16052026.pdf 企 業 3319 ゴルフダイジェスト・オンライン 石 坂 信 也 (イシザカ ノブヤ) 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン社長 会員数の伸びにけん引されて 売上高も急成長 ◆市場環境と会社概要 当社が2000年にゴルフ分野のインターネットビジネスに参入したのは、2.4兆円の市場規模を持っているこ ととゴルフ人口が11.6百万人と非常に多いためである。この市場は、バブル期の社用接待や会員権といったビ ジネスモデルが崩壊して構造的な転換期を迎えており、大きなビジネスチャンスであると当社は判断した。ま た当社はインターネットを事業の中心に据えているが、インターネットを使った電子商取引は2002年で2兆円 台の市場規模であり、2007年度は12兆円になると予想されている。当社の4年間の成長はこのような電子商取 引の市場拡大が原動力になっており、ブロードバンド等でこの傾向は更に続くものと思われる。 当社は現在42万人のオンライン会員を持っており、これは国内では最大規模である。ヤフーや楽天等の総合 サイトと異なり、ゴルフに特化した専門サイトではあるが、電子予約等を取り入れた国内唯一のゴルフ総合 ポータルである点が当社の強みである。インターネットを使って未知数のビジネスをやるのではなく、既に確 立された大規模なゴルフ市場の一部をインターネットに引き入れるというのが当社の成長モデルである。 2003年12月中間期の売上構成比で見てみると、ゴルフ用品Eコマース事業が83%、ゴルフ場向けサービス事 業が12%、メディア事業が5%である。ゴルフ用品事業は仕入れから販売までを手掛けているのに対し、ゴル フ場向けサービスとメディア事業は原価が伴わず売上総利益率が90%を超えている。したがって利益面で見れ ば3事業のバランスが取れており、収益の多角化に成功していると言える。 ◆当社のビジネスモデル 当社はウェブサイトをプラットフォームとしてゴルファー、広告クライアント、ゴルフ場関係者、商品サプ ライヤーと取引を行っている。会員を獲得し、広告の媒体価値が向上すれば、アクセス数も向上して取引が活 性化し、さらに会員獲得につながるというのが当社の循環モデルである。これまで当社は川下のゴルファー会 員を中心にビジネスを行ってきたが、今後は川上に向かって展開し、ゴルフ市場を更に深掘りしていく。もう 一つの成長シナリオは、会員向けにゴルフ以外の新規事業を開拓することである。当社の会員は8割が30~40 代であるが、50代以上は10%を超えるまで増えてきており、この年代でのサービス利用率の伸びが大きい。ま たゴルファーは比較的富裕層であるという共通属性がある。このような特徴をうまくとらえた新規事業を展開 していくのが当社の今後の課題である。1月には日本ジェノス社と提携して実験的に酒類販売を始めたが、こ のような試みを今後も続けていく。 当社の会員は順調に増えており、直近のデータでも月に約1万人以上は増えている。株式上場で当社の知名 度が向上したので、このペースは今後も続いていくものと思われる。当社は、会員獲得の手段として業者を介 したオプトインメールを積極的に活用している。二つ目の手段は、当社の株主であるゴルフダイジェスト社の 週刊誌を中心とした広告出稿である。三つ目はバイラルマーケティングであり、会員が会員を呼ぶ仕掛け作り やプロモーションに力を入れている。 会員増加に連動して売上高も上昇している。最初の3年間はインフラに投資し、2003年6月期ではじめて経 常利益と当期純利益が黒字に転じた。2004年度は、中間期の段階で既に前期の黒字幅を上回っている。決算の 利益だけでなく、当社は、会員獲得コストに対する会員の生涯価値も重要視している。ゴルフは比較的長期間 にわたって継続する趣味であり、取引の単価も高いので、他の分野に較べて会員当たりの生涯価値は高い。 ◆事業展開 電子商取引では、個人情報や決済の観点から、会社に信用力を付けることが重要であり、これがブランド力 の強化につながる。 ゴルフ用品Eコマース事業では、100社を超える仕入れ先との関係強化と付加価値や利便性の向上に注力し ている。新品のみならず中古の買い取りや販売、クラブのレンタル、パーツも含めた工房サービス、オーク 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。 ション等のサービスをすべてオンラインとオフラインで提供しているのは当社だけである。現在、オンライン の在庫・物流基地としてリアル店舗を幾つか持っているが、これらのバックヤード強化が今後の課題となる。 ゴルフ用品電子商取引の市場規模は2003年で63億円であり、2007年には235億円に拡大すると予想されている。 当社シェアは2003年度で32%であるが今後の市場拡大に伴ってシェアは更に伸びていくであろう。 ゴルフ場向けサービス事業はオンラインのゴルフ場予約が中心であり、提携ゴルフ場数は1,100を超えた。 関東だけでなく関西で提携数を伸ばすと同時に、コースの予約可能時間枠を更に増やしてもらえるように関係 を強化するのが当社の課題である。このためには、ゴルフ場へ総合的な付加価値サービスを提供する必要があ り、各ゴルフ場のウェブ上での予約機能や顧客管理機能を持つアプリケーションを提供するASPサービスも その一つである。運営・集客支援については、幾つかのゴルフ場から部分的に業務を請け負っており、成果 ベースでの支払い等の売上拡大策を現在模索している。 メディア事業では、国内女子ツアーやマスターズ等の話題性の高いコンテンツを掲載しており、ページ ビューが伸びている。この事業の約8割が広告収入であるが、インターネット広告全般が成長を続けており、 当社はその追い風を受けて収入が増加している。インフォプラント社のゴルフサイトの認知度・利用度調査で は当社がトップに位置付けられた。 当社の継続的成長のためには既存事業を更に強化すべきであり、そのための施策を実施中である。ゴルフ用 品Eコマース事業では、まだ売上総利益率が20%を下回っているが、徐々に上昇しつつある。これを更に引き 上げるため現在仕入れ価格の改善を進めており、利益率の高い商材(アパレル等)の取り扱いにも着手した。 また当社独自のGDOポイント制度を積極的に活用しており、JALとのポイント交換やクレジットカード会 員優遇策等で優良顧客の囲い込みを図っている。ゴルフ場向けサービス事業では、他のオンライン予約サイト が取り扱っていないコースを100ほど持っているが、今後も当社の営業力で人気の高いゴルフ場を開拓し差別 化を図っていく。アライアンス戦略として、既にJALやJCBカード等と予約や用品販売の面で協力してい るが、今後も会員数が多くブランド力のある有力パートナーを探して提携することにより集客力および収益力 を強化していく。メディア事業では、媒体価値の向上と広告メニューの多角化に取り組んでいる。 その他の施策として、①これまでオンラインで取り扱っていなかったゴルフ用品メーカー数社と正式に契約 を結び関係を強化している。②4月15日から信販会社と提携した割賦販売を開始した。今後は、着払いなど支 払方法を多様化することで底上げを図っていく。③4月21日より予約ページのリニューアルを予定している。 今後も継続的にリニューアルを行うことで利便性を高めていく。④来週に会員向け無料サービスとしてグルー プ向けツールを立ち上げる。仲間同士のコミュニケーションを盛んにすることで既存会員の活性化や新規会員 の獲得に役立つであろう。 ◆ 質 疑 応 答 ◆ 他のゴルフ専門サイトとの違いは何か。 e*GOLFやGORAは基本的に予約サイトであり、当社のような電子商取引やメディア事業を行っていない。提携 ゴルフ場数も、当社のように1,000を超えているところはなく、600~800程度であろう。現在のところプレー 料金の面で大きな違いはないが、当社はポイントの活用を研究しており、これを差別化につなげていきたい。 メディア事業のコンテンツはどのように仕入れているか。 社内の編集編成体制でほとんどのコンテンツを作っている。海外ではフリーのカメラマン等と契約して仕入 のネットワークが出来ている。 (平成16年4月20日・東京) 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
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