「医学への道 2015」はこちらをクリックしてください。(PDF - 名古屋大学

2 015
名古屋大学 医学部医学科案内
医学への道
Nagoya University S c h o o l o f Medicine
Nagoya University School of Med
Medicine
医系研究棟1号館(左)と2号館(右)
C O N T E N T S
.............. 1
学部長挨拶
学部長
長
5
8
機構 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
1
7
沿革 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
17
2
教育目標・
14
6
12
15
13
アドミッションポリシー . . . . 3
9
4
カリキュラム . . . . . . . . . . . . . 4
11
10
3
16
研究・診療紹介
■ 基礎医学系 . . . . . . . . . . 6
■ 社会医学系 . . . . . . . . . . 8
■ 臨床医学系 . . . . . . . . . . 9
■ 研究施設・研究所 . . . . 13
鶴舞地区案内図
卒業後の進路 . . . . . . . . . . . . 14
鶴舞地区
❶ 医学部基礎研究棟
❾ 医系研究棟1号館
❷ 附属図書館医学部分館・学生食堂
病棟
❸ 鶴友会館
エネルギーセンター棟
❹ 厚生会館
看護師宿舎A棟
❺ アイソトープ総合センター分館
中央診療棟
❻ 医学部基礎研究棟別館
医系研究棟2号館
❼ 解剖教育施設保存棟
看護師宿舎B棟
❽ 附属医学教育研究支援センター
(実験動物部門)
外来棟
医系研究棟3号館
(平成26年完成予定)
クラブ活動・イベント . . . . . . . 16
交換留学制度 . . . . . . . . . . . . 18
平成27年度入学試験案内 . . 20
交通案内
医学への招待
医学は、ひとの病気を対象とした学問であり、
その原因を明らかにし、治
療法を開発していく過程における知の集合を体系化したものです。医師
は、医学の知識に基づいて、病気の人を治療する専門職であると同時に、
医学という学問を発展させる研究者としての側面も有しています。
医学はこの20年余で劇的な発展を遂げました。
この発展を支えた要因
は、医学という学問分野に留まらないサイエンスの幅広い分野とのクロス
トークにあります。分子生物学、細胞生物学、遺伝学、生化学、免疫学と言っ
た生命の基本原理を解き明かす生命科学の発展により、病気の原因、病
態の解明に関する多くの画期的な発見がありました。中でも、ヒトゲノム
プロジェクトにより、30億塩基対からなるヒトの遺伝子がすべて解読され
たこと
(2003年)、京都大学の山中伸弥教授によりどんな細胞にでも分化
しうるiPS細胞(人工多能性幹細胞)が作製されたこと(2006年)は21世紀に
入ってからの特筆すべき成果です。
また、医用工学は、画像診断、内視鏡技
術、手術手技の発達など高度先進医療に革新的な発展をもたらしました。
医学部長
20年前の医学の教科書と現在私たちが使用している教科書を比較してみ
髙橋 雅英
ますと、医学知識のレベルが一新されていることがよくわかります。言い換
えれば、医学は日進月歩であり、医師は学生の時だけ勉強すれば良いという類の職業ではないということです。
しかし、一方で医学が発展したと言っても、がんや心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、神経難病といった病気が20年前に比べて劇
的に治るようになったわけではありません。私たちは現在、医学の急速な発展により、病気を克服していくための多くの手段を
手に入れ、
ようやく病気の本質を解明し、新たな治療法を開発する一歩を踏み出したに過ぎません。例えば、ヒトの遺伝子2万
数千個がすべて解読されたことは素晴らしいことですが、今後はこれらの遺伝子の詳細な生物学的機能を明らかにし、
さらに
これら遺伝子が相互にどのような関係性を持って病気を形成していくのかを明らかにしていかなければなりません。
しかし、20年前と大きく違うのは、私たちの努力によりがんをはじめとする難治性の病気が克服できそうだ、
という期待を持
てる時代になったということです。皆さんは、
まさにこのようなエキサイティングな時代に医学への道を志そうとしているわけで
す。
そして、将来、医師として医療を実践するとともに、21世紀の医学を発展させ、20世紀には不治の病と言われていた病気を
克服していく担い手でもあります。
医学の世界は、新たな知識が怒涛のように押し寄せてくる大海です。将来、
その大海に乗り出した時に、押し寄せる知識の波
を吸収しつつ明確な針路をとれるように、名古屋大学医学部では十分な教育カリキュラムを組んで皆さんを育てていきたいと
考えています。6年一貫教育を実施し、1年次には「医学入門」
というコースにより、医学への動機づけと医師として将来を考える
機会を設けています。2年次には解剖学実習など本格的な医学教育がスタートします。3年次には半年間、基礎医学研究室で個
別指導のもとに研究する機会を設け、研究成果の発表を行うことにより研究マインドを育てています。優れた研究成果をあげ
た学生には表彰すると共に、海外派遣の機会が与えられます。4年次からは臨床医学の講義・実習が始まり、6年次には、交換留
学制度に基づき、
ジョンズホプキンス、
デューク、
フライブルク等欧米の一流大学医学部で勉強する機会を設けています。
ただ、与えられたカリキュラムをこなしていくだけの受け身の姿勢では決して優れた医師、研究者にはなれません。
冒頭に、
医学の急速な発展はサイエンスの幅広い各分野とのクロストークが要因であると述べましたが、
これは個人にも当てはまりま
す。医師は困っている人(患者さん)
を相手にする職業です。
どの職業にも増して、豊かな人間性や人に対する思いやる心が必
要です。
この点において、医学だけの優等生になるのではなく、サイエンス全般はもとより、芸術、文学など幅広い教養を持ち、
常に新たな分野に興味を抱く姿勢が皆さんが将来人間として大きく成長するために重要です。
名古屋大学医学部は、1871年、仮病院が旧名古屋藩の評定所跡地に、仮医学校が旧名古屋藩の名古屋町奉行所跡に設立さ
れたことに始まり、140年に及ぶ歴史と伝統をもっています。全国の医学部の中でも屈指の歴史を誇る名古屋大学医学部から
は、医学界の卓越した指導者および優れた臨床医を数多く輩出してきました。私たちは、
この歴史ある名古屋大学医学部の一
員になることを志している皆さんを、名古屋大学学術憲章に謳っているように、
「創造的な研究活動によって真理を探究し、世
界屈指の知的成果を産み出すとともに、
自発性を重視する教育実践によって、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識
人」に育てたいと思っています。名古屋大学関係者からは4人のノーベル賞受賞者が輩出しています。皆さんも大きな夢を持っ
て本学にチャレンジして下さい。
Nagoya University School of Medicine
1
沿 革
年
次
名
称
卒業者数
明治
4 ∼ 5年
(1871∼1872)
仮病院・仮医学校(名古屋藩評定所跡)
明治
5 ∼ 6年
(1872∼1873)
義病院(元町役場)
明治
6 ∼ 7年
(1873∼1874)
仮病院・医学講習場(西本願寺別院)
明治
8 ∼ 9年
(1875∼1876)
愛知県病院(天王崎)
明治
9 ∼ 14年
(1876∼1881)
公立病院・公立医学所(天王崎)
明治 14 ∼ 36年
(1881∼1903)
愛知医学校
1,082
明治 36 ∼ 大正9年
(1903∼1920)
愛知県立医学専門学校
1,967
大正
9 ∼ 昭和6年
(1920∼1931)
愛知医科大学
427
昭和
6 ∼ 14年
(1931∼1939)
名古屋医科大学(官立移管)
695
昭和 14 ∼ 22年
(1939∼1947)
名古屋帝国大学医学部
749
昭和 19 ∼ 25年
(1944∼1950)
名古屋大学附属医学専門部
744
昭和 22 ∼ 29年
(1947∼1954)
名古屋大学医学部(旧制)
名古屋大学医学部
昭和 24 ∼ 平成25年 (1949∼2013)
688
5,771
計 12,123
■ 学生定員と現員
年
次
H26.4.1現在
定
員
現
員
男
女
計
1年
107
82
29
111
2年
107
91
21
112
3年
112
90
28
118
4年
112
83
30
113
5年
108
91
17
108
6年
108
89
23
112
674
機 構
名古屋大学医学部では、平成10年4月より、大学からさらに高度な教育研究を行う機関としての大学
院大学への改組が始まり、平成12年度までに完了しました。以来、医学部教員はすべて大学院の教員と
なり、医学科の教育は、医学科学生のために作られた詳細な授業計画(シラバス)に従って、大学院の教
員が担当することになりました。ただ、当面、医学科の教育は、下図に示す従来の基礎医学系・社会医学
系・臨床医学系諸講座の枠組を踏襲しつつ、次第に新しいシステムに移行していくことになっています。
名古屋大学
医 学 部
大学院医学系研究科
Nagoya University School of Medicine
医 学 科
基礎医学系講座
保 健 学 科
社会医学系講座
附 属 病 院
臨床医学系講座
総合医学教育センター
環境医学研究所
神経疾患・腫瘍分子医学
研究センター
総合保健体育科学センター
医学教育研究支援センター
クリニカルシミュレーションセンター
(NU-CSC)
2
名古屋大学医学部
教育目標
人間性・倫理性
科学的論理性
創造力・独創性
名古屋大学医学部 アドミッションポリシー
Admission policy
名古屋大学医学部は豊かな人間性、高い倫理性、科学的論理性を備え、
創造力に富む医師、医学研究者を養成することを教育目標としています。
この目標に相応しい次のような資質を備えた学生を求めています。
.人間に対する共感と深い洞察力を持つ。
.知的好奇心旺盛で科学的探究心に富んでいる。
.広い視野を持ち、物事を多面的に捉えることができる。
.協調性があり、国際的に活躍する意欲がある。
.独創力を備え、新たな分野を開拓する気概を持つ。
Nagoya University School of Medicine
3
カリキュラム
名古屋大学医学部医学科では、基礎的・一般的教養の修得と、専門科目の学習とが合理的かつ効果
的に行われるよう、他学部との連携の下、六年一貫の教育体制がとられています。
全学教育科目
一年生から二年生にかけては、大学本部のある東山キャンパスにおいて「全学教育科目」を履修します。総合大学としての本学の特徴を生か
し、全学の協力により、幅広い知識を修得し、豊かな教養と人間性を培うための最良の場と機会とを提供することを究極の目標としています。
「理系基礎科目」では、数学、物理学、化学、生物学を、それぞれ高等学校での学習内容を発展させた形で系統的に学習します。
医学部を含め理系学部の教員が協力して行う講義・実習(または演習)を通して、引き続く専門科目を学習するために必要不可
欠な、広い視野に立った自然科学的なものの考え方を学びます。
「 基礎セミナー」は、設定された特定のテーマについて、文献や
資料の検討、あるいはフィールドワークなどを行い、その結果をまとめて発表するという密度の濃い少人数授業です。
「 文系教
養科目、理系教養科目」では、現代社会が直面する基本的な諸現象を学際的、総合的に分析し、すべての学部の教員が協力して各
現象に則した内容の講義・実習を行います。
「 言語文化科目」では、外国語の能力を高め、異文化理解を深めて、国際社会に相応
しい教養を身につけます。このほか、学生の自主的で多様な学習意欲に応えるために、各学部が開講する専門系授業科目のうち、
他学部の学生の受講が可能であり、かつ有意義であると認めたものを「開放科目」として指定し、受講を奨励しています。
医学入門
一年生の水曜日には、東山キャンパスでの全学教
育科目と並行して、主に鶴舞キャンパスにおいて、
「医学入門」があります。これは、医学への動機づけ、
医師としての将来を考える機会を与えることを目
的とするもので、入学直後の四月から始まります。
「医学入門」は、次の三つの柱から構成されます。
1. 医学と医療について、医師になるための心構え、医の倫理についての講義
2. 医学生としての自覚を深めるために早期体験実習として、愛知県内障
がい者(児)施設および老人介護施設での介護実習と、名古屋大学医学
部附属病院での看護実習およびシャドーイング(早期体験実習)
3. 医学生物学の基礎
基礎医学
二年生になると、全学教育科目と並行して、鶴舞キャンパスにおい
て医学専門科目が本格的に始まります。医学科の専門科目は、
「 基礎医
学」、
「 社会医学」、
「 臨床医学」の三つに大別できます。このうち、三年生
の前期まで続く「基礎医学」では、人体器官の構造、生体の機能、生物の
化学、生体と薬物、病因と病態、生体と微生物、免疫と生体防御などの
科目があります。これらは従来の解剖学、生理学、生化学、薬理学、病理
学、微生物学、免疫学に相当しますが、カリキュラム改革に伴い、統合
的な科目として再編されたものです。講義と実習を通じて、人体の構
造 と 機 能 の 正 常 と 異 常 に つ い て 学 び ま す。病 理 学 実 習 の う ち、亡 く
なった患者さんの病理解剖の結果に基づき、診断・治療の過程におい
て問題になった点を議論し、病気への理解を深める臨床病理学実習は、
臨床医学の素養を必要とするため、五年生になってから行われます。
「病因と病態」実習
1年生
2年生
3年生
(講義・実習・演習)
[基礎科目(理系・文系・全学)]
[教養科目(理系・文系・全学)]
医学入門
4
基 礎 医 学
(講義・実習)
基礎医学セミナー
全 学 教 育 科 目
基礎医学セミナー
臨床医学
基礎医学の講義・実習が一通り終った三年生後期の半年
四年生のカリキュラムの中心は、臨床系科目(内科・外科・
間は、講義室を完全に離れ、最前線の研究を進めている基礎
小児科など)の講義とチュートリアルおよび基本的臨床技
講座(社会医学系講座・環境医学研究所各部門・総合保健体
能実習です。チュートリアルは、少人数のグループで討論し
育科学センターを含む)に身を置いて、生の研究生活を体験
ながら臨床症例を多角的に考え自ら問題を発見する学習法
します。各研究室に2-4名ずつが配属され、指導教員の直接
です。実習では基本的臨床能力の中でも医療面接、身体診察、
指導の下で実験・研究を実践しながら、科学的思考法を体得
縫合、手洗い、心肺蘇生、採血などといった主に技能が関係
します。セミナー終了後、口頭またはポスター形式による成
した学習項目に焦点を当て、集中的に学びます。
果の発表が義務付けられており、優秀者には表彰するとと
もに、海外の学会等へ派遣される機会が与えられます。
チュートリアル
臨床実習
ポスター発表
五年生になると、いよいよベッドサイドにおいて実際に
患者さんに接して臨床医学を学ぶ臨床実習が始まります。
社会医学
この学年で行う臨床実習では、6-7名の小グループに分か
社会医学系の講義・実習では、人々の健康が、社会の変化
れ、名大附属病院の全科をそれぞれ1-2週ずつ回ります。そ
やさまざまな社会的活動によって影響を受けていることを
の他、約4週間の学外関連病院での臨床実習も体験します。
学び、自ら考え行動する力を伸ばします。講義は、
「 人の死と
生命倫理・法」、
「 環境・労働と健康」、
「 疫学と予防医学」、
「保
健医療の仕組みと公衆衛生」の4総合科目からなり、社会医
学の科学的な考え方や実践的アプローチについて学びます。
社会医学実習では、少人数教育を積極的に取り入れ、地域、
職域、国際社会における、個人および集団の健康、人々の生
活、環境、法中毒学、医療行政などに深く切り込んだテーマ
を設定し、社会との関わりの中で医師として果たす役割を
臨床実習
追求しています。
選択実習
六年生になると、医学科における最後の仕上げとも言う
べき選択実習が始まります。 選択実習では、主として臨床
講座に2-6名ずつの学生が配属され、各学生は一学期のう
ちに7週間ずつ2つの科を体験することになります。選択実
習の主な目的は、指導医の下に個人で患者を受け持ち、責任
をもって医療の実際を主体的に体験することにあります。
講義
4年生
5年生
卒 業 試 験
選択実習
(講義)
臨床実習
臨床医学
︵チュートリアル・講義・
基本的臨床技能実習︶
社 会 医 学 ︵ 講 義・実 習 ︶
社会医学
6年生
臨床病理学実習
Nagoya University School of Medicine
5
研 究・診 療 紹 介
医学系研究科には、大きく基礎医学系、社会医学系、そして臨床医学系の三系統に分類される多くの
講座・分野があります。また、神経疾患・腫瘍分子医学研究センター(3部門:9分野)があり、さらに大
学附属研究施設として環境医学研究所(2部門8研究室)があります。これら講座および研究施設の部門
が行う主要な仕事には、
( i)各専門領域についての医学教育と、
( ii)の先端医科学の研究とがあり、さら
に臨床系諸講座の場合には、
( iii)最先端医療機関としての附属病院における診療の実践が加わります。
三つの職務はお互いに深く結びついているので、ここでは、医学科で履修が義務づけられている各科
目の概要に併せ、
研究・診療の内容に触れつつ、紹介します。
目の概 要に併せ、それを担当する講座・研究室の横顔を、
それを担当
分野紹介
分野
紹介
基礎医学系
・・・・・・・・・・・ 機 能 形 態 学 講 座 ・・・・・・・・・・・
■分子細胞学
細胞の中の脂肪の塊である脂肪滴を研究しています。肥満や
脂肪肝では、それぞれ脂肪細胞や肝細胞の脂肪滴が増大するこ
とが問題になります。また脂肪滴の異常は動脈硬化症、神経疾
患、癌にも見られます。脂肪滴の形成や分解の過程に関わる分
子の性質を明らかにし、様々な病気との関連を解明することが
研究の目標です。
(大人の脳はかたまりとして見えますが、もとをたどれば、胎児
の頃、脳室という水たまりを包む薄い皮のようなものが次第に
分厚くなっていくことでできていくのです。ニューロン(神経細
胞)が生まれ、動き、並び、配線をして、脳ができます)
左:電子顕微鏡 右:黒く見える大きな丸い構造が脂肪滴
・・・・・・・・・・・・ 細 胞 科 学 講 座 ・・・・・・・・・・・・
■細胞生理学
■機能組織学
我々ヒトは左右の耳に到達する音の僅かな強弱や時間の差
再生可能な末梢神経が再生する仕組みを分子レベルで解明
をもとに音のくる方向を特定します。この精度は非常に高く、
することにより、再生しにくい脳や脊髄(中枢神経)の再生をめ
我々が識別することのできる1度の角度は、両耳間の音の時間
ざしています。もう一つの研究は、疲労が続くと体の恒常性を
差として1/100000秒に相当します。この時間差は脳の聴覚
維持してゆく仕組みが崩壊してゆきます。この仕組みを明らか
神経回路で検出されます。神経細胞における活動電位の時間幅
にすることで、過労の予防や診断をめざしています。
( 写真左は、
が通常1/1000秒であることを考えると、この聴覚神経回路が
マウスの胎仔の手の神経が伸びてゆく様子を示しています。写
いかに正確な情報処理を行っているかが分かります。我々はこ
真右は慢性的な過労状態のネズミの下垂体の細胞が崩壊して
のような聴覚神経回路の働きを調べることにより、脳内の空間
ゆく様子を示す電子顕微鏡写真です。)
地図が作られるしくみを明らかにすることを目指しています。
■細胞生物物理学/イメージング生理学
細 胞 が 機 械 刺 激 を 感 じ る 仕 組 み、
“ 細 胞 力 覚”の 解 明 が 中 心
テーマです。細胞力覚は聴覚や皮膚感覚だけではなく、細胞の
成長や運動など、細胞の変形を伴うあらゆる場面で働く根幹機
能です。例えば血管内皮細胞は、血流や血圧を感知して血管径
を制御し、血圧や血流量を調節しています。私たちは細胞力覚
を担うメカノセンサーの分子実体とその活性化機構を、パ ッ チ
ク ラ ン プ、バ イ オ イ メ ー ジ ン グ、一 分 子 測 定 法、分 子 生 物 学、
分 子 動 力 学 計 算 法 など先端的科学技術を駆使して調べていま
■細胞生物学/超微形態学
す。主な対象は、細菌(体積調節)、植物(重力感知)、血管内皮細胞
脳の形成を研究しています。先天性障害の原因解明や幹細胞
(血圧感知)、心筋細胞(不整脈)、乳腺(乳汁分泌)、小腸絨毛(消化
を使った再生医療を意識しつつ基礎的知見を蓄積中。三次元的
吸収)です。また性ホルモン(神経ステロイド)による脳シナプス
な組織中の細胞の挙動を観察し、遺伝子発現やタンパクの機能
可塑性の増強や虚血性脳傷害の保護作用の分子機構を超高速
を 追 求します。http://www.med.nagoya-u.ac.jp/dev-bio/index.html
神経活動イメージング法で調べています。
に動画付き紹介あります。
6
・・・・・・・・・・・・ 生 物 化 学 講 座 ・・・・・・・・・・・・
酸素を含む蛋白質、脂質、遺伝子(DNA、RNA)、ビタミンおよ
びホルモン等の調節因子が細胞内で働く機構を解析する生化
学を担当しています。
■分子細胞免疫学/免疫細胞動態学
免疫は多くの病気や日々の健康を理論的に理解するのに欠
かせない学問となっています。私たちは最近、潰瘍性大腸炎と
いう自己免疫疾患のマウスモデルで、疾患を治癒に向かわせる
マクロファージ系細胞が自然にできてくることを見いだしま
した。この細胞を人為的に作り出すことで色々な疾患の治療に
■分 子 生 物 学 / 生体 高 分 子 学
役立ちます。また、私たちは老化マウスからiPS細胞を作成
神経回路再編機構とがん発生を主な対象領域として、両方に
する方法を確率しました。このiPS細胞を様々な組織に分化
共通に働く分子の探索とその作用機構の解明を目指していま
させることで、自己の細胞から疾患や、老化によっておとろえ
す。これらの研究は、特に脊髄損傷、ALSのような神経変性疾
た機能を回復させられないかを研究しています。
患、神経芽腫のような難治性がんの克服を見据えたものです。
また、この文脈に沿った分子機構として、腎障害や分子標的治
■ウイルス学
療の研究も精力的に行なっています。
ウイルスは病原体として医学的重要性をもつとともに、基本的
な生命現象を解明するためのツールとしての有用性をもちます。
■分 子 細 胞 化 学
当部門ではヒトを宿主とするヘルペス群ウイルスを対象に、増殖
ヒトの癌および神経変性症などの難治疾患の原因と病態の
機構、感染と発症の分
解明を目指し、細胞の増殖・分化・死の制御に関わる遺伝子/
子機構についての解
分子の同定と解析を行なっています。とくに細胞膜に発現する
析、及びヘルペス群ウ
糖脂質や糖タンパク質の糖鎖による様々なシグナル調節と外
イルス感染症の制御
環境への反応機構につき解明すると共に、その成果をふまえた
を目的とした戦略的
癌や神経疾患の新規の予防・治療法の開発を目指しています。
基礎研究を行ってい
ます。
・・・・・・・・・・・ 病 理 病 態 学 講 座 ・・・・・・・・・・・
■生 体 反 応 病 理 学/ 分 子 病 理 診 断 学
病理学とは病気の発生機構を研究する学問領域です。ヒトは
鉄や酸素を利用して生きていますが、これらは諸刃の剣であり、
条件により酸化ストレスを発生し、生体の様々な分子に傷害を
アスベスト投与によりラット腹腔内に
発生した悪性中皮腫
・・・・・・・・・・・ 分 子 医 薬 学 専 攻 ・・・・・・・・・・・
■トキシコゲノミクス
与 え ま す。そ の 発 が ん・
医薬品の代謝・解毒・薬物相互作用・毒性・安全性に関する研
動脈硬化などへの関与を
究を行っています。機器分析、細胞培養や動物実験まで幅広い研
研 究 し、最 近 は ア ス ベ ス
究手技を用いて、特に(1)医薬品による臨床での副作用発現の機
トによる発がん機構の解
構解明と予測・回避手段の研究と(2)医薬品開発における薬に
明 に 取 り 組 ん で い ま す。
起因する臓器障害・種差を予測できる試験系の開発研究に取り
病理診断と病理医の育成
組んでいます。
にも寄与しています。
・・・・・・・・・・・・・ 臨 床 医 薬 学 ・・・・・・・・・・・・・
■腫 瘍 病 理 学 / 神経 機 能 病 理 学
■生物統計学
腫瘍病理学・神経機能病理学教室は細胞の増殖、生存、運動能
疾患などの生命現象の多くは、複雑なメカニズムをもち、大
に関わる細胞内シグナル伝達系を解析することにより、細胞の
きな個体差を伴うものですが、実際に生命現象のデータを収集
がん化に重要な機能分子を同定する研究を進めています。これ
し、解析することで、現象の背後にある法則性に関する推論が
らの分子の機能について細胞レベルや遺伝子改変マウスを用
可能になります。当教室は、さまざまな医学研究でのデータの
いた個体レベルでの解析を行っています。同時に神経系の発生
収集と解析に関する統計的方法論の研究と実践に取り組んで
や神経疾患における役割についても解析しています。
います。
・・・・・・・・・・ 微生 物・免 疫 学 講 座 ・・・・・・・・・・
細菌やウイルスの病原性について研究する細菌学やウイル
ス学、高度に文化した免疫(感染症、アレルギー、癌免疫および
臓器移植)の仕組みを研究する免疫学を担当しています。
神経疾患・腫瘍分子医学研究センター
・・・・・・・・・・ 腫 瘍 病 態 統 御 部 門 ・・・・・・・・・・
■分子腫瘍学
ヒトがんの発生と進展の分子機構を一つの疾患として統合
■分 子 病 原 細 菌 学/ 耐 性 菌 制 御 学 分 野
的に探求し、得られた成果を癌の克服に還元することを目指し
薬の効かなくなった細菌(薬剤耐性菌)の出現と拡散は、現代の
て、がんの本態解明を目指した極めて基礎的な研究から、がん
医学上の問題であるとともに、世界的な社会問題の一つです。当
克服を目指した革新的な診断・治療法の開発研究まで、多岐に
教室では、薬剤耐性菌に関する種々の問題を解決するために、現
渡る研究を展開中です。
代科学の最先端の技
術を駆使し、薬剤耐性
■腫瘍生物学
菌の解析、創薬に向け
腫瘍生物学講座では、癌に関する基礎的な研究から治療を目
た研究を通して、薬剤
指した応用的な研究など幅広く研究をおこなっています。癌関
耐性菌問題に立ち向
連遺伝子産物のもつ生物活性の解明を進め、癌細胞の浸潤転移
かっています。
にかかわる分子機構について研究を進めるとともに、臨床検体
を用いた遺伝子発現の解析をおこなうことにより、癌の化学療
法耐性を獲得する機構の解明を目指しています。
Nagoya University School of Medicine
7
・・・・・・・・・ 神 経疾 患 病 態 統 御 部 門 ・・・・・・・・・
■機能分子制御学
機 能 分 子 制 御 学 分 野
■神 経 情 報 薬 理 学/ 分 子 薬 理 学
で は、悪 性 腫 瘍 と 神 経
細胞は、細胞内外の情報を受け取り、特有の形態を呈し極性を獲得して
組織において重要な機
います。これらの過程は細胞が臓器や組織で特有の機能を発揮するために
能を果たしている分子
必須であり、生命活動の根本とも言えます。我々の研究室では、細胞の形態、
の同定と作用機構を解
運動、接着、極性の分子機構を解明することにより、精神・神経疾患や循環
明 し、そ れ を ふ ま え た
器疾患の病態を細胞レベルから解き明かすことを目標にしています。
難治疾患の新規治療法
の開発をめざしていま
す。と く に 細 胞 膜 の 糖
タンパク質や糖脂質糖
鎖による増殖や分化の
シグナルの調節機構を、
糖鎖リモデリング細胞
(細胞を蛍光顕微鏡で撮影。左:神経細胞 中央:線維芽細胞 右:上皮細胞)
や 遺 伝 子 ノ ッ ク ア ウ ト 癌幹細胞(CSC)は癌組織の中のごく一部
を 占 め る が、自 己 複 製 能 と 多 分 化 能 を 保
■神 経 遺 伝 情 報 学
マ ウ ス の 異 常 所 見 の メ 持し、治療に抵抗性を有します。癌の再発
カ ニ ズ ム の 解 析 を 通 し お よ び 転 移 の 原 因 と な る の で、こ れ を 標
以下の4つの主たる研究テーマに取り組んでいます。(i) 先天性筋無力
て明らかにします。
的 に し た 治 療 法 が 開 発 さ れ れ ば、癌 の 根
治が期待できます。
症候群・筋強直性ジストロフィーを含む各種神経筋疾患の分子病態機構解
明とその制御方法の開発研究。(ii) RNAスプライシングならびにRNA
■オミクス解析学
代謝の正常ならびに病態分
酵母などを対象とし、ゲノム情報を中心にして遺伝子多型や
子機構研究。(iii)オフラベル
様々な遺伝子の転写制御メカニズム、細胞の機能や構造の分子
薬効を活用した希少神経筋
細胞生物学的な解析などを進めています。シンプルな真核生物
骨疾患に対する新規治療法
である真菌をゲノム、発現、構造、代謝という多面的な視点で研
開発研究。(iv) 分子状水素の
究することで、病原真菌への理解も深めることができます。
幅広い病態に対する効果の
P r o t e i n - a n c h o r i n g t h e r a p y による
細胞外分子ColQ欠損症の治療
検証と分子機構の解明。さら
■疾患モデル解析学
に、マイクロアレイ解析・次
癌転移を起こす疾患モデルマウスのオミクス解析を通して、
世代シークエンサ解析のた
癌転移の抑制に有用な新規標的分子の探索や新規分子メカニ
めのプログラム開発やモデ
ズムの発見を目指しています。見出した分子を標的とした癌転
リング解析を行っています。
移抑止を目指した分子標的薬の創製研究にも取り組んでいま
す。
・・・・・・・・・・ 先 端 応 用 医 学 部 門 ・・・・・・・・・・
■システム生物学
■分 子 病 理 学
統計科学による数理モデリングを駆使して、疾患をシステム
分子病理学分野では当教室で発見したがん細胞、血管内皮細胞、神経細胞などの運動に
的な観点から包括的に捉えてデータを解析する方法論につい
かかわる分子Girdinやそのファミリー分子Dapleの発生および病態形成における役割、神
て、理論と実践の双方の観点から研究を行っています。特に、次
経栄養因子GDNFおよびそのレセプターであるRETチロシンキナーゼによる発現誘導
世代シークエンサーを初めとする最先端技術より計測される
される分子として同定したCD109の発生および病態形成における役割を解析しています。
網羅的オミクスデータの解析ツールの開発を行っています。
社会医学系
・・・・・・・・・・ 社会 生 命 科 学 講 座 ・・・・・・・・・・
は質量分析等の技術を活用した薬毒物の高感度分析法の開発で、最近、
■国 際 保 健 医 療 学・ 公 衆 衛 生 学
飛行時間型タンデム質量
病気に罹っている人ばかりでなく、社会で暮らす全ての人々の健康
分析計(写真)を導入して
を守る仕組み作りに貢献するため、日本国内や海外の健康問題につい
研 究 を 展 開 し て い ま す。
ての調査・研究、専門家の育成、そして健康を改善するための実践的活
ま た、中 毒 時 の 生 体 内 分
動を行っています。例え
子の動態解析及び法医学
ば、地域や職域において
へのメタボロミクスの応
生活習慣病を予防する
用 等、学 際 的 研 究 も 積 極
ための調査研究、政策や
的に推進しています。
社会制度に関する分析
や提言、アジアやアフリ
■環境労働衛生学
カなど開発途上国にお
環境および労働に起因した健康障害について研究する学問です。この
パラオ共和国にて、生活習慣病に関する共同 いて健康を阻害する社
研究を実施しています。
会的な要因の研究など
写真は、北部村落の一次医療を担う保健セン
ターです。
を行っています。
ような健康障害を未然に防ぐために、作業環境における許容濃度、一般生
活環境における環境基準
等を提言するための様々
な研究を行っています。ま
8
■法 医 ・ 生 命 倫 理学
た、アジアの開発途上国で
法律上問題となる医学的事項を研究する学問です。当教室では、法医
発生している環境や労働
解剖等の実務の他に、研究テーマとして以下のものがあります。一つは、
に起因した健康障害の予
犯罪捜査に重要なDNAを利用した個人識別(DNA鑑定)、もう一つ
防に協力しています。
■予 防 医 学
■医療行政学
がんなどの生活習慣病発生に関連する生活習慣と遺伝子型を探索す
医療を適切に提供するためには、その国における疾病構造、医療
る た め に、大 規 模 な 追 跡 調 査(日 本 多 施 設 共 同 コ ー ホ ー ト 研 究:
提供者、医療内容、医療費の支払い方法をよく考え、政府が適切な管
J-MICC Study http://www.jmicc.com/、歯科医師コホート研究:
理をする必要があります。各地域にはそれぞれの文化があり、経済
LEMONADE Study)や症例対照研究(病気になった人と病気でない
発展段階も異なります。これらのことをよく検討し、それぞれの地
人での生活歴や遺伝子型の頻度などを比較する研究)を行っています。
域にあった方法で医療システムを構築することを研究しています。
臨床医学系
医 学 系 で は 、下 記 の よ う な 臨 床 各 科 に つ い て 学 び ま す 。
学 習 方 法 と し て は 、少 人 数 で 行 な う チ ュ ー ト リ ア ル 、講 義 、実 習 が 組 み 合 わ さ れ ま す 。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■呼吸器内科
■血 液 ・ 腫 瘍 内 科 血液内科では、白血病・リンパ腫などの「血液のがん」、血液を
肺は外気を常に取り込んでいますから、細菌、ウイルス、アレルゲ
造ることができない「造血障害」、止血・血栓機能に異常をきた
ン、癌原物質、粉塵と何でも入ってきて様々な病気を引き起こしま
す。我 々 が 対 象 と す る 疾
す「血液凝固障害」など、多岐にわたる疾患を対象としています。
血液専門医ほか、がん薬物療法や造血幹細胞移植の専門医も育
患 も 感 染 症、腫 瘍、ア レ
成しています。研究分野では、分子病態解析や分子標的治療開
ル ギ ー な ど 多 彩 で、患 者
発 か ら 臨 床・疫 学
さ ん も 増 加 し て い ま す。
に 至 る ま で、常 に
これらの疾患の診断と治
幅広い視野に立っ
療にむけて基礎医学や工
て国際レベルの情
学技術を応用した幅広い
報発信を行ってい
研究に取り組んでいます。
ます。
■糖尿病・内分泌内科
臍帯血移植の様子
私達の体は、膵臓、下垂体、甲状腺、副腎などで作られるホル
モンによってうまく働くよう調節されています。糖尿病・内分
■循 環 器 内 科
泌内科では、ホルモンの異常により発症する糖尿病、下垂体機
狭心症や急性心筋梗塞などの虚血性心疾患のカテーテル治
能 異 常 症、甲 状 腺 機 能
療(PCI)、不整脈の薬物・非薬物治療(カテーテルアブレーショ
亢進症などの内分泌代
ン)、心不全の治療と管理、高血圧症、
謝 疾 患 の 診 療・研 究 を
肺高血圧、末梢動脈閉塞症などの臨床
行 っ て お り、疾 患 の 発
を行っています。またこれらに関連す
病 の 仕 組 み の 解 明、新
る研究はもちろん、iPS細胞を含む再
しい治療法の開発など
生医療研究や内臓脂肪と心血管病の
に取り組んでいます。
関連性などについても研究していま
す。
甲状腺エコーの様子
iPS細胞シート
■腎臓内科
■消 化 器 内 科
近年、腎臓の働きの低下が全身に悪影響を及ぼすことが明らか
消化器内科では、食道、胃、小腸、大腸、肛門までの消化管と肝
となり、腎臓病が注目されてます。また糖尿病患者の増加、高齢者
臓、胆道、膵臓と多くの臓器を対象とした疾患の診断と治療を
の増加などにより腎臓病患者は年々増加しています。腎臓病対策
行います。緊急性の高い消化管出血や胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵
は我が国の緊急課題のひとつです。当科では、腎臓病の診断法や新
臓癌をはじめとする悪性疾患から、慢性肝炎、炎症性腸疾患な
たな治療法の確立をめざし、臨床・教育・研究に取り組んでいます。
どの慢性疾患と多岐にわたる領域をカバーし、多くの患者さん
を診察しています。ひとりでも多くの患者さんを治すために診
療と研究と教育を
実 践 し て い ま す。
非常にやりがいの
ある分野です。
■腫瘍外科
消化器癌や乳癌の外科治療を行っています。特に胆道(胆嚢や
胆管)癌では世界的に有名で、国内外から患者さんが来られます。
胆道癌では大きな難しい手術になりますが、この手術の安全性を
ポリクリ実習
(発表会)
高めるため、手術手技、栄養管理、術後合併症予防などの研究を
しています。また、食道癌や大腸癌の手術にも力を入れています。
Nagoya University School of Medicine
9
■血管外科
■泌尿器科
高齢化により、血管外科で扱う動脈硬化症疾患“閉塞性動脈硬化症”
腎臓、尿管、膀胱、前立腺などの尿路系疾患を扱っています。
や“動脈瘤”が非常に増加してきています。治療法も外科的バイパス術
これらの臓器の腫瘍に対して手術や化学療法を行っており、最
だけではなく血管内治療を導入し、ステントやステントグラフト内挿
近では腹腔鏡手術や内視鏡手術が増加しており、平成22年よ
術を積極的に行っています。研究面では血管内膜肥厚の成因とその制
り、ダ・ヴィンチを用いたロボット支援下前立腺癌手術を開始
御、血管新生療法、遺伝子治療、動脈瘤の成因、ステントグラフト内挿
し て い ま す。慢 性
術の工夫などトランスレーショナルリサーチを推進しています。
腎不全の患者さん
に対する腎移植術、
■消化器外科
排 尿 障 害・尿 失 禁
消化器がん全般にわたり機能温存・低侵襲手術から拡大根治手術に
に対する手術など
至るまで患者さんの状態に応じた外科治療を行っています。特に膵疾
の治療も行ってい
患では世界的に有名で、国内外より患者さんや研究者が集まってきま
ます。
す。研究面では、がん遺伝子解析、抗がん剤感受性試験、ウイルス療法
などがん治療の新たな可能性に向けて積極的に研究を行っています。
腹腔鏡手術による腎摘出術
■移植外科
■整形外科
臓器移植医療は、不全状態に陥った臓器を置換して機能を取
整形外科では主に脊椎や四肢の骨・軟骨・靭帯・神経に関す
り戻す画期的な治療です。免疫抑制剤は必要ですが、健常者と
る疾患に対して、小児から高齢者まで広く治療を行っています。
同等の社会生活を送ることができるようになります。移植外科
救急の現場やスポーツでの外傷だけでなく、慢性の関節疾患、
では生命の危機に瀕した
脊椎脊髄疾患、骨軟部腫瘍や先天性小児疾患による障害の予防
末期肝臓病や移植でない
や治療を目的として最先端の治療・研究に取り組んでいます。
と根治できない肝臓癌な
整形外科の目標は人体の全てにおける運動機能の回復です。
どに対する肝移植治療を
肝移植手術
中心に診療と研究を行っ
■皮膚科
て い ま す。最 近 で は 脳 死
皮膚の病気は、アトピー性皮膚炎から膠原病、皮膚腫瘍、感染
者からの移植の機会も増
症まで、多種多様です。皮膚はヒトの体を外界から守るバリア
えつつあります。
として、非常に重要な臓器です。名大皮膚科は、アトピー性皮膚
炎の病因解明、膠原病
■乳腺・内分泌外科
や遺伝性皮膚疾患の
ホルモンに関係する病気の手術を担当しています。甲状腺・
分子遺伝学レベルで
副甲状腺・副腎・膵内分泌腺など、ホルモンを分泌する臓器の
の研究、皮膚癌の先端
病気(おもに腫瘍)と、ホルモンの影響を強く受ける乳腺(おも
的治療において、常に
に乳癌)が代表的です。手術だけでなく、手術前後の検査・薬物
先駆的な役割を果し
治 療 も 行 っ て い ま す。ホームページを見てください。
ています。
(http://www.med.nagoya-u.ac.jp/nyusen/)
皮膚癌の手術
■心臓外科
心臓外科では狭心症に対する冠動脈バイパス術、心臓弁膜症に対する弁形
■手の外科
成・人工弁置換術、胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術、ステント治療との
日常生活に不可欠な上肢・手の機能と整容の回復のために診
ハイブリット手術、先天性心臓奇形に対する修復術、重症心不全に対する補助
療・研究を行っており、機能再建外科としての特性を有してい
人工心臓治療などの心臓大血管手術を行っています。組織工学手法を用いた
ます。外傷・慢性疾患・先天
人工弁、人工血管の開発、大動脈瘤の予防治療などの研究も行っています。
異常に対する手術治療を多
施 設 共 同 で 行 い、新 し い 治
■呼吸器外科
療機器の開発を行っていま
肺癌、縦隔腫瘍や悪性胸膜中皮腫などの胸部悪性腫瘍や自然気胸な
す。基 礎 的 研 究 と し て は 神
どの良性疾患に対する外科治療を行っています。これら胸部悪性腫瘍
経 再 生 の 研 究、生 体 力 学 的
は今後も増加が予想されており、その根治治療を行う呼吸器外科専門
な研究としてサイボーグ技
医を育成しています。研究では手術を含めた臨床試験や臨床と直結し
術の研究をしています。
た分子生物学的基礎研究や疫学的研究などに取り組んでいます。
手関節の3次元モデル
■小児外科
小児外科では1000gにも満たない低出生体重児から中学生まで、また頸部、
■形成外科
胸部(心臓を除く)、腹部臓器のほぼ全ての手術治療を行っており、臓器別に細
やけど、顔のけが、あざ、がんを切除したあとの欠損や変形を
分化しつつある外科のなかで、唯一general surgeonとして活躍することが
移植手術により治します。切除する外科ではなく、創造する外
望まれています。当小児外科は、術後も成長発達する小児に対して、成長発達
科です。マイクロサージャリー(顕微鏡下手術)で1∼ 2mmの
を妨げないような先駆的な低侵襲手術を行っ
血管をつないで皮膚や骨
ている日本でも有数の施設です。また愛知近
などを安全に移植します。
隣の小児外科症例は小児科などの協力のもと
再生医療として人工皮膚、
名大病院へ集約化されつつあり、豊富な症例
脂肪由来幹細胞を研究し
をバックグランドとする日本を代表する小児
ています。東海地方には少
外科施設でもあります。研究面では低侵襲の
ない新しい講座です。
機序の解明など臨床とつながりのある基礎研
究や臨床試験を積極的に行っていきます。
10
顕微鏡下で動脈を縫っているところ
■産婦人科
■放射線科
産婦人科は、受精、着床、妊娠そして出産という生命の誕生と、
放射線医学は大きくわけて以下の4つの分野から成り立ち
それを支える女性生殖器の疾患を扱い、人類の繁栄を支える重
ます。1)電離放射線のみでなく、電磁波、超音波なども用いて
要な医療分野です。当科では、周産期医療、生殖医療、婦人科腫
人 体 内 部 を 観 察 し 疾 患 を 評 価 す る 画 像 診 断 学、2)カ テ ー
瘍分野に分け、各分野の専門医も育成しています。研究は、分子
テルや針などを病巣へ導いて低侵襲に治療を行うIVR
病態から臨床・疫学まで幅広く行っています。
(interventional radiology)、3)癌 な ど の 病 変 に 放 射 線 を 照
射して治療する放射線治療学、4)放射能を有するラジオアイ
■小児科
ソトープを用いて診断、治療を行う核医学。これらの4つの分
小児科は、時間軸でいえば、母親の体内の胎児から、思春期ま
野はそれぞれ連携しながら、現在の臨床医学全域においてます
でを守備範囲としています。臓器別にみても神経、循環器、消化
ます重要度を増
器とすべての領域の病気に対応しています。さらに、疾病だけ
し て い ま す。そ
でなく、健康な子供の健全な発育、発達を見守るのも小児科医
れぞれの分野で、
の重要な使命です。
高 度 で 安 全、低
侵襲な最先端の
■老年内科
診 療、研 究 を 行
高齢者は、多くの疾患を抱えるという特徴とともに、その病態
な い、将 来 の 医
は若年者や成人とは決定的に異なる生物学的な「老化」を基盤と
学を担う人材の
しており、そこに老年医学の特殊性があります。世界に先立つ超
育成に努めてい
高齢社会日本の医療現場では、病院・施設から在宅へという流れ
ます。
が今後益々加速していきます。我々は老年医学、在宅医療に従事
する医療者の教育さらにはそれらの新しいエビデンスを構築し
発信して行きます。
■臨床検査
病気を診断するための血液・尿便検査、心電図、心エコー、脳
■眼科
波、筋電図、輸血、および病理検査を担当しています。
失明の主な原因である糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、緑内障
などの治療に力を入れています。またこれらの疾患が起こるメ
■麻酔科
カニズムの研究、分子標的療法など新しい治療法にも積極的に
赤ちゃんからお年寄りまで、手術中の患者さんの命を守るの
取り組んでいます。さらには、遺伝子解析、細胞レベルで生体を
が麻酔科の仕事です。全身麻酔で意識のない患者さんのそばに
解析する新しい検査機器の開発にも力を入れています。
常に寄り添い、呼吸を補助したり、出血や痛みなどの手術侵襲
か ら 守 り ま す。そ の 技 術
を 応 用 し、重 症 患 者 の 集
中治療や痛みを持った患
者さんの苦痛を取り除く
治 療(ペ イ ン ク リ ニ ッ
ク)、緩 和 医 療 な ど 幅 広
い分野で活躍しています。
■ 救急・集中治療医学
顕微鏡を駆使しての小さな眼の中の手術
名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野では、
診療・教育・研究の3つの基盤を重視し、患者さんの緊急性と重
■耳鼻いんこう科
症性に対する診療と教育を担当します。テレビ番組の「ER」の
耳、鼻、のどの領域の炎症、腫瘍、外傷、先天性疾患に対する治
ように多発外傷、急性中毒、心肺停止、災害対応などの初期診療
療を行っています。聴覚・味覚・嗅覚など多くの感覚を担当し、
はもとより、重症感染症などのさまざまな病態の急性増悪と緊
コミュニケーションとして重要な発声器官である喉頭および
急変化に対して迅速に対応できる医師を、
「 救急科専門医」、
「集
発声をききとる耳が含まれています。耳は、外耳、中耳、内耳と
中治療専門医」として育成しています。医学部附属病院では、救
わかれていますが、最近内耳の内リンパ腔の画像化に放射線科
急 外 来(ER:emergency room)に お け る 初 期 診 療 の 診 療 と
との協力で世界ではじ
教育を担い、さらに救急・内科系集中治療部(EMICU)において
め て 成 功 し ま し た。内
急性呼吸不全、ショック、急性腎傷害、重症敗血症、播種性血管
耳の内リンパと外リン
内凝固症候群などの急性多臓器不全の診療と教育を担当し、世
パの関係を図示しまし
界を代表する高い成績を展開しています。その上で、当教室は、
た。現在、内リンパが異
急性期病態の解明と創薬に向けて「炎症と再生」の研究を推進
常に膨らむ内リンパ水
しています。再生医療は、救急・集中治療において、近未来に必
腫と症状の関係につい
ずや臨床応用されます。この管理基盤を整えるとともに、海外
て調べています。
の先進的集中治療
施設と連携して診
■歯科口腔外科/顎顔面再生科
療レベルを向上さ
口蓋裂などの先天性奇形、口腔癌、顎変形症、顎関節症、外傷、イ
せ て い ま す。当 教
ンプラントによる咀嚼機能回復などを担当します。また骨の再生
室 は、急 性 期 に お
医療を専門的に扱っています。顎骨にインプラントを植立したく
ける炎症抑制と再
ても骨が十分にないとき、腫瘍などで顎骨の一部を失った場合な
生医療を研究に取
どには幹細胞や幹細胞が分泌する成長因子を用いた骨再生医療
が力を発揮します。
り 込 み、診 療 を 向
急性期病態学の確立に向けた基礎研究と臨床研
究の推進∼多能性分化細胞誘導∼
上させています。
Nagoya University School of Medicine
11
■外科系集中治療部
■輸血部
名古屋大学医学部附属病院集中治療部は名大麻酔科医師が取り仕切っている
血液疾患や手術時に必要な輸血のための血液型検査、適合検
ICUであり、看護師、臨床工学技士、薬剤師さんと連携して、名大外科系の最重
査などの検査と、赤血球、血小板、新鮮凍結血漿などの輸血用製
症患者を治療しています。年間を通じて16床がほぼ満床で推移しています。昼
剤、血漿から作られるアルブミン、凝固因子などの血漿分画製
間は5-6名の日勤医師、夜間は2-3名の夜勤医師で絶え間なく監視し、診断・治
剤の管理および支給を行います。また再生医療の一環として、
療を行っています。2013年1月から2013年12月までの入室患者数は1242
細胞治療に必要な幹細胞の採取・保存も行っています。いかな
名で、外科系集中治療部での死亡は18名、死亡率1.45%でした。外科系集中治
る時間、状況にも対応できるよう、検査部・病理部とともに24
療部は、生死の狭間にある患者を24時間365日ベッドサイドで診断治療し内
時間体制で稼動しています。
科・外科・小児科などのスキルを総動員して患者さんを救命し社会復帰までに
持っていくことを使命としています。医師として、どんな病態も診断でき、最高
■検査部
度の治療を実施できる能力を養います。また日本集中治療医学会の集中治療専
血液、尿などを検体として、血算、生化学、免疫学などの検査
門医認定施設として治療の質が常に最高度であることと、新たな集中治療の診
を行います。これらの検査は病気の診断や治療方針の決定、経
断治療法を開発する研究も行っています。患者さん・ご家族とは治療過程で生ず
過を見ていくために必要です。また血液、尿以外の喀痰、膿など
る喜び悲しみを共有しながら、その経験をまた心に刻み、個々人の医師としての
の材料を検体として細菌検査も行います。検体検査に加えて、
能力を日ごとに向上させるべく各医師が精進しチームとしても一丸となって治
心電図、心エコー、脳波、筋電図などの生理的検査も行い、さら
療に当たれるよう厳しくも明るい雰囲気を保つ努力をしています。写真は重症
に現在では遺伝子検査などの新しい検査も行います。いかなる
心不全患者で体外式補助人工心臓による治療をしているところです。この患者
時間、情況にも対応できるように輸血部とともに、24時間体制
さんは植込型補助人工心臓を最終的に装着され社会復帰を果たされています。
で稼動しています。
■病理部 病 理 部 と は、病 理 診 断、病 理 解 剖 な ど を 行 う 部 門 で す。患 者
さんが直接病理部を受診することはありませんが、検査や手術
で採取された臓器の一部や細胞は、ここで病理医によって病名
が診断されます。一方、病理解剖は病気で亡くなった方の死因
体外式補助人工心臓による治療風景
の原因を調べるために行われます。解剖を行う事により、臨床
■脳神経外科
診断が適切であったか、治療効果がどれほどであったか、主疾
近年のロボティクス技術の格段の進歩により、脳神経外科の診
患とは別の病気があったかなどを確認することができます。
断・治療技術は目覚ましい発展を遂げています。名大病院に設置
された近未来型脳神
■化学療法部
経 外 科 手 術 室“Brain
「がん」の薬物治療(抗がん薬治療)を専門とする部門です。肺
Theater”を用いて、最
がん、乳がん、大腸がんなどすべての「がん」について、それぞれ
高精度を誇る手術手技
の専門領域の医師と相談しながら治療を行います。副作用や合
を 駆 使 し、生 命 の 危 機
併症の対処法、稀な病気の治療、新しい薬についての相談(コン
に直面している脳神経
サ ル テ ー シ ョ ン)も 受
疾患の患者さんを救う
けています。また、未来
べ く、脳 神 経 外 科 医 は
の抗がん薬を開発する
脳神経外科手術風景。手術顕微鏡を駆使して、精密な
構造の脳内へと病巣を駆逐すべく果敢に挑戦します。 日夜活躍しています。
ための臨床試験や治験
を行っています。
■神経内科
診 療 対 象 は、脳 卒 中、て ん か ん、頭 痛、眩 暈、髄 膜 炎 等、日 常 診
外来通院で治療をする
ための外来化学療法室
療で良く遭遇する疾患から、パーキンソン病、認知症、筋萎縮性
側索硬化症等の神経変性疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、ギ
神経内科病棟総回診風景
ランバレー症候群等の
■親と子どもの心療科(児童精神科)
免疫性疾患など広範囲
診療と研究の主な対象は、児童思春期にみられる、自閉症スペク
に 及 び ま す。既 に 有 効
トラム障害、注意欠如多動性障害などの発達障害や、うつ病、双極
な治療法のある疾患も
性障害(躁うつ病)、統合失調症、摂食障害、パニック障害、強迫性
多 く、原 因 解 明 と 新 規
障害、社交不安障害などの精神障害です。また、癌や移植手術など
治療法開発も積極的に
身体疾患を持った患者の精神医学的サポートも重要な領域です。
行われています。
診療に際しては、心理面、身体面、患者の置かれている社会的立
場といった多面的な視点を持ち、患者・家族のニーズ(気持ち)を
■精神科
踏まえて、現在の診断法、治療法で最適なものを選ぶよう心がけて
診療と研究の主な対象は、成人期にみられる、うつ病、双極性障害
います。
(躁うつ病)、統合失調症、摂食障害、睡眠障害、認知症、パニック障害、
研究に関しても、心理社会的側面(養育体験やストレス状況な
強迫性障害、社交不安性障害、外傷後ストレス障害(PTSD)などの
ど)と生物学的側面(ゲノム科学や脳科学によるアプローチ)を組
精神障害および、自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害な
み合わせ、患者・家族の願いを適える成果を目指しています。
どの発達障害です。また、癌、循環器疾患や移植手術、妊娠出産など、
12
身体疾患を持った患者の精神医学的側面も重要な領域です。
■総合周産期母子医療センター
診療に際しては、心理面、身体面、患者の置かれている社会的立場
総合周産期母子医療センターは卵から妊娠・分娩、そして新
といった多面的な視点を持ち、患者・家族のニーズ(気持ち)を踏ま
生児のサポートを行うために産婦人科と小児科が中心となり、
えて、現在の診断法、治療法で最適なものを選ぶよう心がけていま
小児外科・眼科等の他科とも連携して運営されています。生殖
す。研 究 に 関 し て も、心 理 社 会 的 側 面(養 育 体 験 や ス ト レ ス 状 況 な
周産期医療部門と新生児医療部門から成り、生殖周産期医療部
ど)と生物学的側面(ゲノム科学や脳科学によるアプローチ)を組み
門は体外受精等の不妊治療およびハイリスク妊娠の管理、新生
合わせ、患者・家族の願いを適える成果を目指しています。
児医療部門は未熟な新生児を24時間体制で管理しています。
■総合診療科
■中央感染制御部
医学・医療の進歩に伴い細分化した現在の医療環境の中で、総
医療の高度化に伴い病院内で感染症を引き起こすリスクも高く
合診療科は総合的に医療に取り組む部門として教育・診療・研究・
なっています。一方、感染症は「うつる」という特性があり、適切な治療
社会的貢献の各領域で重要な役割を担っています。子ども∼高齢
と感染対策が実施されないと周囲に伝播してしまう恐れがあります。
者まで、身体の健康だけではなく心の健康、社会的環境にまで目を
私達は、医師・看護師・薬剤師・検査技師・事務員などの様々な職種の
配る総合診療医は、一つの‘専門医’として注目されています。総合
メンバーからなる感染対策チームで、診療科横断的な感染対策と感染
診療科は、病院で活躍す
症診療支援活動を通じて、病院内感染症の制御を行っています。
る病院総合診療医から
地域で活躍する家庭医
■ 光学医療診療部
まで、総合診療医の活動
名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部は、消化器内科の
拠点となっています。関
全面的な協力体制のもと、最新の内視鏡および超音波を用いて、
心のある人は是非一度
多くの臓器を含む消化器領域(食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆道、
おたずね下さい。
膵臓)の各専門医が患者さんの精密な診断や早期癌に対する内
視鏡的治療など安全かつ低侵襲な治療を提供しています。
■総合医学教育センター
医学部と附属病院のすべての医療職の卒前、卒後、そして生涯
■リハビリテーション部
教育の統括的役割を担います。業務は医学科・保健学科の教員
疾病や外傷は適切な医療が行われても必ず治るとは限りません。生命が救
支援、模擬患者さんの養成、多職種連携教育の実施、附属病院に
われても後遺症や障害とともに生きていかなくてはならない人々は少なから
おける医科・歯科研修医及び薬剤部レジデントの卒後臨床研修
ずいます。このような方々の生活や生き方を医学的な方法論を駆使し、多職種
の 実 施 と 管 理、病 院 職
の共同作業によってさまざまな側面から支えるのがリハビリテーションの役
員 教 育、附 属 病 院 及 び
割です。
関連病院の指導医のた
当部では、各種疾患の急性期リハビリテーションを行なって在宅移行や回
めの講習会開催などか
復期リハビリテーションへの円滑な連係をすすめています。また、重症疾患や
ら な り、若 手 医 師 の 生
高度の手術などでも治療成績を上げるために積極的な介入を行なっています。
涯キャリア支援も行い
ます。
■メディカルITセンター
名古屋大学医学部附属病院の診療録(カルテ)は、電子カルテと呼
■クリニカルシミュレーションセンター
ばれるコンピューターを用いた記録システムで、検査や処方などの
平成18年度に開設されたスキルス& I Tラボラトリーでは、基本
オーダーもすべてコンピューター端末から入力指示されます。その
的 な 臨 床 技 能 や 態 度 教 育 が 行 わ れ、年 間2,000件 弱、延 べ
他にも安全確認のためのチェックや実施入力などもIT化されており、
20,000人の方々に利用されています。平成24年度には、最先端
それら全体を病院総合情報システムと呼びます。この病院総合情報
の外科診断・治療訓練のための最新鋭のシミュレーターやトレー
システムの管理を行なっている部署がメディカルITセンターです。
ニ ン グ マ シ ン が 導 入 さ れ て、名 古 屋 大 学 ク リ ニ カ ル シ ミ ュ レ ー
ションセンターとなりました。今回導入された設備や機器の充実
度は国内トップクラスです。今後は、地域医療に携わるあらゆる医
療職の卒後研修・専門研修から生涯研修にも貢献していきます。
研 究 施 設・研 究 所
・・・・・・・ 医 学 教 育 研 究 支 援 セ ン タ ー ・・・・・・・
■医療の質・安全管理部
■実験動物部門
医療という仕事は人の命を扱いますから、大きな危険に直面する
動物福祉の観点から適正で、かつ科学的に評価される再現性
こともあります。医療の質・安全管理部では医療現場に潜む様々な
の高い動物実験が実施できるよう、動物の飼育環境を適正かつ
危険を拾い上げ、事故を未然に防止したり、トラブルが発生した場
厳密に統御するよう努めています。更に、近年必要とされるこ
合にも病院の力を結集して患者さんの被害を最小化するよう全力
とが多いマウス初期胚の凍結保存や遺伝子改変マウスの作製
を注いでいます。また名大病院で行われている医療の質を評価し、
などの研究支援業務にも力を入れています。
改善することも大切な仕事です。どんなに医学が発展しても、医療
安全の取り組みなくして、患者さんに安心を届けることはできませ
ん。名大病院には国内最高レベルの医療安全の体制があります。
・・・・・・・・・・・ 環 境 医 学 研 究 所 ・・・・・・・・・・・
全国国立大学附置研会議メンバーの大学附属医学系研究所です。
■薬剤部
2研究部門(計8分野)と近未来環境シミュレーションセンターで
病気の治療において薬物療法は重要です。薬剤師は薬の専門家
構成されています。ストレス受容・応答研究に属する神経系1分野
としてチーム医療に参加し、適切な薬物療法の提案を行っていま
(視覚神経学)ではシナプス伝達の可塑性について、神経系2分野
す。特に、薬の効果と副作用には個人差があり、人それぞれ異なり
(神経系調節学)では睡眠調節のメカニズムと痛み刺激の生理学に
ます。私たちは、患者さんの状態に合わせた薬物治療を目指して、
ついて、病態神経科学分野(病態神経科学)では神経変性疾患につい
薬の効果を決定する遺伝子を解析する研究にも取り組んでいます。
て新たな概念を提唱、免疫系分野(神経免疫学)では免疫性神経疾患
■ 先 端 医 療 ・ 臨 床 研 究 支 援 セ ン タ ー 門に属する脳機能分野(薬物動態解析学)では高次脳機能の発現メ
の病態解明について研究しています。一方、生体適応・防御研究部
先端医療・臨床研究支援センターは、国際的な品質保証の基
カニズムについて、発生・遺伝分野(発生・遺伝学)では脳や内分泌
準に基づいて厳密に管理された国内最大級のバイオマテリア
臓器の発達とその異常について、心血管系分野1(循環器学)では心
ル調製ユニットを有する「先端医療支援部門」と安全で質の高
筋細胞の生理学・薬理学について、ゲノム動態制御分野(分子薬理
い臨床研究を支援する「臨床研究支援部門」の二部門で構成さ
学)ではDNA修復のメカニズムとその破綻がもたらす疾病の発症
れています。先端医療開発や医工連携などにおける実用化研究
メカニズムの解明に向けた研究をしています。近未来環境シミュ
の支援、ならびに臨床研究・治験の適正かつ円滑な実施の支援
レーションセンターは、動物飼育施設や環境ストレスシミュレー
を行い、名大病院のミッションの一つである”次代を担う新し
ション装置、小動物用コンパクトMRI装置などの共同利用機器を
い医療を開拓”を目差しています。
管理・運営し、研究所の理念に則した研究をサポートしています。
Nagoya University School of Medicine
13
卒業後の進路
医学部医学科を卒業した後の主な進路には、下記のようなものがあります。新医師臨床研修制度が
平成16年度より施行された結果、卒業後の2年間は初期臨床研修を受けることが一般的となりました。
この間に自分の指向性や興味、得手不得手を熟考し、その後の最適な進路を選択することになります。
なお、上記以外にも若手研究者養成のための新コースを選択する者もいます。
臨 床 医
保健所、企 業 の 産 業 医 、行 政 技 官
卒業後の進路としては圧倒的に多数派です。卒後の2年
保健所や厚生労働省などの保健医療関係の行政機関に
間は、初期臨床研修医として専門に偏らず幅広く研鑽に努
進む人もいます。あるいは企業で働く人々の健康を守る産
め、その後、市中病院、大学病院、診療所などで専門領域に
業医等の道に進み、社会を通して人々の健康面に貢献する
絞ったトレーニングを受けます。仕事の内容はもちろん臨
道を選ぶのも一つのコースです。
床医療が中心ですが、大学病院などでは臨床に関わる研究
も行います。また最近では、多くの卒業生が一定期間の臨
床経験を経てから4年間の大学院に進んでいて、何らかの
研究活動を経験しています。こうして、一人前の勤務医あ
るいは開業医として診療に携わることができるように
なっていくわけです。 もちろん、人の命を預かることだけでなく、患者さんの
貴重なプライバシーに関わっていくことは大変なことで
すが、それだけにやりがいのある職業であることもまた確
かです。後進の医師や医療スタッフに対して教育者として
の働きも期待されています。医療に携わる多職種の中心に
いて、指導者的な役割を果たしていくのです。
研究者
〈臨床医〉
大学病院の多くの臨床系教員は、実地臨床や学生・研修
医教育をこなしながら独自のテーマを持って研究を継続
しています。
〈基礎医学や社会医学〉
通 常 は 大 学 院 か ら 続 け て 研 究 に 打 ち 込 み ま す。才 能 と
チャンスに恵まれれば、科学や医療の進歩に多大な貢献を
し、歴史に名を残すことも夢ではありません。
研究者養成コース
MD・PhDコースは、名古屋大学医学部医学科の学生専用のコースです。
近年の医学生物学の進歩や医学医療の高度化・専門化に伴い、若いうちに研究を開始して基盤を築き、医学医療の急速な進歩
と社会要請に応えられる臨床あるいは基礎医学研究者・教育者を育てることを目指して、研究者養成特別コースを設定してい
ます。
Point
医学研究を強く志向する優秀な医学生に対して、とび入学により大学院に入学し、
早期に学位を取得することを可能にします。
医学部医学科入学後4年次またはそれ以上の教育を履修した者を対象に、一旦休学
して博士課程に進み基礎医学研究を通じて医学博士号(PhD)を取得します。その後、
医学部医学科に復学して医学士(MD)になることが可能なコースです。
博士課程の後期試験(毎年1月実施)に合格して、次年度より入学し研究を進めます
が、修了時あるいは途中においても、医学部医学科に復学することが可能です。大学や
研究所で臨床あるいは基礎医学研究者として活躍することを目指す学生のみなさん
が、このコースに参加されることを期待しています。
14
卒直後コース
卒直後コースは、医学部医学科卒業者専用のコースです。
近年の医学生物学の進歩や医学医療の高度化・専門化に伴い、医学部医学科卒業後、早期に研究を開始して、医学医療の急速
な進歩と社会要請に応えられる医学研究者・教育者を育てることが必須となっています。臨床医学の講座に所属する前に、早期
にかつ自由に研究に専念できる環境を確保し、将来、医学研究を中心的に担いうる研究者を育成することを目指して、卒直後
コースを設定しています。
Point
医学研究を強く志向する優秀な医学部医学科卒業者に対して、臨床医学
講座に所属せずに大学院に入学し、早期に学位を取得することを可能にし
ます。
医学部医学科卒業直後、または卒後研修修了直後およびその2年後まで
の者を対象に、大学院博士課程に進み医学博士号(PhD)を取得します。修
了後、本人の希望により、基礎医学、臨床医学の講座に入って研究を継続、
発展させるコースです。
大学や研究所の研究者を目指す若い医師が、このコースに参加されるこ
とを期待しています。
卒直後コースは、卒業直後、卒後研修直後の医師が対象となります。
研修後2年までは対象者と認められます。
卒直後コース
一般入学
学士編入学
卒 業
基礎医学
セミナー
所属講座の決定
卒後研修
MD・PhDコース
医 学 部 医 学 科
MD・PhDコースは、医学部医学科
4年次終了以降の者が対象となります。
Nagoya University School of Medicine
15
クラブ活動・イベント
クラブ編
大学生活において欠かすことのできないものの一つとしてクラブ活動があります。
体育会系・文化系クラブとしては、他の学部の人達と一緒に行う全学系のものもあり
ますが、医学科には医学科独自のクラブがあり、鶴舞キャンパスが他の学部のある東
山キャンパスと離れているため時間の都合などから、多くの医学科の学生はこちらの
方に参加しています。
ここでは医学科のクラブ活動について紹介したいと思います。
医学部医学科のクラブとして、現在、体育会系・文化系クラブあわせて26あります
(右表)。多くのクラブは医学部医学科の人々が中心となっていますが、保健学科から
も参加しているクラブもあります。体育会系のクラブは主に、年に一度全国の医学部
のクラブが一同に集まり競技を行う
「医学生体育大会」
( 西日本と東日本とに各々分れ
て行われ、名大医学部医学科は西日本に属します)を目標に日頃より練習活動してい
ます。各クラブとも、
この大会を始めとして数々の輝かしい成績を残してきています。
一方、文化系のクラブも各々の特色を出しながら活動しています。音楽系のクラブ
は、
コンサートやライブ活動を盛んにおこない、中には大規模ホールで行うクラブもあ
るほどです。
クラブ活動で最も有意義であることは、すばらしい先輩、後輩、仲間と出会え、物事
を達成する喜びを共有できることだと思います。また将来めざす医師という仕事の多
くはチームワークで行うものであり、その点においてもクラブ活動は大変ためになる
ことでしょう。
これを読んでいる皆さんが、名大医学部医学科へ入学され、私達とクラ
ブ活動に参加して下さることを期待しています。
イベント
大学で行われる様々なイベントは学生生活に彩りを加えてくれるでしょう。
6月の週末には「名大祭」が全学を挙げて行われます。
医学科生は、保健学科の人たちと一緒に「模擬病院」を開設します。
これは、名大祭
期間中東山キャンパスの一校舎を借り切って行なうもので、
この時ばかりは多くの学
生が白衣をビシッと着込んで「模擬」医者になります。血圧測定から、超音波エコーま
で色々な検査をします。名大祭と前後して、医学部医学科では、本家の「名大祭」より
も歴史の古い「鶴舞祭」
( 医学部祭)が行われます。
その他に、8月には「全国医学生ゼミナール」があります。
これは全国の医学生が集
まるイベントで、昼間は、自分の勉強の成果を発表したり、その道の専門家の話をき
いたりして過ごし、夜はみんなで交流や親睦をはかります。
16
体育系
クラブ
●
剣道部
●
バ
バレーボール部
●
弓道部
●
バ
バドミントン部
●
硬式テニス部
●
ゴ
ゴルフ部
●
軟式テニス部
●
水
水泳部
●
硬式野球部
●
ス
スキー部
●
準硬式野球部
●
ワンダーフォーゲル部
ワ
●
サッカー部
●
陸
陸上部
●
ラグビー部
●
卓
卓球部
●
ハンドボール部
●
ダ
ダンス部
●
バスケットボール部
ハンドボール部
バレー部
準硬式野球部
文化系
クラブ
室内合奏団
●
医学部混声合唱団(医混)
●
室内合奏団
●
軽音楽部
●
名古屋ぬいぐるみ病院
混声合唱団
ドナルド・マクドナルド・ハウス なごや
学生支援団体 おうちプロジェクト
●
ドナルド・マクドナルド・ハウス なごや
学生支援団体 おうちプロジェクト
●
救犬 Life Support
●
東洋医学研究会
Nagoya University School of Medicine
17
交換留学制度
■ 交 換 留 学 制度 に つ い て 名古屋大学医学部医学科では全国的にも斬新な制度として、米国、
ドイツ、ポーランド、オーストリア、
オーストラリア、英国、中国・台湾の大学医学部ないし医科大学に最終学年の希望者を選抜のうえ約2∼3
か月間派遣しています。それらの大学で臨床実習の一部(2 ∼ 3か月)を行うことを認めています。派遣
先の病院では、病棟に当直しながら実際に受け持ち患者のケアに参加するなど、現地学生と同様に医療
スタッフの一員としての扱いを受けるため、他では得がたい臨床実習を体験することができます。
また同制度に基づいて各大学からの受け入れも始まっており、名古屋大学医学部附属病院での臨床
実習に参加したり、研究室で研究に打ち込んだりと、名古屋大学医学部医学科を舞台に国際的な交流の
輪が拡がりつつあります。
平成14 ∼ 25年度(2002 ∼ 2013)の本制度による学生派遣状況を右表に示します。
交換留学経験者からのメッセージ
チューレン大学
藤野 悟央
ニューオーリンズと聞けば、皆さんは2005年8月に同地域を襲ったハリケーン・カトリーナの惨事を
思い出だされることでしょう。私が訪れた時には既に復興され、ジャズが街の通りに溢れていました。
Tulane大学は1834年、ルイジアナ医学校としてニューオーリンズに設立され、現在、アメリカ南部有
数の大学となっています。私はこのTulane大学神経内科臨床実習プログラムにより、現地の学生と同じ
カリキュラムで実習に従事し、入院・外来の患者さんを担当しました。担当症例については毎朝カンファ
レンスでプレゼンテーション。得られた所見や治療方針についてのディスカッション。そして自分のパ
フォーマンスに対して毎回適切なフィードバックがあります。これらを通じて、実践的なスキルが身に付
きました。生活面でも多様な人々との交流を通じ、自己表現の仕方などを学ぶことができました。皆さん
神経内科コンサルトチーム
も本留学制度を通じて、自分の枠を広げてみてはいかがでしょうか。
ペンシルバニア大学
高田 まり
私はアメリカ東部の都市、フィラデルフィアにあるペンシルバニア大学で実習させていただきました。実習が
開始した最初の一週間は嵐の中にいるような気持ちでしたが、知らないことやできないことがあるからこそ留学
に来たいと思ったのだと思い出してからは、学ぶことが楽しく、充実した毎日を送ることができるようになりま
した。すると、周囲から多くの助言やフィードバックがもらえるようになり、苦労しつつも言語や文化の違いを負
に感じることはなくなっていきました。一方で、滞在中は制度やシステムがいかに社会の価値観、文化と表裏一体
となっているかを実感しました。振り返ってみれば、異なるものに触れたときこそが自分自身を見つめ自己を変
容させるチャンスであり、そうした体験が個人としても、待ったなしの医療改革を迫られる将来の医療人として
も貴重な経験であったと感じています。今後も、異国に飛びこんで培った前向きさで、楽しみながら頑張ります!
ジョンズホプキンス大学
フィラデルフィア小児病院にて
福岡 香
私 はMaryland州 に あ るJohns Hopkins大 学 のOncology, Neurology, Hematologyで 実 習 さ せ
て頂きました。アメリカの医学教育を経験して世界のレベルの高さに刺激を受け、留学前とは別の視点を
持つことができました。世界各地からの医学生や医師が集まる中で、実習というよりは初期研修医の仕事
を実践的に学ぶことができ、早朝の診察、回診でのプレゼンテーション、論文の発表、コンサルトなどでは
チームの一員として積極的に責任を果たしていくことが求められました。教育熱心なドクターたちからの
フィードバックも充実しており、留学生であることを特別視されない環境だからこそ英語も医学知識も大
きく成長できたように思います。また、現地でお会いした様々な方の考えに触れ、将来について深く考える
良い機会となりました。自分次第で進む道は変えられ何でも挑戦できると学んだ充実の3ヶ月でした。
デューク大学
私は2013年の5月末から8月上旬までの3ヶ月間、アメリカのDuke大学で臨床実習をさせて頂き
ました。実習科目は消化器内科、肥満内科、腎臓内科です。学んだことは多く、自分が思い描いていた将来
の計画を大きく変更するきっかけにもなりました。このような素晴らしい機会を与えて下さった名古屋
大学には大変感謝しております。
さて、考えてみれば当然ですが、医学だけを学ぶのであれば名古屋大学で母国語の日本語を使って学ん
だ方が圧倒的に効率がいいです。しかも医学部6年生が学ぶべき医学というのは基本的なものであって、
何も外国でなければできないことではないはずです。それにも関わらず、あえて留学をする意義というの
はやはり、
「 広い世界をみる」とか「国際経験を積む」とか「異国の地で人の優しさに触れる」といったこと
ではないでしょうか。これらの経験を通して、少し成長することができたような気がします。
18
佐用 旭
国
名
アメリカ(合衆国)
ドイツ
ポーランド
オーストリア
オーストラリア
イギリス
中国
(2機関)
台湾
派遣学生数(年度別)
大 学 名
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
2011 2012
2013
ノースカロライナ大学・チャペルヒル校
2
0
2
2
2
2
2
2
0
0
0
ハーバード大学・医学部(★)
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
チューレン大学・医学部(※1)
2
1
3
0
0
1
2
2
4
ペンシルバニア大学・医学部(※1)
1
1
2
2
2
2
2
1
1
0
2
ジョンズホプキンス大学・医学部(2003年より開始)
(★)
0
0
2
2
2
2
2
2
2
2
2
デューク大学・医学部(2003年より開始)
(★)
0
0
2
1
2
2
0
2
2
2
1
フライブルグ大学・医学部(※1)
1
2
2
1
1
1
2
0
0
2
1
グダニスク医科系大学(※1)
1
0
0
2
2
0
1
0
0
2
2
0
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1
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0
0
1
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1
2
2
2
2
2
1
2
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0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
ウィーン医科大学(2005年より開始)
(※1)
アデレード大学(※1)
0
ウォーリック医科大学(※1)
(※2)(※2)
上海交通大学(2009年より開始)
(※1)
北京大学(2010年より開始)
(※1)
国立台湾大学・医学部(2011年より開始)
(※1)
★ 授業料徴収
(※1 )学術交流協定に基づき授業料不徴収 (※2 )ハリケーンのため休講
ウィーン医科大学
森 健太郎
この度、私は1か月間オーストリアのウィーン医科大学総合診療科へ留学させて頂きました。実習
内容はオーストリア郊外の開業医の先生方の所でホームステイしながら24時間開業医生活に浸ると
いうものでした。先生は一日50-80人ほど患者さんを診察し、さらに身体上の問題でクリニックへ来
ることが難しい患者さんに対しては機敏に往診されていました。驚いたことに先生は村の人すべての
既往歴や家族背景を把握しており、私は住民の健康に対し強い責任感を感じていくその姿に圧倒され
ました。また、この留学中に海外で臨床医として働く日本人の先生方や国連で働く医師の方々とお会
いすることもできました。そのような素晴らしい出会いは将来の理想の医師像を考える上で本当に貴
重な経験だと思います。
ウィーン医科大学総合診療科の方々と
この交換留学プログラムを通して私を支えて下さった皆様、そして留学中共に励まし合った友人達
に心から感謝の意を述べたいと思います。ありがとうございました。
ウォーリック医科大学
大橋 美紗
私はWarwick医科大学で3か月間実習をしました。イギリス独自の医療制度であるGP(総合診療)シ
ステムに興味があり、通常の病院実習だけでなく、コメディカルの方との同行や、地域診療所での実習・
往診、医師会主催の勉強会への出席など様々な経験をすることができました。日英の比較によって初め
て、日本のシステムの長所短所に気付きました。また患者にとって、医師にとって最善の医療体制はなに
か、またそれは高齢化や医療費増大のなかで経済的に可能なのか考えるようになりました。留学では新
しい知識を吸収するだけでなく、今後考え続けなければならない新たな課題を得ました。
3か月という期間を長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれです。しかし準備期間や自分にもた
らした影響を考えると、間違いなく大学生活における一大チャレンジでした。百聞は一見に如かず、皆さ
んも是非貴重な体験をしてきて下さい。
ハーバード大学
布施 佑太郎(2014年派遣)
昨年の爆破事件を受けてBOSTON STRONGを掲げたボストンマラソンで活気づく2014年4月
現 在、私 は ハ ー バ ー ド 大 学Massachusetts General Hospital (MGH)の 放 射 線 腫 瘍 科 で 臨 床 実
習をさせていただいています。ハーバード大学は多くの病院と提携を結んでおり、その中にはMGHや
Brigham and Women's Hospitalな ど 名 だ た る 病 院 が 数 多 く あ り ま す。MGHは 医 学 部 の 敷 地 か
ら離れており、チャールズ川に面したひときわ目を引く建物群が特徴の病院です。MGHの放射線腫瘍
科は陽子線治療センターを擁する一大部門であり11の領域チームに細分化されています。実習では
チームの一員となって問診、身体診察、治療計画立案などを様々な医療関係者と一緒に行います。また、
毎朝のカンファレンスでの論文や最新の臨床トライアルが飛び交う議論や幅広い分野にわたるレク
チャーなど大変勉強になります。世界中から医療関係者や患者さんが集まり症例豊富なハーバード大
学。本交換留学制度は多くの学生に充実した臨床実習の経験の場を与えると確信しています。
Nagoya University School of Medicine
19
平成27年度
入学試験案内
医学部医学科の入学定員内訳
推薦入試 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12名
一般入試(前期日程). . . . . . . . . . 90名
一般入試(後期日程). . . . . . . . . .
5名
大学入試センター試験の利用教科・科目名
推薦入試
一般入試
国 語
地歴・公民 (世 B、日 B、地 理 B、倫・政 経から1)
数
(数Ⅰ・数 A)と(数Ⅱ・数 B、工、簿、情報から1)
理
(物理、化学、生物から 2)
外
(英、独、仏、中、韓から1)
(5 教科 7 科目)
推薦入試
第 1 次選考:書類選考により面接受験者
(約 20 名)
を選抜
試験実施日
2 月 9日
募集人員
12 名
出願資格
高等学校(又は卒業者・修了者が大学入学資格を有するその他の学校)を平成27年3月卒業
選抜方法
第 2 次選考:面接
(口頭試問)
(又は修了)見込みの者又は学校教育法施行規則第93条第3項の規定等に基づき平成26年
度中に高等学校を卒業又は卒業見込みの者で、特に医学研究者への志向性を持ち、例えば
本学のMD・PhDコース[注]への進学を希望するような人材であり、調査書の学習成績概評が
Aに属し、学習成績・人物ともに特に優秀で、学校長等が責任をもってⒶとして推薦できる者。
なお、各高等学校等から推薦できる者は1名とします。
医学科では、様々な病気の原因を明らかにしたり、それに基づいて新たな予防法、診断法、治療法を開発したりする
研究が行われています。医学の進歩に貢献する研究に携わる医学研究者を養成するため、将来、大学や研究所で臨床
研究者あるいは基礎研究者として活躍することを目指す学生のためのプログラムを実施しています。
研究医を目指し、大学院(MD・PhDコースを含む)へ進学する者への経済的支援を図るため、国の政策に基づいた
奨学金制度を設けております。
※推薦入試で不合格になった場合、一般入試(個別学力検査)の受験を希望する場合は、別に一般入試の出願手続きが必要です。
(推薦入試の出願のみでは、一般入試は受験できません。)
[注]
:
〔MD・PhD コース〕の詳細については、本学部医学部ホームページ(http://www.med.nagoya-u.ac.jp)→名古屋大学医学部・
医学系研究科 → 大学院教育→ 若手研究者養成のための新しい大学院コースを参照してください。
20
一般入試
前期
日程
試験実施日
2 月 25 日∼ 27 日
選抜方法
第 1 次選考:大学入試センター試験の成績により第1次選考合格者
(募集人員の約3.5倍)
を選抜します
第 2 次選考:
試験科目
国:国語総合・現代文・古典
数:数Ⅰ・数Ⅱ・数Ⅲ・数 A・数 B
理:「物理基礎・物理」、「化学基礎・化学」、
「生物基礎・生物」から 2
外:英、独、仏、中から 1
ただし、英語については「英語Ⅰ」・「英語Ⅱ」・
「リーディング」
・
「ライティング」の 4 科目をあわせて出題
後期
日程
募集人員
その他:面接
90 名
試験実施日
3 月 12 日
選抜方法
第 1 次選考:大学入試センター試験の成績により面接受験者
(募集人
員の約8倍)を選抜(大学入試センター試験の成績が
900 点中 720 点以上の者を大学入試センター試験の
成績順に選抜します)
第 2 次選考:英文の課題に基づいた面接
(口頭試問)
募集人員
5名
国の施策に基づき、愛知県内の地域医療を担う人材を育成するため、平成21年度入試から、医学部医学科の入
学定員を増員し、後期日程で募集を開始しました。
これは、出身都道府県を問わず高校既卒者等も志願することができます。
本選抜では、入学後に愛知県から月額15万円程度の奨学金貸与を受けることが必須となります。なお、卒業後
は、愛知県内臨床研修指定病院での2年間の研修と、愛知県が指定する公的医療機関※での7年間の勤務を合わせ
て9年間の義務を果たすことにより奨学金の返還が免除されます。
医学部医学科では、本選抜で入学した者に対して、通常のカリキュラムに加えて地域医療に関するカリキュラムに
より、愛知県内の地域医療を担う人材育成を目指します。
本選抜の出願要件は、卒業後に愛知県内の地域医療に従事しようとする強い意志を持つ者とします。
※愛知県内の医師の確保が困難な地域に所在する公的医療機関のうち、知事が指定する医療機関で、
「地域の中核病院」などを想定しています。
上記は入学試験概要です。必ず「名古屋大学学生募集要項」を参照し、確認してください。
照会先:〒466−8550
名古屋市昭和区鶴舞町65
名古屋大学医学部・医学系研究科 学務課学務掛
電話(052)744−2430
ホームページ http://www.med.nagoya-u.ac.jp/
Nagoya University School of Medicine
21
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名古屋大学 医学部医学科案内
医学への道 2015
平成 26 年7月
■ 発行:名古屋大学医学部(鶴舞地区)学部教育委員会
■ 編集:同委員会「医学への道」編集チーム 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町 65
■ 印刷: 田島印刷社