資料1-3 阿部委員発表資料 (PDF:1269KB)

資料1−3
陸上の鉱床探査手法と
海底熱水鉱床探査手法の比較
前提:海底面に露出または極めて浅
部にあるものを対象とする。
2008年12月18日
住友金属鉱山株式会社 阿部一郎
資源探査の作業の流れ
陸上
海底
リモートセンシング、文献調査、
鉱区出願
文献調査、鉱区出願
広域調査:
地形、地質、重力、磁気
間接的調査:地形
精密調査:
地質、地化探、電気・電磁、IP
鉱床発見
試錐探鉱
鉱床発見
鉱床発見
直接的調査:映像、微地形、水質・水
温、サンプリング、試錐探鉱
資源量計算
資源量計算
経済性評価
経済性評価
陸上での鉱床探査手法
探査手法
特徴
1. 地形測量
空中写真等により陥没構造や構造線を抽出。
2. 重力探査
基盤構造により生じる重力異常を検出。
3. 磁気探査
火成岩中の磁鉄鉱が黄鉄鉱に変質するため、鉱床
近傍は消磁。
4. 地質調査
鉱床は特定層準に規制されて存在。変質帯の抽出。
5. 地化学探査 鉱床近傍では母岩中の特定成分が濃集あるいは溶
脱。
6. 電磁探査・
電気探査
7. IP法
8. 試錐
鉱床近傍では粘土鉱物により電気伝導度が上昇(比
抵抗が低下)。
硫化鉱物により分極現象が発生。
数百m程度の深さまでのコアを採取して,地質,変質,
組成を直接把握する。
海底熱水鉱床の探査手法
探査手法
特徴
9. 水質・水温
高温・高電気伝導度,特異な化学組成の熱水
が湧出し,周辺に拡散。広域調査に有効?
広域調査段階ではカルデラ状の陥没構造や
海底拡大系を抽出。
精密調査段階では鉱床に伴う特異な微地形
(マウンドやチムニー)を抽出。
ビデオや写真によりマウンドやチムニーを直
接発見。
1. 地形測量
4. 地質調査
(映像手法)
8. サンプリング マウンドやチムニーを直接採取し,有用元素
の含有量を分析。
・試錐
陸上探査手法と海底探査手法の比較(1)
探査手法
陸上探査での方法
海底探査方法
(Nautilus実績)
日本の海底探査
技術開発状況
1.地形測量
広域調査段階で空
中写真から鉱床に
関連する構造(陥没
構造など)を抽出。
精密調査段階で用
いられることは稀。
高解像度サイドス
キャンソナーでチム
ニーやマウンドを把
握
広域調査段階では
カルデラや海底拡
大系の抽出。
精密調査段階では
曳航式または無人
船搭載型の高解像
度サイドスキャンソ
ナー。実用段階,多
数あり。
海底鉱床探査に
おける有効性
広域調査,精密調
査ともに有効。
サブボトムプロファ
イラは海底下の断
面探査手法として
期待大。
産業技術総合研究所 海洋資源環境研究部門 HPより
陸上探査手法と海底探査手法の比較(2)
日本の海底探査
技術開発状況
探査手法
陸上探査での方法
海底探査方法
(Nautilus実績)
2.重力探査
グリッド状に多数の
測点を設けて重力
の変化を測定
2005年に重力探査
実施?詳細情報な
し
海底鉱床探査に
おける有効性
船上重力計。
鉱床を直接検出す
実用段階,多数あり。 る手法ではない。
大規模鉱床や潜頭
性鉱床に有効か
海洋地球研究船「みらい」の船上重力計
(株)グローバル オーシャン ディベロップメントHPより
陸上探査手法と海底探査手法の比較(3)
探査手法
陸上探査での方法
3.磁気探査
地上または航空機
に搭載した磁力計
で測線上の磁場強
度の変化を測定
海底探査方法
(Nautilus実績)
情報なし
日本の海底探査
技術開発状況
海底鉱床探査に
おける有効性
船上磁力計や曳航
式磁力計。実用段
階。多数あり。
鉱床を直接検出す
る手法ではない。
広域的には必要か
米国・ジオメトリクス社製 曳航式磁力計
オーシャンエンジニアリング(株)HPより
陸上探査手法と海底探査手法の比較(4)
探査手法
陸上探査での方法
海底探査方法
(Nautilus実績)
4.地質調査 露頭で岩相や構造 遠隔操作のビデオ
(映像手法) を記載しマッピング、 で海底面を撮影し
地質構造を推定
マッピング
日本の海底探査
技術開発状況
グラブやドレッジに
よるサンプリング。
カメラによる撮影。
実用段階,多数あり。
チェーンドレッジ(左)とファインダーテレビ付き深海カメラ(右):JOGMECパンフレットより
海底鉱床探査に
おける有効性
有効。ただし,陸上
で言う地質調査とは
意味合いが異なる。
岩相マッピングでは
なく,チムニー等の
直接観察・採取が
主。
陸上探査手法と海底探査手法の比較(5)
探査手法
陸上探査での方法
5.
岩石や土壌を採取
地化学探査 し,有用元素や指
示元素の含有量を
分析
海底探査方法
(Nautilus実績)
日本の海底探査
技術開発状況
遠隔操作のロボット グラブやドレッジに
アームでチムニー
よるサンプリング。
や堆積物を採取・分 実用段階,多数あり。
析
チェーンドレッジ(左)とファインダー付きパワーグラブ(右):JOGMECパンフレットより
海底鉱床探査に
おける有効性
有効。チムニー等の
直接採取が主。
海底泥土をシステマ
ティックに採取するこ
とにより周辺のス
モーカーの位置を推
定できるか?手間か
かり高価?実用的
陸上探査手法と海底探査手法の比較(6)
探査手法
陸上探査での方法
海底探査方法
(Nautilus実績)
日本の海底探査
技術開発状況
6.電磁探査
ループや地表に電
流を流し、誘導され
る電流や磁場を測
定
Ocean Floor
geophysics社の
OFEMシステムを
使用した調査を実
施
海底設置型電位
差・磁力計が試験
運用段階。
(JAMSTECなど)
笠谷ほか(2006),物理探査,vol.59,No.6,Fig.1およびFig.5
海底鉱床探査に
おける有効性
課題多い。
海底鉱床探査では
物性のコントラスト
が小さいことから極
めて高精度の観測
が必要。実用性に
疑問?
陸上探査手法と海底探査手法の比較(7)
探査手法
陸上探査での方法
6.電気探査
7.IP法
大地に電流を流し,
発生する電位を測
定。IP法では硫化
鉱物による分極現
象を測定。
海底探査方法
(Nautilus実績)
日本の海底探査
技術開発状況
2005年にIP法実
電気探査は曳航式
施?詳細情報なし。 システムが試験運
用段階(JAMSTEC
など)。海底IP法は
国内になし。
笠谷ほか(2006),物理探査,vol.59,No.6,Fig.7
海底鉱床探査に
おける有効性
課題多い。
海底鉱床探査では
物性のコントラスト
が小さいことから極
めて高精度の観測
が必要。IP法は有
効であると思われる
が,応答は地上の
1/1,000程度。
陸上探査手法と海底探査手法の比較(8)
探査手法
数百m程度の深さ
サンプリング までのコアを採取し
て,地質,変質,組
成を直接把握する。
採取率はほぼ
100%。経済性評価
の段階では50mグ
リッドで実施。
8.試錐,
海底探査方法
(Nautilus実績)
日本の海底探査
技術開発状況
海底鉱床探査に
おける有効性
無人船搭載の特注
試錐機で最長19m
掘進。コア回収率は
平均70%。
DORDでは吊り下
げ着座式試錐機で
最長14m。コア回収
率は0∼70%。
直接的調査手法と
して極めて有効。
ただし,コア回収率
や掘進能力は改善
の必要あり。高価。
経済性評価の段階
では50mグリッドで
実施?
陸上探査での方法
調査船
サブボトムプロファイラ
音響測深システムなど
ボーリング
マシン
大口径
コアラー
フリーフォール
グラブ
ドレッジ
カメラ グラブ
深海資源開発(株)パンフレットより
マルチプル
コアラー
陸上探査手法と海底探査手法の比較(9)
探査手法
陸上探査での方法
9.水質・水温
陸上探査で用いら
れることは稀。
海底探査方法
(Nautilus実績)
日本の海底探査
技術開発状況
実績あり。詳細情報 曳航式センサー
(CTD)で電気伝導
なし
度,水温,水圧を測
定可能。実用段階,
多数あり。
米国Sea-Bird Electronics社HPより
海底鉱床探査に
おける有効性
直接的調査だけで
はなく,広域から
ターゲットを絞る手
法として拡散・移動
した熱水のソースを
特定する手法として
期待大。
まとめ①
1. 基本的な探鉱の考え方は陸上も海底も同じ。海底鉱
床探査手法の多くは(地形測量,地質調査,地化学
探査,重力探査,磁気探査,水温・水質調査)ほぼ確
立されているが,有効性には相違あり。
¾ 地質調査は岩相マッピングではなく,チムニー等
の直接観察・採取が主。
¾ 地化学探査は直接サンプリングが主。地上と類似
の手法も可能であるが,有効か否か不明。既知鉱
床でテストする必要あり。
¾ 陸上の探査に用いられる重力探査,磁気探査は
海底探査では必要性が低い。広域的には意味が
ある。
まとめ②
2. 黒鉱探査に有効であるIP法や,電気探査・電磁探査
は海底探査には現状では適用困難
¾ 陸上の1/1,000程度の応答を取得するため,高精
度の測定機,電極等のポジショニング・システムの
開発が必要。
¾ 困難であるがゆえに研究開発の余地あり,とも言
える?
¾ 潜頭性鉱床探査には不可欠な技術か
まとめ③
3. 地上の探鉱に比べると,ターゲット地形の中から迅
速に鉱床を発見する手法が少ない。
必要とされる技術:
¾ 広域の温度異常,水質異常から,そのソースを特
定する技術
¾ 海底の泥土をシステマティックに採取することによ
り,近傍の鉱床位置を特定する技術(地化学探
査)
まとめ④
4. 資源量の推定のために断面形状を推定する手法が
必要
¾ 試錐を補間する情報
¾ サブボトムプロファイラ(ex. 産総研 DAI-PACK )
に期待
5. 精度の高い資源量計算のために試錐技術の改善が
必要。
¾ 試錐のコア回収率 0∼70%⇒80∼100%
¾ 掘削能力 鉱床を確実に貫くためには50m程度必
要か。
海底熱水鉱床の
探査と開発に向けての課題①
① 探鉱方針 活動中のスモーカーを発見し,その周辺
は類似地質条件と考えて周辺探鉱に集中すべき
② 鉱床の物性 粉体+固体? ・・・・・・試錐コア回収率
と採鉱法に直結
③ 採鉱法の確立 ・・・・・・容易ではない,鉱床ごとに異
なる可能性あり
④ 経済性 問題多い。特に事業規模(採掘量t/d,品位,
製錬精製法)と採算性,事業コスト。鉱石を拾ってくる
だけではない。
⑤ 環境問題 排水,沈殿物処理 ・・・・・・採掘した場所
に戻すのがベストか?生物資源保護が最大の難関
か?
海底熱水鉱床の
探査と開発に向けての課題②
⑥ 数多くの鉱床を発見,評価してからの開発となろう。
小規模製錬所では話にならない。Cu 10万t/年以上。
⑦ すべての鉱化チムニーが経済的に引き合うとは考え
ない方が良い。
容れ物はあるが中身がない=地上では多数
⑧ NautilusはCu5%,5,000t/d(年間180万t)程度を考
慮。このような高品位鉱床は地上では稀。これだと年
間500億円程度の事業規模。巨大ではない!!
技術的困難性を考えると投資する企業は少ない。
⑨ 国家プロジェクトとして進めなければならない。一企
業に期待するのは無理。