GSI システムによる地下深部の岩盤物性の推定

GSI システムによる地下深部の岩盤物性の推定
東電設計(株)
正会員
東京電力(株)
正会員
○田坂嘉章・宇野晴彦・大森剛志
南
将行・日比野悦久
GRC (Mirarco, Laurentian Univ., Canada) Ming Cai & Peter Kaiser
1.はじめに
3. GSI システム
空洞掘削時の岩盤挙動評価には、岩盤の強度・変
GSI システムは、岩石試験結果と地質・節理状態
形特性の把握が必要不可欠である。岩盤物性につい
から Hoek-Brown の破壊基準(Hoek ら, 1995)における
ては、建設位置における原位置試験結果から求める
パラメータ mb , s, a を求めることができる。詳細は、
ことが信頼性が高いと考えられるが、平面的に広が
文献
1),2)
を参照されたい。
りを有する大深度地下空洞建設における概略設計段
また、GSI システムは、岩石の一軸圧縮強度 σ c と
階においては、時間・コスト面から地表調査により
GSI(地質評価指標)を用いて、岩盤の変形係数 E
評価せざるを得ない。
を次式で与えることとしている。
本研究では、海外の岩盤分類として提唱されてい
る GSI システム 1) によって推定した岩盤物性を実際
の原位置試験による岩盤物性と比較することにより、
国内の岩盤の強度・変形特性評価への GSI システム
の適用性について検討を行った。
æ GSI −10 ö
÷
40 ø
ç
σc
E=
⋅ 10 è
100
, (σ c < 100 MPa )
(1)
4. GSI の設定
国内の岩盤における GSI 設定検討においては、先
2.岩石物性と岩盤物性の関係
の図 1 に示した地点のうち、岩石試験(一軸圧縮試
図1に国内の地下発電所地点における岩石と岩盤
験、三軸圧縮試験)と岩盤試験(岩盤せん断試験、
の一軸圧縮強度の関係を示す。岩盤の一軸圧縮強度
平板載荷試験)が実施されている岩盤を対象とした。
σ c_m は、岩盤せん断試験で得られた得られた c m 、 φ m
GSI を設定するためには、不連続面の密度(間隔)、
を用いて、 σ c _ m = ( 2c m cos φ m ) (1 − sin φ m ) により求
性状(風化の程度、連続性、密着度、粗さ、充填物
めた。各地点の被りは、120m∼500m の範囲にある。
の有無)が必要となるが、各地点では不連続面の間
隔は調査されているが、不連続面の性状については
100
火成岩
堆積岩
上限(0.35)
下限(0.10)
平均(0.19)
岩盤 σc_m(MPa)
80
十分な調査がされていない。そこで、GSI システム
と電研式岩盤等級の関係
2)
から図 2 に示す不連続面
間隔と GSI の関係を求め、各地点で評価されている
60
電研式岩盤等級と不連続面間隔の調査結果に基づき、
40
簡易的に GSI を設定することを試みた。
20
CM
35
GSI
0
0
50
100
150
200
250
300
不連続面間隔(cm)
5
40
7
45
10
50
20
55
30
45
岩石 σc(MPa)
CH
図1
岩石と岩盤の一軸圧縮強度の比較
50
GSI
不連続面間隔(cm)
10
55
12.5
60
20
65
40
70
70
90
岩石強度と岩盤強度には、概ね相関が認められる
B
ものの、地質によるバラツキが大きく、同図から岩
石物性のみによって岩盤物性を推定するのは困難と
判断される。
キーワード
連絡先
GSI
不連続面間隔(cm)
図2
65
40
70
45
75
50
80
100
85
150
各岩級の不連続面間隔と GSI の関係
GSI システム、岩盤分類、不連続面、岩石物性、岩盤物性
〒110-0015
東京都台東区東上野 3 丁目 3-3
東電設計株式会社
土木技術部
TEL03-4464-5571
5. GSI システムによる岩盤物性の推定方法
一般に、原位置岩盤せん断試験結果は、クーロン
に GSI を設定し、この GSI と岩石物性(平均値)か
ら岩盤物性(平均値)を推定することを試みた。
型の破壊基準で整理され、空洞掘削時の岩盤挙動予
検討結果によれば、電研式岩盤分類と関連付けた
測 解 析 に 適 用 さ れ る 。 一 方 、 GSI シ ス テ ム で は 、
GSI システムにより、岩石物性、岩盤等級および不
Hoek-Brown による岩盤の破壊基準が得られる。そこ
連続間隔から岩盤物性をほぼ推定できることが分か
で、空洞掘削時の空洞周辺応力状態を考え、低拘束
った。したがって、岩石物性と詳細な地質・節理情
圧の範囲(σ 3 =0∼5MPa)で Hoek-Brown の破壊基準
報が得られれば、GSI システムにより、岩盤分類お
とほぼ同じ強度になる等価なモール・クーロンの強
よび岩盤物性の推定が可能になると考えられる。
度パラメータ( c m, φ m)を求めた(図 3 参照)。
140
Mohr-Coulomb (in-situ)
32.5
Mohr-Coulomb (HB c, phi)
推定によるσc_m(MPa)
100
σ1 (MPa)
火成岩
堆積岩
試験=推定
37.5
Hoek-Brown (GSI)
120
80
60
40
20
27.5
22.5
17.5
12.5
7.5
0
0
2
4
σ3 (MPa)
6
8
2.5
2.5
図 3
7.5
Hoek-Brown による強度と等価なモール・ク
ーロンの強度の比較例
12.5 17.5 22.5 27.5 32.5
試験によるσc_m(MPa)
37.5
図 4 岩盤の一軸圧縮強度の試験値と推定値の比較
図 3 によると、Hoek-Brown の強度(図中 GSI)と
50
多くの地下発電所地点の岩盤せん断試験で得られる
45
破壊時上載荷重相当の拘束圧(σ 3 =5MPa)レベルま
40
推定によるEt(GPa)
等価なモール・クーロンの強度(図中 HB c phi)は、
ではほぼ等しく、高拘束圧になるに従って離れる。
空洞周辺では、掘削時に拘束圧が小さくなるため、
空洞掘削解析においては、実用上は低拘束圧を対象
とした等価なモール・クーロンの破壊基準を用いる
30
25
20
15
10
ことで問題がないと考えられる。
火成岩
堆積岩
試験=推定
5
6.推定値と試験値の比較
0
図 4、図 5 に岩盤の一軸圧縮強度および弾性係数
0
(除荷時の接線弾性係数)の試験値と GSI システム
による推定値の比較を示す。全体傾向としては、岩
35
5
10
15 20 25 30 35
試験によるEt(GPa)
40 45
50
図 5 岩盤の弾性係数の試験値と推定値の比較
盤の一軸圧縮強度の試験値と推定値は概ね対応して
いる。堆積岩の推定値は、試験値とほぼ同じである
参考文献
が、火成岩の推定値は試験値よりも大きくなる傾向
1) Hoek, E., Kaiser, P.K. and Bawden, W.F.: Support of
がある。
underground excavations in hard rock, A.A. Balkema.,1995.
7.まとめ
2) Cai 他:GSI システムと電研式岩盤分類の関係に
国内における岩盤への GSI システムの適用性検討
では、各地点の地質情報が十分でないことから、GSI
システムと電研式岩盤等級の関係を利用して簡易的
ついて、土木学会第 57 回年次学術講演会、投稿中、
2002.