National I nstitute for S ea T raining - 独立行政法人 航海訓練所

ナイスティー 2011.5
航海訓練所
独立行政法人
N ational I nstit ute for S ea T raining
新理事長就任にあたり 本年 4 月に理事長に就任いたしました飯田です。
3月11日に発生した東日本大震災により、犠牲になられた皆様、ご家族に心か
らお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
理事長就任にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。戦後最大の国難といわれ
る大震災の復興が最優先される中、以下に述べます航海訓練所の業務運営に当たっ
て参ります。
平成23年4月1日からは、新たに第3期中期目標期間が開始されました。今期
目標期間中における最重要事項は、船員の確保・育成体制の抜本的見直しと練習船
大成丸の代船建造にあります。タービン船である大成丸を内航訓練に特化した練習
船に代替することは、三級及び四級海技士の訓練内容を大きく見直す必要が生じます。また、自己収入拡大、更に内部統制
への取組みなどが求められています。これら各課題を職員や関係者のご協力の下、確実に実施して参ります。
物資の輸送なくして現代社会は成り立ちません。その輸送方法は飛行機、トラック、鉄道、船等様々ですが、そこに働く
人が必要であり、その人々の育成の継続が必要不可欠であることを意味します。船員の育成にあたっては、何処で、どのよ
うな人材が、どの程度必要とされているかを明らかにし、当所の持つ能力を何処にどの様につぎ込むかを見極め、判断して
いくことが重要と考えます。このために、関係各位と十分意見を交換し、日本海運の目指す方向をしっかりと捉えて参る所
存です。
現下の情勢の中、当所の使命とする「我が国船員教育機関等と密接な連携を保ちつつ、練習船の機能を活用して、船員に
求められる知識・技術の変化に応じた実践的教育訓練を効率的・効果的に行うことにより、海事産業を担う優秀な人材を育
成する。また、航海訓練の機会を生かした研究活動を実施することにより、教育訓練技法の向上に資すると共に、安全かつ
効率的な船舶運航技術を提言する。
」ことは普遍であることを確信し、その実現に努めて参ります。
近年の当所を取巻く環境は目まぐるしく変化しており、決して楽観できるものではありません。当所の業務及び組織の運
営に影響を及ぼすと思われる困難な状況を乗り越えていくため、職員の英知を集め、邁進して参ります。
新年度に当たり、引続き皆様の一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げ、ご挨拶と致します。
理事長 飯田 敏夫 (いいだ としお) 平成 23 年 4 月 1 日着任の
新任役員を紹介します
経歴
昭和48年10月 運輸省採用
平成19年 4月 航海訓練所教育部長
平成21年 4月 航海訓練所理事
航海訓練所ナビゲーター
コウくん
理事 斎藤 重信 (さいとう しげのぶ)
監事 小川 英明 (おがわ ひであき)
経歴
昭和50年10月 運輸省採用
平成19年 5月 航海訓練所航海科長
平成21年 4月 航海訓練所教育部長
経歴
平成18年 5月 富士火災海上保険㈱執行役
平成22年 4月 組織経営構造研究センター代表
平成23年度の実習がスタートしました!
4月1日、新たな実習生を迎えて平成23年
度の航海訓練を開始しました。今年度もすべて
の実習生に安全に航海技術を身につけてもらえ
るよう、航海訓練所一丸となって取り組んで参
ります。
4月9日(土)には3級海技士の資格取得を
目指す91名の実習生を乗せた海王丸がホノル
ルへ向けて遠洋航海へ出航しました。小雨が降
り、強風が吹き荒れる天候ではありましたが、土曜日ということ
もあり多くの方が見送りに訪れました。この日、
「遠洋航海出航
見送り見学会」が開催され、事前公募で集まった34名の方が航
海訓練所職員からの説明を受けながら、普段見ることのできない
船内を巡りました。参加者の皆さんは、帆船ならではの大きな舵
登檣礼で出航する海王丸。 ごきげんよう!
輪の前で記念撮影を行ったり、セイルロッカー(帆が保管されている場所)に整然と保管されている帆の枚数に驚いている様子でした。
また、船ならではの工夫がされている浴室や食堂等を興味深そうに見学されていました。
出航時刻の14時になり、岸壁はU・W旗を手にした見送りの方で埋め尽くされました。
登檣礼が行われ、実習生の「ごきげんよう!」の声が響き渡ると、海王丸はゆっくりと岸
壁を離れていきました。
海王丸は5月9日から1週間ホノルルに寄港した後、6月8日に東京へ帰港予定です。
往復共に約1ヶ月間の無寄港航海を通じて、多くのことを学んで帰ってくることでしょう。
真っ黒に日焼けした実習生の元気な姿に会えるのを楽しみにしています。
岸壁から航海の無事を祈ります
大成丸の代替船建造費補助金
平成23年度に練習船
「大成丸」
は船齢30年に達します。
「大成丸」
の代替を実現するため、国土交通省は、平成23年度
予算の概算要求で航海訓練所に対する船舶建造費補助金
(9億円、3カ年の国庫債務負担行為)を、各省庁の予算を一律1
割削減によって財源化された「元気な日本復活特別枠」の要望事項として予算要求しました。その配分については、関係閣
僚や与党幹部などでつくる評価会議(議長・玄葉光一郎国家戦略担当相)
が実施する
「政策コンテスト」や、国民から意見を
募ったパブリックコメントなどを参考に菅総理大臣により決められ、
代船建造費は 4.5 憶円が政府原案に盛り込まれました。
平成23年度予算は3月29日に成立したことから、今後、当該予算の交付を受けて、順次、具体的な契約手続きに着手することとしてい
ます。
なお、代替建造する練習船は、内航用練習船として内航船員の養成に特化することとしており、頻繁な入出港実習、水深の浅い航路・港に
対応可能な仕様とするなどの特徴を有する練習船となる予定です。
東日本大震災における練習船の救援活動
この度の震災に伴い、航海訓練所は政府から要請を受け、練習船「海王丸」、
「銀河丸」を被災地に派遣し、救援活動を行いました。
本来、練習船は商船の航海士や機関士を養成するための訓練を行う船であり、通常は乗組員のほかに多数の実習生を乗船させているた
め、多人数に対する食事の提供、入浴、宿泊のための設備を有しています。また、医療
に関する専門家が乗船していること、医薬品・備品類を備えているとともに、普段から
一般公開等を実施し、一般の方々を受け入れた際の安全管理体制も整っていることから、
これらの機能を活かした救援活動を行いました。
■銀河丸の救援活動(3月20日∼3月22日)
3月19日、災害支援の要請があった岩手県宮古市の受入体制が整ったことを受け
て、銀河丸は宮古港に向けて東京港を出港しました。東京湾を出て北上するにつれ、
海上には漂流物、浮遊物、無人とも思える無灯火の漁船などが多く見受けられように
救援物資を銀河丸から積み卸す乗組員ら
なり、それらを避けながらの緊張した航海となりました。
翌3月20日夕刻、宮古港に入港し救援活動を開始しました。入港後、ただちに医
療支援物資や燃料などの陸揚げ・救援活動の打合せを行い、翌21日及び22日には、
ガス等のライフラインが復旧していない地区から被災者を船内に受け入れ、入浴と温
かい食事を提供するとともに、希望者には看護長による血圧測定などの健康相談を行
いました。2日間で216名の被災者が銀河丸を訪れ、震災以来不安な日々を送って
いた皆さんに安堵の表情を見ることができました。
■海王丸の救援活動(3月21日∼3月27日)
3月20日、災害支援の要請があった福島県いわき市小名浜の受入体制が整ったこ
と を 受 け、海 王 丸 は 東 京 港 を出 港。
看護長による健康相談
翌21日早朝に小名浜港に入港し、27日まで救援活動を行いました。日中は、乗組員
が小名浜地区の小・中学校を訪問して炊き出しを行い、7日間で340名の方に利用い
ただいたほか、海王丸に50名の被災者を受け入れて入浴と食事を提供しました。小名
浜でも水道等のライフラインが復旧しておらず、避難所で被災者に支給される食事は菓
子パンやおにぎりであったため、食事として提供した「練習船カレーライス」は皆様に
非常に喜ばれました。
また、夜間は福島第一原子力発電所で原子力プラントの復旧に当たる作業員のための
宿泊場所として海王丸が利用され、一時の休息を提供しました。
練習船カレーライスで笑顔が戻った子ども達
両船の被災地における停泊期間中にも大きな余震があり、常に緊張の連続ではありましたが、被災者の皆様の笑顔が乗組員の大きな力
となりました。
名谷きぼうの丘幼稚園のみなさんに感謝状を贈呈
神戸市立名谷きぼうの丘幼稚園のみなさんは、毎年、神戸港において、海王丸が入港するときの出迎えや出航
するときの見送りをして下さり、海王丸の乗組員や実習生に元気や勇気を与えてくれます。
本年3月16日、当所を代表して熊
田公信船長(現青雲丸船長)が、名谷
きぼうの丘幼稚園を訪れ、幼稚園のみ
なさんに感謝状と記念品を贈呈しました。当日は、青空の下、
園児のみなさんの熱烈な歓迎を受け、寒さを吹き飛ばす心温か
な贈呈式が行われました。
熊田船長から、
「海王丸の一番高いマストの頂上からはどん
なふうに海王丸が見えると思いますか。みんなのどちらの足で
もいいですから前に少し出して見てください。そして下を覗い
て靴を見ましょう。そうです、マストのてっぺんからは海王丸
がみんなの靴の大きさくらいに見えます!」という講話があり、
園児のみなさんだけでなく、お父さん、お母さん、先生方も興
味津々に耳を傾けていました。
さらに、
「マストの頂上から水平線を見ると地球が丸いこと
が分かりますし、太陽が海から昇るときや海に沈むときには、
いつも見送りありがとうございます
普通では見られないような綺麗な光景を見ることができます。そこでは、見渡す限り青く広い空と海が果てしなく広がっているような不
思議な感じがします。また、太平洋では大きな鯨やイルカが船に寄ってきて、海王丸と競争したり、挨拶をしてくれたり、大自然のなか
を航海する楽しさを感じることができます。夜には空いっぱいの星を見つつ、昔の人たちが広い海を航海したときの気持ちを感じて船を
走らせています。海王丸の次の航海では、そんなふうにして米国ハワイのホノルル港まで風の力を借りて進んで行きます。
」という話に、
園児のみなさんは船員のロマンを感じて、神戸から太平洋上に思いを寄せているようでした。
本年4月9日から米国ハワイ・ホノルル港へ向けて遠洋航海に出航した海王丸は、6月8日に東京港に帰港し、その後の国内航海を経て、
7月15日に神戸港へ寄港する予定です。海王丸乗組員及び実習生一同、名谷きぼうの丘幼稚園のみなさんに再会できる日を楽しみにし
ています。
海王丸船長及び機関長が霧島丸慰霊碑に献花
本年2月7日、鹿児島港に入港した海王丸の甲斐船長、三好機関
長は、
初めて鹿児島大学・水産学部を表敬訪問しました。同学部では、
昭和2年に遭難した旧鹿児島県立鹿児島商船水産学校の練習船霧島丸の慰霊碑のほか遭難
当時の貴重な資料を大切に保管されており、今回、当所を代表して海王丸船長及び機関長
が霧島丸慰霊碑に献花し、犠牲者を弔い、今後も練習船の安全運航に努めることを誓いま
した。また、大成丸、青雲丸及び銀河丸も同学部を表敬訪問し、慰霊するとともに安全航
海を誓いました。
注)同学部は旧県立鹿児島商船水産学校を継承し、当所の日本丸、海王丸(いずれも初代)
は霧島丸の遭難を契機に建造されことに由来し、表敬訪問することとなりました。
慰霊碑に敬礼
ぼく「コウくん」です。
よろしくね!!
航海訓練所のキャラクターが誕生しました
NIST やホームページなどに登場し、みなさんに航海訓練所のことを紹介します。
<プロフィール> お父さんはドラゴン、お母さんはイルカ。
日 本 丸 と 競 争 し て 遊 んで い るう ち に 、 実 習 生 た ち と 仲 良 く な っ て 船 乗 りをめ ざ す よう に な っ た んだ 。
夢 は 日 本 丸 船 長 !
平成23年度上半期一般公開等予定
実施港
船名
寄港期間
実施日
実施内容
問い合わせ先
長崎港
日本丸
4/21 ∼ 4/26
4 月 23 日(土)
4 月 24 日(日)
セイルドリル
一般公開
長崎市さるく観光課
TEL:095-829-1314
門司港
日本丸
5/1 ∼ 5/5
5 月 3 日 ( 火 )
5 月 4 日 ( 水 )
セイルドリル
一般公開
北九州市港湾空港局総務部総務経営課
今治港
日本丸
5/19 ∼ 5/23
5 月 21 日(土)
5 月 22 日(日)
一般公開
セイルドリル
今治市海事都市推進課
TEL:0898−36-1519
名古屋港
大成丸
5/20 ∼ 5/24
5 月 22 日(日)
一般公開
名古屋港管理組合総務課
TEL:052-654-7894
宇野港
銀河丸
5/20 ∼ 5/25
5 月 21 日(土)
5 月 22 日(日)
一般公開
玉野市産業振興部商工観光課
TEL:0863-33-5005
福山港
日本丸
7/15 ∼ 7/19
7 月 17 日(日)
7 月 18 日(月)
セイルドリル
一般公開
広島県空港港湾部港湾振興課
TEL:082-224-2285
岩国港
日本丸
7/22 ∼ 7/26
7 月 23 日(土)
7 月 24 日(日)
セイルドリル
一般公開
山口県土木建築部港湾課
TEL:083-933-3817
名古屋港
銀河丸
7/29 ∼ 8/2
7 月 31 日(日)
一般公開
名古屋港管理組合総務課
TEL:052-654-7894
下関港
海王丸
7/29 ∼ 8/2
7 月 30 日(土)
7 月 31 日(日)
セイルドリル
一般公開
下関市港湾局振興課
TEL:083-231-1277
船川港
日本丸
8/5 ∼ 8/9
8 月 6 日 ( 土 )
8 月 7 日 ( 日 )
セイルドリル
一般公開
男鹿市産業建設部観光商工課商工港湾班
輪島港
海王丸
8/7 ∼ 8/11
8 月 8 日 ( 月 )
8 月 9 日 ( 火 )
セイルドリル
一般公開
輪島市建設部都市整備課
TEL:0768-23-1156
函館港
海王丸
8/18 ∼ 8/22
8 月 20 日(土)
8 月 21 日(日)
セイルドリル
一般公開
函館市国際水産・海洋都市推進室
TEL:0138-27-7303
TEL:093-321-5939
TEL:0185-24-9142
※1 セイルドリル:展帆・畳帆訓練。実習生が力を合わせて、帆を張ります。セイルドリルは、いずれも午後です。
※2 一般公開時は、大変混雑しますので、入場制限が設けられる場合があります。
※3 いずれも現時点での予定です。天候等により変更になる場合があります。
※4 時間、場所等の詳細は、上記問い合わせ先にお尋ねください。
NIST ナイスティー第25号
※NIST は航海訓練所の英語略称です
発行日 2011 年 5 月 31 日
発行人 飯田 敏夫 編集人 星野 哲昭
本紙に関するお問い合わせ先
所在地
独立行政法人航海訓練所総務課
TEL. 045-211-7303
F A X. 0 4 5 -2 1 2 -0 0 0 6
E-M A IL . m ail
@ koh kun.go.jp
U RL . h ttp:/ / w w w .koh kun.go.jp/
〒231-0003
神奈川県横浜市中区北仲通 5-57
横 浜 第 2 合 同 庁 舎 20 階