
文書 10 平成 21 年 3 月特別支援学校高等部卒業予定者の就職内定状況等に関する調
査票(平成 21 年 1 月末現在)
文書 11 平成 21 年 3 月特別支援学校高等部卒業予定者の就職内定状況等に関する調
査票(平成 20 年 12 月末現在)
文書 12 平成 21 年 3 月特別支援学校高等部卒業予定者の就職内定状況等に関する調
査票(平成 20 年 10 月末現在)
文書 13 平成 21 年 3 月特別支援学校高等部卒業予定者の就職内定状況等に関する調
査票(平成 20 年 9 月末現在)
文書 14 平成 18・19・20 年 3 月特別支援学校高等部卒業者の離職状況等に関する調
査票
文書 15 平成 20 年度交通機関利用状況調査について(報告)
(平成 20 年 4 月 10
日)
文書 16 二学期終業式及び三学期始業式の期日等について(回答)
(平成 20 年 10 月
23 日)
文書 17
卒業・修了証書授与式、三学期終業式・修了式、入学式及び一学期始業式
の期日等について(回答)
(平成 20 年 12 月 26 日)
文書 18 暴風・大雨等各種警報発表にともなう登下校の対応について
文書 19 平成 20 年度教科用図書関係書類について(提出)
(平成 20 年 9 月 1 日)
文書 20 平成 20 年度教科用図書関係書類について(提出)
(平成 20 年 10 月 16 日)
文書 21 特別支援教育のセンター的役割・関係機関との連携について
701
文書 22 学校経営案(平成 21 年度)
文書 23 学校要覧(平成 21 年度)
文書 24 平成 21 年度教科書以外の使用教材の届け出について(平成 21 年 4 月 20
日)
文書 25 平成 21 年度「地域とふれあう学校づくり推進事業」について(報告)
(平
成 21 年 4 月 10 日)
文書 26 平成 21 年度通学状況調査について(報告)(平成 21 年 5 月 21 日)
文書 27 平成 21 年度訪問教育児童生徒集団学習実施計画書
項目2
第2分類
特別支援教育課分
文書 28 平成 20 年度訪問教育児童生徒集団学習の実施について(依頼)
(平成 20 年
一 宮 養護 学校 へ 発出
し た 文 書 ( H 20 年
4 月 2 日)
文書 29 平成 20 年度県立特別支援学校の学校訪問について(通知)
(平成 20 年 4 月
度、H21 年度)
3 日)
文書 30
平成 20 年度障害児等療育支援事業療育支援研修会<後期>の実施について
(通知)(平成 20 年 9 月 22 日)
文書 31
平成 20 年度国立特別支援教育総合研究所研究パートナーの募集について
(平成 20 年 7 月 1 日)
文書 32 「第 2 回塙保己一賞」候補者の募集について(依頼)
(平成 20 年 6 月 11
日)
文書 33 「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム 2008in世田谷の開催
について(通知)(平成 20 年 9 月 25 日)
文書 34 特別支援教育コーディネーターに関する調査について(依頼)
(平成 20 年
4 月 1 日)
文書 35 平成 18・19・20 年 3 月特別支援学校高等部卒業者の離職状況等に関する調
査について(依頼)
(平成 20 年 9 月 2 日)
文書 36
卒業・修了証書授与式、三学期終業式・修了式、入学式及び一学期始業式
の期日等について(照会)
(平成 20 年 12 月 11 日)
文書 37 平成 20 年度障害児等療育支援事業療育支援研修会の実施について(通知)
(平成 20 年 4 月 2 日)
文書 38 平成 20 年度障害児等療育支援事業療育支援研修会の参加希望の提出につい
て(通知)
(平成 20 年 10 月 7 日)
文書 39 平成 20 年度特別支援教育教育課程研究集会の開催について(通知)(平成
20 年 5 月 21 日)
文書 40
フラワー・ブラボー・コンクール学校花壇指導者講習会の開催について
(通知)(平成 20 年 7 月 3 日)
文書 41 「第 27 回中学生非行防止ポスターコンクール」への応募について(通知)
(平成 20 年 6 月 18 日)
文書 42 24 時間いじめ等の相談窓口紹介カードの配付について(依頼)
(平成 21 年
702
2 月 24 日)
文書 43 学校関係者向け児童虐待防止セミナーの開催について(通知)
(平成 20 年
7 月 14 日)
文書 44 児童虐待防止セミナーの開催について(通知)
(平成 20 年 9 月 25 日)
文書 45 平成 20 年度「子どもの人権 SOS ミニレター」事業の実施について(依頼)
(平成 20 年 9 月 19 日)
文書 46 人権の尊重について(通知)(平成 20 年 9 月 25 日)
文書 47 拉致問題啓発アニメ「めぐみ」の配付について(依頼)
(平成 20 年 7 月 14
日)
文書 48 平成 21 年 3 月特別支援学校高等部卒業予定者の就職内定状況等に関する調
査について(依頼)
(平成 20 年 9 月 2 日)
文書 49 平成 20 年度自立支援推進事業の実施について(通知)
(平成 20 年 4 月 21
日)
文書 50 平成 21 年度知的障害者等委託訓練の訓練生募集について(依頼)
(平成 20
年 8 月 28 日)
文書 51 平成 21 年度愛知障害者職業能力開発校の訓練生募集について(依頼)
(平
成 20 年 8 月 20 日)
文書 52 「ジョブ・カード制度」の実施について(通知)
(平成 20 年 6 月 3 日)
文書 53 『新「ことば」シリーズ21』の配布について(通知)
(平成 20 年 10 月
30 日)
文書 54 「第 2 回人と自然の共生国際フォーラム」の開催案内及び広報活動につい
て(依頼)(平成 20 年 9 月 29 日)
文書 55 環境学習副読本「わたしたちと環境」の配付について(依頼)
(平成 20 年
5 月 14 日)
文書 56 「ガイアナイト」チラシ送付について(依頼)
(平成 20 年 6 月 27 日)
文書 57 トヨタ財団 2008(平成20)年度「地域社会プログラム・ユース助成」に
ついて(通知)
(平成 20 年 9 月 29 日)
文書 58 子どもの読書活動と学校図書館に関する広報リーフレットの配布について
(依頼)(平成 20 年 10 月 6 日)
文書 59 平成 20 年度学校図書館司書教諭講習の実施について(通知)
(平成 20 年 5
月 28 日)
文書 60
「CHECK
PC!キャンペーン」のポスターの配付・掲示等について
(依頼)(平成 21 年 2 月 3 日)
文書 61
学校における地上デジタルテレビの整備・活用に係る広報パンフレットに
ついて(依頼)
(平成 20 年 11 月 12 日)
文書 62 平成 21 年度県立学校経営案作成に関する特別支援学校における作成上の留
意事項について(通知)
(平成 21 年 2 月 17 日)
文書 63 平成 20 年度卒業式の期日について(通知)(平成 20 年 11 月 10 日)
703
文書 64 二学期終業式及び三学期始業式の期日等について(照会)
(平成 20 年 10 月
10 日)
文書 65 一学期終業式及び二学期始業式の実施期日等について(照会)
(平成 20 年
5 月 23 日)
文書 66 入学志願者数及び入学者選考結果の報告について(依頼)
(平成 21 年 2 月
2 日)
文書 67 平成 21 年度「地域とふれあう学校づくり推進事業」について(通知)
(平
成 21 年 3 月 2 日)
文書 68 平成 21 年度特別支援学校の学級編成計画資料の提出について(依頼)
(平
成 20 年 6 月 20 日)
文書 69 平成 20 年度教員を対象とした消費者教育講座の実施について(通知)
(平
成 20 年 12 月 19 日)
文書 70 平成 20 年度初任者研修の実施に伴う予算の執行について(通知)
(平成 20
年 3 月 24 日)
文書 71 看護師特別非常勤講師の発令について(通知)
(平成 20 年 12 月 11 日)
文書 72 平成 21 年度 障害児等療育支援事業 療育支援研修会の実施について(通
知)(平成 21 年 4 月 2 日)
文書 73 平成 21 年度訪問教育児童生徒集団学習の実施について(依頼)
(平成 21 年
4 月 2 日)
文書 74 特別支援教育コーディネーターに関する調査について(依頼)
(平成 21 年
4 月 3 日)
文書 75 平成 21 年度県立特別支援学校の学校訪問について(通知)
(平成 21 年 4 月
8 日)
文書 76 平成 21 年度自立支援推進事業の実施について(通知)
(平成 21 年 4 月 8
日)
文書 77 平成 21 年度通学状況調査について(通知)(平成 21 年 4 月 13 日)
文書 78 平成 21 年度用算数・数学、理科の補助教材の点字版・拡大版の調査につい
て(依頼)
(平成 21 年 4 月 15 日)
文書 79
小学校児童指導要録、中学校生徒指導要録、高等学校生徒指導要録、中等
教育学校生徒指導要録並びに特別支援学校の小学部児童指導要録、中学部
生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の作成・保存について(通知)(平成
21 年 5 月 11 日)
文書 80 環境副読本「わたしたちと環境」の配付について(依頼)
(平成 21 年 5 月
21 日)
文書 81
愛知県内における新型インフルエンザ発生に備えた当面の対応について
(平成 21 年 5 月 25 日)
文書 82 特別支援学校における危機管理に関する研修について(依頼)
(平成 21 年
5 月 26 日)
704
文書 83
「小学校児童指導要録、中学校生徒指導要録、高等学校生徒指導要録、中
等教育学校生徒指導要録並びに特別支援学校の小学部児童指導要録、中学
部生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の作成・保存について(通知)」に
伴う、幼稚園幼児指導要録及び特別支援学校幼稚部幼児指導要録の作成・
保存について(通知)(平成 21 年 6 月 3 日)
文書 84
「小学校児童指導要録、中学校生徒指導要録、高等学校生徒指導要録、中
等教育学校生徒指導要録並びに特別支援学校の小学部児童指導要録、中学
部生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の作成・保存について(通知)」に
伴う、幼稚園幼児指導要録及び特別支援学校幼稚部幼児指導要録の作成・
保存について(通知)(平成 21 年 6 月 9 日)
文書 85 平成 21 年度特別支援学校新教育課程講習会について(依頼)
(平成 21 年 6
月 9 日)
項目3
第3分類
特別支援教育課分
文書 86 平成 20 年度第 1 回県立学校長会議配付資料
校 長 会、 教頭 会 (県
文書 87 教頭会報(愛知県立学校教頭会 No,61 20. 8.27)配付資料
立 学 校、 特別 支 援学
文書 88 教頭会報(愛知県立学校教頭会 No,62 21. 3. 4)配付資料
校 等 も含 む) で 入手
文書 89 平成 20 年度第 1 回特別支援学校長会配付資料
し た 文 書 ( H 20 年
文書 90 平成 20 年度第 2 回特別支援学校長会配付資料
度、H21 年度)
文書 91 平成 20 年度第 3 回特別支援学校長会配付資料
文書 92 平成 20 年度第 4 回特別支援学校長会配付資料
文書 93 平成 20 年度第 5 回特別支援学校長会配付資料
文書 94 平成 20 年度第 6 回特別支援学校長会配付資料
文書 95 平成 20 年度第 7 回特別支援学校長会配付資料
文書 96 平成 20 年度第 8 回特別支援学校長会配付資料
文書 97 平成 20 年度第 9 回特別支援学校長会配付資料
文書 98 平成 20 年度第 10 回特別支援学校長会配付資料
文書 99 平成 20 年度第 11 回特別支援学校長会配付資料
文書 100 平成 20 年度第 12 回特別支援学校長会配付資料
文書 101 平成 21 年度第 1 回特別支援学校長会配付資料
文書 102 平成 21 年度第 2 回特別支援学校長会配付資料
文書 103 平成 21 年度第 3 回特別支援学校長会配付資料
項目4
第4分類
特別支援教育課分
文書 104 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 9 月 10 日:豊田養護学校)
特 別 支援 学校 へ の指
文書 105 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 10 月 17 日:小牧養護学校)
導 ・ 助言 が記 載 され
文書 106 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 10 月 22 日:佐織養護学校)
ている文書(H20 年
文書 107 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 10 月 23 日:岡崎養護学校)
度、H21 年度)
文書 108 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 10 月 29 日:豊川養護学校)
文書 109 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 11 月 5 日:岡崎盲学校)
705
文書 110 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 11 月 12 日:岡崎聾学校)
文書 111 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 11 月 14 日:千種聾学校)
文書 112 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 11 月 19 日:一宮聾学校)
文書 113 平成 20 年度 学校訪問報告書(平成 20 年 11 月 28 日:ひいらぎ養護学
校)
文書 114 平成 21 年度 学校訪問報告書(平成 21 年 5 月 25 日:名古屋聾学校)
文書 115 平成 21 年度 学校訪問報告書(平成 21 年 6 月 3 日:豊橋養護学校)
別表 2
1
開示請求の内容
2
行政文書の名称
項目1
第1-2分類
特別支援教育課分
文書 116 平成 20 年度用教科用図書給与児童名簿(前期用)
一宮養護学校から収
文書 117 平成 21 年度「校長の求めに応じ学校運営に関して意見を述べることがで
受した文書(H20 年
度、H21 年度)
きる者」について(推薦)(平成 21 年 3 月 5 日)
文書 118 特別支援教育コーディネーターについて(平成 20 年度)
文書 119 平成 20 年度教科用図書関係書類について(提出)
(平成 21 年 2 月 26 日)
文書 120 平成 21 年度用教科用図書給与児童名簿(前期用)
文書 121 特別支援教育コーディネーターについて(平成 21 年度)
項目2
第2-2分類
特別支援教育課分
文書 122 「黄色いワッペン」の配付について(依頼)
(平成 21 年 2 月 16 日)
一宮養護学校へ発出
文書 123
し た 文 書 ( H 20 年
度、H21 年度)
冊子「実践事例アイディア集」Vol.16 の送付について(依頼)(平成 20
年 4 月 9 日)
文書 124 平成 21 年度助成事業「第 35 回実践研究助成」について(通知)
(平成 20
年 12 月 5 日)
文書 125
「ICT 教育環境整備ハンドブック」(2008 年版)の送付について(依頼)
(平成 20 年 4 月 9 日)
文書 126 教育旅行に係るアンケートについて(依頼)
(平成 20 年 7 月 18 日)
文書 127 映画「ふるさとをください」上映の協力について(依頼)
(平成 21 年 1 月
13 日)
文書 128
冊子「実践事例アイディア集」Vol.17 の送付について(依頼)(平成 21
年 4 月 24 日)
文書 129
「ICT 教育環境整備ハンドブック」(2009 年版)の送付について(依頼)
(平成 21 年 4 月 24 日)
文書 130 看護師特別非常勤講師の発令について(通知)
(平成 21 年 3 月 30 日)
706
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.
7.15
諮問
23.
9.21
実施機関から開示理由説明書を受理
23.
9.26
異議申立人に実施機関からの開示理由説明書を送付
23. 9.29
(第 339 回審査会)
実施機関職員から開示理由等を聴取
23.12.19
(第 347 回審査会)
審議
24. 2.22
(第 352 回審査会)
審議
707
答申第 602 号
諮問第 970 号
件名:補正要求書が「直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するこ
とが法律上認められるもの」に該当しないことを説明した文書等の不開
示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が別記に掲げる文書
(以下「本件請求対象文書」という。)について、不存在を理由として不開
示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 5 月 14 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 27 日付けで行った不
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、次のとおりである。
開示請求に係る行政文書を作成又は取得している。教育企画室は特別支
援学校に対して開示請求の文書の有無に関して指示を出している。特別支
援学校の教頭が返事できないのは、特定の職員が開示請求に係る文書をも
っているからである。
形式上の不備についても、特定の職員が特別支援学校に対して指示して
いる。職員会議に配布された文書の有無に関して、学校が返答できないの
は、特定の職員を含む教育企画室職員の指示である。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取得して
おらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 別記文書 1(以下「文書 1」という。別記文書 2 以下も同様とする。
)に
ついて
本件開示請求において、文書 1 に関しては、特定の決定に関係する開示
請求である旨記載されている。当該決定は、異議申立人の自己情報開示請
求に対する不開示決定について、同人から異議申立てがなされたが、異議
708
申立ての理由に誤りがあったため、補正を求めたところ、補正を拒否する
旨の異議申立てがなされたため、補正依頼は不服申立てが可能な処分には
該当せず、不適法な異議申立てであるとして却下の決定を行ったものであ
る。
行政不服審査法(昭和 37 年法律第 160 号。以下「法」という。
)第 4 条
における不服申立てが可能な処分とは、「公権力の主体たる国または公共
団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、
またはその範囲を確定することが法律上認められているもの(最高裁判所
昭和 39 年 10 月 29 日判決)
」とされていることから、文書 1 は、不適法な
異議申立てに対し補正を要求することが行政処分に該当しないことを説明
した文書であると解した。
行政処分に対する異議申立てに関しては、法第 2 章第 3 節に処分につい
ての異議申立ての規定がある。教育委員会では、異議申立てが適法である
か否かについては、法に基づいて判断するものであり、文書 1 に該当する
ような文書を作成する必要はない。
以上のことから、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存
在)とした。
(2) 文書 2 について
本件開示請求において、文書 2 に関しては、特定の行政文書一部開示決
定通知書が例示されているが、当該文書は異議申立人に送付した行政文書
一部開示決定通知書であり、この決定通知書では、開示を実施する日時を
平成 22 年 5 月 14 日午後 3 時としていた。しかし、異議申立人から午後 3
時に来庁するかわからないとの連絡があったため、開示の担当課職員は、
異議申立人が来庁してから開示場所である愛知県県民生活部県民生活課の
情報コーナーに向かうこととし、午後 3 時には情報コーナーに待機してい
なかった。ところが、実際には異議申立人が午後 3 時に来庁したことから、
本件開示請求が提出されたものと考えられる。
よって、文書 2 は、開示の実施日時に開示の担当課職員が開示場所に行
かなかった事例が記載されている文書であると解した。
開示決定通知書及び一部開示決定通知書には、開示請求者と調整の上、
開示を実施する日時を記入することになっていることから、開示の実施日
時に担当課職員が開示場所に行かない事態は通常起こりえない。したがっ
て、そのような場合に文書を作成することも想定していない。念のため、
そういった事例を記載した文書があるかどうかを確認したが、存在しなか
った。
以上のことから、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存
在)とした。
(3) 文書 3 から 5 までの文書について
709
文書 3 から 5 までの文書は、教育委員会学習教育部特別支援教育課(以
下「特別支援教育課」という。)、義務教育課(以下「義務教育課」とい
う。)等が開示請求に係る形式上の不備について調査した文書である。
条例第 6 条第 2 項では、実施機関は開示請求書に形式上の不備があると
認めるときは、開示請求者に対し補正を求めることができる旨が規定され
ている。また、愛知県情報公開条例解釈運用基準の第 6 条関係(開示請求
の手続)によれば、「形式上の不備」とは、開示請求に係る行政文書を特定
するための十分な記載がないなど、開示請求書に必要とされる記載事項に
外形上明確に判断し得る不備があることをいうものであるとされている。
また、自己情報開示請求に係る補正についても、愛知県個人情報保護条例
(平成 16 年愛知県条例第 66 号。以下「個人情報保護条例」という。)第
16 条第 3 項及び愛知県個人情報保護条例解釈運用基準の第 16 条関係に同
様の規定がある。
教育委員会では、こうした条例等に基づき、開示請求に係る形式上の不
備について判断し、開示請求者に補正を求めるなどの対応をしている。
異議申立人は、形式上の不備について特定の職員が特別支援学校に対し
て指示をしているから、開示請求に係る行政文書を作成又は取得している
と主張しているが、前記のように、教育委員会では、形式上の不備に関し
ては、条例等に基づき適切に対応しており、形式上の不備について調査す
る必要はない。
以上のことから、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存
在)とした。
(4) 文書 6 から 10 までの文書について
文書 6 から 10 までの文書は、知的障害者の定義等が記載されている文
書で特定の職員が使用しているもの等である。
請求内容における総務課の特定の職員とは、本件開示請求のあった平成
22 年度当時、教育委員会管理部総務課教育企画室(以下「教育企画室」
という。)において、情報公開事務を担当していた職員である。教育企画
室の事務分掌は、①教育委員会の所掌に係る重要施策の総合的な企画調整
に関すること、②教育委員会規則その他の規程及び重要文書の審査に関す
ること、③文書の管理及び文書事務の指導に関すること並びに④教育に係
る調査及び基幹統計その他の統計に関すること、である(愛知県教育委員
会事務局組織規則(昭和 39 年愛知県教育委員会規則第 9 号)第 5 条第 4
項)。
請求内容にある知的障害者、発達障害、自閉症者などの障害についての
事務は、教育委員会では、主に特別支援教育課が所管しており、教育企画
室は所管していない。また、単位認定に係る事務は、教育委員会では、主
に学習教育部高等学校教育課が所管しており、教育企画室は所管していな
710
い。そのため、教育企画室の職員は、文書 6 から 10 までの文書を作成又
は取得する必要はなく、管理していない。
念のため、教育企画室において当該文書があるかどうか確認したが、作
成しておらず、また、他課からも取得していなかった。
以上のことから、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存
在)とした。
(5) 文書 11 について
条例第 12 条第 1 項及び個人情報保護条例第 22 条第 1 項では、開示決定
等は開示請求があった日から起算して 15 日以内にしなければならないと
規定されていることから、本件開示請求は、教育委員会管理部総務課(以
下「総務課」という。)に対して開示請求がされた場合に、請求対象文書
を特定するまでに 2 週間が必要であることを説明した文書であると解した。
総務課においては、条例及び個人情報保護条例の規定に基づき、開示請
求があった日から起算して 15 日以内に開示決定等の通知を行っているが、
これらの事務処理に要する日数は、請求内容や他の業務との関係から、一
律に 2 週間に固定されているものではなく、したがって、文書の特定に 2
週間を要することを説明する必要も認められない。
よって、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存在)とした。
(6) 文書 12 について
文書 12 は、行政文書の開示請求者に対して補正を求める時期が遅い理
由がわかる文書である。
条例第 6 条第 2 項では、実施機関は開示請求書に形式上の不備があると
認めるときは、開示請求者に対し補正を求めることができる旨が規定され
ている。また、条例第 12 条第 1 項では、開示決定等は開示請求があった
日から起算して 15 日以内にしなければならないが、開示請求書に形式上
の不備があり、補正を求めた場合には補正に要した日数は算入しないとさ
れている。
教育委員会各課室では、条例第 6 条第 2 項に基づき、開示請求者に補正
を求めることがあるが、その場合は開示決定等の期限である、開示請求が
あった日から起算して 15 日以内に補正を求めることになる。
以上のことから、教育委員会各課室では、補正の依頼は 15 日以内に行
っており、それを遅いとは評価していない。
よって、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存在)とした。
(7) 文書 13 について
請求内容における総務課の特定の職員とは、前記(4)と同様、平成 22 年
度当時、教育企画室主任として、情報公開事務を担当していた職員である。
したがって、文書 13 は、当該職員が情報公開事務を行うために教育委
員会から付与された権限について記載されている文書であると解した。
711
条例において、教育委員会は実施機関として行政文書の開示、情報提供
等を実施することとされているが、条例は個別の職員の権限については規
定していない。
また、愛知県教育委員会事務決裁規程(平成 15 年愛知県教育委員会訓
令第 1 号。以下「事務決裁規程」という。)第 4 条及び別表第 1 において、
行政文書の開示請求に対する決定等に関することは課長の専決事項とされ
ているが、情報公開事務に関する主任の専決事項は存在しない。
異議申立人は、教育企画室が開示請求文書の有無に関して特別支援学校
に対して指示をしているから、開示請求に係る行政文書を作成又は取得し
ていると主張しているが、前記のように情報公開制度における教育企画室
の特定の職員個人の権限について記載した文書は存在しない。
よって、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存在)とした。
(8) 文書 14 について
文書 14 は、特定の職員が想定している知的障害者の定義についての文
書である。
請求内容における総務課の特定の職員とは、前記(4)及び(7)と同様、平
成 22 年度当時、教育企画室において、情報公開事務を担当していた職員
である。教育企画室の事務分掌は、前記(4)のとおり①教育委員会の所掌
に係る重要施策の総合的な企画調整に関すること、②教育委員会規則その
他の規程及び重要文書の審査に関すること、③文書の管理及び文書事務の
指導に関すること並びに④教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関
すること、である。
請求内容にある知的障害者についての事務は、教育委員会では、主に特
別支援教育課が所管しているため、教育企画室の職員が、知的障害者の定
義について何らかの想定をする必要はない。
以上のことから、当該文書を作成又は取得しておらず、不開示(不存
在)とした。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
本件請求対象文書は、別記に掲げる文書 1 から 14 までの文書である。
712
本件請求対象文書の特定については、実施機関が作成した不開示理由説
明書に記載されているところ、当審査会において、当該不開示理由説明書
を異議申立人に送付して意見を求めたが異議申立人から意見はなく、意見
陳述の機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかった。
したがって、当審査会においては、実施機関が行った文書の特定の仕方
には、誤りがないものとして以下検討する。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 について
当該文書は、不適法な異議申立てに対し補正を要求することが行政処
分に該当しないことを説明した文書である。
実施機関によれば、行政処分に対する異議申立てに関しては、法第 2
章第 3 節に処分についての異議申立ての規定があり、実施機関では、異
議申立てが適法であるか否かについては、法に基づいて判断するもので
あり、文書 1 に該当するような文書を作成する必要はないとのことであ
る。
異議申立てが法に基づくものであり、その補正についても法に規定が
あること(法第 48 条において準用する第 21 条)からすれば、あえて文
書 1 に該当するような文書を作成する必要はないとの実施機関の説明は
不合理ではない。
イ 文書 2 について
当該文書は、開示の実施日時に開示の担当課職員が開示場所に行かな
かった事例が記載されている文書である。
実施機関によれば、開示決定通知書等には、開示請求者と調整の上、
開示を実施する日時を記入することになっていることから、開示の実施
日時に担当課職員が開示場所に行かない事態は通常起こりえず、したが
って、そのような場合に文書を作成することも想定していないとのこと
である。また、実施機関によれば、念のため、そういった事例を記載し
た文書があるかどうか確認したが、存在しなかったとのことである。
愛知県教育委員会情報公開事務取扱要領(平成 17 年 3 月 31 日付け 16
教総第 732 号教育長通知)の第 3 の 3(7)によれば、開示の日時について
は、あらかじめ開示請求者と連絡をとり、指定するものとする、とされ
ていることからすれば、開示の実施日時に担当課職員が開示場所に行か
ない事態は通常起こりえず、そのような事例の文書を作成することを想
定していない、という実施機関の説明は不合理ではない。
ウ 文書 3 から 5 までの文書について
当該文書は、特別支援教育課、義務教育課等が開示請求に係る形式上
の不備について調査した文書である。
実施機関によれば、形式上の不備については条例等に基づき判断して
713
いるから、調査する必要はないとのことである。
形式上の不備については、条例第 6 条第 2 項、愛知県情報公開条例解
釈運用基準の第 6 条関係、個人情報保護条例第 16 条及び愛知県個人情
報保護条例解釈運用基準の第 16 条関係に記載されていることからすれ
ば、こうした条例等に基づき判断しているから、形式上の不備について
調査する必要はない、という実施機関の説明は不合理ではない。
エ 文書 6 から 10 までの文書について
当該文書は、知的障害者の定義等が記載されている文書で教育企画室
の特定の職員が使用しているもの等である。
実施機関によれば、請求内容にある知的障害者、発達障害、自閉症者
等の障害についての事務及び単位認定委員会に係る事務は、教育企画室
は所管していないことから、教育企画室の職員は、当該文書を作成又は
取得する必要はなく、また、念のため、当該文書があるかどうかを確認
したが、存在しなかったとのことである。
愛知県教育委員会事務局組織規則第 5 条第 4 項は教育企画室の事務分
掌について規定しており、当該規定によれば、知的障害者、発達障害、
自閉症者等の障害についての事務及び単位認定委員会に係る事務は、教
育企画室は所管していないことからすれば、それらの定義等が記載され
ている文書は作成又は取得していない、という実施機関の説明は不合理
ではない。
オ 文書 11 について
当該文書は、総務課に対して開示請求がされた場合に、請求対象文書
を特定するまでに 2 週間が必要であることを説明した文書である。
実施機関によれば、条例及び個人情報保護条例の規定に基づき、開示
請求があった日から起算して 15 日以内に開示決定等の通知を行ってい
るが、これらの事務処理に要する日数は、一律に 2 週間に固定されてい
るものではなく、文書の特定に 2 週間を要することを説明する必要は認
められないとのことである。
文書特定に要する期間は、請求内容等によって様々であると考えられ
ることからすれば、文書の特定に 2 週間を要することを説明する必要は
ないという実施機関の説明は不合理ではない。
カ 文書 12 について
当該文書は、開示請求者に対して補正を求める時期が遅い理由がわか
る文書である。
実施機関では、開示請求者に補正を求めることがあるが、その場合は
開示決定等の期限である、開示請求があった日から起算して 15 日以内
に補正を求めているとのことであり、その補正の依頼を遅いと評価する
理由はないとのことである。
714
条例第 12 条第 1 項に開示決定等の期限として規定されている、開示
請求があった日から起算して 15 日以内の期限に補正を求めているので
あれば、その補正の依頼を遅いとする理由はなく、実施機関の説明は不
合理ではない。
キ 文書 13 について
当該文書は、教育企画室の特定の職員が情報公開事務を行うために教
育委員会から付与された権限について記載されている文書である。
実施機関によれば、特定の職員は前記エと同じ職員であり、主任であ
るところ、条例においては個別の職員の権限について規定しておらず、
また、事務決裁規程においても、情報公開事務に関する主任の専決事項
が存在しないことについては、実施機関が主張するとおりであると認め
られる。
ただし、請求内容における教育委員会から付与された権限という表現
からすれば、条例上の権限や事務決裁規程における専決事項に限らず、
例えば特定の職員の事務分掌が記載されたものも、当該文書として特定
する余地がないわけではない。
しかしながら、事務分掌において特定の職員が情報公開事務を担当す
ることとされていても、事務決裁規程において当該職員の職における専
決事項とされていなければ、当該職員が情報公開事務について意思決定
を行うことはできず、単に事務を分担しているにすぎないことから、当
該職員の権限とまではいえないと解することも不合理ではない。
また、前記の実施機関の主張は、実施機関が作成した不開示理由説明
書に記載されているところ、当審査会において、当該不開示理由説明書
を異議申立人に送付して意見を求めたが異議申立人から意見はなく、意
見陳述の機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかった。
以上からすれば、当該文書を作成又は取得していない、という実施機
関の説明は不自然ではない。
ク 文書 14 について
当該文書は、教育企画室の特定の職員が想定している知的障害者の定
義についての文書である。
前記エのとおり、教育企画室の事務分掌は愛知県教育委員会事務局組
織規則第 5 条第 4 項で規定されており、知的障害者についての事務は教
育企画室で所管しておらず、教育企画室の職員が、知的障害者の定義に
ついて何らかの想定をする必要はない、との実施機関の説明は不合理で
はない。
ケ 以上のことから、本件請求対象文書を作成又は取得しておらず、不存
在であるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理
な点があるとは認められない。
715
(4) 異議申立人のその他の主張について
本件請求対象文書が不存在であることについては、前記(3)において述
べたとおりであるから、異議申立人のその他の主張は、当審査会の判断に
影響を及ぼすものではない。
(5) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
別記
・総務課 特定の決定に関係する開示請求
文書 1 愛知県教育委員会が発出した補正要求書が「直接国民の権利義務
を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められるもの」に
該当しないことを説明した文書
・文書 2 開示の閲覧時間に担当課がこなかった事例が記載されている文書
(例 特定の行政文書開示決定通知書のようなもの 3 時 2 分に提
出)
・特別支援教育課 H21 年度~H22 年度
文書 3 開示請求に係る形式上の不備について調査した文書
・義務教育課 H21 年度~H22 年度
文書 4 開示請求に係る形式上の不備について調査した文書
・各課室 H19 年度~H22 年度
文書 5 開示請求に係る形式上の不備について調査した文書
・文書 6 知的障害者の定義が記載されている文書(総務課の特定の職員が使
用しているもの)
・文書 7 発達障害の定義が記載されている文書(総務課の特定の職員が使用
しているもの)
・文書 8 自閉症者の行動特性が記載されている文書(総務課の特定の職員が
使用しているもの)
・文書 9 知的障害者の判定基準が記載されている文書(総務課の特定の職員
が使用しているもの)
・総務課
文書 10 特定の職員が考える単位認定委員会の定義が記載されている文書
・文書 11 総務課職員が文書特定に関して2週間を要する理由がわかる文書
・各課室 H21 年度~H22 年度
文書 12 情報公開開示請求人に対して補正をする時期が遅い理由がわかる
文書
・文書 13 総務課の特定の職員の情報公開制度上の権限が記載されている文書
・総務課
文書 14 特定の職員が想定している知的障害者の定義
716
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
5
内
容
諮問
23.
7.13
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
7.15
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 8. 4
(第 335 回審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
24. 1.13
(第 348 回審査会)
審議
24. 2. 3
(第 350 回審査会)
審議
717
答申第 603 号
諮問第 973 号
件名:開示請求の項目ごとに文書が特定できない理由が記載されている文書等
の不開示(不存在)決定に関する件
答
申
1 審査会の結論
愛知県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が、別記に掲げる文書
(以下「本件請求対象文書」という。)について、不存在を理由として不開
示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 6 月 9 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)
に基づき行った開示請求に対し、教育委員会が同月 21 日付けで行った不
開示決定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、開示請求に係る行政文書を
作成又は取得しているというものである。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張によると、次の理由により本件請求対象文書を作成又は取
得しておらず、不存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 別記文書 1 から 11 まで(以下「文書 1 から 11 まで」という。このよう
に、以下別記文書については、単に「文書 1」のようにいうこととす
る。)について
本件開示請求書には特定の補正依頼通知に関する開示請求である旨が記
載されているが、当該特定の補正依頼通知とは、平成 22 年 6 月 4 日付け
で、教育委員会管理部総務課(以下「総務課」という。)が開示請求者で
あった異議申立人に対して補正を依頼した文書である。
具体的には、同年 5 月 12 日から同年 6 月 4 日まで、異議申立人から計
89 枚、延べ 1,006 項目の行政文書開示請求がなされたが、それらは項目
数だけでも極めて大量であるのに加え、請求内容が重複するもの、対象範
囲が広範かつあいまいに過ぎるもの、その内容からどのような文書を請求
したいのか意図をくみとることが困難なもの等が見受けられた。そこで、
718
当該開示請求に対し、条例に基づく事務を行った場合は、通常の事務に多
大な支障をきたす旨を説明したうえで、異議申立人に請求項目を限定する
よう補正の依頼をしたものである。
ア 文書 1 について
特定の補正依頼通知は、前記のとおり異議申立人に請求項目を限定す
るよう補正の依頼をしたものであり、開示請求がなされた各項目につい
て、請求対象文書の特定ができないことを理由とした補正依頼ではない
ことから、開示請求の項目ごとに文書が特定できない理由を記載した文
書は作成していない。また、開示請求の項目ごとに文書が特定できない
理由が記載されている文書について一般的に定められた規定等がないか
条例や要領等を探索したが、そのような規定はなかった。
したがって、文書 1 を作成又は取得していないため、不開示(不存
在)とした。
イ 文書 2 について
当該請求項目は、行政文書開示請求がなされてから補正依頼をするま
でに 2 週間が必要な理由が記載されている文書、又は特定の補正依頼通
知を平成 22 年 6 月 4 日付けで発出して、回答期限をその 2 週間後の同
月 18 日とした理由が記載された文書のいずれかであると解した。
(ア) 前者と解した場合
例えば開示決定等の期限については、条例第 12 条第 1 項により、
開示決定等は「開示請求があった日から起算して 15 日以内にしなけ
ればならない」と規定されており、文書で補正を依頼する場合も同様
の期限で通知する必要がある。
しかしながら、特定の補正依頼通知において補正を求めた請求の中
には、最も長いもので発出するまでに 2 週間程度経過した請求はある
が、当該補正依頼通知が「2 週間を必要とした理由」について決裁等
に記載はなかった。また、補正依頼を発出するまでに 2 週間を要する
ことについて、要領等で規定されているものでもない。
(イ) 後者と解した場合
条例第 6 条第 2 項において「実施機関は、開示請求書に形式上の不
備があると認めるときは、当該開示請求書を提出したものに対し、相
当の期間を定めて、その補正を求めることができる」と規定されてい
る。また、「相当の期間」について、愛知県情報公開条例解釈運用基
準の第 6 条関係では「「相当の期間」(第 2 項)とは、当該補正をする
のに社会通念上必要とされる期間をいい、個々のケースによって判断
されるべきものである」としている。しかし、「相当の期間」の解釈
については、上記規定で述べる範囲にとどまり、2 週間を必要とする
旨の規定はない。
719
また、当該補正依頼通知の決裁文書にも、2 週間を必要とする理由
についての記載はなかった。
(ウ) したがって、当該請求項目についていずれの解釈をしたとしても、
文書 2 を作成又は取得していないため、不開示(不存在)とした。
ウ 文書 3 について
特定の補正依頼通知中に「その内容からどのような文書を請求したい
のか(開示請求者)様の意図をくみとることが困難なもの」という文言
があることから、異議申立人が提出した開示請求書に記載した内容の意
味について教育委員会職員が理解できなかった理由が記載されている文
書を求めていると解した。
しかし、当該補正依頼通知においては、大量の開示請求であったため、
補正依頼する理由については、包括的に示したものであり、個別の請求
に関する具体的な理由については触れていない。また、当該補正依頼通
知の決裁文書にも、請求の意味をくみとることが困難である理由は記載
していなかった。
したがって、文書 3 を作成又は取得していないため、不開示(不存
在)とした。
エ 文書 4 について
特定の補正依頼通知に係る行政文書開示請求の請求先は総務課だけで
なく、本庁各課や県立学校等も含まれている。総務課教育企画室(以下
「教育企画室」という。)は、教育委員会における情報公開事務のとり
まとめを所掌していることから、他の課に対するものも含めて当該補正
依頼通知をとりまとめて通知したものであるが、その理由について、起
案文書には記載はなく、また、別に説明した文書も作成していない。
したがって、文書 4 を作成又は取得していないため、不開示(不存
在)とした。
オ 文書 5 及び 7 の文書について
特定の補正依頼通知を作成するにあたり、総務課の担当者が、情報公
開制度の所管課である愛知県県民生活部県民総務課(以下「県民総務
課」という。)の担当者と協議を行った。しかし、当該協議は、開示請
求書等の現物を見ながら、どのような対応が最も適切であるかという観
点からの担当者間の話合いであって、議長が議事を進行するような会議
ではなく、文書を配付したり、議事録を作成したりすることはないため、
記録を残すことはしていない。
したがって、文書 5 及び 7 の文書を作成又は取得していないため、不
開示(不存在)とした。
カ 文書 6 について
当該請求項目は、開示請求者が、行政文書開示請求書において、行政
720
文書の開示を求める所属を指定することについての見解が記載されてい
る文書であると解した。
開示請求者が開示請求書に、どの所属にある文書の開示を受けたいの
かを記載することがある。しかし、その意思表示に対して何らかの見解
を示す必要はない。特定の補正依頼通知に係る開示請求においても同様
であり、見解を記載した文書を作成又は取得することはなかった。
したがって、文書 6 を作成又は取得していないため、不開示(不存
在)とした。
キ 文書 8 について
特定の補正依頼通知は、前記のとおり、項目数だけでも極めて大量で
あるのに加え、請求内容が重複するもの、対象範囲が広範かつあいまい
に過ぎるもの、その内容からどのような文書を請求したいのか意図をく
みとることが困難なもの等が見受けられる開示請求がなされたことを理
由にしたものである。
よって、各請求項目に対してどのような文書が想定されるかを詳細に
は検討していないことから、当該補正依頼通知を作成するにあたって、
どの文書を調査したかの記録は残していない。
このことから、文書 8 を作成又は取得していないため、不開示(不存
在)とした。
ク 文書 9 について
特定の補正依頼通知は、前記の理由により、「補正にあたっては、文
書により、平成 22 年 6 月 18 日までに請求項目を限定して」もらうよう
通知したものである。当該補正依頼通知においては、請求項目の限定を
求めており、「何をどのように補正すればいいのか」は記載されている。
よって、「何をどのように補正をすればいいのかが記載されていない補
正文書」は作成していない。
このことから、文書 9 を作成又は取得していないため、不開示(不存
在)とした。
ケ 文書 10 について
特定の補正依頼通知は、前記のとおり、請求項目の限定を求めるもの
である。「項目数だけでも極めて大量である」等の理由から「請求項目
を限定して下さるよう」依頼するもので、限定の意味を特に説明した文
書はない。
また、「請求項目の限定」の意味を一般的に規定又は解説するような
文書についても、作成又は取得していない。
これらのことから、文書 10 を作成又は取得していないため、不開示
(不存在)とした。
コ 文書 11 について
721
当該請求項目は、特定の補正依頼通知において、担当を「管理部総務
課教育企画室教育企画グループ」とし、具体的な担当職員名を記載して
いなかったことから、記載しなかった理由について記載された文書を求
めていると解した。
連絡先等を明記する、いわゆる「連絡先」欄についての記載内容を規
定した文書は存在しないが、一つの指針として、愛知県総務部法務文書
課が編集した「文書事務の手引き」によれば、具体的な担当職員名につ
いては、必要に応じて記載することとされており、教育委員会も同様の
取扱いをしている。
当該補正依頼通知について、仮に異議申立人から電話等による問い合
わせが教育企画室宛てにあった場合、教育企画室で情報公開を担当して
いる職員は限られており、担当者が誰か分からないという状況は起こり
えないことから、担当職員名を記載する必要はなく、したがって担当職
員名を記載しない理由について記載した文書は作成していない。
これらのことから、文書 11 を作成又は取得していないため、不開示
(不存在)とした。
(2) 文書 12 及び 13 の文書について
当該文書に係る行政文書開示請求書には、文書 12 及び 13 の文書の他、
「世界禁煙デーにおける活動の内容が記載されている文書」及び「禁煙週
間における活動の内容が記載されている文書」という請求があった。この
ことから、教育委員会には「喫煙対策指導者」及び「防煙教育担当者」と
いう名称の担当はいないが、「喫煙対策指導者の氏名が記載されている文
書」は「喫煙及び禁煙について指導する立場の職員氏名が分かる文書」、
「防煙教育担当者の氏名が記載されている文書」は「受動喫煙についての
教育を行う立場の職員氏名が分かる文書」であると解した。
本件開示請求は「総務課分」などの限定がなかったことから、たばこに
関連する業務を行う総務課、学習教育部健康学習課をはじめ、本庁各課に
照会したが、本件開示請求でいう「喫煙対策指導者」及び「防煙教育担当
者」に当たる職員を指名したことはなかった。
したがって、文書 12 及び 13 の文書を作成又は取得していないため、不
開示(不存在)とした。
(3) 文書 14 から 23 までの文書について
ICD-10 とは、世界保健機構(WHO)の設定した、国際疾病分類第 10 版の
ことで、様々な病気を分類するための分類表として活用されるものである。
その詳細について不明だったことから、ICD-10 について調べたところ、
F00-F09 は「症状性を含む器質性精神障害」を分類したものであった。し
たがって、本件開示請求は、ICD-10 のうち F00-F09 の「症状性を含む器
質性精神障害」をそれぞれ説明した文書であると解した。
722
しかしながら、総務課は、愛知県教育委員会事務局組織規則(昭和 39
年愛知県教育委員会規則第 9 号)第 5 条で規定されているとおり疾病に関
する事務を所管していないため、そもそも ICD-10 について記載した文書
を保有する必要はない。そのため「症状性を含む器質性精神障害」等、
個々の分類を説明した文書も保有する必要がない。
したがって、文書 14 から 23 までの文書を作成又は取得していないため、
不開示(不存在)とした。
(4) 文書 24 及び 25 の文書について
当該請求項目は、平成 17 年度から本件開示請求のあった日までのうち、
総務課が関与した裁判について、「障害のある者が関係する裁判に関する
文書」及び「発達障害と記載のある文書を含む裁判書類」のうち、判決文
と証拠説明書を求めていると解した。
ところで、裁判に関する事務については、教育委員会では管理部教職員
課が所管しており、総務課では所管していない。仮に総務課が所掌する事
務に関して裁判が提起された場合は、総務課においても判決文又は証拠説
明書を作成又は取得することが想定されるが、そのような例はなかった。
したがって、文書 24 及び 25 の文書を作成又は取得していないため、不
開示(不存在)とした。
4
審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
本件請求対象文書は、別記に掲げる文書 1 から 25 までの文書である。
実施機関は、本件請求対象文書について、前記 3 で説明するとおり解釈
したとのことである。当審査会において、実施機関の解釈を記載した不開
示理由説明書を異議申立人に送付して意見を求めたが異議申立人から意見
はなく、意見陳述の機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかった。
よって、文書 1 から 13 まで、24 及び 25 の文書については、実施機関
の解釈に誤りはないと認められる。
文書 14 から 23 までの文書については、当審査会が調べたところ、ICD10 の F0 から F9 とは、F00-F99 の「精神及び行動の障害」を分類したもの
である可能性もあることから、当該文書は、ICD-10 の「症状性を含む器
723
質性精神障害」又は「精神及び行動の障害」のいずれかについて説明した
文書であると認められる。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 文書 1 から 11 までの文書について
文書 1 から 11 までの文書は、特定の補正依頼通知に関する文書を請
求するものである。
実施機関によれば、特定の補正依頼通知とは、総務課が異議申立人に
対して通知した補正依頼であるが、当該補正依頼通知は、3 週間程度の
間になされた 1,006 項目の開示請求に対して条例に基づく事務を行えば、
通常の事務に多大な支障をきたすことから、請求項目を限定するよう通
知したものであり、各請求項目ごとに、対象行政文書となりうる文書を
詳細に検討したうえで補正の参考となる情報を記載したものではないと
のことである。
当審査会において、当該補正依頼通知を見分したところ、その内容は
実施機関が説明するとおりであると認められた。
(ア)文書 1 について
当該文書は、特定の補正依頼通知に関し、開示請求の項目ごとに文
書が特定できない理由が記載されている文書である。
実施機関によると、当該補正依頼通知においては、開示請求の項目
ごとに請求内容が理解できない理由を記載した文書は作成していない
とのことである。
請求項目を限定するよう通知したという当該補正依頼通知の内容か
らすれば、個々の項目ごとに文書が特定できない理由を記載していな
いという実施機関の説明は不合理ではないと認められる。
(イ) 文書 2 について
当該文書は、開示請求がなされてから(a) 特定の補正依頼通知を発
出するまでに 2 週間が必要な理由が記載されている文書又は(b)特定
の補正依頼通知において、回答期限を 2 週間後とした理由が記載され
ている文書である。
(a)の場合、実施機関によれば、当該補正依頼通知において補正を
求めた請求の中には、最も長いもので発出するまでに 2 週間程度経過
した請求はあるが、当該補正依頼通知の発出までに 2 週間を必要とし
た理由について、決裁等に記載はなかったとのことである。
条例第 12 条第 1 項で定める開示決定等の期限内に補正を依頼して
いれば、当該補正依頼通知を行うのに必要な日数についての理由を記
載することもないと想定されるため、当該補正依頼通知の発出までに
2 週間を必要とした理由を記載した文書を作成していないという実施
機関の説明は首肯しうるものである。
724
(b)の場合、実施機関によれば、条例第 6 条第 2 項に規定する「相
当の期間」については、個々のケースによって判断されるべきもので
あり、当該補正依頼通知の決裁文書に、回答期限として 2 週間を必要
とする理由についての記載はなかったとのことである。
実施機関は、当該補正依頼通知の内容から、社会通念上必要とされ
る「相当の期間」を 2 週間と判断したうえで回答期限を設定しており、
そのような場合に、特にその理由について記載していなくても不合理
ではないと認められる。
よって、請求の内容が(a)、(b)のいずれであったとしても、文書 2
を作成又は取得していないという実施機関の説明は不合理ではないと
認められる。
(ウ) 文書 3 について
当該文書は、異議申立人が提出した開示請求書の内容の意味につい
て、教育委員会職員が理解できなかった理由が記載されている文書で
ある。
実施機関によれば、特定の補正依頼通知においては、補正を依頼す
る理由については包括的に示しており、個別の請求ごとにその意味を
くみとることができなかった理由を述べておらず、また、当該補正依
頼通知の決裁文書においても、請求の意味をくみとることが困難であ
る理由は記載していなかったとのことである。
請求項目を限定するよう通知したという当該補正依頼通知の内容か
らすれば、当該補正依頼通知に係る個別の請求に関し、教育委員会職
員がその意味を理解できなかった理由を決裁文書等に記載していない
という実施機関の説明は不合理ではないと認められる。
(エ) 文書 4 について
当該文書は、教育企画室が他の課への開示請求に対する補正文書を
作成する理由が記載されている文書である。
実施機関によれば、教育企画室は、教育委員会における情報公開事
務のとりまとめを所掌していることから、教育委員会に対する開示請
求をとりまとめて特定の補正依頼通知をしたものであるが、とりまと
めた理由について、起案文書に記載はなく、また、別に説明した文書
も作成していないとのことである。
請求項目を限定するよう通知したという当該補正依頼通知の内容か
らすれば、異議申立人が教育委員会の教育企画室以外で管理する行政
文書を請求している項目についても、情報公開事務のとりまとめを所
掌している教育企画室において補正依頼を行うことは不合理ではない
と認められる。また、とりまとめを所掌していることから補正依頼を
行ったのであれば、あえてその理由を記載した文書を作成していなく
725
ても不自然ではないと認められる。
(オ) 文書 5 及び 7 の文書について
当該文書は、特定の補正依頼通知を作成するにあたり、どのような
角度から検討したかがわかる文書及び当該補正依頼通知に係る開示請
求の対象文書の特定に関する会議等の議事録である。
実施機関によれば、当該補正依頼通知を作成するにあたり、総務課
の担当者が県民総務課の担当者と協議を行ったが、その協議は、開示
請求書等の現物を見ながら担当者間で話し合うものであるため、記録
を残すことはしていないとのことである。
当該協議が、開示請求書等の現物を見ながらの担当者同士の打合せ
といった性質のものであるとすれば、その際の記録を残していないと
いう実施機関の説明は不合理ではないと認められる。
(カ) 文書 6 について
当該文書は、異議申立人が、行政文書開示請求書において、開示を
求める所属を指定していることについての見解が記載されている文書
である。
実施機関によれば、開示請求者が行政文書開示請求を行う際に、ど
の所属にある文書の開示を受けたいのかを記載することはあるが、そ
の意思表示に対して実施機関が何らかの見解を示す必要はないため、
特定の補正依頼通知に係る開示請求においても、所属を指定している
ことについての見解を記載した文書を作成又は取得することはなかっ
たとのことである。
開示請求者が、開示を求める文書の所属について指定していても、
実施機関がその指定に見解を示すことは通常想定されないため、実施
機関の説明は首肯しうるものである。
(キ) 文書 8 について
当該文書は、特定の補正依頼通知を作成するにあたり、どの文書を
調査したかがわかる文書である。
実施機関によれば、当該補正依頼通知に係る請求内容については、
対象となる行政文書を詳細には検討しておらず、どの文書を調査した
かの記録は残していないとのことである。
請求項目を限定するよう通知したという当該補正依頼通知の内容か
らすれば、個別の請求ごとに対象となる行政文書を検討することはな
いものと認められることから、実施機関の説明は首肯しうるものであ
る。
(ク) 文書 9 について
当該文書は、特定の補正依頼通知に関して、何をどのように補正す
ればよいのかが記載されていない補正文書の意味がわかる文書である。
726
実施機関によれば、当該補正依頼通知では請求項目の限定を求めて
おり、どのように補正すればよいかが記載されているので、「何をど
のように補正すればいいのかが記載されていない補正文書」は作成し
ていないとのことである。
当該補正依頼通知には、請求項目を限定すること及びその補正は文
書により行うことを依頼する旨の記載があり、どのように補正するか
は記載されていると認められることから、実施機関の説明は首肯しう
るものである。
(ケ) 文書 10 について
当該文書は、特定の補正依頼通知において依頼した、開示請求項目
の限定の意味がわかる文書である。
実施機関によれば、当該補正依頼通知は、請求項目を限定するよう
依頼するもので、限定の意味を説明した文書は特になく、また、「請
求項目の限定」の意味を一般的に規定又は解説するような文書を作成
又は取得してもいないとのことである。
「請求項目の限定」は字義どおりの意味であり、特にその意味を説
明する文書を作成又は取得することは想定されないことから、実施機
関の説明は首肯しうるものである。
(コ) 文書 11 について
当該文書は、特定の補正依頼通知において、担当職員名を記載しな
かった理由について記載された文書である。
実施機関によれば、愛知県総務部法務文書課が編集した「文書事務
の手引」において、担当職員名は必要に応じて記載することとされて
おり、教育委員会も同様の取扱いをしているとのことである。そして、
当該補正依頼通知においては、担当者名を記載する必要がないと判断
したことから記載しなかったものであり、したがって、担当職員名を
記載しない理由について記載した文書は作成していないとのことであ
る。
また、この実施機関の主張を記載した不開示理由説明書を異議申立
人に送付して意見を求めたが異議申立人から意見はなく、意見陳述の
機会を設ける旨の通知に対しても回答はなかった。
当審査会において、文書事務の手引を見分したところ、担当者名は
必要に応じて記載する旨の記載があり、愛知県の文書事務の取扱いか
らすれば、担当者名を記載しないことは誤りではないと認められる。
文書 11 は、当該補正依頼通知に担当者名を記載する必要がないと判
断した具体的な理由を記載した文書の開示を求めるものであるところ、
実施機関によれば担当者名を記載しなくても事務に支障が生じないこ
とから記載しなかったとのことであり、担当者名を記載しないことに
727
特段の理由があるものではないと認められることから、実施機関の説
明は不自然ではないと認められる。
イ 文書 12 及び 13 の文書について
当該文書は、喫煙及び禁煙について指導する立場の職員の氏名が分か
る文書及び受動喫煙についての教育を行う立場の職員氏名が分かる文書
である。
実施機関によれば、たばこに関連する業務を行う可能性のある本庁各
課に照会したが、喫煙及び禁煙について指導する立場の職員又は受動喫
煙についての教育を行う立場の職員を指名したことがなかったとのこと
である。
喫煙及び禁煙について指導する立場の職員並びに受動喫煙についての
教育に当たる職員を指名していないことから、それらの職員の氏名を記
載した文書を作成していないという実施機関の説明は不自然ではないと
認められる。
ウ 文書 14 から 23 までの文書について
当該文書は、ICD-10 の「症状性を含む器質性精神障害」又は「精神
及び行動の障害」について説明した文書である。
実施機関によれば、総務課は、疾病に関する事務を所管していないた
め、そもそも ICD-10 について記載した文書を保有する必要はなく、
個々の分類を説明した文書も保有する必要はないとのことである。
本件請求の内容が、上記のいずれであったとしても、そもそも総務課
は疾病に関する事務を所管していない(愛知県教育委員会事務局組織規
則第 5 条)ことからすれば、総務課が ICD-10 について説明した文書を
保有する必要はないと認められるため、実施機関の説明は首肯しうるも
のである。
エ 文書 24 及び 25 の文書について
当該文書は、総務課が関与した裁判について、「障害のある者が関係
する裁判に関する文書」及び「発達障害と記載のある文書を含む裁判書
類」のうち、判決文及び証拠説明書である。
実施機関によれば、裁判に関する事務は、教育委員会では管理部教職
員課が所管しており、総務課では所管していないとのことである。また、
仮に総務課の所掌事務と関わりのある内容の裁判が提起された場合は、
総務課においても判決文又は証拠説明書を作成又は取得することが想定
されるが、本件開示請求日時点では、そのようなものはなかったとのこ
とである。
総務課は裁判に関する事務を所管していない(愛知県教育委員会事務
局組織規則第 5 条)ことからすれば、総務課の所掌事務と関連する裁判
が提起されなければ判決文等を作成又は取得することがないという実施
728
機関の説明は不自然ではなく、また、本件開示請求日時点においてその
ようなものはなかったという実施機関の説明を覆すに足りる事情はない
ことから、文書 24 及び 25 の文書を作成又は取得していなかったという
実施機関の説明は不自然ではないと認められる。
オ 以上のことから、本件請求対象文書を作成又は取得しておらず不存在
であるとしたことについての実施機関の説明に、特段不自然、不合理な
点があるとは認められない。
(4) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
729
別記
・特定の補正依頼通知に関する開示請求
文書 1 開示請求の項目ごとに文書が特定できない理由が記載されてい
る文書
文書 2 補正文書に 2 週間を必要とした理由が記載されている文書
文書 3 文書の意味がわからない理由が記載されている文書
文書 4 教育企画室が他の課への開示請求に対する補正文書を作成する
理由が記載されている文書
文書 5 どのような角度から検討したかがわかる文書
文書 6 開示請求をするときに担当課を開示請求人は指定していること
についての見解をしめしている文書
文書 7 文書特定に関する会議等の議事録
文書 8 どの文書を調査したかがわかる文書
文書 9 何をどのように補正をすればいいのかが記載されていない補正
文書の意味がわかる文書
文書 10 請求項目の限定の意味がわかる文書
文書 11 情報公開担当者の氏名がわからない理由が記載されている文
書
・文書 12 喫煙対策指導者の氏名が記載されている文書
文書 13 防煙教育担当者の氏名が記載されている文書
・総務課
文書 14
文書 15
文書 16
文書 17
文書 18
文書 19
文書 20
ICD-10 の F0 について説明した文書
ICD-10 の F1 について説明した文書
ICD-10 の F2 について説明した文書
ICD-10 の F3 について説明した文書
ICD-10 の F4 について説明した文書
ICD-10 の F5 について説明した文書
ICD-10 の F6 について説明した文書
・総務課
文書 21
文書 22
文書 23
ICD-10 の F7 について説明した文書
ICD-10 の F8 について説明した文書
ICD-10 の F9 について説明した文書
730
・総務課 H17 年度~H22 年度
文書 24 障害のある者が関係する裁判に関する文書のうち判決文及び
証拠説明書
文書 25 発達障害と記載のある文書を含む裁判書類のうち判決文と証
拠説明書
731
(審査会の処理経過)
年
月
22.11.
日
5
内
容
諮問
23.
7.27
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
7.29
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23. 8. 4
(第 335 回 審 査 会 )
実施機関職員から不開示理由等を聴取
24. 1.13
(第 348 回 審 査 会 )
審議
24. 2. 3
(第 350 回 審 査 会 )
審議
732
答申第 604 号
諮問第 1001 号
件名:医療法人理事の履歴書及び印鑑証明書の不開示(不存在)決定に関する
件
答
申
1 審査会の結論
愛知県知事(以下「知事」という。
)が、医療法人 A 会の理事 B 氏の履歴書
及び印鑑証明書(以下「本件請求対象文書」という。
)について、不存在を理
由として不開示としたことは妥当である。
2 異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成 22 年 9 月 27 日付けで愛知
県情報公開条例(平成 12 年愛知県条例第 19 号。以下「条例」という。
)に
基づき行った開示請求に対し、知事が同年 10 月 7 日付けで行った不開示決
定の取消しを求めるというものである。
(2) 異議申立ての理由
ア 異議申立書における主張
異議申立人の主張する異議申立ての理由は、異議申立書によると次の
とおりである。
(ア) 県で定款出ているため、証明のみ欲しい。定款に載っているのに何
故出ないか。
(イ) 「開示請求に係る行政文書を取得していないため」と出ているが、
私は県医務国保課、再三訪問して要求して来たが、C 氏より A 会は東海
北陸厚生省だと云われました。だが D 氏により県民生活課を知らされ、
そちらへ提出要求出しましたら、理事名簿又 A 会定款が出ました。
B 氏も定款に名前が記載されていて、私はこの人のために大変迷惑を
こうむっています。
何故 B 氏の履歴書、印鑑証明が欲しいかは、B 氏の両親が絶対理事は
していない。印鑑証明も出していないと、言明するからです。開示さ
れないなら定款に載っている以上、提示されたという証明でもよいか
ら出して戴くようお願いいたします。本当は履歴書と印鑑写しが欲し
いです。
イ 意見書における主張
意見書における異議申立人の主張は、次のとおりである。
733
(ア) 役員変更届と添付書類 4 点が不備であった点は、医務・医療指導グ
ループの怠慢である。私は個人情報で出せないなら医療法人の理事で
あることの証明でもよいと要求している(平成 22 年 10 月 7 日)故に B
氏が理事であることは定款でも出ているので就任した証拠書類公文書
として県で証明書提示願いたい。
B 氏は理事になっていないと、責任を逃げている。
(イ) A 会定款附則で B 氏は理事として明記されている。
定款に出ている理事が提示しなければならない履歴書、印鑑登録証
明書が何故提示されていないのか。
B 氏が定款に載っている以上、公文書か私文書か私は不明だが当然書
類として付いているべきだ。
医療法人 A 会 E 理事長代理人弁護士より私に B 氏がいわれた内容で
刑事民事上の責任が発生するとの当方弁護士宛 FAX が来たので B 氏の
実家を訪ね、両親に聞いたところ、理事はやっていないと答えられた。
そして B 氏は弁護士を付け、証明書で事実と違う内容をいただいた。
愛知県弁護士会へ私が提示した内容に対して反論報告書が提示された。
そこで、B 氏は A 会定款に明示された理事であったかなかったかはっ
きり知りたいので異議申し立てる。
公文書として明記されているなら、A 会理事長の違反行為である。
私は県医務国保課に対していろいろと忠告してきたし、厚生省(東
海北陸局)にも出向いて忠告したが、相手方(A 会)に要求しています
で終わっていて、民事再生によって金融機関に多大な迷惑をかけてい
るにもかかわらず、E 理事長は経理全般を F 氏に任せ、診療中心として
医院の運営業務のみに携わっていたと無責任な陳述書を弁護士に提出
していて、これで民事再生申請がされていいものか愛知県情報公開審
査会でよく検討していただきたい。
ウ 意見陳述における主張
意見陳述における異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。
(ア) 第 1 点目
医療法人 A 会の設立時に、暴力団関係者が関与する可能性がある旨
を県に告げて、設立申請があったときは連絡をもらえるよう県に依頼
していた。しかし、何の連絡もなく、設立され、当該関係者の妻は理
事になっていた。
その後新聞に、医療法人 A 会の負債が多額に上り、民事再生を申請
した旨が出ていた。私は、県や国は、設立認可を十分な資料で検討し
たか、現場の査察というものが行われたかを疑問に思う。
(イ) 第 2 点目
医療法人 A 会が国、県に提示した平成 a 年 b 月 c 日付定款に、B 氏が
734
理事として表示されている。理事になる以上、履歴書や印鑑証明書が
必要である。また、E 理事長が B 氏の承諾を得た上で提出したかは疑問
である。定款には B 氏の氏名が載っているが、A 会の平成 20 年度から
平成 22 年度までの間の事業報告書には載っていない。
(ウ) 第 3 点目
私は B 氏の両親に会い、B 氏は A 会の理事をしていたかを尋ねた。両
親は、そんな役員はやっていない、実印も母親が持っているのでそん
なことはできるはずがないと言っていた。
県からの行政文書不開示決定通知書には、行政にないから出せない
と書いてある。こんなものは県の完全なミスである。
診療所には全て責任者として理事を置かなければならず、法人が成
り立たないからこういうことをやったのではないか。国、県がきちっ
とした仕事をしていなかったために、法人を存続させることになった
のではないか。
(エ) 第 4 点目
A 会の E 理事長は住民票のあった市を出て数年経つため、私は当該市
に住所の削除を依頼した。県は法人の理事長が長期間住所不明である
状況を許してよいのか。
県は B 氏の履歴書と印鑑証明がないと平気で言っているが、私はお
かしいと思う。A 会の法人格を取消す必要があるのではないか。
3 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、次の理由により本件請求対象文書を取得しておらず不
存在であるので、不開示としたというものである。
(1) 本件請求対象文書について
医療法施行令(昭和 23 年政令第 326 号)第 5 条の 13 において、医療法
人は、その役員に変更があったときは、新たに就任した役員の就任承諾書
及び履歴書を添付して、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なけれ
ばならないとされている。
愛知県(以下「県」という。)においては、当該届出の様式として役員変
更届を定め、その提出の際には、医療法施行令で定める役員就任承諾書及
び履歴書に加えて、役員改選の際の議事録の写し及び印鑑証明書を添付す
ることとしている。
本件請求対象文書は、医療法人 A 会に関する役員変更届の添付書類のう
ち、B 氏に係る履歴書及び印鑑証明書である。
(2) 医療法人に係る届出事務について
知事所管の医療法人とは、一つの都道府県のみに医療機関を持つ医療法
人をいい、厚生労働大臣所管の医療法人とは、二つ以上の都道府県に医療
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機関を持つ医療法人をいう。医療法人 A 会は平成 d 年 e 月に設立され、そ
の時点では知事所管法人であったが、平成 f 年 g 月に他県にも医療機関を
開設するとして、大臣所管法人に移行した。
大臣所管法人においては、役員変更届はまず、県健康福祉部健康担当局
医務国保課(以下「医務国保課」という。
)に 2 部提出される。医務国保課
で、提出書類の不足、誤り等を確認し、疑義等があれば厚生労働省の出先
機関である東海北陸厚生局へ対処方法を問い合わせ、修正が必要であれば
医療法人に修正してもらうなどしたうえで東海北陸厚生局に 1 部を進達し
ている。問い合わせ時にそのまま送付すれば良いという回答があった場合
は、修正等のないまま東海北陸厚生局へ進達し、東海北陸厚生局において
医療法人に修正等を指示することもある。
医務国保課では、役員変更届の内容を、県が備える医療法人台帳に整理
するとともに、受理した届出の 1 部を決裁とともに保存している。
(3) 医療法人 A 会の台帳について
医療法施行令第 5 条の 11 の規定により、厚生労働大臣及び都道府県知事
は、それぞれ医療法人台帳を備え、厚生労働大臣にあっては、二以上の都
道府県の区域において病院、診療所又は介護老人保健施設を開設する医療
法人について、都道府県知事にあっては、その他の医療法人で当該都道府
県の区域内に主たる事務所を有するものについて、厚生労働省令で定める
事項を記載しなければならないこととされ、また、医療法施行規則(昭和
23 年厚生省令第 50 号)第 38 条には、医療法人台帳に「役員に関する事項」
を記載しなければならない旨が定められている。
医療法人 A 会が知事所管から大臣所管となった後においては、医療法人 A
会に係る台帳を県が整備する法的義務は消滅したものの、東海北陸厚生局
へ進達する際に内容を確認する等の便宜のため、従前どおり県は医療法人 A
会に係る台帳を電子媒体で管理している。
なお、同台帳の B 氏に係る部分には、不整合な記録が含まれている。
(4) 本件請求対象文書の存否について
ア 医療法人 A 会の本件開示請求当時の定款を見ると、附則には、この法
人の設立時の役員は、第 15 条の規定にかかわらず次のとおりとし、その
任期は第 17 条の規定にかかわらず平成 h 年 i 月 j 日までとするという記
載があり、その下にはその約 2 年後の日付(平成 a 年 b 月 c 日)と、そ
の時点における役員名が記載されている。本来ならば、この部分には設
立時の役員名がそのまま記載されるべきであるが、医療法人 A 会の担当
者が定款変更認可申請を行った際に、誤って設立時の役員ではない B 氏
の氏名を表示してしまったものと思われる。
当該定款に記載されたとおり、設立後、平成 a 年 b 月 c 日までの間に B
氏が理事に就任したならば、その旨の役員変更届が当該法人から提出さ
736
れているはずである。しかし、当該届出が綴られているべき冊子(医療法
人 A 会綴り)を確認したものの、役員変更届を受理した形跡はなく、当該
届出は当初から存在しなかったものと考えられる。
医療法人の代表権は医療法(昭和 23 年法律第 205 号)第 46 条の 4 第 1
項において理事長のみに与えられており、理事には代表権がない。また、
医療法人の登記事項を定めた組合等登記令(昭和 39 年政令第 29 号)第 2
条第 2 項によれば代表権を有さない者の氏名等は登記事項ではない。よ
って、医療法人の理事は公示されておらず、現在誰が理事であるかは、
役員変更届の提出がなければ確認することはできない。
医療法人 A 会を所管する東海北陸厚生局にも当該届出の存否を確認し
たが、存在しないとのことであった。
また、医務国保課において、関連のある文書が収納されている書棚等
を探索したが、見つからなかった。
したがって、本件請求対象文書は存在せず、不開示としたものである。
イ 仮に本件請求対象文書が存在し、開示決定等を行うとしても、本件請
求対象文書に記載されている情報は、条例第 7 条第 2 号に該当し、全部
不開示となるものである。
4 審査会の判断
(1) 判断に当たっての基本的考え方
条例第 5 条に規定されているとおり、何人も行政文書の開示を請求する
権利が保障されているが、開示請求権が認められるためには、実施機関が
行政文書を管理し、当該文書が存在することが前提となる。
当審査会は、行政文書の開示を請求する権利が不当に侵害されることの
ないよう、実施機関及び異議申立人のそれぞれの主張から、本件請求対象
文書の存否について、以下判断するものである。
(2) 本件請求対象文書について
本件請求対象文書は、医療法人 A 会の理事 B 氏の履歴書及び印鑑証明書
である。
(3) 本件請求対象文書の存否について
ア 実施機関によると、県は、医療法人の役員変更届の様式を定め、当該
届出には医療法施行令で定める役員就任承諾書及び履歴書に加えて、役
員改選の際の議事録の写し及び印鑑証明書を添付することとしていると
のことである。
また、大臣所管法人であれば、役員変更届は 2 部提出され、まず医務
国保課で受理をし、提出書類の不足、誤り等を確認して、疑義等があれ
ば東海北陸厚生局へ対処方法を問い合わせ、修正が必要であれば、医療
法人に修正してもらうなどしたうえで東海北陸厚生局へ進達しているし、
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問い合わせ時にそのまま送付してもらえば良いという回答があった場合
は修正等のないまま進達して東海北陸厚生局において医療法人に修正等
を指示することもあるとのことである。
イ 当審査会において、医療法人 A 会の本件開示請求当時の定款を見分し
たところ、確かに、B 氏の氏名が当該定款に記載されていることが確認で
き、また、県が管理する医療法人 A 会に係る台帳のうち理事が記載され
た部分を見分したところ、B 氏の氏名が記載されていることが確認できた。
よって、これらの記載内容を前提とすれば、B 氏に係る役員変更届が県
に提出されており、当該届出に添付されている履歴書及び印鑑証明書を
医務国保課が管理しているものと考えられる。
ウ しかし、実施機関によると、B 氏に係る役員変更届が綴られているべき
医療法人 A 会綴りという名称の冊子を確認したものの、役員変更届を受
理した形跡はなく、当該届出は当初から存在しなかったものと考えられ
るとのことである。また、A 会を所管する東海北陸厚生局に当該届出の存
否を確認したが、存在しないとの回答を得たとのことである。
さらに、実施機関によると、県が管理する医療法人の台帳のうち、大
臣所管法人に係るものは医療法上のものでなく、便宜のために管理して
いるものであるとのことであり、また、医療法人 A 会の定款変更認可申
請を受理した際に、設立時の理事が表示されるべき部分が定款変更箇所
ではなかったため、その部分の確認が漏れてしまったこともあって、医
療法人 A 会の定款に B 氏の氏名が表示されたままになっていると思われ
るとのことである。
エ 以上を前提に本件請求対象文書の存否について検討すると、確かに、
医療法人 A 会の理事として B 氏の氏名が表示された文書が現に存在する
ことからして、本件請求対象文書が存在しないという実施機関の主張は
不自然であることは否定できない。
しかし、異議申立人の主張によれば、B 氏の両親は、B 氏が A 会の理事
に就任したことはないと述べているとのことであり、また、県の医療法
人 A 会に係る台帳の B 氏に係る部分には不整合な記録が含まれている。
さらに、当審査会において、A 会の設立時の定款とその後変更した定款の
双方を見分したところ、変更後の定款の附則には、設立時の役員以外の
者の名が記載されていることが認められた。
そこで、当審査会において、事務局職員をして医務国保課において医
療法人 A 会綴りを見分させたところ、設立後数箇月が経過した後に A 会
の原始定款と称して各種届出書類等に添付されたものには設立時の理事
として B 氏の氏名が表示されていること、しかし、設立申請書類に添付
された原始定款には設立時の理事として B 氏の名はないこと、理事会議
事録の理事署名欄に B 氏の名が記されたものは見当たらなかったこと及
738
び B 氏が理事に就任していないことを窺わせる事情が存在することが報
告された。
これらの事情に鑑みると、B 氏が A 会の理事に就任した事実に疑いがな
いとはいえない。仮に B 氏が A 会の理事に就任した事実がなければ、本
件請求対象文書が存在しないとしても不合理ではない。
また、前記ウで述べたとおり、県のみならず、国の機関においても B
氏に係る役員変更届の存在が確認されておらず、さらに、実施機関にお
いて、関連のある文書が収納されている書棚等を探索したが、見つから
なかったとのことである。
以上述べたことからすれば、B 氏が A 会の理事に就任した事実の有無に
ついては不明であるものの、本件請求対象文書が存在しないとする実施
機関の説明自体は、これを覆すに足りる証拠もなく、これを是認するほ
かない。
(4) 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々の主張をしているが、当審査会は、条例に基
づき、行政文書に記録された情報が条例第 7 条各号に規定する不開示情報
に該当するか否か、行政文書が存在しないとされる場合はその不存在であ
ることの説明が合理的か否かなどについての判断を行うものであり、その
余のことについて判断するものではない。本件請求対象文書の存否につい
ては、前記(3)において述べたとおりであることから、異議申立人のその他
の主張は、当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
(5) まとめ
以上により、
「1 審査会の結論」のとおり判断する。
739
(審査会の処理経過)
年
月
日
内
容
22.11.18
諮問
22.12.27
実施機関から不開示理由説明書を受理
23.
1.
異議申立人に実施機関からの不開示理由説明書を送付
23.
1.13
7
異議申立人から不開示理由説明書に対する意見書を受理
23. 8. 5
(第 336 回審査会)
実施機関職員から不開示理由等を聴取
23. 9. 9
(第 338 回審査会)
異議申立人から意見を聴取
23.12. 1
(第 345 回審査会)
審議
23.12.19
(第 347 回審査会)
審議
24. 2. 6
(第 351 回審査会)
審議
740