[PDF]2009年度新入社員に見るゆとり世代の特徴 - 産業能率大学

【レポート】
2009年8月
2009年度新入社員に見る
ゆとり世代の特徴
学校法人産業能率大学
※
6月に発表した「2009年度新入社員の会社生活調査」を年代別にクロス集計し、ゆとり世代(1987
年度生まれ以降=21 歳以下)と、22歳以上の層を比べてゆとり世代の特徴を見出しました。
ゆとり世代の特徴
● 「指示待ち」でミスが怖い
・ 上司の仕事は「指示を出すこと」 41%
・ 責任ある仕事は「不安」 70%
● 就職先は“中身”より“外見”重視
・ 企業風土より、所在地、給与、企業規模を優先
● 自分自身を伸ばしたい
● 転職は「挫折」 48%
― この資料に関するお問い合わせ先 -
学校法人産業能率大学 企画広報部企画広報課 担当:秋山
〒158-8630 東京都世田谷区等々力 6-39-15
電話:03‐3704‐9040
ファクス:03‐3704‐9404
学習内容の削減や完全週休二日制など「ゆとり教育」を受けた世代について、1987年度生
まれが「ゆとり第一世代」と言われています。順調に進むと、
「ゆとり第一世代」は現在大学4
年生で、来年から大卒社員でもこの世代が社会に出ることになります。一方で、高校卒業、ある
いは高等専門学校や短期大学の卒業者は、すでにこのゆとり世代が社会に出ています。
学校法人産業能率大学は毎年、産能マネジメントスクールにおける新入社員研修の参加者を対
象に調査を行い「新入社員の会社生活調査」としてまとめており、今年度は6月に発表しました。
そこで、今年度の新入社員調査について、
「ゆとり世代」
(21歳以下)と、それ以外の世代の意
識を比べてみました。なお、同じ「新入社員」ではありますが、ゆとり世代は高卒・高専卒・短
大卒、それ以上は大卒であり、サンプルにやや偏りがあることに留意が必要です。
〔分析結果のポイント〕
■ゆとり世代は「指示待ち」(P10,11)
上司の仕事で、
「部下の報告を受ける」
、
「部下に指示を出す」、
「部下からの相談にのる」
の3つのうち一番大事だと思うものを聞いた質問では、
「部下に指示を出す」の回答はゆ
とり世代(21歳以下)が41%ある一方、22歳以上は30.0%。また、同様に、上
司に仕事の相談をする場合に、指示、判断、意見・アドバイスのどれを求めるのが適切
だと思うかを聞いた質問でも、
「指示を求める」についてゆとり世代は上の年齢層より高
い数値が出ていました。
■ゆとり世代はミスが怖い(P10,11)
新入社員のうちから責任ある仕事を任せられることについて、
「やる気が出る」か「不
安」かの二者択一で聞いた質問では、ゆとり世代は「不安」70%に対し「やる気が出
る」は30%。22歳以上の層では「不安」は52.8%にとどまっており、20ポイン
ト弱も「不安」が高い結果が出ています。
■企業風土より所在地・給与水準・企業規模(P3)
就職先を選ぶ際に重視した項目では、「仕事内容」「業種」が1位、2位でしたが、
3位は「所在地」
、4位に「給与水準」
、5位に「企業規模」。22歳以上では約47%で
3位に入っていた「企業風土」は、ゆとり世代では7位でわずか15%でした。
■自分自身を伸ばしたい(P4,5)
働くことに対して求めるものとして、「自己実現」「社会の役に立つ」といった項目は
22歳以上と比較すると低く、
「人間としての成長」が高い結果が出ています。そのほか
の質問でも成長欲求が高いと考えられる結果がでていました。
■転職は「挫折」(P8,9)
転職のイメージについてゆとり世代は「キャリアアップ」
(52%)と「挫折」
(48%)
が拮抗、22歳以上ではこれが75%、25%と大きく開きがあります。
1
〔「新入社員の会社生活調査」概要〕
1. 調査対象
2009年度入社の新入社員614人
2. 調査時期
2009年3月25日~4月10日
3. 調査方法
書面アンケートによる回答肢選択方式
4. 有効回答
589人
21歳以下 140人
22歳以上 449人
n(人)
男(%)
女(%)
589 人
66.9
33.1
21歳以下
140
70.7
29.3
22歳以上
449
65.7
34.3
全
体
5. 所属企業プロフィール
(従 業 員 数)
(上 場 区 分)
100人未満
107人
(18.2%)
100人以上 500人未満
315人
(53.5%)
500人以上 1,000人未満
85人
(14.4%)
1,000人以上
82人
(13.9%)
上
非
場
上
企
場
企
589人
(100.0%)
業
232人
(39.4%)
業
254人
(43.1%)
103人
(17.5%)
589人
(100.0%)
企業以外の法人
(企業所在地)
北 海 道
1人
(
0.2%)
(
1.9%)
東
北
11人
関
東
507人
中
部
24人
(
4.1%)
近
畿
44人
(
7.5%)
中
国
0人
(
0.0%)
四
国
0人
(
0.0%)
九
州
2人
(
0.2%)
589人
2
(86.1%)
(100.0%)
〔分析結果〕
「新入社員の会社生活調査」のうち、主な質問をピックアップして、ゆとり世代の意識の特徴
を見ていきます。
● ゆとり世代は、就職先選定で中身より外見を重視
就職先を選ぶ際に重視したこと
⇒「企業風土」より「所在地」
「給与」
「企業規模」
就職先を選ぶ際に重視したことを聞いた質問では、項目によってゆとり世代と上の世代で大
きく差があります。
ゆとり世代(21歳以下)
、22歳以上のいずれも「仕事内容」
「業種」が1位、2位ですが、
これに続く3位は、ゆとり世代では「所在地」
、一方の22歳以上では「企業風土」(47%)
でした。「企業風土」はゆとり世代では7番目(15%)で、ほとんど重視されていないこと
が分かります。
ゆとり世代の数値が22歳以上の回答より目立って高いものは、「所在地」「給与水準」「企
業規模」
「知名度」
。これだけを並べて見ると、ゆとり世代は、極言すると企業の“中身”より
も“外見”を選択基準にしているような印象があります。
問:就職先を選ぶ際に重視した項目は何ですか(3つ選択)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
給与水 企業規 福利厚 企業風
その他
準
模
生
土
キャリア
研修制
アップ
経営者
度
できそう
仕事内
容
業種
所在地
21歳以下(140)
64.3
60.7
47.9
29.3
22.9
18.6
15.0
14.3
12.1
6.4
3.6
2.9
22歳以上(448)
71.4
63.4
31.0
17.6
8.7
21.2
47.3
10.9
6.3
14.5
2.2
4.7
3
知名度
● ゆとり世代は自分自身を伸ばしたい
・働くことに対して求めるものは「人間としての成長」43%
・出世は「努力・能力の証」
働くことに対して求めるものを聞いた質問では、ゆとり世代は「人間としての成長」が高く、
一方で「社会の役に立つ」
「自己実現」は低い結果が出ています。ゆとり世代は、
「仕事でこれ
を実現したい!」「社会や人の役に立ちたい!」という仕事に対する“熱さ”というよりも、
自分自身の成長に対する実感を求めているようです。
自分自身を伸ばしたいという意識は、出世に対するイメージを聞いた質問からも読み取るこ
とができます。ゆとり世代は出世について「努力・能力の証」という回答が顕著に高く、「所
得の向上」「社会的なステイタスの向上」などは22歳以上の層より低くなっています。
ゆとり世代は、成長欲求が強いのかもしれません。成長を実感させることが動機付けにつな
がると考えられます。
問:あなたが働くことに対して求めるものは何ですか(最も近いものを1つ)
70
60
50
40
30
20
10
0
人間としての成長
収入の確保
社会的な信用
21歳以下(140)
42.9
25.7
9.3
22歳以上(449)
35.0
23.4
7.3
4
社会の役に立つ
自己実現
人との出会い
8.6
7.1
6.4
15.1
13.6
5.6
問:出世という言葉から浮かぶイメージとして最も近いものはどれですか?
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
権限の拡大
所得の向上
社会的なステイタ
努力・能力の証
スの向上
責任の増大
古くさい価値観
21歳以下(140)
9.3
15.0
11.4
29.3
33.6
1.4
22歳以上(449)
11.4
17.8
15.6
19.6
32.7
2.9
● ゆとり世代は冷静で現実的な仕事観
キャリアは不明瞭だが専門職志向が高い
⇒ とりあえず有事に備えて手に職を・・・
具体的なキャリアプランの有無を聞いた質問では、ゆとり世代は22歳以上の層よりも顕著
に「今は考えていない」が高いです。
「明瞭に描いている」
「漠然と考えている」のどちらでも
他の世代と比べると最も低く、自身のキャリアは不明瞭なようです。
最初の10年間の過ごし方や、将来の進路について聞いた質問から、ゆとり世代は他の層よ
りも専門職志向が高いことが分かります。近年の新入社員は管理職志向が高まる傾向にある中、
全く逆の結果が出ています。
将来目指す地位への関心を聞いた質問でも、地位に対する関心の低さが伺えます。経済環境
の悪化による将来不安を基に、ゆとり世代は時代を見ながら有事に備えて“手に職”を付けて
おきたいと考えているように感じられます。
また、どのようにされると伸びるタイプかを聞いた質問では、
「褒められると伸びる」が全
体としては多いものの、「客観的で適切な評価だけで十分」が22歳以上より高い回答結果が
でています。これらの結果を俯瞰すると、ゆとり世代は現実的な観点を持って、冷静な判断を
5
しており、仕事観は非常に“ドライ”な印象を受けます。
問:あなたは将来の自身のキャリアプランについて考えていますか
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
明瞭に描いている
漠然と考えている
今は考えていない
21歳以下(139)
5.7
40.3
51.8
まったく関心がない
2.2
22歳以上(448)
10.9
64.7
22.6
1.8
問:最初の10年間をどのように過ごしたいですか
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2~3年ごとのローテーションでいろ できるだけ同じ職場にとどまり、専門 担当職務に関係なく、自分のやりた
いろな職場を経験したい
知識を深めたい
い仕事の勉強がしたい
21歳以下(140)
15.7
70.0
14.3
22歳以上(448)
38.8
46.0
15.2
6
問:将来の進路としてどのような方向を望みますか
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
役職には付かず、担当業
管理職として部下を動か
ボランティアなど仕事以外
し、部門の業績向上の指揮 務のエキスパートとして成 独立して会社を起ち上げる
の道を探す
をとる
果を上げる
21歳以下(140)
22.1
66.4
7.1
4.3
22歳以上(447)
46.3
40.0
9.8
3.8
問:最終的に目標とする役職・地位は?
70
60
50
40
30
20
10
0
社長
役員
部長クラス
課長クラス
係長クラス
地位には関心が
ない
21歳以下(140)
12.9
9.3
7.9
5.0
4.3
60.7
22歳以上(449)
12.5
18.5
18.9
6.7
0.4
43.0
7
問:あなたはどのようにされると伸びるタイプですか
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
褒められて伸びるタイプ
怒られて伸びるタイプ
客観的で適切な評価だけで十分
21歳以下(139)
57.6
15.1
27.3
22歳以上(448)
65.4
11.4
23.2
● ゆとり世代にとって転職は「挫折」
転職のイメージは「挫折」
約5割
⇒ 勤務先でコツコツとした会社生活を過ごしたい
ゆとり世代は、上の世代に比べると転職に否定的なようです。
転職について「キャリアアップ」と「挫折」のどちらのイメージが強いか聞いた質問では、
ゆとり世代は顕著に「挫折」が高い結果が出ています。ゆとり世代は「キャリアアップ」
(52%)と「挫折」
(48%)が拮抗しているにもかかわらず、22歳以上ではキャリアア
ップが75%、挫折が25%と大きく開きがあります。
働くうえで“キャリアプランの方向性”として「どのような企業でも働ける能力を身につけ
たい」か「勤務先にとって不可欠な人材となりたい」かを聞いた質問では、
「勤務先にとって
不可欠な人材となりたい」がゆとり世代では74%、22歳以上では66%でした。
新入社員調査で近年の傾向をみても若年層の安定志向の高まりは顕著ですが、ゆとり世代は
8
より一層、転職を避けできるだけ同じ会社で働き続けたいという意向が強いことが分かります。
問:
「転職」から受けるイメージとして、より強く感じるのはどちらですか。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
キャリアアップ
挫折
21歳以下(140)
52.1
47.9
22歳以上(446)
75.1
24.9
問:これから働くうえで今の気持ちに近いものは?(キャリアプランの方向性)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
どのような企業でも働ける能力をつけたい
勤務先にとって不可欠な人材となりたい
21歳以下(140)
25.7
74.3
22歳以上(448)
34.2
65.8
9
● ゆとり世代は、指示待ちでミスが怖い?
・上司の仕事は「部下に指示を出すこと」41%
・責任ある仕事は「不安」 70%
ゆとり世代に限らず昨今の若手社員は「主体性がない」といったイメージがあるかもしれませ
んが、ゆとり世代はさらに「指示待ち」傾向にあることが分かりました。
上司の仕事で一番大事だと思うものについて、部下の報告を受ける、部下に指示を出す、部下
からの相談にのる、という三択で聞いた質問では、「部下に指示を出す」の回答についてゆとり
世代が41%ある一方、22歳以上では30%と、11ポイントも開きがあります。
また、同様に、上司に仕事の相談をする場合に、指示、判断、意見・アドバイスのどれを求め
るのが適切だと思うかを聞いた質問では、全体としては「意見・アドバイスを求める」が多数を
占めるものの、「指示を求める」についてゆとり世代は22歳以上の層より高い数値が出ていま
した。
ゆとり世代が上司の「指示」に対する意識が強いことは明らかで、できるだけ手順を紐解いて
指導、あるいは自分なりに考えて行動するように“指示”すること、主体的に働くことの必要性
を説くことなどが必要になりそうです。
また、新入社員のうちから仕事を任せられることについて不安か、やる気が出るかを二者択一
で聞いたところ、他の年齢層に比べて、
「不安である」が高くなっています。これは年齢の違い
による影響も考えられますが、ミスを避けようとする意識があるのかもしれません。
働くうえでの不安を聞いた質問では、
「職場での人間関係」
「仕事の進め方」
「担当業務の内容」
などが上位。順位では他の年齢層と大きな違いはありませんが、個別の選択肢でみると、
「職場
での人間関係」と「リストラ」については、22歳以上より不安が強くでています。現実的な仕
事観で手に職を、という意識は、この「リストラ」に対する不安が上の年齢層より高いことから
も伺うことができます。
定年退職の年齢を聞いた質問では、ゆとり世代は「60歳」という回答が多く見られます。同
じ会社にとどまり、できれば早く引退したいという考えが見え隠れしています。
最後に、年功序列と成果主義のどちらを望むか二者択一で聞いた質問では、ゆとり世代は年功
序列が成果主義を上回っていました。
10
問:上司の仕事で一番大事だと思うのはどれですか
70
60
50
40
30
20
10
0
部下の報告を受ける
部下に指示を出す
部下からの相談にのる
21歳以下(140)
7.1
41.4
51.4
22歳以上(448)
15.2
30.2
54.7
問:上司に仕事の相談をする場合、適切だと思うのはどれですか。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
指示を求める
判断を求める
21歳以下(140)
12.9
18.6
68.6
22歳以上(449)
8.0
18.5
73.5
11
意見・アドバイスを求める
問:新入社員のうちから責任ある仕事を任せられることをどう思いますか?
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
やる気がでる
不安である
21歳以下(140)
30.0
70.0
22歳以上(449)
47.2
52.8
問:あなたが仕事上で悩みそうなことは何ですか(3つまで)
70
60
50
40
30
20
10
0
職場での人 仕事の進
間関係
め方
担当業務 朝起きるこ
の内容
と
仕事の成 上司との関 担当業務
績
係
の量
リストラ
社内ルー
ル
21歳以下(139)
65.5
45.3
44.6
34.5
34.5
25.2
16.5
16.5
9.4
22歳以上(448)
57.6
44.4
41.7
37.7
38.2
23.0
28.3
6.0
8.9
12
問:定年退職の年齢は何歳くらいが適当だと思いますか。
60
50
40
30
20
10
0
60歳
65歳
70歳
定年なし(いつまでも)
21歳以下(140)
35.0
40.7
5.7
18.6
22歳以上(449)
27.4
49.0
2.5
21.2
問:年齢や在職年数に応じて昇進や待遇が決まる年功序列的な人事制度と業績に応じて決まる成果主義的な人事制度で
は、どちらを望みますか。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
年功序列
成果主義
21歳以下(138)
50.7
49.3
22歳以上(445)
46.5
53.5
13