特集 快適な生活空間の実現 子育て・婚活定住促進団地を活用した 快適な住宅建設の誘導について あお やま まさる 青 山 勝 * 安芸高田市では、住まいづくりのテーマとして『輝く住まいとまち・共に育む快適で豊かな住まいづく り』を目指し、さまざまな住宅政策に取り組んでいる。特に、「子育て・婚活定住促進団地」と「安芸高 田市に住めーる補助金」について紹介する。 1.はじめに 広島県安芸高田市は、平成16年3月に旧高田郡6 町が合併し今年度で市制10周年を迎える。 合併後本市では、「人・輝く・安芸高田」を将来 23年度に社会資本整備総合交付金(効果促進事業) を活用し団地整備を行い、平成24年度より分譲開 始している。 ②上甲立ひまわり団地(安芸高田市甲田町) 像に掲げ、一人ひとりがゆとりと豊かさを実感し、 安芸高田市土地開発公社が団地整備した土地を 安全・安心に暮らせる、夢と希望のもてるまちづく 平成24年度に市が公社から買い取り(単独費)、 りに取り組んでいる。 同年度より分譲開始している。 しかしながら、少子高齢化による自然減と転入減 転出増による社会減が著しく、人口減少が急速に進 行している。そうした中、本市では予約をすれば、 自宅の側まで迎えに来てくれる高齢者にも優しい公 共交通機関として「お太助ワゴン」の運行をしてい る。また少子化対策としては、 「結婚サポート事業」 による結婚のきっかけづくり等さまざまな定住対策 を展開している。 写真−1 自然に恵まれた上甲立ひまわり団地 住宅政策においては、平成24年度から「子育て・ 婚活定住促進団地」の分譲や「安芸高田市に住めー る補助金」を制度化することにより、子育て世帯・ 結婚サポート事業により成立した世帯(以下、「婚 活世帯」という)の住宅建設誘導を図っている。 2.子育て・婚活定住促進団地の概要 ⑴ 分譲までの経緯 ①アイリス・ニュータウン(安芸高田市向原町) 元市営住宅8棟35戸(昭和43年∼45年建設)を、 平成20・22年度に解体除却し用途廃止した。平成 *広島県 安芸高田市 建設部 住宅政策課長 0826-42-2111 14 月刊建設13−12 ⑵ 団地の概要 表−1 子育て・婚活定住促進団地の分譲概要 団地名 アイリス・ニュータウン 上甲立ひまわり団地 団地面積 4,847㎡ 6,006㎡ 分譲区画数 10区画 16区画 分譲面積 224㎡∼379㎡ 249㎡∼351㎡ 分譲価格 2,846千円∼4,423千円 3,036千円∼3,794千円 2団地とも、保育所、小学校が1㎞の範囲内にあ り、子育ての環境に恵まれている。 3.安芸高田市に住めーる補助金の紹介 本市は、戦国武将の毛利元就が生涯を過ごした地 組みづくりを協議してきた。そうしたなか「良いも のを永く安心して使ってもらう住宅建築」を目指し、 である。毛利元就が3人の子どもに残した「三矢の 市内の建築業者や電気・水道・内装業者等中小31業 訓え」から、三矢の住宅政策として、 「子育て・婚 者が「安芸高田市ブランド住宅事業協同組合」を設 活定住促進団地購入補助金」「子育て・婚活住宅新 立、当組合が平成24・25年度に国土交通省「地域型 築等補助金」 「安全・安心・住環境リフォーム補助金」 住宅ブランド化事業※」の採択を受けた。 を制度化した。この三本の補助金を総称して「安芸 高田市に住めーる補助金」という。 5.事業の実績・効果・評価 ⑴ 子育て・婚活定住促進団地購入補助金 ⑴ 事業の実績 子育て世帯・婚活世帯が定住促進団地を購入した 平成25年9月末まで(以下の数値についても同日) ときは、分譲価格の1割から3割を補助金として交 に分譲区画26区画中16区画を分譲することができた。 付する。 すべて子育て世帯が土地を購入された。そのうち、 ⑵ 子育て・婚活住宅新築等補助金 市外からの子育て世帯3世帯と、市内の公営住宅や 子育て世帯・婚活世帯が市内建築業者による注文 民間賃貸住宅入居者11世帯が分譲契約され、市外か 住宅等建築したときは、25万円若しくは50万円を補 らの転入及び公営住宅や民間賃貸住宅からの持ち家 助金として交付する。 への住み替えを図ることができた。 ⑶ 安全・安心・住環境リフォーム補助金 ⑵ 事業の効果 市内の建築業者等を利用して、自宅のバリアフ 2団地においてブランド住宅事業協同組合が10棟、 リー化、省エネ化、環境・防災・防犯対策等を含む 団地以外の市域全域においても子育て世帯の住宅7 リフォームを行ったときは、 工事費の一部(上限額: 棟の建築を受注され、地域経済の活性化に繋がって 20万円)を補助金として交付する。 いる。そのうち4棟が平成24年度地域型住宅ブラン ド化事業により建築された。 4.事業の特徴と地域への波及 ⑴ 快適で環境にやさしい住宅建設の誘導 また、平成24年5月市商工会に「市商工会定住委 員会」が設置され、その委員会へ行政も参画するな 子育て・婚活定住促進団地は、優良な住宅、将来 か、経済の活性化、雇用、市外からの転入者が安心 を見据えた省エネ設備の設置を建築要件としている。 して暮らすことのできる住みよいまちづくりに向け 具体的には、市の定める建築認定基準(性能評価基 官民一体となった取組みができるようになった。 準)ならびに太陽光パネル設置可能な屋根構造等を 市の定める建築認定基準(性能評価基準)について 要件とし、設計審査で認定を受けた住宅については、 は、市商工会定住委員会が依頼した1級建築士を含 上下水道加入負担金(約426千円)を市が負担して む専門家により設計審査や完成検査を受け、美しい いる。 街並みの形成や優良な住宅を建築することができた。 ⑵ 地域活力の創造 できる限り市内建築業者に施工してもらうため分 譲の申込先は市商工会とし、市内建築業者が建築す る場合は、安芸高田市に住めーる補助金の適用を受 けることも併せて説明し、地域経済の活性化も図る。 ⑶ 市内事業者の結集 団地の分譲に伴い、市商工会加盟中小事業者が、 若者定住や市内商工業者の活性化を目的として、市 内で建築される住宅を市内の事業者で受注できる仕 写真−2 市外からの子育て世帯の住み替え 月刊建設13−12 15 図−1 アイリス・ニュータウン分譲状況 図−2 上甲立ひまわり団地分譲状況 リビングの一部が出窓風に なって、家族そろって庭を眺 めることができる 写真−3 アイリス・ニュータウンの景観 写真−4 快適な居住空間 ⑶ 事業の評価 市外から転入された子育て世帯のご夫婦が「豊か 6.おわりに な自然で、空気がきれい。自然に囲まれた環境で感 この事業をとおして若者の定住誘導と、 地域の活性 性豊かに子どもが育っていく。高気密で、高断熱な 化に繋がったものといえるが、一方では残分譲区画 ので、冬でも寒くない。補助金を受けることにより、 の分譲促進を今後も引き続き行っていく必要がある。 こだわりを持てる家を建てることができた」と、話 今後の住宅政策は、民間事業者が市有地や民有地 しをされた。 ( 「広報あきたかた(5月号) 」http:// を活用した団地整備に重点をおき、その団地に対し www.akitakata.jp/site/page/PR_magazine/koho/ て行政が支援する施策を四つ目の矢として放ち、官 backnumber/2013kouhou/no111/参照) 民協働で快適で豊かな住環境整備を図ることとして 子育て・婚活定住促進団地の分譲と補助金を活用 いる。 することにより、子育て世帯が快適な居住空間であ る住まいを建築することができた。 【用語解説】 ※地域型住宅ブランド化事業 ……地域工務店等とこれらを取り巻く関連事業者が緊密な連携体制を構築し、地域資源を活用して地域の気候・風土にあった 良質で特徴的な「地域型住宅」の供給に取組むことを支援し、地域経済の活性化及び持続的発展、地域の住文化の継承及 び街並みの維持・保全、木材自給率の向上による森林・林業の再生等に寄与することを目的としている。 16 月刊建設13−12
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